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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121216
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20240830BHJP
   B23K 26/12 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
B23K26/142
B23K26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028184
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397054303
【氏名又は名称】セントラルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕明
(72)【発明者】
【氏名】芳田 光崇
(72)【発明者】
【氏名】五上 豪
(72)【発明者】
【氏名】大杉 晃史
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168EA24
4E168FB03
4E168FC04
4E168FC07
(57)【要約】
【課題】空気の一部が上方へ流れて、ヒュームが保護光学部材に付着するおそれを抑制することができるレーザ溶接装置の提供。
【解決手段】本開示に係るレーザ溶接装置100は、レーザスキャナ5とワークW1との間に配置された保護光学部材4と、上側ガス供給ユニット1と、上側ガス供給ユニット1よりも下側に設けられた下側ガス供給ユニット2とを備える。保護光学部材4は、板状部4aと、板状部4aの外縁から下方に延びる筒状部4bとを備える。上側ガス供給ユニット1は、保護光学部材4の板状部4aよりも下側に設けられている。上側ガス供給ユニット1は、板状部4aの中央に気体を噴射する複数の第1の噴射口1cと、板状部4aの下側方向に気体を噴射する複数の第2の噴射口1dとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナと、
当該レーザスキャナとワークとの間に配置された保護光学部材と、を備えるレーザ溶接装置であって、
上側ガス供給ユニットと、
前記上側ガス供給ユニットよりも下側に設けられた下側ガス供給ユニットと、を備え、
前記保護光学部材は、板状部と、前記板状部の外縁から下方に延びる筒状部と、を備え、
前記上側ガス供給ユニットは、前記保護光学部材の板状部よりも下側に設けられ、
前記上側ガス供給ユニットは、前記板状部の中央に気体を噴射する複数の第1の噴射口と、前記板状部の下側方向に気体を噴射する複数の第2の噴射口と、を備え、
前記筒状部は、前記上側ガス供給ユニットと前記下側ガス供給ユニットとの間に設けられ、前記筒状部の外側から内側へ気体を導入する複数の気体導入口を有し、
前記下側ガス供給ユニットは、前記筒状部の下端から下側方向に気体を噴射する複数の下側噴射口を備える、
レーザ溶接装置。
【請求項2】
前記複数の第2の噴射口は、前記板状部の外縁からレーザの光軸側に傾斜した方向に気体を噴射する、
請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記複数の第2の噴射口は、前記板状部の外縁からレーザの光軸と平行な方向に気体を噴射する、
請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のレーザ溶接装置は、レーザスキャナ本体から照射されたレーザ光の光路を横切る方向に空気を流すエアブローユニットを備える。この空気の流れによって、レーザ溶接時にワーク上のレーザ照射位置から飛散してくるスパッタが、レーザスキャナ本体の出射開口部近傍に取り付けられた保護ガラスに付着することを防止するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-202441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等は、以下の課題を発見した。
このようなレーザ溶接装置において、空気の一部が上方へ流れることがある。このような場合、ヒュームが、保護ガラス等の保護光学部材に付着するおそれがある。
【0005】
本開示は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、空気の一部が上方へ流れて、ヒュームが保護光学部材に付着するおそれを抑制することができるレーザ溶接装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーザ溶接装置は、
レーザスキャナと、
当該レーザスキャナとワークとの間に配置された保護光学部材と、を備えるレーザ溶接装置であって、
上側ガス供給ユニットと、
前記上側ガス供給ユニットよりも下側に設けられた下側ガス供給ユニットと、を備え、
前記保護光学部材は、板状部と、前記板状部の外縁から下方に延びる筒状部と、を備え、
前記上側ガス供給ユニットは、前記保護光学部材の板状部よりも下側に設けられ、
前記上側ガス供給ユニットは、前記板状部の中央に気体を噴射する複数の第1の噴射口と、前記板状部の下側方向に気体を噴射する複数の第2の噴射口と、を備え、
前記筒状部は、前記上側ガス供給ユニットと前記下側ガス供給ユニットとの間に設けられ、前記筒状部の外側から内側へ気体を導入する複数の気体導入口を有し、
前記下側ガス供給ユニットは、前記筒状部の下端から下側方向に気体を噴射する複数の下側噴射口を備える。
【0007】
このような構成によれば、複数の第1の噴射口が板状部の外縁から中央に気体を噴射するため、保護光学部材の板状部の下側表面が気体によって覆われる。中央の下方に気体が流れる。また、複数の第2の噴射口が板状部の外縁から下側方向に気体を噴射する。下側ガス供給ユニットの複数の噴射口は、下側方向に気体を噴射する。複数の気体導入口が筒状部の外側から内側へ空気を導入する。これらによって、空気の一部が上方へ流れることを抑制する。したがって、ヒュームが保護光学部材に付着するおそれを抑制することができる。
【0008】
また、前記複数の第2の噴射口は、前記板状部の外縁からレーザの光軸側に傾斜した方向に気体を噴射してもよい。また、前記複数の第2の噴射口は、前記板状部の外縁からレーザの光軸と平行な方向に気体を噴射してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、空気の一部が上方へ流れて、ヒュームが保護光学部材に付着するおそれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の上面図である。
図2図2は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の断面図である。
図3図3は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の上側ガス供給ユニットの斜視図である。
図4図4は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の下側ガス供給ユニットの斜視図である。
図5図5は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の一変形例の上側ガス供給ユニットの斜視図である。
図6図6は、実施例について流速を解析した場所を示す図である。
図7図7(a)~(c)は、それぞれ実施例1、実施例2、及び比較例1について流速を解析した結果を示す図である。
図8図8は、実施例について流速を解析した場所を示す図である。
図9図9は、実施例について流速を解析した断面を示す図である。
図10図10は、実施例について流速を解析した結果を示す図である。
図11図11は、実施例等に係るレーザ溶接装置の保護光学部材の下方における流速を実測した、又は解析した結果を示すグラフである。
図12図12は、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置の上面図である。
図13図13は、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置の断面図である。
図14図14は、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置の要部の斜視図である。
図15図15は、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<関連する技術>
本開示を適用した具体的な実施形態に先立って、図12図15を参照して、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置について説明する。図12は、本開示に関連する技術に係るレーザ溶接装置の上面図である。図13は、図12に示すレーザ溶接装置の断面図である。図14は、図12に示すレーザ溶接装置の上側ガス供給ユニットの斜視図である。図15は、図12に示すレーザ溶接装置の下側ガス供給ユニットの斜視図である。なお、図13において、レーザスキャナ95と、ワークW9とについては、符号のみを示し、図示を省略した。
【0012】
図12及び図13に示すように、レーザ溶接装置900は、上側ガス供給ユニット91と、下側ガス供給ユニット92と、保護光学部材94と、レーザスキャナ95とを備える。
【0013】
保護光学部材94は、レーザスキャナ95とワークW9との間に配置される。保護光学部材94は、板状部94aと、筒状部94bとを備える。板状部94aは、レーザスキャナ95の直下に配置されている。筒状部94bは、板状部94aの外縁から下方に延びる。板状部94aは、筒状部94bの上側端部の開口を閉塞する。筒状部94bの軸Z9は、板状部94aの中心を通過する。
【0014】
上側ガス供給ユニット91は、保護光学部材94の板状部94aよりも下側に設けられている。下側ガス供給ユニット92は、上側ガス供給ユニット91よりも下側に設けられている。上側ガス供給ユニット91と、下側ガス供給ユニット92とは、保護光学部材94の筒状部94bの内部に主に配置されている。
【0015】
上側ガス供給ユニット91は、接続管91aと、流路91bと、1つの斜下方向噴射口91cとを備える。接続管91aと、流路91bと、斜下方向噴射口91cとは相互に連通し、これらの内側は気体が移動可能である。接続管91aは、外部装置から気体を供給されて、流路91bは、この供給された気体を斜下方向噴射口91cへ導く。図13及び図14に示すように、斜下方向噴射口91cは、筒状部94bの内周面において開口している。斜下方向噴射口91cは、この導かれた気体を斜下方向、具体的には、下側かつ筒状部94bの軸Z9側へ噴射する。
【0016】
下側ガス供給ユニット92は、接続管92aと、流路92bと、1つの斜下方向噴射口92cとを備える。接続管92aと、流路92bと、斜下方向噴射口92cとは相互に連通し、これらの内側は気体が移動可能である。接続管92aは、図示しない外部装置から気体を供給されて、流路92bは、この供給された気体を斜下方向噴射口92cへ導く。図13及び図15に示すように、斜下方向噴射口92cは、筒状部94bの内周面において開口しており、周方向に延びる。斜下方向噴射口92cは、この導かれた気体を斜下方向、具体的には、下側かつ筒状部94bの軸Z9側へ噴射する。
【0017】
ここで、レーザスキャナ95は、筒状部94bの軸Z9に沿ってレーザを出射する。すると、レーザスキャナ95がレーザを出射することによって、当該レーザが保護光学部材94の板状部94a及び筒状部94bの内側空間を通過して、ワークW9に照射される。これによって、ワークW9の一部を溶融させて、溶接を行うことができる。また、ワークW9が溶融した部分から、ヒュームが発生する。
【0018】
レーザスキャナ95がレーザを出射している間、上記したように、斜下方向噴射口91c及び斜下方向噴射口92cは、気体を斜下方向へ噴射する。そのため、ヒュームが発生しても、ヒュームの多くがこの噴射によって筒状部94bの下方へ流される。しかし、筒状部94bの内側空間の一部において空気が上方へ流れることがあった。このような場合、ヒュームの一部が板状部94a側へ流れて、保護光学部材94に付着するおそれがある。
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0020】
<実施の形態1>
図1図4を参照して実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1に係るレーザ溶接装置の上面図である。図2は、図1に示すレーザ溶接装置の断面図である。図3は、図1に示すレーザ溶接装置の上側ガス供給ユニットの斜視図である。図4は、図1に示すレーザ溶接装置の下側ガス供給ユニットの斜視図である。なお、図2において、レーザスキャナ5と、ワークW1とについては符号のみを示し、図示を省略した。
【0021】
なお、当然のことながら、図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸プラス向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0022】
図1及び図2に示すように、レーザ溶接装置100は、上側ガス供給ユニット1と、下側ガス供給ユニット2と、保護光学部材4と、レーザスキャナ5とを備える。
【0023】
保護光学部材4は、レーザを透過可能なガラス材料からなる部材であり、例えば、保護ガラスである。保護光学部材4は、レーザスキャナ5とワークW1との間に配置される。保護光学部材4は、板状部4aと、筒状部4bとを備える。板状部4aは、レーザスキャナ5の下方(ここでは、Z軸負方向)に配置されている。筒状部4bは、板状部4aの外縁から下方に延びる。筒状部4bは、円筒状体であるとよい。板状部4aは、筒状部4bの上側端部の開口を閉塞する。筒状部4bの軸Z1は、板状部4aの中心を通過する。
【0024】
なお、板状部4aと筒状部4bとは、一体でなく別体であってもよい。板状部4aと筒状部4bとが別体である場合、気体が板状部4aと筒状部4bとの間を殆ど通過しないよう、板状部4aと筒状部4bとが密着しているとよい。また、筒状部4bは、レーザを透過しない材料からなるととしてもよい。
【0025】
上側ガス供給ユニット1は、保護光学部材4の板状部4aよりも下側に設けられている。下側ガス供給ユニット2は、上側ガス供給ユニット1よりも下側に設けられている。上側ガス供給ユニット1と、下側ガス供給ユニット2とは、保護光学部材4の筒状部4bの内部に配置されているとよい。
【0026】
図1図3に示すように、上側ガス供給ユニット1は、接続管1aと、流路1bと、複数の第1の噴射口1cと、複数の第2の噴射口1dとを備える。図1に示す例では、上側ガス供給ユニット1は、4つの接続管1aを備える。接続管1aと、流路1bと、複数の第1の噴射口1cと、複数の第2の噴射口1dとは相互に連通しており、気体が、接続管1a、流路1b、複数の第1の噴射口1c、及び複数の第2の噴射口1dの内側を移動可能である。このような気体として、例えば、空気や不活性ガスを利用することができる。
【0027】
流路1bは、筒状部4bの内部において環状に延びる。接続管1aは、流路1bから筒状部4bの外周面を通過して保護光学部材4の外側へ突出している。第1の噴射口1cと、第2の噴射口1dとは、流路1bから筒状部4bの内側に向いている。複数の第1の噴射口1cと、複数の第2の噴射口1dは、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って配置されている。例えば、図1に示すように、複数の第1の噴射口1cと、複数の第2の噴射口1dは、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って、交互に配置されているとよい。また、例えば、図3に示すように、2つの第1の噴射口1cと、1つの第2の噴射口1dとから構成される一つの組を、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って、連続して配置してもよい。
【0028】
流路1bは、接続管1aを介して、図示しない外部装置から気体を供給される。流路1bは、この供給された気体を複数の第1の噴射口1c及び複数の第2の噴射口1dへ導く。
【0029】
複数の第1の噴射口1cは、流路1bから導かれた気体を、保護光学部材4の板状部4aの外縁から中央に噴射する。
【0030】
複数の第2の噴射口1dは、流路1bから導かれた気体を、板状部4aの外縁から下側方向に噴射する。具体的には、複数の第2の噴射口1dは、流路1bから導かれた気体を、板状部4aの外縁からレーザの光軸側に傾斜した方向に噴射する。
【0031】
下側ガス供給ユニット2は、接続管2aと、流路2bと、複数の噴射口2cとを備える。接続管2aと、流路2bと、複数の噴射口2cとは相互に連通しており、気体が、接続管2a、流路2b、及び複数の噴射口2cの内側を移動可能である。このような気体として、例えば、空気や不活性ガスを利用することができる。
【0032】
流路2bは、筒状部4bの内部において周方向に延びる。接続管2aは、流路2bから筒状部4bの外周面を通過して保護光学部材4の外側へ突出している。複数の噴射口2cは、流路2bから筒状部4bの下端において開口し、又は突出している。複数の噴射口2cは、保護光学部材4の筒状部4bの下端に沿って配置されている。例えば、図4に示すように、複数の噴射口2c同士は、保護光学部材4の筒状部4bの下端に沿って、所定の間隔を空けて配置されているとよい。
【0033】
流路2bは、接続管2aを介して、図示しない外部装置から気体を供給される。流路2bは、この供給された気体を複数の噴射口2cへ導く。
【0034】
複数の噴射口2cは、筒状部4bの下端から下側方向に気体を噴射する。具体的には、複数の噴射口2cは、筒状部4bの下端から、下側かつ筒状部4bの軸Z1側へ噴射するとよい。複数の噴射口2cの開口の総面積は、図13及び図15に示す斜下方向噴射口92cの開口面積と比較して小さいとよい。
【0035】
筒状部4bは、複数の気体導入口3を有する。複数の気体導入口3は、上側ガス供給ユニット1と下側ガス供給ユニット2との間に設けられている。複数の気体導入口3同士は、筒状部4bの周方向に間隔を空けて配置されているとよい。複数の気体導入口3は、筒状部4bを貫通する。気体は、筒状部4bの外側から、複数の気体導入口3を通過して、筒状部4bの内側へ移動することができる。言い換えると、複数の気体導入口3は、筒状部4bの外側から内側へ気体を導入することがきる。このような気体は、溶接雰囲気であり、例えば、空気や不活性ガスである。
【0036】
レーザスキャナ5は、レーザを板状部4aを通過させてワークW1に照射可能なように、保護光学部材4の上方に配置されている。
【0037】
ここで、複数の第1の噴射口1c、複数の第2の噴射口1d、複数の噴射口2cが気体として空気を噴射させつつ、レーザスキャナ5は、レーザをワークW1に向けて出射する。すると、この出射されたレーザは、保護光学部材4の板状部4aの中心を通過し、筒状部4bの軸Z1に沿って進み、ワークW1を照射する。ワークW1の一部が溶融し、溶接が行われる。この溶融によって、ヒュームが発生する。複数の第1の噴射口1cが板状部4aの外縁から中央に気体を噴射するため、板状部4aの下側表面が気体によって覆われて、気体が板状部4aの中央に集結し、板状部4aの下方へ流れる。これによって、ヒュームが板状部4aへ接近することを抑制する。また、複数の第2の噴射口1dが板状部4aの外縁から下側方向に気体を噴射し、複数の噴射口2cが筒状部4bの下端から下側方向に気体を噴射する。さらに、複数の気体導入口3が筒状部4bの外側から内側へ気体を導入する。これらによって、気体を下方へ流すことによって、ヒュームが板状部4aへ流れることを抑制する。以上より、ヒュームが保護光学部材に付着するおそれを抑制することができる。また、ヒュームの保護光学部材への付着を防止することによって、溶接品質を確保できる。
【0038】
<変形例>
図5を参照して実施の形態1に係るレーザ溶接装置の一変形例について説明する。図5は、図3に示すレーザ溶接装置の一変形例の上側供給ユニットの一変形例の斜視図である。
【0039】
図5に示すレーザ溶接装置100aは、図1図4に示すレーザ溶接装置100の上側ガス供給ユニット1を除いて、レーザ溶接装置100と同じ構成を備える。レーザ溶接装置100aは、上側ガス供給ユニット21を備える。上側ガス供給ユニット21は、図3に示す第2の噴射口1dではなく、第3の噴射口1eを備えるところを除いて、図3に示す上側ガス供給ユニット1と同じ構成を備える。
【0040】
上側ガス供給ユニット21は、図1に示す接続管1a、及び流路1bに加えて、複数の第1の噴射口1cと、複数の第3の噴射口1eとを備える。複数の第3の噴射口1eは、気体を噴射する方向を除いて、図1に示す複数の第2の噴射口1dと同じ構成を有する。複数の第3の噴射口1eは、流路1bから導かれた気体を、板状部4aの外縁からレーザの光軸と平行な方向(ここでは、Z軸負方向)に噴射する。第3の噴射口1eは、図3に示す第2の噴射口1dと比較して、気体を板状部4aの外縁から下方へ強く流すことができる。
【0041】
なお、接続管1aと、流路1bと、複数の第1の噴射口1cと、複数の第3の噴射口1eとは相互に連通しており、気体が、接続管1a、流路1b、複数の第1の噴射口1c、及び複数の第3の噴射口1eの内側を移動可能である。このような気体として、例えば、空気や不活性ガスを利用することができる。また、第1の噴射口1cと、複数の第3の噴射口1eとは、流路1bから筒状部4bの内側に向いている。複数の第1の噴射口1cと、複数の第3の噴射口1eは、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って配置されている。複数の第1の噴射口1cと複数の第3の噴射口1eとは、例えば、図1に示す複数の第1の噴射口1cと複数の第2の噴射口1dと同様に、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って、交互に配置されているとよい。また、例えば、図5に示すように、2つの第1の噴射口1cと1つの第3の噴射口1eとから構成される一つの組を、保護光学部材4の板状部4aの外縁に沿って、連続して配置してもよい。流路1bは、接続管1aを介して図示しない外部装置から供給された気体を、複数の第1の噴射口1c及び複数の第3の噴射口1eへ導く。
【0042】
ここで、複数の第1の噴射口1c、複数の第3の噴射口1e、複数の噴射口2cが気体として空気を噴射させつつ、レーザスキャナ5は、レーザをワークW1に向けて出射する。すると、この出射されたレーザは、保護光学部材4の板状部4aの中心を通過し、筒状部4bの軸Z1に沿って進み、ワークW1を照射する。ワークW1の一部が溶融し、溶接が行われる。この溶融によって、ヒュームが発生する。複数の第1の噴射口1cが板状部4aの外縁から中央に気体を噴射するため、板状部4aの下側表面が気体によって覆われて、気体が板状部4aの中央に集結し、板状部4aの下方へ流れる。これによって、ヒュームが板状部4aへ接近することを抑制する。また、複数の噴射口2cが筒状部4bの下端から下側方向に気体を噴射する。さらに、複数の気体導入口3が筒状部4bの外側から内側へ気体を導入する。第3の噴射口1eは、図3に示す第2の噴射口1dと比較して、気体を板状部4aの外縁から下方へ強く流すことができる。これらによって、気体を下方へ流す速度の向上を図り、ヒュームが板状部4aへ流れることをさらに抑制し得る。
【実施例0043】
次に、図6図11を参照して、実施例1及び実施例2等について解析、及び実験を行った結果について説明する。図6は、実施例について流速を解析した場所を示す図である。図7(a)~(c)は、それぞれ実施例1、実施例2、及び比較例1について流速を解析した結果を示す図である。図8は、実施例について流速を解析した場所を示す図である。図9は、実施例について流速を解析した断面を示す図である。図10は、実施例について流速を解析した結果を示す図である。図11は、実施例等に係るレーザ溶接装置の保護光学部材の下方における流速を実測した、又は解析した結果を示すグラフである。
【0044】
なお、以下の説明の便宜のため、レーザ溶接装置100、100a、900の各構成をそのまま用いたが、いずれの構成も実施例1、2、及び比較例1において相当する構成を示すものであることに留意する。
【0045】
実施例1は、図1~4に示すレーザ溶接装置100と同じ構成を有するレーザ溶接装置である。実施例2は、図5に示すレーザ溶接装置100aと同じ構成を有するレーザ溶接装置である。溶接雰囲気は空気であり、上側ガス供給ユニット1、21、及び下側ガス供給ユニット2は、空気を供給される。
【0046】
実施例1において、第1の噴射口1c、第2の噴射口1d、及び噴射口2cが気体を噴射した場合の、図6に示す断面D1における流速をCAE(Computer-Aided Engineering)解析を用いて算出した。その結果を図7に示した。なお、図6に示す軸Z1を含む断面における流速を算出した結果は、図7に示す結果と殆ど同じ内容であることを確認している。同様に、実施例2において、第1の噴射口1c、第3の噴射口1e、及び噴射口2cが気体を噴射した場合の、図6に示す断面に相当する断面における流速をCAE解析を用いて算出した。その算出結果を図7に示した。実施例1及び実施例2における、上側ガス供給ユニット1、21、及び下側ガス供給ユニット2への気体の供給量はいずれも同じである。
【0047】
また、実施例1において、図8に示す筒状部4bの軸Z1を中心とした直径70mmの半円の断面形状を有する柱状体における、図9に示す各断面において、算出された流速を図10に示した。同様に、実施例2において、図9に示す各断面において、算出された流速を図10に示した。
【0048】
また、実施例1及び実施例2において、噴射口2cから100mmの位置、すなわち、I-I断面における平均流速を実測した結果と、CAE解析を用いて算出した結果とを、図11に示した。
【0049】
なお、比較例1は、図12~15に示すレーザ溶接装置900と同じ構成を有するレーザ溶接装置である。実施例1及び実施例2と同様に、溶接雰囲気は空気であり、上側ガス供給ユニット91、及び下側ガス供給ユニット92は、空気を供給される。同様に、比較例1において、斜下方向噴射口91c、及び斜下方向噴射口92cが空気を噴射した場合の、図6に示す断面に相当する断面における流速をCAE解析を用いて算出した。その算出結果を図7に示した。同様に、比較例1において、図9に示す断面に相当する断面において、算出された流速を図10に示した。同様に、噴射口2cに相当する斜下方向噴射口92cから100mmの位置における平均流速を実測した結果と、CAE解析を用いて算出した結果とを、図11に示した。
【0050】
図7(c)に示すように、比較例1において、板状部94aの下側表面近傍において、空気の一部が板状部94aへ向かって上昇するように流れる。さらに、その空気の一部は、板状部94aの表面に沿って斜下方向噴射口91c側へ流れている。
【0051】
一方、図7(a)に示すように、実施例1において、板状部4aの下側表面近傍において、板状部4aへ向かって上昇するように流れを確認できない。また、実施例1において、別の空気が、第1の噴射口1cから板状部4aの下側表面に沿って板状部4aの中央へ到達して、その後、板状部4aの下方へ流れることを確認できる。同様に、図7(b)に示すように、実施例2において、そのような流れを確認できない。また、実施例2において、別の空気が、第1の噴射口1cから板状部4aの下側表面に沿って板状部4aの中央へ到達して、その後、板状部4aの下方へ流れることを確認できる。このような流れによって、ヒュームが上昇して、板状部4aの下側表面へ到達することを抑制することができる。
【0052】
図7(a)に示すように、実施例1において、板状部4aの外縁側の下方において、空気の一部が板状部4aへ向かって上昇するように流れることを確認できる。一方、図7(b)に示すように、実施例2において、そのような流れをあまり確認できない。これによって、実施例2は、実施例1と比較して、ヒュームの上昇による板状部4aの下側表面への到達をさらに抑制し得る。
【0053】
図10に示すように、G-G断面、H-H断面、及びI-I断面において、実施例1及び実施例2の流速の多くは、比較例1の流速と比較して高い。また、G-G断面、H-H断面、及びI-I断面において、実施例2の流速の多くは、実施例1の流速と比較して高い。
【0054】
図11に示すように、I-I断面において、CAE解析によって算出された流速は、実施例2、実施例1、比較例1の順に高い。同様に、I-I断面において、実測した流速は、実施例2、実施例1、比較例1の順に高い。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0056】
100、100a レーザ溶接装置
1、21 上側ガス供給ユニット
1a 接続管
1b 流路
1c 第1の噴射口
1d 第2の噴射口
1e 第3の噴射口
2 下側ガス供給ユニット
2a 接続管
2b 流路
2c 噴射口
3 気体導入口
4 保護光学部材
4a 板状部
4b 筒状部
5 レーザスキャナ
W1 ワーク
Z1 (筒状部4bの)軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15