(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121224
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】低温熱エネルギー発電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0656 20160101AFI20240830BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240830BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20240830BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240830BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240830BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M8/0656
H01M8/00 Z
H01M8/04029
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/021
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028196
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
4K021
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC05
4K021CA05
4K021CA08
4K021CA12
4K021DC03
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
(57)【要約】
【課題】低温の熱エネルギーは仕事として取り出すことができる割合を示すエクセルギー率が低く、バイナリー発電などを行っても発電効率が低いという問題がある。低温度の熱源は、エネルギー密度が低いため設備が大型化して設備コストが高くなるという問題がある。
【解決手段】水電解装置と燃料電池と熱交換器とを有する低温熱エネルギー発電装置において、水電解装置に供給される供給水が、熱交換器にて排熱源からの排熱水と熱交換して加熱され、前記水電解装置からの水素ガスが燃料電池に供給されて、前記燃料電池からの電力が前記水電解装置に供給されると共に電力系統に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
水電解装置と、
燃料電池とを有し、
前記水電解装置の給水が排熱水と前記熱交換器にて熱交換して加熱され、
前記水電解装置からの水素ガスが前記燃料電池に供給され、
前記燃料電池が発電する低温熱エネルギー発電装置。
【請求項2】
前記燃料電池の電力が前記水電解装置に供給される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項3】
前記燃料電池からの電力が電力系統に供給される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項4】
前記電力系統からの電力が前記水電解装置に供給される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項5】
前記水電解装置からの前記水素ガスが販売される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項6】
水電解装置に供給される供給水を熱交換器にて排熱水と熱交換して加熱するステップと、
前記水電解装置からの水素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池から電力が発生するステップとを備えた低温熱エネルギー発電方法。
【請求項7】
前記電力を前記水電解装置に供給するステップを備えた請求項6に記載の低温熱エネルギー発電方法。
【請求項8】
前記電力を送電するステップを備えた請求項6に記載の低温熱エネルギー発電方法。
【請求項9】
前記水電解装置からの前記水素ガスを販売するステップを備えた請求項7または請求項8に記載の低温熱エネルギー発電方法。
【請求項10】
電力系統の電力を前記水電解装置に供給するステップを備えた請求項6に記載の低温熱エネルギー発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温度の熱エネルギーの利用技術に関し、詳しくは低温熱エネルギーを用いた発電装置および発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温度の熱源から仕事を取り出すのは熱効率が悪いといわれている。熱源のエネルギーから仕事なり電力を取り出す場合、低熱源と高熱源の温度差が大きいほど機械エネルギーに変換する効率が高くなる。熱源から仕事として取り出すことができるエネルギーは有効なエネルギーとしてエクセルギーと呼ばれている。温度の高い熱源ほどエクセルギーは高くなる。
【0003】
低温度の熱源として、冷暖房装置の排気や排熱ボイラの排気が挙げられる。これらの熱源は温度が低いため十分に活用されていない。
【0004】
特許文献1には、燃料電池の燃料側排気ガスが燃焼器に導入され、空気側排気ガスが空気側排熱回収器に導入されていて、燃料電池により発電された電力が水電解装置に供給され、水電解装置で製造された水素が燃料電池に供給され、酸素は燃焼器に導入され、燃焼器の排気ガスが燃料側排熱回収器に導入されている無公害発電プラントが記載されている。
【0005】
特許文献2には、太陽光電池の発電電力を水電解装置に供給して水素を生成して貯蔵し、貯蔵した水素を必要に応じて燃料電池に供給して電力に再変換し、得られた電力を負荷に供給するものにおいて、水素電解装置で生成した水素を水素吸蔵合金に吸収して貯蔵する水素貯蔵装置を備えた太陽光電源システム、並びに、水素貯蔵装置が、水素吸蔵合金を燃料電池の排熱により加熱して燃料ガスとしての水素を放出する熱媒体循環系を燃料電池との間に備える太陽光電源システムが記載されている。
【0006】
特許文献3には、燃料電池の排熱をバイナリー発電装置に投入して発電する複合発電システムにおいて、バイナリー発電装置にはタービンの出口と後段の凝縮器との間に熱交換器を設け、バイナリー発電装置にはタービン出口圧力を調整する手段として、蒸気圧力が異なる二つの出口と、この出口に接続した流量調整弁を備え、熱需要が少ない場合には、タービン出口圧力を低く設定して発電出力を高め、熱需要が多い場合にはタービン出口圧力を高く設定して発電出力を低めるようにした、複合発電システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-144332号公報
【特許文献2】特開平5-251105号公報
【特許文献3】特開2010―71091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱源から仕事として取り出すことができるエネルギーは有効なエネルギーとしてエクセルギーと呼ばれている。温度の低い熱源ほどエクセルギーは低く、このため、低温の熱エネルギーはエクセルギー率が低くバイナリー発電などを行っても発電効率が低いという問題がある。
【0009】
また、低温度の熱源は、エネルギー密度が低いため設備が大型化して設備コストが高くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明に係る低温熱エネルギー発電装置は、熱交換器と、水電解装置と、燃料電池とを有し、前記水電解装置の給水が排熱水と前記熱交換器にて熱交換して加熱され、前記水電解装置からの水素ガスが前記燃料電池に供給され、前記燃料電池が発電する。
【0011】
この構成において、発電設備から排出される冷却排水や温泉水を含む温泉排水は水の温度としては比較的高温であるがエクセルギー率は低く、有効に電力に変換するのには難点が多い。これら排熱水を熱交換器で水電解装置の給水と熱交換して水電解装置に供給する。水電解の水の温度が上昇すれば、効率よく水電解をすることが可能となる。
【0012】
本発明に係る低温熱エネルギー発電装置は、前記燃料電池の電力が前記水電解装置に供給される。また、本発明に係る低温熱エネルギー発電装置は、前記燃料電池からの電力が電力系統に供給される。
【0013】
本発明に係る低温熱エネルギー発電装置は、前記電力系統からの電力が前記水電解装置に供給される。また、前記水電解装置からの前記水素ガスが販売される
【0014】
本発明に係る低温熱エネルギー発電方法は、水電解装置に供給される供給水を熱交換器にて排熱水と熱交換して加熱するステップと、前記水電解装置からの水素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池から電力が発生するステップとを備えている。
【0015】
本発明に係る低温熱エネルギー発電方法は、前記電力を前記水電解装置に供給するステップを備えている。また、本発明に係る低温熱エネルギー発電方法は、前記電力を送電するステップを備えている。
【0016】
本発明に係る低温熱エネルギー発電方法は、前記水電解装置からの前記水素ガスを販売するステップを備えている。また、本発明に係る低温熱エネルギー発電方法は、電力系統の電力を前記水電解装置に供給するステップを備えている。
【発明の効果】
【0017】
排熱水はエクセルギー率が低いので10%以下しか電力に変換することができないが水電解で水素にすることによって83%を電力にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】低温熱エネルギー発電装置の基本的構成を示す系統図である。
【
図2】
図1の基本的構成の変形を示す第二の実施形態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明の第一の実施形態を示すもので、低温熱エネルギー発電装置の基本的構成を示す系統図である。
【0021】
発電設備の冷却水もしくは地域冷暖房設備から排出される排熱水は排熱水タンク10に集められる。これら排熱水の温度は90℃としたが、もっと高い場合もあれば低い場合もある。排熱水は液体であるのでそのままの状態では電力に変換するのには無理がある。
【0022】
排熱水タンク10の排熱水は、熱交換器11で水電解装置13への供給水と熱交換して水電解装置13への供給水は昇温する。このとき、排熱水タンク10の90℃の温水は25℃に低下する、一方、水電解装置13への供給水は熱交換して25℃から70℃に昇温する。
【0023】
排熱水タンク10には、例えば、清掃工場のごみ焼却から発生する冷却排水や発電プラントから発生する冷却排水が蓄えられている。これら排熱水はエネルギーレベルが低く、そのままの状態では有効な電力に変換するのは難しい。これら排熱水は、地熱を用いて昇温した地熱由来の排熱水であってもよい。
【0024】
70℃に昇温した供給水は水電解装置13で水素と酸素に分離され、水素は水素ガスタンク14に流れ、酸素は酸素ガスタンク15に流れる。水素ガスタンク14には外部から水素ガスが補給可能になっている。
【0025】
水電解を行う水の温度が常温の25℃であれば、水電解の動作電圧は1.23Vであるところ70℃に昇温した水であればより低い電圧1.18Vで水電解が行われる。水電解に必要な電圧は小さくてすみ効率的な水電解が可能となる。
【0026】
発電設備の起動時において、水素ガスタンク14に外部から供給した水素ガスを用いて燃料電池16からの電力を水電解装置13に供給してもよい。または、発電設備の起動時に、水電解装置13に必要な電力を電力系統17から供給してもよい。
【0027】
水電解装置13に供給する電力が1000MWのとき、水電解装置13から1050MWの水素ガスが発生する。電力系統から加えた電力との差分の50MWは水電解装置13の給水の温度が70℃に昇温した分のエネルギーであって、排熱水タンク10の排熱水が有効に活用された結果といえる。
【0028】
水素ガスタンク14の水素ガスは燃料電池16で電力に変換され、1.25V/1050MWの直流電力となる。水電解に必要な1000MWの電力は水電解装置13に送られて、残りの50MWは電力系統17に送電される。送電は電力系統17の代わりに、例えば、所内使用に供されてもよい。定常的には水電解に必要な電力は燃料電池16から供給されることとなる。
【0029】
定常的には排熱水タンク10の排熱水が50MWの電力に変換される結果となり、低温熱エネルギーの有効活用が図られるこことなる。
【0030】
更に、何らかの事情により電力系統に送電する必要がないときは、水電解装置13に必要な電力分の水素ガスだけを燃料電池16に送り、残りの水素ガスを水素ガスタンク14に貯蔵して、必要に応じて燃料電池16で電力に変換して電力系統に送電してもよい。また、水素ガスタンク14に貯蔵した水素ガスを販売することもできる。
【0031】
図2は第一の実施形態の変形であって、低温熱エネルギー発電装置の別の実施形態を示す系統図である。以下、第一の実施形態と異なる部分について説明する。
【0032】
燃料電池16からの電力はインバーター18で交流に電力に変換されて、交流電力系統19に送電される。本実施例によれば、水電解装置13が必要とする電力を自由に調節ことが可能となる。この結果、第一の実施形態では負荷変動の追従に時間遅れが生じるという不都合が改善される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る低温熱エネルギー発電装置は、発電設備として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 排熱水タンク
11 熱交換器
12 給水タンク
13 水電解装置
14 水素ガスタンク
15 酸素ガスタンク
16 燃料電池
17 電力系統
18 インバーター
19 交流電力系統
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
水電解装置と、
燃料電池とを有し、
前記水電解装置の給水が排熱水と前記熱交換器にて熱交換して加熱され、
前記水電解装置からの水素ガスが前記燃料電池に供給され、
前記燃料電池からの電力がインバーターで交流に電力に変換される低温熱エネルギー発電装置。
【請求項2】
前記インバーターの電力が交流電力系統に送電される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項3】
前記燃料電池の電力が前記水電解装置に供給される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。
【請求項4】
前記水電解装置からの前記水素ガスが販売される請求項1に記載の低温熱エネルギー発電装置。