(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121184
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】発光装置、表示装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20240830BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240830BHJP
H01L 33/42 20100101ALI20240830BHJP
H01L 33/36 20100101ALI20240830BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20240830BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20240830BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240830BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240830BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20240830BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20240830BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20240830BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240830BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/32
H01L33/42
H01L33/36
H01L33/08
H01L33/44
H01S5/183
H01S5/343 610
H01S5/323 610
H01S5/042 612
H01S5/42
H01S5/022
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028145
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸一
【テーマコード(参考)】
5F142
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA32
5F142CD02
5F142CF13
5F142DB12
5F142DB24
5F142DB32
5F142DB34
5F142DB38
5F142DB40
5F142DB54
5F142EA31
5F142GA02
5F142GA21
5F173AC15
5F173AC26
5F173AC52
5F173AD06
5F173AH22
5F173AK08
5F173AK13
5F173AK21
5F173AL03
5F173AL06
5F173AL14
5F173AL19
5F173AR14
5F173AR63
5F173MA06
5F173MA10
5F241AA03
5F241AA21
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA40
5F241CA49
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5F241CA65
5F241CA66
5F241CA88
5F241CA92
5F241CA93
5F241CB11
5F241CB15
5F241CB27
5F241CB36
5F241FF06
5F241FF11
(57)【要約】
【課題】所望の波長を有する光の取り出し効率を向上できる発光装置を提供する。
【解決手段】n型の導電型を有する第1半導体部と、p型の導電型を有する第2半導体部と、発光部と、前記第2半導体部の前記発光部とは反対側に設けられ、前記発光部で発生した光を共振させる共振部と、を有し、前記共振部は、前記第2半導体部に接する金属電極と、前記金属電極の前記第2半導体部とは反対側に設けられた透明電極と、を有し、前記金属電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差は、前記透明電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差よりも小さく、前記共振部は、第1界面と第2界面との間で、前記発光部で発生した光を共振させ、前記第1界面は、前記金属電極と前記透明電極との界面であり、前記第2界面は、前記第1界面よりも、前記金属電極とは反対側に位置している、発光装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型の導電型を有する第1半導体部と、
p型の導電型を有する第2半導体部と、
前記第1半導体部と前記第2半導体部との間に設けられた発光部と、
前記第2半導体部の前記発光部とは反対側に設けられ、前記発光部で発生した光を共振させる共振部と、
を有し、
前記共振部は、
前記第2半導体部に接する金属電極と、
前記金属電極の前記第2半導体部とは反対側に設けられた透明電極と、
を有し、
前記金属電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差は、前記透明電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差よりも小さく、
前記共振部は、第1界面と第2界面との間で、前記発光部で発生した光を共振させ、
前記第1界面は、前記金属電極と前記透明電極との界面であり、
前記第2界面は、前記第1界面よりも、前記金属電極とは反対側に位置している、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記金属電極は、前記発光部で発生した光を透過させる、発光装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2半導体部の材質は、GaNであり、
前記金属電極の材質は、Auであり、
前記透明電極の材質は、ITOである、発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記共振部は、前記透明電極の前記金属電極とは反対側に設けられた絶縁部を有し、
前記絶縁部は、前記発光部で発生した光を透過させ、
前記第2界面は、前記絶縁部の前記透明電極とは反対側の面である、発光装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記絶縁部は、前記透明電極と接し、
前記絶縁部の材質は、SiNである、発光装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1半導体部、前記第2半導体部、前記発光部、および前記共振部を有する発光素子を複数有し、
複数の前記発光素子のうちの第1発光素子の前記発光部で発生した光の波長は、複数の前記発光素子のうちの第2発光素子の前記発光部で発生した光の波長よりも長く、
前記第1発光素子の前記第1界面と前記第2界面との間の距離は、前記第2発光素子の前記第1界面と前記第2界面との間の距離よりも大きい、発光装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1発光素子の前記絶縁部の厚さは、前記第2発光素子の前記絶縁部の厚さよりも大きく、
前記第1発光素子の前記透明電極の厚さ、および前記第2発光素子の前記透明電極の厚さは、互いに同じである、発光装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記第2界面は、前記透明電極の前記金属電極とは反対側の面である、発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置を有する、表示装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置を有する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、表示装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光ダイオードや半導体レーザーなどの発光装置は、表示装置などの光源に適用される。
【0003】
例えば特許文献1には、n型クラッド層、発光層、p型クラッド層、および透明導電膜層を有する半導体発光ダイオードにおいて、透明導電膜層の膜厚を制御することにより、p型クラッド層と透明導電膜層との界面、ならびに透明導電膜層と空気層との界面における反射を抑えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような発光装置では、所望の波長を有する光の取り出し効率を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
n型の導電型を有する第1半導体部と、
p型の導電型を有する第2半導体部と、
前記第1半導体部と前記第2半導体部との間に設けられた発光部と、
前記第2半導体部の前記発光部とは反対側に設けられ、前記発光部で発生した光を共振させる共振部と、
を有し、
前記共振部は、
前記第2半導体部に接する金属電極と、
前記金属電極の前記第2半導体部とは反対側に設けられた透明電極と、
を有し、
前記金属電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差は、前記透明電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差よりも小さく、
前記共振部は、第1界面と第2界面との間で、前記発光部で発生した光を共振させ、
前記第1界面は、前記金属電極と前記透明電極との界面であり、
前記第2界面は、前記第1界面よりも、前記金属電極とは反対側に位置している。
【0007】
本発明に係る表示装置の一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【0008】
本発明に係る電子機器の一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図4】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図5】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図6】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【
図7】本実施形態に係るディスプレイを模式的に示す平面図。
【
図8】本実施形態に係るディスプレイを模式的に示す断面図。
【
図9】本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイを模式的に示す斜視図。
【
図10】本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの像形成装置および導光装置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
1.1.1. 構成
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0012】
発光装置100は、
図1に示すように、例えば、基板10と、バッファー層20と、第1半導体部30と、発光部40と、第2半導体部50と、下部電極60と、共振部70と、絶縁層80と、を有している。発光装置100は、例えば、半導体発光ダイオード、半導体レーザーである。
【0013】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0014】
バッファー層20は、基板10上に設けられている。バッファー層20は、n型の導電型を有している。バッファー層20は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。なお、図示はしないが、バッファー層20上には、第1半導体部30、発光部40、および第2半導体部50を成長させるためのマスク層が設けられていてもよい。マスク層は、例えば、チタン層、酸化シリコン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0015】
なお、本明細書では、第1半導体部30と発光部40との積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光部40を基準とした場合、発光部40から第2半導体部50に向かう方向を「上」とし、発光部40から第1半導体部30に向かう方向を「下」として説明する。
【0016】
第1半導体部30は、バッファー層20上に設けられている。第1半導体部30は、バッファー層20と発光部40との間に設けられている。第1半導体部30は、バッファー層20と一体に設けられていてもよい。第1半導体部30は、n型の導電型を有している。第1半導体部30は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。第1半導体部30、発光部40、および第2半導体部50は、例えば、III族窒化物半導体であり、ウルツ鉱型結晶構造を有している。
【0017】
発光部40は、第1半導体部30上に設けられている。発光部40は、第1半導体部30と第2半導体部50との間に設けられている。発光部40は、不純物が意図的にドープされていないi型の導電型を有している。発光部40は、電流が注入されることで光を発生させる。発光部40は、例えば、ウェル層と、バリア層と、を有している。ウェル層およびバリア層は、i型の半導体層である。ウェル層は、例えば、InGaN層である。バリア層は、例えば、GaN層である。発光部40は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0018】
なお、発光部40を構成するウェル層およびバリア層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光部40は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0019】
第2半導体部50は、発光部40上に設けられている。第2半導体部50は、発光部40と共振部70との間に設けられている。第2半導体部50は、p型の導電型を有している。第2半導体部50の材質は、例えば、不純物がドープされたGaNである。第2半導体部50は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1半導体部30および第2半導体部50は、発光部40に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0020】
なお、図示はしないが、第1半導体部30と発光部40との間、および発光部40と第2半導体部50との間の少なくとも一方に、i型のInGaN層およびGaN層からなるOCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、第2半導体部50は、p型のAlGaN層からなるEBL(Electron Blocking Layer)を有してもよい。
【0021】
下部電極60は、バッファー層20上に設けられている。バッファー層20は、下部電極60とオーミックコンタクトしていてもよい。下部電極60は、バッファー層20を介して、第1半導体部30と電気的に接続されている。なお、図示はしないが、下部電極60は、基板10の下に設けられていてもよい。
【0022】
下部電極60としては、例えば、バッファー層20側から、クロム(Cr)層、ニッケル(Ni)層、金(Au)層の順序で積層されたものなどを用いる。下部電極60は、発光部40に電流を注入するための一方の電極である。
【0023】
共振部70は、第2半導体部50上に設けられている。共振部70は、第2半導体部50の発光部40とは反対側に設けられている。共振部70は、金属電極72と、透明電極74と、を有している。
【0024】
金属電極72は、第2半導体部50上に設けられている。金属電極72は、第2半導体部50と透明電極74との間に設けられている。金属電極72は、第2半導体部50に接している。第2半導体部50は、金属電極72とオーミックコンタクトしていてもよい。
【0025】
金属電極72の形状は、例えば、層状である。金属電極72の厚さは、透明電極74の厚さよりも小さい。金属電極72は、発光部40で発生した光を透過させる。金属電極72は、発光部40で発生した光を透過させる程度の厚さを有している。なお、「厚さ」とは、積層方向の大きさのことをいう。
【0026】
金属電極72の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差は、透明電極74の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差よりも小さい。金属電極72の抵抗率は、透明電極74の抵抗率よりも低い。金属電極72の材質は、例えば、Au、Ni、白金(Pt)である。金属電極72の材質は、好ましくは、Auである。
【0027】
透明電極74は、金属電極72上に設けられている。透明電極74は、金属電極72の第2半導体部50とは反対側に設けられている。透明電極74は、金属電極72に接している。透明電極74の形状は、例えば、層状である。透明電極74は、発光部40で発生した光を透過させる。図示の例では、透明電極74は、共振部70の上面を構成している。
【0028】
透明電極74の屈折率は、例えば、金属電極72の屈折率の屈折率よりも高い。透明電極74の材質は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)にアルミニウム(Al)がドープされたAZO、ZnOにガリウム(Ga)がドープされたGZOである。透明電極74の材質は、好ましくは、ITOである。金属電極72および透明電極74は、発光部40に電流を注入するための他方の電極を構成している。金属電極72および透明電極74は、下部電極60よりも上方に設けられた上部電極を構成している。
【0029】
共振部70は、第1界面76と、第2界面78と、の間で、発光部40で発生した光を共振させる。第1界面76は、金属電極72と、透明電極74と、の界面である。第2界面78は、例えば、透明電極74と、透明電極74と屈折率が異なる異屈折率部と、の界面である。異屈折率部は、例えば、空気で構成されている。第2界面78は、第1界面76よりも、金属電極72側とは反対側に位置している。第2界面78は、透明電極74の金属電極72とは反対側の面である。図示の例では、第2界面78は、第1界面76よりも上方に位置している。積層方向において、第2界面78の位置は、透明電極74の上面の位置と同じである。第1界面76は、第2半導体部50と第2界面78との間に設けられている。第1界面76と第2界面78との間の距離は、透明電極74の厚さである。
【0030】
なお、異屈折率部は、空気に限定されず、空気以外の気体で構成されていてもよい。また、異屈折率部は、気体に限定されず、透明電極74と屈折率が異なる部材によって構成されていてもよい。
【0031】
透明電極74の屈折率が金属電極72の屈折率および異屈折率部の屈折率よりも高い場合、第1界面76と第2界面78との間の距離と、透明電極74の屈折率と、の積は、発光装置100から取り出したい光の波長の2分の1の整数倍である。第1界面76および第2界面78では、光の位相が変化しない。したがって、第1界面76および第2界面78は、発光装置100から取り出したい波長の波の腹に位置するように設定される。
【0032】
光の波長が632.8nmの場合、ITOの屈折率は、1.858であり、Auの屈折率は、0.181であり、GaNの屈折率は、2.38であり、空気の屈折率は、1.000である。
【0033】
光が屈折率n1の物質から屈折率n2の物質に垂直入射する場合、両物質の界面における反射率Rrefは、下記式(1)で表される。下記式(1)に示すように、両物質の屈折率差が大きいほど、両物質の界面における反射率は、高くなる。
【0034】
【0035】
絶縁層80は、バッファー層20上に設けられている。絶縁層80は、積層方向からみて、例えば、第1半導体部30、発光部40、第2半導体部50、下部電極60、および共振部70を囲んでいる。絶縁層80は、例えば、酸化シリコン層、ポリイミド層などである。
【0036】
絶縁層80には、第1コンタクトホール82および第2コンタクトホール84が形成されている。第1コンタクトホール82は、積層方向からみて、下部電極60と重なっている。第1コンタクトホール82によって、下部電極60は、露出されている。第2コンタクトホール84は、積層方向からみて、共振部70と重なっている。第2コンタクトホール84によって、共振部70は、露出されている。図示の例では、第2コンタクトホール84によって、透明電極74は、露出されている。
【0037】
なお、図示はしないが、絶縁層80上には、下部電極60と電気的に接続された第1パッドと、透明電極74と電気的に接続された第2パッドと、が設けられていてもよい。第1パッドおよび第2パッドは、それぞれ、ワイヤーボンディングやFPC(Flexible printed circuits)などを介して、電源と電気的に接続されていてもよい。
【0038】
また、図示はしないが、第1半導体部30、発光部40、および第2半導体部50は、複数の柱状部を構成していてもよい。柱状部は、ナノスケールを有するナノ構造体であってもよい。複数の柱状部は、フォトニック結晶の効果を発現してもよい。
【0039】
また、上記では、InGaN系の発光部40について説明したが、発光部40としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0040】
1.1.2. 動作
発光装置100では、p型の第2半導体部50、i型の発光部40、およびn型の第1半導体部30により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、下部電極60と、金属電極72および透明電極74で構成される上部電極と、の間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光部40に電流が注入されて発光部40において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光部40で発生した光は、共振部70に至り、共振部70は、第1界面76と第2界面78との間で、発光部40で発生した光を、多重反射させて、定在波を形成し、共振させる。そして、発光装置100は、所定の波長の光を、
図1に示す矢印Aのように、共振部70の上面から積層方向に出射する。発光装置100は、共振部70における共振により、レーザー光を出射してもよい。
【0041】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層20との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。反射層は、発光部40から基板10側に向かう光を、共振部70側に反射させる。
【0042】
1.1.3. 作用効果
発光装置100では、n型の導電型を有する第1半導体部30と、p型の導電型を有する第2半導体部50と、第1半導体部30と第2半導体部50との間に設けられた発光部40と、第2半導体部50の発光部40とは反対側に設けられ、発光部40で発生した光を共振させる共振部70と、を有する。共振部70は、第2半導体部50に接する金属電極72と、金属電極72の第2半導体部50とは反対側に設けられた透明電極74と、を有する。金属電極72の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差は、透明電極74の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差よりも小さい。共振部70は、第1界面76と第2界面78との間で、発光部40で発生した光を共振させ、第1界面76は、金属電極72と透明電極74との界面であり、第2界面78は、第1界面76よりも、金属電極72とは反対側に位置している。
【0043】
そのため、発光装置100では、例えば共振部が設けられていない場合に比べて、所望の波長を有する光の取り出し効率を向上できる。換言すると、発光効率を向上できる。これにより、発光のむらを低減でき、波長の均一性が高い光を出射できる。例えば発光部40におけるバンドギャップの変化により、発光部40で所望の波長からずれた光が発生したとしても、発光装置100では、共振部70によって、所望の波長を有する光の取り出し効率を向上できる。発光装置100は、所望の波長を有する光のみを出射してもよい。
【0044】
さらに、発光装置100では、金属電極72の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差は、透明電極74の仕事関数と第2半導体部50の仕事関数との差よりも小さいため、共振部70と第2半導体部50との間の接触抵抗を低減できる。第2半導体部50は、n型よりも抵抗率の高いp型の導電型を有するため、共振部70と第2半導体部50との間の接触抵抗の低減が効果的である。
【0045】
発光装置100では、金属電極72は、発光部40で発生した光を透過させる。そのため、発光装置100では、発光部40で発生した光であって共振部70に至らない光を低減できる。
【0046】
発光装置100では、第2半導体部50の材質は、GaNであり、金属電極72の材質は、Auであり、透明電極74の材質は、ITOである。上記のように、ITOの屈折率とAuの屈折率との差は、ITOの屈折率とGaNの屈折率との差よりも大きい。上記式(1)のように、屈折率の差が大きいほど、光の反射率は、高くなる。そのため、発光装置100では、例えばITOとGaNとの間の界面で光を反射させる場合に比べて、第1界面76における光の反射率を高くすることができる。これにより、所望の波長を有する光の取り出し効率を、より向上できる。
【0047】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図2は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0048】
図2に示すように、基板10上に、バッファー層20をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0049】
次に、バッファー層20上に、図示しないマスク層を形成する。マスク層は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによって形成される。
【0050】
次に、マスク層をマスクとして、バッファー層20上に、第1半導体部30、発光部40、および第2半導体部50を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0051】
図1に示すように、第2半導体部50上に、金属電極72を形成する。次に、金属電極72上に、透明電極74を形成する。金属電極72および透明電極74は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などによって形成される。本工程により、共振部70が形成される。
【0052】
次に、バッファー層20上に、下部電極60を形成する。下部電極60は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などによって形成される。なお、下部電極60を形成する工程と、共振部70を形成する工程と、の順序は、特に限定されない。
【0053】
次に、バッファー層20、下部電極60、および共振部70を覆うように、絶縁層80を形成する。絶縁層80は、例えば、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0054】
次に、絶縁層80をパターニングして、第1コンタクトホール82および第2コンタクトホール84を形成する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって行われる。
【0055】
以上の工程により、発光装置100を製造できる。
【0056】
1.3. 発光装置の変形例
次に、第1実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第1実施形態の変形例に係る発光装置110を模式的に示す断面図である。以下、第1実施形態の変形例に係る発光装置110において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
発光装置110では、
図3に示すように、発光素子112を複数有している点において、上述した発光装置100と異なる。
【0058】
発光素子112は、バッファー層20と、第1半導体部30と、発光部40と、第2半導体部50と、下部電極60と、共振部70と、を有している。発光素子112の数は、複数であれば、特に限定されない。
【0059】
複数の発光素子112は、1つの基板10上に設けられている。隣り合う発光素子112において、第1半導体部30の間、発光部40の間、第2半導体部50の間、および共振部70の間には、絶縁層80が設けられている。図示の例では、複数の発光素子112において、バッファー層20は、共通の層である。複数の発光素子112において、下部電極60は、共通の電極である。
【0060】
なお、図示はしないが、下部電極60は、共通の電極ではなく、複数の発光素子112に対して個別に設けられていてもよい。この場合、隣り合う発光素子112のバッファー層20は、互いに離隔している。
【0061】
複数の発光素子112のうちの第1発光素子112Rは、例えば、赤色光を出射する。複数の発光素子112のうちの第2発光素子112Gは、例えば、緑色光を出射する。複数の発光素子112のうちの第3発光素子112Bは、例えば、青色光を出射する。第1発光素子112Rの発光部40で発生した光の波長は、第1発光素子112Rの発光部40で発生した光の波長よりも長い。第2発光素子112Gの発光部40で発生した光の波長は、第3発光素子112Bの発光部40で発生した光の波長よりも長い。
【0062】
第1発光素子112Rの第1界面76と第2界面78との間の距離D1は、第2発光素子112Gの第1界面76と第2界面78との間の距離D2よりも大きい。距離D2は、第3発光素子112Bの第1界面76と第2界面78との間の距離D3よりも大きい。
【0063】
図示の例では、距離D1は、第1発光素子112Rの透明電極74の厚さである。距離D2は、第2発光素子112Gの透明電極74の厚さである。距離D3は、第3発光素子112Bの透明電極74の厚さである。第1発光素子112Rの金属電極72の厚さ、第2発光素子112Gの金属電極72の厚さ、および第3発光素子112Bの金属電極72の厚さは、例えば、互いに等しい。
【0064】
発光装置110では、第1半導体部30、第2半導体部50、発光部40、および共振部70を有する発光素子112を複数有する。複数の発光素子112のうちの第1発光素子112Rの発光部40で発生した光の波長は、複数の発光素子112の第2発光素子112Gの発光部40で発生した光の波長よりも長く、第1発光素子112Rの第1界面76と第2界面78との間の距離D1は、第2発光素子112Gの第1界面76と第2界面78との間の距離D2よりも大きい。そのため、発光装置110では、例えば距離D1が距離D2と同じ場合に比べて、第1発光素子112Rから出射される光の波長を、第2発光素子112Gから出射される光の波長よりも、より確実に長くすることができる。
【0065】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図4は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
発光装置200では、
図4に示すように、共振部70は、絶縁部75を有している点で、上述した発光装置100と異なる。
【0067】
絶縁部75は、透明電極74上に設けられている。絶縁部75は、透明電極74の金属電極72とは反対側に設けられている。絶縁部75は、透明電極74と接している。透明電極74は、金属電極72と絶縁部75との間に設けられている。図示の例では、絶縁部75は、共振部70の上面を構成している。絶縁部75の厚さは、例えば、透明電極74の厚さよりも大きい。第2コンタクトホール84によって、絶縁部75は、露出されている。
【0068】
絶縁部75は、発光部40で発生した光を透過させる。絶縁部75の屈折率は、例えば、透明電極74の屈折率よりも、高くてもよいし、低くてもよい。絶縁部75の屈折率は、例えば、異屈折率部の屈折率よりも高い。絶縁部75の材質は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)、酸化窒化シリコン(SiON)である。絶縁部75の材質は、好ましくは、SiNである。
【0069】
第2界面78は、例えば、絶縁部75と、絶縁部75と屈折率が異なる異屈折率部と、の界面である。積層方向において、第2界面78の位置は、絶縁部75の上面の位置と同じである。第2界面78は、絶縁部75の透明電極74とは反対側の面である。図示の例では、第1界面76と第2界面78との間の距離は、透明電極74の厚さと、絶縁部75の厚さと、の和である。
【0070】
透明電極74の屈折率が金属電極72の屈折率よりも高く、絶縁部75の屈折率が異屈折率部の屈折率よりも高い場合、透明電極74の厚さと透明電極74の屈折率との積と、絶縁部75の厚さと絶縁部75の屈折率との積と、の和は、発光装置100から取り出したい光の波長の2分の1の整数倍である。第1界面76および第2界面78では、光の位相が変化しない。したがって、第1界面76および第2界面78は、発光装置100から取り出したい波長の波の腹に位置するように設定される。
【0071】
光の波長が632.8nmの場合、SiO2の屈折率は、1.457であり、SiNの屈折率は、2.023である。
【0072】
発光装置200では、共振部70は、透明電極74の金属電極72とは反対側に設けられた絶縁部75を有し、絶縁部75は、発光部40で発生した光を透過させ、第2界面78は、絶縁部75の透明電極74とは反対側の面である。そのため、発光装置200では、絶縁部75によって透明電極74を保護できる。
【0073】
発光装置200では、絶縁部75は、透明電極74と接し、絶縁部75の材質は、SiNである。そのため、発光装置200では、例えば絶縁部の材質がSiO2である場合に比べて、透明電極74の屈折率と絶縁部75の屈折率との差を小さくすることができる。これにより、透明電極74と絶縁部75との界面における光の反射を低減できる。その結果、所望の波長を有する光の取り出し効率を、より向上できる。
【0074】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について説明する。
【0075】
発光装置200の製造方法では、透明電極74上に、絶縁部75を形成する。絶縁部75は、例えば、スパッタ法、CVD法によって形成される。
【0076】
上記のこと以外は、発光装置200の製造方法は、上述した発光装置100の製造方法と、基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0077】
2.3. 発光装置の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態の変形例に係る発光装置210において、上述した第1実施形態に係る発光装置100、第1実施形態の変形例に係る発光装置110、第2実施形態に係る発光装置200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
発光装置210では、
図5に示すように、発光素子112を複数有している点において、上述した発光装置200と異なる。
【0079】
第1発光素子112Rの透明電極74の厚さT1、第2発光素子112Gの透明電極74の厚さT2、第3発光素子112Bの透明電極74の厚さT3は、例えば、互いに同じである。
【0080】
第1発光素子112Rの絶縁部75の厚さL1は、第2発光素子112Gの絶縁部75の厚さL2よりも大きい。そのため、第1発光素子112Rの第1界面76と第2界面78との間の距離D1は、第2発光素子112Gの第1界面76と第2界面78との間の距離D2よりも大きい。厚さL2は、第3発光素子112Bの絶縁部75の厚さL3よりも大きい。そのため、距離D2は、第3発光素子112Bの第1界面76と第2界面78との間の距離D3よりも大きい。
【0081】
発光装置210では、第1発光素子112Rの絶縁部75の厚さL1は、第2発光素子112Gの絶縁部75の厚さL2よりも大きく、第1発光素子112Rの透明電極74の厚さT1、および第2発光素子112Gの透明電極74の厚さT2は、互いに同じである。そのため、発光装置210では、例えば厚さT1と厚さT2とが異なる場合に比べて、第1発光素子112Rの発光部40に注入される電流量と、第2発光素子112Gの発光部40に注入される電流量と、の差を小さくすることができる。これにより、第1発光素子112Rの発光部40で発生した光の強度と、第2発光素子112Gの発光部40で発生した光の強度と、の差を小さくすることができる。
【0082】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る表示装置としてのプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図6は、第3実施形態に係るプロジェクター700を模式的に示す図である。
【0083】
プロジェクター700は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0084】
プロジェクター700は、図示しない筐体と、筐体内に設けられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、
図6では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化して図示している。
【0085】
プロジェクター700は、さらに、例えば、筐体内に設けられた、第1光学素子702Rと、第2光学素子702Gと、第3光学素子702Bと、第1光変調装置704Rと、第2光変調装置704Gと、第3光変調装置704Bと、投射装置708と、を有している。第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置708は、例えば、投射レンズである。
【0086】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子702Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子702Rによって集光される。なお、第1光学素子702Rは、集光以外の機能を有していてもよい。第2光学素子702Gおよび第3光学素子702Bについても、集光以外の機能を有していてもよい。
【0087】
第1光学素子702Rによって集光された光は、第1光変調装置704Rに入射する。第1光変調装置704Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置708は、第1光変調装置704Rによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0088】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子702Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子702Gによって集光される。
【0089】
第2光学素子702Gによって集光された光は、第2光変調装置704Gに入射する。第2光変調装置704Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置708は、第2光変調装置704Gによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0090】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子702Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子702Bによって集光される。
【0091】
第3光学素子702Bによって集光された光は、第3光変調装置704Bに入射する。第3光変調装置704Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置708は、第3光変調装置704Bによって形成された像を拡大してスクリーン710に投射する。
【0092】
プロジェクター700は、さらに、例えば、第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bから出射された光を合成して投射装置708に導くクロスダイクロイックプリズム706を有している。
【0093】
第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム706に入射する。クロスダイクロイックプリズム706は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置708によりスクリーン710上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0094】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置704R、第2光変調装置704G、および第3光変調装置704Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置708は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン710に投射してもよい。
【0095】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0096】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0097】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る表示装置としてのディスプレイについて、図面を参照しながら説明する。
図7は、第4実施形態に係るディスプレイ800を模式的に示す平面図である。
図8は、第4実施形態に係るディスプレイ800を模式的に示す断面図である。なお、
図7では、互いに直交する2つの軸として、X軸およびY軸を図示している。
【0098】
ディスプレイ800は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0099】
ディスプレイ800は、画像を表示する表示装置である。画像には、文字情報のみを表示するものが含まれる。ディスプレイ800は、自発光型のディスプレイである。ディスプレイ800は、
図7および
図8に示すように、例えば、回路基板810と、レンズアレイ820と、ヒートシンク830と、を有している。
【0100】
回路基板810には、発光装置100を駆動させるための駆動回路が搭載されている。駆動回路は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを含む回路である。駆動回路は、例えば、入力された画像情報に基づいて、発光装置100を駆動させる。図示はしないが、回路基板810上には、回路基板810を保護するための透光性の基板が配置されている。
【0101】
回路基板810は、例えば、表示領域812と、データ線駆動回路814と、走査線駆動回路816と、制御回路818と、を有している。
【0102】
表示領域812は、複数の画素Pで構成されている。画素Pは、図示の例では、X軸およびY軸に沿って配列されている。
【0103】
図示はしないが、回路基板810には、複数の走査線と複数のデータ線が設けられている。例えば、走査線はX軸に沿って延び、データ線はY軸に沿って延びている。走査線は、走査線駆動回路816に接続されている。データ線は、データ線駆動回路814に接続されている。走査線とデータ線の交点に対応して画素Pが設けられている。
【0104】
1つの画素Pは、例えば、1つの発光装置100と、1つのレンズ822と、図示しない画素回路と、を有している。画素回路は、画素Pのスイッチとして機能するスイッチング用トランジスターを有し、スイッチング用トランジスターのゲートが走査線に接続され、ソースまたはドレインの一方がデータ線に接続されている。
【0105】
データ線駆動回路814および走査線駆動回路816は、画素Pを構成する発光装置100の駆動を制御する回路である。制御回路818は、画像の表示を制御する。
【0106】
制御回路818には、上位回路から画像データが供給される。制御回路818は、当該画像データに基づく各種信号をデータ線駆動回路814および走査線駆動回路816に供給する。
【0107】
走査線駆動回路816が走査信号をアクティブにすることで走査線が選択されると、選択された画素Pのスイッチング用トランジスターがオンになる。このとき、データ線駆動回路814が、選択された画素Pにデータ線からデータ信号を供給することで、選択された画素Pの発光装置100がデータ信号に応じて発光する。
【0108】
レンズアレイ820は、複数のレンズ822を有している。レンズ822は、例えば、1つの発光装置100に対して、1つ設けられている。発光装置100から出射された光は、1つのレンズ822に入射する。
【0109】
ヒートシンク830は、回路基板810に接触している。ヒートシンク830の材質は、例えば、銅、アルミニウムなどの金属である。ヒートシンク830は、発光装置100で発生した熱を、放熱する。
【0110】
5. 第5実施形態
5.1. 全体の構成
次に、本実施形態に係る電子機器としてのヘッドマウントディスプレイについて、図面を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ900を模式的に示す斜視図である。
【0111】
ヘッドマウントディスプレイ900は、
図9に示すように、眼鏡のような外見を有する頭部装着型のディスプレイである。ヘッドマウントディスプレイ900は、観察者の頭部に装着される。観察者とは、ヘッドマウントディスプレイ900を使用する使用者のことである。ヘッドマウントディスプレイ900は、観察者に対して虚像による映像光を視認させることができるとともに、外界像をシースルーで視認させることができる。
【0112】
ヘッドマウントディスプレイ900は、例えば、第1表示部910aと、第2表示部910bと、フレーム920と、第1テンプル930aと、第2テンプル930bと、を有している。
【0113】
第1表示部910aおよび第2表示部910bは、画像を表示する。具体的には、第1表示部910aは、観察者の右眼用の虚像を表示する。第2表示部910bは、観察者の左眼用の虚像を表示する。表示部910a,910bは、例えば、像形成装置911と、導光装置915と、を有している。
【0114】
像形成装置911は、画像光を形成する。像形成装置911は、例えば、光源や投射装置などの光学系と、外部部材912と、を有している。外部部材912は、光源および投射装置を収容している。
【0115】
導光装置915は、観察者の眼前を覆う。導光装置915は、像形成装置911で形成された映像光を導光させるとともに、外界光と映像光とを重複して観察者に視認させる。なお、像形成装置911および導光装置915の詳細については、後述する。
【0116】
フレーム920は、第1表示部910aおよび第2表示部910bを支持している。フレーム920は、例えば、表示部910a,910bを囲んでいる。図示の例では、第1表示部910aの像形成装置911は、フレーム920の一方の端部に取り付けられている。第2表示部910bの像形成装置911は、フレーム920の他方の端部に取り付けられている。
【0117】
第1テンプル930aおよび第2テンプル930bは、フレーム920から延在している。図示の例では、第1テンプル930aは、フレーム920の一方の端部から延在している。第2テンプル930bは、フレーム920の他方の端部から延在している。
【0118】
第1テンプル930aおよび第2テンプル930bは、ヘッドマウントディスプレイ900が観察者に装着された場合に、観察者の耳に懸架される。テンプル930a,930b間に、観察者の頭部が位置する。
【0119】
5.2. 像形成装置および導光装置
図10は、ヘッドマウントディスプレイ900の第1表示部910aの像形成装置911および導光装置915を模式的に示す図である。なお、第1表示部910aと第2表示部910bとは、基本的に同じ構成を有している。したがって、以下の第1表示部910aの説明は、第2表示部910bに適用できる。
【0120】
像形成装置911は、
図10に示すように、例えば、光源としての発光装置100と、光変調装置913と、結像用の投射装置914と、を有している。
【0121】
光変調装置913は、発光装置100から入射した光を、画像情報に応じて変調して、映像光を出射する。光変調装置913は、透過型の液晶ライトバルブである。なお、発光装置100は、入力された画像情報に応じて発光する自発光型の発光装置であってもよい。この場合、光変調装置913は、設けられない。
【0122】
投射装置914は、光変調装置913から出射された映像光を、導光装置915に向けて投射する。投射装置914は、例えば、投射レンズである。投射装置914を構成するレンズとして、軸対称面をレンズ面とするものを用いてもよい。
【0123】
導光装置915は、例えば、投射装置914の鏡筒にねじ止めされることにより、投射装置914に対して精度よく位置決めされている。導光装置915は、例えば、映像光を導光する映像光導光部材916と、透視用の透視部材918と、を有している。
【0124】
映像光導光部材916には、投射装置914から出射された映像光が入射する。映像光導光部材916は、映像光を、観察者の眼に向けて導光するプリズムである。映像光導光部材916に入射した映像光は、映像光導光部材916の内面において反射を繰り返した後、反射層917で反射されて映像光導光部材916から出射される。映像光導光部材916から出射された映像光は、観察者の眼に至る。反射層917は、例えば、金属や、誘電体多層膜で構成されている。反射層917は、ハーフミラーであってもよい。
【0125】
透視部材918は、映像光導光部材916に隣接している。透視部材918は、映像光導光部材916に固定されている。透視部材918の外表面は、例えば、映像光導光部材916の外表面と連続している。透視部材918は、観察者に、外界光を透視させる。映像光導光部材916についても、映像光を導光する機能の他に、観察者に外界光を透視させる機能を有している。なお、ヘッドマウントディスプレイ900は、観察者に、外界光を透視させない構成であってもよい。
【0126】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター、ディスプレイ、およびヘッドマウントディスプレイ以外にも用いられることが可能である。上述した実施形態に係る発光装置は、例えば、屋内外の照明、レーザープリンター、スキャナー、光を用いるセンシング機器、EVF(Electronic View Finder)、スマートウォッチなどのウェアラブルディスプレイ、車載用ライト、車載用ヘッドアップディスプレイに用いられる。
【0127】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0128】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0129】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0130】
発光装置の一態様は、
n型の導電型を有する第1半導体部と、
p型の導電型を有する第2半導体部と、
前記第1半導体部と前記第2半導体部との間に設けられた発光部と、
前記第2半導体部の前記発光部とは反対側に設けられ、前記発光部で発生した光を共振させる共振部と、
を有し、
前記共振部は、
前記第2半導体部に接する金属電極と、
前記金属電極の前記第2半導体部とは反対側に設けられた透明電極と、
を有し、
前記金属電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差は、前記透明電極の仕事関数と前記第2半導体部の仕事関数との差よりも小さく、
前記共振部は、第1界面と第2界面との間で、前記発光部で発生した光を共振させ、
前記第1界面は、前記金属電極と前記透明電極との界面であり、
前記第2界面は、前記第1界面よりも、前記金属電極とは反対側に位置している。
【0131】
この発光装置によれば、所望の波長を有する光の取り出し効率を向上できる。
【0132】
前記発光装置の一態様において、
前記金属電極は、前記発光部で発生した光を透過させてもよい。
【0133】
この発光装置によれば、発光部で発生した光であって共振部に至らない光を低減できる。
【0134】
前記発光装置の一態様において、
前記第2半導体部の材質は、GaNであり、
前記金属電極の材質は、Auであり、
前記透明電極の材質は、ITOであってもよい。
【0135】
この発光装置によれば、所望の波長を有する光の取り出し効率を、より向上できる。
【0136】
前記発光装置の一態様において、
前記共振部は、前記透明電極の前記金属電極とは反対側に設けられた絶縁部を有し、
前記絶縁部は、前記発光部で発生した光を透過させ、
前記第2界面は、前記絶縁部の前記透明電極とは反対側の面であってもよい。
【0137】
この発光装置によれば、絶縁部によって透明電極を保護できる。
【0138】
前記発光装置の一態様において、
前記絶縁部は、前記透明電極と接し、
前記絶縁部の材質は、SiNであってもよい。
【0139】
この発光装置によれば、透明電極と絶縁部との界面における光の反射を低減できる。
【0140】
前記発光装置の一態様において、
前記第1半導体部、前記第2半導体部、前記発光部、および前記共振部を有する発光素子を複数有し、
複数の前記発光素子のうちの第1発光素子の前記発光部で発生した光の波長は、複数の前記発光素子のうちの第2発光素子の前記発光部で発生した光の波長よりも長く、
前記第1発光素子の前記第1界面と前記第2界面との間の距離は、前記第2発光素子の前記第1界面と前記第2界面との間の距離よりも大きくてもよい。
【0141】
この発光装置によれば、第1発光素子から出射される光の波長を、第2発光素子から出射される光の波長よりも、より確実に長くすることができる。
【0142】
前記発光装置の一態様において、
前記第1発光素子の前記絶縁部の厚さは、前記第2発光素子の前記絶縁部の厚さよりも大きく、
前記第1発光素子の前記透明電極の厚さ、および前記第2発光素子の前記透明電極の厚さは、互いに同じであってもよい。
【0143】
この発光装置によれば、第1発光素子の発光部に注入される電流量と、第2発光素子の発光部に注入される電流量と、の差を小さくすることができる。
【0144】
前記発光装置の一態様において、
前記第2界面は、前記透明電極の前記金属電極とは反対側の面であってもよい。
【0145】
この発光装置によれば、所望の波長を有する光の取り出し効率を向上できる。
【0146】
表示装置の一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【0147】
電子機器の一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0148】
10…基板、20…バッファー層、30…第1半導体部、40…発光部、50…第2半導体部、60…下部電極、70…共振部、72…金属電極、74…透明電極、75…絶縁部、76…第1界面、78…第2界面、80…絶縁層、82…第1コンタクトホール、84…第2コンタクトホール、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、110…発光装置、112…発光素子、112R…第1発光素子、112G…第2発光素子、112B…第3発光素子、200,210…発光装置、700…プロジェクター、702R…第1光学素子、702G…第2光学素子、702B…第3光学素子、704R…第1光変調装置、704G…第2光変調装置、704B…第3光変調装置、706…クロスダイクロイックプリズム、708…投射装置、710…スクリーン、800…ディスプレイ、810…回路基板、812…表示領域、814…データ線駆動回路、816…走査線駆動回路、818…制御回路、820…レンズアレイ、822…レンズ、830…ヒートシンク、900…ヘッドマウントディスプレイ、910a…第1表示部、910b…第2表示部、911…像形成装置、912…外部部材、913…光変調装置、914…投射装置、915…導光装置、916…映像光導光部材、917…反射層、918…透視部材、920…フレーム、930a…第1テンプル、930b…第2テンプル