(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121185
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 603
B41J2/14 605
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028146
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽樹
(72)【発明者】
【氏名】勝家 隼
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF99
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG68
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体噴射ヘッドの再生とヘッドチップの再利用とを可能とする。
【解決手段】液体噴射ヘッドは、第1接続流路を有する流路構造体と、複数の第1ノズルに連通する第2接続流路を有する第1ヘッドチップと、第1接続流路および第2接続流路に連通する第1中継流路を有する第1継手部材と、を備え、第1継手部材が流路構造体に着脱可能に固定されることにより、第1接続流路および第1中継流路が互いに接続され、第1中継流路の第2接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により第2接続流路および第1中継流路が互いに液密に連通する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続流路を有する流路構造体と、
液体を噴射する複数の第1ノズルと、前記複数の第1ノズルに連通する第2接続流路と、を有する第1ヘッドチップと、
前記第1接続流路および前記第2接続流路に連通する第1中継流路を有する第1継手部材と、を備え、
前記第1継手部材が前記流路構造体に着脱可能に固定されることにより、前記第1接続流路および前記第1中継流路が互いに接続され、
前記第1中継流路の前記第2接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により前記第2接続流路および前記第1中継流路が互いに液密に連通する、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記流路構造体に対して前記第1継手部材を着脱可能に固定するための第1固定位置は、前記第1ヘッドチップと前記流路構造体との積層方向にみて、前記第1ヘッドチップに重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記流路構造体に対して前記第1継手部材を着脱可能に固定するための第1固定位置は、前記第1ヘッドチップと前記流路構造体との積層方向にみて、前記第1ヘッドチップに重ならない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1中継流路を介して前記第1接続流路に連通するとともに前記第2接続流路に連通する第2中継流路を有する第2継手部材と、をさらに備え、
前記第2継手部材が前記第1ヘッドチップに着脱可能に固定されることにより、前記第2接続流路および前記第2中継流路が互いに接続され、
前記接着剤が前記第2中継流路の前記第1接続流路に向かう開口の周囲に配置されることにより、前記第1中継流路および前記第2中継流路が互いに液密に接続され、
前記第1ヘッドチップに対して前記第2継手部材を着脱可能に固定するための第2固定位置は、前記積層方向にみて、前記第1継手部材に重ならない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1中継流路を介して前記第1接続流路に連通するとともに前記第2接続流路に連通する第2中継流路を有する第2継手部材と、をさらに備え、
前記第2継手部材が前記第1ヘッドチップに着脱可能に固定されることにより、前記第2接続流路および前記第2中継流路が互いに接続され、
前記接着剤が前記第2中継流路の前記第1接続流路に向かう開口の周囲に配置されることにより、前記第1中継流路および前記第2中継流路が互いに液密に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記接着剤が前記第2接続流路の前記第1接続流路に向かう開口の周囲に配置されることにより、前記第1中継流路および前記第2接続流路が互いに液密に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記接着剤は、熱硬化型接着剤である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1継手部材と前記流路構造体との間に介在することにより、前記第1接続流路と前記第1中継流路とを液密に接続する弾性を有するシール部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第1継手部材を前記流路構造体に着脱可能に固定する固定部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記固定部材は、前記シール部材を圧縮させるように前記第1継手部材および前記流路構造体を共締めするネジである、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記固定部材は、前記第1継手部材および前記流路構造体を互いに近づける方向の弾性力を生じさせるバネを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記第1継手部材および前記流路構造体のうち、
一方には、雄ネジが設けられ、
他方には、前記雄ネジに締結される雌ネジが設けられており、
前記雄ネジおよび前記雌ネジの締結により、前記第1継手部材が前記流路構造体に着脱可能に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記第1継手部材および前記流路構造体のうち、一方は、前記第1接続流路または前記第1中継流路の径方向での外方または内方に突出する突起を有し、他方は、前記突起に嵌め合う凹部を有しており、
前記突起および前記凹部の互いの嵌め合いにより、前記第1継手部材が前記流路構造体に着脱可能に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記流路構造体は、前記第1接続流路とは異なる第3接続流路をさらに有し、
前記第1ヘッドチップは、前記第3接続流路に連通し、かつ、前記第2接続流路とは異なる第4接続流路をさらに有し、
前記第1継手部材は、前記第3接続流路および前記第4接続流路に連通する第3中継流路をさらに有し、
前記第3中継流路の前記第4接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により、前記第4接続流路および前記第3中継流路が互いに液密に連通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
液体を噴射する複数の第2ノズルと、前記複数の第2ノズルに連通する第5接続流路と、を有する第2ヘッドチップをさらに備え、
前記流路構造体は、前記第1接続流路とは異なる第6接続流路をさらに有し、
前記第1継手部材は、前記第5接続流路および前記第6接続流路に連通する第4中継流路をさらに有し、
前記第4中継流路の前記第5接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により前記第5接続流路および前記第4中継流路が互いに液密に連通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項16】
第1接続流路を有する流路構造体と、
液体を噴射する複数のノズル、前記複数のノズルと連通するとともに前記第1接続流路と連通する第2接続流路と、を有するヘッドチップと、
前記第1接続流路および前記第2接続流路に連通する第2中継流路を有する第2継手部材と、を備え、
前記第2継手部材が前記ヘッドチップに着脱可能に固定されることにより、前記第2接続流路および前記第2中継流路が互いに接続され、
前記第2中継流路の前記第1接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により前記第1接続流路および前記第2中継流路が互いに液密に連通する、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を貯留する液体貯留部と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式のプリンターに代表される液体噴射装置は、一般に、インク等の液体を液滴として噴射する液体噴射ヘッドを備える。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、ノズルからインクを噴射するヘッドチップと、ヘッドチップを保持するとともにヘッドチップにインクを供給する流路構造体と、を備える。ここで、ヘッドチップには、導入口が設けられており、導入口の周囲に設けられた接着剤によりヘッドチップが流路部材に固定されることにより、導入口が流路構造体の流路の導出口に液密に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体噴射ヘッドにおいて、例えばヘッドチップが故障した場合、ヘッドチップのみを交換することにより液体噴射ヘッドを再生したいという要望がある。また、液体噴射ヘッドのヘッドチップ以外の箇所が故障した場合、故障していないヘッドチップを流路構造体から取り外した後に別の液体噴射ヘッドに搭載することにより、ヘッドチップを再利用したいという要望もある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドでは、ヘッドチップの導入口と流路構造体の導出口とが接着剤を介して互いに接続されるため、ヘッドチップと流路構造体とを分離すると、これらに接着剤残りが生じてしまう。このため、ヘッドチップを交換することにより液体噴射ヘッドを再生したり、別の液体噴射ヘッドの一部としてヘッドチップを再利用したりすることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、第1接続流路を有する流路構造体と、液体を噴射する複数の第1ノズルと、前記複数の第1ノズルに連通する第2接続流路と、を有する第1ヘッドチップと、前記第1接続流路および前記第2接続流路に連通する第1中継流路を有する第1継手部材と、を備え、前記第1継手部材が前記流路構造体に着脱可能に固定されることにより、前記第1接続流路および前記第1中継流路が互いに接続され、前記第1中継流路の前記第2接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により前記第2接続流路および前記第1中継流路が互いに液密に連通する。
【0008】
本開示の好適な他の態様に係る液体噴射ヘッドは、第1接続流路を有する流路構造体と、液体を噴射する複数のノズル、前記複数のノズルと連通するとともに前記第1接続流路と連通する第2接続流路と、を有するヘッドチップと、前記第1接続流路および前記第2接続流路に連通する第2中継流路を有する第2継手部材と、を備え、前記第2継手部材が前記ヘッドチップに着脱可能に固定されることにより、前記第2接続流路および前記第2中継流路が互いに接続され、前記第2中継流路の前記第1接続流路に向かう開口の周囲に配置される接着剤により前記第1接続流路および前記第2中継流路が互いに液密に連通する。
【0009】
本開示の好適な態様に係る液体噴射装置は、前述のいずれかの態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ供給する液体を貯留する液体貯留部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の構成例を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面図である。
【
図5】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの下面図である。
【
図8】第1実施形態における第1固定位置および第2固定位置を説明するための模式的平面図である。
【
図9】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの組み立てを説明するための図である。
【
図10】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドからのヘッドチップの取り外しを説明するための図である。
【
図11】第1実施形態におけるヘッドチップの再利用を説明するための図である。
【
図12】第1実施形態における液体噴射ヘッドの再生を説明するための図である。
【
図13】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図15】第2実施形態における第1固定位置および第2固定位置を説明するための模式的平面図である。
【
図16】第3実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図17】第4実施形態に係る液体噴射ヘッドの第1継手部材を説明するための図である。
【
図18】第5実施形態に係る液体噴射ヘッドの第1継手部材を説明するための図である。
【
図19】第6実施形態に係る液体噴射ヘッドの第1継手部材を説明するための図である。
【
図20】第7実施形態に係る液体噴射ヘッドの第1継手部材を説明するための図である。
【
図21】第8実施形態に係る液体噴射ヘッドの第1継手部材を説明するための図である。
【
図22】変形例1に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【
図23】変形例2に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
なお、以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。ここで、Z1方向またはZ2方向は、後述の「ヘッドチップと流路構造体との積層方向」の一例である。また、Z軸に沿う方向でみることを「平面視」という。
【0013】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0014】
1.第1実施形態
1-1.液体噴射装置の概略構成
図1は、第1実施形態に係る液体噴射装置100の構成例を示す概略図である。液体噴射装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体Mに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0015】
図1に示すように、液体噴射装置100は、液体貯留部10と制御ユニット20と搬送機構30と液体噴射ヘッド50とを有する。
【0016】
液体貯留部10は、インクを貯留する容器である。液体貯留部10の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンク等が挙げられる。なお、液体貯留部10に貯留されるインクの種類は、特に限定されず、任意である。
【0017】
制御ユニット20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。
【0018】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体Mを方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、X1方向である。
図1に示す例では、搬送機構30は、Y軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構30は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体Mを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラムまたは無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0019】
液体噴射ヘッド50は、制御ユニット20による制御のもとで、液体貯留部10から供給されるインクを複数のノズルNのそれぞれからZ2方向に媒体Mに噴射する。液体噴射ヘッド50は、媒体MのX軸に沿う方向での全範囲にわたり複数のノズルが分布するように配置される複数のヘッドチップ51を有し、X軸の延びる方向に長尺なラインヘッドである。液体噴射ヘッド50からのインクの噴射が搬送機構30による媒体Mの搬送に並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。
【0020】
なお、液体噴射ヘッド50の有するヘッドチップ51の数および配置は、
図1に示す例に限定されず、任意である。また、液体噴射ヘッド50がインクを循環可能に構成される場合、液体噴射ヘッド50には、液体噴射ヘッド50内のインクを循環させるための循環機構を介して液体貯留部10に接続されてもよい。
【0021】
1-2.ヘッドチップの構成例
図2は、ヘッドチップ51の一例を示す断面図である。なお、ヘッドチップ51は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、ノズル列Laの複数のノズルNとノズル列Lbの複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。
図2では、ノズル列Laの複数のノズルNとノズル列Lbの複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0022】
図2に示すように、ヘッドチップ51は、流路基板51aと圧力室基板51bとノズルプレート51cと吸振体51dと振動板51eと複数の駆動素子51fと保護板51gとケース51hと配線基板51iとを有する。
【0023】
流路基板51aおよび圧力室基板51bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板51aおよび圧力室基板51bからなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板51eと複数の駆動素子51fと保護板51gとケース51hと配線基板51iとが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズルプレート51cと吸振体51dとが設置される。ヘッドチップ51の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ51の各要素を順に説明する。
【0024】
ノズルプレート51cは、ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ノズルプレート51cのZ2方向を向く面は、噴射面FNの一部を構成する。
【0025】
流路基板51aには、ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれについて、空間R1と複数の個別流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。個別流路Raおよび連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各個別流路Raは、空間R1に連通する。本明細書において、「連通」とは、対象となる2つの空間が直接繋がることにより1つの空間を形成する態様のほか、対象となる2つの空間が他の空間を介して繋がることにより1つの空間を形成する態様も含む。
【0026】
圧力室基板51bは、ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれについて、複数の圧力室Cが設けられた板状部材である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。
【0027】
圧力室Cは、流路基板51aと振動板51eとの間に位置する空間である。ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれについて、複数の圧力室CがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cは、連通流路Naおよび個別流路Raのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、個別流路Raを介して空間R1に連通する。
【0028】
圧力室基板51bのZ1方向を向く面には、振動板51eが配置される。振動板51eは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板51eは、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成される弾性膜と、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成される絶縁膜と、を有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。なお、振動板51eは、前述の弾性膜および絶縁膜の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0029】
振動板51eのZ1方向を向く面には、ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の駆動素子51fが配置される。各駆動素子51fは、駆動信号の供給により変形する受動素子である。各駆動素子51fは、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の駆動素子51fは、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。駆動素子51fは、平面視で圧力室Cに重なる。
【0030】
各駆動素子51fは、圧電素子であり、図示しないが、第1電極と圧電体層と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極および第2電極のうちの一方の電極は、駆動素子51fごとに互いに離間して配置される個別電極であり、当該一方の電極には、駆動信号Comが供給される。第1電極および第2電極のうちの他方の電極は、複数の駆動素子51fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、当該他方の電極には、例えば、定電位が供給される。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)等の圧電材料で構成されており、例えば、複数の駆動素子51fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ただし、圧電体層は、複数の駆動素子51fにわたり一体でもよい。この場合、圧電体層には、互いに隣り合う各圧力室Cの間隙に平面視で対応する領域に、当該圧電体層を貫通する貫通孔がX軸に沿う方向に延びて設けられる。個別電極への駆動信号Comが供給による駆動素子51fの変形に連動して振動板51eが振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、インクがノズルNから噴射される。なお、駆動素子51fは、圧電素子に限られず、圧力室C内のインクを発熱させることで発生するバブルによってノズルNからインクを噴射させる発熱素子であってもよい。
【0031】
保護板51gは、振動板51eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の駆動素子51fを保護するとともに振動板51eの機械的な強度を補強する。ここで、保護板51gと振動板51eとの間には、複数の駆動素子51fが収容される。
【0032】
ケース51hは、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するための部材である。ケース51hは、例えば、樹脂材料で構成される。ケース51hには、ノズル列Laおよびノズル列Lbのそれぞれについて、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース51hには、各リザーバーRにインクを供給するための導入口IHが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各個別流路Raを介して圧力室Cに供給される。
【0033】
本実施形態では、1つのリザーバーRに対して2つの導入口IHが設けられる。当該2つの導入口IHのうち、一方の導入口IHは、リザーバーRのY1方向での端に接続され、他方の導入口IHは、リザーバーRのY2方向での端に接続される。このように、1つのヘッドチップ51には、4つの導入口IHが設けられる。なお、1つのヘッドチップ51に設けられる導入口IHの数は、4つに限定されず、例えば、1つのリザーバーRに対して1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、導入口IHの配置は、リザーバーRのY1方向またはY2方向での端に接続される配置に限定されず、例えば、リザーバーRのY軸方向での中央に接続される配置であってもよい。各導入口IHは、ヘッドチップ51と後述する流路構造体52との積層方向に延びている。
【0034】
なお、ヘッドチップ51と流路構造体52との積層方向とは、ヘッドチップ51-1と流路構造体52とが積層されるZ軸に沿う方向である。ここで、ヘッドチップ51-1と流路構造体52とが積層されるとは、ヘッドチップ51-1と流路構造体52とが間接的に積層されることを含んでもよく、つまり、本実施形態のようにヘッドチップ51-1と流路構造体52との間に継手構造体60を介在していてもよい。以降、ヘッドチップ51と流路構造体52との積層方向を単に積層方向と呼ぶことがある。
【0035】
1つの導入口IHは、ノズルプレート51cに形成された複数のノズルNのうち少なくとも一部のノズルに連通する。本実施形態のノズルプレート51cは、2つのノズル列La、Lbを有する。そのため、1つの導入口IHは、ノズルプレート51cに形成された複数のノズルNのうち一部のノズルN、換言すれば、ノズル列Laを構成する複数のノズルN、又は、ノズル列Lbを構成する複数のノズルNに連通する。なお、ノズルプレート51cに形成されたノズル列の数が1つの場合には、導入口IHは、ノズルプレート51cに形成された全てのノズルNに連通していてもよい。
【0036】
吸振体51dは、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体51dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体51dのZ1方向を向く面は、流路基板51aに接着剤等により接合される。一方、吸振体51dのZ2方向を向く面には、枠体56が接着剤等により接合される。枠体56は、吸振体51dの外周に沿う枠状の部材であり、例えば、金属材料で構成される。枠体56のZ1方向を向く面には、図中二点鎖線で示すように、後述の固定板53が接着剤等により接合される。
【0037】
配線基板51iは、振動板51eのZ1方向を向く面に実装されており、ヘッドチップ51と駆動回路51jおよび制御ユニット20等とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板51iは、例えば、COF(Chip On Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。本実施形態の配線基板51iには、駆動回路51jが実装される。駆動回路51jは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスとして駆動素子51fに供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0038】
以上のヘッドチップ51では、駆動信号Comにより駆動素子51fが駆動することにより、圧力室Cの圧力が変動し、その変動に伴ってノズルNからインクが噴射される。
【0039】
1-3.液体噴射ヘッド
図3は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50の上面図である。
図4は、
図3中のA-A線断面図である。
図5は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50の下面図である。
図3から
図5では、ヘッドチップ51-1~51-7を有する液体噴射ヘッド50が模式的に示される。ヘッドチップ51-1~51-7のそれぞれは、前述のヘッドチップ51である。以下では、ヘッドチップ51-1~51-7のそれぞれを区別しないでヘッドチップ51という場合がある。
【0040】
ここで、ヘッドチップ51-1は、「第1ヘッドチップ」の一例である。なお、ヘッドチップ51-1に関する構成とヘッドチップ51-2に関する構成との関係は、ヘッドチップ51-1~51-7のうち、X軸に沿う方向に隣り合う他の2つのヘッドチップ51に関する構成の関係と同様である。
【0041】
図3から
図5に示すように、液体噴射ヘッド50は、ヘッドチップ51-1~51-7と流路構造体52と固定板53と複数の継手構造体60とを有する。
【0042】
図3および
図5に示すように、ヘッドチップ51-1~51-7は、Z軸に沿う方向にみて、千鳥状に配置される。ここで、ヘッドチップ51-1~51-7がこの順でY2方向に並ぶ。ただし、ヘッドチップ51-1、51-3、51-5、51-7は、X軸に沿う方向で互いの位置が揃うように配置される。これに対し、ヘッドチップ51-2、51-4、51-6は、ヘッドチップ51-1、51-3、51-5、51-7よりもX2方向の位置で、X軸に沿う方向で互いの位置が揃うように配置される。また、ヘッドチップ51-1~51-7のうちの互いに最も近い2つのヘッドチップ51は、X軸に沿う方向にみて、互いのノズル列La、Lbの一部同士が重なるように配置される。
【0043】
流路構造体52は、液体貯留部10からのインクをヘッドチップ51-1~51-7に供給するための流路Paが内部に設けられた構造体である。流路構造体52は、例えば、樹脂材料または金属材料等で構成される。
【0044】
図4に示すように、流路Paは、共通流路Pa1と複数の分岐流路Pa2と複数の開口HLとを有する。
【0045】
共通流路Pa1は、複数のヘッドチップ51に共通に設けられる流路である。本実施形態では、共通流路Pa1は、ヘッドチップ51-1、51-3、51-5、51-7に共通に設けられる後述の共通流路Pa1-1と、ヘッドチップ51-2、51-4、51-6に共通に設けられる後述の共通流路Pa1-2と、で構成される。これらの流路のそれぞれは、積層方向であるZ軸に沿う方向に交差する方向に延びており、具体的にはY軸に沿う方向に延びている。また、各共通流路Pa1の両端は、Z1方向に向く開口HLに連通する。開口HLには、液体貯留部10からのインクが導入される。
【0046】
複数の分岐流路Pa2は、ヘッドチップ51-1~51-7の導入口IHごとに設けられ、共通流路Pa1に連通する流路である。本実施形態では、複数の分岐流路Pa2は、ヘッドチップ51-1、51-3、51-5、51-7にインクを供給するための後述の複数の分岐流路Pa2-1と、ヘッドチップ51-2、51-4、51-6にインクを供給するための後述の複数の分岐流路Pa2-2と、を含む。複数の分岐流路Pa2のそれぞれは、継手構造体60を介して、対応する導入口IHに連通する。各分岐流路Pa2は、共通流路Pa1が延びる方向とは異なる方向に延びており、具体的には積層方向であるZ軸に沿う方向に延びている。なお、
図4では、見やすくするための便宜上、継手構造体60が模式的に示される。継手構造体60の構成については、後に
図6から
図8に基づいて説明する。
【0047】
本実施形態の流路構造体52は、複数のヘッドチップ51-1~51-7を収容するホルダーである。したがって、本実施形態の流路構造体52は、複数のヘッドチップ51を収容する複数の凹部52aを有する。当該複数の凹部52aのそれぞれは、流路構造体52のZ2方向を向く面に設けられた窪みである。このような凹部52aに収容されるヘッドチップ51は、流路構造体52に対してZ軸に沿う方向で重なる。なお、当該複数の凹部52aは、ヘッドチップ51ごとに設けられてもよいし、2以上のヘッドチップ51の群ごとに設けられてもよい。したがって、凹部52aの数は、ヘッドチップ51の数に等しくなくてもよいし、複数に限定されず、単数であってもよい。
【0048】
ここで、流路構造体52は、流路形成部52bと壁部52cと複数の管部52dとを有する。流路形成部52bには、流路Paが設けられる。壁部52cは、流路形成部52bのZ2方向を向く面を底面として複数の凹部52aを形成するように、流路形成部52bからZ2方向に向けて突出する。Z1方向にみて、ヘッドチップ51は、壁部52cに全周で囲まれている。複数の管部52dのそれぞれは、流路形成部52bからZ1方向に向けて突出しており、各管部52dには、開口HLが設けられるとともに、液体貯留部10からのインクを輸送する図示しない管体が接続される。
【0049】
固定板53は、流路構造体52との間で複数のヘッドチップ51を固定するための板状部材である。固定板53には、各ヘッドチップ51のノズルプレート51cを液体噴射ヘッド50の外部に露出させる複数の開口部53aが設けられる。本実施形態の開口部53aは、
図2に示す通り、ノズルプレート41cの全部分を外部に露出する。換言すれば、Z1方向にみて、ノズルプレート51cの外周は、開口部53aの周縁内に配置される。但し、開口部53aは、ノズルプレート41cの少なくとも一部を外部に露出するようにしてもよい。換言すれば、Z1方向にみて、ノズルプレート51cの外周部分が、開口部53aの外側に位置する、即ち、固定板53の板状部分である平板部53bに重なっていてもよい。
図4および
図5に示す例では、当該複数の開口部53aは、ヘッドチップ51ごとに個別に設けられる。固定板53は、例えば、ステンレス鋼、チタンおよびマグネシウム合金等の金属材料等で構成される。
【0050】
以上の固定板53のZ2方向を向く面は、各ヘッドチップ51のZ2方向を向く面における開口部53aから露出する部分とともに、噴射面FNの一部を構成する。
【0051】
1-4.継手構造体
図6は、
図3中のB-B線断面図である。
図7は、
図6中のC-C線断面図である。
図6では、複数の継手構造体60のうち、「第1ヘッドチップ」の一例であるヘッドチップ51-1に対応する継手構造体60である継手構造体60-1と、ヘッドチップ51-2に対応する継手構造体60である継手構造体60-2とが示される。以下では、継手構造体60-1および継手構造体60-2のそれぞれを区別しないで継手構造体60という場合がある。
【0052】
なお、以下では、ヘッドチップ51-1、51-2に関する事項を代表的に説明するが、以下に説明する事項において、ヘッドチップ51-1に関する事項は、ヘッドチップ51-3、51-5、51-7についても同様であるとともに、ヘッドチップ51-2に関する事項は、ヘッドチップ51-4、51-6についても同様である。
【0053】
図6に示すように、ヘッドチップ51-1は、ノズル列La-1とノズル列Lb-1とリザーバーR-1aとリザーバーR-1bと導入口IH-1aと導入口IH-1bとを有する。ノズル列La-1は、ヘッドチップ51-1のノズル列Laである。ノズル列Lb-1は、ヘッドチップ51-1のノズル列Lbである。リザーバーR-1aは、ノズル列La-1に対応するリザーバーRである。リザーバーR-1bは、ノズル列Lb-1に対応するリザーバーRである。導入口IH-1aは、リザーバーR-1aに接続される導入口IHである。導入口IH-1bは、リザーバーR-1bに接続される導入口IHである。
【0054】
ここで、ノズル列La-1を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「第1ノズル」の一例である。導入口IH-1aは、「第2接続流路」の一例である。導入口IH-1bは、「第4接続流路」の一例である。
【0055】
同様に、ヘッドチップ51-2は、ノズル列La-2とノズル列Lb-2とリザーバーR-2aとリザーバーR-2bと導入口IH-2aと導入口IH-2bとを有する。ノズル列La-2は、ヘッドチップ51-2のノズル列Laである。ノズル列Lb-2は、ヘッドチップ51-2のノズル列Lbである。リザーバーR-2aは、ノズル列La-2に対応するリザーバーRである。リザーバーR-2bは、ノズル列Lb-2に対応するリザーバーRである。導入口IH-2aは、リザーバーR-2aに接続される導入口IHである。導入口IH-2bは、リザーバーR-2bに接続される導入口IHである。
【0056】
一方、流路構造体52は、流路Pa-1と流路Pa-2とを有する。流路Pa-1は、リザーバーR-1a、R-1bにインクを供給するための流路Paである。流路Pa-1は、共通流路Pa1-1と分岐流路Pa2-1aと分岐流路Pa2-1bとを有する。共通流路Pa1-1は、リザーバーR-1a、R-1bにインクを供給するための共通流路Pa1である。分岐流路Pa2-1aは、リザーバーR-1aにインクを供給するための分岐流路Pa2である。分岐流路Pa2-1bは、リザーバーR-1bにインクを供給するための分岐流路Pa2である。
【0057】
ここで、分岐流路Pa2-1aは、「第1接続流路」の一例である。分岐流路Pa2-1bは、「第3接続流路」の一例である。
【0058】
同様に、流路Pa-2は、流路Pa-1とは異なる流路Paであって、リザーバーR-2a、R-2bにインクを供給するための流路Paである。流路Pa-2は、共通流路Pa1-2と分岐流路Pa2-2aと分岐流路Pa2-2bとを有する。共通流路Pa1-2は、リザーバーR-2a、R-2bにインクを供給するための共通流路Pa1である。分岐流路Pa2-2aは、リザーバーR-2aにインクを供給するための分岐流路Pa2である。分岐流路Pa2-2bは、リザーバーR-2bにインクを供給するための分岐流路Pa2である。
【0059】
なお、以下では、流路Pa-1および流路Pa-2のそれぞれを区別しないで流路Paという場合ある。共通流路Pa1-1および共通流路Pa1-2のそれぞれを区別しないで共通流路Pa1という場合がある。分岐流路Pa2-1aおよび分岐流路Pa2-1bのそれぞれを区別しないで分岐流路Pa2-1という場合がある。分岐流路Pa2-2aおよび分岐流路Pa2-2bのそれぞれを区別しないで分岐流路Pa2-2という場合がある。分岐流路Pa2-1および分岐流路Pa2-2のそれぞれを区別しないで分岐流路Pa2という場合がある。
【0060】
以上の流路構造体52には、
図6および
図7に示すように、凹部52aによる空間S内において、2つの継手構造体60-1を介してヘッドチップ51-1が接続されるとともに、2つの継手構造体60-2を介してヘッドチップ51-2が接続される。本実施形態の継手構造体60は、流路構造体52およびヘッドチップ51のそれぞれに対して着脱可能に固定される。
【0061】
継手構造体60は、流路構造体52の流路Paとヘッドチップ51のリザーバーRとを連通させるための構造体である。本実施形態における継手構造体60は、1つの第1継手部材61と、2つの第2継手部材62と、接着剤ADと、複数の固定部材71と、複数の固定部材72と、複数のシール部材81と、複数のシール部材82とを有する。
【0062】
継手構造体60-1の第1継手部材61は、中継流路Pr1-1aと中継流路Pr1-1bとを有する。中継流路Pr1-1aおよび中継流路Pr1-1bのそれぞれは、第1継手部材61のZ1方向での端とZ2方向での端とのそれぞれに開口する。ここで、中継流路Pr1-1aは、「第1中継流路」の一例である。中継流路Pr1-1bは、「第3中継流路」の一例である。
【0063】
同様に、継手構造体60-2の第1継手部材61は、中継流路Pr1-2aと中継流路Pr1-2bとを有する。中継流路Pr1-2aおよび中継流路Pr1-2bのそれぞれは、第1継手部材61のZ1方向での端とZ2方向での端とのそれぞれに開口する。
【0064】
なお、以下では、中継流路Pr1-1aおよび中継流路Pr1-1bのそれぞれを区別しないで中継流路Pr1-1という場合ある。中継流路Pr1-2aおよび中継流路Pr1-2bのそれぞれを区別しないで中継流路Pr1-2という場合ある。中継流路Pr1-1および中継流路Pr1-2のそれぞれを区別しないで中継流路Pr1という場合ある。中継流路Pr1は、Z軸に沿って延びている。
【0065】
第1継手部材61のZ1方向の端には、Z軸に沿う方向を板厚方向とするフランジ61aが設けられており、フランジ61aが複数の固定部材71であるネジを用いたネジ留めにより流路構造体52の流路形成部52bのZ2方向を向く面に固定される。これにより、第1継手部材61は、流路構造体52に着脱可能に固定される。「着脱可能に固定」とは、接着または溶接を用いずに、対象となる2つの部材を、互いの位置関係が変化しないように固定することをいう。
【0066】
複数の固定部材71のそれぞれは、フランジ61aを貫通し、流路構造体52に設けられるネジ孔に形成された雌ネジに螺合する雄ネジが形成されたネジである。これにより、複数の固定部材71のそれぞれは、第1継手部材61を流路構造体52に着脱可能に固定する。ここで、各固定部材71は、シール部材81を圧縮させるように第1継手部材61および流路構造体52を共締めする。各固定部材71の配置については、後に
図8に基づいて説明する。なお、フランジ61aは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0067】
第1継手部材61と流路構造体52との間には、弾性を有するシール部材81が配置される。「弾性」とは、弾性変形可能な性質をいう。シール部材81は、例えば、エラストマー等の弾性材料で構成される。エラストマーとしては、熱硬化性エラストマー及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱硬化性エラストマーとしては、加硫ゴム、及び、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の熱硬化性樹脂系エラストマーを挙げることができる。シール部材81は、第1継手部材61と流路構造体52との間に介在することにより弾性変形した状態で配置される。これにより、第1継手部材61および流路構造体52がシール部材81を介して互いに液密に接続される。
【0068】
図6および
図7に示す例では、シール部材81は、リング状の部材である。シール部材81は、流路構造体52および第1継手部材61とは別体で構成されてもよいし、流路構造体52または第1継手部材61とインサート成形等により一体で構成されてもよい。シール部材81は、第1継手部材61と一体で構成されていることが好ましい。詳しくは後述するが、これにより、ヘッドチップ51を交換することにより液体噴射ヘッド50を再生したり、別の液体噴射ヘッド50の一部としてヘッドチップ51を再利用したりする際に、シール部材81を容易に交換することができ、シール部材81による分岐流路Pa2と中継流路Pr1との間の液密性の信頼性を向上できる。なお、シール部材81の形状は、
図6および
図7に示す例に限定されず、例えば、流路を構成する孔を有するシート状であってもよい。また、シール部材81は、導入口IHごとに個別に設けられる態様に限定されず、2つ以上の導入口IHに共通に一体的に設けられる態様であってもよい。
【0069】
このように、第1継手部材61が流路構造体52に着脱可能に固定されることにより、分岐流路Pa2-1aおよび中継流路Pr1-1aが互いに接続されるとともに、分岐流路Pa2-1bおよび中継流路Pr1-1bが互いに接続される。同様に、分岐流路Pa2-2aおよび中継流路Pr1-2aが互いに接続されるとともに、分岐流路Pa2-2bおよび中継流路Pr1-2bが互いに接続される。なお、本明細書において、対象となる2つの空間について、「接続」とは、対象となる2つの空間が直接繋がる態様を意味する。
【0070】
継手構造体60-1の2つの第2継手部材62は、中継流路Pr2-1aと中継流路Pr2-1bとを有する。中継流路Pr2-1aおよび中継流路Pr2-1bのそれぞれは、2つの第2継手部材62のZ1方向での端とZ2方向での端とのそれぞれに開口する。ここで、中継流路Pr2-1aは、「第2中継流路」の一例である。
【0071】
同様に、継手構造体60-2の2つの第2継手部材62は、中継流路Pr2-2aと中継流路Pr2-2bとを有する。中継流路Pr2-2aおよび中継流路Pr2-2bのそれぞれは、2つの第2継手部材62のZ1方向での端とZ2方向での端とのそれぞれに開口する。
【0072】
なお、以下では、中継流路Pr2-1aおよび中継流路Pr2-1bのそれぞれを区別しないで中継流路Pr2-1という場合ある。中継流路Pr2-2aおよび中継流路Pr2-2bのそれぞれを区別しないで中継流路Pr2-2という場合ある。中継流路Pr2-1および中継流路Pr2-2のそれぞれを区別しないで中継流路Pr2という場合ある。中継流路Pr2は、Z軸に沿って延びている。
【0073】
第2継手部材62のZ1方向での端は、第1継手部材61のZ2方向での端に接着剤ADにより接合される。このような接着剤ADは、中継流路Pr2-1aの分岐流路Pa2-1aに向かう開口の周囲に配置されるとともに、中継流路Pr2-1bの分岐流路Pa2-1bに向かう開口の周囲に配置される。つまり、平面視した際に、接着剤ADは、互いに対向する中継流路Pr1の開口及び中継流路Pr2の開口を全周で囲んでいる。これにより、中継流路Pr1-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに液密に接続されるとともに、中継流路Pr1-1bおよび中継流路Pr2-1bが互いに液密に接続される。同様に、接着剤ADにより、中継流路Pr1-2aおよび中継流路Pr2-2aが互いに液密に接続されるとともに、中継流路Pr1-2bおよび中継流路Pr2-2bが互いに液密に接続される。
【0074】
接着剤ADは、インクに対する耐性を有し、かつ、第1継手部材61および第2継手部材62を互いに液密に接合し得る接合剤であればよく、特に限定されないが、接合強度および耐液性の双方に優れるという観点から、エポキシ系熱硬化型接着剤等の熱硬化型接着剤であることが好ましい。
【0075】
また、第2継手部材62のZ2方向での端には、Z軸に沿う方向を板厚方向とするフランジ62aが設けられており、フランジ62aが複数の固定部材72であるネジを用いたネジ留めによりヘッドチップ51のZ1方向を向く面に固定される。これにより、第2継手部材62は、ヘッドチップ51に着脱可能に固定される。
【0076】
複数の固定部材72のそれぞれは、フランジ62aを貫通し、ヘッドチップ51に設けられるネジ穴に形成される雌ネジに螺合する雄ネジが形成されたネジである。これにより、複数の固定部材72のそれぞれは、第2継手部材62をヘッドチップ51に着脱可能に固定する。ここで、各固定部材72は、シール部材82を圧縮させるように第2継手部材62およびヘッドチップ51を共締めする。各固定部材72の配置については、後に
図8に基づいて説明する。なお、フランジ62aは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0077】
第2継手部材62とヘッドチップ51との間には、弾性を有するシール部材82が配置される。シール部材82は、シール部材81と同様の弾性材料で構成される。シール部材82は、第2継手部材62とヘッドチップ51との間に介在することにより弾性変形した状態で配置される。これにより、第2継手部材62およびヘッドチップ51がシール部材82を介して互いに液密に接続される。
【0078】
図6および
図7に示す例では、シール部材82は、リング状の部材である。シール部材82は、ヘッドチップ51および第2継手部材62とは別体で構成されてもよいし、ヘッドチップ51または第2継手部材62とインサート成形等により一体で構成されてもよい。但し、シール部材82は、第2継手部材62と一体で構成されていることが好ましい。詳しくは後述するが、これにより、ヘッドチップ51を交換することにより液体噴射ヘッド50を再生したり、別の液体噴射ヘッド50の一部としてヘッドチップ51を再利用したりする際に、シール部材82を容易に交換することができ、シール部材82による導入口IHと中継流路Pr2との間の液密性の信頼性を向上できる。なお、シール部材82の形状は、
図6および
図7に示す例に限定されず、例えば、流路を構成する孔を有するシート状であってもよい。また、シール部材82は、導入口IHごとに個別に設けられる態様に限定されず、2つ以上の導入口IHに共通に一体的に設けられる態様であってもよい。
【0079】
このように、継手構造体60-1の2つの第2継手部材62がヘッドチップ51に着脱可能に固定されることにより、導入口IH-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに接続されるとともに、導入口IH-1bおよび中継流路Pr2-1bが互いに接続される。同様に、継手構造体60-2の2つの第2継手部材62がヘッドチップ51に着脱可能に固定されることにより、導入口IH-2aおよび中継流路Pr2-2aが互いに接続されるとともに、導入口IH-2bおよび中継流路Pr2-2bが互いに接続される。
【0080】
以上のように、ヘッドチップ51-1が2つの継手構造体60-1を介して流路構造体52に接続されることにより、分岐流路Pa2-1aが中継流路Pr1-1a、Pr2-1aを介して導入口IH-1aに連通するとともに、分岐流路Pa2-1bが中継流路Pr1-1b、Pr2-1bを介して導入口IH-1bに連通する。同様に、ヘッドチップ51-2が2つの継手構造体60-2を介して流路構造体52に接続されることにより、分岐流路Pa2-2aが中継流路Pr1-2a、Pr2-2aを介して導入口IH-2aに連通するとともに、分岐流路Pa2-2bが中継流路Pr1-2b、Pr2-2bを介して導入口IH-2bに連通する。したがって、インクは、分岐流路Pa2、中継流路Pr1、中継流路Pr2及び導入口IHで構成される流路内を積層方向であるZ軸方向に沿って流れる。
【0081】
図8は、第1実施形態における第1固定位置PF1および第2固定位置PF2を説明するための模式的平面図である。
図8では、Z2方向にみたヘッドチップ51と第1固定位置PF1および第2固定位置PF2との関係が模式的に示される。
【0082】
第1固定位置PF1は、流路構造体52に対して第1継手部材61を着脱可能に固定するための位置である。より詳細には、第1固定位置PF1は、流路構造体52および第1継手部材61を互いに固定する力が作用する位置である。本実施形態では、固定部材71を用いたネジ締結により流路構造体52および第1継手部材61が互いに固定されるので、固定部材71の位置である。
【0083】
一方、第2固定位置PF2は、ヘッドチップ51に対して第2継手部材62を着脱可能に固定するための位置である。より詳細には、第2固定位置PF2は、ヘッドチップ51および第2継手部材62を互いに固定する力が作用する位置である。本実施形態では、固定部材72を用いたネジ締結によりヘッドチップ51および第2継手部材62が互いに固定されるので、固定部材72の位置である。
【0084】
なお、後述の第4実施形態から第8実施形態で説明するように、流路構造体52に対する第1継手部材61の固定方法は、ネジ留めに限定されない。ここで、「第1固定位置PF1」は、例えば、バネ力により流路構造体52および第1継手部材61を互いに固定する場合のバネの位置、爪による規制力により流路構造体52および第1継手部材61を互いに固定する場合の爪の位置等の位置である。同様に、「第2固定位置PF2」は、例えば、バネ力によりヘッドチップ51および第2継手部材62を互いに固定する場合のバネの位置、爪による規制力によりヘッドチップ51および第2継手部材62を互いに固定する場合の爪の位置等の位置である。
【0085】
図8に示すように、各第1継手部材61は、Z軸に沿う方向にみて、X軸に沿う方向に延びる形状をなす。各第1継手部材61のX軸に沿う幅は、ヘッドチップ51のX軸に沿う幅よりも大きい。そして、第1継手部材61のX1方向での端がヘッドチップ51よりもX1方向に配置されるとともに、第1継手部材61のX2方向での端がヘッドチップ51よりもX2方向に配置される。これにより、第1継手部材61がZ軸に沿う方向にみてヘッドチップ51に重ならない2つの部分を有する。当該2つの部分のそれぞれには、第1固定位置PF1が位置する。当該2つの部分は、前述のフランジ61aの少なくとも一部である。なお、Z軸に沿う方向にみた第1継手部材61の形状は、
図8に示す例に限定されず、任意である。
【0086】
このように、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向にみて、第1固定位置PF1は、ヘッドチップ51-1に重ならない。このため、ヘッドチップ51-1を取り外さなくても、第1固定位置PF1へのアクセスが可能となる。したがって、後述の
図9に示すように、流路構造体52からヘッドチップ51-1を取り外す際、取り外すヘッドチップ51-1に応力を作用させずに済むという利点がある。
【0087】
これに対し、各第2継手部材62は、Z軸に沿う方向にみて、Y軸に沿う方向に延びる形状をなす。各第2継手部材62のY軸に沿う幅は、前述の第1継手部材61のY軸に沿う幅よりも大きい。そして、第2継手部材62のY1方向での端が第1継手部材61よりもY1方向に配置されるとともに、第2継手部材62のY2方向での端が第1継手部材61よりもY2方向に配置される。これにより、第2継手部材62がZ軸に沿う方向にみて第1継手部材61に重ならない2つの部分を有する。当該2つの部分のそれぞれには、第2固定位置PF2が位置する。当該2つの部分は、前述のフランジ62aの少なくとも一部である。また、Z軸に沿う方向にみて、当該2つの部分は、ヘッドチップ51に重なる。なお、Z軸に沿う方向にみた第2継手部材62の形状は、
図8に示す例に限定されず、任意である。
【0088】
このように、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向にみて、第2固定位置PF2は、第1継手部材61に重ならずにヘッドチップ51に重なる。Z軸に沿う方向にみて第2固定位置PF2がヘッドチップ51に重なるので、ヘッドチップ51-1に対する第2継手部材62の固定が可能である。また、Z軸に沿う方向にみて第2固定位置PF2が第1継手部材61に重ならないので、ヘッドチップ51-1を第1継手部材61および第2継手部材62ごとユニットとして流路構造体52から取り外した後に、接着剤ADを破壊することなく、第2固定位置PF2へのアクセスが可能となる。したがって、接着剤ADを破壊することなく、第2継手部材62をヘッドチップ51-1から取り外すことができる。
【0089】
1-5.液体噴射ヘッドの新規製造
図9は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50の組み立てを説明するための図である。液体噴射ヘッド50を新規に製造する場合、
図9に示すように、まず、固定部材71によって第1継手部材61が流路構造体52に着脱可能に固定されるとともに、固定部材72によって第2継手部材62がヘッドチップ51に着脱可能に固定さる。その状態で、その後、第1継手部材61および第2継手部材62が接着剤ADにより接着される。
図9に示す例では、硬化前の接着剤ADが第2継手部材62に塗布される。なお、硬化前の接着剤ADが第1継手部材61に塗布されてもよい。
【0090】
ここで、互いにアライメントされた複数のヘッドチップ51が固定板53に接着された状態で、第1継手部材61および第2継手部材62の接着剤ADによる接着が行われる。また、このとき、固定板53には、流路構造体52に接着するための硬化前の接着剤ADfが塗布される。なお、硬化前の接着剤ADfは、流路構造体52に塗布されてもよい。
【0091】
以上のように、複数のヘッドチップ51がアライメントされた状態で、第1継手部材61および第2継手部材62の接着剤ADによる接着が行われるので、各ヘッドチップ51の位置決めを高精度に行うとともに、固定板53に不要な応力が加わることを低減しつつ、第1継手部材61および第2継手部材62を介して、流路構造体52およびヘッドチップ51を接続することができる。このように、接着剤ADを使用することにより、固定板53に接着されたヘッドチップ51同士のアライメントのズレを抑制することができる。
【0092】
これに対し、液体噴射ヘッド50が継手構造体60を備えない態様では、例えば、Z軸に沿う方向に弾性のシール部材をヘッドチップ51と流路構造体52との間に挟み込むことにより、導入口IHと分岐流路Pa2との間を液密に接続すると、このシール部材の反力によってヘッドチップ51または固定板53が変形する虞があり、この結果、アライメントにズレが生じる。
【0093】
1-6.ヘッドチップの再利用および液体噴射ヘッドの再生
図10は、第1実施形態に係る液体噴射ヘッド50からのヘッドチップ51の取り外しを説明するための図である。
図10では、ヘッドチップ51-2を取り外す場合が例示される。例えば、ヘッドチップ51-1が故障していない場合であってヘッドチップ51-2を別の液体噴射ヘッド50に再利用する場合、または、ヘッドチップ51-2が故障した場合であってヘッドチップ51-2を取り外した液体噴射ヘッド50を再生する場合、ヘッドチップ51-2が取り外される。なお、ノズルNからのインクの噴射回数が閾値を上回った場合などヘッドチップ51-2の寿命が短いと判断する場合には、ヘッドチップ51―2を故障したものとして流路構造体52から取り外す場合もある。
【0094】
図10に示すように、ドライバー等の工具を用いて、固定部材71による締結状態を解除することにより、ヘッドチップ51-2が液体噴射ヘッド50から取り外される。このとき、接着剤ADによる接着状態と固定部材72による締結状態とが維持されたままであるが、前述のようにZ軸に沿う方向にみてヘッドチップ51に重ならない位置に固定部材71が配置されるので、固定部材71への当該工具のアクセスが可能である。
【0095】
なお、ヘッドチップ51-2を液体噴射ヘッド50から取り外す前に、固定板53が適宜の方法により取り外される。固定板53の取り外しは、例えば、ヘッドチップ51と固定板53とを互いに接着する接着剤を適宜の方法により分解または溶融させることにより行われる。
【0096】
このように、ヘッドチップ51-2が継手構造体60-2ごと取り外すことができる。ここで、継手構造体60を用いることにより、ヘッドチップ51および流路構造体52のそれぞれには、接着剤残りが生じない。このため、後述のヘッドチップ51の再利用と液体噴射ヘッド50の再生とを行う際、ヘッドチップ51の導入口IHと流路構造体52の分岐流路Pa2との再接続を容易に行うことができる。
【0097】
これに対し、従来では、ヘッドチップ51および流路構造体52が互いに接着剤により直接接続されるため、ヘッドチップ51と流路構造体52とを無理に分離すると、これらに接着剤残りが生じたり、ヘッドチップ51の接着剤が塗布されていた導入口IHを形成している部分又は流路構造体52の接着剤が塗布されていた分岐流路Pa2を形成している部分が破損してしまったりする虞がある。このため、ヘッドチップ51の導入口IHと流路構造体52の分岐流路Pa2との再接続を行うことが難しい。
【0098】
図11は、第1実施形態におけるヘッドチップ51-2の再利用を説明するための図である。前述の
図10に示すように取り外されたヘッドチップ51-2が故障しておらず再利用可能である場合、
図11に示すように、ドライバー等の工具を用いて、固定部材72による締結状態を解除することにより、継手構造体60-2がヘッドチップ51-2から取り外される。このとき、接着剤ADによる接着状態が維持されたままであるが、前述のようにZ軸に沿う方向にみて第1継手部材61に重ならない位置に固定部材72が配置されるので、固定部材72への当該工具のアクセスが可能である。
【0099】
このように取り外されたヘッドチップ51-2は、前述の
図9に示す液体噴射ヘッド50の新規製造に用いるヘッドチップ51に利用したり、後述の
図12に示す液体噴射ヘッド50の再生に用いるヘッドチップ51に利用したりすることができる。
【0100】
このように、ヘッドチップ51-2には、接着剤残りが生じない。このため、ヘッドチップ51-2の再利用を行う際、ヘッドチップ51-2の導入口IHと流路構造体52の分岐流路Pa2との再接続を容易に行うことができる。
【0101】
図12は、第1実施形態における液体噴射ヘッド50の再生を説明するための図である。前述の
図10に示すようにヘッドチップ51-2を取り外した後の液体噴射ヘッド50が再生可能である場合、
図12に示すように、まず、第1継手部材61と互換性のある新たな第1継手部材61-Xが流路構造体52に固定されるとともに、第2継手部材62と互換性のある新たな第2継手部材62-Xがヘッドチップ51と互換性のある新たなヘッドチップ51-Xに固定される。その状態で、その後、第1継手部材61-Xおよび第2継手部材62-Xが接着剤ADにより接着される。
図12に示す例では、硬化前の接着剤ADが第2継手部材62-Xに塗布される。なお、硬化前の接着剤ADが第1継手部材61-Xに塗布されてもよい。
【0102】
ここで、ヘッドチップ51-Xが固定板53と互換性のある固定板53-Xに接着された状態で、第1継手部材61-Xおよび第2継手部材62-Xの接着剤ADによる接着が行われる。また、このとき、固定板53-Xには、流路構造体52に接着するための硬化前の接着剤ADfが塗布される。また、図示しないが、固定板53-Xには、他のヘッドチップ51に接着するための硬化前の接着剤が塗布される。なお、硬化前の接着剤ADfは、流路構造体52に塗布されてもよい。また、
図10に示すようにヘッドチップ51-2を取り外した後の固定板53が再利用可能である場合、その固定板53が固定板53-Xに代えて用いられてもよい。さらに、固定板53は、第1継手部材61-Xおよび第2継手部材62-Xの接着剤ADによる接着後に、ヘッドチップ51-Xを含む複数のヘッドチップ51に接着されてもよい。
【0103】
以上のように、ヘッドチップ51-2を取り外した後の液体噴射ヘッド50を再生することができる。ここで、流路構造体52には、接着剤残りが生じない。このため、液体噴射ヘッド50の再生を行う際、ヘッドチップ51の導入口IHと流路構造体52の分岐流路Pa2との再接続を容易に行うことができる。
【0104】
以上のように、液体噴射ヘッド50は、流路構造体52と、「第1ヘッドチップ」の一例であるヘッドチップ51-1と、第1継手部材61と、を備える。流路構造体52は、「第1接続流路」の一例である分岐流路Pa2-1aを有する。ヘッドチップ51-1は、ノズル列La-1を構成する複数のノズルNと、「第2接続流路」の一例である導入口IH-1aと、を有する。ノズル列La-1を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「液体」の一例であるインクを噴射する。導入口IH-1aは、ノズル列La-1を構成する複数のノズルNに連通する。第1継手部材61は、「第1中継流路」の一例である中継流路Pr1-1aを有する。中継流路Pr1-1aは、分岐流路Pa2-1aおよび導入口IH-1aに連通する。
【0105】
ここで、第1継手部材61が流路構造体52に着脱可能に固定されることにより、分岐流路Pa2-1aおよび中継流路Pr1-1aが互いに接続される。また、中継流路Pr1-1aの導入口IH-1aに向かう開口の周囲に配置される接着剤ADにより導入口IH-1aおよび中継流路Pr1-1aが互いに液密に連通する。
【0106】
以上の液体噴射ヘッド50では、第1継手部材61が流路構造体52に着脱可能に固定されるので、ヘッドチップ51-1を第1継手部材61ごと流路構造体52から取り外すことができる。このため、取り外したヘッドチップ51-1を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50を再生することができる。また、取り外したヘッドチップ51-1を別の液体噴射ヘッド50の一部として再利用することもできる。
【0107】
また、接着剤ADにより導入口IH-1aおよび中継流路Pr1-1aが互いに液密に連通するので、液体噴射ヘッド50の製造時または再生時において、流路構造体52に対する第1継手部材61の取付後に接着剤ADによる接着を行うことができる。このため、ヘッドチップ51-1のアライメントを行いつつ当該接着を行うことにより、
ヘッドチップ51-1を液体噴射ヘッド50に容易に搭載することができる。
【0108】
本実施形態では、前述のように、流路構造体52に対して第1継手部材61を着脱可能に固定するための第1固定位置PF1は、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向にみて、ヘッドチップ51-1に重ならない。このため、ヘッドチップ51-1を取り外さなくても、第1固定位置PF1へのアクセスが可能となる。したがって、流路構造体52からヘッドチップ51-1を取り外す際、取り外すヘッドチップ51-1に応力を作用させずに済むという利点がある。
【0109】
また、前述のように、液体噴射ヘッド50は、「第2中継流路」の一例である中継流路Pr2-1aを有する第2継手部材62と、をさらに備える。中継流路Pr2-1aは、中継流路Pr1-1aを介して分岐流路Pa2-1aに連通するとともに導入口IH-1aに連通する。ここで、第2継手部材62がヘッドチップ51-1に着脱可能に固定されることにより、導入口IH-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに接続される。また、接着剤ADが中継流路Pr2-1aの分岐流路Pa2-1aに向かう開口の周囲に配置されることにより、中継流路Pr1-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに液密に接続される。このような第2継手部材62を用いることにより、ヘッドチップ51の交換による液体噴射ヘッド50の再生とヘッドチップ51の再利用とのいずれもが可能となる。
【0110】
そのうえで、ヘッドチップ51-1に対して第2継手部材62を着脱可能に固定するための第2固定位置PF2は、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向にみて、第1継手部材61に重ならない。このため、ヘッドチップ51-1を第1継手部材61および第2継手部材62ごとユニットとして流路構造体52から取り外した後に、接着剤ADを破壊することなく、第2継手部材62をヘッドチップ51-1から取り外すことができる。この結果、ヘッドチップ51-1を別の液体噴射ヘッド50の一部として再利用することができる。
【0111】
ここで、第2継手部材62がヘッドチップ51-1に着脱可能に固定されることにより、導入口IH-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに接続される一方で、接着剤ADが中継流路Pr2-1aの分岐流路Pa2-1aに向かう開口の周囲に配置されることにより、中継流路Pr1-1aおよび中継流路Pr2-1aが互いに液密に接続されるので、第2継手部材62をヘッドチップ51-1から取り外すことにより、接着剤ADの残留のない状態でヘッドチップ51-1を取り外すことができる。したがって、ヘッドチップ51-1の再利用を好適に実施することができる。
【0112】
さらに、前述のように、接着剤ADが熱硬化型接着剤である場合、接着剤ADの耐液性を高めることができる。ここで、硬化後の熱硬化性接着剤は、加熱により溶融しないため、加熱により除去することはできない。しかし、本開示では、接着剤ADを除去する必要がないため、このような接着剤ADを用いることにより、ヘッドチップ51および流路構造体52のうちの少なくとも一方を交換可能にしながらも接着剤ADの耐液性を高めることができる。
【0113】
また、前述のように、液体噴射ヘッド50は、弾性を有するシール部材81をさらに備える。シール部材81は、第1継手部材61と流路構造体52との間に介在することにより、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続する。このため、第1継手部材61を流路構造体52に対して着脱可能としても、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続することができる。
【0114】
さらに、前述のように、液体噴射ヘッド50は、第1継手部材61を流路構造体52に着脱可能に固定する固定部材71をさらに備える。このため、第1継手部材61を流路構造体52に着脱可能に固定することができる。
【0115】
ここで、前述のように、固定部材71は、シール部材81を圧縮させるように第1継手部材61および流路構造体52を共締めするネジである。このため、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続することができる。また、固定部材71がネジであると、ドライバー等の工具を用いて、流路構造体52への第1継手部材61の取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0116】
また、前述のように、流路構造体52は、「第3接続流路」の一例である分岐流路Pa2-1bをさらに有する。分岐流路Pa2-1bは、分岐流路Pa2-1aとは異なる流路である。一方、ヘッドチップ51-1は、「第4接続流路」の一例である導入口IH-1bをさらに有する。導入口IH-1bは、分岐流路Pa2-1bに連通し、かつ、導入口IH-1aとは異なる流路である。また、第1継手部材61は、「第3中継流路」の一例である中継流路Pr1-1bをさらに有する。中継流路Pr1-1bは、分岐流路Pa2-1bおよび導入口IH-1bに連通する。
【0117】
ここで、中継流路Pr1-1bの導入口IH-1bに向かう開口の周囲に配置される接着剤ADにより、導入口IH-1bおよび中継流路Pr1-1bが互いに液密に連通する。このため、1つの第1継手部材61を1つのヘッドチップ51の複数の流路に対して共用することができる。この結果、1つのヘッドチップ51が複数の流路を有する場合に第1継手部材61を流路構造体52から容易に取り外すことができる。
【0118】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0119】
図13は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド50Aの断面図である。
図14は、
図13中のD-D線断面図である。
図15は、第2実施形態における第1固定位置PF1および第2固定位置PF2を説明するための模式的平面図である。
図15では、Z2方向にみたヘッドチップ51と第1固定位置PF1および第2固定位置PF2との関係が模式的に示される。
【0120】
液体噴射ヘッド50Aは、継手構造体60に代えて継手構造体60Aを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。
図13中、継手構造体60A-1は、ヘッドチップ51-1に対応する継手構造体60Aであり、継手構造体60A-2は、ヘッドチップ51-2に対応する継手構造体60Aである。以下では、継手構造体60A-1および継手構造体60A-2のそれぞれを区別しないで継手構造体60Aという場合がある。
【0121】
継手構造体60Aは、第1継手部材61に代えて第1継手部材61Aを有し、第2継手部材62に代えて第2継手部材62Aを有し、シール部材81に代えてシート状のシール部材81Aが用いられ、シール部材82に代えてシート状のシール部材82Aが用いられること以外は、第1実施形態の継手構造体60と同様に構成される。ただし、前述の第1実施形態では、1つのヘッドチップ51に対して2つの継手構造体60が用いられるのに対し、本実施形態では、1つのヘッドチップ51に対して1つの継手構造体60が用いられる。なお、シール部材81Aおよびシール部材82Aのそれぞれは、流路を構成する複数の孔を有するシート状であること以外は、第1実施形態のシール部材81またはシール部材82と同様に構成される。本実施形態では、1つのヘッドチップ51に対してそれぞれ1つのシール部材81A及びシール部材82Aが用いられる。
【0122】
図13および
図14に示すように、第1継手部材61Aは、第1実施形態のY軸に沿う方向に隣り合う2つの第1継手部材61を連結したように構成されるとともに、第1固定位置PF1の位置が異なること以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。
【0123】
同様に、第2継手部材62Aは、第1実施形態の4つの第2継手部材62を連結したように構成されるとともに、第2固定位置PF2の位置が異なること以外は、第1実施形態の第2継手部材62と同様に構成される。
【0124】
図15に示すように、第1継手部材61Aおよび第2継手部材62Aのそれぞれは、Z軸に沿う方向にみて、Y軸に沿う方向に延びる形状をなす。ただし、第2継手部材62AのY軸に沿う幅は、第1継手部材61AのY軸に沿う幅よりも長い。そして、第2継手部材62AのY1方向での端が第1継手部材61AよりもY1方向に配置されるとともに、第2継手部材62AのY2方向での端が第1継手部材61AよりもY2方向に配置される。これにより、第2継手部材62AがZ軸に沿う方向にみて第1継手部材61Aに重ならない2つの部分を有する。当該2つの部分のそれぞれには、2つの第2固定位置PF2が位置する。
【0125】
また、第1継手部材61Aおよび第2継手部材62Aのそれぞれは、Z軸に沿う方向にみて、ヘッドチップ51の外縁の内側に配置される。このため、前述の第1実施形態に比べて、X軸に沿う方向に隣り合う2つのヘッドチップ51の間の距離を短くすることができる。この結果、液体噴射ヘッド50Aの小型化を図ることができる。
【0126】
図15に示す例では、第1継手部材61Aおよび第2継手部材62AのそれぞれのX軸に沿う幅は、ヘッドチップ51のX軸に沿う幅に等しい。このように、Z軸に沿う方向にみて、第1継手部材61Aの全域は、ヘッドチップ51および第2継手部材62Aの両方に重なる。そして、第1継手部材61Aは、4つの第1固定位置PF1を有する。なお、Z軸に沿う方向にみた第1継手部材61Aおよび第2継手部材62Aのそれぞれの形状は、
図15に示す例に限定されず、任意である。
【0127】
このように、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向であるZ1方向またはZ2方向にみて、第1固定位置PF1および第2固定位置PF2のそれぞれは、ヘッドチップ51-1に重なる。このため、ヘッドチップ51を取り外す場合、接着剤ADによる接着状態を解除する必要がある。接着状態を解除とは、接着剤ADが破壊する凝集破壊、接着剤ADと第1継手部材61A又は第2継手部材62Aである被着材との界面が破壊する界面破壊、被着材が破壊する基材破壊の何れかによる破壊、又は、それらが混在した破壊によって、第1継手部材61Aと第2継手部材62Aとを分離させることである。その後、固定部材71による締結状態を解除したり、固定部材72による締結状態を解除したりすることができる。
【0128】
以上の第2実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Aを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Aの一部として再利用したりすることができる。
【0129】
本実施形態では、前述のように、流路構造体52に対して第1継手部材61Aを着脱可能に固定するための第1固定位置PF1は、ヘッドチップ51-1と流路構造体52との積層方向にみて、ヘッドチップ51-1に重なる。
【0130】
このため、第1固定位置PF1が当該方向にみてヘッドチップ51-1に重ならない態様に比べて、液体噴射ヘッド50Aの小型化を図ることができる。ここで、第1継手部材61Aを流路構造体52から取り外すには、第1継手部材61Aおよびヘッドチップ51-1を互いに接着する接着剤ADを破壊することにより、第1固定位置PF1へのアクセスが可能となるように、ヘッドチップ51-1を取り外した後、第1継手部材61Aを流路構造体52から取り外せばよい。
【0131】
3.第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0132】
図16は、第3実施形態に係る液体噴射ヘッド50Bの断面図である。液体噴射ヘッド50Bは、継手構造体60に代えて継手構造体60Bを有すること、ヘッドチップ51-1、51-2がY軸に沿う方向に関して同じ位置に配置されていること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。
【0133】
ここで、ヘッドチップ51_2は、「第2ヘッドチップ」の一例であり、ノズル列La-2またはノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「第2ノズル」の一例である。ノズル列La-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、導入口IH-2aが「第5接続流路」の一例である。ノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、導入口IH-2bが「第5接続流路」の一例である。ノズル列La-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、分岐流路Pa2-2aが「第6接続流路」の一例である。ノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、分岐流路Pa2-2bが「第6接続流路」の一例である。ノズル列La-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、中継流路Pr1-2aが「第4中継流路」の一例である。ノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNのそれぞれが「第2ノズル」に相当する場合、中継流路Pr1-2bが「第4中継流路」の一例である。
【0134】
継手構造体60Bは、第1継手部材61に代えて第1継手部材61Bを有すること、前述の第2実施形態と同様、シール部材81に代えてシート状のシール部材81Aが用いられるとともに、シール部材82に代えてシート状のシール部材82Aが用いられること以外は、第1実施形態の継手構造体60と同様に構成される。ただし、前述の第1実施形態では、1つのヘッドチップ51に対して2つの継手構造体60が用いられるのに対し、本実施形態では、2つのヘッドチップ51に対して1つの継手構造体60Bが用いられる。なお、シール部材81Aは、ヘッドチップ51ごとに個別に設けられる態様に限定されず、継手構造体60Bごとに設けられてもよい。
【0135】
図16に示すように、第1継手部材61Bは、前述の第2実施形態と同様に第1実施形態のY軸に沿う方向に隣り合う2つの第1継手部材61を連結したように構成されるだけでなく、第1実施形態のX軸に沿う方向に隣り合う2つの第1継手部材61を連結したように構成される。このため、第1継手部材61Bを流路構造体52から取り外すことにより、ヘッドチップ51-1およびヘッドチップ51-2を同時に取り外すことができる。
【0136】
なお、第1継手部材61Bは、第2実施形態のY軸に沿う方向に隣り合う2つの第1継手部材61Aを連結したように構成されてもよい。この場合、第1継手部材61Bを流路構造体52から取り外すことにより、Y軸に沿う方向に隣り合う複数のヘッドチップ51を同時に取り外すことができる。また、第2継手部材62も、第1継手部材61Bと同様、複数のヘッドチップ51に共通する1つの第2継手部材62として構成されてもよい。
【0137】
以上の第3実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Bを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Bの一部として再利用したりすることができる。
【0138】
本実施形態の液体噴射ヘッド50Bは、前述のように、「第2ヘッドチップ」の一例であるヘッドチップ51-2を有する。ヘッドチップ51-2は、ノズル列La-2またはノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNと、「第5接続流路」の一例である導入口IH-2aまたは導入口IH-2bと、を有する。ノズル列La-2またはノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「第2ノズル」の一例である。導入口IH-2aは、ノズル列La-2を構成する複数のノズルNに連通する。導入口IH-2bは、ノズル列Lb-2を構成する複数のノズルNに連通する。
【0139】
ここで、流路構造体52は、「第6接続流路」の一例である分岐流路Pa2-2aまたは分岐流路Pa2-2bを有する。分岐流路Pa2-2aおよび分岐流路Pa2-2bのそれぞれは、分岐流路Pa2-1aとは異なる流路である。第1継手部材61Bは、「第4中継流路」の一例である中継流路Pr1-2aまたは中継流路Pr1-2bを有する。中継流路Pr1-2aは、導入口IH-2aおよび分岐流路Pa2-2aに連通する。中継流路Pr1-2bは、導入口IH-2bおよび分岐流路Pa2-2bに連通する。
【0140】
中継流路Pr1-2aの導入口IH-2aに向かう開口の周囲に配置される接着剤ADにより中継流路Pr1-2aおよび導入口IH-2aが互いに液密に連通する。同様に、中継流路Pr1-2bの導入口IH-2bに向かう開口の周囲に配置される接着剤ADにより中継流路Pr1-2bおよび導入口IH-2bが互いに液密に連通する。このような第1継手部材61Bを用いることにより、複数のヘッドチップ51をまとめて交換する際の作業性を向上させることができる。
【0141】
4.第4実施形態
以下、本開示の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0142】
図17は、第4実施形態に係る液体噴射ヘッド50Cの第1継手部材61Cを説明するための図である。液体噴射ヘッド50Cは、流路構造体52、第1継手部材61および固定部材71に代えて、流路構造体52C、第1継手部材61C、固定部材73を有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。流路構造体52Cは、以下に述べる固定部材73に関する構成以外は、第1実施形態の流路構造体52と同様に構成される。第1継手部材61Cは、以下に述べる固定部材73に関する構成以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。
【0143】
固定部材73は、軸部73aと頭部73bと突出部73cとバネ73dを有する。軸部73aは、Z軸に沿って延びる棒状をなす。頭部73bは、軸部73aのZ2方向での端に接続される。突出部73cは、軸部73aのZ1方向での端から軸部73aの径方向での外方に突出する。
【0144】
第1継手部材61Cは、フランジ61bを有しており、フランジ61bには、孔61cが設けられる。孔61cは、フランジ61bをZ軸に沿う方向に貫通する。孔61cには、フランジ61bに対してZ2方向の位置に頭部73bが配置されるように、固定部材73の軸部73aが通される。孔61cは、頭部73bが通過を許容しないように構成される。
【0145】
一方、流路構造体52CのZ2方向を向く面には、凹部52fが設けられる。凹部52fには、固定部材73の突出部73cが配置される。凹部52fの周方向での一部には、突出部73cの進入を許容する溝52gが設けられる。また、凹部52fの所定深さの位置には、突出部73cを収容可能であるとともに軸部73aの所定範囲の回転を許容するように、周方向での所定範囲にわたり幅広の収容部52hが設けられる。そして、軸部73aの回転により、突出部73cの周方向での位置を溝52gの位置に合わせることにより、突出部73cのZ2方向での移動を許容する状態と、突出部73cの周方向での位置を溝52gの位置と異ならせることにより、突出部73cのZ2方向での移動を規制する状態と、を切換可能である。
【0146】
ここで、固定部材73の頭部73bとフランジ61bとの間には、Z軸に沿う方向に圧縮状態のバネ73dが配置される。このため、バネ73dにより突出部73cがZ2方向に向けて付勢される。これにより、突出部73cのZ2方向での移動を規制する状態では、流路構造体52Cおよび第1継手部材61Cが固定部材73およびバネ73dにより着脱可能に固定される。なお、バネ73dは、図示のコイルバネに限定されず、例えば、板バネであってもよい。また、シール部材81の厚さ等によっては、シール部材81の弾性変形による弾性力を用いて、突出部73cがZ2方向に向けて付勢されてもよい。この場合、バネ73dが省略されてもよい。
【0147】
以上の第4実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Cを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Cの一部として再利用したりすることができる。
【0148】
本実施形態では、固定部材73は、第1継手部材61Cおよび流路構造体52Cを互いに近づける方向の弾性力を生じさせるバネ73dを含む。このため、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続することができる。また、固定部材73の回転操作により、流路構造体52Cへの第1継手部材61Cの取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0149】
なお、固定部材72の代わりに、固定部材73と同様の固定部材によって、ヘッドチップ51と第2継手部材62とを着脱可能に固定しても構わない。
【0150】
5.第5実施形態
以下、本開示の第5実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0151】
図18は、第5実施形態に係る液体噴射ヘッド50Dの第1継手部材61Dを説明するための図である。液体噴射ヘッド50Dは、固定部材71を省略するとともに、流路構造体52および第1継手部材61に代えて、流路構造体52Dおよび第1継手部材61Dを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。流路構造体52Dは、以下に述べる第1継手部材61Dとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の流路構造体52と同様に構成される。第1継手部材61Dは、以下に述べる流路構造体52Dとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。
【0152】
第1継手部材61Dは、複数の弾性部61eと複数の爪61fとを有する。複数の弾性部61eそれぞれは、第1継手部材61Dの径方向に弾性変形可能に構成される。
図18に示す例では、複数の弾性部61eは、第1継手部材61DのZ1方向での先端付近において、第1継手部材61Dの周方向に互いに間隔をあけて配置されており、Z1方向に向けて突出する。各弾性部61eの先端には、第1継手部材61Dの径方向での内方に向けて突出する爪61fが設けられる。
【0153】
流路構造体52Dには、複数の凹部52iが設けられる。複数の凹部52iは、前述の複数の爪61fに対応して、第1継手部材61Dの周方向に互いに間隔をあけて配置されており、第1継手部材61Dの径方向での外方を向く。各凹部52iには、爪61fが進入する。これにより、第1継手部材61DのZ2方向での移動が規制される。また、弾性部61eを径方向での外方へ変形させることにより、この規制を解除することができる。
【0154】
以上の第5実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Dを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Dの一部として再利用したりすることができる。
【0155】
本実施形態では、前述のように、第1継手部材61Dは、「突起」の一例である爪61fを有する。爪61fは、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの径方向での内方に突出する。一方、流路構造体52Dは、爪61fに嵌め合う凹部52iを有する。そして、爪61fおよび凹部52iの互いの嵌め合いにより、第1継手部材61Dが流路構造体52Dに着脱可能に固定される。このため、分岐流路Pa2-1aおよび中継流路Pr1-1aを液密に接続することができる。また、爪61fおよび凹部52iの嵌め合いまたはその解除により、流路構造体52Dへの第1継手部材61Dの取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0156】
なお、流路構造体52Dが分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの径方向での外方または内方に突出する突起を有するとともに、第1継手部材61Dが当該突起に嵌め合う凹部を有する構成であってもよい。
【0157】
なお、固定部材72の代わりに、本実施形態と同様の固定方法によって、ヘッドチップ51と第2継手部材62とを着脱可能に固定しても構わない。
【0158】
6.第6実施形態
以下、本開示の第6実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0159】
図19は、第6実施形態に係る液体噴射ヘッド50Eの第1継手部材61Eを説明するための図である。液体噴射ヘッド50Dは、固定部材71を省略するとともに、流路構造体52および第1継手部材61に代えて、流路構造体52Eおよび第1継手部材61Eを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。流路構造体52Eは、以下に述べる第1継手部材61Eとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の流路構造体52と同様に構成される。第1継手部材61Eは、以下に述べる流路構造体52Eとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。
【0160】
第1継手部材61Eは、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雄ネジ61hを有する。雄ネジ61hが形成された部分は、第1継手部材61のZ1方向を向く面61gからZ1方向に突出する。一方、流路構造体52EのZ2方向を向く面に形成された凹部の内周面には、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雌ネジ52jが形成されている。当該凹部の底面には、分岐流路Pa2が開口する。雌ネジ52jは、雄ネジ61hに嵌め合う。この嵌め合いにより、流路構造体52Eおよび第1継手部材61Eが互いに着脱可能に固定される。また、流路構造体52Eおよび第1継手部材61Eのうちの一方を他方に対して回転させることにより、この固定状態を解除することができる。
【0161】
ここで、流路構造体52EのZ2方向を向く面と第1継手部材61Eの面61gとの間には、シール部材81が弾性変形した状態で配置される。なお、シール部材81は、雄ネジ61hが形成された部分の先端面と雌ネジ52jが形成された凹部の底面との間に配置されてもよい。
【0162】
以上の第6実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Eを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Eの一部として再利用したりすることができる。
【0163】
本実施形態では、前述のように、第1継手部材61Eには、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雄ネジ61hが設けられる。一方、流路構造体52Eには、雄ネジ61hに締結される雌ネジ52jが設けられる。そして、雄ネジ61hおよび雌ネジ52jの締結により、第1継手部材61Eが流路構造体52Eに着脱可能に固定される。このため、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続することができる。また、工具を用いずに回転操作により、流路構造体52Eへの第1継手部材61Eの取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0164】
なお、固定部材72の代わりに、本実施形態と同様の固定方法によって、ヘッドチップ51と第2継手部材62とを着脱可能に固定しても構わない。
【0165】
7.第7実施形態
以下、本開示の第7実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0166】
図20は、第7実施形態に係る液体噴射ヘッド50Fの第1継手部材61Fを説明するための図である。液体噴射ヘッド50Fは、固定部材71を省略するとともに、流路構造体52および第1継手部材61に代えて、流路構造体52Fおよび第1継手部材61Fを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。流路構造体52Fは、以下に述べる第1継手部材61Fとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の流路構造体52と同様に構成される。第1継手部材61Fは、以下に述べる流路構造体52Fとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。
【0167】
流路構造体52Fは、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雄ネジ52kを有する。雄ネジ52kが形成された部分は、流路構造体52FのZ2方向を向く面からZ2方向に突出する。一方、第1継手部材61FのZ1方向の端面61iに形成された凹部の内周内には、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雌ネジ61jが形成されている。当該凹部の底面には、中継流路Pr1が開口する。雌ネジ61jは、雄ネジ52kに嵌め合う。この嵌め合いにより、流路構造体52Fおよび第1継手部材61Fが互いに着脱可能に固定される。また、流路構造体52Fおよび第1継手部材61Fのうちの一方を他方に対して回転させることにより、この固定状態を解除することができる。
【0168】
ここで、端面61iと流路構造体52FのZ2方向を向く面との間には、シール部材81が弾性変形した状態で配置される。なお、シール部材81は、雄ネジ52kが形成された部分の先端面と雌ネジ61jが形成された凹部の底面との間に配置されてもよい。
【0169】
以上の第7実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Fを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Fの一部として再利用したりすることができる。
【0170】
本実施形態では、前述のように、流路構造体52Fには、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの中心軸まわりの雄ネジ52kが設けられる。一方、第1継手部材61Fには、雄ネジ52kに締結される雌ネジ61jが設けられる。そして、雄ネジ52kおよび雌ネジ61jの締結により、第1継手部材61Fが流路構造体52Fに着脱可能に固定される。このため、分岐流路Pa2-1aと中継流路Pr1-1aとを液密に接続することができる。また、工具を用いずに回転操作により、流路構造体52Fへの第1継手部材61Fの取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0171】
なお、固定部材72の代わりに、本実施形態と同様の固定方法によって、ヘッドチップ51と第2継手部材62とを着脱可能に固定しても構わない。
【0172】
8.第8実施形態
以下、本開示の第8実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0173】
図21は、第8実施形態に係る液体噴射ヘッド50Gの第1継手部材61Gを説明するための図である。液体噴射ヘッド50Gは、固定部材71を省略するとともに、流路構造体52および第1継手部材61に代えて、流路構造体52Gおよび第1継手部材61Gを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。流路構造体52Gは、以下に述べる第1継手部材61Gとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の流路構造体52と同様に構成される。第1継手部材61Gは、以下に述べる流路構造体52Gとの固定に関する構成以外は、第1実施形態の第1継手部材61と同様に構成される。なお、
図21では、図示を省略するが、第1継手部材61Gおよび流路構造体52Gが互いに接続された状態で、これらの間に配置されるよう弾性のシール部材が第1継手部材61Gまたは流路構造体52Gに設けられる。
【0174】
第1継手部材61Gは、いわゆるワンタッチ式の雄アダプター構造を有する。具体的に説明すると、第1継手部材61Gは、弁体61mとバネ61nとを有する。
【0175】
弁体61mは、第1継手部材61Gの中継流路Pr1内にZ軸に沿う方向に移動可能に配置される。バネ61nは、弁体61mをZ1方向に向けて付勢するように第1継手部材61Gに固定される。ここで、中継流路Pr1の壁面には、弁座61pが設けられており、弁体61mは、後述の弁体52mとの接触により、バネ61nの付勢力に抗してZ2方向に移動する。これにより、弁座61pと弁体61mとの間には、隙間が形成される。また、第1継手部材61Gの外周には、後述のボール52tの一部が進入する凹部61qが周方向に沿って設けられる。
【0176】
一方、流路構造体52Gは、いわゆるワンタッチ式の雌アダプター構造を有する。具体的に説明すると、流路構造体52Gは、弁体52mとバネ52nとスリーブ52qとバネ52rと複数のボール52tとを有する。
【0177】
弁体52mは、流路構造体52Gの分岐流路Pa2内にZ軸に沿う方向に移動可能に配置される。バネ52nは、弁体52mをZ2方向に向けて付勢するように流路構造体52Gに固定される。ここで、分岐流路Pa2の壁面には、弁座52pが設けられており、弁体52mは、前述の弁体61mとの接触により、バネ52nの付勢力に抗してZ1方向に移動する。これにより、弁座52pと弁体52mとの間には、隙間が形成される。スリーブ52qは、分岐流路Pa2の外部でZ軸に沿う方向に移動可能に配置される。また、スリーブ52qは、Z軸に沿う方向に移動により、ボール52tの径方向での外方への移動を規制する状態と許容する状態とに切換可能に構成される。バネ52rは、スリーブ52qをZ1方向に向けて付勢するように流路構造体52Gに固定される。流路構造体52Gには、周方向に並ぶとともに径方向に貫通する複数の孔52sが設けられており、各孔52s内には、ボール52tが径方向に移動可能に配置される。スリーブ52qにより径方向での外方への移動が規制される状態では、各ボール52tの一部が前述の凹部61qに侵入することにより、流路構造体52Gに対する第1継手部材61GのZ2方向への移動が規制される。また、スリーブ52qをバネ52rの付勢力に抗してZ2方向に移動させることにより、スリーブ52qをボール52tの径方向での外方への移動を許容する状態とすることができる。これにより、凹部61qからボール52tが径方向での外方へ退避するので、第1継手部材61Gを流路構造体52Gから取り外すことができる。
【0178】
第1継手部材61Gを流路構造体52Gから取り外すと、弁体61mは、バネ61nの付勢力により弁座61pに接触する。これにより、中継流路Pr1が閉塞される。同様に、第1継手部材61Gを流路構造体52Gから取り外すと、弁体52mは、52nの付勢力により弁座52pに接触する。これにより、分岐流路Pa2が閉塞される。
【0179】
以上の第8実施形態によっても、取り外したヘッドチップ51を別のヘッドチップ51に交換することにより、液体噴射ヘッド50Gを再生したり、取り外したヘッドチップ51を別の液体噴射ヘッド50Gの一部として再利用したりすることができる。
【0180】
本実施形態では、前述のように、流路構造体52Gは、ボール52tを有しており、ボール52tの一部が「突起」として機能する。当該一部は、分岐流路Pa2-1aまたは中継流路Pr1-1aの径方向での内方に突出する。一方、第1継手部材61Gは、ボール52tの一部に嵌め合う凹部61qを有する。そして、ボール52tの一部および凹部61qの互いの嵌め合いにより、第1継手部材61Gが流路構造体52Gに着脱可能に固定される。このため、分岐流路Pa2および中継流路Pr1を液密に接続することができる。また、ボール52tの一部および凹部61qの嵌め合いまたはその解除により、流路構造体52Gへの第1継手部材61Gの取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0181】
また、前述のように、第1継手部材61Gは、流路構造体52Gに取り付けられた状態で分岐流路Pa2および中継流路Pr1を互いに連通させる開状態と、流路構造体52Gから取り外された状態で中継流路Pr1を閉塞させる閉状態と、に開閉可能である。このため、第1継手部材61Gを流路構造体52Gから取り外した状態で、中継流路Pr1からの液体の漏れを防止することができる。
【0182】
なお、固定部材72の代わりに、本実施形態と同様の固定方法によって、ヘッドチップ51と第2継手部材62とを着脱可能に固定しても構わない。
【0183】
9.変形例
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0184】
9-1.変形例1
図22は、変形例1に係る液体噴射ヘッド50Hの断面図である。液体噴射ヘッド50Hは、継手構造体60に代えて継手構造体60Hを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。継手構造体60Hは、第2継手部材62を省略したこと以外は、第1実施形態の継手構造体60と同様に構成される。ここで、第1継手部材61は、接着剤ADによりヘッドチップ51に接着される。接着剤ADが各導入口IHの各分岐流路Pa2に向かう開口の周囲に配置されることにより、各中継流路Pr1および各導入口IHが互いに液密に接続される。
【0185】
以上の変形例1では、接着剤ADが導入口IH-1aの分岐流路Pa2-1aに向かう開口の周囲に配置されることにより、中継流路Pr1-1aおよび導入口IH-1aが互いに液密に接続される。このような液体噴射ヘッド50Hでは、ヘッドチップ51-1を再利用する目的がない場合、第2継手部材62を用いないことにより、液体噴射ヘッド50Hの再生が容易となるので、再生コストを低減することができる。
【0186】
9-2.変形例2
図23は、変形例2に係る液体噴射ヘッド50Iの断面図である。
図23では、
図7に対応する切断面における液体噴射ヘッド50Iの断面図が示される。液体噴射ヘッド50Iは、継手構造体60に代えて継手構造体60Iを有すること以外は、第1実施形態の液体噴射ヘッド50と同様に構成される。継手構造体60Iは、第1継手部材61を省略したこと以外は、第1実施形態の継手構造体60と同様に構成される。ここで、第2継手部材62は、接着剤ADにより流路構造体52に接着される。接着剤ADが各分岐流路Pa2の各導入口IHに向かう開口の周囲に配置されることにより、各中継流路Pr2および各導入口IHが互いに液密に接続される。
【0187】
以上の変形例2では、接着剤ADが分岐流路Pa2の導入口IHに向かう開口の周囲に配置されることにより、中継流路Pr2および導入口IHが互いに液密に接続される。このような液体噴射ヘッド50Iでは、液体噴射ヘッド50Iを再生する目的、より具体的には流路構造体52を再利用する目的がない場合、第1継手部材61を用いないことにより、ヘッドチップ51の再利用可能な構成を低コスト化で実現することができる。
【0188】
9-3.変形例3
前述の形態では、第1継手部材61の中継流路Pr1が、流路構造体52の分岐流路Pa2と液密に接続されていたが、これには限られない。例えば、流路構造体52の有する流路Paが、前述の形態のように共通流路Pa1及び共通流路Pa1から分岐する複数の分岐流路Pa2で構成されておらず、開口HLからヘッドチップ51まで分岐することなく1つの流路として構成されている場合、当該1つの流路と中継流路Pr1とが液密に接続されてもよい。また、液体噴射ヘッド50がヘッドチップ51から流路構造体52へ液体を回収する回収流路を備える場合には、分岐流路Pa2、中継流路Pr1、中継流路Pr2及び導入口IHのそれぞれは、当該回収流路の一部であってもよい。
【0189】
9-4.変形例4
前述の形態では、液体噴射ヘッドがライン型である態様が例示されるが、この態様に限定されず、液体噴射ヘッドが媒体Mの幅方向に往復動するシリアル型であってもよい。
【0190】
9-5.変形例5
前述の形態で例示した液体噴射装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0191】
10…液体貯留部、20…制御ユニット、30…搬送機構、40…移動機構、50…液体噴射ヘッド、50A…液体噴射ヘッド、50B…液体噴射ヘッド、50C…液体噴射ヘッド、50D…液体噴射ヘッド、50E…液体噴射ヘッド、50F…液体噴射ヘッド、50G…液体噴射ヘッド、50H…液体噴射ヘッド、51…ヘッドチップ、51-1…ヘッドチップ(第1ヘッドチップ)、51-2…ヘッドチップ(第2ヘッドチップ)、51-3…ヘッドチップ、51-4…ヘッドチップ、51-5…ヘッドチップ、51-6…ヘッドチップ、51-7…ヘッドチップ、51-X…ヘッドチップ、51a…流路基板、51b…圧力室基板、51c…ノズルプレート、51d…吸振体、51e…振動板、51f…駆動素子、51g…保護板、51h…ケース、51i…配線基板、51j…駆動回路、52…流路構造体、52C…流路構造体、52D…流路構造体、52E…流路構造体、52F…流路構造体、52G…流路構造体、52a…凹部、52b…流路形成部、52c…壁部、52d…管部、52f…凹部、52g…溝、52h…収容部、52i…凹部、52j…雌ネジ、52k…雄ネジ、52m…弁体、52n…バネ、52p…弁座、52q…スリーブ、52r…バネ、52s…孔、52t…ボール、53…固定板、53-X…固定板、53a…開口部、55…固定板、55a…開口部、56…枠体、60…継手構造体、60-1…継手構造体、60-2…継手構造体、60A…継手構造体、60A-1…継手構造体、60A-2…継手構造体、60B…継手構造体、60H…継手構造体、61…第1継手部材、61-X…第1継手部材、61A…第1継手部材、61B…第1継手部材、61C…第1継手部材、61D…第1継手部材、61E…第1継手部材、61F…第1継手部材、61G…第1継手部材、61a…フランジ、61b…フランジ、61c…孔、61e…弾性部、61f…爪、61g…面、61h…雄ネジ、61i…端面、61j…雌ネジ、61m…弁体、61n…バネ、61p…弁座、61q…凹部、62…第2継手部材、62-X…第2継手部材、62A…第2継手部材、62a…フランジ、71…固定部材、72…固定部材、73…固定部材、73a…軸部、73b…頭部、73c…突出部、73d…バネ、81…シール部材、81A…シール部材、82…シール部材、82A…シール部材、100…液体噴射装置、AD…接着剤、ADf…接着剤、C…圧力室、Com…駆動信号、DM…方向、FN…噴射面、HL…開口、IH…導入口、IH-1a…導入口(第2接続流路)、IH-1b…導入口(第4接続流路)、IH-2a…導入口(第5接続流路)、IH-2b…導入口(第5接続流路)、La…ノズル列、La-1…ノズル列(複数の第1ノズルで構成されるノズル列)、La-2…ノズル列(複数の第2ノズルで構成されるノズル列)、Lb…ノズル列、Lb-1…ノズル列、Lb-2…ノズル列(複数の第2ノズルで構成されるノズル列)、M…媒体、N…ノズル、Na…連通流路、PF1…第1固定位置、PF2…第2固定位置、Pa…流路、Pa-1…流路、Pa-2…流路、Pa1…共通流路、Pa1-1…共通流路、Pa1-2…共通流路、Pa2…分岐流路、Pa2-1…分岐流路、Pa2-1a…分岐流路(第1接続流路)、Pa2-1b…分岐流路(第3接続流路)、Pa2-2…分岐流路、Pa2-2a…分岐流路(第6接続流路)、Pa2-2b…分岐流路(第6接続流路)、Pr1…中継流路、Pr1-1a…中継流路(第1中継流路)、Pr1-1b…中継流路(第3中継流路)、Pr1-2a…中継流路(第4中継流路)、Pr1-2b…中継流路(第4中継流路)、Pr2-1a…中継流路(第2中継流路)、Pr2-1b…中継流路、Pr2-2a…中継流路、Pr2-2b…中継流路、R…リザーバー、R-1a…リザーバー、R-1b…リザーバー、R-2a…リザーバー、R-2b…リザーバー、R1…空間、R2…空間、Ra…個別流路、S…空間、SI…制御信号。