(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121155
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】導体接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H01R4/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028097
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】米田 大祐
(57)【要約】
【課題】クリップ状端子を介して第1導体と第2導体とが導通する導体接続構造において、通電性能を向上させ、かつ、第1導体及び第2導体を保持した樹脂部のクリープ現象を抑制する。
【解決手段】導体接続構造1は、板状の第1導体4及び第2導体5と、第1導体4と第2導体5との間に介在してこれらを保持した樹脂部3と、クリップ状端子2と、を備えている。第1導体4、第2導体5及び樹脂部3がクリップ状端子2の第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることで、クリップ状端子2を介して第1導体4と第2導体5とが導通する。第1導体4及び第2導体5は凸部41,51を複数備えており、第1弾性片21の幅方向両端縁21cが第1導体4の隣接した一対の凸部41に接触し、第2弾性片22の幅方向両端縁22cが第2導体5の隣接した一対の凸部51に接触する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体及び第2導体と、前記第1導体と前記第2導体との間に介在してこれらを保持した樹脂部と、クリップ状端子と、を備え、
前記クリップ状端子は、金属板で構成されており、基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、
前記第1導体、前記第2導体及び前記樹脂部が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通し、
前記第1導体及び前記第2導体は、それぞれ、互いに離れる側に突出した凸部を複数備え、これら複数の凸部は、前記第1弾性片及び前記第2弾性片の幅方向に間隔をあけて配置されており、
前記第1弾性片の幅方向両端縁が、前記第1導体の隣接した一対の前記凸部に接触し、
前記第2弾性片の幅方向両端縁が、前記第2導体の隣接した一対の前記凸部に接触する
ことを特徴とする導体接続構造。
【請求項2】
前記凸部が断面円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の導体接続構造。
【請求項3】
前記第1弾性片及び前記第2弾性片は、自然状態において前記基部側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部が形成されており、
前記各屈曲部の幅方向両端縁が、前記一対の凸部に接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の導体接続構造。
【請求項4】
前記クリップ状端子は、前記第1弾性片及び前記第2弾性片を複数備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の導体接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ状端子を用いた導体接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリップ状端子を用いた導体接続構造の一例として、
図4,5に示すものが公知である(特許文献1を参照)。
【0003】
図4,5に示す導体接続構造501は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体504及び第2導体505と、クリップ状端子502と、を備えている。第1導体504は、バッテリ側に接続された電線511の端末に接続されている。第2導体505は、負荷側に接続された電線512の端末に接続されている。
【0004】
クリップ状端子502は、金属板で構成されており、基部520と、基部520の一端から曲げ起こされた第1弾性片521と、基部520の他端から曲げ起こされた第2弾性片522と、を備えている。また、クリップ状端子502は、第1弾性片521及び第2弾性片522を複数対備えている。
【0005】
第1弾性片521及び第2弾性片522は、自然状態において基部520側から先端側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部521a,522aが形成されている。
【0006】
第1導体504及び第2導体505は、第1弾性片521と第2弾性片522との間に挟まれることで、クリップ状端子502を介して導通する。この際、第1弾性片521の屈曲部521aが第1導体504に弾性接触し、第2弾性片522の屈曲部522aが第2導体505に弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各弾性片521,522は、第1導体504及び第2導体505に位置ズレが生じた場合、第1弾性片521及び第2弾性片522の対向方向のズレには追従してズレを吸収できるが、ねじれ方向のズレには追従できず、接触が不安定になるおそれがあった。そこで、本願発明者は、第1導体504及び第2導体505にねじれが生じた場合でも接点が離れることを抑制できる導体接続構造として、
図6に示す構造を考え、検討した。
【0009】
図6に示す導体接続構造601は、
図4,5に示したクリップ状端子502と、板状の第1導体604と、板状の第2導体(不図示)と、第1導体604及び第2導体との間に介在してこれらを保持した樹脂部603と、を備えている。第1導体604は、第2導体と反対側の平坦面640から突出した断面円弧状の凸部641を複数備えている。第2導体は、第1導体604と同一形状である。
【0010】
この導体接続構造601は、第1弾性片521の屈曲部521aが第1導体604の凸部641に弾性接触し、第1弾性片522の屈曲部522aが第2導体の凸部に弾性接触する。
【0011】
このような導体接続構造601においては、第1導体604及び第2導体側の接点を断面円弧状の凸部としたことにより、第1導体604及び第2導体にねじれが生じた場合でも接点が離れることを抑制できる。しかしながら、各弾性片521,522と各凸部とが接点Pにて1点接触するため、接触荷重Fが1点に集中し、高温環境下において接点P近傍の樹脂部603のクリープ量が大きくなってしまうという新たな問題が生じ、改善の余地があった。また、1点接触のため、各弾性片521,522と各凸部との接触面積が小さくなってしまうという新たな問題が生じ、改善の余地があった。
【0012】
そこで、本発明は、クリップ状端子を介して第1導体と第2導体とが導通する導体接続構造において、通電性能を向上させ、かつ、第1導体及び第2導体を保持した樹脂部のクリープ現象を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体及び第2導体と、前記第1導体と前記第2導体との間に介在してこれらを保持した樹脂部と、クリップ状端子と、を備え、前記クリップ状端子は、金属板で構成されており、基部と、前記基部の一端から曲げ起こされた第1弾性片と、前記基部の他端から曲げ起こされ、前記第1弾性片と対向した第2弾性片と、を備え、前記第1導体、前記第2導体及び前記樹脂部が前記第1弾性片と前記第2弾性片との間に挟まれることで、前記クリップ状端子を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通し、前記第1導体及び前記第2導体は、それぞれ、互いに離れる側に突出した凸部を複数備え、これら複数の凸部は、前記第1弾性片及び前記第2弾性片の幅方向に間隔をあけて配置されており、前記第1弾性片の幅方向両端縁が、前記第1導体の隣接した一対の前記凸部に接触し、前記第2弾性片の幅方向両端縁が、前記第2導体の隣接した一対の前記凸部に接触することを特徴とする導体接続構造である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通電性能を向上させ、かつ、第1導体及び第2導体を保持した樹脂部のクリープ現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる導体接続構造を示す正面図である。
【
図2】
図1のクリップ状端子のみを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態にかかる「導体接続構造」について、
図1~3を参照して説明する。
【0017】
図1,3に示す導体接続構造1は、電気自動車の電源回路に適用されるものであり、互いに間隔をあけて配置された板状の第1導体4及び第2導体5と、第1導体4と第2導体5との間に介在してこれらを保持した樹脂部3と、クリップ状端子2と、を備えている。第1導体4は、バッテリ側に接続されている。第2導体5は、負荷側に接続されている。
【0018】
樹脂部3は、第1導体4の第2導体5側の面に重ねられた保持部31と、第2導体5の第1導体4側の面に重ねられた保持部32と、を備えている。樹脂部3は、第1導体4及び第2導体5同士が互いに間隔をあけて平行に配置された状態を維持している。
【0019】
第1導体4は、第2導体5と反対側の平坦面40から突出した凸部41を複数備えている。複数の凸部41は、クリップ状端子2の後述する第1弾性片21の幅方向に間隔をあけて並んでいる。各凸部41の断面は、
図3に示すように半円形状(断面円弧状)である。
【0020】
同様に、第2導体5は、第1導体4と反対側の平坦面50から突出した凸部51を複数備えている。複数の凸部51は、クリップ状端子2の後述する第2弾性片22の幅方向に間隔をあけて並んでいる。各凸部51の断面は、図示しないが、各凸部41同様半円形状(断面円弧状)である。
【0021】
クリップ状端子2は、金属板で構成されており、
図2に示すように、平板状の基部20と、基部20の一端から曲げ起こされた第1弾性片21と、基部20の他端から曲げ起こされ、第1弾性片21と対向した第2弾性片22と、を備えている。また、本例のクリップ状端子2は、第1弾性片21及び第2弾性片22を二対備えている。二つの第1弾性片21は、基部20の一端に間隔をあけて並んでいる。同様に、二つの第2弾性片22は、基部20の他端に間隔をあけて並んでいる。
【0022】
第1弾性片21及び第2弾性片22は、細長い帯状に形成されている。対を成す第1弾性片21及び第2弾性片22は、自然状態において基部20側から先端21b,22b側に向かうにしたがって互いに近付く方向に延びており、その先端21b,22b側部分に互いに離れる方向に曲がった屈曲部21a,22aが形成されている。
【0023】
第1導体4及び第2導体5は、保持部31,32と共に第1弾性片21と第2弾性片22との間に挟まれることで、クリップ状端子2を介して導通する。この際、各第1弾性片21の屈曲部21aにおける幅方向両端縁21cが、第1導体4の隣接した一対の凸部41に弾性接触し、各第2弾性片22の屈曲部22aにおける幅方向両端縁22cが、第2導体5の隣接した一対の凸部51に弾性接触する。
【0024】
このように、導体接続構造1においては、クリップ状端子2の各第1弾性片21が一対の凸部41で挟み込まれて第1導体4に2点接触し(
図3中のPは接点を表している)、各第2弾性片22が一対の凸部51で挟み込まれて第2導体5に2点接触する。
【0025】
図6に示した参考例の導体接続構造601においては、クリップ状端子502の各第1弾性片521が第1導体604に1点接触し、各第2弾性片522が第2導体に1点接触する構造であった。これに対し、本例の導体接続構造1においては、各第1弾性片21及び各第2弾性片22当たりの接点数が2点であり、参考例よりも接触荷重が分散されている。これにより、高温環境下での樹脂部3のクリープ現象を抑制することができる。また、1点接触である参考例と比較して、接触面積が増加しており、これにより接触抵抗が低減されて通電性能が向上している。さらに、各凸部41,51の接触面は曲面、即ち断面円弧状であることから、第1導体4及び第2導体5にねじれが生じた場合でも、接点が離れることを抑制できる。
【0026】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 導体接続構造
2 クリップ状端子
3 樹脂部
4 第1導体
5 第2導体
20 基部
21 第1弾性片
21a 屈曲部
22 第2弾性片
22a 屈曲部
41 凸部
51 凸部