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特開2024-12120スライド装置及びスライド装置の組み立て方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012120
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】スライド装置及びスライド装置の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20240118BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240118BHJP
【FI】
B60N2/07
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108645
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】63/368,430
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/373,394
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/373,393
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンヒード ディーン シー
(72)【発明者】
【氏名】シムズ アンドリュー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュランド ジャスティン
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置及びそのスライド装置の組み立て方法を提供する。
【解決手段】スライド装置1であって、複数の係止孔が延在方向に並んで設けられたレール11と、レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダ12と、係止孔に噛合う螺子部材27を含み、スライダに固定されたギヤボックス20と、螺子部材を回転駆動させて、スライダをレールに対してスライドさせる電気モータ21と、を有し、ギヤボックスには、螺子部材を摩擦係止し、螺子部材の回転を規制する回転規制装置55が設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド装置であって、
複数の係止孔が延在方向に並んで設けられたレールと、
前記レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダと、
前記係止孔に噛合う螺子部材を含み、前記スライダに固定されたギヤボックスと、
前記螺子部材を回転駆動させて、前記スライダを前記レールに対してスライドさせる電気モータと、を有し、
前記ギヤボックスには、前記螺子部材を摩擦係止し、前記螺子部材の回転を規制する回転規制装置が設けられているスライド装置。
【請求項2】
前記螺子部材は所定の軸線に沿って延びる円柱状の軸部と、前記軸部の外周面に設けられ、且つ、らせん状のネジ山を有する雄ネジ部とを備え、
前記ギヤボックスは、前記螺子部材を回転可能に支持すると共に、前記雄ネジ部の軸線方向両端に位置する端面それぞれに対向する側壁を備えたハウジングを有し、
前記回転規制装置は、前記螺子部材を前記側壁の一方に押し付けることにより、前記螺子部材の回転を摩擦係止する請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記回転規制装置は、付勢装置と、前記付勢装置の付勢力により伸長し、前記螺子部材と前記側壁に押し付けて摩擦係止する伸縮装置とを備える請求項2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記伸縮装置は、前記軸部が貫通する内孔を有し、互いに隣接して配置された2つの筒状部材を備え、
前記筒状部材はそれぞれ互いに対向する面に、前記螺子部材の前記軸線の周方向に互いに同じ方向に傾斜する傾斜面を有し、
前記付勢装置は、2つの前記筒状部材を逆向きに回転させて前記傾斜面に沿って摺動させることにより、前記伸縮装置を伸長させるべく付勢する請求項3に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記伸縮装置と、前記側壁の他方との互いに対向する面にはそれぞれ、前記軸線の回りに前記傾斜面とは逆向きに傾斜する逆傾斜面が設けられている請求項4に記載のスライド装置。
【請求項6】
前記付勢装置は、前記ハウジングと、2つの前記筒状部材とにそれぞれに接続され、前記筒状部材を逆向きに回転させる方向に付勢する2つの付勢部材を備える請求項4に記載のスライド装置。
【請求項7】
前記筒状部材は前記付勢部材を結合させるための係止部を備え、
前記ハウジングには前記係止部の少なくとも一つが通過可能な貫通孔が設けられ、
前記貫通孔を介して、2つの前記筒状部材が視認可能となっている請求項6に記載のスライド装置。
【請求項8】
前記側壁の側に位置する前記筒状部材には、前記側壁に向く側の端面に、前記側壁に係合して、前記側壁の側に位置する前記筒状部材の回転を規制するストッパが設けられている請求項5に記載のスライド装置。
【請求項9】
前記筒状部材はそれぞれ、前記ハウジングの内部に収容されている請求項4~請求項8のいずれか1つの項に記載のスライド装置。
【請求項10】
前記ギヤボックスには、前記電気モータの回転軸の回転に伴って回転する駆動歯車と、前記螺子部材に設けられ、前記駆動歯車に噛合う従動歯車とが設けられている請求項1~請求項8のいずれか1つの項に記載のスライド装置。
【請求項11】
前記ギヤボックスには前記駆動歯車を回転させるためのツールを挿入するためのツール孔が設けられている請求項10に記載のスライド装置。
【請求項12】
請求項1に記載のスライド装置の組み立て方法であって、
前記ギヤボックス及び前記電気モータに前記スライダを組み付けるステップと、
前記スライダを前記レールに組み付けるステップと、を含むスライド装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド装置及びそのスライド装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フロアと、乗物用シートとの間に設けられるスライド装置を開示している。特許文献1のスライド装置は、レールと、レールにスライド可能に係合するスライダとを有する。スライダのスライド移動を可能とするため、スライド装置は更に、レールの延在方向を軸線とする回転可能にスライダに支持された螺子部材と、螺子部材と係合するようにレールに形成された螺子係合部と、螺子部材を回転させる電気モータとを備えている。電気モータが螺子部材を回転駆動させると、螺子部材と螺子係合部との係合によって、スライドはレールに対してスライド移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0080862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、特許文献1のスライド装置において、モータが駆動していないときに、例えば回転軸が比較的自由に回転することができる場合等において、振動等によってスライダがレールに対して移動することあることを見出した。これにより、利用者が意図しない乗物用シートの移動が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置及びそのスライド装置の組み立て方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、スライド装置(1)であって、複数の係止孔(15)が延在方向に並んで設けられたレール(11)と、前記レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダ(12)と、前記係止孔に噛合う螺子部材(27)を含み、前記スライダに固定されたギヤボックス(20)と、前記螺子部材を回転駆動させて、前記スライダを前記レールに対してスライドさせる電気モータ(21)と、を有し、前記ギヤボックスには、前記螺子部材を摩擦係止し、前記螺子部材の回転を規制する回転規制装置(55)が設けられている。
【0007】
この態様によれば、螺子部材が回転規制部材によって摩擦係止される。これにより、ネジ部材の回転が防止されるため、意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置を提供することができる。
【0008】
上記の態様において、好ましくは、前記螺子部材は所定の軸線に沿って延びる円柱状の軸部(36)と、前記軸部の外周面に設けられ、且つ、らせん状のネジ山(37A)を有する雄ネジ部(37)とを備え、前記ギヤボックスは、前記螺子部材を回転可能に支持すると共に、前記雄ネジ部の軸線方向両端に位置する端面それぞれに対向する側壁(41)を備えたハウジング(26)を有し、前記回転規制装置は、前記螺子部材を前記側壁の一方に押し付けることにより、前記螺子部材の回転を摩擦係止する。
【0009】
この態様によれば、螺子部材を摩擦係止することができる。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記回転規制装置は、付勢装置(59)と、前記付勢装置の付勢力により伸長し、前記螺子部材と前記側壁に押し付けて摩擦係止する伸縮装置とを備える。
【0011】
この態様によれば、電気モータを駆動させることで、伸縮装置を伸長させることによって、螺子部材を自由回転できない摩擦係止された状態にすることができる。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、前記伸縮装置は、前記軸部が貫通する内孔を有し、互いに隣接して配置された2つの筒状部材(61、63,64)を備え、前記筒状部材はそれぞれ互いに対向する面に、前記螺子部材の前記軸線の周方向に互いに同じ方向に傾斜する傾斜面(65)を有し、前記付勢装置は、2つの前記筒状部材を逆向きに回転させて前記傾斜面に沿って摺動させることにより、前記伸縮装置を伸長させるべく付勢する。
【0013】
この態様によれば、付勢装置によって、伸縮装置を伸びる方向に付勢し、螺子部材を摩擦係止することができる。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記伸縮装置と、前記側壁の他方との互いに対向する面にはそれぞれ、前記軸線の回りに前記傾斜面とは逆向きに傾斜する逆傾斜面(76)が設けられている。
【0015】
この態様によれば、伸縮装置を逆傾斜面に摺動させつつ回転させると、伸縮装置は側壁の一方側に向けて移動する。これにより、例えば、伸縮装置を回転させることで、螺子部材を側壁の一方側に押し出して押し付けることによって、摩擦係止することができる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、前記付勢装置(59)は、前記ハウジングと、2つの前記筒状部材とにそれぞれに接続され、前記筒状部材を逆向きに回転させる方向に付勢する2つの付勢部材(67、68)を備える。
【0017】
この態様によれば、螺子部材を側壁に押し付けて摩擦係止するべく、伸縮装置を伸長させることができる。
【0018】
上記の態様において、好ましくは、前記筒状部材は前記付勢部材を結合させるための係止部(70)を備え、前記ハウジングには前記係止部の少なくとも一つが通過可能な貫通孔(75)が設けられ、前記貫通孔を介して、2つの前記筒状部材が視認可能となっている。
【0019】
この態様によれば、付勢部材を筒状部材に結合させることができるとともに、2つの筒状部材を視認可能となる。
【0020】
上記の態様において、好ましくは、前記側壁の側に位置する前記筒状部材には、前記側壁に向く側の端面に、前記側壁に係合して、前記側壁の側に位置する前記筒状部材の回転を規制するストッパ(78)が設けられている。
【0021】
この態様によれば、筒状部材の回転を規制することができる。これにより、電動モータの駆動による螺子部材の回転が可能となる。
【0022】
上記の態様において、好ましくは、前記筒状部材はそれぞれ、前記ハウジングの内部に収容されている。
【0023】
この態様によれば、ギヤボックスをコンパクトに構成することができる。
【0024】
上記の態様において、好ましくは、前記ギヤボックスには、前記電気モータの回転軸の回転に伴って回転する駆動歯車(48)と、前記螺子部材に設けられ、前記駆動歯車に噛合う従動歯車(49)とが設けられている。
【0025】
この態様によれば、電気モータの動力、螺子部材に伝達することができる。これにより、スライダをレールに対して移動させるための動力を螺子部材に伝達することができる。
【0026】
上記の態様において、好ましくは、前記ギヤボックスには前記駆動歯車を回転させるためのツール(80)を挿入するためのツール孔(51)が設けられている。
【0027】
この態様によれば、ツールを用いて、傘歯車を回転させることができる。これにより、電動モータが駆動しないときに、ツールを用いて動力を螺子部材に伝達することができる。
【0028】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、上記のスライド装置の組み立て方法であって、前記ギヤボックス及び前記電気モータに前記スライダを組み付けるステップと、前記スライダを前記レールに組み付けるステップと、を含む。
【0029】
この態様によれば、意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0030】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、スライド装置であって、複数の係止孔が延在方向に並んで設けられたレールと、前記レールに対してスライド移動可能に支持されたスライダと、前記係止孔に噛合う螺子部材を含み、前記スライダに固定されたギヤボックスと、前記螺子部材を回転駆動させて、前記スライダを前記レールに対してスライドさせる電気モータと、を有し、前記ギヤボックスには、前記螺子部材を摩擦係止し、前記螺子部材の回転を規制する回転規制装置が設けられている。
【0031】
この態様によれば、螺子部材が回転規制部材によって摩擦係止される。これにより、ネジ部材の回転が防止されるため、意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置を提供することができる。
【0032】
上記の態様において、好ましくは、前記螺子部材は所定の軸線に沿って延びる円柱状の軸部と、前記軸部の外周面に設けられ、且つ、らせん状のネジ山を有する雄ネジ部とを備え、前記ギヤボックスは、前記螺子部材を回転可能に支持すると共に、前記雄ネジ部の軸線方向両端に位置する端面それぞれに対向する側壁を備えたハウジングを有し、前記回転規制装置は、前記螺子部材を前記側壁の一方に押し付けることにより、前記螺子部材の回転を摩擦係止する。
【0033】
この態様によれば、螺子部材を摩擦係止することができる。
【0034】
上記の態様において、好ましくは、前記回転規制装置は、付勢装置と、前記付勢装置の付勢力により伸長し、前記螺子部材と前記側壁に押し付けて摩擦係止する伸縮装置とを備える。
【0035】
この態様によれば、電気モータを駆動させることで、伸縮装置を伸長させることによって、螺子部材を自由回転できない摩擦係止された状態にすることができる。
【0036】
上記の態様において、好ましくは、前記伸縮装置は、前記軸部が貫通する内孔を有し、互いに隣接して配置された2つの筒状部材を備え、前記筒状部材はそれぞれ互いに対向する面に、前記螺子部材の前記軸線の周方向に互いに同じ方向に傾斜する傾斜面を有し、前記付勢装置は、2つの前記筒状部材を逆向きに回転させて前記傾斜面に沿って摺動させることにより、前記伸縮装置を伸長させるべく付勢する。
【0037】
この態様によれば、付勢装置によって、伸縮装置を伸びる方向に付勢し、螺子部材を摩擦係止することができる。
【0038】
上記の態様において、好ましくは、前記伸縮装置と、前記側壁の他方との互いに対向する面にはそれぞれ、前記軸線の回りに前記傾斜面とは逆向きに傾斜する逆傾斜面が設けられている。
【0039】
この態様によれば、伸縮装置を逆傾斜面に摺動させつつ回転させると、伸縮装置は側壁の一方側に向けて移動する。これにより、例えば、伸縮装置を回転させることで、螺子部材を側壁の一方側に押し出して押し付けることによって、摩擦係止することができる。
【0040】
上記の態様において、好ましくは、前記付勢装置は、前記ハウジングと、2つの前記筒状部材とにそれぞれに接続され、前記筒状部材を逆向きに回転させる方向に付勢する2つの付勢部材を備える。
【0041】
この態様によれば、螺子部材を側壁に押し付けて摩擦係止するべく、伸縮装置を伸長させることができる。
【0042】
上記の態様において、好ましくは、前記筒状部材は前記付勢部材を結合させるための係止部を備え、前記ハウジングには前記係止部の少なくとも一つが通過可能な貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して、2つの前記筒状部材が視認可能となっている。
【0043】
この態様によれば、付勢部材を筒状部材に結合させることができるとともに、2つの筒状部材を視認可能となる。
【0044】
上記の態様において、好ましくは、前記側壁の側に位置する前記筒状部材には、前記側壁に向く側の端面に、前記側壁に係合して、前記側壁の側に位置する前記筒状部材の回転を規制するストッパが設けられている。
【0045】
この態様によれば、筒状部材の回転を規制することができる。これにより、電動モータの駆動による螺子部材の回転が可能となる。
【0046】
上記の態様において、好ましくは、前記筒状部材はそれぞれ、前記ハウジングの内部に収容されている。
【0047】
この態様によれば、ギヤボックスをコンパクトに構成することができる。
【0048】
上記の態様において、好ましくは、前記ギヤボックスには、前記電気モータの回転軸の回転に伴って回転する駆動歯車と、前記螺子部材に設けられ、前記駆動歯車に噛合う従動歯車とが設けられている。
【0049】
この態様によれば、電気モータの動力、螺子部材に伝達することができる。これにより、スライダをレールに対して移動させるための動力を螺子部材に伝達することができる。
【0050】
上記の態様において、好ましくは、前記ギヤボックスには前記駆動歯車を回転させるためのツールを挿入するためのツール孔が設けられている。
【0051】
この態様によれば、ツールを用いて、傘歯車を回転させることができる。これにより、電動モータが駆動しないときに、ツールを用いて動力を螺子部材に伝達することができる。
【0052】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、上記のスライド装置の組み立て方法であって、前記ギヤボックス及び前記電気モータに前記スライダを組み付けるステップと、前記スライダを前記レールに組み付けるステップと、を含む。
【0053】
この態様によれば、意図しないスライダの移動を防止することができるスライド装置を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】乗物用シートの構成図
図2】実施形態に係る電動スライドレールの斜視図
図3】実施形態に係る電動スライドレールの断面図
図4】レールの断面図
図5】スライド装置の斜視図
図6】スライド装置の分解斜視図
図7】カバーを外した状態のギヤボックスの上面図
図8】カバーを外した状態のギヤボックスの側面図
図9】筒状部材の分解斜視図
図10図8に示すX-Xの位置におけるカバーを付けた状態のギヤボックスの断面図
図11】ギヤボックスの上面図
図12】(A)固定ブラケットに取り付けられ、ダンパが重ね合わされた状態のギヤボックスの上面図、(B)ツールの斜視図、及び、(C)ギヤボックスの変形例に係るツール孔近傍の拡大図
図13】ツールのツール孔への差し込み方法を説明するための説明図
図14】螺子部材が他側から一側に向かって見て(A)右回りに回転したとき、及び(B)左回りに回転したときの第1筒状部材及び第2筒状部材の変位を説明するための説明図
図15】第2実施形態に係るスライド装置が設けられる車室の側面図
図16】第2実施形態に係るスライドレールの斜視図
図17】第2実施形態に係るスライドレールの断面図
図18】レールの断面図
図19】第2実施形態に係るスライドロック装置の斜視図
図20】第2実施形態に係るスライドロック装置の分解斜視図
図21】操作部材が初期位置にあるときのスライドレールの(A)断面図及び(B)その二点鎖線で囲まれた部分の拡大図
図22】操作部材が挿入位置にあるときのスライドレールの断面図
図23】操作部材が押込位置にあるときのスライドレールの(A)断面図及び(B)その二点鎖線で囲まれた部分の拡大図
図24】(A)ロック部材、及び、(B)ロック部材の変形例
図25】変形例に係るロック部材の組み立てを説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明に係るスライド装置は、2つの構造体との間に設けられ、一方の構造体を他方の構造体に対してスライド移動可能に接続する。例えば、スライド装置は、車両のフロアとシートとの間に設けられ、シートをフロアに対してスライド移動可能に接続するために使用される。その他、スライド装置は、基台とワークホルダとの間に設けられ、基台に対してワークホルダをスライド移動可能に接続するために使用されてもよい。
【0056】
以下、本発明のスライド装置が、車両のフロアとシートとの間に設けられた実施例について、図面を参照して説明する。
【0057】
図1に示すように、スライド装置1は、車両のフロア2と、乗物用シート3との間に設けられている。乗物用シート3は、乗員の臀部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後部から上方に延び、乗員の背部を支持するシートバック6とを有する。スライド装置1は、フロア2とシートクッション5との間に設けられ、フロア2に対してシートクッション5をスライド移動可能に支持する。シートクッション5の側部には、シートクッション5とフロア2との隙間を隠すための被覆部材7が設けられている。
【0058】
図2に示すように、スライド装置1は、前後方向に延在する左右のレール11と、各レール11にスライド可能に支持された左右のスライダ12とを有する。レール11の延在方向を前後方向とする。レール11の延在方向は、車両の前後方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。すなわち、レール11の延在方向は、車両への搭載方向を限定するものではない。本実施形態では、レール11の延在方向は、車両の前後方向と一致する。本実施形態では、スライダ12はレール11に対して上側に設けられている。そのため、レール11をロアレール、スライダ12をアッパレールと称してもよい。
【0059】
図3及び図4に示すように、レール11は、溝形の断面を有する。詳細には、レール11は、面が上下を向くレール底壁11Aと、レール底壁11Aの左右の縁部から上方に延びて面が左右を向く左右のレール外側壁11Bと、左右のレール外側壁11Bの上端からそれぞれ互いに近づく方向に延び、面が上下を向く左右のレール上壁11Cと、左右のレール上壁11Cの内端からそれぞれ下方に延び、面が左右を向く左右のレール内側壁11Dとを有する。
【0060】
レール底壁11A、左右のレール外側壁11B、左右のレール上壁11C、及び左右のレール内側壁11Dは、それぞれ前後に延在している。左右のレール外側壁11B及び左右のレール内側壁11Dは、互いに平行に、かつレール底壁11Aに対して垂直に延在している。左右のレール内側壁11Dの下端は、レール底壁11Aに対して間隔をおいて配置されている。レール11は、その上部に前後に延びるレール開口部11Eを有する。レール開口部11Eは、左右のレール内側壁11Dによって画定されている。レール11は、金属板をプレス成形することによって形成されているとよい。レール底壁11Aの左右の縁側部は、上方に隆起した段部11Fを有してもよい。左右の段部11Fは、前後に延在し、その上面が平坦に形成されている。
【0061】
左右のレール内側壁11Dのそれぞれには、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部11Gが形成されている。左右の突部11Gの断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各突部11Gは、対応するレール内側壁11Dにおいて、上下方向における中間部に配置されているとよい。左右のレール内側壁11Dの上端部及び下端部は、突部11Gよりも左右外方に配置されている。
【0062】
図2図4に示すように、レール11には複数の係止孔15がレール11の延在方向、すなわち前後方向に並んで設けられている。複数の係止孔15は、対応するレール内側壁11Dの突部11Gに形成されている。各係止孔15は、互いに平行に延びている。各係止孔15は、上下に延びている。各係止孔15は、前方又は後方に傾斜しているとよい。
【0063】
フロア2には、下方に向けて凹んだ左右のレール溝17(図1参照)が形成されている。レール11は、対応するレール溝17内に配置されるとよい。
【0064】
図3に示すように、スライダ12は、レール開口部11Eの開口端に配置され、面が上下を向く板状のスライダ上壁12Aと、スライダ上壁12Aの左右の側縁からレール底壁11A側、すなわち下方に延びる左右のスライダ内側壁12Bと、左右のスライダ内側壁12Bの下端からそれぞれ左右外方に延びる左右のスライダ下壁12Cと、左右のスライダ下壁12Cの左右外端から上方に延びる左右のスライダ外側壁12Dとを有する。スライダ上壁12A、左右のスライダ内側壁12B、左右のスライダ下壁12C、及び左右のスライダ外側壁12Dは、前後に延在している。
【0065】
スライダ12は、プレス成形又はロール成形された複数の金属板を互いに締結することによって形成されているとよい。他の実施形態では、スライダ12はプレス成形又はロール成形された1枚の金属板から形成されてもよい。スライダ12の前後長は、レール11の前後長に対して短く設定されている。スライダ12は、スライダ上壁12Aにおいて、シートクッション5に結合されている。
【0066】
スライダ上壁12Aは、左右のレール上壁11Cよりも上方に配置されてもよく、左右のレール上壁11Cよりも下方に配置されてもよい。左右のスライダ内側壁12Bは、面が左右を向き、左右に互いに距離をおいて対向する。左右のスライダ内側壁12Bは、左右のレール内側壁11Dの間に配置されている。各スライダ内側壁12Bは、左右において対応するレール内側壁11Dと隙間を介して対向する。各スライダ下壁12Cは、レール底壁11Aと左右において対応するレール内側壁11Dの下端の間を通過して左右に延びている。各スライダ12外壁は、左右において対応するレール外側壁11B及びレール内側壁11Dの間に配置されている。各スライダ外側壁12Dの左右方向における外面側には、複数の車輪18が回転可能に支持されている。各車輪18は、左右方向回りの回転軸を有し、レール底壁11Aに接地している。本実施形態では、各車輪18は、レール底壁11Aの段部11Fの上面に接地している。スライダ12は、車輪18を介してレール11に接地することによって、レール11に対して円滑にスライド移動することができる。以上の構成により、スライダ12はレール11に受容され、かつレール11にスライド可能に係合する。他の実施形態では、スライダ12はボールやローラーベアリングを介してレール11に支持されてもよい。
【0067】
左右のスライダ内側壁12Bには、互いに近づく方向に凹むと共に、前後方向に延びた凹部12Eが形成されている。スライダ内側壁12Bの凹部12Eの背面側には突部が形成されている。左右の凹部12Eの前後方向から見た断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各凹部12Eは、対応するスライダ内側壁12Bにおいて、上下方向における中間部に配置されているとよい。各凹部12Eは、左右において対応するレール11の突部11Gと対向する位置に配置されている。
【0068】
スライダ12は、スライダ上壁12Aと、左右のスライダ内側壁12Bとによって、レール底壁11A側、すなわち下方に向けて開口する溝形に形成されている。
【0069】
図3に示すように、スライド装置1は左右のスライダ内側壁12Bの間にて、スライダ上壁12Aの下面に支持されている。
【0070】
図5及び図6に示すように、スライド装置1は、ギヤボックス20と、電気モータ21と、を備える。ギヤボックス20と電気モータ21とはともにスライダ12に固定されている。本実施形態では、ギヤボックス20は固定ブラケット22を介してスライダ上壁12Aの下面に螺子23等を用いて固定されている。電気モータ21もまた、固定ブラケット22を介して、スライダ上壁12Aの下面に螺子23等を用いて固定されている。
【0071】
ギヤボックス20とスライダ上壁12Aとの間や、電気モータ21とスライダ上壁12Aとの間には、それぞれ、クッション性を有するダンパ24が設けられているとよい。これにより、ダンパ24によって電気モータ21の駆動により発生する振動が吸収され、電気モータ21の駆動による振動が乗物用シート3に伝わることが防止される。
【0072】
図7及び図8に示すように、ギヤボックス20は、上面視で前後方向に延びる略直方体状をなしている。ギヤボックス20は左右のスライダ内側壁12Bの間に位置している。スライダ内側壁12Bのギヤボックス20の左右側面に対向する部分にはスライダ開口部12F(図3参照)が形成されている。
【0073】
図5及び図7に示すように、ギヤボックス20は、ハウジング26(図5参照)と、ハウジング26に回転可能に支持された螺子部材27(図5及び図7参照)と、電気モータ21の動力を伝達する伝達機構28(図7参照)と、を備えている。
【0074】
図5及び図6に示すように、ハウジング26は、その下部を構成するケース30と、その上部を構成するカバー31とを備えている。図6に示すように、ケース30には下方に凹むケース凹部33が設けられ、ケース凹部33の内部に螺子部材27が収容されている。カバー31がケース30の上面に結合されることによって、螺子部材27を収容する収容室34(図5及び図7参照)が画定される。
【0075】
図6及び図7に示すように、螺子部材27はいわゆるウォームギヤであって、所定方向に延びる円柱状の軸部36と、軸部36の外周に設けられた雄ネジ部37とを備えている。雄ネジ部37は軸部36と同軸をなし、軸部36の外径よりも大きな外径を有する円柱状をなしている。雄ネジ部37は軸部36の軸線方向における中央部分に設けられている。軸部36の端部は雄ネジ部37からその中心軸に沿って軸線方向に互いに離反する方向に突出している。雄ネジ部37の外周面にはらせん状に形成されたネジ山37A(図7参照)が形成されている。
【0076】
図6に示すように、ケース凹部33には、雄ネジ部37を収容する受容部39と、軸部36の端部をそれぞれ受容する軸受部40が設けられている。軸受部40は前後に対をなすように設けられ、それぞれ軸部36の端部を受容する。これにより、螺子部材27はその軸部36の軸線がレール11の延在方向に延びるように配置された状態で、ケース30に回転可能に支持される。
【0077】
図6及び図7に示すように、本実施形態では、ギヤボックス20に2つの螺子部材27が設けられているため、軸受部40が2対設けられている。2つの螺子部材27は、上面視でギヤボックス20を上下に通過する仮想線を中心として、螺子部材27が回転対称をなすように配置されている。
【0078】
但し、本発明は螺子部材27の数には限定されず、例えば、ギヤボックス20には1つの螺子部材27のみが設けられていてもよく、また、3つ以上の螺子部材27が設けられていてもよい。
【0079】
図6及び図7に示すように、受容部39のレール11の延在方向両端(すなわち、螺子部材27の軸線方向両端)をそれぞれ画定する側壁41は、その受容部39側の側面において、雄ネジ部37の延在方向両端に対向している。これにより、螺子部材27の延在方向の移動範囲が制限されている。
【0080】
図6に示すように、軸受部40はレール11の延在方向両端(前後両端)に位置する側壁41それぞれに設けられている。軸受部40は対応する側壁41においてそれぞれ下方に凹む側壁凹部41Aによって形成されている。側壁凹部41Aはレール11の延在方向に沿う方向から見て略円弧状をなして下方に凹む湾曲面を有している。延在方向両端に位置する側壁41にはそれぞれ側壁凹部41Aが設けられ、側壁凹部41Aはそれぞれ対応する軸部36の端部を回転可能に受容している。
【0081】
図7に示すように、ケース30の左右側部には下方に凹み、ケース30の左右側面からケース30の内方に延び、受容部39に通じる連通凹部42が設けている。これにより、ハウジング26の左右側面には収容室34に通じる開口43(図5も参照)が形成されている。図3に示すように、螺子部材27のネジ山37Aはその開口43を介してケース30の左右外方に突出し、スライダ開口部12Fを通過して、それぞれ係止孔15に突入している。これにより、2つの螺子部材27それぞれが対向するレール11に噛合った状態となっている。
【0082】
図7に示すように、ケース30の後面には前方に凹み、収容室34に通じる挿入凹部45が設けられている。これにより、ハウジング26の後端に収容室34に通じる挿入孔46が形成されている。電気モータ21の回転軸21Aの端部はその挿入孔46に挿入されている。本実施形態では、挿入孔46の下部を画定する下壁には下方に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。
【0083】
伝達機構28は電気モータ21の回転軸21Aの回転を螺子部材27の軸部36回りの回転に変換する。伝達機構28は、電気モータ21の回転軸21Aの端部に設けられた駆動歯車48と、駆動歯車48に噛合う従動歯車49とを含む。従動歯車49は螺子部材27の軸部36の後端部にそれぞれ設けられている。
【0084】
図7に示すように、駆動歯車48は挿入孔46の内部に収容されている。図6に示すように、カバー31には駆動歯車48にアクセスするためのツール孔51が設けられている。ツール孔51はカバー31を上下に貫通し、挿入孔46とケース30の外部とを連通させる。本実施形態では、駆動歯車48には回転軸21Aの軸線を中心とする傘歯車52が結合されている。傘歯車52は駆動歯車48の電気モータ21に対して離反する側の端面から突出している。ツール孔51の開口部分は傘歯車52に上下方向に重なる位置に設けられている。ツール孔51の開口部分は、カバー31において、駆動歯車48と従動歯車49との噛合い部分に重なるように形成されていることが望ましい。
【0085】
図6に示すように、なお、ギヤボックス20には、ツール孔51を封じるためのキャップ部材51Aが設けられていてもよい。本実施形態では、電気モータ21の回転軸21Aには、回転軸21Aの軸線方向に沿って、駆動歯車48及び傘歯車52を挟むように2つのブッシュ(以下、回転軸ブッシュ53)が設けられている。
【0086】
電気モータ21が駆動し、回転軸21Aが軸回りに回転すると、駆動歯車48が回転し、駆動歯車48に噛合う従動歯車49も回転する。これにより、螺子部材27が軸部36の軸線回りに回転することになる。
【0087】
螺子部材27のネジ山37Aはレール11の係止孔15に噛合っているため、螺子部材27が軸回りに回転すると、ギヤボックス20がレール11に沿ってスライド移動する。ギヤボックス20はスライダ12に結合されているため、スライダ12もまた、螺子部材27の回転に伴って、レール11の延在方向に沿ってスライド移動する。これにより、スライダ12に結合された乗物用シート3もまた、螺子部材27の回転に伴って、レール11の延在方向に沿ってスライド移動する。
【0088】
すなわち、電気モータ21が駆動すると、回転軸21Aの回転が伝達機構28により螺子部材27の軸回りの回転に変換されて、スライダ12がレール11に対してスライド移動し、乗物用シート3がレール11に沿ってスライド移動する。よって、電気モータ21の駆動を電気的に制御し、回転軸21Aの回転量や向きを制御することによって、使用者は乗物用シート3を自らの望む位置にスライド移動させることができる。
【0089】
しかしながら、電気モータ21の種類によって、停止時に回転軸21Aが比較的自由に回転できる場合がある。本願発明者らは、特に、このような場合などにおいて、車両が斜面上に停止すると、螺子部材27の回転が十分に規制されず、乗物用シート3がその自重によってスライド移動するという問題が生じ得ることを見出した。
【0090】
そこで、図7及び図8に示すように、本発明に係るギヤボックス20には、ハウジング26、螺子部材27、及び、伝達機構28に加えて、更に、螺子部材27の自由な回転を規制する回転規制装置55が設けられている。
【0091】
回転規制装置55は螺子部材27に自由な回転を阻止しようとする抵抗力を付与することによって、螺子部材27の自由な回転を規制する。回転規制装置55は螺子部材27を一方の側壁41に押圧することによって、回転しようとする螺子部材27と側壁41との間に摩擦力を発生させる。この摩擦力は螺子部材27の自由な回転を阻止する抵抗力として機能する。
【0092】
以下、螺子部材27が押し付けられる側壁41の側を一側と記載し、それ以外の側壁41が設けられる側を他側と記載する。回転規制装置55は雄ネジ部37よりも他側に設けられ、雄ネジ部37の他側の端面を一側に押し出すことによって、雄ネジ部37の一側の端面を一側の側壁41に押圧する。これにより、雄ネジ部37が一側の側壁41に摩擦係止され、螺子部材27の回転を阻止する抵抗力が付与される。
【0093】
図8に示すように、左側の螺子部材27においては、一側は後側、他側が前側に相当する。すなわち、左側の螺子部材27の回転を規制する回転規制装置55は、雄ネジ部37よりも前側(他側)に設けられ、雄ネジ部37を後側(他側)の側壁41に押し付けて、抵抗力を付与する。一方、右側の螺子部材27においては、一側は前側、他側が後側に相当する。すなわち、右側の螺子部材27の回転を規制する回転規制装置55は、雄ネジ部37よりも後側(他側)に設けられ、雄ネジ部37を前側(他側)の側壁41に押し付けて、抵抗力を付与する。
【0094】
その他、本実施形態では、一側の側壁41と、雄ネジ部37との間にブッシュ(以下、一側ブッシュ56)が設けられている。一側ブッシュ56は貫通孔を有する樹脂製の筒状をなしている。螺子部材27の一側の軸部36はその貫通孔に嵌め込まれている。一側ブッシュ56は一側の軸部36を支え、螺子部材27の回転をスムーズにする役割を果たす。
【0095】
図7に示すように、回転規制装置55は、伸縮自在な伸縮装置57と、伸縮装置57を伸びる方向に付勢する付勢装置59とを備える。
【0096】
伸縮装置57は雄ネジ部37よりも他側に設けられている。他側の側壁41の軸受部40には、一側を向く支持面40Aを有する段部40Bが形成され、伸縮装置57はその支持面40Aと雄ネジ部37の他側の端面との間に配置されている。
【0097】
伸縮装置57の他側の端部は支持面40Aに当接し、一側の端部は雄ネジ部37の他側の端面に当接している。伸縮装置57が付勢装置59によって伸びる方向に付勢されると、螺子部材27が一側に押し出されて、螺子部材27が側壁41に押し付けられることになる。
【0098】
図9に示すように、伸縮装置57は2つの筒状部材61(ウェブともいう)を備えている。筒状部材61はそれぞれ内孔を備え、内径及び外径が等しい円筒状をなしている。2つの筒状部材61は同軸をなすように配置され、それぞれの内孔には螺子部材27の他側に位置する軸部36が挿入されている(図6参照)。これにより、2つの筒状部材61の内孔にはそれぞれ軸部36が貫通し、筒状部材61はそれぞれ回転可能に螺子部材27の軸部36に支持されている。筒状部材61はそれぞれハウジング26の内部に収容されている。このように、筒状部材61がハウジング26の内部に収容されることによって、ギヤボックス20をコンパクトに構成することができる。
【0099】
本実施形態では、図6に示すように、筒状部材61と、螺子部材27の軸部36との間に、ブッシュ(以下、他側ブッシュ62)が設けられている。他側ブッシュ62は貫通孔を有する樹脂製の筒状をなし、螺子部材27の他側の軸部36がその貫通孔に嵌め込まれている。他側ブッシュ62は他側の軸部36を支え、螺子部材27の回転をスムーズにする役割を果たす。他側の軸部36は他側ブッシュ62がはめ込まれた状態で、2つの筒状部材61に挿入されている。
【0100】
図8に示すように、2つの筒状部材61は他側の軸部36の軸線に沿って並んで配置されている。以下、他側に位置する筒状部材61を第1筒状部材63(第1ウェブともいう)、一側に位置する筒状部材61を第2筒状部材64(第2ウェブともいう)と記載する。第1筒状部材63は他側の側壁41と第2筒状部材64とに当接し、第2筒状部材64は雄ネジ部37の他側の端面と第1筒状部材63とに当接している。
【0101】
第1筒状部材63の第2筒状部材64に隣接する側(一側)の端面と、第2筒状部材64の第1筒状部材63に隣接する側(他側)の端面とにはそれぞれ傾斜面(以下、主傾斜面65)が設けられている。第1筒状部材63の主傾斜面65と、第2筒状部材64の主傾斜面65とはそれぞれ、軸部36の軸線回りに沿って、その他側に近接又は離反する方向に傾斜している。第1筒状部材63の主傾斜面65の傾斜角度と、第2筒状部材64の主傾斜面65の傾斜角度とは、それぞれ同一となるように設定されている。
【0102】
第1筒状部材63の主傾斜面65と、第2筒状部材64の主傾斜面65とがそれぞれ当接した状態で、第1筒状部材63と第2筒状部材64とが軸線回りに逆方向に回転すると、主傾斜面65によって案内されて、第1筒状部材63と第2筒状部材64とがそれぞれ軸線方向に近接又は離反する方向に移動する。このように、第1筒状部材63と第2筒状部材64とが互いに摺動し回転することで、伸縮装置57の軸線方向の全長が変化し、伸縮装置57が軸線方向に伸縮する。
【0103】
図10には、ギヤボックス20の断面図が示されている。図8及び図10に示すように、軸線に沿って他側から一側に向かって見たときに、第1筒状部材63が第2筒状部材64に対して右回りに回転すると、第1筒状部材63と第2筒状部材64とは軸線方向に沿って互いに離れる方向に移動し、伸縮装置57は軸線方向に伸びる。また、軸線に沿って他側から一側に向かって見たときに、第1筒状部材63が第2筒状部材64に対して左回りに回転すると、第1筒状部材63と第2筒状部材64とは軸線方向に沿って互いに近づく方向に移動し、伸縮装置57は縮まる。
【0104】
付勢装置59は、第1筒状部材63と第2筒状部材64とを相対回転させて、伸縮装置57が伸びるように付勢する。本実施形態では、付勢装置59は、第1筒状部材63及びハウジング26の間に設けられた第1付勢部材67と、第2筒状部材64及びハウジング26の間に設けられた第2付勢部材68とを含む。
【0105】
第1付勢部材67は第1筒状部材63を軸回りに回転するように付勢し、第2付勢部材68もまた第2筒状部材64を軸回りに回転するように付勢する(図10の矢印を参照)。但し、第1付勢部材67によって付勢される第1筒状部材63の回転方向と、第2付勢部材68によって付勢される第2筒状部材64の回転方向とは逆向きであって、且つ、伸縮装置57が伸びる方向に設定されている。
【0106】
詳細には、図10に示すように、第1付勢部材67は一側に見て、第1筒状部材63を右回りに付勢する。第2付勢部材68は一側に見て、第2筒状部材64を左回りに付勢する。これにより、第1筒状部材63が第2筒状部材64に対して右回りに回転するように付勢され、伸縮装置57は第1付勢部材67及び第2付勢部材68によって伸びる方向に付勢されている。
【0107】
本実施形態では、第1付勢部材67及び第2付勢部材68はそれぞれ、ねじりコイルばねによって構成されている。第1付勢部材67は一端において、第1筒状部材63に掛け止めされ、他端において、ケース30の掛止部30Aに掛け止めている。第2付勢部材68も同様に一端において、第2筒状部材64に掛け止めされ、他端において、カバー31の掛止部31Aに掛け止めされている。すなわち、付勢部材はともに、筒状部材61とハウジング26とに接続されている。
【0108】
図9及び図10に示すように、第1筒状部材63及び第2筒状部材64には、第1付勢部材67の一端と、第2付勢部材68の一端とが掛け止めするための突出片70が設けられている。突出片70の突端には切り欠かれた切欠72が設けられて、突出片70はそれぞれフック状(鉤状ともいう)をなしている。突出片70の切欠72には第1付勢部材67の一端及び第2付勢部材68の一端がそれぞれ掛け止めされている。よって、突出片70は第2付勢部材68を係止するための係止部(又は、掛け止めするための掛止部)として機能する。
【0109】
本実施形態では、図10に示すように、ケース30に、第1付勢部材67を第1筒状部材63に接続するための貫通孔(以下、第1ばね用貫通孔74)が設けられている。第1ばね用貫通孔74は、ケース30の下面から他側の側壁41の軸受部40に達している。第1付勢部材67は一端側においてケース30の下面に結合され、第1ばね用貫通孔74を通過して突出する第1筒状部材63の突出片70に掛け止めされている。
【0110】
本実施形態では、更に、カバー31に、第2付勢部材68を第2筒状部材64に接続するための貫通孔(以下、第2ばね用貫通孔75)が設けられている。第2ばね用貫通孔75は、カバー31の上面から他側の側壁41の軸受部40に上下方向に重なる位置まで延びている。第2付勢部材68は一端側においてカバー31の上面に結合され、第2ばね用貫通孔75を通過して突出する第2筒状部材64の突出片70に掛け止めされている。
【0111】
図11には、ギヤボックス20の上面図が示されている。図10に示すように、第2ばね用貫通孔75は上面視で、第2筒状部材64の突出片70と重なり合っている。そのため、突出片70への第2付勢部材68の掛け止めが容易である。また、第2ばね用貫通孔75は第1筒状部材63と第2筒状部材64とに重なるように構成されている。これにより、第2ばね用貫通孔75を介して、第1筒状部材63と第2筒状部材64とを同時に視認することができるようになっている。これにより、ギヤボックス20のメンテナンス性が向上する。
【0112】
本実施形態では、図8に示すように、第1筒状部材63と、その第1筒状部材63に対向するケース30の他側の側壁41とにはそれぞれ、互いに同じ方向に傾斜する面(以下、補助傾斜面76)が設けられている。補助傾斜面76は、第1筒状部材63の軸線を中心とする周方向に沿って、第2筒状部材64に近接又は離反する方向に傾斜している。第1筒状部材63が軸線回りに回転し、その補助傾斜面76がケース30の他方側の側壁41の補助傾斜面76に沿って摺動すると、補助傾斜面76の傾斜によって、第1筒状部材63が一側又は他側に移動する。
【0113】
図8に示すように、第1筒状部材63及び第2筒状部材64それぞれに主傾斜面65が設けられ、第1筒状部材63及び他方側の側壁41それぞれに補助傾斜面76が設けられている。軸線の周方向一側に向かって主傾斜面65が傾斜する傾斜方向と、同じ軸線の周方向一側に向かって補助傾斜面76が傾斜する傾斜方向とは、逆向きとなるように設定されている。すなわち、補助傾斜面76は、主傾斜面65とは逆向きに傾斜する逆傾斜面となっている。
【0114】
具体的には、主傾斜面65は他側から一側に向かって軸線の周方向右回りに、螺子部材27から離れる方向(すなわち、他側に)に傾斜している。一方、補助傾斜面76は他側から一側に向かって軸線の周方向右回りに螺子部材27に近づく方向(すなわち、一側に)傾斜している。
【0115】
図10に示すように、第1付勢部材67は第1筒状部材63を一側に向かって軸線の周方向右回りに付勢している。図9から理解できるように、この第1付勢部材67の付勢力によって、第1筒状部材63は補助傾斜面76に摺動して一側に向かって軸線の周方向右回りに回転すると、第1筒状部材63は一側に移動する。
【0116】
図8に示すように、第1筒状部材63には他側の側壁41に係合して、他側の側壁41に対する第1筒状部材63の軸線回りの回転を制限し、第1筒状部材63が一側に移動することを規制するストッパ78が設けられている(図9も参照)。ストッパ78は第1筒状部材63の他側の端部に設けられている。
【0117】
第1筒状部材63が一側に向かって軸線の周方向右回りに回転すると、ストッパ78はケース30の他側の側壁41に設けられた段部40Bに係合し、第1筒状部材63の右回りの回転が規制される。
【0118】
電気モータ21が駆動していないときには、第1筒状部材63と第2筒状部材64とが互いに当接し、且つ、それぞれ、他側の側壁41と、雄ネジ部37の他側の端面とに当接し、ストッパ78は段部40Bに係合していることが好ましい。このストッパ78と段部40Bとの係合によって、第1筒状部材63が一側に向かって軸線の周方向右回りに回転し、一側に移動することが規制される。これにより、螺子部材27がより強く一側の側壁41に押し付けられることが防止できる。
【0119】
次に、このように構成されたスライド装置1の組み立て方法について説明する。スライド装置1の組み立てを行う作業者は、まず、ギヤボックス20を組み立てる。
【0120】
作業者は、ギヤボックス20の組み立てに際し、まず、従動歯車49や第1筒状部材63、第2筒状部材64、第1ブッシュ及び第2ブッシュが設けられた螺子部材27を用意する。その後、作業者は、螺子部材27をケース凹部33に収容し、第1付勢部材67を第1ばね用貫通孔74に通過させて、その端部をケース30の下面と第1筒状部材63とに掛け止めする。
【0121】
その後、作業者は、電気モータ21の回転軸21Aを固定ブラケット22に設けられた孔を通過させてケース30の挿入凹部45に挿入し、駆動歯車48と従動歯車49とが噛合うように配置した後、ケース30にカバー31を取り付ける。次に、作業者は、第2付勢部材68を第2ばね用貫通孔75に通過させて、その端部をカバー31と第2筒状部材64とに掛け止めする。これにより、ギヤボックス20が完成する。
【0122】
次に作業者は、ギヤボックス20にダンパ24を取り付けて、ギヤボックス20と電気モータ21とをそれぞれ固定ブラケット22に固定する。その後、作業者は固定ブラケット22をスライダ12に固定することにより、ギヤボックス20及び電気モータ21にスライダ12への組付け(スライダ12への組付ステップ)が完了する。
【0123】
その後、作業者はスライダ12をレール11の一端(前端又は後端)から挿入する(又は、挿入後、電気モータ21を駆動させる)ことによって、スライダ12をレール11に組み付ける。スライダ12のレール11への組付け(レール11への組付ステップ)が完了すると、スライド装置1の組み立てが完了する。
【0124】
図12(A)に示すように、ダンパ24及びスライダ12のツール孔51に重なる部分には、上下に貫通する貫通孔24A及び12Aがそれぞれ設けられている。これにより、ギヤボックス20がスライダ12に取り付けられた後に、図12(B)及び図13に示すように、メンテナンスを行う際には、先端に傘歯車52に噛合う歯車部80Aを備えたツール80を挿入することにより、傘歯車52にアクセスし、駆動歯車48を回転させることができる。
【0125】
図11(C)には変形例に係るギヤボックス20のツール孔51の開口部分の拡大図が示されている。図11(C)に示す変形例では、ツール孔51の開口部分は、カバー31において、駆動歯車48と従動歯車49との噛合い部分に重なるように形成されている。これにより、メンテナンス時等において、作業者が駆動歯車48と従動歯車49とが適切に噛合しているかを視認することが可能となる。
【0126】
次にこのように構成されたスライド装置1の動作及び効果について説明する。
【0127】
電気モータ21が停止しているときには、第1付勢部材67及び第2付勢部材68の付勢力に従って、第1筒状部材63及び第2筒状部材64はそれぞれ一側に移動し、第2筒状部材64が雄ネジ部37を一側の側壁41に向けて押し出す。これにより、雄ネジ部37の一側の側面が一側の側壁41に押し付けられる。
【0128】
スライダ12にレール11に沿って移動させようとする荷重が加わると、螺子部材27にもまた、その軸線を中心として回転させようとする荷重が加わる。このとき、付勢部材によって付勢された伸縮装置57により、雄ネジ部37が側壁41に押し付けられる。そのため、螺子部材27を回転させようとしたときに、その押付力に応じた摩擦力が加わる。この摩擦力は、螺子部材27の回転を阻止する抵抗力として機能する。
【0129】
このように、螺子部材27が回転しようとすると、回転規制装置55(付勢装置59及び伸縮装置57)によって、その回転を阻止しようとする抵抗力が加わる。これにより、螺子部材27の自由な回転が防止されるため、意図しないスライダ12の移動を防止することができるスライド装置1を提供することができる。利用者の意図しないスライダ12の移動が防止されることによって、乗物用シート3の安全性が向上する。
【0130】
電気モータ21が駆動すると、回転軸21Aが回転し、その回転が伝達機構28を介して、螺子部材27に伝わり、螺子部材27が回転する。このとき、螺子部材27は第2筒状部材64に当接しているため、螺子部材27と筒状部材61との間の摩擦力によって、第2筒状部材64には軸部36の軸線回り回転させようとする荷重が加わる。
【0131】
図14(A)に示すように、螺子部材27の回転により、第2筒状部材64に一側に向かって軸線の周方向右回りに回転させようとする荷重が加わることがある。このとき、第1筒状部材63と第2筒状部材64との間の摩擦力によって、第1筒状部材63にもまた一側に向かって軸線の周方向右回りに回転させようとする荷重が加わる。しかし、第1筒状部材63は、ストッパ78と段部40Bとの係合によって、一側に向かって軸線の周方向右回りに回転することが規制される。これにより、第2筒状部材64が第1筒状部材63に対して一側に向かって軸線の周方向右回りに回転する。
【0132】
これによって、第2筒状部材64が図14(A)の左向きの矢印に示すように、他側に移動するように案内され(例えば、第1筒状部材63と第2筒状部材64との間などに隙間が発生し)、第2筒状部材64から雄ネジ部37に加わる一側に向く荷重が低下する。これにより、螺子部材27に加わる一側の側壁41への押圧力が低下し、螺子部材27の摺動性が向上して、螺子部材27の回転が可能となる。
【0133】
このように、第2筒状部材64に一側に向かって軸線の周方向右回りに回転させようとする荷重が加わったときには、ストッパ78によって第1筒状部材63の回転が規制されて、電気モータ21の駆動に応じた螺子部材27の回転が可能となる。これにより、電気モータ21の駆動に応じて、スライダ12がレール11に対してスライド移動可能となる。
【0134】
図14(B)に示すように、第2筒状部材64に一側に向かって軸線の周方向左回りに回転させようとする荷重が加わった場合、第1筒状部材63と第2筒状部材64との間の摩擦力によって、第1筒状部材63もまた一側に向かって軸線の周方向左回りに回転させようとする荷重が加わる。補助傾斜面76は、第1筒状部材63が軸線を中心として周方向左回りに回転すると、第1筒状部材63が他側に移動するように傾斜しているため(例えば、第1筒状部材63と他側の側壁41との間などに隙間が発生し)、第2筒状部材64から雄ネジ部37に加わる一側に向く荷重が低下する。
【0135】
これにより、螺子部材27に加わる一側の側壁41への押圧力が低下し、螺子部材27の摺動性が向上して、螺子部材27の回転が可能となる。よって、電気モータ21の駆動に応じて、スライダ12がレール11に対してスライド移動可能となる。
【0136】
このように、本発明によるスライド装置1は、電気モータ21が駆動していない場合には、螺子部材27に自由な回転を阻止しようとする抵抗力を加えることができるため、利用者が意図しないスライダ12の移動を防止することができる。電気モータ21が駆動したときには、螺子部材27の回転が可能となり、利用者が意図した通りに、スライダ12を移動させることができる。
【0137】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るスライド装置もまた、レールと、レールに対してスライド移動可能なスライダとを有する。レールは第1の構造体に結合され、スライダは第2の構造体に結合される。レールに対してスライダが移動することによって、スライド装置は第1の構造体に対して第2の構造体を移動させる。スライド装置は、例えば、車両のフロアとシートとの間に設けられ、フロアに対してシートを移動させる。また、電動スライドレールは、基台とワークホルダとの間に設けられ、基台に対してワークホルダを移動させる。以下、スライド装置が車両のフロアとシートとの間に設けられた実施形態を例に挙げて、説明する。
【0138】
図15に示すように、第2実施形態に係るスライド装置101は車室の下縁を画定するフロア102と、乗物用シート103との間に設けられている。乗物用シート103は、乗員の臀部を支持するシートクッション105と、シートクッション105の後部から上方に延び、乗員の背部を支持するシートバック106とを有する。スライド装置101は、フロア102とシートクッション105との間に設けられ、フロア102に対してシートクッション105をスライド移動可能に支持する。シートクッション105の側部には、シートクッション105とフロア102との隙間を隠すためのカバー107が設けられている。
【0139】
図16に示すように、スライド装置101は、前後方向に延在する左右のレール111と、各レール111にスライド可能に支持された左右のスライダ112とを有する。レール111の延在方向を前後方向とする。レール111の延在方向は、車両の前後方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。すなわち、レール111の延在方向は、車両への搭載方向を限定するものではない。本実施形態では、レール111の延在方向は、車両の前後方向と一致する。本実施形態では、スライダ112はレール111に対して上側に設けられている。そのため、レール111をロアレール、スライダ112をアッパレールと称してもよい。
【0140】
図17及び図18に示すように、レール111は、溝形の断面を有する。詳細には、レール111は、面が上下を向くレール底壁111Aと、レール底壁111Aの左右の縁部から上方に延びて面が左右を向く左右のレール外側壁111Bと、左右のレール外側壁111Bの上端からそれぞれ互いに近づく方向に延び、面が上下を向く左右のレール上壁111Cと、左右のレール上壁111Cの内端からそれぞれ下方に延び、面が左右を向く左右のレール内側壁111Dとを有する。
【0141】
レール底壁111A、左右のレール外側壁111B、左右のレール上壁111C、及び左右のレール内側壁111Dは、それぞれ前後に延在している。左右のレール外側壁111B及び左右のレール内側壁111Dは、互いに平行に、かつレール底壁111Aに対して垂直に延在している。左右のレール内側壁111Dの下端は、レール底壁111Aに対して間隔をおいて配置されている。レール111は、その上部に前後に延びるレール開口部111Eを有する。レール開口部111Eは、左右のレール内側壁111Dによって画定されている。レール111は、金属板をプレス成形することによって形成されているとよい。レール底壁111Aの左右の縁側部は、上方に隆起した段部111Fを有してもよい。左右の段部111Fは、前後に延在し、その上面が平坦に形成されている。
【0142】
左右のレール内側壁111Dのそれぞれには、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部111Gが形成されている。左右の突部111Gの断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各突部111Gは、対応するレール内側壁111Dにおいて、上下方向における中間部に配置されているとよい。左右のレール内側壁111Dの上端部及び下端部は、突部111Gよりも左右外方に配置されている。
【0143】
図16図18に示すように、レール111には複数の係止孔115がレール111の延在方向、すなわち前後方向に並んで設けられている。複数の係止孔115は、対応するレール内側壁111Dの突部111Gに形成されている。各係止孔115は、互いに平行に延びている。各係止孔115は、上下に延びている。各係止孔115は、前方又は後方に傾斜しているとよい。
【0144】
フロア102には、下方に向けて凹んだ左右のレール溝117が形成されている。レール111は、対応するレール溝117内に配置されるとよい。
【0145】
図17に示すように、スライダ112は、レール開口部111Eの開口端に配置され、面が上下を向く板状のスライダ上壁112Aと、スライダ上壁112Aの左右の側縁からレール底壁111A側、すなわち下方に延びる左右のスライダ内側壁112Bと、左右のスライダ内側壁112Bの下端からそれぞれ左右外方に延びる左右のスライダ下壁112Cと、左右のスライダ下壁112Cの左右外端から上方に延びる左右のスライダ外側壁112Dとを有する。スライダ上壁112A、左右のスライダ内側壁112B、左右のスライダ下壁112C、及び左右のスライダ外側壁112Dは、前後に延在している。
【0146】
スライダ112は、プレス成形又はロール成形された複数の金属板を互いに締結することによって形成されているとよい。他の実施形態では、スライダ112はプレス成形又はロール成形された1枚の金属板から形成されてもよい。スライダ112の前後長は、レール111の前後長に対して短く設定されている。スライダ112は、スライダ上壁112Aにおいて、シートクッション105に結合されている。
【0147】
スライダ上壁112Aは、左右のレール上壁111Cよりも上方に配置されてもよく、左右のレール上壁111Cよりも下方に配置されてもよい。左右のスライダ内側壁112Bは、面が左右を向き、左右に互いに距離をおいて対向する。左右のスライダ内側壁112Bは、左右のレール内側壁111Dの間に配置されている。各スライダ内側壁112Bは、左右において対応するレール内側壁111Dと隙間を介して対向する。各スライダ下壁112Cは、レール底壁111Aと左右において対応するレール内側壁111Dの下端の間を通過して左右に延びている。各スライダ112外壁は、左右において対応するレール外側壁111B及びレール内側壁111Dの間に配置されている。各スライダ外側壁112Dの左右方向における外面側には、複数の車輪118が回転可能に支持されている。各車輪118は、左右方向回りの回転軸を有し、レール底壁111Aに接地している。本実施形態では、各車輪118は、レール底壁111Aの段部111Fの上面に接地している。スライダ112は、車輪118を介してレール111に接地することによって、レール111に対して円滑にスライド移動することができる。以上の構成により、スライダ112はレール111に受容され、かつレール111にスライド可能に係合する。他の実施形態では、スライダ112はボールやローラーベアリングを介してレール111に支持されてもよい。
【0148】
左右のスライダ内側壁112Bには、互いに近づく方向に凹むと共に、前後方向に延びた凹部112Eが形成されている。スライダ内側壁112Bの凹部112Eの背面側には突部が形成されている。左右の凹部112Eの前後方向から見た断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各凹部112Eは、対応するスライダ内側壁112Bにおいて、上下方向における中間部に配置されているとよい。各凹部112Eは、左右において対応するレール111の突部111Gと対向する位置に配置されている。
【0149】
スライダ112は、スライダ上壁112Aと、左右のスライダ内側壁112Bとによって、レール底壁111A側、すなわち下方に向けて開口する溝形に形成されている。図17に示すように、スライダ上壁112Aの下面には、スライドロック装置130が支持されている。
【0150】
スライドロック装置130はスライダ112のレール111に対する移動を規制するためのものであり、乗物用シート103の着座者等からの操作入力に基づいて、その移動規制を解除し、乗物用シート103をレール111に沿って移動可能とする。操作入力がなされなくなると、スライドロック装置130はスライダ112のレール111に対する移動を規制する。
【0151】
図19図23に示すように、スライドロック装置130は、スライダ112に結合されたケーシング131と、ケーシング131に解除位置とロック位置との間で回転可能に支持された少なくとも1つのロック部材132と、ロック部材132をロック位置に付勢する付勢部材133と、ケーシング131に変位可能に支持され、ロック部材132に当接した操作部材134とを有する。本実施形態では、ロック部材132及び付勢部材133は、左右一対設けられている。スライドロック装置130は固定ブラケット130Aを介して、スライダ112に固定されている。
【0152】
図19及び図20に示すように、ケーシング131は、複数の部材を組み合わせて形成されるとよい。本実施形態では、ケーシング131は、互いに結合される下ケーシング部材131A及び上ケーシング部材131Bを含む。左右のロック部材132は、下ケーシング部材131A及び上ケーシング部材131Bの間に回転可能に支持されている。ケーシング131は、スライダ上壁112Aの底面に結合され、一対のスライダ内側壁112Bの間に配置されている。これにより、スライドロック装置130をスライダ112内にスペース効率良く配置することができる。一対のスライダ内側壁112Bのケーシング131と対向する部分には、スライダ開口部112Fが形成されている。
【0153】
一対のロック部材132は、互いに平行に配置されている。各ロック部材132は、前後方向に延びる軸部132Aを有する。すなわち、各ロック部材132の回転軸線は前後方向に延びている。軸部132Aの前端及び後端が、ケーシング131に回転可能に支持されている。各ロック部材132は、軸部132Aから径方向に突出する少なくとも1つの凸部132Bを有する。本実施形態では、複数の凸部132Bが軸部132Aから径方向における一方側に突出している。
【0154】
図20に示すように、複数の凸部132Bは、ロック部材132の回転軸線を中心とした螺旋状に延びているとよい。複数の凸部132Bは、互いに断続的に形成されている。複数の凸部132Bは前後方向に間隔をおいて配置されている。ケーシング131は、複数の凸部132Bを摺動可能に受容する螺旋溝131Cを有するとよい。
【0155】
図20に示すように、各ロック部材132は、軸部132Aからロック部材132の回転軸線と直交する方向に突出した1以上の突出部132Cを有する。突出部132Cは、複数の凸部132Bとは軸部132Aの周方向に異なる位置に設けられ、軸部132Aから径方向に複数の凸部132Bとは異なる方向(概ね、逆向き)に突出している。突出部132Cは軸部132Aの延在方向に沿って延びる筋状をなしている。
【0156】
図19に示すように、ケーシング131の左右の側部には、ケーシング開口部131Dがそれぞれ形成されている。ロック部材132は、複数の凸部132Bがケーシング開口部131Dを通過してケーシング131の外方に突出したロック位置(図21(A)参照)と、複数の凸部132Bがケーシング131内に位置する解除位置(図22(A)参照)との間で回動する。
【0157】
図21(A)に示すように、ロック部材132が解除位置にあるときに複数の凸部132Bは、軸部132Aの上方に配置されている。これにより、複数の凸部132Bはそれぞれケーシング131の内部に収容された状態となっている。
【0158】
図22(A)に示すように、ロック部材132のそれぞれがロック位置にあるときに、左右のロック部材132の突出部132Cの少なくとも一つは互いに近づく方向、すなわち軸部132Aからケーシング131の左右方向中央に向けて突出している。複数の凸部132Bの少なくとも1つがケーシング131に当接することによって、ロック部材132のロック位置が定まってもよい。
【0159】
図19及び図20に示すように、付勢部材133のそれぞれは、ケーシング131と対応するロック部材132との間に設けられ、ロック部材132をロック位置に向けて付勢する。付勢部材133は、例えばねじりコイルばねであるとよい。付勢部材133がねじりコイルばねによって構成されているときには、付勢部材133は一端において、ケーシング131に係止され、他端においてロック部材132に係止されているとよい。ロック部材132には、付勢部材133を掛け止めするための掛止部132Dが設けられている。掛止部132Dは凸部132Bに設けられた切欠として形成されている。なお、付勢部材133はロック部材132の軸部132Aに支持されていてもよく、また、ケーシング131に支持されていてもよい。
【0160】
図19に示すように、操作部材134はケーシング131の左右方向における中央に配置されている。下ケーシング部材131A及び上ケーシング部材131Bにはそれぞれ上下方向に貫通する貫通孔131E、131Fがそれぞれ設けられている。操作部材134はそれらの貫通孔131E、131Fを通過している。操作部材134の上部はケーシング131の上面よりも突出している。操作部材134の上部を下方に押し込むことによって、スライダ112のレール111に対する移動が可能となる。
【0161】
図20に示すように、操作部材134は上下方向に延びる本体部135と、本体部135の前後縁部から前後方向に延びる一対のアーム部136と、本体部135の上端から上方に延びるロック解除部137とを備えている。
【0162】
本体部135は左右方向を向く面を有する直方体状をなしている。図21(A)に示すように、本体部135は下方に向けて左右方向の幅が広がる四角錐台状をなすように構成されていてもよい。本体部135は下ケーシング部材131Aに設けられた貫通孔131Eに上下方向に挿脱可能に構成されている。本体部135の左右側面には、左右外方に突出する複数の押圧部135Aが設けられている。押圧部135Aは本体部135の左右側面において左右対称をなすように設けられているとよい。
【0163】
図20に示すように、アーム部136は上下方向を向く面を有する板状をなしている。アーム部136の下面にはそれぞれ、略円筒状の受容部136Aが設けられている。下ケーシング部材131Aには、受容部136Aの下方にそれぞれ、略円柱状に凹む受容凹部136Bが設けられている。受容部136Aの内孔と、受容凹部136Bとの間には、アーム部136を上方に付勢するアーム付勢部材138が設けられている。本実施形態では、アーム付勢部材138はねじりコイルばねによって構成されている。
【0164】
アーム付勢部材138は操作部材134に前後方向に重なる位置に設けられている。これにより、操作部材134を上方に付勢することができるとともに、アーム付勢部材138と操作部材134とをコンパクトに配置することができる。
【0165】
図19に示すように、ロック解除部137は本体部135の上端から上方に突出する柱状をなしている。本実施形態では、ロック解除部137は円柱状をなしているが、角柱状や各種の形状が採用し得る。
【0166】
上ケーシング部材131Bに設けられた貫通孔131Fの大きさはロック解除部137が通過可能であり、且つ、アーム部136が通過不能な大きさに設定されている。アーム付勢部材138の付勢力によって、操作部材134は上方に付勢され、アーム部136が上ケーシング部材131Bの下面に当接する初期位置となっている。このとき、本体部135の左右側面に設けられた押圧部135Aの少なくとも一つが、ロック部材132の突出部132Cの上側に位置している。
【0167】
初期位置から操作部材134が押し下げられると、押圧部135Aがロック部材132の突出部132Cを押し下げて、ロック部材132を軸回りに回転させ、ロック部材132をロック位置から解除位置に回転させる。
【0168】
図21(A)及び図22(A)に示すように、ロック部材132には突出部132Cが複数設けられている。突出部132Cは周方向(詳細には、ロック部材132のロック位置から解除位置への回転方向)に沿って並んで配置されている。操作部材134にもまた複数の押圧部135Aが上下方向に並んで配置されている。押圧部135Aはそれぞれ、操作部材134の下方への移動によってロック部材132が回転したときに、対応する突出部132Cを下方に押圧する役割を果たす。このような役割を果たすため、操作部材134の下方への移動によってロック部材132が回転して、突出部132Cが左右方向に向けて突出する態様となったときに、押圧部135Aはそれぞれ対応する突出部132Cの上側に位置し、好ましくは接するように配置されている。
【0169】
操作部材134が初期位置(図21(A)参照)から挿入位置(図22(A)参照)まで移動すると、ロック部材132はロック位置から解除位置まで回転する。
【0170】
本実施形態では、図23に示すように、操作部材134は挿入位置から更に下方に位置する押込位置まで変位可能に構成されている。ロック部材132は操作部材134の挿入位置から押込位置までの下方への移動に伴って回転し、ロック位置からオーバーストローク位置まで回転する。
【0171】
本実施形態では、操作部材134が挿入位置から押込位置まで挿入されたときに、ロック部材132が解除位置から極力回転しないように構成されている。具体的には、操作部材134の挿入量に対するロック部材132の回転量の比が、解除位置から押込位置の方が、挿入位置から解除位置まで小さくなるように設定されている。
【0172】
具体的には、初期位置から挿入位置までの操作部材134の挿入量は10mm程度(図22の矢印を参照)であり、対応するロック部材132の回転量は85度程度であるのに対し、挿入位置から押込位置までの操作部材134の挿入量は5mm程度(図23の矢印を参照)であり、対応するロック部材132の回転量は25度程度(すなわち、半分以下)に設定されている。
【0173】
このような挿入量と回転量との関係を実現するため、図21(B)に示すように、突出部132Cの周方向の間隔は均一ではないように設定されてもよく、突出部132Cの形状は同一ではないように設定されてもよい。その他、突出部132Cが設けられる軸部132Aの断面形状は真円(図21(B)の二点鎖線を参照)とは異なる形状をなすように構成されてもよい。これにより、突出部132Cが軸部132Aを中心とする円周からオフセットした位置に配置されて、ロック部材132が偏心ギヤ形状をなすように構成される。
【0174】
本実施形態では更に、図22(A)及び図23に示すように、操作部材134が挿入位置から押込位置に移動するまでの間に、操作部材134の最も上側に位置する押圧部135Aが突出部132Cに当接し、突出部132Cを押し出すように構成されている。最も上側に位置する押圧部135Aの下縁には、図22(B)に示すように、上方に向かって左右外方向に傾斜する傾斜面135Bが設けられている。その傾斜面135Bの左右方向を向く仮想面に対する角度θは、その他の突出部132Cの下面の仮想面に対する角度θ´よりも大きくなっている。これにより、操作部材134の挿入量に対するロック部材132の回転量を他の押圧部135Aが突出部132Cを押し出す場合に比べて低減することができる。よって、操作部材134が挿入位置から押込位置に移動する際の、ロック部材132の回転量を抑えることができる。
【0175】
図15に示すように、左右のスライダ112には、操作レバー141が回動可能に設けられている。操作レバー141は、シートクッション105の前部の下方を左右方向に延びるレバー中央部141Aと、レバー中央部141Aの左右の端部から後方に延びる左右のレバー側部141Bとを有する。左右のレバー側部141Bの前後方向における中間部は、対応するスライダ112に左右方向に延びる回動軸141Cを中心として回動可能に支持されている。左右のレバー側部141Bの後端は、操作部材134の上端に上方から当接している。左右のレバー側部141Bの後端は、図示しない付勢部材133によって上方に向けて付勢されているとよい。
【0176】
図21(A)に示すように、操作部材134が初期位置にあるとき、左右のロック部材132はロック位置にある。左右のロック部材132がロック位置にあるとき、複数の凸部132Bはケーシング開口部131D及びスライダ開口部112Fを通過してレール111の対応する係止孔115に突入し、係止孔115に係止されている。これにより、レール111に対するスライダ112の移動が規制される。
【0177】
使用者が操作レバー141のレバー中央部141Aを上方に引くと、左右のレバー側部141Bの後端が操作部材134の上端を下方に押す。これにより、図22(A)に示すように、操作部材134は初期位置から下方に移動する。
【0178】
初期位置から操作部材134が押し下げられると、押圧部135Aがロック部材132の突出部132Cを押し下げて、ロック部材132を軸回りに回転させて、ロック部材132をロック位置から解除位置に回転させる。
【0179】
具体的には、操作部材134の押圧部135Aが左右の突出部132Cを下方に押すことによって、左右のロック部材132がロック位置から解除位置に回動する。これにより、複数の凸部132Bがレール111の係止孔115から離脱し、ケーシング131内に移動する。これにより、スライダ112はレール111に対して移動可能になる。
【0180】
本実施形態では、図23に示すように、操作部材134が挿入位置から押込位置まで挿入可能となっている。これにより、利用者が操作部材134を挿入位置よりも低い位置まで挿入することが期待されるため、操作部材134の挿入量の不足が防止され、利用者の意図に沿ったスライダ112(すなわち、乗物用シート103)の移動規制の解除が実現され易くなる。
【0181】
ロック部材132がロック位置から解除位置に移動するとき、凸部132Bの少なくとも1つが螺旋溝131Cを摺動することによって、ロック部材132はロック位置から解除位置に円滑に回転することができる。
【0182】
一対の前記ロック部材132が、互いに平行に配置され、操作部材134が一対の突出部132Cのそれぞれに当接するため、ロック部材132は安定性良くレール111に係合することができる。
【0183】
次に、スライド装置101の組み立て方法について説明する。
【0184】
上記のスライド装置101の組み立て方法は、ケーシング131にロック部材132、付勢部材133、及び操作部材134を取り付け、スライドロック装置130を組み立てるステップと、ケーシング131をスライダ112に取り付けるステップと、スライダ112をレール111に取り付けるステップとを有する。この態様によれば、スライダ112の内側にスライドロック装置130を作業効率良く組み付けることができる。
【0185】
また、スライドロック装置130を組み立てるステップは、ロック部材132に付勢部材133を取り付けるステップと、付勢部材133が取り付けられたロック部材132、及び操作部材134を複数のケーシング131部材の1つに支持させるステップと、ケーシング131を構成する複数の部材を互いに結合するステップとを有する。ケーシング131を構成する部材には、下ケーシング部材131A及び上ケーシング部材131Bが含まれる。
【0186】
上記のロック部材132の製造方法について説明する。
【0187】
ロック部材132は、図24(A)に示すように、単一の部材によって構成されてもよく、また、図24(B)に示すように、複数の部品を組み合わせることによって構成されてもよい。複数の部品を組み合わせて構成することにより、ロック部材132の成形が容易になる。図24(B)には、ロック部材132を複数の部品を組み合わせて構成される場合の部品の例が示されている。
【0188】
図24(B)に示す例では、ロック部材132は、シャフト150と、1つの第1ギヤ151と、2つの第2ギヤ152と、2つの第3ギヤ153と、1つの第4ギヤ154とによって構成される。図25に示すように、第1ギヤ151、第2ギヤ152、第3ギヤ153、及び、第4ギヤ154はそれぞれ、対応する凸部132Bを有し、筒状をなす筒部132Eを備えている。その他、第3ギヤ153の筒部132Eの外周面には、突出部132Cが設けられ、第4ギヤ154の凸部132Bには、付勢部材133を掛け止めするための掛止部132Dが設けられている。
【0189】
図25に示すように、第4ギヤ154、2つの第3ギヤ153、2つの第2ギヤ152、及び、第1ギヤ151の内孔にそれぞれ、記載の順にシャフト150を圧入することによってロック部材132が組み立てられる。また、第1~第4ギヤ154を例えば、レーザー溶接等の手法によりシャフト150に溶接することによって、それぞれをシャフト150に固定してもよい。
【0190】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、スライド装置1は、筒状部材61によって螺子部材27を側壁41に押し付けることによって摩擦係止し、螺子部材27の自由な回転を規制するように構成されていたが、螺子部材27の自由な回転を規制する構成であればいかなる態様であってもよい。例えば、スライド装置1は、回転規制装置55が螺子部材27を側壁41に押し付けるコイルばねを含み、そのコイルばねによって螺子部材27が側壁41に押し付けされることによって、螺子部材27の自由な回転が阻止される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0191】
1 :スライド装置
11 :レール
12 :スライダ
15 :係止孔
20 :ギヤボックス
21 :電気モータ
21A :回転軸
26 :ハウジング
27 :螺子部材
36 :軸部
37 :雄ネジ部
37A :ネジ山
41 :側壁
43 :開口
48 :駆動歯車
49 :従動歯車
51 :ツール孔
55 :回転規制装置
57 :伸縮装置
59 :付勢装置
61 :筒状部材
63 :第1筒状部材(筒状部材)
64 :第2筒状部材(筒状部材)
65 :主傾斜面(傾斜面)
67 :第1付勢部材(付勢部材)
68 :第2付勢部材(付勢部材)
70 :突出片(係止部)
75 :第2ばね用貫通孔(貫通孔)
76 :補助傾斜面(逆傾斜面)
78 :ストッパ
80 :ツール
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