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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121204
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電力変換装置および充放電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240830BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240830BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240830BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240830BHJP
   H01M 10/637 20140101ALI20240830BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240830BHJP
   B60L 53/14 20190101ALN20240830BHJP
   B60L 53/22 20190101ALN20240830BHJP
   B60L 55/00 20190101ALN20240830BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20240830BHJP
   B60L 58/25 20190101ALN20240830BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02J7/00 L
H02J7/00 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/637
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/22
B60L55/00
B60L58/12
B60L58/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028168
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 将年
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H031
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CB11
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H031AA09
5H031HH06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BB05
5H125BC05
5H125BC21
5H125BC24
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE27
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB37
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】
蓄電池に交流電流を印可して昇温する機能を、追加部品が少ない簡易な構成で実現する。
【解決手段】
蓄電池14に接続され複数の第1のスイッチを有する第1のブリッジ回路と、複数の第2のスイッチを有する第2のブリッジ回路と、第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路との間に配置されたトランスTrとを有する絶縁型双方向DCDCコンバータ2と、第1のブリッジ回路におけるトランスTrへの出力ノードと蓄電池の中点14Aとの間に設けられた第3のスイッチSと、第1のスイッチと第2のスイッチと第3のスイッチSとを制御する制御部3とを有し、制御部3は、制御モードとして、蓄電池に充電させる制御を行う充電モードと、蓄電池から放電させる制御を行う放電モードと、蓄電池に交流電流を印可して昇温する制御を行う昇温モードと、蓄電池の充電・放電・昇温を行わず待機する待機モードとを有し、制御モードの1つを選択的に実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池に接続され複数の第1のスイッチを有する第1のブリッジ回路と、複数の第2のスイッチを有する第2のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と前記第2のブリッジ回路との間に配置されたトランスとを有する絶縁型双方向DCDCコンバータと、
前記第1のブリッジ回路における前記トランスへの出力ノードと前記蓄電池の中点との間に設けられた第3のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチと前記第3のスイッチとを制御する制御部とを有し、
前記制御部は、制御モードとして、前記蓄電池に充電させる制御を行う充電モードと、前記蓄電池から放電させる制御を行う放電モードと、前記蓄電池に交流電流を印可して昇温する制御を行う昇温モードと、前記蓄電池の充電・放電・昇温を行わず待機する待機モードとを有し、前記制御モードの1つを選択的に実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記充電モードおよび前記放電モードでは、前記第3のスイッチをオフ状態に制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記昇温モードでは、前記複数の第2のスイッチを制御して前記トランスを短絡させるとともに、前記第3のスイッチおよび前記複数の第1のスイッチを制御して前記蓄電池に前記交流電流を印可することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の電力変換装置と、
外部からの充放電の要求と、前記蓄電池の充電状態と、前記蓄電池の温度とに基づいて、前記電力変換装置の前記制御部に実行させる前記制御モードを選択する統合制御装置とを有することを特徴とする充放電システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記統合制御装置は、外部から放電の要求があった場合には、
前記蓄電池の充電状態が放電閾値より大きく、前記蓄電池の温度が温度閾値以下の場合は、前記昇温モードを選択し、
前記蓄電池の充電状態が前記放電閾値より大きく、前記蓄電池の温度が前記温度閾値より大きい場合は、前記放電モードを選択し、
前記蓄電池の充電状態が前記放電閾値以下の場合は、前記待機モードを選択する
ことを特徴とする充放電システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記統合制御装置は、外部から充電の要求があった場合には、
前記昇温モードを選択中で、前記蓄電池の充電状態が昇温閾値より大きく、前記蓄電池の温度が温度閾値以下の場合は、前記昇温モードを選択し、
前記昇温モードを選択中で、前記蓄電池の充電状態が前記昇温閾値より大きく、前記蓄電池の温度が前記温度閾値より大きい場合は、前記充電モードを選択し、
前記昇温モードを選択中で、前記蓄電池の充電状態が前記昇温閾値以下の場合は、前記充電モードを選択し、
前記昇温モードを選択中ではなく、前記蓄電池の充電状態が前記昇温閾値より大きい充電閾値より大きく、前記蓄電池の温度が前記温度閾値より大きい場合は、前記待機モードを選択し、
前記昇温モードを選択中ではなく、前記蓄電池の充電状態が前記充電閾値より大きく、前記蓄電池の温度が前記温度閾値以下の場合は、前記昇温モードを選択し、
前記昇温モードを選択中ではなく、前記蓄電池の充電状態が前記充電閾値以下の場合は、前記充電モードを選択する
ことを特徴とする充放電システム。
【請求項7】
請求項4において、
前記統合制御装置は、外部から充放電の要求がない場合には、
前記蓄電池の充電状態が昇温閾値より大きく、前記蓄電池の温度が温度閾値以下の場合は、前記昇温モードを選択し、
前記蓄電池の充電状態が前記昇温閾値より大きく、前記蓄電池の温度が前記温度閾値より大きい場合は、前記待機モードを選択し、
前記蓄電池の充電状態が前記昇温閾値以下の場合は、前記待機モードを選択する
ことを特徴とする充放電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置および充放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の中でも、特に車両用蓄電池は、極低温時でも動作しなければならないが、極低温時には、内部抵抗が増加して出力電圧が低下する、あるいは、蓄電池の電力の容量が低下するという蓄電池の特性の低温による劣化(低温劣化)が起こるため、蓄電池の昇温が必要となる。
【0003】
蓄電池の昇温には、外付けヒータなどによって外部から加熱する外部加熱方式と、交流電流を蓄電池に印可して加熱する交流内部加熱方式がある。交流内部加熱方式は、加熱ムラがなく、加熱効率が高いという利点がある。
【0004】
交流内部加熱方式に関する技術としては、例えば非特許文献1がある。
【0005】
図16は、従来の電力変換装置の回路構成を説明する回路図である。図16は、非特許文献1のFig.7に記載された回路に対応する図である。
【0006】
図16に示すように、非特許文献1では、第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lと、第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lと、トランスTrとで構成された絶縁型双方向DCDCコンバータ2に対して、インダクタLr1、Lr2とキャパシタCr1、Cr2とを追加することにより、蓄電池14に対する交流加熱の機能を追加している。なお、インダクタLr1とキャパシタCr1は、蓄電池の中点と14Aと、第1のスイッチQ1Hと第1のスイッチQ1Lとの接続ノードとの間に、直列に接続されている。同様に、インダクタLr2とキャパシタCr2は、蓄電池の中点と14Aと、第1のスイッチQ2Hと第1のスイッチQ2Lとの間の接続ノードとの間に、直列に接続されている。
【0007】
図16に示した回路は、交流加熱モードと電力伝送モードのいずれかで動作する。2つのモードが非干渉となるよう、それぞれ異なるスイッチング周波数fsで動作させる。
【0008】
電力伝送モードでは従来のDAB(Dual Active Bridge)コンバータと同様、スイッチング周波数fsは数十kHzで動作する。電力伝送モードでは、全てのスイッチを使用し、位相シフト制御により双方向の電力伝送を行う。
【0009】
交流加熱モードでは、スイッチング周波数fsを数kHzとし、第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lを制御して蓄電池14に交流を印加して内部加熱を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】笹間裕太、ほか2名、「リチウムイオンバッテリ向け交流加熱インバータを統合した電動車両用Dual Active Bridgeコンバータ」、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)Vol.141 No.6 pp.453-460、2021年6月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図16に示した従来の電力変換装置の回路構成では、インダクタLr1、Lr2とキャパシタCr1、Cr2とを追加する必要があるので、追加部品点数が多く、コストアップするという課題がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、蓄電池に交流電流を印可して昇温する機能を、追加部品が少ない簡易な構成で実現した電力変換装置および充放電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、蓄電池に接続され複数の第1のスイッチを有する第1のブリッジ回路と、複数の第2のスイッチを有する第2のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と前記第2のブリッジ回路との間に配置されたトランスとを有する絶縁型双方向DCDCコンバータと、前記第1のブリッジ回路における前記トランスへの出力ノードと前記蓄電池の中点との間に設けられた第3のスイッチと、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチと前記第3のスイッチとを制御する制御部とを有し、前記制御部は、制御モードとして、前記蓄電池に充電させる制御を行う充電モードと、前記蓄電池から放電させる制御を行う放電モードと、前記蓄電池に交流電流を印可して昇温する制御を行う昇温モードと、前記蓄電池の充電・放電・昇温を行わず待機する待機モードとを有し、前記制御モードの1つを選択的に実行することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の充放電システムは、上記した電力変換装置と、外部からの充放電の要求と、前記蓄電池の充電状態と、前記蓄電池の温度とに基づいて、前記電力変換装置の前記制御部に実行させる前記制御モードを選択する統合制御装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蓄電池に交流電流を印可して昇温する機能を、追加部品が少ない簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例の電力変換装置の回路構成を説明する回路図。
図2】実施例の全体構成を説明する機能ブロック図。
図3】実施例の充電ステーションの構成を説明する機能ブロック図。
図4】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける等価回路を説明する回路図。
図5】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する波形図。
図6】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する回路図。
図7】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する波形図。
図8】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する波形図。
図9】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の他の例を説明する波形図。
図10】実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の他の例を説明する回路図。
図11】実施例の充放電システムにおける動作を説明するフローチャート。
図12】実施例の充放電システムにおける動作を説明するフローチャート。
図13】実施例の充放電システムにおける充電シーンの動作を説明する図。
図14】実施例の充放電システムにおける放電シーンの動作を説明する図。
図15】実施例の充放電システムにおける充放電以外のシーンの動作を説明する図。
図16】従来の電力変換装置の回路構成を説明する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、実施例の電力変換装置の回路構成を説明する回路図である。
【0019】
実施例の電力変換装置1は、DCDC変換回路4と、制御部3とを有する。DCDC変換回路4は、絶縁型双方向DCDCコンバータ2を有する。
【0020】
絶縁型双方向DCDCコンバータ2は、例えばDAB(Dual Active Bridge)コンバータであり、複数の第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lを有する第1のブリッジ回路と、複数の第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lを有する第2のブリッジ回路と、第1のブリッジ回路と第2のブリッジ回路との間に配置されたトランスTrとを有する。ここでは、蓄電池14に接続される側を第1のブリッジ回路とした。また、DCDC変換回路4は、第1のブリッジ回路に接続された平滑キャパシタCinと、第2のブリッジ回路に接続された平滑キャパシタCoutとを有する。
【0021】
ここで、実施例のDCDC変換回路4は、さらに、第1のブリッジ回路におけるトランスTrへの出力ノードと蓄電池の中点14Aとの間に設けられた第3のスイッチSを有する。なお、蓄電池の中点14Aは、蓄電池14の電位の半分の電位となるノードであり、低電位側の蓄電池の電圧VbatL=高電位側の蓄電池の電圧VbatHとなっている。実施例の電力変換装置1は、絶縁型双方向DCDCコンバータ2に対して、第3のスイッチSを追加するという簡易な構成により、蓄電池14に交流電流を印可して昇温する機能を追加することができる。
【0022】
制御部3は、第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lと第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lと第3のスイッチSとを制御する。
【0023】
制御部3は、制御モードとして、蓄電池14に充電させる制御を行う充電モードと、蓄電池14から放電させる制御を行う放電モードと、蓄電池14に交流電流を印可して昇温する制御を行う昇温モードと、蓄電池14の充電・放電・昇温を行わず待機する待機モードとを有し、制御モードの1つを選択的に実行する。
【0024】
制御部3は、充電モードおよび放電モードでは、第3のスイッチSをオフ状態に制御する。これにより、第3のスイッチSを追加していない従来のDCDC変換回路4と同じ構成になるので、従来と同様に第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lと第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lを制御することで充放電の動作が可能となる。
【0025】
なお、放電モードでは、図1に示すように蓄電池14からの電圧を入力電圧Vinとし、出力電圧Vout、出力電流ioutを出力する。充電モードでは、入力と出力が入れ替わり、第2のブリッジ回路側に外部からの電力が入力され、蓄電池14に出力することで充電が行われる。
【0026】
制御部3は、待機モードでは、例えば、第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lと第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lと第3のスイッチSをすべてオフ状態に制御することで待機状態とする。
【0027】
制御部3は、昇温モードでは、第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lを制御してトランスTrを短絡させるとともに、第3のスイッチSおよび第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lを制御して蓄電池14に交流電流を印可する。昇温モードにおける動作の詳細については後述する。
【0028】
図2は、実施例の全体構成を説明する機能ブロック図である。
【0029】
図2では、図1に示した実施例の電力変換装置1を車両10に搭載される双方向車載充電器15に適用した例を用いて説明するが、これに限られず、車載用途以外の電力変換装置に適用してもよい。
【0030】
車両10は、例えば電気自動車であり、統合制御装置11と、GW(Gate Way)12と、BMS(Battery Management System)13と、蓄電池14と、双方向車載充電器15と、コネクタ16とを有する。また、車両10は、各種機器と通信を行う図示しないネットワークを有する。
【0031】
統合制御装置11は、車両10の各種の制御を行う制御装置である。統合制御装置11は、図示しない各種センサおよびドライバの操作に基づいて、駆動力指令を演算し、図示しないインバータおよびモータを制御して、車両10の駆動力を制御する。また、統合制御装置11は、車両10の電力エネルギ管理を行う。
【0032】
GW12は、外部とのデータのやり取りを行う装置である。
【0033】
BMS13は、蓄電池14の状態を監視し、統合制御装置11に送信する。蓄電池14の状態としては、例えば、蓄電池14の充電状態(以下、SOC(State Of Charge)と呼ぶ場合もある)、蓄電池14の温度などである。なお、SOCとは、充電状態または充電率を表す指標である。
【0034】
蓄電池14は、例えばリチウムイオン電池などが用いられる。
【0035】
双方向車載充電器15は、DCDC変換回路4と、ACDC変換回路5と、制御部3とを有する。双方向車載充電器15は、図1で示した電力変換装置1の第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4L側にACDC変換回路5を接続した構成に相当する。ACDC変換回路5は、制御部3により制御される。双方向車載充電器15は、蓄電池14の電力をDCDC変換回路4とACDC変換回路5を介して外部へ交流電力として出力するとともに、外部から入力された交流電力をACDC変換回路5とDCDC変換回路4を介して蓄電池14を充電する。また、双方向車載充電器15は、蓄電池14に交流電流を印可して昇温する機能を有する。なお、双方向車載充電器15の外部から直流電力が供給される場合には、ACDC変換回路5を省略してもよいし、あるいは、ACDC変換回路5を介さないように外部からDCDC変換回路4に直流電力を供給する構成を追加してもよい。
【0036】
コネクタ16は、外部電源や負荷に接続するための車両10側のコネクタであり、双方向車載充電器15のACDC変換回路5に接続されている。
【0037】
車両10のコネクタ16を家庭20のコネクタ29と接続することで、家庭20の余剰電力を車両10の蓄電池14へ充電したり、車両10の蓄電池14の電力を放電して家庭20に電力を供給したりすることができる。
【0038】
例えば、家庭20のPV(Photovoltaics;太陽光発電)22で発電した電力は、PCS(Power Conditioning System)23を介して分電盤24に供給されて家庭20内の電力として活用される。このとき、家庭20内のエアコン、TV、照明などの家庭電力負荷25で使用する電力が少ない場合は、PV22で発電した余剰電力を車両10の蓄電池14に蓄えることが望まれる。その場合、家庭20の電力を管理するHEMS(Home Electric Management System)コントローラ26から車両10へ充電の要求を出力する。この充電の要求は、コネクタ29、16、あるいは、無線などを介して、GW12で受信され、統合制御装置11に送信される。
【0039】
統合制御装置11は、外部から充電の要求があると、車両10の蓄電池14が余剰電力を充電可能かを判断する。充電可能かの判断は、余剰電力量、蓄電池14の充電状態、蓄電池14の温度などに応じて行われる。
【0040】
統合制御装置11により蓄電池14への充電を行うと判断されると、家庭20の余剰電力は、分電盤24からEVPS(Electric Vehicle Power System)28を経由し、コネクタ29、16を介して、車両10へ伝送される。なお、EVPS28の需給電は、AC受給電とDC受給電のいずれかの可能性があるが、ここではAC受給電の場合を例に説明する。伝送された余剰電力は、コネクタ16から双方向車載充電器15へ伝送され、交流から直流へ変換されて、蓄電池14を充電する。
【0041】
統合制御装置11により蓄電池14への充電を行わないと判断されると、HEMSコントローラ26は、電力系統30への提供が許容される場合、余剰電力を電力量計21を介して電力系統30に供給する。
【0042】
一方、PV22の発電量が少なく、家庭20での電力消費が多い場合、HEMSコントローラ26は、不足分の電力を車両10の蓄電池14から供給するよう車両10に放電の要求を出力する。この放電の要求は、充電の要求と同様に、統合制御装置11に送信される。
【0043】
統合制御装置11は、外部から放電の要求があると、車両10の蓄電池14が放電可能かを判断する。放電可能かの判断は、不足電力量、蓄電池14の充電状態、蓄電池14の温度などに応じて行われる。
【0044】
統合制御装置11により蓄電池14の放電を行うと判断されると、蓄電池14の電力は、双方向車載充電器15で直流から交流へ変換され、コネクタ16、29、EVPS28、分電盤24を介して家庭20へ供給される。
【0045】
なお、ここではEVPS28を介して家庭20へ電力を供給する例を示したが、EVPS28に代えて、V2L(Vehicle to Load)装置27を介して家庭20へ交流電力を提供してもよい。
【0046】
また、車両10が走行を終えて家庭20へ帰ってきた際に、車両10の蓄電池14の蓄電状態が低下しており、充電を行うことがある。その場合、コネクタ16をコネクタ29に接続し、車両10の統合制御装置11は、蓄電池14の充電状態が低いと判断して、充電の要求を出力し、コネクタ16、29、あるいは、別の通信手段にて家庭20と車両10の接続が確認できると、EVPS28を介して家庭20から供給される電力を用いて車両10の蓄電池14を充電する。この際、家庭20からの電力は、PV22からの電力でもよいし、電力系統30から提供される電力でもよい。
【0047】
図3は、実施例の充電ステーションの構成を説明する機能ブロック図である。
【0048】
充電ステーション40は、コネクタ43を有する複数の充放電装置42と、充放電装置42を管理する充電管理システム41とを有する。
【0049】
充放電装置42のコネクタ43に車両10のコネクタ16を接続することで、充放電装置42と車両10が通信を行い、充放電の要求に応じて充放電を実行する。コネクタ16、43の接続では、電力の授受とともに、情報・データの授受も行う。あるいは、別の通信手段にて情報・データの授受を行ってもよい。
【0050】
例えば、車両10の蓄電池14の充電状態が低い場合は、車両10は充放電装置42から蓄電池14への充電を要求する。これは通常の充電要求である。この充電に関しては、充電管理システム41は、充電ステーション40内の電力使用量に応じて、充電開始タイミングなどの充電タイミングや充電レートを変更することもある。これによって、充電ステーション40の電力使用のピークを抑えることができる。車両10の蓄電池14の充電状態が高くなったら、充放電装置42からの充電は停止する。
【0051】
また、充電ステーション40にて、充放電装置42を介して車両10の蓄電池14から電力を受け取る場合もある。例えば、充電ステーション40内で急速充電が必要な要求があるが、これ以上電力系統からの電力供給を受けることができない場合、充電ステーション40内の許容されている複数の車両10の蓄電池14から電力を受け取り、急速充電に利用する場合もある。また、電力系統の安定化のために、電力系統へ電力を戻す必要がある際に、許容されている複数の車両10の蓄電池14の電力を電力系統へ戻す場合もある。これらの場合は、充電管理システム41が車両10に放電の要求を送信し、車両10の統合制御装置11は、放電が可能かを判断し、放電が可能な場合は蓄電池14から放電を行う。
【0052】
充電ステーション40では、DC充電による急速充電とAC充電による普通充電の2つの充電がある。
【0053】
充電時間を短縮するために、DC急速充電では、充電電圧を400Vで提供している。ここで、車両10の蓄電池14として、800Vの蓄電池システムを搭載している場合は、供給された400Vを800Vに昇圧して充電する必要がある。このため、800の蓄電池を搭載する場合は、車両10は、昇圧DCDC車載変換器をさらに備えるようにしてもよい。
【0054】
一方、AC普通充電は、受電時間は長くなるが、充放電装置42の本体の値段が安いので、多数の設置が可能となる。多数の設置が可能であれば、比較的長時間つなげることができ、充電以外にも車両10からの放電を行える可能性がある。AC普通充電と放電が可能な充放電装置42に対しては、車両10は、双方向車載充電器15によって、車両10への充電と車両10からの放電が可能となる。
【0055】
図4は、実施例の電力変換装置の昇温モードにおける等価回路を説明する回路図である。図5図7図8は、実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する波形図である。図6は、実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の一例を説明する回路図である。図5の横軸は時刻tを示し、縦軸は電圧または電流を示す。図7図8の横軸は時刻を示し、縦軸は電流を示す。
【0056】
制御部3は、昇温モードでは、図1の第2のスイッチQ3H、Q3L、Q4H、Q4Lを制御してトランスTrを短絡させる。具体的には、第2のスイッチQ3L、Q4Lを常にオン状態とする。もしくは、第2のスイッチQ3H、Q4Hを常にオン状態とする。これにより、トランスTrの第2のブリッジ回路側である2次巻線側が短絡され、トランスTrの励磁インダクタンスの存在を無視できるようになり、漏れインダクタンスLkgのみを交流加熱用インダクタとして利用できる。等価回路で表すと、図4に示すように、トランスTrは等価的に漏れインダクタンスLkgのみで表される。なお、図4のキャパシタCbatは図1の平滑キャパシタCinに対応する。
【0057】
この状態で、制御部3が第1のスイッチQ1H、Q1L、Q2H、Q2Lを適切に駆動することで、漏れインダクタンスLkgに台形波状の電流iLkgを発生させる。この台形波状の電流iLkgを制御部3が制御する第3のスイッチS経由で蓄電池の中点14Aに与えることで、交流内部加熱を行う。
【0058】
制御部3は、図5に示すように、PWM制御により交流加熱電流ihを生成する。交流加熱電流ihの周波数fhは、リチウムイオン電池の充放電を繰り返すことで内部抵抗が増加する、あるいは、電力の容量が低下するというような使用による劣化(使用劣化)が生じない周波数域である数kHz以上とする。周波数fhは、スイッチング周波数fsよりも小さく設定される。
【0059】
第1のスイッチQ2Hの搬送波vcarrと指令信号vrefとを比較することで第1のスイッチQ2HをPWM制御でスイッチングする。第1のスイッチQ2Hのドレイン-ソース間電圧vQ2Hは図5に示すようになる。なお、第1のスイッチQ2Hと第1のスイッチQ2Lは相補的に駆動する。
【0060】
係数drefを0<dref<0.5としたとき、周期Th(=1/fh)のうちの最初のdrefThの期間である時刻T0から時刻T1の期間がMode1、次の(0.5-dref)Thの期間である時刻T1から時刻T2の期間がMode2、次のdrefThの期間である時刻T2から時刻T3の期間がMode3、次の(0.5-dref)Thの期間である時刻T3から時刻T4の期間がMode4となる。
【0061】
Mode1とMode3では、漏れインダクタンスLkgの電流iLkgを急峻に変化させて電流極性を切り替える。指令信号vrefの絶対値を搬送波vcarrよりも大きくすることで過変調状態としつつ、第3のスイッチSをオフ状態とすることで蓄電池14の全体の電圧(VbatH+VbatL)を漏れインダクタンスLkgに印加する。具体的には、図6に示すように、Mode1では第1のスイッチQ1L、Q2Hをオンすることで、漏れインダクタンスLkgの電圧はVbatH+VbatLとなる。Mode3では第1のスイッチQ1H、Q2Lをオンすることで、漏れインダクタンスLkgの電圧は-(VbatH+VbatL)となる。これにより、Mode1とMode3では、電流iLkgが急峻に変化する。
【0062】
一方、Mode2とMode4では、第1のスイッチQ1H、Q1Lをオフとしつつ、第3のスイッチSをオン状態とすることで、蓄電池の中点14Aに交流加熱電流ihを与える。第3のスイッチSをオンすることで漏れインダクタンスLkgに印加される電圧がVbatLあるいはVbatHとなるため、電流iLkgの変化率はMode1やMode3と比べて抑えられる。
【0063】
ここで、回路中の抵抗成分による電流iLkgの減衰を補償するために、バイアスVbiasを指令信号vrefに設けることで交流加熱電流ihを所定の範囲に維持する。Mode2とMode4は、第1のスイッチQ2H、Q2Lのスイッチング状態に応じて、サブモードMode2-A、Mode2-B、及び、Mode4-A、Mode4-Bに分けることができる。サブモードA(Mode2-A、Mode4-A)ではQ2Lがオン、サブモードB(Mode2-B、Mode4-B)ではQ2Hがオン状態である。サブモードAでは交流加熱電流ihは減少し、サブモードBでは交流加熱電流ihは増加する。
【0064】
スイッチング周波数fs=250kHzの条件でシミュレーション解析を行い、取得した電流波形を図7に示す。図7の電流iLkgと交流加熱電流ihは、図5に示す理論波形とのよい一致を示し、実施例の昇温モードでの制御方法による台形波電流の生成を確認できた。
【0065】
また、電流ピーク値を20Aとしたときの交流加熱電流ihと正弦波電流の波形を図8に示す。交流加熱電流ihと正弦波電流のピーク値に対する実効値の比はそれぞれ0.83と0.71であった。交流加熱電流ihを台形波電流とすることで、電流実効値が約1.17倍に向上したことから、加熱時間を短縮できることが示唆される。
【0066】
図9は、実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の他の例を説明する波形図である。図10は、実施例の電力変換装置の昇温モードにおける動作の他の例を説明する回路図である。図9の横軸は時刻tを示し、縦軸は電圧または電流を示す。
【0067】
図4から図8では台形波状の交流加熱電流ihを生成する方法について述べたが、これに限られず、図9および図10に示すように、三角波状の交流加熱電流ihで内部加熱を行うことも可能である。
【0068】
三角波状の交流加熱電流ihを生成する場合は、図10に示すように第1のスイッチQ1L、Q1Hは常時オフ、第3のスイッチSは常時オンとする。そして、第1のスイッチQ2L、Q2Hを50%のデューティで交互に駆動する。
【0069】
第1のスイッチQ2Hがオン状態であるModeAでは、漏れインダクタンスLkgにはVbatHの電圧が印加され、図9に示すように電流iLkgは直線状に増加する。なお、図9の電圧vgsは第1のスイッチQ2Hまたは第1のスイッチQ2Lのゲート-ソース間電圧である。
【0070】
一方、第1のスイッチQ2Lがオン状態であるModeBでは、漏れインダクタンスLkgには、ModeAとは逆極性でVbatLの電圧が印加されるため、電流iLkgは直線状に低下する。
【0071】
ModeAとModeBを交互に繰り返すことで三角波状の電流iLkgを生成し、これを交流加熱電流ihとして蓄電池の中点14Aに与えることで交流内部加熱を行う。
【0072】
同一のピーク電流あたりの三角波電流の実効値は台形波と比べて低いため、三角波電流での加熱には長い時間を要するが、台形波電流の生成時と比べて回路の駆動方法が簡易にできるという効果がある。
【0073】
図11および図12は、実施例の充放電システムにおける動作を説明するフローチャートである。
【0074】
実施例の充放電システムは、図1および図2のDCDC変換回路4と、制御部3と、統合制御装置11とを少なくとも有している。充放電システムとして、BMS13、蓄電池14、ACDC変換回路5など、実施例で説明した他の構成を含めてもよい。統合制御装置11は、外部からの充放電の要求と、蓄電池14の充電状態と、蓄電池14の温度とに基づいて、電力変換装置1の制御部3に実行させる制御モードを選択する。
【0075】
統合制御装置11は、所定周期で、図11および図12の処理フローを実行する。S01の開始ステップから開始し、S16の戻るステップまで処理を終えると、再びS01に戻る。
【0076】
S02は、接続確認ステップであり、家庭20や充電ステーション40などの外部の充放電設備との接続を確認する。
【0077】
S03は、充放電要求検知ステップであり、S02の接続確認後に、GW12経由で受信した外部からの充放電の要求を検知し、取得する。なお、外部からの充放電の要求には、蓄電池14の充電状態(SOC)が低下したことに伴うBMS13からの充電の要求を含めてもよい。
【0078】
S04は、蓄電池SOC検出ステップであり、BMS13から蓄電池14の充電状態を取得する。
【0079】
S05は、蓄電池温度検出ステップであり、BMS13から蓄電池14の温度を取得する。
【0080】
なお、S03からS05までの処理は順序を入れ替えてもよい。
【0081】
S06は、要求判定ステップであり、外部からの充放電の要求の判定を行う。放電の要求があった場合(放電要求)はS07に、充電の要求があった場合(充電要求)はAを経由して図12のS17に、充放電の要求がない場合(充放電要求以外)は、S12に移る。
【0082】
S07は、SOC判定ステップであり、蓄電池14の充電状態が放電閾値より大きい場合はS08に移る。蓄電池14の充電状態が放電閾値以下の場合はS11に移り、S11では、充電状態が不足しており放電できないため待機モードを選択する。
【0083】
S08は、温度判定ステップであり、蓄電池14の温度が温度閾値以下の場合は、S09に移り、S09では、放電前に昇温が必要であるとして昇温モードを選択する。これにより、低温での放電を回避して、蓄電池14の低温劣化を防止できる。蓄電池14の温度が温度閾値より大きい場合は、S10に移り、S10では、放電が可能であるとして放電モードを選択する。
【0084】
S12は、SOC判定ステップであり、蓄電池14の充電状態が昇温閾値以下の場合はS14に移り、S14では、昇温に必要な蓄電池14の電力が不足しているため待機モードを選択する。蓄電池14の充電状態が昇温閾値より大きい場合はS13に移る。
【0085】
S13は、温度判定ステップであり、蓄電池14の温度が温度閾値より大きい場合は、S14に移り、S14では、今後の充放電の要求があっても温度は問題ないとして待機モードを選択する。蓄電池14の温度が温度閾値以下の場合は、S15に移り、S15では、今後の充放電の要求に備えてあらかじめ昇温しておくために昇温モードを選択する。これにより、S09の状態の昇温による待ち時間を低減できる。また、後述するようなS20やS25の状態において低温状態でも充電することにより昇温する状況を避けて、蓄電池14の低温劣化を防止できる。
【0086】
S17は、モード判定ステップであり、昇温モード選択中の場合は、S23に移り、昇温モード選択中ではない場合(昇温モード選択中以外)は、S18に移る。なお、フローの開始直後など、制御モードが何も選択されていない場合についても、昇温モード選択中ではない場合に含まれる。
【0087】
S18は、SOC判定ステップであり、蓄電池14の充電状態が充電閾値以下の場合はS20に移り、S20では、放電が必要であるとして充電モードを選択する。ここで、蓄電池14の低温劣化を避けるためには蓄電池14の温度は温度閾値より大きいことが望ましいが、温度閾値以下であったとしても、充電により蓄電池14が発熱するので昇温することができる。したがって、このフローでは蓄電池14の温度にかかわらず充電モードを選択している。蓄電池14の充電状態が充電閾値より大きい場合は、S19に移る。
【0088】
S19は、温度判定ステップであり、蓄電池14の温度が温度閾値以下の場合は、S21に移り、S21では、充電前に昇温した方が望ましいとして昇温モードを選択する。これにより、低温での充電を回避して、蓄電池14の低温劣化を防止できる。蓄電池14の温度が温度閾値より大きい場合は、S22に移り、S22では、充電も昇温も不要であるとして待機モードを選択する。
【0089】
S23は、昇温モード選択中におけるSOC判定ステップであり、蓄電池14の充電状態が昇温閾値以下の場合はS25に移り、S25では、昇温モード選択中なので蓄電池14の温度は温度閾値以下であるが、昇温に必要な蓄電池14の電力が足りないため、充電により蓄電池14が発熱して昇温すべく、充電モードを選択する。蓄電池14の充電状態が昇温閾値より大きい場合はS24に移る。
【0090】
S24は、昇温モード選択中における温度判定ステップであり、蓄電池14の温度が温度閾値以下の場合は、S26に移り、S26では、充電前に昇温を継続した方が望ましいとして昇温モードを選択する。これにより、低温での充電を回避して、蓄電池14の低温劣化を防止できる。蓄電池14の温度が温度閾値より大きい場合は、S27に移り、S27では、昇温の必要がなくなったので通常の充電に切り替えるべく充電モードを選択する。
【0091】
S09、S10、S11、S14、S15、S20、S21、S22、S25、S26、S27の後は、S16の戻るステップに移る。
【0092】
以上の処理により、低温での蓄電池14の充放電を可能な範囲で避けることができるので、蓄電池14の低温劣化を防止できる。
【0093】
図13は、実施例の充放電システムにおける充電シーンの動作を説明する図である。図13の横軸は時刻である。1段目のタイムチャートの縦軸は、S06の要求判定ステップの結果(放電要求、充電要求、その他)を示している。2段目のタームチャートの縦軸は、蓄電池14の温度を示している。3段目のタームチャートの縦軸は、蓄電池14の充電状態(SOC)を示している。ここでは、放電閾値<昇温閾値<充電閾値に設定されている。4段目のタームチャートの縦軸は、選択された制御モード(充電モード、放電モード、昇温モード、待機モード)を示している。なお、各タイムチャートの縦軸と横軸は、後述する図14および図15についても同様である。
【0094】
時刻T1において、コネクタ16が接続される。ここでは、S06で、充電要求が判定され、昇温モード選択中ではなく充電閾値以下なので、S20で充電モードが選択される。これにより、蓄電池温度と蓄電池SOCが上昇していく。その後も、S20の充電モードの選択が継続する。
【0095】
時刻T2では、蓄電池SOCが充電閾値より大きくなったが、蓄電池温度は温度閾値以下であるため、S21で昇温モードが選択され、昇温モードに移行する。これにより、蓄電池温度は上昇し、蓄電池SOCは低下していく。昇温モードに移行後は、S26の昇温モードが選択され、選択が継続する。
【0096】
時刻T3では、蓄電池温度は温度閾値より大きくなったが、蓄電池SOCは昇温閾値より大きく充電閾値以下であるため、S27で充電モードが選択されて充電モードに移行し、その後はS20の充電モードの選択が継続する。これにより、蓄電池温度と蓄電池SOCが上昇していく。
【0097】
時刻T4では、蓄電池SOCが充電閾値より大きくなり、蓄電池温度も温度閾値より大きいため、S22の待機モードが選択され、充電が終了する。このとき、要求判定は、その他に移行する。
【0098】
図14は、実施例の充放電システムにおける放電シーンの動作を説明する図である。
【0099】
時刻T1において、コネクタ16が接続される。ここでは、S06で、放電要求が判定され、蓄電池SOCが放電閾値より大きく、蓄電池温度が温度閾値以下なので、S09で昇温モードが選択される。これにより、蓄電池温度が上昇し、蓄電池SOCが低下していく。その後も、S09の昇温モードの選択が継続する。これにより、低温での放電を避けることができ、蓄電池14の低温劣化を防止できる。なお、緊急の放電を要する場合などには、外部から強制放電要求を受信するようにし、昇温モードを選択せず放電モードを選択するようにしてもよい。
【0100】
時刻T2では、蓄電池温度が温度閾値より大きくなり、蓄電池SOCも放電閾値より大きいため、S10で放電モードが選択されて放電モードに移行し、その後はS10の放電モードの選択が継続する。これにより、蓄電池温度が上昇し、蓄電池SOCが低下していく。
【0101】
時刻T3では、蓄電池SOCが放電閾値以下となるため、S11の待機モードが選択され、放電が終了する。このとき、要求判定は、その他に移行する。
【0102】
図15は、実施例の充放電システムにおける充放電以外のシーンの動作を説明する図である。
【0103】
時刻T1において、コネクタ16が接続される。ここでは、S06で、充放電要求がないのでその他(充放電要求以外)が判定され、蓄電池SOCが昇温閾値より大きく、蓄電池温度が温度閾値以下なので、S15で昇温モードが選択される。これにより、蓄電池温度が上昇し、蓄電池SOCが低下していく。その後も、S15の昇温モードの選択が継続する。これにより、蓄電池14を昇温して今後の充放電の要求に備えることができる。なお、例えば節電のために待機時昇温モード禁止の要求や強制待機要求などがあった場合は、昇温モードを選択せずに待機モードを選択するようにしてもよい。
【0104】
時刻T2では、蓄電池温度が温度閾値より大きくなり、蓄電池SOCも昇温閾値より大きいため、S14で待機モードが選択されて昇温が終了する。このとき、要求判定は、その他に移行する。
【0105】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 電力変換装置
2 絶縁型双方向DCDCコンバータ
3 制御部
4 DCDC変換回路
5 ACDC変換回路
10 車両
11 統合制御装置
12 GW
13 BMS
14 蓄電池
14A 蓄電池の中点
15 双方向車載充電器
16 コネクタ
20 家庭
21 電力量計
22 PV
23 PCS
24 分電盤
25 家庭電力負荷
26 HEMSコントローラ
27 V2L装置
28 EVPS
29 コネクタ
30 電力系統
40 充電ステーション
41 充電管理システム
42 充放電装置
43 コネクタ
Q1H、Q1L、Q2H、Q2L 第1のスイッチ
Q3H、Q3L、Q4H、Q4L 第2のスイッチ
S 第3のスイッチ
Tr トランス
Lkg 漏れインダクタンス
ih 交流加熱電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16