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特開2024-121230回転電機のロータ、及び回転電機のロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121230
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】回転電機のロータ、及び回転電機のロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2733 20220101AFI20240830BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02K1/2733
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028203
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昭一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】外木 一樹
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA05
5H622CB04
5H622PP17
5H622PP18
5H622QA02
5H622QA06
5H622QA10
(57)【要約】
【課題】筒部材に発生する応力を低減できる回転電機のロータ、及び回転電機のロータの製造方法を提供すること。
【解決手段】永久磁石18は、筒部材16の内周面16cに接触している圧入部20と、筒部材16の内周面16cから離れている離間部27と、を備える。永久磁石18は、筒部材16の周方向に隣り合う磁性体形成部材21が互いに接触して形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の筒部材と、
前記筒部材に圧入された磁性体と、
前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに圧入された軸形成部材と、を備える回転電機のロータであって、
前記磁性体は、前記筒部材の内周面に接触している圧入部と、前記筒部材の内周面から離れている離間部と、を備え、
前記磁性体は、前記筒部材の周方向に隣り合う複数の磁性体形成部材同士が互いに接触して形成されていることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記磁性体形成部材は、前記磁性体の前記圧入部を構成して前記筒部材の前記内周面に接触している圧入部形成部と、
前記磁性体の前記離間部を構成して前記筒部材の前記内周面から離れている離間部形成部と、を備える請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記磁性体は、2つの前記磁性体形成部材によって形成され、
前記磁性体形成部材は、前記圧入部形成部を2つ備え、かつ前記離間部形成部を1つ備え、
前記圧入部及び前記離間部は、前記筒部材の軸心に対して点対称に設けられている請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記磁性体には貫通孔が形成され、前記軸形成部材は、前記磁性体を挟むように前記筒部材の軸方向の両側に圧入されており、前記磁性体の前記貫通孔、及び2つの前記軸形成部材にはボルトが挿通されているとともに、前記ボルトにはナットが螺合されている請求項3に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記貫通孔は楕円であり、当該楕円の長軸の延長線上には前記圧入部が位置しているとともに、前記楕円の短軸の延長線上には前記離間部が位置している請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
前記磁性体を挟む前記軸形成部材の各々は、前記圧入部に対応して切削部を備える請求項4又は請求項5に記載の回転電機のロータ。
【請求項7】
前記筒部材は、繊維強化プラスチック製である請求項1又は請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項8】
円筒状の筒部材と、
前記筒部材に圧入された磁性体と、
前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに圧入された軸形成部材と、を備える回転電機のロータの製造方法であって、
前記磁性体は、前記筒部材の内周面に接触している圧入部と、前記筒部材の内周面から離れている離間部と、を備え、
前記磁性体は、前記筒部材の周方向に隣り合う複数の磁性体形成部材同士が互いに接触して形成されており、
前記筒部材に前記磁性体を圧入して前記圧入部を前記筒部材の内周面に接触させるとともに、前記筒部材の内周面から離間させた前記離間部を形成する工程と、
前記筒部材に圧入された前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに前記軸形成部材を圧入する工程と、を備える回転電機のロータの製造方法。
【請求項9】
前記磁性体は、磁性体前駆体を加工して形成され、
前記磁性体前駆体の外形は、当該磁性体前駆体の軸方向から見て真円状であり、
前記磁性体の製造工程は、
前記磁性体前駆体を当該磁性体前駆体の直径に沿って所定の幅で切削して2つの磁性体形成部材を形成する工程と、
2つの前記磁性体形成部材の切削面同士を接触させて前記磁性体とする工程と、を備える請求項8に記載の回転電機のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータ、及び回転電機のロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、回転電機のロータの一例として、永久磁石式回転電機の回転子が開示されている。特許文献1の回転子は、回転子シャフトの外表面に配置された永久磁石と、永久磁石を外側から回転子シャフトに保持する保持リングと、を備える。保持リングは、永久磁石の外径に対して締め代を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6168263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保持リングは、永久磁石の外径に対して締め代を持つため、保持リングには、圧入によって荷重が過大に加わることにより、過大な応力が発生している。このため、保持リングに発生する応力の低減が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための回転電機のロータは、円筒状の筒部材と、前記筒部材に圧入された磁性体と、前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに圧入された軸形成部材と、を備える回転電機のロータであって、前記磁性体は、前記筒部材の内周面に接触している圧入部と、前記筒部材の内周面から離れている離間部と、を備え、前記磁性体は、前記筒部材の周方向に隣り合う複数の磁性体形成部材同士が互いに接触して形成されていることを要旨とする。
【0006】
これによれば、磁性体は、複数の磁性体形成部材に分割されている。筒部材に圧入されている磁性体が分割されていない場合と比べて、ロータの回転時に磁性体に発生する引張応力を低減できる。そして、複数の磁性体形成部材からなる磁性体において、磁性体の圧入部が筒部材の内周面に接触しているとともに、離間部は筒部材の内周面から離れている。このため、磁性体の外周面の全てが筒部材の内周面に接触している場合と比べると、筒部材への磁性体の圧入によって筒部材に加わる荷重を低減できる。その結果として、ロータにおける筒部材に発生する応力を低減できる。
【0007】
回転電機のロータについて、前記磁性体形成部材は、前記磁性体の前記圧入部を構成して前記筒部材の前記内周面に接触している圧入部形成部と、前記磁性体の前記離間部を構成して前記筒部材の前記内周面から離れている離間部形成部と、を備えていてもよい。
【0008】
これによれば、複数の磁性体形成部材同士を接触させると、複数の圧入部形成部から圧入部を形成できるとともに、離間部形成部から離間部を形成できる。
回転電機のロータについて、前記磁性体は、2つの前記磁性体形成部材によって形成され、2つの前記磁性体形成部材の各々は、前記圧入部形成部を2つ備え、かつ前記離間部形成部を1つ備え、前記圧入部及び前記離間部は、前記筒部材の軸心に対して点対称に設けられていてもよい。
【0009】
これによれば、磁性体を3つ以上の磁性体形成部材で形成する場合と比べると、磁性体形成部材を形成するための材料歩留まりを良くすることができる。また、2つの圧入部及び2つの離間部の各々は、軸心に対して点対称である。このため、2つの磁性体形成部材からなる磁性体を備えるロータであっても、回転のバランスを取りやすい。
【0010】
回転電機のロータについて、前記磁性体には貫通孔が形成され、前記軸形成部材は、前記磁性体を挟むように前記筒部材の軸方向の両側に圧入されており、前記磁性体の前記貫通孔、及び2つの前記軸形成部材にはボルトが挿通されているとともに、前記ボルトにはナットが螺合されていてもよい。
【0011】
これによれば、軸形成部材と磁性体とをボルトとナットとで締結している。この締結により、筒部材に圧入された軸形成部材が筒部材から外れることを防止できる。
回転電機のロータについて、前記貫通孔は楕円であり、当該楕円の長軸の延長線上には前記圧入部が位置しているとともに、前記楕円の短軸の延長線上には前記離間部が位置していてもよい。
【0012】
これによれば、圧入部に対応するように、磁性体の内周面を切削して貫通孔を楕円とすることにより、磁性体の重量を減らすことができる。それにより、ロータのバランスを取ることができる。また、貫通孔の長軸を直径とする真円を貫通孔とする場合と比べると、磁性体の材料歩留まりを良くすることができる。
【0013】
回転電機のロータについて、前記磁性体を挟む前記軸形成部材の各々は、前記圧入部に対応して切削部を備えていてもよい。
これによれば、圧入部に対応するように、軸形成部材に切削部を設けることにより、軸形成部材の重量を減らすことができる。それにより、ロータのバランスを取ることができる。
【0014】
回転電機のロータについて、前記筒部材は、繊維強化プラスチック製であってもよい。
これによれば、筒部材への磁性体の圧入によって筒部材に加わる荷重を低減できるため、筒部材に発生する応力を低減できる。このため、応力に対する強度を得るための繊維の使用量を低減したりできる。その結果、筒部材の製造コストを低減できる。よって、軽量化を目的として採用した繊維強化プラスチック製の筒部材において、さらなる軽量化を実現できる。
【0015】
上記問題点を解決するための回転電機のロータの製造方法は、円筒状の筒部材と、前記筒部材に圧入された磁性体と、前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに圧入された軸形成部材と、を備える回転電機のロータの製造方法であって、前記磁性体は、前記筒部材の内周面に接触している圧入部と、前記筒部材の内周面から離れている離間部と、を備え、前記磁性体は、前記筒部材の周方向に隣り合う複数の磁性体形成部材同士が互いに接触して形成されており、前記筒部材に前記磁性体を圧入して前記圧入部を前記筒部材の内周面に接触させるとともに、前記筒部材の内周面から離間させた前記離間部を形成する工程と、前記筒部材に圧入された前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りに前記軸形成部材を圧入する工程と、を備えることを要旨とする。
【0016】
これによれば、圧入工程の際、磁性体の圧入部のみが筒部材の内周面に接触するとともに、離間部は筒部材の内周面から離れる。このため、磁性体の外周面の全てが筒部材の内周面に接触している場合と比べると、筒部材への磁性体の圧入によって筒部材に加わる荷重を低減できる。その結果として、ロータにおける筒部材に発生する応力を低減できる。
【0017】
回転電機のロータの製造方法について、前記磁性体は、磁性体前駆体を加工して形成され、前記磁性体前駆体の外形は、当該磁性体前駆体の軸方向から見て真円状であり、前記磁性体の製造工程は、前記磁性体前駆体を当該磁性体前駆体の直径に沿って所定の幅で切削して2つの磁性体形成部材を形成する工程と、2つの前記磁性体形成部材の切削面同士を接触させて前記磁性体とする工程と、を備えていてもよい。
【0018】
これによれば、例えば、真円筒状の磁性体前駆体を2分割した後、各分割体を切削して磁性体形成部材と同じ形状にする場合と比べると、材料歩留まりを良くできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、筒部材に発生する応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の回転電機を示す断面図である。
図2】ロータの筒部材を模式的に示す図である。
図3】ロータを示す部分拡大断面図である。
図4】ロータを示す図1の4-4線断面図である。
図5】永久磁石の製造工程を説明する図である。
図6】永久磁石の製造工程を説明する図である。
図7】永久磁石の圧入工程を説明する図である。
図8】シャフト圧入工程を説明する図である。
図9】別例のロータを示す断面図である。
図10】その他の別例のロータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、回転電機のロータ、及び回転電機のロータの製造方法を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。
【0022】
<ハウジング>
ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、第2ハウジング構成体13と、を備える。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製である。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13の各々は、例えばアルミニウム製である。
【0023】
第1ハウジング構成体12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bと、を備える。周壁12bは、端壁12aの外周部から端壁12aの厚さ方向に延びる。第2ハウジング構成体13は、第1ハウジング構成体12に連結されている。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける端壁12aとは反対側から、第1ハウジング構成体12の内部空間を閉塞している。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、回転電機10を収容する収容空間S1を画定している。
【0024】
端壁12aにおける収容空間S1に臨む面には、円筒状のボス部12cが設けられている。ボス部12cの内側には軸受23が設けられている。ボス部12cは、端壁12aから第2ハウジング構成体13に向けて突出している。
【0025】
ボス部12cの中心軸線は、周壁12bの中心軸線と一致している。第2ハウジング構成体13における収容空間S1に臨む面には、円筒状のボス部13aが設けられている。ボス部13aの内側には、軸受23が設けられている。ボス部13aは、第2ハウジング構成体13から端壁12aに向けて突出している。ボス部13aの中心軸線は、周壁12bの中心軸線と一致している。よって、ボス部12cの中心軸線と、ボス部13aの中心軸線とは一致している。
【0026】
<回転電機>
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15と、を備える。ステータ14は、円筒状のステータコア14aと、コイル14bと、を備える。ステータコア14aは、周壁12bの内周面に固定されている。コイル14bは、ステータコア14aに巻回されている。ロータ15は、ステータコア14aの内側に回転可能な状態で配置されている。
【0027】
<ロータ>
ロータ15は、円筒状の筒部材16と、筒部材16に圧入された磁性体である永久磁石18と、一対の軸形成部材30と、を備える。ロータ15は、ボス部12cに設けられた軸受23と、ボス部13aに設けられた軸受23とによって、回転可能にハウジング11に支持されている。
【0028】
<筒部材>
筒部材16は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製である。
図2及び図3に示すように、筒部材16は、繊維層17を例えば4層備える。4つの繊維層17は、第1繊維層171、第2繊維層172、第3繊維層173、及び第4繊維層174である。第1~第4繊維層171~174は、筒部材16の厚さ方向に積層されている。筒部材16の厚さ方向は、筒部材16の径方向と一致する。第1~第4繊維層171~174は、筒部材16の軸心Lを中心とした同心円状に積層されている。筒部材16の軸心Lの延びる方向を、筒部材16の軸方向とする。
【0029】
第1~第4繊維層171~174の各々は、炭素繊維17aを複数配列して形成されている。第1繊維層171の炭素繊維171aは、筒部材16の周方向に対して僅かに傾くように延びる。第2繊維層172の炭素繊維172aは、筒部材16の周方向に対して僅かに傾くように延び、かつ第1繊維層171の炭素繊維171aに対し斜めに交差するように延びる。第3繊維層173の炭素繊維173aは、軸心Lに対してほぼ平行となるように延びる。第4繊維層174の炭素繊維174aは、軸心Lに対してほぼ平行となるように延び、かつ第3繊維層173の炭素繊維173aに対し斜めに交差するように延びる。なお、軸心Lに対する各炭素繊維171a~174aの傾き度合いは、適宜変更してもよい。要は、筒部材16における厚さ方向及び軸方向に所用の強度を確保できれば、軸心Lに対する各炭素繊維171a~174aの傾き度合いは適宜変更可能である。後述する永久磁石18の圧入部20における筒部材16への接触箇所においても所用の強度が確保できるように、第1~第4繊維層171~174の積層の仕方、及び各炭素繊維171a~174aの傾き度合いが調整されている。
【0030】
筒部材16は、筒部材16の軸方向の両端に筒端面16aを備える。筒部材16は、内周面16cと、外周面16dと、を備える。筒部材16の軸方向から筒部材16を見て、筒部材16の内周面16cは、楕円に近い形状である。筒部材16の軸方向から筒部材16を見て、筒部材16の外周面16dは真円又はほぼ真円である。ほぼ真円とは、筒部材16の製造誤差等に起因して外周面16dの形状が、若干真円から異なった場合の形状である。筒部材16の厚さは、後述する永久磁石18の圧入部20における筒部材16への接触箇所で、その他の箇所より薄くなっている。筒部材16の厚さは、圧入部20における筒部材16への接触箇所以外では一定である。
【0031】
<永久磁石>
永久磁石18は、筒部材16に圧入されている。永久磁石18は、筒部材16と一体に回転するとともに、ロータ15の一部でもあるため、筒部材16の軸方向は、永久磁石18の軸方向でもある。つまり、筒部材16の軸方向と、永久磁石18の軸方向は一致する。よって、永久磁石18の軸心を、筒部材16の軸心Lと同じ[軸心L]と記載する。また、永久磁石18において、軸心Lを中心に永久磁石18が延びる方向を、永久磁石18の周方向とする。永久磁石18の軸方向への長さは、筒部材16の軸方向への長さよりも短い。永久磁石18は、周方向に隣り合う2つの磁性体形成部材21を備える。永久磁石18は、筒部材16の軸心Lを中心とする周方向に隣り合う2つの磁性体形成部材21同士が互いに接触して形成されている。磁性体形成部材21は、半円筒状に近い形状である。
【0032】
図1図3及び図4に示すように、2つの磁性体形成部材21の各々は、対向面21aと、対向面21aから凹む溝21bと、周面21cと、端面21dと、2つの圧入部形成部25と、1つの離間部形成部26と、を備える。
【0033】
対向面21aは、2つの磁性体形成部材21同士が接触する面である。対向面21aに直交する方向から対向面21aを見て、対向面21aの外形は長四角形である。溝21bは、対向面21aにおける長四角の短辺方向の中央部に形成されるとともに、対向面21aにおける長四角の長辺方向の全体に延びる。磁性体形成部材21の長辺方向から磁性体形成部材21を見て、溝21bは対向面21aから半円状に凹む。磁性体形成部材21の長辺方向から磁性体形成部材21を見て、周面21cは、円弧状である。磁性体形成部材21の長辺方向から磁性体形成部材21を見て、端面21dは、円弧面状である。
【0034】
2つの圧入部形成部25のうちの一方は、周面21cにおける周方向の一端側に位置しているとともに、他方は、周面21cにおける周方向の他端側に位置している。圧入部形成部25は、周面21cの一部分によって形成された円弧面である。圧入部形成部25は、圧入部形成部25の軸方向の全体に亘っている。離間部形成部26は、周面21cにおける2つの圧入部形成部25以外の部分である。離間部形成部26は、周面21cにおける2つの圧入部形成部25に挟まれた部分によって形成された円弧面である。周面21cには、一方の圧入部形成部25、離間部形成部26、及び他方の圧入部形成部25がこの並び順で形成されている。
【0035】
永久磁石18は、2つの磁性体形成部材21の対向面21a同士を接触させて形成されている。永久磁石18の軸方向から永久磁石18を見ることを、永久磁石18の正面視とする。永久磁石18の正面視で、永久磁石18の外周面18aは、2つの周面21cが一繋がりになって形成されている。永久磁石18の正面視で、外周面18aは楕円に近い形状である。永久磁石18の正面視で、永久磁石18の内周面18bは、2つの溝21bが一繋がりになって形成されている。永久磁石18の正面視で、永久磁石18の内周面18bは真円又はほぼ真円である。ほぼ真円とは、永久磁石18、ひいては磁性体形成部材21の製造誤差等に起因して内周面18bの形状が、若干真円から異なった場合の形状である。永久磁石18には、永久磁石18の内周面18bによって画定された貫通孔18fが形成されている。永久磁石18の正面視で、貫通孔18fは真円又はほぼ真円である。貫通孔18fは、永久磁石18を軸方向に貫通する。
【0036】
永久磁石18は、軸方向の両端に端面18cを備える。2つの端面18cの各々は、永久磁石18の軸心L、ひいては筒部材16の軸心Lに直交する方向に延びる環状な平面である。永久磁石18の正面視で、永久磁石18の端面18cは、2つの磁性体形成部材21の端面21dが一繋がりになって形成されている。
【0037】
図4に示すように、永久磁石18の正面視で、端面18cに沿い、かつ筒部材16の軸心Lに直交する仮想線を第1仮想線19aとする。永久磁石18の正面視で、端面18cに沿い、かつ筒部材16の軸心L及び第1仮想線19aに直交する仮想線を第2仮想線19bとする。なお、図4では、第1仮想線19aの一部は、対向面21a上に位置するため、2点鎖線による図示ではなく、実線での図示となっている。
【0038】
第1仮想線19aの長さY1は、第2仮想線19bの長さY2より長い。したがって、永久磁石18の正面視で、永久磁石18は、第1仮想線19aが第2仮想線19bより長い円筒状である。永久磁石18の正面視で、永久磁石18は、第1仮想線19aの端に位置する第1頂端191を備えるとともに、第2仮想線19bの端に位置する第2頂端192を備える。第1頂端191は、各磁性体形成部材21の圧入部形成部25上に位置する。第2頂端192は、各磁性体形成部材21の周面21cの中間点上に位置する。
【0039】
第1頂端191は、永久磁石18の外周面18aに位置する。第1頂端191は、対向面21aと周面21cとの境界線上に位置する。第1頂端191は、永久磁石18に2つ存在する。2つの第1頂端191は、筒部材16の径方向に対向する位置にある。第2頂端192は、永久磁石18の外周面18aに位置する。第2頂端192は、永久磁石18に2つ存在する。2つの第2頂端192は、筒部材16の径方向に対向する位置にある。第1頂端191と第2頂端192とは、筒部材16の周方向に90度離れている。
【0040】
永久磁石18の正面視で、永久磁石18は、第1仮想線19aの第1頂端191を含む圧入部20を備える。永久磁石18には、第1頂端191が2つあるため、永久磁石18は、2つの圧入部20を備える。2つの圧入部20の各々は、2つの圧入部形成部25によって構成されている。2つの圧入部20の各々は、一方の磁性体形成部材21の圧入部形成部25と、他方の磁性体形成部材21の圧入部形成部25とから構成されている。
【0041】
永久磁石18の正面視で、各圧入部20は曲線に近い形状である。永久磁石18の正面視で、軸心Lの位置を永久磁石18の中心点Pとする。永久磁石18において、中心点Pから外周面18aまでの寸法を[寸法T]と記載する。寸法Tは、第1仮想線19aの第1頂端191で最長となる。この最長の寸法Tを[最長寸法T1]と記載する。最長寸法T1は、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の内径より若干長い。
【0042】
また、寸法Tは、中心点Pを中心として、第1頂端191から周方向に沿って第2頂端192に向かうに従い徐々に短くなっている。そして、寸法Tが、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の内径より短くなると、永久磁石18の外周面18aは、筒部材16の内周面16cから離れる。したがって、筒部材16に圧入されることとなる圧入部20は、永久磁石18の部分のうち、寸法Tについて、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の半径以上の部分である。よって、圧入部形成部25は、磁性体形成部材21のうち、寸法Tについて、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の半径以上の部分である。そして、上記した圧入部20を備える永久磁石18は、圧入部20において筒部材16の内周面16cに接触しつつ押し付けられている。
【0043】
筒部材16の内径のうち、圧入部20と対向する位置での内径は、その他の部分での内径より若干大きくなっている。よって、筒部材16の厚さは、圧入部20と対向する部分で、その他の部分より若干薄くなっている。
【0044】
永久磁石18の正面視で、永久磁石18は、第2仮想線19bの第2頂端192を含む離間部27を備える。永久磁石18には、第2頂端192が2つあるため、永久磁石18は、2つの離間部27を備える。2つの離間部27の各々は、各磁性体形成部材21の離間部形成部26によって構成されている。
【0045】
永久磁石18の正面視で、各離間部27は曲線状である。寸法Tは、第1頂端191から第2頂端192に向かうに従い徐々に短くなっている。そして、寸法Tは、第2頂端192で最短となる。この最短の寸法を[最短寸法T2]と記載する。最短寸法T2となる位置は、離間部27上に位置している。よって、最短寸法T2となる位置は、各磁性体形成部材21の離間部形成部26上に位置している。
【0046】
寸法Tが、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の内径より短くなると、永久磁石18の外周面18aは、筒部材16の内周面16cから離れる。したがって、離間部27は、寸法Tが、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の内径より短くなった部分に形成されている。
【0047】
ロータ15には、隙間Sが画定されている。隙間Sは、筒部材16の内周面16cと、離間部27での永久磁石18の外周面18aとの間に画定されている。離間部27は、筒部材16の内周面16cから離れている部分である。ロータ15の軸方向からロータ15を見て、隙間Sは、一方の圧入部20から第2頂端192に向けて徐々に広がるとともに、その第2頂端192から他方の圧入部20に向けて徐々に狭まる。ロータ15の軸方向からロータ15を見て、隙間Sは、三日月状である。なお、図4では、隙間Sを誇張して図示しているが、永久磁石18の離間部27は、筒部材16の内周面16cにほぼ接触する程度に接近しているため、隙間Sは、極僅かに形成されているだけである。
【0048】
隙間Sは、最短寸法T2となる位置で最大となる。つまり、永久磁石18は、第2仮想線19bの両端となる第2頂端192において筒部材16の内周面16cから最も離れている。
【0049】
最長寸法T1と最短寸法T2との差は僅かである。例えば、最長寸法T1を一定として、寸法Tを、第1頂端191から第2頂端192に向けて急激に短くすればするほど、最長寸法T1と最短寸法T2の差が大きくなるため、永久磁石18は細長になる。この場合、隙間Sは大きく広がるため、永久磁石18の形状を原因としてロータ15の重量バランスが取りにくくなる。よって、筒部材16への永久磁石18の圧入量は、ロータ15の重量バランスを加味しつつ、ロータ15の隙間Sが極僅かとなるよう調整されている。なお、筒部材16への永久磁石18の圧入量及び隙間Sの大きさの調整は、永久磁石18の周方向への圧入部20の寸法を調整することで調整する。つまり、第1仮想線19aの長さを調整して最長寸法T1を調整するとともに、第2仮想線19bの長さを調整して最短寸法T2を調整することで行われる。
【0050】
永久磁石18において、2つの圧入部20は、軸心Lに対して点対称に設けられている。また、永久磁石18において、2つの離間部27は、軸心Lに対して点対称に設けられている。永久磁石18は、第1仮想線19aを中心に線対称な形状であるとともに、第2仮想線19bを中心に線対称な形状である。
【0051】
図1に示すように、永久磁石18の各端面18cは、筒部材16の軸方向に沿って、筒部材16の各筒端面16aよりも筒部材16の内部寄りに位置している。筒部材16の軸方向に沿った筒端面16aから端面18cまでの寸法は、筒部材16の両端側で同じである、又は僅かに異なる。筒部材16は、軸方向の両側にシャフト保持端部22を備える。つまり、筒部材16は、永久磁石18よりも筒部材16の端寄りにシャフト保持端部22を備える。各シャフト保持端部22は、筒部材16のうち、永久磁石18の端面18cよりも軸方向にはみ出した部分である。
【0052】
一対の軸形成部材30の各々は、シャフト保持端部22に圧入されている。したがって、ロータ15は、永久磁石18よりも筒部材16の端寄りに圧入された軸形成部材30を備える。そして、一対の軸形成部材30は、永久磁石18を挟むように、筒部材16の軸方向の両側に圧入されている。軸形成部材30は、圧入用軸部31と、軸部33と、を備える。圧入用軸部31と軸部33は連結されている。
【0053】
圧入用軸部31は、円筒状である。ロータ15の軸方向に圧入用軸部31を見て、圧入用軸部31の外周面及び内周面は真円状である。圧入用軸部31の外径は、筒部材16の内径と同じ又は僅かに小さい。圧入用軸部31には、締結用凹部32が凹設されている。締結用凹部32は、圧入用軸部31の軸方向の第1端面31aから円形状に凹む。締結用凹部32は、圧入用軸部31の軸方向の第1端面31aに開口する。圧入用軸部31には、締結用凹部32の底部に開口するシャフト貫通孔32aが形成されている。
【0054】
図3に示すように、圧入用軸部31は、筒部材16の各シャフト保持端部22に圧入されている。圧入用軸部31の外径は、筒部材16の内径と同じ又は僅かに小さい。一方、永久磁石18の圧入部20の外径は、永久磁石18が圧入される前の筒部材16の内径より若干大きくなっている。このため、シャフト保持端部22のうち、圧入部20と並ぶ部分では、圧入用軸部31の外周面に向けて縮径するように変形している。
【0055】
図1に示すように、軸部33は、円盤状の基部33aと、基部33aの中心部から延出するシャフト部33bと、を備える。シャフト部33bは、軸受23に挿通されている。
ロータ15において、一対の圧入用軸部31のシャフト貫通孔32a及び永久磁石18の貫通孔18fには、ボルト40が挿通されている。したがって、永久磁石18には、ボルト40が挿通される貫通孔18fが形成されている。ボルト40は、頭部40aと軸部40bと、を備える。ボルト40の頭部40aは、一方の圧入用軸部31の内底面に接触しているとともに、軸部40bの先端は、他方の圧入用軸部31の内底面から突出している。他方の圧入用軸部31の内底面から突出した軸部40bの先端には、ナット41が螺合されている。ボルト40とナット41の螺合によって、一対の圧入用軸部31は、永久磁石18の軸方向の両側に締結されている。
【0056】
ボルト40の頭部40aは、一方の締結用凹部32に収容されるとともに、ナット41は、他方の締結用凹部32に収容されている。各圧入用軸部31の第1端面31aには、軸部33が連結されている。これにより、軸形成部材30が形成されている。そして、筒部材16と、永久磁石18と、一対の軸形成部材30とがボルト40及びナット41を用いて一体化されてロータ15が形成されている。
【0057】
<実施形態の作用>
回転電機10のロータ15において、永久磁石18の2つの圧入部20が筒部材16の内周面16cに接触している。一方、永久磁石18の離間部27は、筒部材16の内周面16cから離れている。このため、永久磁石18の外周面18aの全てが筒部材16の内周面16cに接触している場合に比べて、筒部材16に発生する応力が低減されている。
【0058】
<ロータの製造方法>
ロータ15の製造方法は、永久磁石18の製造工程と、永久磁石18を筒部材16に圧入する圧入工程と、永久磁石18に軸形成部材30を圧入するシャフト圧入工程と、を備える。
【0059】
図5に示すように、永久磁石18の製造工程では、まず、旋盤加工により、円筒状の磁性体前駆体60を製造する。磁性体前駆体60は、永久磁石18の前駆体である。磁性体前駆体60の軸方向から磁性体前駆体60を見て、磁性体前駆体60の外形である外周面60a及び内周面60bは真円状である。磁性体前駆体60には孔60cが形成されている。また、磁性体前駆体60の軸方向の両端には、環状面60dが形成されている。磁性体前駆体60の外径は、筒部材16の内径より若干大きい。このため、磁性体前駆体60は、筒部材16の内側に圧入できない。
【0060】
図6に示すように、永久磁石18の製造工程は、磁性体前駆体60の直径Nに沿って磁性体前駆体60を2つに分断して、2つの磁性体形成部材21を形成する工程を備える。この工程において、磁性体前駆体60の分断では、磁性体前駆体60の直径Nに沿って所定の幅Wで磁性体前駆体60を連続的に切削する。所定の幅Wとは、磁性体前駆体60を所定の幅Wで切削することにより、製造された磁性体形成部材21に最長寸法T1及び最短寸法T2が得られるよう切削するための寸法である。そして、一定の幅Wで磁性体前駆体60を切削することにより、2つの分割体の切削面から磁性体形成部材21の対向面21aが形成される。また、孔60cが2分割されることにより、磁性体形成部材21の溝21bが形成される。また、磁性体前駆体60の外周面60aから磁性体形成部材21の周面21cが形成されるとともに、磁性体前駆体60の環状面60dから磁性体形成部材21の端面21dが形成される。また、各周面21cには、圧入部形成部25及び離間部形成部26が形成される。その結果、磁性体前駆体60から最長寸法T1及び最短寸法T2を有する磁性体形成部材21が製造される。
【0061】
永久磁石18の製造工程は、2つの磁性体形成部材21の対向面21a同士を接触させるとともに、2つの磁性体形成部材21を一体化して永久磁石18とする工程を備える。
なお、2つの溝21bを組み合わせて形成された孔は、楕円に近い形状である。このため、溝21bを組み合わせて形成された孔を真円状に加工して、貫通孔18fとする。すると、永久磁石18の内周面18bが形成される。また、2つの周面21cが一繋がりとなって外周面18aが形成される。さらに、一方の磁性体形成部材21の圧入部形成部25と、他方の磁性体形成部材21の圧入部形成部25とから圧入部20が形成されるとともに、各磁性体形成部材21の離間部形成部26から離間部27が形成される。
【0062】
図7に示すように、圧入工程では、永久磁石18を筒部材16に圧入して、圧入部20を筒部材16の内周面16cに接触させる。このとき、永久磁石18の両方の圧入部20は、筒部材16に圧入される。その一方で、永久磁石18の各離間部27は、筒部材16の内周面16cには接触しない。そして、圧入工程において、2つの圧入部20が筒部材16の内周面16cに接触することにより、筒部材16の内側に永久磁石18が保持される。圧入工程では、筒部材16のうち、各端面18cよりはみ出した部分にはシャフト保持端部22が形成される。
【0063】
図8に示すように、シャフト圧入工程は、筒部材16に圧入された永久磁石18よりも筒部材16の端寄りとなる各シャフト保持端部22に軸形成部材30の圧入用軸部31を圧入する固定である。
【0064】
次に、一方の圧入用軸部31の締結用凹部32からシャフト貫通孔32aにボルト40の軸部40bを挿入する。さらに、ボルト40の軸部40bを、永久磁石18の貫通孔18fに挿入するとともに、他方の圧入用軸部31のシャフト貫通孔32aに挿入する。そして、他方の圧入用軸部31の締結用凹部32内に突出した軸部40bにナット41を螺合する。軸部40bとナット41の螺合によって、一対の圧入用軸部31が永久磁石18に引き寄せられるとともに、圧入用軸部31の外底面が永久磁石18の端面18cに接触する。
【0065】
その後、各圧入用軸部31に軸部33を連結して軸形成部材30を形成する。その結果、ロータ15が製造される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(1)永久磁石18は、圧入部20及び離間部27を備える。このため、永久磁石18の圧入部20が筒部材16の内周面16cに接触しているとともに、離間部27は筒部材16の内周面16cから離れている。よって、永久磁石18の外周面18aの全てが筒部材16の内周面16cに接触している場合と比べると、筒部材16に対する永久磁石18の接触面積を減らすことができる。このため、筒部材16への永久磁石18の圧入によって筒部材16に加わる荷重を低減できる。その結果、ロータ15において、筒部材16に発生する応力を低減できる。
【0067】
このようなロータ15において、ロータ15の回転時、永久磁石18には、ロータ15の回転中心から外周面18aに向けて遠心力が発生する。これにより、永久磁石18には引張応力が発生するが、永久磁石18は、2つの磁性体形成部材21から形成されているため、引張応力を低減できる。ロータ15の回転時、筒部材16によって、2つの磁性体形成部材21の飛散を防止できる。
【0068】
(2)磁性体形成部材21は、圧入部形成部25及び離間部形成部26を備えている。このため、2つの磁性体形成部材21の対向面21a同士を接触させると、2つの圧入部形成部25から圧入部20を形成できるとともに、各離間部形成部26から離間部27を形成できる。
【0069】
(3)永久磁石18は、2つの磁性体形成部材21によって形成されている。永久磁石18を3つ以上の磁性体形成部材21で形成する場合と比べると、磁性体形成部材21を形成するための材料歩留まりを良くできる。
【0070】
(4)筒部材16への永久磁石18の圧入の際に、筒部材16に加わる荷重を低減できる結果、筒部材16に発生する応力を低減できる。このため、応力に対する強度を得るための繊維層17の積層数を低減したり、炭素繊維17aの使用量を低減したりできる。その結果、筒部材16の製造コストを低減できる。よって、軽量化を目的として採用した炭素繊維強化プラスチック製の筒部材16において、さらなる軽量化を実現できる。
【0071】
(5)筒部材16は、炭素繊維強化プラスチック製である。このため、例えば筒部材16を金属製とした場合のように、軸形成部材30と筒部材16とを溶接することはできない。このため、軸形成部材30と永久磁石18とをボルト40とナット41とで締結している。この締結により、シャフト保持端部22に保持された軸形成部材30が筒部材16から外れることを防止できる。
【0072】
(6)ロータ15の製造方法において、圧入工程では、円筒状の筒部材16に、圧入部20を備える永久磁石18を圧入する。このため、永久磁石18の圧入部20が筒部材16の内周面16cに接触するとともに、離間部27は筒部材16の内周面16cから離れる。よって、永久磁石18の外周面18aの全てが筒部材16の内周面16cに押し付けられている場合と比べると、筒部材16に対する永久磁石18の接触面積を減らすことができる。このため、筒部材16への永久磁石18の圧入によって筒部材16に加わる荷重を低減できる。その結果、ロータ15において、筒部材16に発生する応力を低減できる。
【0073】
(7)永久磁石18の製造工程では、磁性体前駆体60を切削する際、所定の幅Wで、磁性体前駆体60の直径Nに沿って磁性体前駆体60を切削する。これにより、最長寸法T1及び最短寸法T2を有する磁性体形成部材21を製造できる。例えば、真円筒状の磁性体前駆体60を2分割した後、各分割体を切削して磁性体形成部材21と同じ形状にする場合と比べると、材料歩留まりを良くできる。
【0074】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図9に示すように、軸形成部材30の各々は、永久磁石18の圧入部20と対応する箇所に切削部34を備えていてもよい。切削部34は、軸形成部材30の軸部33に設けられている。切削部34は、軸部33の基部33aを切削して形成されている。一対の切削部34は、軸部33の基部33aのうち、永久磁石18の圧入部20と軸方向に並ぶ箇所を切削して形成されている。
【0075】
永久磁石18は、第1仮想線19aの長さY1を第2仮想線19bの長さY2より長くした楕円に近い形状である。このため、永久磁石18において、第1仮想線19aの両端側に位置する圧入部20側は、第2仮想線19bの両端側に位置する離間部27側より重量が大きい。このため、圧入部20に対応するように、切削部34を設けることで、ロータ15のバランスをより取ることができる。
【0076】
図10に示すように、永久磁石18の貫通孔18fは、筒部材16の軸方向に永久磁石18を見て楕円であってもよい。この場合、貫通孔18fの楕円の長軸の延長線上に、永久磁石18の圧入部20が位置しているとともに、貫通孔18fの楕円の短軸の延長線上に離間部27が位置している。
【0077】
上記のように、永久磁石18は、第1仮想線19aの長さY1を第2仮想線19bの長さY2より長くした楕円に近い形状である。このため、永久磁石18において、第1仮想線19aの両端側に位置する圧入部20側は、第2仮想線19bの両端側に位置する離間部27より重量が大きい。このため、圧入部20に対応するように、永久磁石18の内周面18bを切削して貫通孔18fを楕円とし、永久磁石18の重量を減らすことで、ロータ15のバランスをより取ることができる。また、貫通孔18fの長軸を直径とする真円を貫通孔18fとする場合と比べると、永久磁石18の材料歩留まりを良くすることができる。
【0078】
○ロータ15において、軸形成部材30と永久磁石18とは、ボルト40とナット41で締結されていなくてもよい。この場合、軸形成部材30は、筒部材16のシャフト保持端部22への圧入だけとなる。
【0079】
○ロータ15において、軸形成部材30と永久磁石18とは、ボルト40とナット41で締結されていなくてもよい。この場合、軸形成部材30の軸部33に、締結用凹部32と連通する軸孔を形成する。そして、軸部33の軸孔と、圧入用軸部31の締結用凹部32及びシャフト貫通孔32aと、永久磁石18の貫通孔18fと、を連通させる。これにより、ロータ15には、ロータ15を軸方向に貫通する流路が形成される。そして、この流路に空気を導入して、ロータ15を冷却するようにしてもよい。
【0080】
○永久磁石18は、貫通孔18fの形成されていない中実状であってもよいし、外周面18a又は内周面18bに切り欠きの形成された形状であってもよい。
○磁性体としては、永久磁石18に限らず、例えば、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コアであってもよい。
【0081】
○永久磁石18は、3つ以上の磁性体形成部材21によって形成されていてもよい。
例えば、永久磁石18は、4つの磁性体形成部材21で形成されていてもよい。4つの磁性体形成部材21は、永久磁石18を第1仮想線19a及び第2仮想線19bに沿って分割された形状である。4つの磁性体形成部材21の各々は、1つの圧入部形成部25と、1つの離間部形成部26とを備える。各磁性体形成部材21は、軸方向に見て扇形状である。
【0082】
永久磁石18において、2つの圧入部20の各々は、第1仮想線19aを挟んで隣り合う2つの磁性体形成部材21の圧入部形成部25によって形成される。2つの離間部27の各々は、第2仮想線19bを挟んで隣り合う2つの磁性体形成部材21の離間部形成部26によって形成される。
【0083】
○筒部材16は、金属製であってもよいし、繊維強化プラスチック以外の樹脂製であってもよい。また、筒部材16は、炭素繊維以外の繊維強化プラスチックであってもよい。
○シャフト保持端部22は、筒部材16の軸方向の片側だけに設けられていてもよい。この場合、ロータ15は、軸形成部材30を、筒部材16の軸方向の片側のみに備えるタイプとなる。
【0084】
○永久磁石18の製造工程は適宜変更可能である。例えば、真円筒状の磁性体前駆体60を2分割した後、各分割体を切削して磁性体形成部材21を製造してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…回転電機、15…ロータ、16…筒部材、16c…内周面、18…磁性体としての永久磁石、18f…貫通孔、20…圧入部、21…磁性体形成部材、25…圧入部形成部、26…離間部形成部、27…離間部、30…軸形成部材、34…切削部、40…ボルト、41…ナット、60…磁性体前駆体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10