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特開2024-121221アキシャルギャップモータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121221
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H02K15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028192
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋明
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB15
5H615PP01
5H615PP02
5H615SS20
(57)【要約】
【課題】中央部材に大きな応力が掛かることを抑制可能としたアキシャルギャップモータの製造方法を提供すること。
【解決手段】回転軸(31)の軸線方向における中央に配置されるステータ本体部(22)と、ステータ本体部に対して軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ロータ本体部(35)と、ステータ本体部に対して第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ロータ本体部(43)とを備えたアキシャルギャップモータ(10)の製造方法は、第1ロータ本体部と第2ロータ本体部とが、ステータ本体部に対して、同時に近づくように、ステータ本体部を有する中央部材(20)と、第1ロータ本体部を有する第1部材(30)と、第2ロータ本体部を有する第2部材(40)とを相対移動させる組み付け工程を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(31)の軸線方向における中央に配置されるステータ本体部(22)と、前記ステータ本体部に対して前記軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ロータ本体部(35)と、前記ステータ本体部に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ロータ本体部(43)と、を備えた、アキシャルギャップモータ(10)の製造方法であって、
前記第1ロータ本体部と前記第2ロータ本体部とが、前記ステータ本体部に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、前記ステータ本体部を有する中央部材(20)と、前記第1ロータ本体部を有する第1部材(30)と、前記第2ロータ本体部を有する第2部材(40)とを相対移動させる組み付け工程を備える、
アキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項2】
前記組み付け工程では、前記中央部材を移動不能に固定した状態で、前記第1部材と前記第2部材とを同時に同じ速度で移動させる、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項3】
前記組み付け工程では、前記第1部材を移動不能に固定した状態で、前記中央部材と前記第2部材とを同時に移動させるとともに、前記第2部材を前記中央部材の速度の2倍の速度で移動させる、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項4】
前記中央部材は、前記ステータ本体部の外周が固定される筒状のハウジング(21)を有する、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項5】
前記第1ロータ本体部は、周方向に複数の第1マグネット(33)と前記複数の第1マグネットが固定される第1ロータコア部(32a)とを有し、
前記第1部材は、前記第1ロータコア部と第1中央孔(32g)とを有する第1コア部材(32)と、前記第1中央孔を貫通しつつ前記第1コア部材に固定される前記回転軸と、を有し、
前記第2ロータ本体部は、周方向に複数の第2マグネット(42)と前記複数の第2マグネットが固定される第2ロータコア部(41a)とを有し、
前記第2部材は、前記第2ロータコア部と第2中央孔(41g)とを有する第2コア部材(41)を有し、
前記組み付け工程では、前記回転軸を、非圧入状態で前記第2中央孔に挿通させ、
前記組み付け工程の後、前記第2コア部材を前記回転軸に対して固定するコア固定工程を備える、
請求項1に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項6】
前記回転軸は、径方向外側に延出するフランジ部(31a)を有し、
前記フランジ部は、フランジ固定孔(31b)とフランジ仮固定孔(31c)とを有し、
前記第1コア部材は、第1固定孔(32d)と第1仮固定孔(32e)とを有し、
前記第2コア部材は、第2固定孔(41d)と抜き孔(41e)とを有し、
前記組み付け工程では、前記第1コア部材と前記回転軸とは、前記第1仮固定孔と前記フランジ仮固定孔とを貫通する第1ボルト(36)によって固定されており、
前記コア固定工程では、前記第2固定孔と前記第1固定孔と前記フランジ固定孔とを貫通する第2ボルト(44)によって、前記第2コア部材と前記第1コア部材と前記回転軸とを固定させ、
前記コア固定工程の後、前記抜き孔を介して前記第1ボルトを前記第1仮固定孔と前記フランジ仮固定孔とから抜き取る抜き工程を備える、
請求項5に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【請求項7】
回転軸(77)の軸線方向における中央に配置されるロータ本体部(71)と、前記ロータ本体部に対して前記軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ステータ本体部(73)と、前記ロータ本体部に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ステータ本体部(75)と、を備えた、アキシャルギャップモータ(70)の製造方法であって、
前記第1ステータ本体部と前記第2ステータ本体部とが、前記ロータ本体部に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、前記ロータ本体部を有する中央部材(72)と、前記第1ステータ本体部を有する第1部材(74)と、前記第2ステータ本体部を有する第2部材(75)とを相対移動させる組み付け工程を備える、
アキシャルギャップモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキシャルギャップモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータとしては、ステータとロータとが回転軸の軸線方向に対向して配置されるアキシャルギャップモータがある。そして、アキシャルギャップモータとしては、軸線方向における中央に配置されるステータ本体部と、ステータ本体部を軸線方向に挟むように配置される第1ロータ本体部と第2ロータ本体部とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなアキシャルギャップモータの製造方法としては、例えば、まずステータ本体部の外周に筒状のハウジングが固定されることで中央部材が製造される。そして、中央部材のハウジングを移動させることで、第1ロータ本体部に対して、ステータ本体部が上方から近づけられる。そして、さらに、ステータ本体部に対して、第2ロータ本体部が上方から近づけられる。このようにして、第1ロータ本体部と第2ロータ本体部とが、ステータ本体部を挟むように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6365516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなアキシャルギャップモータの製造方法では、第1ロータ本体部に対してステータ本体部が上方から近づけられた際に、ステータ本体部に第1ロータ本体部に近づく方向の大きな磁気吸引力が働くことになる。これにより、例えば、ステータ本体部を有する中央部材であって、例えばステータ本体部とハウジングとの固定部分に大きな応力が掛かることがある。このことは、例えば、ステータ本体部とハウジングとの固定部分を破損させる原因となる。よって、ステータ本体部とハウジングとの固定部分に強固な固定構造が必要となり、ひいては中央部材の重量化等を生じさせる原因となる。
【0005】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、中央部材に大きな応力が掛かることを抑制可能としたアキシャルギャップモータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するアキシャルギャップモータ(10)の製造方法は、回転軸(31)の軸線方向における中央に配置されるステータ本体部(22)と、前記ステータ本体部に対して前記軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ロータ本体部(35)と、前記ステータ本体部に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ロータ本体部(43)と、を備えた、アキシャルギャップモータの製造方法であって、前記第1ロータ本体部と前記第2ロータ本体部とが、前記ステータ本体部に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、前記ステータ本体部を有する中央部材(20)と、前記第1ロータ本体部を有する第1部材(30)と、前記第2ロータ本体部を有する第2部材(40)とを相対移動させる組み付け工程を備える。
【0007】
同方法によれば、組み付け工程では、中央部材と第1部材と第2部材とが相対移動されることにより、第1ロータ本体部と第2ロータ本体部とが、ステータ本体部に対して、同時に近づく、または交互に徐々に近づく。よって、例えば、ステータ本体部の近傍位置に第1ロータ本体部が配置される際には、第2ロータ本体部もステータ本体部の近傍位置に配置されることになる。よって、ステータ本体部には、第1ロータ本体部に近づく方向の磁気吸引力と第2ロータ本体部に近づく方向の磁気吸引力とが共に働くことになる。よって、例えば、第1方向にのみステータ本体部に大きな磁気吸引力が働いてしまうことが防止される。これにより、例えば、ステータ本体部を有する中央部材に大きな応力が掛かることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態におけるアキシャルギャップモータの模式断面図。
図2】一実施形態におけるアキシャルギャップモータの製造方法を説明するための模式断面図。
図3】一実施形態におけるアキシャルギャップモータの製造方法を説明するための模式断面図。
図4】別例におけるアキシャルギャップモータの製造方法を説明するための模式断面図。
図5】別例におけるアキシャルギャップモータの一部分解斜視図。
図6】別例におけるアキシャルギャップモータの製造方法を説明するための模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、アキシャルギャップモータの製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0010】
(アキシャルギャップモータ10の構成)
図1及び図2に示すように、アキシャルギャップモータ10は、中央部材20、第1部材30、及び第2部材40等が組み付けられてなる。なお、図1及び図2では、アキシャルギャップモータ10の中心軸線Zを境にしてアキシャルギャップモータ10の片側の断面のみを模式的に図示している。
【0011】
(中央部材20の構成)
中央部材20は、筒状のハウジング21と、ステータ本体部22とを有する。ハウジング21は、一対の係止凸部21aを有する。一対の係止凸部21aは、ハウジング21において軸線方向に離間して設けられている。係止凸部21aは、ハウジング21の内周面の全周から径方向内側に突出している。
【0012】
ステータ本体部22は、周方向に複数のステータコア23と、ステータコア23の各々に巻回されたコイル24と、一対の板状のブラケット25とを有する。一対のブラケット25は、複数のステータコア23における軸線方向の両端部に固定されている。一対のブラケット25は、一対の係止凸部21aを挟むように配置される。これにより、ブラケット25は、ステータ本体部22の外周をハウジング21に固定している。
【0013】
(第1部材30の構成)
第1部材30は、回転軸31と、第1コア部材32と、複数の第1マグネット33と、第1エンドプレート34とを有する。回転軸31は、径方向外側に延出するフランジ部31aを有する。フランジ部31aは、軸線方向に貫通するフランジ固定孔31bとフランジ仮固定孔31cとを有する。本実施形態では、フランジ固定孔31bとフランジ仮固定孔31cとは、径方向に並んで設けられている。また、フランジ固定孔31bとフランジ仮固定孔31cとは、周方向に複数設けられている。
【0014】
第1コア部材32は、円環状の第1ロータコア部32aと、第1ロータコア部32aの内周から軸線方向に延びる第1筒部32bと、第1筒部32bの先端から径方向内側に延びる第1内延部32cとを有する。第1内延部32cは、軸線方向に貫通する第1固定孔32dと第1仮固定孔32eとを有する。本実施形態では、第1固定孔32dと第1仮固定孔32eとは、径方向に並んで設けられている。また、第1固定孔32dと第1仮固定孔32eとは、周方向に複数設けられている。また、第1ロータコア部32aは、ステータ本体部22と対向する方向に開口する周方向に複数の第1収容凹部32fを有する。第1マグネット33は、第1収容凹部32fに収容されつつ固定される。本実施形態では、第1ロータコア部32aと複数の第1マグネット33とが第1ロータ本体部35を構成している。第1ロータ本体部35は、ステータ本体部22に対して軸線方向における第1方向(図1中、下方向)に対向するように配置される。第1内延部32cは、回転軸31が貫通される第1中央孔32gを有する。回転軸31は、第1中央孔32gを貫通しつつ第1コア部材32に固定される。なお、第1部材30の単体の状態では、図2に示すように、回転軸31と第1コア部材32とは、フランジ仮固定孔31cと第1仮固定孔32eとを貫通する第1ボルト36によって固定されている。本実施形態では、第1ボルト36は、フランジ仮固定孔31cに形成された雌ねじに螺合されている。
【0015】
第1エンドプレート34は、円盤状に形成されている。第1エンドプレート34は、中心に第1軸受保持孔34aを有する。第1軸受保持孔34aには、第1軸受37を介して回転軸31が回転可能に支持されている。なお、第1軸受37は、外輪と内輪とボールとを有するボールベアリングであって、外輪が第1軸受保持孔34aに固定され、内輪が回転軸31に固定されている。第1エンドプレート34の外縁部は、ハウジング21の端部が軸線方向に当接する第1当接部34bとされている。
【0016】
(第2部材40の構成)
第2部材40は、第2コア部材41と、複数の第2マグネット42とを有する。
第2コア部材41は、円環状の第2ロータコア部41aと、第2ロータコア部41aの内周から軸線方向に延びる第2筒部41bと、第2筒部41bの先端から径方向内側に延びる第2内延部41cとを有する。第2内延部41cは、軸線方向に貫通する第2固定孔41dと抜き孔41eとを有する。本実施形態では、第2固定孔41dと抜き孔41eとは、径方向に並んで設けられている。また、第2固定孔41dと抜き孔41eとは、周方向に複数設けられている。また、第2ロータコア部41aは、ステータ本体部22と対向する方向に開口する周方向に複数の第2収容凹部41fを有する。第2マグネット42は、第2収容凹部41fに収容されつつ固定される。本実施形態では、第2ロータコア部41aと複数の第2マグネット42とが第2ロータ本体部43を構成している。第2ロータ本体部43は、ステータ本体部22に対して第1方向とは反対方向である第2方向(図1中、上方向)に対向するように配置される。第2内延部41cは、回転軸31が貫通される第2中央孔41gを有する。第2中央孔41gは、回転軸31を滑らかに挿通可能に形成されている。そして、図1に示すように、第2コア部材41と第1コア部材32と回転軸31とは、第2固定孔41dと第1固定孔32dとフランジ固定孔31bとを貫通する第2ボルト44によって固定されている。本実施形態では、第2ボルト44は、フランジ固定孔31bに形成された雌ねじに螺合されている。
【0017】
また、図1に示すように、アキシャルギャップモータ10は、第2エンドプレート50を備える。第2エンドプレート50は、円盤状に形成されている。第2エンドプレート50は、中心に第2軸受保持孔50aを有する。第2軸受保持孔50aには、第2軸受51を介して回転軸31が回転可能に支持されている。なお、第2軸受51は、外輪と内輪とボールとを有するボールベアリングであって、外輪が第2軸受保持孔50aに固定され、内輪が回転軸31を支持可能に配置されている。第2軸受51の内輪は、回転軸31を滑らかに挿通可能に形成されている。第2エンドプレート50の外縁部は、ハウジング21の端部が軸線方向に当接する第2当接部50bとされている。
【0018】
次に、上記のように構成されるアキシャルギャップモータ10の製造方法について、説明する。
アキシャルギャップモータ10の製造方法は、「組み付け工程」と「コア固定工程」と「抜き工程」と「閉塞工程」とを備える。
【0019】
組み付け工程では、第1ロータ本体部35と第2ロータ本体部43とが、ステータ本体部22に対して、同時に近づくように、中央部材20と第1部材30と第2部材40とを相対移動させる。
【0020】
詳述すると、図2に示すように、本実施形態の組み付け工程では、中央部材20を移動不能に固定した状態で、第1部材30と第2部材40とを同時に同じ速度で移動させる(図2中、白抜き矢印参照)。
【0021】
具体的には、例えば、まず、製造装置60の中央保持部61に中央部材20のハウジング21を保持させる。また、製造装置60の第1保持部62に第1部材30の第1エンドプレート34を保持させ、製造装置60の第2保持部63に第2部材40の第2コア部材41を保持させる。なお、本実施形態の第2保持部63は、第1保持部62の上方に配置されるものであって、例えば、第2コア部材41の内周部及び外周部に設けられた係合部41hと係合することで、第2部材40を吊り下げ支持可能な爪部を有するものである。そして、第1保持部62及び第2保持部63の各々に連結されたアクチュエータを駆動させることで、第1部材30と第2部材40とを同時に同じ速度で移動させる。
【0022】
この組み付け工程では、回転軸31を、非圧入状態で第2中央孔41gに挿通させる。組み付け工程では、第1エンドプレート34の第1当接部34bがハウジング21の端部と当接するまで第1部材30を移動させる。また、組み付け工程では、第2コア部材41の第2筒部41b及び第2内延部41cが、第1コア部材32の第1筒部32b及び第1内延部32cと当接するまで第2部材40を移動させる。なお、本実施形態の組み付け工程では、第2コア部材41が第1コア部材32と当接する直前に、第1当接部34bがハウジング21と当接するように設定されている。また、本実施形態の組み付け工程では、第1ロータ本体部35とステータ本体部22との間の距離と、第2ロータ本体部43とステータ本体部22との間の距離とが可能な限り常に同じ距離を保つように設定されている。
【0023】
次に、図3に示すように、コア固定工程では、第2コア部材41を回転軸31に対して固定する。詳しくは、コア固定工程では、第2固定孔41dと第1固定孔32dとフランジ固定孔31bとを貫通する第2ボルト44によって、第2コア部材41と第1コア部材32と回転軸31とを固定させる。
【0024】
次に、抜き工程では、抜き孔41eを介して第1ボルト36を第1仮固定孔32eとフランジ仮固定孔31cとから抜き取る。
次に、閉塞工程では、ハウジング21に第2エンドプレート50を組み付けて、ハウジング21の内部を閉塞する。すなわち、閉塞工程では、第2エンドプレート50の第2当接部50bがハウジング21の端部と当接するまで、第2エンドプレート50を移動させる。なお、この閉塞工程では、回転軸31を、非圧入状態で第2軸受51に挿通させる。このようにして、アキシャルギャップモータ10の製造が完了する。
【0025】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)組み付け工程では、中央部材20と第1部材30と第2部材40とが相対移動されることにより、第1ロータ本体部35と第2ロータ本体部43とが、ステータ本体部22に対して、同時に近づく。よって、例えば、ステータ本体部22の近傍位置に第1ロータ本体部35が配置される際には、第2ロータ本体部43もステータ本体部22の近傍位置に配置されることになる。よって、ステータ本体部22には、第1ロータ本体部35に近づく方向の磁気吸引力と第2ロータ本体部43に近づく方向の磁気吸引力とが共に働くことになる。よって、例えば、第1方向にのみステータ本体部22に大きな磁気吸引力が働いてしまうことが防止される。
【0026】
これにより、例えば、ステータ本体部22を有する中央部材20に大きな応力が掛かることを抑制できる。詳しくは、ステータ本体部22とハウジング21との固定部分に大きな応力が掛かることを抑制できる。よって、例えば、一対のブラケット25の薄型化を図ることができる。また、例えば、ステータ本体部22とハウジング21とをねじ止めしなくても、ハウジング21からステータ本体部22が外れてしまうことを防止できる。これらのことから、例えば、アキシャルギャップモータ10の軽量化を図ることができる。
【0027】
(2)組み付け工程では、中央部材20を移動不能に固定した状態で、第1部材30と第2部材40とを同時に同じ速度で移動させる。このようにすると、例えば、製造装置60の2つのアクチュエータを同じ構成としつつ同じ制御で可動させることで組み付け工程を行うことができる。よって、製造が容易となる。また、例えば、第1部材30を移動不能に固定した状態で、中央部材20と第2部材40とを同時に移動させるとともに、第2部材40を中央部材20の速度の2倍の速度で移動させる場合に比べて、最高速度を小さく抑えることができる。第2部材40を中央部材20の速度の2倍の速度で移動させる場合、最高速度が大きくなることで、例えば、第2部材40の停止制御等が難しくなるが、これを回避することができる。よって、製造が容易となる。
【0028】
(3)組み付け工程では、回転軸31を、非圧入状態で第2中央孔41gに挿通させるため、第2部材40を滑らかに精度良く相対移動させることができる。よって、ステータ本体部22に、第1ロータ本体部35に近づく方向の磁気吸引力と第2ロータ本体部43に近づく方向の磁気吸引力とを共に良好に働かせることができる。
【0029】
(4)組み付け工程では、第1コア部材32と回転軸31とは、第1仮固定孔32eとフランジ仮固定孔31cとを貫通する第1ボルト36によって固定されている。そして、コア固定工程では、第2固定孔41dと第1固定孔32dとフランジ固定孔31bとを貫通する第2ボルト44によって、第2コア部材41と第1コア部材32と回転軸31とを固定させる。よって、1本の第2ボルト44によって第2コア部材41と第1コア部材32と回転軸31とをまとめて強固に締結できる。そして、コア固定工程の後、抜き孔41eを介して第1ボルト36を第1仮固定孔32eとフランジ仮固定孔31cとから抜き取る抜き工程を備えるため、不要となった第1ボルト36が抜き取られる。よって、例えば、アキシャルギャップモータ10の軽量化を図ることができる。
【0030】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の組み付け工程では、中央部材20を移動不能に固定した状態で、第1部材30と第2部材40とを同時に同じ速度で移動させるとしたが、これに限定されない。
【0031】
例えば、図4に示すように、組み付け工程では、第1部材30を移動不能に固定した状態で、中央部材20と第2部材40とを同時に移動させるとともに、第2部材40を中央部材20の速度の2倍の速度で移動させるようにしてもよい。この例では、中央保持部61及び第2保持部63の各々に連結されたアクチュエータを駆動させることで、中央部材20と第2部材40とを同時に移動させるとともに、第2部材40を中央部材20の速度の2倍の速度で移動させる(図4中、白抜き矢印参照)。
【0032】
このようにしても、上記実施形態の効果(1)、(3)、(4)と同様の効果を得ることができる。また、このようにすると、例えば、製造装置の2つのアクチュエータを同じ方向(例えば、図4の下方)に動かすことで組み付け工程を行うことができる。よって、製造が容易となる。
【0033】
・上記実施形態では、フランジ固定孔31b及びフランジ仮固定孔31cと、第1固定孔32d及び第1仮固定孔32eと、第2固定孔41d及び抜き孔41eとは、それぞれ径方向に並んで設けられているとしたが、これに限定されない。
【0034】
例えば、図5に示すように変更してもよい。この例では、フランジ固定孔31b及びフランジ仮固定孔31cと、第1固定孔32d及び第1仮固定孔32eと、第2固定孔41d及び抜き孔41eとは、それぞれ周方向に並んで設けられている。なお、この例では、フランジ固定孔31b及びフランジ仮固定孔31cと、第1固定孔32d及び第1仮固定孔32eと、第2固定孔41d及び抜き孔41eとは、それぞれ周方向に交互に等角度間隔であって45°間隔で並んで設けられている。このようにすると、例えば、フランジ部31a、第1内延部32c、及び第2内延部41cの径方向の長さを小さくすることが可能となる。
【0035】
・上記実施形態では、第1コア部材32及び第2コア部材41は、回転軸31の単一のフランジ部31aに固定される構成としたが、これに限定されず、例えば、各々が回転軸31における別のフランジ部に固定されてもよい。また、第2コア部材41は、第1コア部材32に固定されることで、第1コア部材32を介して回転軸31に固定されてもよい。このような場合等、もちろん、アキシャルギャップモータ10の製造方法は、上記実施形態の抜き工程を備えていなくてもよい。
【0036】
・上記実施形態の組み付け工程では、第1ロータ本体部35と第2ロータ本体部43とが、ステータ本体部22に対して、同時に近づくように、中央部材20と第1部材30と第2部材40とを相対移動させるとしたが、これに限定されない。例えば、組み付け工程では、第1ロータ本体部35と第2ロータ本体部43とが、ステータ本体部22に対して、交互に徐々に近づくように、中央部材20と第1部材30と第2部材40とを相対移動させてもよい。
【0037】
・上記実施形態では、中央部材20は、筒状のハウジング21を有するとしたが、これに限定されず、少なくともステータ本体部22を有していれば、他の構成に変更してもよい。また、ステータ本体部22の構成も変更してもよい。例えば、他の構成でハウジング21に固定される構成としてもよい。また、例えば、ステータ本体部22は、樹脂でモールドされていてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、第1部材30は、回転軸31と、第1コア部材32と、複数の第1マグネット33と、第1エンドプレート34とを有するとしたが、これに限定されず、少なくとも第1ロータ本体部35を有していれば、他の構成に変更してもよい。また、第1ロータ本体部35の構成も変更してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、第2部材40は、第2コア部材41と、複数の第2マグネット42とを有するとしたが、これに限定されず、少なくとも第2ロータ本体部43を有していれば、他の構成に変更してもよい。また、第2ロータ本体部43の構成も変更してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、ステータ本体部22を第1ロータ本体部35と第2ロータ本体部43とで挟むように配置したアキシャルギャップモータ10の製造方法に具体化したが、これに限定されない。
【0041】
例えば、図6に模式的に示すアキシャルギャップモータ70の製造方法に具体化してもよい。アキシャルギャップモータ70は、ロータ本体部71を有する中央部材72と、第1ステータ本体部73を有する第1部材74と、第2ステータ本体部75を有する第2部材76とを備える。ロータ本体部71は、回転軸77に固定され、回転軸77の軸線方向における中央に配置される。第1ステータ本体部73は、ロータ本体部71に対して軸線方向における第1方向(図6中、右方向)に対向するように配置される。第2ステータ本体部75は、ロータ本体部71に対して第1方向とは反対方向である第2方向(図6中、左方向)に対向するように配置される。
【0042】
そして、アキシャルギャップモータ70の製造方法は、組み付け工程を備える。組み付け工程では、第1ステータ本体部73と第2ステータ本体部75とが、ロータ本体部71に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、中央部材72と第1部材74と第2部材76とを相対移動させる。
【0043】
このようにすると、例えば、ロータ本体部71の近傍位置に第1ステータ本体部73が配置される際には、第2ステータ本体部75もロータ本体部71の近傍位置に配置されることになる。よって、ロータ本体部71には、第1ステータ本体部73に近づく方向の磁気吸引力と第2ステータ本体部75に近づく方向の磁気吸引力とが共に働くことになる。よって、例えば、第1方向にのみロータ本体部71に大きな磁気吸引力が働いてしまうことが防止される。
【0044】
これにより、例えば、ロータ本体部71を有する中央部材72に大きな応力が掛かることを抑制できる。詳しくは、例えば、ロータ本体部71と回転軸77との固定部分に大きな応力が掛かることを抑制できる。よって、例えば、ロータ本体部71と回転軸77との固定構造を簡素化することができる。
【0045】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0046】
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]回転軸(31)の軸線方向における中央に配置されるステータ本体部(22)と、前記ステータ本体部に対して前記軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ロータ本体部(35)と、前記ステータ本体部に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ロータ本体部(43)と、を備えた、アキシャルギャップモータ(10)の製造方法であって、前記第1ロータ本体部と前記第2ロータ本体部とが、前記ステータ本体部に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、前記ステータ本体部を有する中央部材(20)と、前記第1ロータ本体部を有する第1部材(30)と、前記第2ロータ本体部を有する第2部材(40)とを相対移動させる組み付け工程を備える、アキシャルギャップモータの製造方法。
【0047】
[2]前記組み付け工程では、前記中央部材を移動不能に固定した状態で、前記第1部材と前記第2部材とを同時に同じ速度で移動させる、[1]に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【0048】
[3]前記組み付け工程では、前記第1部材を移動不能に固定した状態で、前記中央部材と前記第2部材とを同時に移動させるとともに、前記第2部材を前記中央部材の速度の2倍の速度で移動させる、[1]に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【0049】
[4]前記中央部材は、前記ステータ本体部の外周が固定される筒状のハウジング(21)を有する、[1]から[3]のいずれか1つに記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【0050】
[5]前記第1ロータ本体部は、周方向に複数の第1マグネット(33)と前記複数の第1マグネットが固定される第1ロータコア部(32a)とを有し、前記第1部材は、前記第1ロータコア部と第1中央孔(32g)とを有する第1コア部材(32)と、前記第1中央孔を貫通しつつ前記第1コア部材に固定される前記回転軸と、を有し、前記第2ロータ本体部は、周方向に複数の第2マグネット(42)と前記複数の第2マグネットが固定される第2ロータコア部(41a)とを有し、前記第2部材は、前記第2ロータコア部と第2中央孔(41g)とを有する第2コア部材(41)を有し、前記組み付け工程では、前記回転軸を、非圧入状態で前記第2中央孔に挿通させ、前記組み付け工程の後、前記第2コア部材を前記回転軸に対して固定するコア固定工程を備える、[1]から[4]のいずれか1つに記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【0051】
[6]前記回転軸は、径方向外側に延出するフランジ部(31a)を有し、前記フランジ部は、フランジ固定孔(31b)とフランジ仮固定孔(31c)とを有し、前記第1コア部材は、第1固定孔(32d)と第1仮固定孔(32e)とを有し、前記第2コア部材は、第2固定孔(41d)と抜き孔(41e)とを有し、前記組み付け工程では、前記第1コア部材と前記回転軸とは、前記第1仮固定孔と前記フランジ仮固定孔とを貫通する第1ボルト(36)によって固定されており、前記コア固定工程では、前記第2固定孔と前記第1固定孔と前記フランジ固定孔とを貫通する第2ボルト(44)によって、前記第2コア部材と前記第1コア部材と前記回転軸とを固定させ、前記コア固定工程の後、前記抜き孔を介して前記第1ボルトを前記第1仮固定孔と前記フランジ仮固定孔とから抜き取る抜き工程を備える、[5]に記載のアキシャルギャップモータの製造方法。
【0052】
[7]回転軸(77)の軸線方向における中央に配置されるロータ本体部(71)と、前記ロータ本体部に対して前記軸線方向における第1方向に対向するように配置される第1ステータ本体部(73)と、前記ロータ本体部に対して前記第1方向とは反対方向である第2方向に対向するように配置される第2ステータ本体部(75)と、を備えた、アキシャルギャップモータ(70)の製造方法であって、前記第1ステータ本体部と前記第2ステータ本体部とが、前記ロータ本体部に対して、同時に近づくように、または交互に徐々に近づくように、前記ロータ本体部を有する中央部材(72)と、前記第1ステータ本体部を有する第1部材(74)と、前記第2ステータ本体部を有する第2部材(75)とを相対移動させる組み付け工程を備える、アキシャルギャップモータの製造方法。
【符号の説明】
【0053】
10…アキシャルギャップモータ、20…中央部材、21…ハウジング、22…ステータ本体部、30…第1部材、31…回転軸、31a…フランジ部、31b…フランジ固定孔、31c…フランジ仮固定孔、32…第1コア部材、32a…第1ロータコア部、32d…第1固定孔、32e…第1仮固定孔、32g…第1中央孔、33…第1マグネット、35…第1ロータ本体部、36…第1ボルト、40…第2部材、41…第2コア部材、41a…第2ロータコア部、41d…第2固定孔、41e…抜き孔、41g…第2中央孔、42…第2マグネット、43…第2ロータ本体部、44…第2ボルト、70…アキシャルギャップモータ、71…ロータ本体部、72…中央部材、73…第1ステータ本体部、74…第1部材、75…第2ステータ本体部、76…第2部材、77…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6