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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121165
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】路面標示板
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/50 20160101AFI20240830BHJP
【FI】
E01F9/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028117
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517266779
【氏名又は名称】株式会社リンコー
(71)【出願人】
【識別番号】516240592
【氏名又は名称】林 弘美
(71)【出願人】
【識別番号】599012684
【氏名又は名称】唐沢 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】林 弘美
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA06
2D064AA22
2D064BA03
2D064CA01
2D064DA05
2D064DA06
2D064EA01
2D064EB31
2D064HA25
2D064HA27
2D064JA01
2D064JA02
(57)【要約】
【課題】全体の薄型化を実現しつつ、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても割れの発生を少なく抑え得る路面標示板を提供する。
【解決手段】 ベース0110と、このベース0110上に配置される蓄光層0120と、この蓄光層0120上に配置される靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層0130と、この第一透光樹脂層0130の上方に配置されるすべり止材を含む第二透光樹脂層0140と、を少なくとも含む路面標示板0100とする。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
ベースに配置される蓄光層と、
蓄光層上側に配置される靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層と、
第一透光樹脂層の上層に配置され前記すべり止材を含む第二透光樹脂層と、
を少なくとも含む路面標示板。
【請求項2】
第一透光樹脂層と、第二透光樹脂層とは、母材が同一材料である請求項1に記載の路面標示板。
【請求項3】
最上層が第二透光樹脂層である請求項1又は請求項2に記載の路面標示板。
【請求項4】
蓄光層と、第一透光樹脂層とは、間に設けられる両面テープ層で固定される請求項1又は請求項2に記載の路面標示板。
【請求項5】
第一透光樹脂層がない場合には、第二透光樹脂層は、靴に踏まれることでひびが入る性質である請求項1又は請求項2に記載の路面標示板。
【請求項6】
ベースを準備するベース準備工程と、
ベースに蓄光層を配置する蓄光層配置工程と、
蓄光層上側に配置される靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層を配置する第一透光樹脂層配置工程と、
を製品出荷前の工場内で行い、
第一透光樹脂層の上層に配置され前記すべり止材を含む第二透光樹脂層を配置する第二透光層配置工程を、
路面標示板の現場設置工程にて合わせて行うことを特徴とする路面標示板の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面や床面に設置されて、主として安全のための注意を喚起したり、緊急時において脱出場所や安全な場所に誘導するための避難経路を標示したりするのに用いる路面標示板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面や床面に設置される誘導案内などのための路面標示板の中には、ガラスビーズや骨材などのすべり止めのための材料(以下、本発明において「すべり止め材」という。)を含む部材を表面側に配置することで、すべりにくくしたものが知られている。
【0003】
このようなすべり止め材を表面側に配置した路面標示板としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。前者の特許文献1に記載された路面標示板は、文字や記号や図等の標示が転写等によって印字されたシートと、このシートの表面に設けられた合成樹脂を含む第1層と、第1層の表面に設けられた粒子状の骨材から成る第2層と、第2層の表面に設けられた合成樹脂を含む第3層とを備えている。この場合、粒子状の骨材から成る第2層は、第1層及び第3層の双方に挟み込まれることで保持されるものとなっている。
【0004】
一方、後者の特許文献2に記載された路面標示板は、 基板と、反射層と、蓄光材層と、表面ガラス層を備えており、基板の上方に反射層,蓄光材層及び表面ガラス層を順次配置してなっている。反射層は、この反射層上に配置される蓄光材層からの光を表面ガラス層方向に反射することで蓄光材層の輝度を増す機能を有している。表面ガラス層は、その下層に配される蓄光材層等の損傷・劣化や汚れを防止する機能を有しているのに加えて、多数の小さな突起を設けることで、すべり止めの役割も果たすようになっている。
この路面標示板において、基板は、その上方に順次配置される反射層,蓄光材層及び表面ガラス層を最下部で支持する都合上、例えば、強化ガラスなどのガラス、アクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂等の硬質樹脂、ステンレスやアルミニウム等の金属、セラミック等の硬く変形しにくい材料が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-044497号公報
【特許文献2】特許第7141579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の路面標示板のうち、特許文献1に記載された路面標示板では、粒子状の骨材から成るすべり止めとしての第2層を第1層及び第3層の双方で挟み込んで保持するようにしているので、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりした場合には、割れが生じる虞があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載された路面標示板では、反射層,蓄光材層及び表面ガラス層を最下部で支持する基板の材料に、例えば、強化ガラスなどのガラス、アクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂等の硬質樹脂、ステンレスやアルミニウム等の金属、セラミック等の硬く変形しにくいものを用いているので、路面標示板全体の厚みが大きくなってしまうという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題であった。
【0008】
本発明は、これらの課題に着目してなされたものであり、全体の薄型化を実現したうえで、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても、割れが生じるといった事態の発生を少なく抑えることが可能である路面標示板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目標を達成するために、本発明における第一の態様は、ベースと、ベースに配置される蓄光層と、蓄光層上側に配置される靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層と、第一透光樹脂層の上層に配置され前記すべり止材を含む第二透光樹脂層と、を少なくとも含む路面標示板を提供する。
【0010】
また、第二の態様において、第一透光樹脂層と、第二透光樹脂層とは、母材が同一材料である路面標示板を提供する。
【0011】
さらに、第三の態様は、最上層が第二透光樹脂層である路面標示板を提供する。
【0012】
さらにまた、第四の態様において、蓄光層と、第一透光樹脂層とは、間に設けられる両面テープ層で固定される路面標示板を提供する。
【0013】
さらにまた、第五の態様において、第一透光樹脂層がない場合には、第二透光樹脂層は、靴に踏まれることでひびが入る性質である路面標示板を提供する。
【0014】
一方、第六の態様において、ベースを準備するベース準備工程と、ベースに蓄光層を配置する蓄光層配置工程と、蓄光層上側に配置される靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層を配置する第一透光樹脂層配置工程と、を製品出荷前の工場内で行い、第一透光樹脂層の上層に配置され前記すべり止材を含む第二透光樹脂層を配置する第二透光層配置工程を、路面標示板の現場設置工程にて合わせて行う路面標示板の設置方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る路面標示板によれば、全体の薄型化を実現しつつ、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても、割れの発生を少なく抑えることが可能であるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】実施形態1の路面標示板を示す全体斜視図
図1B図1AのX-X線位置に基づく断面図
図1C図1Aに示した路面標示板を路面上に設置した状態の側面図
図1D図1Aに示した路面標示板を路面の凹部内に設置した状態の側面図
図1E】実施形態1の他の構成による路面標示板を示す全体斜視図
図1F図1EのX-X線位置に基づく断面図
図1G】実施形態1のさらに他の構成による路面標示板を示す全体斜視図
図1H図1GのX-X線位置に基づく断面図
図1I図1Cの路面上に設置した実施形態1の路面標示板の全体をすべり止め材を含む透光樹脂で被覆した状態の断面図
図1J】実施形態1の路面標示板の製造手順を示す工程の流れ図
図2A】実施形態3の路面標示板を示す図1Bの断面図に相当する断面図
図2B】実施形態3の路面標示板の製造手順を示す工程の流れ図
図2C】実施形態3のさらに他の構成による路面標示板を示す断面図
図3A】実施形態4の路面標示板の設置方法に係る製造手順を示す工程の流れ図
図3B】実施形態4に係る路面標示板の設置方法の第二透光樹脂層配置工程における第二透光樹脂層の一配置例を示す断面図
図3C】実施形態4に係る路面標示板の設置方法の第二透光樹脂層配置工程における第二透光樹脂層の他の配置例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1、請求項3、請求項5などに関し、実施形態2は主に請求項2などに関し、実施形態3は主に請求項4などに関し、実施形態4は主に請求項6などに関する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
<実施形態1>
【0018】
本実施形態は、主に請求項1、請求項3、請求項5などに関する。ただし、各請求項の発明の構成要件は、この実施形態によって限定されるものではない。
<実施形態1 概要 主に請求項1,3,5に対応>
【0019】
本実施形態に係る路面標示板は、ベース上に、蓄光層と、靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない第一透光樹脂層と、すべり止材を含む第二透光樹脂層と、を順次配置してあることを特徴とするものである。
【0020】
このように、本実施形態の路面標示板では、ベース上に、蓄光層と、第一透光樹脂層と、第二透光樹脂層と、を順次配置するので、例えば、ベースとして柔軟性のある樹脂を用いると、標示板全体としても柔軟性を有することとなり、その結果、ベースとして硬く変形しにくい材料ものを用いなくても、すなわち、標示板全体を厚肉化しなくても、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても、割れの発生を少なく抑え得ることとなる。
【0021】
(路面標示板の形状・寸法)
路面標示板の形状や寸法は、その種類・用途や設置場所などに応じて適切に設計される。例えば、形状としては、平面視において矩形状を成すもののほか、三角形状、多角形状、円形状、楕円形状を成すものなどが挙げられる。また、路面標示板の寸法の一例としては、平面視において略正方形状を成すものの場合、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmのものが挙げられる。
<実施形態1 構成(全般) 主に請求項1,3,5に対応>
【0022】
図1A,1Bは、本実施形態における路面標示板の一構成例を示す図であり、図1Aは斜視図、図1B図1AのX-X線に基く断面図である。図1A,1Bに示すように、本実施形態の路面標示板0100は、ベース0110、蓄光層0120、第一透光樹脂層0130、第二透光樹脂層0140を有している。この場合、ベース0110は、平面視が矩形の平板状を成しており、この平板状のベース0110の上方に、これと略同一平面形状の蓄光層0120、第一透光樹脂層0130、第二透光樹脂層0140を順次配置した構成としている。また、この路面標示板0100において、文字や図形等で誘導案内の内容を標示するグラフィック層0150を蓄光層0120と第一透光樹脂層0130との間に配置しており、このグラフィック層0150は、例えば、ピクトサインとして切り出した光反射シート(再帰反射シート)を蓄光層0120上に貼り付けることで形成されるものとなっている。他の構成として、例えば、蓄光層0120上にピクトサインを印刷することでグラフィック層0150を形成したり、非透光性のインクを塗布ことによりグラフィック層0150を形成したりしてもよい。なお、印刷や塗布に使用されるインクは、紫外線耐性の観点から、シリコーン系の材料を母材としたインクであることが好ましい。
【0023】
このように、図1A,1Bに示した路面標示板0100は、平面視が矩形のベース0110の上方に蓄光層0120、第一透光樹脂層0130、第二透光樹脂層0140を順次配置したものであるが、本発明の路面標示板の形状は、このようなものに限られない。
また、路面標示板が矩形状、三角形状、多角形状等の如何なる形状を成している場合も、図1Cに示すように、路面標示板0100を路面0160上に突出して配置するようにしてもよいし、図1Dに示すように、路面標示板0100の最上面が路面0160と面一となるようにして、路面標示板0100を路面0160内に埋め込んで配置してもよい。なお、本発明において、「路面」には、屋外の道路や公園その他の地面や屋内の床面のいずれもが含まれる。
<実施形態1 構成(ベース:全般、材料) 主に請求項1,3,5に対応>
【0024】
ベースは、その上層に順次配置される蓄光層,第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の三層を支持するための部材であり、このように蓄光層,第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の三層を最下層で支持して、踏まれても容易に損傷しない強度を有することが求められる。その材料としては、例えば樹脂が考えられ、大きい荷重が負荷された場合に折れずに柔軟に対応することができると共に、圧力から解放されたときには元の形状に復元できるものであることが望ましい。このような要求に応え得る樹脂材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系エラストマー、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、AS(Acrylonitrile-Styrene)樹脂、PET(PolyEthylene-Terephthalate)樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂が考えられ、曲げ強度及び柔軟性の調和の観点から、例えば、ポリカーボネイト樹脂、塩化ビニル樹脂、PET樹脂を採用することが望ましい。
【0025】
ここで、ベースにおける蓄光層を配置する面には、反射層として、例えば、高反射性の白色の酸化チタンを設けたり白色塗料を塗布したりすることが望ましく、このように、ベースの蓄光層配置面に反射層としての白色の酸化チタンを設けた場合には、蓄光層を透過した光がベース上の酸化チタンで反射して再度蓄光層に届くこととなり、蓄光層においてより多くの蓄光がなされることとなって、視認性の向上が図られることとなる。
また、ベースとして採用する樹脂材料は白色乃至は白色に近い色であることが望ましい。これにより、高反射性の白色の酸化チタンをベースに貼り付けるための貼付作業や酸化チタンに代わる白色塗料の塗布作業を不要とすることができるので、路面標示板のより一層の薄肉化が図られると共に、路面標示板の製造に係る工数の低減が図られることとなる。
<実施形態1 構成(ベース:形状、寸法) 主に請求項1,3,5に対応>
【0026】
ベースの形状は、例えば、図1A図1Dで示したような平面視が矩形の平板状のベース0110が考えられるほか、図1E,1Fで示すように、中央に凹部0110aを有する盆状のベース0110Aが考えられる。このような中央に凹部0110aを有する盆状のベース0110Aの場合には、歩行者のつまずきを防ぐために、凹部0110aを囲む周縁部0110bが外側に向けてなだらかに傾斜するように形成することが望ましい。
【0027】
ベースの寸法は、例えば、平面視が正方形の平板状の場合、一辺が220~240mm、厚みが0.5~1.5mmのものが一例として考えられる。また、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmの平面視が正方形の路面標示板の場合で、且つ、ベースが中央に凹部を有する盆状の場合には、凹部の一辺が190~210mm(周縁部の幅が5~25mm)、凹部の深さが0.5~3.5mmのものが一例として考えられる。
<実施形態1 構成(蓄光層:全般、材料) 主に請求項1,3,5に対応>
【0028】
蓄光層は、光エネルギを蓄え、蓄えた光エネルギを徐々に光として放出する性質を有する材料である蓄光材料で形成される層である。この蓄光材料としては、例えば、アルミン酸ストロンチウム系蓄光粉末を用いることができる。このアルミン酸ストロンチウム系蓄光粉末とは、アルミン酸ストロンチウム塩を母結晶として、少量のユーロピウム(Eu)、ディスプロシウム(Dy)、ホウ素(B)等を添加したものである。蓄光材料は、樹脂中に均一に分布するようにしてもよいし、例えば、グラジュエーションをなすように不均一に分布するようにしてもよい。
【0029】
この際、蓄光材料を含有させる樹脂としては、シリコーン樹脂が好適であるが、このほかの樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂等の樹脂を用いてもよい。
【0030】
なお、蓄光材料を含有させる樹脂は、発光輝度を高く維持するうえでできるだけ透明度が高いものであることが望ましく、透明度を測る指標の一つである光透過率(特定の波長の光が試料を通過する割合)の観点から、例えば、この光透過率が少なくとも85%以上であることが望ましい。このように、光透過率の観点からも、光透過率が90%のシリコーン樹脂が蓄光材料を含有させる樹脂として好適な材料である。
【0031】
ベースについて上述したように、この蓄光層にも、路面標示板に大きい荷重が負荷された場合に折れずに柔軟に対応することができ、且つ、圧力から解放されたときには元の形状に復元できることが求められることから、曲げ強度及び柔軟性を有していることが望ましく、具体的な強度は、上述のベースと同程度であるものが望ましい。
<実施形態1 構成(蓄光層:寸法、形状) 主に請求項1,3,5に対応>
【0032】
蓄光層の寸法及び形状は、他の層、特にベースの寸法及び形状に基いて決定される。例えば、上述したように、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmの平面視が正方形の路面標示板の場合で、且つ、ベースが中央に凹部を有する盆状の場合には、一辺が190~210mm(ベースの凹部に内接する寸法)、厚みが0.5~1.5mmであるものが一例として考えられる。
<実施形態1 構成(第一透光樹脂層:全般、材料) 主に請求項1,3,5に対応>
【0033】
第一透光樹脂層は、蓄光層の上方に配置される透光性を有する樹脂の層であって、後述する第二透光樹脂層との差異として、靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含まない樹脂の層である。
【0034】
この第一透光樹脂層を配置する目的は、路面標示板を強く踏んだり路面標示板上を自動車等の重量物が通過したりして、路面標示板が大きな荷重を受けた際にクッション材として機能することで、路面標示板の表面に割れが生じないようにすることにある。したがって、第一透光樹脂層を構成する樹脂材料には、第二透光樹脂層及び蓄光層の双方に対する密着性に優れたものを採用することが好ましい。
【0035】
ここで、本発明の発明者らによる実験によれば、第一透光樹脂を設けずに蓄光層の上層に第二透光樹脂層だけを配置した場合、上記したような大きな荷重を加えると、路面標示板の表面にひびが生じてしまうという結果を得た。これは、第二透光樹脂層に含まれるすべり止材による傷付きが蓄光層に生じて、蓄光層及び第二透光樹脂層間に空隙ができることが原因の一つであると考えられることから、本発明者らは、本実施形態のように、路面標示板をベース上の蓄光層と第二透光樹脂層との間に第一透光樹脂層を配置すれば、大きな荷重を受けた際に、路面標示板の表面に割れが生じるのを防ぎ得るという知見を得た。
【0036】
また、第一透光樹脂層を構成する樹脂は、上記した大きな荷重を受けてから解放されるまでの間において、少なくとも第二透光樹脂層及び蓄光層の挙動に追随し得る柔軟性を有する樹脂であることが好ましい。
このような第一透光樹脂層の樹脂としては、例えばポリカーボネイト樹脂が用いられる。このほか、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂や、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等の合成ゴムを用いてもよい。
<実施形態1 構成(第一透光樹脂層:形状、寸法) 主に請求項1,3,5に対応>
【0037】
第一透光樹脂層の寸法及び形状も、他の層、特にベースの寸法及び形状に基いて決定される。例えば、上述したように、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmの平面視が正方形の路面標示板の場合で、且つ、ベースが中央に凹部を有する盆状の場合には、一辺が190~210mm(ベースの凹部に内接する寸法)、厚みが0.25~0.75mmであるものが一例として考えられる。
<実施形態1 構成(第二透光樹脂層:全般) 主に請求項1,3,5に対応>
【0038】
第二透光樹脂層は、第一透光樹脂層の上方に配置される透光性を有する樹脂の層であって、靴底にすべり止めの効果を与えるすべり止材を含むものである。すべり止め材としては、ガラスビーズや骨材等が用いられ、このうち骨材としては、例えば、砂、砂利、アルミナ、高炉スラグ、フライアッシュなどが用いられる。高炉スラグは、溶けた銑鉄を製造する高炉から溶融分離回収されるもので、鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原料の石灰石やコークス中の灰分が一緒になったものである。また、フライアッシュは、火力発電所(大型ボイラー)において、燃焼時に燃焼ガスとともに吹き上げられるレベルの灰(球状の微粒子)である。
【0039】
第二透光樹脂層を配置する目的は、上述したように、路面標示板を歩行者等が踏んでもすべりにくいようにするとともに、路面標示板の表面強度を高めることにある。
【0040】
このような路面標示板の表面強度を高めるという目的からすれば、第二透光樹脂層には硬い樹脂材料を用いることが求められるが、このような硬質の樹脂材料は、軟質の材料との密着性が良くない、すなわち、硬質の樹脂材料から成る第二透光樹脂層は、軟質の材料としてシリコーン樹脂を用いるのが好適な蓄光層との密着性がよくない。
【0041】
そこで、本実施形態では、先の実験結果も踏まえて、第二透光樹脂層を蓄光層上に直接配置するのではなく、蓄光層上に配置した第一透光樹脂層を介して積層することとしている。そして、第二透光樹脂層を構成する硬い材料との間でも密着性のよい樹脂材料を第一透光樹脂層に用いることで、路面標示板に大きな荷重が加わった場合でも、第二透光樹脂層の割れの発生を抑えることが可能となる。
<実施形態1 構成(第二透光樹脂層:材料) 主に請求項1,3,5に対応>
【0042】
第二透光樹脂層も、ベース及び蓄光層について上述したのと同様に、路面標示板に大きい荷重が負荷された場合に折れずに柔軟に対応することができ、且つ、圧力から解放されたときには元の形状に復元することが求められる。
【0043】
このような第二透光樹脂層の樹脂(すべり止め材を除く母材の材料)としては、例えばポリカーボネイト樹脂が用いられる。このほか、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系エラストマー、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂や、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等の合成ゴムを用いてもよい。
【0044】
より具体的には、例えば、ポリカーボネイト樹脂にアルミナからなる骨材を混合配置したものを用いることができる。当該材料は、耐久性、耐摩耗性、防汚性、耐候性に優れており、路面標示板の表面強度を高めるうえで、好適な材料である。なお、当該材料の耐用年数は3~5年であり、経年に伴って黄変を来すが、蓄光層の発光機能を損なうようなことはない。
【0045】
本実施形態において、例えば、第一透光樹脂層を構成する樹脂材料及び第二透光樹脂層を構成する樹脂材料として互いに異なる樹脂を採用すると、第一透光樹脂層を通過する蓄光層からの光が、第一透光樹脂層及びこの第一透光樹脂層とは屈折率の異なる第二透光樹脂層間において乱反射することとなり、その結果、輝度が高まることとなる。
また、本実施形態のように、例えば、第一透光樹脂層を構成する樹脂材料及び第二透光樹脂層を構成する樹脂材料として互いに異なる樹脂を採用した場合には、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の間に、例えば、後述する、PETフィルムを基材とし、この基材の一方の面にシリコーン系粘着剤を配し、他方の面にアクリル系粘着剤を配した両面粘着テープを設けることが望ましい。
<実施形態1 構成(第二透光樹脂層:形状、寸法) 主に請求項1,3,5に対応>
【0046】
第二透光樹脂層の寸法及び形状も、他の層、特にベースの寸法及び形状に基いて決定される。例えば、上述したように、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmの平面視が正方形の路面標示板の場合で、且つ、ベースが中央に凹部を有する盆状の場合には、一辺が190~210mm(ベースの凹部に内接する寸法)、厚みが0.25~0.75mmであるものが一例として考えられる。
【0047】
また、すべり止め材の個々の寸法は、適宜設計すればよく、様々な寸法のものを混合したものであってもよい。例えば、個々のすべり止め材の寸法の一例は直径0.1~0.3mmである。
<実施形態1 他の構成(第一透光樹脂層、第二透光樹脂層:互いに異なる形状例)主に請求項1,3,5に対応>
【0048】
上記したように、これまで、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層が互いに平面視で同じ形状で且つ同じ寸法を成している場合を説明したが、他の構成例として、例えば、図1Gの斜視図及び図1GのX-X線に基く図1Hの断面図に示すように、第一透光樹脂層0130Bをベース0110,蓄光層0120及び第二透光樹脂層0140よりも平面視で一回り小さい正方形の平板状を成すものとすることができる。すなわち、この路面標示板0100Bにおいて、第二透光樹脂層0140で第一透光樹脂層0130Bの全体及びその周囲に位置する蓄光層0120の周縁部0120bを被覆する構成とすることができる。
【0049】
このような構成を採用した場合には、歩行者のつまずきを防ぐために、第一透光樹脂層0130Bの周囲を覆う第二透光樹脂層0140の周縁部0140bが外側に向けてなだらかに傾斜するように形成することが望ましい。
<実施形態1 他の構成(保護用透光樹脂:第二透光樹脂層の上層)主に請求項1,3,5に対応>
【0050】
なお、本実施形態では、上記したように、第二透光樹脂層が路面標示板の最上層に配置されている場合を説明したが、これに限定されるものではなく、他の構成例として、第二透光樹脂層の上層に別の部材として、例えば、第二透光樹脂層に汚れが付かないようにすると共に蓄光層の蓄光機能を損なわない程度に紫外線をカットするための保護用透光樹脂を配置してもよい。すなわち、図1Iに示すように、第二透光樹脂層0140に含まれる骨材等のすべり止め材によるすべり止め機能を妨げることがない程度の薄さの保護用透光樹脂0170で路面標示板0100の全体を被覆してもよい。このような保護用透光樹脂0170の配置は、特に、図1Iに示したような路面標示板0100が平板状のベース0110上に蓄光層0120,第一透光樹脂層0130及び第二透光樹脂層0140の各層を配置した形状を成している場合において、歩行者のつまずきを防ぐうえで有用である。
<実施形態1 製造手順 主に請求項1,3,5に対応>
【0051】
次に、本実施形態の路面標示板の製造手順について説明する。
<実施形態1 製造手順:ベース準備工程 主に請求項1,3,5に対応>
【0052】
図1Jは、本実施形態における路面標示板の製造手順の一例を示す流れ図であり、まず、ベース準備工程S0101において、ベースを準備する。
<実施形態1 製造手順:蓄光層配置工程 主に請求項1,3,5に対応>
【0053】
次に、蓄光層配置工程S0102において、ベース準備工程S0101にて準備したベースの上方に蓄光層を配置する。具体的には、例えば、ベースが中央に凹部を有する盆状のものである場合には、この凹部に液状の蓄光樹脂を流し込んで固化させることにより配置する。また。ベースが平板状のものである場合には、予めベースの平面形状と略同一形状に形成した蓄光樹脂からなる蓄光層をベースの上方に積層配置する。
<実施形態1 製造手順:第一透光樹脂層配置工程 主に請求項1,3,5に対応>
【0054】
次いで、第一透光樹脂層配置工程S0103において、蓄光層配置工程S0102にて配置した蓄光層の上方に第一透光樹脂層を配置する。例えば、第一透光樹脂層が液状の樹脂材料から成るものであれば、これを蓄光層に密着させるべくローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
<実施形態1 製造手順:第二透光樹脂層配置工程 主に請求項1,3,5に対応>
【0055】
続いて、第二透光樹脂層配置工程S0104において、第一透光樹脂層配置工程S0103にて配置した第一透光樹脂層の上方に第二透光樹脂層を配置する。この配置は、例えば前述のポリカーボネイト樹脂にアルミナからなる骨材を混合配置した材料を用いる場合であれば、ローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
【0056】
なお、上記各工程は、これらをすべて工場内で行ってもよいし、その全部または一部を設置場所の現場で行ってもよい。一部を現場で行う場合としては、例えば、ベース準備工程から第一透光樹脂層配置工程までを製品出荷前の工場内で行い、第二透光層配置工程を路面標示板の現場設置工程にて合わせて行う場合が考えられる。このような設置方法については、他の実施形態にて詳述する(実施形態4参照)。
<実施形態1 効果 主に請求項1,3,5に対応>
【0057】
本実施形態の路面標示板によれば、全体の薄型化を実現しつつ、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても、割れの発生を少なく抑えることが可能であるという優れた効果が得られる。
<実施形態2>
【0058】
本実施形態は、主に請求項2などに関する。
<実施形態1 概要 主に請求項2に対応>
【0059】
本実施形態に係る路面標示板は、実施形態1の路面標示板を基本とし、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の各母材に同一の樹脂材料を採用したことを特徴としている。
<実施形態2 構成(全般) 主に請求項2に対応>
【0060】
本実施形態の路面標示板が、先の実施形態1の路面標示板と比較して特徴とするところは、第一透光樹脂層と第二透光樹脂層との各母材が同一の材料から成っている点にあり、他の構成は先の実施形態1の路面標示板と同じである。ここで、「母材」とは、第一透光樹脂層にとっては第一透光樹脂層を構成する樹脂材料そのものあり、第二透光樹脂層にとっては、ガラスビーズ、骨材などのすべり止め材を混合する対象である樹脂材料のことである。
【0061】
本実施形態の路面標示板を上記した構成とする目的は、第一透光樹脂層と第二透光樹脂層との相互の密着性を高めることで、路面標示板を強く踏んだり路面標示板上を自動車等の重量物が通過したりした際の路面標示板の割れの発生をより少なく抑えることにある。
【0062】
第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の双方の母材として採用される同一の材料としては、例えば、ポリカーボネイト樹脂を挙げることができる。より具体的には、例えば、第二透光樹脂層が、前述のようにポリカーボネイト樹脂を母材とする材料である場合において、第一透光樹脂層の樹脂材料として、ポリカーボネイト樹脂を母材とする透明樹脂を用いることができる。
<実施形態2 効果 主に請求項2に対応>
【0063】
本実施形態の路面標示板によれば、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の各母材に熱膨張係数及び弾性係数がいずれも等しい同一の樹脂材料を採用しているので、第一透光樹脂層と第二透光樹脂層との相互の密着性を高めることができ、その結果、割れの発生をより少なく抑えることが可能である。加えて、例えば、1日のうちで気温が大きく変化したり大きな荷重が頻繁に負荷されたりするといった設置環境であったとしても、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の双方の熱による変形量や外力による変形量に差が生じることがないので、第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層の剥離リスクを減らすことできるという優れた効果が得られる。
<実施形態3>
【0064】
本実施形態は、主に請求項4などに関する。
<実施形態3 概要 主に請求項4に対応>
【0065】
本実施形態に係る路面標示板は、実施形態1,2の路面標示板を基本とし、両面テープ層を介して蓄光層及び第一透光樹脂層を固定したことを特徴としている。
<実施形態3 構成(全般) 主に請求項4に対応>
【0066】
図2Aは、本実施形態に係る路面標示板の一例を示す図であり、先の実施形態1の説明で用いた図1AのX-X線に基く断面図、すなわち、図1Bの断面図に相当する断面図である。図2Aに示すように、本実施形態の路面標示板0200が、先の実施形態1の路面標示板と比較して特徴とするところは、平面視が矩形のベース0210の上方に順次配置される蓄光層0220,第一透光樹脂層0230及び第二透光樹脂層0240のうちの蓄光層0220と第一透光樹脂層0230との間に両面テープ層0280を配置して、この両面テープ層0280を介して蓄光層0220及び第一透光樹脂層0230を固定した点にあり、他の構成は先の実施形態1の路面標示板と同じである。
<実施形態3 構成(両面テープ層:材料) 主に請求項4に対応>
【0067】
両面テープ層の材料には、蓄光層及び第一透光樹脂層のそれぞれと密着性の高いものが望ましく、蓄光層及び第一透光樹脂層を構成する各樹脂材料が互いに異なる場合には、例えば、蓄光層の樹脂材料がシリコーン樹脂、第一透光樹脂層の樹脂材料がポリカーボネイト樹脂である場合には、両面テープ層として、基材の蓄光層側の面にシリコーン樹脂に対して高い粘着力を発揮できるシリコーンゲルを配していると共に、基材の第一透光樹脂側の面にポリカーボネイト樹脂に対して高い粘着力を発揮できる例えばアクリル系粘着剤(好ましくはゲル)を配した両面粘着テープを採用することが望ましい。
【0068】
このように、蓄光層を構成する樹脂材料と相性が良い粘着剤及び第一透光樹脂層を構成する樹脂材料と相性が良い粘着剤を基材の相反する面に備えた両面粘着テープを採用すると、蓄光層及び第一透光樹脂層の双方に両面粘着テープが強吸着されるので、蓄光層及び第一透光樹脂層の剥離リスクを低減することができる。このような構成の両面粘着テープとしては、例えば、PETフィルムを基材とし、この基材の一方の面にシリコーン系粘着剤を配し、他方の面にアクリル系粘着剤を配したものを挙げることができる。
【0069】
なお、両面粘着テープの一例として、PETフィルムから成る基材の一方の面にシリコーン系粘着剤を配し、他方の面にアクリル系粘着剤を配したものを挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、紫外線耐性を重視する場合には、透明シリコーンゴムを基材とし、シリコーン系のゲル材料を粘着剤とした両面粘着テープを両面テープ層として採用することができる。
<実施形態3 構成(両面テープ層:形状及び寸法) 主に請求項4に対応>
【0070】
両面テープ層の寸法及び形状は、例えば、上述したように、一辺が220~240mm、厚みが2~4mmの平面視が正方形の路面標示板の場合で、且つ、ベースが中央に凹部を有する盆状の場合には、一辺が190~210mm(ベースの凹部に内接する寸法)、厚みが0.08~0.12mmであるものを採用し得る。
<実施形態3 製造手順 主に請求項4に対応>
【0071】
次に、本実施形態の路面標示板の製造手順について説明する。
<実施形態3 製造手順:ベース準備工程、蓄光層配置工程 主に請求項4に対応>
【0072】
図2Bは、本実施形態における路面標示板の製造手順の一例を示す流れ図である。図2Bに示す工程のうち、ベース準備工程S0201及び蓄光層配置工程S0202における処理の内容は、実施形態1において図1Jを用いて説明したベース準備工程及び蓄光層配置工程と同じである。
<実施形態3 製造手順:両面テープ層配置工程 主に請求項4に対応>
【0073】
本実施形態では、両面テープ層配置工程S0203において、蓄光層配置工程S0202にて配置した蓄光層の上方に両面テープ層を配置する。例えば、蓄光層が液状の蓄光材を流し込んで固化させることにより形成されるものである場合には、蓄光層が固化した後、この固化した蓄光層の表面に両面テープ層を貼り付けて配置する。
<実施形態3 製造手順:第一透光樹脂層配置工程 主に請求項4に対応>
【0074】
次に、第一透光樹脂層配置工程S0204において、両面テープ層配置工程S0203にて配置した両面テープ層の上方に第一透光樹脂層を配置する。例えば、第一透光樹脂層が液状の樹脂材料から成るものであれば、これを両面テープ層に強く密着させるべくローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
<実施形態3 製造手順:第二透光樹脂層配置工程 主に請求項4に対応>
【0075】
次いで、第二透光樹脂層配置工程S0205において、第一透光樹脂層配置工程S0204にて配置した第一透光樹脂層の上方に第二透光樹脂層を配置する。この配置は、例えば前述のポリカーボネイト樹脂にアルミナからなる骨材を混合配置した材料を用いる場合であれば、ローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
【0076】
なお、実施形態1において説明したように、上記した各工程をすべて工場内で行ってもよいし、その全部または一部を路面標示板の設置場所の現場で行ってもよい。このような設置方法については、後段の実施形態にて詳述する(実施形態4参照)。
<実施形態3 他の構成 主に請求項4に対応>
<実施形態3 両面テープ層によるベースと蓄光層との固定の追加>
<実施形態3 蓄光層上のグラフィック層の透明樹脂層による被覆の追加、及び、透明樹脂層を介した両面テープ層による蓄光層と第一透光樹脂層との固定>
【0077】
上記したように、本実施形態では、平面視が矩形のベースの上方に順次配置される蓄光層,第一透光樹脂層及び第二透光樹脂層のうちの蓄光層と第一透光樹脂層との間に両面テープ層を配置して、この両面テープ層を介して蓄光層及び第一透光樹脂層を固定した場合を説明したが、この構成に限定されるものではない。
他の構成例として、例えば、図1Bの断面図に相当する断面図である図2Cに示すように、ベース0210の上方に蓄光層0220,グラフィック層0250,第一透光樹脂層0230及び第二透光樹脂層0240を順次配置して成る路面標示板0200Cにおいて、両面テープ層0280を介して蓄光層0220と第一透光樹脂層0230とを固定するのに加えて、同じく両面テープ層0280Cを介してベース0210と蓄光層0220とを固定する構成とすることができる。この際、蓄光層0220及び第一透光樹脂層0230の間に位置するグラフィック層0250は、第一透光樹脂層0230との密着性を高めるための透明樹脂層0290(望ましくは蓄光層0220と同じ材料から成る樹脂層)で覆われており、したがって、本構成においては、両面テープ層0280は、蓄光層0220上の透過樹脂層0290と第一透光樹脂層0230とを固定するようになっている。
【0078】
このような構成を採用した場合には、ベース及び蓄光層、並びに、グラフィック層を配した蓄光層及び第一透光樹脂層の相互の密着性をより高め得ることとなる。
<実施形態3 効果 主に請求項4に対応>
【0079】
本実施形態の路面標示板によれば、蓄光層及び第一透光樹脂層を構成する各樹脂材料に好適な両面粘着テープを両面テープ層に採用することで、蓄光層及び第一透光樹脂層の相互の密着性をより高めることができ、その結果、割れの発生をより少なく抑えることが可能であるという優れた効果が得られる。
<実施形態4>
【0080】
本実施形態は、主に請求項6などに関する。
<実施形態4 概要 主に請求項6に対応>
【0081】
本実施形態は路面標示板の設置方法に関するものであり、実施形態3で示した路面標示板の製造工程のうち、第一透光樹脂層の配置までを製品出荷前の工程として製造工場内で行い、第二透光樹脂層の配置を路面標示板の設置現場で行うことを特徴としている。
<実施形態4 製造手順 主に請求項6に対応>
【0082】
次に、本実施形態の路面標示板の製造手順について説明する。
<実施形態4 製造手順:ベース準備工程 主に請求項6に対応>
図3Aは、本実施形態における路面標示板の製造手順の一例を示す流れ図であり、まず、ベース準備工程S0301において、ベースを準備する。
<実施形態4 製造手順:蓄光層配置工程 主に請求項6に対応>
【0083】
次いで、蓄光層配置工程S0302において、ベース準備工程S0301で準備したベースの上方に蓄光層を配置する。具体的には、例えば、ベースが中央に凹部を有する盆状のものである場合には、この凹部に液状の蓄光樹脂を流し込んで固化させることにより配置する。また。ベースが平板状のものである場合には、予めベースの平面形状と略同一形状に形成した蓄光樹脂からなる蓄光層をベースの上方に積層配置する。
<実施形態4 製造手順:両面テープ層配置工程 主に請求項6に対応>
【0084】
次いで、両面テープ層配置工程S0303において、蓄光層配置工程S0302にて配置した蓄光層の上方に両面テープ層を配置する。例えば、蓄光層が液状の蓄光材を流し込んで固化させることにより形成されるものである場合には、蓄光層が固化した後、この固化した蓄光層の表面に両面テープ層の一面を貼り付けて配置する。
<実施形態4 製造手順:第一透光樹脂層配置工程 主に請求項6に対応>
【0085】
続いて、第一透光樹脂層配置工程S0304において、両面テープ層配置工程S0303にて配置した両面テープ層の上方にすべり止材を含まない第一透光樹脂層を配置する。例えば、第一透光樹脂層が液状の樹脂材料から成るものであれば、これを蓄光層に密着させるべくローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
【0086】
本実施形態において、上記した各工程は、製品出荷前の工程として製造工場内で行われる。
<実施形態4 製造手順:現場設置工程、第二透光樹脂層配置工程 主に請求項6に対応>
【0087】
次に、上記各工程S0301~S0304を順次経て製造された完成前の路面標示板を工場から現場に運搬した後、現場設置工程S0305において、第二透光樹脂層の配置を含む設置を現場にて行う。すなわち、現場設置工程には、第二透光樹脂層を配置する第二透光樹脂層配置工程S0306が含まれる。
<実施形態4 製造手順:現場設置工程、第二透光樹脂層配置工程に先立つ設置位置の清掃作業及び平坦化作業 主に請求項6に対応>
【0088】
ここで、上記現場設置工程S0305を行う路面標示板の設置現場では、第二透光樹脂層配置工程S0306に先立って、まず、路面標示板の設置位置を確定したうえで、設置位置の清掃作業、及び、これに続く設置位置の平坦化作業を行う必要がある。この平坦化作業は、設置位置の凹凸等を取り除いて平らにする作業であり、平らになった設置位置に、ローラなどを用いて、例えば、前述のポリカーボネイト樹脂を母材とする透明樹脂を塗布する。
<実施形態4 製造手順:現場設置工程、第二透光樹脂層配置工程における第二透光樹脂層の設置の仕方 主に請求項6に対応>
【0089】
次に、このように平坦化されて前述のポリカーボネイト樹脂を母材とする透明樹脂が塗布された設置位置の路面上に、製造工場から設置現場に運搬された完成前路面標示板を置いて透明樹脂を乾燥させることで、完成前路面標示板を路面上に固定する。この際、既に乾燥させた透明樹脂に対して、両面テープを介して完成前路面標示板を固定するようにしてもよい。
また、透明樹脂に代えて、平らになった設置位置に接着剤を塗布してもよく、この場合には、完成前路面標示板を置いて接着剤を乾燥させることで、完成前路面標示板を路面上に固定する。この際、既に乾燥させた接着剤、或いは、乾燥前の接着剤に対して、両面テープを介して完成前路面標示板を固定するようにしてもよい。
<実施形態4 製造手順:現場設置工程、第二透光樹脂層配置工程における第二透光樹脂層の一設置例 主に請求項6に対応>
【0090】
そして、現場設置工程S0305における第二透光樹脂層配置工程S0306において、第一透光樹脂層配置工程S0304で配置した第一透光樹脂層の上方に第二透光樹脂層を配置するにあたっては、例えば、図3Bに示すように、上述したようにして設置現場の路面0360上にセットされた完成前路面標示板0300A(平板状のベース0310の上方に蓄光層0320,両面テープ層0380及び第一透光樹脂層0330を順次配置した路面標示板)に対して、最上層に位置する第一透光樹脂層0330と同じ平面形状を成すように第二透光樹脂層0340を単に積層配置する構成とすることができる。
<実施形態4 製造手順:現場設置工程、第二透光樹脂層配置工程における第二透光樹脂層の他の設置例 主に請求項6に対応>
【0091】
また、図3Cに示すように、上述したようにして設置現場の路面0360上にセットされた完成前路面標示板0300Aに対して、最上層に位置する第一透光樹脂層0330の全体に加えて完成前路面標示板0300Aを囲む路面0360の一部をも覆うように第二透光樹脂層0340を配置する構成とすることもできる。この第二透光樹脂層0340として、例えば前述のポリカーボネイト樹脂を母材とする透明樹脂を用いるのであれば、ローラなどを用いて塗布して、乾燥させることにより配置する。
【0092】
このように、完成前路面標示板0300Aの全体のみならず完成前路面標示板0300Aを囲む路面0360の一部をも覆うように第二透光樹脂層0340の樹脂材料を塗布すると、第二透光樹脂層0340の周縁部0340bが路面0360に密着することになる。つまり、路面標示板0300を構成するベース0310,蓄光層0320,両面テープ層0380,第一透光樹脂層0330及び第二透光樹脂層0340の各層間に塵や水分が入り込むことを阻止し得ることとなり、防塵性及び防水性が高まることとなる。この際、第二透光樹脂層0340の周縁部0340bを外側に向けてなだらかに傾斜するように形成することが望ましく、このように形成することで、歩行者等が完成品である路面標示板0300につまずいて転倒するといった事態の発生を防ぐことができる。
<実施形態4 効果 主に請求項6に対応>
【0093】
本実施形態によれば、全体の薄型化を実現しつつ、強く踏んだり自動車等の重量物が通過したりしても割れの発生を少なく抑え得る路面標示板を製造して設置するに際して、設置現場環境に応じて柔軟に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0094】
0100 路面標示板
0110 ベース
0120 蓄光層
0130 第一透光樹脂層
0140 第二透光樹脂層
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C