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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121234
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電子デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240830BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20240830BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240830BHJP
   H10K 59/121 20230101ALI20240830BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
H01L29/78 612C
H01L29/78 618B
H10K50/10
H10K59/12
H10K59/124
G09F9/30 338
H10K59/121
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028209
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
【テーマコード(参考)】
2H192
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
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2H192CB02
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5F110QQ05
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(57)【要約】
【課題】酸化物半導体を配線材料として用いた電子デバイスを提供すること。
【解決手段】多結晶構造を有する第1酸化物半導体層、第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第1酸化物半導体層と重畳する第1導電層を含む第1積層構造と、前記第1酸化物半導体層と同一層で構成された第2酸化物半導体層、前記第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第2酸化物半導体層と重畳する第2導電層を含む第2積層構造と、を含み、前記第1酸化物半導体層は、前記第1導電層と重畳する第1部分と重畳しない第2部分とを含み、前記第2酸化物半導体層は、前記第2導電層と重畳する第3部分と重畳しない第4部分とを含み、前記第2部分には、不純物元素が含まれ、前記第1部分、前記第3部分及び前記第4部分には前記不純物元素が含まれない、電子デバイス。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶構造を有する第1酸化物半導体層、前記第1酸化物半導体層の上の第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第1酸化物半導体層と重畳する第1導電層を含む第1積層構造と、
前記第1酸化物半導体層と同一層で構成された第2酸化物半導体層、前記第2酸化物半導体層の上の前記第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第2酸化物半導体層と重畳するとともに前記第1導電層と同一層で構成された第2導電層を含む第2積層構造と、
を含み、
前記第1酸化物半導体層は、前記第1導電層と重畳する第1部分及び前記第1導電層と重畳しない第2部分を含み、
前記第2酸化物半導体層は、前記第2導電層と重畳する第3部分及び前記第2導電層と重畳しない第4部分を含み、
前記第2部分には、不純物元素が含まれ、
前記第1部分、前記第3部分及び前記第4部分には前記不純物元素が含まれない、電子デバイス。
【請求項2】
平面視において前記第1酸化物半導体層の端部から外側に向かって所定の範囲内に位置する前記第1絶縁層には、前記不純物元素が含まれ、
平面視において前記第2酸化物半導体層の端部から外側に向かって前記所定の範囲内に位置する前記第1絶縁層には、前記不純物元素が含まれない、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記第2部分の抵抗率は、前記第1部分の抵抗率よりも低く、
前記第3部分の抵抗率は、前記第1部分の抵抗率よりも低い、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記第3部分の抵抗率は、前記第4部分の抵抗率と同一である、請求項3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記第1絶縁層は、前記第1導電層と重畳する第5部分、前記第1導電層と重畳せず前記第1酸化物半導体層と重畳する第6部分、及び前記第2酸化物半導体層と重畳する第7部分を含み、
前記第6部分には、不純物元素が含まれ、
前記第5部分及び前記第7部分には前記不純物元素が含まれない、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層は、第2絶縁層の上に設けられ、
前記第2絶縁層において、前記第1導電層及び前記第1酸化物半導体層と重畳する第8部分には前記不純物元素が含まれず、前記第1導電層と重畳せず前記第1酸化物半導体層と重畳する第9部分には前記不純物元素が含まれ、前記第2酸化物半導体層と重畳する第10部分には前記不純物元素が含まれない、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項7】
多結晶構造を有する第1酸化物半導体層、前記第1酸化物半導体層の上の第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第1酸化物半導体層と重畳する第1導電層を含む第1積層構造と、
前記第1酸化物半導体層と同一層で構成された第2酸化物半導体層、前記第2酸化物半導体層の上の前記第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第2酸化物半導体層と重畳するとともに前記第1導電層と同一層で構成された第2導電層を含む第2積層構造と、
を含み、
前記第1酸化物半導体層は、前記第1導電層と重畳する第1部分及び前記第1導電層と重畳しない第2部分を含み、
前記第2酸化物半導体層は、前記第2導電層と重畳する第3部分及び前記第2導電層と重畳しない第4部分を含み、
前記第2部分、前記第3部分及び前記第4部分には、不純物元素が含まれ、
前記第1部分には、前記不純物元素が含まれない、電子デバイス。
【請求項8】
前記第2部分の抵抗率は、前記第1部分の抵抗率よりも低く、
前記第3部分及び前記第4部分の抵抗率は、前記第2部分の抵抗率と同一である、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記第1絶縁層は、前記第1導電層と重畳する第5部分、前記第1導電層と重畳せず前記第1酸化物半導体層と重畳する第6部分、及び前記第2酸化物半導体層と重畳する第7部分を含み、
前記第6部分及び前記第7部分には、不純物元素が含まれ、
前記第5部分には前記不純物元素が含まれない、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層は、第2絶縁層の上に設けられ、
前記第2絶縁層において、前記第1導電層及び前記第1酸化物半導体層と重畳する第8部分には前記不純物元素が含まれず、前記第1導電層と重畳せず前記第1酸化物半導体層と重畳する第9部分には前記不純物元素が含まれ、前記第2酸化物半導体層と重畳する第10部分には前記不純物元素が含まれる、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記第2部分の結晶構造は、前記第1部分の結晶構造と同一である、請求項1乃至10のいずか一項に記載の電子デバイス。
【請求項12】
所定の結晶方位において、前記第2部分の結晶構造の面間隔d値は、前記第1部分の結晶構造の面間隔d値と略同一である、請求項1乃至10のいずか一項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記第1部分の結晶構造及び前記第2部分の結晶構造は、立方晶である、請求項1乃至10のいずか一項に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記第2部分のシート抵抗は、500Ω/sq.以下である、請求項1乃至10のいずか一項に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層は、インジウム元素を含む少なくとも2以上の金属元素を含み、
前記少なくとも2以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項1乃至10のいずか一項に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記第1積層構造は、薄膜トランジスタであり、
前記第2積層構造は、配線の交差部、又は、容量素子である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項17】
絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、
前記第2酸化物半導体層及び前記第2導電層を覆うレジストマスクを形成し、
前記第1導電層及び前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部に不純物元素を添加し、
前記レジストマスクを除去した後、前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記第2酸化物半導体層には前記不純物元素が添加されない、請求項17に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記絶縁層の成膜温度は、350℃以上400℃以下である、請求項17に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳するレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部及び前記第2酸化物半導体層に不純物元素を添加し、
前記レジストマスクを除去した後、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、
前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項21】
前記第1導電層は、前記レジストマスクが形成された位置と同一の位置に形成される、請求項20に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項22】
絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、
前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層を覆うレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第2酸化物半導体層に不純物元素を添加し、
前記レジストマスクを除去した後、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、
前記第1導電層及び前記第2導電層の上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部及び前記第2酸化物半導体層の一部に前記不純物元素を添加し、
前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項23】
断面視において、チャネル長方向における前記レジストマスクの幅は、前記第1導電層の幅よりも広い、請求項22に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、電子デバイス及びその製造方法に関する。特に、本発明の実施形態の一つは、酸化物半導体を用いた半導体装置を含む電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン等の無機半導体に代えて、金属酸化物を含む酸化物半導体を活性層として用いた半導体装置(例えば薄膜トランジスタ)の開発が進められている(例えば、特許文献1~6)。酸化物半導体を用いた半導体装置は、アモルファスシリコンを活性層として用いた半導体装置と同様に、単純な構造かつ低温プロセスで形成することができる。酸化物半導体を活性層として用いた半導体装置は、アモルファスシリコンを活性層として用いた半導体装置に比べて高い電界効果移動度を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141338号公報
【特許文献2】特開2014-099601号公報
【特許文献3】特開2021-153196号公報
【特許文献4】特開2018-006730号公報
【特許文献5】特開2016-184771号公報
【特許文献6】特開2021-108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化物半導体は、透光性を有するため、低抵抗化して配線材料として用いることが可能となれば、アレイ基板(複数の半導体装置をアレイ状に配置した基板)の透過率を向上させる上で非常に有利である。しかしながら、従来の酸化物半導体は、抵抗率を十分に下げることが難しく、配線材料として用いることが困難であった。
【0005】
本発明の一実施形態は、酸化物半導体を配線材料として用いた電子デバイスを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における電子デバイスは、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層、前記第1酸化物半導体層の上の第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第1酸化物半導体層と重畳する第1導電層を含む第1積層構造と、前記第1酸化物半導体層と同一層で構成された第2酸化物半導体層、前記第2酸化物半導体層の上の前記第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第2酸化物半導体層と重畳するとともに前記第1導電層と同一層で構成された第2導電層を含む第2積層構造と、を含み、前記第1酸化物半導体層は、前記第1導電層と重畳する第1部分及び前記第1導電層と重畳しない第2部分を含み、前記第2酸化物半導体層は、前記第2導電層と重畳する第3部分及び前記第2導電層と重畳しない第4部分を含み、前記第2部分には、不純物元素が含まれ、前記第1部分、前記第3部分及び前記第4部分には前記不純物元素が含まれない。
【0007】
本発明の一実施形態における電子デバイスは、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層、前記第1酸化物半導体層の上の第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第1酸化物半導体層と重畳する第1導電層を含む第1積層構造と、前記第1酸化物半導体層と同一層で構成された第2酸化物半導体層、前記第2酸化物半導体層の上の前記第1絶縁層、及び前記第1絶縁層を介して前記第2酸化物半導体層と重畳するとともに前記第1導電層と同一層で構成された第2導電層を含む第2積層構造と、を含み、前記第1酸化物半導体層は、前記第1導電層と重畳する第1部分及び前記第1導電層と重畳しない第2部分を含み、前記第2酸化物半導体層は、前記第2導電層と重畳する第3部分及び前記第2導電層と重畳しない第4部分を含み、前記第2部分、前記第3部分及び前記第4部分には、不純物元素が含まれ、前記第1部分には、前記不純物元素が含まれない。
【0008】
本発明の一実施形態における電子デバイスの製造方法は、絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、前記第2酸化物半導体層及び前記第2導電性を覆うレジストマスクを形成し、前記第1導電層及び前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部に不純物元素を添加し、前記レジストマスクを除去した後、前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む。
【0009】
本発明の一実施形態における電子デバイスの製造方法は、絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳するレジストマスクを形成し、前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部及び前記第2酸化物半導体層に不純物元素を添加し、前記レジストマスクを除去した後、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む。
【0010】
本発明の一実施形態における電子デバイスの製造方法は、絶縁表面の上に、多結晶構造を有する第1酸化物半導体層及び第2酸化物半導体層を形成し、前記第1酸化物半導体層及び前記第2酸化物半導体層の上に、第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層を覆うレジストマスクを形成し、前記レジストマスクの上方からイオン注入を行い、前記第2酸化物半導体層に不純物元素を添加し、前記レジストマスクを除去した後、前記第1絶縁層の上に、前記第1酸化物半導体層の一部と重畳する第1導電層及び前記第2酸化物半導体層の少なくとも一部と重畳する第2導電層を形成し、前記第1導電層及び前記第2導電層の上方からイオン注入を行い、前記第1酸化物半導体層の一部及び前記第2酸化物半導体層の一部に前記不純物元素を添加し、前記第1導電層及び前記第2導電層の上に、水素を含む絶縁層を形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の表示装置の構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態の表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す平面図である。
図7A】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図7B】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図7C】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図8】酸化物半導体層の導電部のバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
図9】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図10】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図13】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図15】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図19】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図20】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図21】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図22】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図23】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図24】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図25】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図26】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図27】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図28】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図29】本発明の一実施形態の表示装置の製造方法を示す断面図である。
図30】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
図31】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の構成を示す断面図である。
図32】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図33】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図34】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図35】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図36】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図37】本発明の一実施形態の表示装置に用いる半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図38】本発明の一実施形態の表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図39】本発明の一実施形態の表示装置における画素の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して上記したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
各実施形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方という語句は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、「トランジスタの上方の画素電極」と表現する場合、平面視において、トランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、「トランジスタの鉛直上方の画素電極」と表現する場合は、平面視において、トランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0014】
各実施形態において、ある一つの膜に対してエッチング等の加工処理を施すことにより形成された複数の要素(element)は、それぞれ異なる機能又は役割を有する要素として記載されることがある。これらの複数の要素は、同一の層構造及び同一の材料で構成されたものであり、同一層で構成された要素として記載される。
【0015】
各実施形態において、「同一」、「一致」等の用語は、完全同一又は完全一致だけを指すものではなく、実質的に同一又は一致とみなせる範囲をも含む。例えば、ある数値同士が同一である場合、完全に同一である場合に加えて±5%(好ましくは±3%)の範囲内で数値が異なる場合をも含む。
【0016】
各実施形態において、「不純物元素が含まれない」と表現した場合、不純物元素がまったく含まれない場合だけでなく、不純物元素の濃度が分析装置の検出下限以下の濃度である場合をも含む。通常、アルゴン(Ar)、リン(P)又はボロン(B)といった不純物元素は、意図的に添加しない限り、酸化物半導体には含まれない。しかし、他の膜の形成中に意図せず上記不純物元素が混入してしまう場合もあり得る。そのような場合であっても、使用する分析装置の検出下限以下の濃度であれば、実質的に不純物元素は含まれないとみなしてよい。
【0017】
本明細書において、「電子デバイス」とは、トランジスタ等の半導体素子を含み、電子的な動作を実行するデバイスを指す。例えば、表示装置及び半導体集積装置は、本明細書の電子デバイスに含まれる。「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する装置を指す。「電気光学層」には、技術的な矛盾を生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。また、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルだけでなく、表示パネルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材又はバックライト等)を装着した装置をも含む。「半導体集積装置」とは、半導体素子を集積化した回路を含む装置である。例えば、CPU(中央演算処理装置)、記憶装置(メモリ)及びイメージセンサは、半導体集積装置に含まれ得る。
【0018】
各実施形態において、「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」といった表現は、特に明示が無い限り、αはA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0019】
(第1実施形態)
[表示装置の構成]
本発明の一実施形態の表示装置100について説明する。本実施形態の表示装置100は、電気光学層として液晶層を備えた液晶表示装置である。表示装置100は、本発明を適用した電子デバイスの一例である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態の表示装置100の構成を示す平面図である。図1に示すように、表示装置100の回路基板100Aの表面側には、表示部110、走査側駆動部120、及び端子部130が設けられている。
【0021】
回路基板100Aは、透光性を有する支持基板上に、酸化物半導体を用いて形成された半導体装置を複数配置した基板である。本実施形態では、半導体装置として薄膜トランジスタを配置する例を示すが、この例に限られるものではなく、スイッチング素子として機能する素子であれば、他の半導体装置を配置してもよい。回路基板100Aは、アクティブマトリクス基板と呼ばれる場合もある。回路基板100Aを構成する支持基板としては、透光性を有する基板を用いることができる。例えば、支持基板として、ガラス基板、又は可撓性を有する樹脂基板を用いることが好ましい。
【0022】
表示部110は、画像を表示する複数の画素112を制御するための部位である。具体的には、表示部110は、D1方向(行方向)に延びる複数の走査信号線114及びD2方向(列方向)に延びる複数の映像信号線116を含み、複数の走査信号線114及び複数の映像信号線116の交点のそれぞれに対応して、薄膜トランジスタを含む画素112を有する。本実施形態において、個々の画素112は、R(赤)、G(緑)及びB(青)のいずれかの色に対応するサブ画素である。したがって、実際には、RGBの各色に対応する3つの画素112を含む1つの画素(メイン画素)を単位としてカラー表示を行う構成となっている。
【0023】
ここで、個々の画素112の発光制御を行うための画素回路200について図2を用いて説明する。説明の便宜上、1つの半導体装置(薄膜トランジスタ)と1つの保持容量を用いた基本的な構成を例示して説明するが、画素回路200の構成は、この例に限られるものではない。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素回路200の構成を示す図である。図2に示すように、画素回路200は、選択トランジスタ201、容量素子202、及び液晶素子203を含む。後述するように、選択トランジスタ201は、酸化物半導体層で構成されるチャネル部を含む薄膜トランジスタである。
【0025】
選択トランジスタ201のゲートは、走査信号線114に接続され、選択トランジスタ201のソースは、映像信号線116に接続されている。映像信号線116には、液晶素子203を透過する光量を決める階調信号が供給される。走査信号線114には、階調信号を書き込む画素を選択するための走査信号が供給される。選択トランジスタ201のドレインは、容量素子202及び液晶素子203に接続されている。なお、選択トランジスタ201のソース及びドレインは、映像信号線116に印加された電圧と容量素子202に蓄積された電圧との大小関係によって入れ替わる場合がある。
【0026】
容量素子202は、選択トランジスタ201を介して映像信号線116から入力された電圧を保持するコンデンサである。容量素子202の一方の電極は、選択トランジスタ201のドレインに接続され、他方の電極は、接地電位に固定される。ただし、この例に限られるものではなく、他方の電極は、他の電位に固定されてもよい。
【0027】
液晶素子203は、一対の電極間に液晶層を設けた構造を有する電気光学素子である。具体的な構造は後述するが、本実施形態の液晶素子203は、選択トランジスタ201のドレインに接続された画素電極と、共通配線204に接続された共通電極とを含み、画素電極と共通電極との間に形成された電界によって液晶分子の配向が制御される。
【0028】
以上説明した画素回路200が、表示装置100の各画素112に配置されている。換言すれば、図1に示した表示部110は、画素回路200の集合体で構成されているとも言える。
【0029】
図1に説明を戻す。走査側駆動部120は、走査信号線114に連結され、走査信号線114に対して走査信号を伝達する。具体的には、走査信号は、図2に示した選択トランジスタ201のゲートに与えられ、選択トランジスタ201のスイッチング制御に用いられる。本実施形態では、複数の画素112に含まれる画素回路200と同様に、走査側駆動部120を構成する駆動回路も薄膜トランジスタを用いて形成されているが、ICチップ等で代用することも可能である。なお、本実施形態では、回路基板100Aに2つの走査側駆動部120を含むが、いずれか片方だけであってもよい。
【0030】
端子部130は、回路基板100Aに配置された各種配線とフレキシブルプリント回路基板140とを電気的に接続するための部位である。具体的には、端子部130は、複数の映像信号線116、走査側駆動部120に制御信号を供給するための配線(図示せず)、及び共通配線204に接続された複数の端子の集合体である。端子部130は、表示部110の外側に配置される。外部から供給される映像信号及び制御信号は、端子部130を介して、それぞれ表示部110及び走査側駆動部120に供給される。
【0031】
端子部130には、フレキシブルプリント回路基板140が接続される。フレキシブルプリント回路基板140は、回路基板100Aと外部の制御回路(図示せず)とを接続するためのインターフェース基板である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板140に対して表示制御回路150が実装されている。表示制御回路150は、表示部110に供給する映像信号及び走査側駆動部120に供給する各種の制御信号の信号処理を実行する信号処理回路である。本実施形態では、表示制御回路150は、ICチップの形態でフレキシブルプリント回路基板140に実装される。
【0032】
フレキシブルプリント回路基板140は、樹脂材料で構成された可撓性基板の上に配線が印刷された回路基板であるため、折り曲げることが可能である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板140を一点鎖線142で折り曲げ、フレキシブルプリント回路基板140と回路基板100Aの裏面側(表示部110などが形成されていない側)とが重なるようにすることができる。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す平面図である。図4は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。具体的には、図4は、図3に示す画素構造をA-A’で切断した断面図に相当する。なお、説明の便宜上、図3では、容量素子202及び液晶素子203の図示を省略している。
【0034】
図3及び図4に示すように、走査信号線114と映像信号線116とは、互いに交差するように配置され、その交差点に対応して選択トランジスタ201が配置される。選択トランジスタ201では、活性層として機能する酸化物半導体層544の上に、絶縁層550を介して走査信号線114が配置される。走査信号線114のうち酸化物半導体層544と交差する部分は、ゲート電極として機能する。つまり、酸化物半導体層544、絶縁層550及び走査信号線114で構成される積層構造が、選択トランジスタ201に含まれる。
【0035】
また、走査信号線114と映像信号線116とが交差する部分では、映像信号線116の一部(以下「交差部116a」と呼ぶ)の上に、絶縁層550を介して走査信号線114が配置される。つまり、走査信号線114と映像信号線116とが交差する部分には、交差部116a、絶縁層550及び走査信号線114で構成される積層構造が形成される。
【0036】
ここで、本実施形態では、映像信号線116が、選択トランジスタ201のソース領域又はドレイン領域として機能する導電部403bと同一層で構成されている。具体的には、選択トランジスタ201の活性層として機能する酸化物半導体層544と映像信号線116とが一体物で構成されている。つまり、複数の画素112の各々は、選択トランジスタ201の活性層と同一層で構成された映像信号線116によって接続される。
【0037】
本実施形態では、選択トランジスタ201の活性層(具体的には、導電部403b)として機能する酸化物半導体層の抵抗率が、従来の酸化物半導体層の抵抗率よりも低い。そのため、本実施形態では、酸化物半導体層を配線(本実施形態では、映像信号線116)として用いることが可能である。本実施形態の酸化物半導体が配線材料として利用できる理由については後述する。
【0038】
また、本実施形態では、映像信号線116のうち交差部116aの構成が他の部分の構成と異なっている。具体的には、基本的には、映像信号線116は、選択トランジスタ201の導電部403bと同じ構成になっているのに対し、交差部116aは、導電部403bに含まれる不純物元素が含まれていない。この点については、後述する。
【0039】
ここで、図4を用いて画素112の具体的な構造について説明する。図4に示すように、選択トランジスタ201は、基板500の上に設けられる。基板500は、透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板又は樹脂基板を用いることができる。絶縁層520は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又は、酸化シリコン層及び窒化シリコン層の積層膜で構成される。絶縁層520は、基板500からの不純物等の侵入を防ぐ役割を有する。
【0040】
本実施形態の選択トランジスタ201は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成された酸化物半導体層544を含む。酸化物半導体としては、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む金属酸化物が用いられる。通常、酸化物半導体は、透光性を有し、可視光に対して透明である。酸化物半導体層544は、チャネル部403a及び導電部403bを含む。チャネル部403aは、選択トランジスタ201のチャネルとして機能する。導電部403bは、選択トランジスタ201のソース又はドレインとして機能する。
【0041】
本実施形態では、選択トランジスタ201としてトップゲート構造の薄膜トランジスタを用いた例を示しているが、酸化物半導体層544の下方にもゲート電極を備えたデュアルゲート構造の薄膜トランジスタを用いてもよい。酸化物半導体層544の下方に配置されたゲート電極は、基板500側からチャネル部403aに向かう光をブロックすることができる。そのため、選択トランジスタ201をデュアルゲート構造とした場合、光照射によるリーク電流が抑えられ、オフ電流を低減することができるという利点を有する。また、酸化物半導体層544のチャネル部403aに対して上下方向からゲート電圧が印加されるため、オン電流の増加が見込まれる。
【0042】
図3に示した交差部116aは、選択トランジスタ201を構成する酸化物半導体層544と同一層で構成されている。すなわち、本実施形態において、酸化物半導体層544と交差部116aとは、同一の酸化物半導体層に由来する要素である。交差部116aは、酸化物半導体層544と同時に形成されるが、低抵抗化の方法が導電部403bとは異なる。具体的には、導電部403bは、酸化物半導体層544に不純物元素を添加する過程で導電性が付与されるのに対し、交差部116aは、不純物元素を添加することなく、水素化等の方法により導電性が付与される。この点については、選択トランジスタ201の製造方法と併せて後述する。
【0043】
走査信号線114の上には、樹脂材料で構成された平坦化層610が設けられる。平坦化層610は、選択トランジスタ201の形成に伴って生じた基板500上の起伏を平坦化する役割を有する。平坦化層610の上には、画素電極620が設けられる。画素電極620は、ITO等の金属酸化物を含む透明導電膜で構成される。画素電極620は、平坦化層610に設けられたコンタクトホールを介して選択トランジスタ201に接続される。
【0044】
画素電極620の上には、絶縁層630が設けられる。絶縁層630は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又はそれらの積層構造で構成される。絶縁層630の上には、一部が画素電極620と重畳するように共通電極205が設けられる。共通電極205は、画素電極620と同様に、ITO等の金属酸化物を含む透明導電膜で構成される。
【0045】
本実施形態において、共通電極205は、櫛歯状のパターン形状を有する。例えば、共通電極205は、図1のD1方向に延在する線状の電極に、D2方向に延在する複数の線状電極が接続されたパターン形状を有する。図4に示す例では、画素電極620に重畳する3つの電極パターンが図示されているが、これらはD2方向に延在する複数の線状電極の断面に相当し、互いに電気的に接続されている。
【0046】
本実施形態では、画素電極620と共通電極205との間にフリンジ電界を形成して液晶層650の液晶分子を配向させるFFS(Fringe Field Switching)方式を採用している。液晶表示装置の駆動方式としてFFS方式は公知であるため、ここでの説明は省略する。フリンジ電界を形成する際、共通電極205には所定の電圧(例えば、接地電圧)が印加される。つまり、フリンジ電界の強度は、画素電極620に印加される電圧によって制御される。このように、共通電極205は、表示期間において定電圧に保持されることにより、液晶層に電圧を印加するための電極として機能する。
【0047】
なお、本実施形態では、画素電極620と共通電極205との間にフリンジ電界を形成するFFS方式を採用した例について説明したが、この例に限られるものでなく、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式を採用してもよい。この場合、画素電極及び共通電極の両方を櫛歯状のパターン形状で構成すると共に、画素電極及び共通電極の櫛歯部分を互いに対向させて配置すればよい。IPS方式の場合、互いに横方向において向かい合う画素電極及び共通電極によって横電界が形成され、当該横電界によって液晶分子の配向制御が行われる。
【0048】
画素電極620及び共通電極205の上には、液晶層650を介して基板700及びカラーフィルタ710が設けられる。本実施形態では、基板700及びカラーフィルタ710を併せて対向基板700Aと呼ぶ。液晶層650は、図示しないシール材によって貼り合わされた回路基板100Aと対向基板700Aとの間に配置される。なお、図4では図示を省略するが、回路基板100A及び対向基板700Aにおける液晶層650と接する面には、配向膜が設けられている。また、本実施形態では、基板700上にカラーフィルタ710のみ図示しているが、必要に応じて遮光膜(いわゆるブラックマトリクス)が設けられていてもよい。
【0049】
以上説明したとおり、本実施形態では、各画素112に、酸化物半導体層544を活性層として有する半導体装置(選択トランジスタ201)が配置され、映像信号線116(交差部116aを含む)が、活性層と同一層で構成された酸化物半導体層で構成されている。このとき、本実施形態の映像信号線116は、走査信号線114と重畳する部分の抵抗率が配線として機能し得るレベルまで十分に低い。そのため、映像信号線116に信号を供給した場合において、抵抗成分による信号遅延等を抑制することが可能である。
【0050】
本実施形態の選択トランジスタ201に用いた酸化物半導体層544は、多結晶構造を有し、極めて結晶性に優れている。また、本実施形態の酸化物半導体層544に導電性を付与した導電部403bは、抵抗が従来のものより大幅に低いという特長を有する。具体的には、導電部403bのシート抵抗は、1000Ω/sq.以下(好ましくは、500Ω/sq.以下)であり、十分に配線としての使用が可能となっている。本実施形態の表示装置100は、このような酸化物半導体層544の物性に着目し、映像信号線116を酸化物半導体層544と同一層で構成している。
【0051】
本実施形態によれば、映像信号線116を透光性材料(具体的には、金属酸化物で構成される酸化物半導体層544)で構成することができる。しかも、映像信号線116は、選択トランジスタ201に用いる酸化物半導体層544と同時に形成することができるため、簡易な構造で表示装置100の表示部の開口率を向上させることが可能である。
【0052】
以上説明した表示部110の構造は、酸化物半導体層の抵抗率を配線として使用し得るレベルまで低減したことによって実現されている。具体的には、酸化物半導体を用いた半導体装置である選択トランジスタ201の導電部403bを低抵抗化することによって実現される。そこで、本実施形態で用いる半導体装置(図4では、選択トランジスタ201)の構成及び製造方法について以下に説明する。
【0053】
[半導体装置の構成]
図5は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の構成を示す断面図である。図6は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の構成を示す平面図である。図5は、図6に示す一点鎖線で切断したときの断面図に対応する。なお、説明の便宜上、若干異なる寸法で図示されているが、図5に示す半導体装置10と図4に示した選択トランジスタ201とは、基本的に同じ構造である。
【0054】
図5に示すように、半導体装置10は、基板500の上方に設けられている。半導体装置10は、絶縁層520、酸化物半導体層544、絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極591、及びドレイン電極593を含む。
【0055】
絶縁層520は、基板500の上に設けられている。酸化物半導体層544は、絶縁層520の上に設けられている。酸化物半導体層544は、絶縁層520に接している。酸化物半導体層544の主面のうち、絶縁層550に接する面を上面と呼び、絶縁層520に接する面を下面と呼ぶ。また、酸化物半導体層544の上面と下面とを繋ぐ面を側面と呼ぶ。絶縁層520は、基板500から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物を遮蔽するバリア層としての機能を備える。
【0056】
酸化物半導体層544は、透光性を有している。また、酸化物半導体層544は、ソース領域544S、ドレイン領域544D、及びチャネル領域544CHに区分される。チャネル領域544CHは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564の鉛直下方の領域(すなわち、ゲート電極564と重畳する領域)である。ソース領域544Sは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重畳しない領域であって、チャネル領域544CHよりもソース電極591に近い側の領域である。ドレイン領域544Dは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重畳しない領域であって、チャネル領域544CHよりもドレイン電極593に近い側の領域である。チャネル領域544CHは、図4に示したチャネル部403aに相当し、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、それぞれ図4に示した導電部403bに相当する。
【0057】
ゲート電極564は、導電層で構成され、絶縁層550を介して酸化物半導体層544の一部と重畳して配置される。絶縁層550は、例えば酸化シリコン層で構成され、酸化物半導体層544に接して配置される。
【0058】
絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれ絶縁層550及びゲート電極564の上に設けられている。絶縁層570及び絶縁層580には、酸化物半導体層544に達するコンタクトホール571及び573が設けられている。ソース電極591は、コンタクトホール571を介してソース領域544Sに接する。ドレイン電極593は、コンタクトホール573を介してドレイン領域544Dに接する。
【0059】
酸化物半導体層544は、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。以下の説明において、多結晶構造を有する酸化物半導体そのものを指してPoly-OSと呼ぶ場合がある。
【0060】
本実施形態において、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、およびランタノイドが用いられる。ただし、この例に限らず、酸化物半導体層544は、上記以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0061】
また、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、上記金属元素以外の元素を含んでいてもよい。詳細は後述するが、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、チャネル領域544CHよりも抵抗率が低い。このような抵抗率の低下は、酸化物半導体層544にアルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)などの元素(以下、「不純物元素」という)を添加する過程で実現される。
【0062】
ソース領域544S及びドレイン領域544Dに含まれる不純物元素の濃度は、SIMS分析(二次イオン質量分析)で測定した場合に、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であることが好ましい。ソース領域544S及びドレイン領域544Dに、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下で不純物元素が含まれる場合、イオン注入法又はイオンドーピング法により不純物元素が意図的に添加されたものと推定される。ただし、ソース領域544S及びドレイン領域544Dには、1×1018cm-3未満の濃度で、アルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)以外の不純物元素が含まれていてもよい。なお、チャネル領域544CHに、不純物元素が含まれると、半導体装置10の特性に影響を及ぼす。そのため、チャネル領域544CHに含まれる不純物元素の濃度は、1×1018cm-3未満(より好ましくは1×1016cm-3以下)であることが好ましい。
【0063】
ゲート電極564は、半導体装置10のトップゲートとしての機能を備える。絶縁層550は、半導体装置10のゲート絶縁層としての機能を備え、製造プロセスにおける熱処理によって酸素を放出する機能を備える。絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれゲート電極564とソース電極591との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極593との間を絶縁する。これにより、ゲート電極564とソース電極591との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極593との間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0064】
図6に示すように、ゲート配線565は、第1方向(D1方向)に延在する。ゲート配線565の一部は、第2方向(D2方向)に向かって分岐し、酸化物半導体層544と重畳する。ゲート配線565のうち酸化物半導体層544と重畳した部分が、ゲート電極564として機能する。酸化物半導体層544とゲート電極564とが重畳する領域(すなわち、チャネル領域544CH)の第1方向(D1方向)の長さがチャネル長(L)であり、第2方向(D2方向)の長さがチャネル幅(W)である。なお、図6に示すゲート配線565は、図3及び図4に示した走査信号線114に対応する。また、図5に示すゲート電極564は、図3及び図4に示した走査信号線114のうち酸化物半導体層544と重畳する部分に対応する。
【0065】
[酸化物半導体層の結晶構造]
本実施形態の酸化物半導体層544は、Poly-OSを含む。以下の説明では、酸化物半導体層544を例に挙げて説明するが、酸化物半導体層544と同一層で構成された映像信号線116(交差部116aを含む)についても同じ説明が可能である。
【0066】
酸化物半導体層544の上面(または酸化物半導体層544の膜厚方向)から観察したPoly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、断面SEM観察、断面TEM観察、または電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0067】
Poly-OSでは、複数の結晶粒が1種類の結晶構造を有していてもよく、複数の種類の結晶構造を有していてもよい。Poly-OSの結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。すなわち、酸化物半導体層544の結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。
【0068】
酸化物半導体層544の結晶構造は、立方晶であることが好ましい。立方晶は、結晶構造の対称性が高く、酸化物半導体層544に酸素欠陥が生成された場合においても、構造緩和が起きにくく、結晶構造が安定している。上記したように、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素の比率を高くすることにより、複数の結晶粒の各々の結晶構造が制御され、立方晶の結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。
【0069】
図5に示したように、酸化物半導体層544は、チャネル領域544CHに対応するチャネル部403a、並びに、ソース領域544S及びドレイン領域544Dに対応する導電部403bを含む。酸化物半導体層544では、チャネル部403aが第1の結晶構造を有し、導電部403bが第2の結晶構造を有する。導電部403bは、チャネル部403aよりも大きな電気伝導度を有するが、第2の結晶構造は、第1の結晶構造と同一である。ここで、2つの結晶構造が同一とは、結晶系が同一であることを意味する。例えば、酸化物半導体層544の結晶構造が立方晶であるとき、チャネル部403aの第1の結晶構造および導電部403bの第2の結晶構造は、ともに立方晶であり、同一である。第1の結晶構造および第2の結晶構造は、例えば、極微電子線回折法などを用いて特定することができる。
【0070】
また、所定の結晶方位において、第1の結晶構造の面間隔d値と、第2の結晶構造の面間隔d値とは、略同一である。ここで、2つの面間隔d値が略同一とは、一方の面間隔d値が、他方の面間隔d値の0.95倍以上1.05倍以下であることをいう。あるいは、極微電子線回折法において、2つの回折パターンがほとんど一致している場合をいう。
【0071】
チャネル部403aと導電部403bとの間には、結晶粒界が存在しなくてもよい。また、1つの結晶粒の中に、チャネル部403a及び導電部403bが含まれていてもよい。換言すると、チャネル部403aから導電部403bへの変化は、連続的な結晶構造の変化であってもよい。
【0072】
図7A図7Cは、酸化物半導体層544の導電部403bに含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。図7A図7Cには、インジウム原子(In原子)およびIn原子と異なる金属原子(M原子)を含むPoly-OSが示されている。
【0073】
図7Aに示すPoly-OSでは、In原子および金属原子Mの各々が酸素原子(O原子)と結合している。図7Aに示すPoly-OSの結晶構造は、導電部403bでは、チャネル部403aよりも電気伝導度を大きくするために、In原子とO原子(又は金属原子MとO原子)との結合が切断され、O原子が脱離された酸素欠陥が生成されている(図7B参照)。Poly-OSは、結晶粒径の大きな結晶粒を含むため、長距離秩序が維持されやすい。そのため、酸素欠陥が生成されても、構造緩和が起きにくく、In原子および金属原子Mの位置はほとんど変化しない。図7Bに示す状態において、水素が存在すると、酸素欠陥中のIn原子のダングリングボンド及び金属原子Mのダングリングボンドが水素原子(H原子)と結合し、安定化する(図7C参照)。酸素欠陥中のH原子はドナーとして機能するため、導電部403bのキャリア濃度が増加する。
【0074】
また、図7Cに示すように、Poly-OSでは、酸素欠陥中でH原子が結合されても、In原子及び金属原子Mの位置がほとんど変化しない。そのため、導電部403bの第2の結晶構造は、酸素欠陥のないPoly-OSの結晶構造から変化しない。すなわち、導電部403bの第2の結晶構造は、チャネル部403aの第1の結晶構造と同一である。
【0075】
図8は、酸化物半導体層544の導電部403bのバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
【0076】
図8に示すように、導電部403bのPoly-OSでは、バンドギャップE内に、第1のエネルギー準位1010及び第2のエネルギー準位1020を含む。また、価電子帯上端のエネルギー準位Evの近傍及び伝導帯下端のエネルギー準位Eの近傍のそれぞれに、テイル準位1030を含む。第1のエネルギー準位1010は、バンドギャップE内に存在する深いトラップ準位であり、酸素欠陥に起因するものである。第2のエネルギー準位1020は、伝導帯の下端近傍に存在するドナー準位であり、酸素欠陥内で結合された水素原子に起因するものである。テイル準位1030は、長距離秩序の乱れに起因するものである。
【0077】
導電部403bにおけるPoly-OSは、酸素欠陥を含むものの、結晶構造を有しており、長距離秩序が維持されている。また、導電部403bにおけるPoly-OSでは、構造的な乱れを生じることなく、酸素欠陥内で水素原子を結合することができる。そのため、テイル準位1030の状態密度(Density of State:DOS)を抑制しながら、第2のエネルギー準位1020のDOSを大きくすることができる。そのため、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端近傍のテイル準位1030のDOSよりも大きく、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超えて広がることができる。すなわち、フェルミ準位Eは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超え、導電部403bにおけるPoly-OSは、金属的性質を有する。
【0078】
上記したように、導電部403bにおけるPoly-OSは、従来の酸化物半導体と異なり、金属的性質を有する。そのため、導電部403bは、酸素欠陥を生成することにより、十分に低抵抗化することができる。導電部403bのシート抵抗は、1000Ω/sq.以下であり、好ましくは500Ω/sq.以下であり、さらに好ましくは250Ω/sq.である。
【0079】
このように、本実施形態では、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544D(すなわち、導電部403b)を十分に低抵抗化することが可能であるため、導電部403bを配線として使用することができる。図3及び図4に示した映像信号線116は、このような酸化物半導体層544の特長を利用したものである。
【0080】
本実施形態において、基板500と酸化物半導体層544との間には遮光層が設けられてもよい。チャネル領域544CHと重畳する領域に、遮光層が設けられることにより、チャネル領域544CHへの光の照射に起因する半導体装置10の特性変動を抑制することができる。この場合、遮光層をゲート電極として用いることにより、半導体装置10をデュアルゲート構造としてもよい。
【0081】
[半導体装置の製造方法]
図9図18を用いて、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法について説明する。図9は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示すシーケンス図である。図10図18は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示す断面図である。
【0082】
まず、図9及び図10に示すように、基板500の上に絶縁層520を形成する(ステップS1001)。
【0083】
基板500として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板500が可撓性を備える必要がある場合、基板500として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、樹脂を含む基板が用いられる。基板500として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板500の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物元素が導入されていてもよい。
【0084】
絶縁層520はCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法によって成膜される。絶縁層520として、一般的な絶縁性材料が用いられる。絶縁層520として、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、及び窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁材料が用いられる。
【0085】
上記のSiO及びAlOは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiN及びAlNは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0086】
絶縁層520は、単層構造又は積層構造で形成される。絶縁層520を積層構造とする場合には、基板500に近いに窒素を含む絶縁材料を設け、その後、酸素を含む絶縁材料を形成することが好ましい。窒素を含む絶縁材料を用いることにより、例えば、基板500側から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。また、酸素を含む絶縁材料を用いることにより、熱処理によって酸素を放出させることができる。酸素を含む絶縁材料が酸素を放出する熱処理の温度は、例えば、600℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。つまり、酸素を含む絶縁材料は、例えば、基板500としてガラス基板が用いられた場合の半導体装置10の製造工程で行われる熱処理温度で酸素を放出する。本実施形態では、窒素を含む絶縁材料として、例えば、窒化シリコンが用いられる。酸素を含む絶縁材料として、例えば、酸化シリコンが用いられる。
【0087】
次に、図9及び図11に示すように、絶縁層520の上に酸化物半導体層540を形成する(ステップS1002)。酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。
【0088】
酸化物半導体層540として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。酸化物半導体層540として、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられる。また、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。酸化物半導体層540として、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、又はランタノイドが用いられる。酸化物半導体層540として、上記以外の元素が用いられてもよい。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む金属酸化物(IGO系酸化物半導体)が用いられる。
【0089】
後述するOSアニール(ステップS1004)によって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。つまり、酸化物半導体層540の成膜方法は、成膜直後の酸化物半導体層540ができるだけ結晶化しない条件であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体層540が成膜される場合、被成膜対象物(基板500及びその上に形成された構造物)の温度を制御することにより、酸化物半導体層540が結晶化しない条件を実現することができる。
【0090】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体層540に微結晶が含まれ、その後のOSアニールによる結晶化が阻害される。上記のように被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。上記のように、被成膜対象物を冷却しながら酸化物半導体層540の成膜を行うことで、成膜直後の状態で結晶成分が少ない酸化物半導体層540を成膜することができる。
【0091】
次に、図9及び図12に示すように、フォトリソグラフィにより酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS1003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。なお、図示は省略するが、酸化物半導体層540のパターンを形成する際、同時に映像信号線116として用いるためのパターンも形成しておく。
【0092】
酸化物半導体層540をエッチングする際には、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングの場合、酸性のエッチャントを用いてエッチングを行うことができる。エッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0093】
酸化物半導体層540は、ステップS1004で実施するOSアニールの前にパターンに加工されることが好ましい。OSアニールによって酸化物半導体層540が結晶化すると、エッチングし難い傾向がある。また、エッチングによって酸化物半導体層540にダメージが生じても、OSアニールによってダメージを修復することができる。
【0094】
酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS1004)。OSアニールでは、酸化物半導体層540が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下であり、好ましくは350℃以上450℃以下である。また、到達温度での保持時間は、15分以上120分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、酸化物半導体層540が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層544が形成される。
【0095】
なお、本実施形態の表示装置100を製造する場合、選択トランジスタ201の酸化物半導体層544を形成すると同時に、映像信号線116として用いるための酸化物半導体層で構成される配線パターンが形成される。そのため、このプロセスで形成される配線パターンは、酸化物半導体層544と同じ結晶構造を有する。
【0096】
次に、図9及び図13に示すように、酸化物半導体層544の上に絶縁層550を成膜する(ステップS1005)。
【0097】
絶縁層550の成膜方法及び絶縁材料は、絶縁層520の説明を参照すればよい。本実施形態において、絶縁層550の膜厚は、例えば、50nm以上150nm以下であるが、この例に限られない。
【0098】
絶縁層550として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。また、絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を用いることが好ましい。例えば、絶縁層550における酸素の組成比と、絶縁層550と同様の組成の絶縁層(以下、「他の絶縁層」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、絶縁層550における酸素の組成比の方が当該他の絶縁層における酸素の組成比よりも当該絶縁層に対する化学量論比に近い。例えば、絶縁層550及び絶縁層580の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、絶縁層550として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比は、絶縁層580として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比に比べて、酸化シリコンの化学量論比に近い。例えば、絶縁層550として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0099】
絶縁層550として欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度で絶縁層550を成膜してもよい。また、絶縁層550を成膜した後に、絶縁層550の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。本実施形態では、絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度で酸化シリコン層が形成される。
【0100】
次に、図9及び図13に示すように、絶縁層550の上にアルミニウムを主成分とする金属酸化物層555を成膜する(ステップS1006)。
【0101】
金属酸化物層555は、スパッタリング法によって成膜される。金属酸化物層555の成膜によって、絶縁層550に酸素が打ち込まれる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物層は、例えば、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層」とは、金属酸化物層555に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層555全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層555に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層555全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0102】
金属酸化物層555の膜厚は、例えば、5nm以上100nm以下、5nm以上50nm以下、5nm以上30nm以下、又は7nm以上15nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層555として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層555として用いられた酸化アルミニウムは、金属酸化物層555の成膜時に絶縁層550に打ち込まれた酸素が外方へ拡散することを抑制する。
【0103】
例えば、金属酸化物層555をスパッタリング法で形成した場合、金属酸化物層555の膜中にはスパッタリングで用いられたプロセスガスが残存する。例えば、スパッタリングのプロセスガスとしてArが用いられた場合、金属酸化物層555の膜中にはArが残存することがある。残存したArは金属酸化物層555に対するSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析で検出することができる。
【0104】
酸化物半導体層544の上に絶縁層550が成膜され、絶縁層550の上に金属酸化物層555が成膜された状態で、酸化物半導体層544へ酸素を供給するための熱処理(酸化アニール)が行われる(ステップS1007)。
【0105】
酸化物半導体層544が成膜されてから酸化物半導体層544の上に絶縁層550が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層544の上面及び側面には多くの酸素欠陥が発生する。上記の酸化アニールによって、絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層544の上面及び側面に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0106】
上記の酸化アニールにおいて、絶縁層550に打ち込まれた酸素は、金属酸化物層555によってブロックされるため、大気中への放出が抑制される。したがって、ステップS1007で行われる酸化アニールによって、酸素が効率よく酸化物半導体層544に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0107】
次に、図9及び図14に示すように、酸化アニールの後に、金属酸化物層555はエッチング(除去)される(ステップS1008)。金属酸化物層555のエッチングには、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。当該エッチングによって、絶縁層550の全面に形成された金属酸化物層555が除去される。換言すると、金属酸化物層555の除去はマスクを用いずに行われる。さらに換言すると、ステップS1008で行われるエッチングによって、少なくとも平面視において、ある1つのパターンに形成された酸化物半導体層544と重なる領域の全ての金属酸化物層555が除去される。
【0108】
次に、図9及び図15に示すように、絶縁層550の上にゲート電極564)を形成する(ステップS1009)。ゲート電極564は、スパッタリング法又は原子層堆積法によって形成された金属層に対し、パターニングを行うことにより形成される。上記のように、ゲート電極564は、金属酸化物層555が除去されることで露出した絶縁層550と接するように形成される。
【0109】
上記のとおり、ゲート電極564は、図3及び図4に示した走査信号線114に相当する。したがって、図示は省略するが、ゲート電極564を形成する際、走査信号線114として機能する配線パターンも形成されている。
【0110】
ゲート電極564の材料としては、一般的な金属材料が用いられる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物などを用いることができる。ゲート電極564は、上記の材料が単層構造で用いられてもよいし、積層構造で用いられてもよい。
【0111】
次に、図9及び図16に示すように、ゲート電極564が形成された状態で、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544Dが形成される(ステップS1010)。具体的には、イオン注入又はイオンドーピング法によって、ゲート電極564をマスクとして絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入される。ステップS1010では、ゲート電極564で覆われていない酸化物半導体層544の一部に対して、例えば、アルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が注入される。
【0112】
酸化物半導体層544のうち不純物元素が注入された領域は、酸素欠損が形成される。そして、酸素欠損に水素が結合するドナー準位が形成されることにより、導電層として機能し得る程度に低抵抗化される。すなわち、ステップS1010で酸化物半導体層544に不純物元素が注入された結果、ゲート電極564で覆われていない領域には、導電部403b(ソース領域544S及びドレイン領域544D)が形成される。他方、酸化物半導体層544のうち、ゲート電極564で覆われた領域には、チャネル部403a(チャネル領域544CH)が形成される。ゲート電極564がマスクとして機能するため、チャネル部403aには不純物元素は注入されない。導電部403bの抵抗率は、チャネル部403aの抵抗率よりも低い。
【0113】
なお、本実施形態の表示装置100を製造する場合、酸化物半導体層544に不純物が注入されると同時に、上記の酸化物半導体層で構成された配線パターン(映像信号線116として機能する配線パターン)にも不純物が注入される。この不純物注入により、配線パターンは、導電部403bと同一のシート抵抗もしくは電気伝導度を有する酸化物半導体層となる。すなわち、図16に示すプロセスによって酸化物半導体層で構成された映像信号線116が形成される。
【0114】
ただし、映像信号線116として機能する配線パターンの上に走査信号線114が配置された状態で上記のイオン注入が行われると、走査信号線114と重畳する配線パターンには不純物元素が添加されず、配線パターンの低抵抗化を行うことができない。そのため、本実施形態では、半導体装置10を製造するプロセスとは異なる方法で映像信号線116の一部(図3及び図4に示した交差部116a)を形成する。この点については、後述する。
【0115】
本実施形態では、絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入されるため、ソース領域544S及びドレイン領域544Dだけでなく、絶縁層550にもアルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が含まれている。さらに、酸化物半導体層544又は絶縁層550の下方に位置する絶縁層520にもアルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が含まれている。
【0116】
次に、図9及び図17に示すように、絶縁層550及びゲート電極564の上に絶縁層570及び580を成膜する(ステップS1011)。
【0117】
絶縁層570及び580の成膜方法及び絶縁材料は、絶縁層520の説明を参照すればよい。絶縁層570の膜厚は、50nm以上500nm以下である。絶縁層580の膜厚は、50nm以上500nm以下である。本実施形態では、例えば、絶縁層570として窒化シリコン層が形成され、絶縁層580として酸化シリコン層が形成される。本実施形態では、350℃以上400℃以下の成膜温度でプラズマCVD法により絶縁層570及び580を成膜する。
【0118】
次に、図9及び図18に示すように、絶縁層550、絶縁層570及び580にコンタクトホール571及び573を形成する(ステップS1012)。コンタクトホール571によってソース領域544Sが露出され、コンタクトホール573によってドレイン領域544Dが露出される。コンタクトホール571及び573によってソース領域544S及びドレイン領域544Dが露出したら、図5に示したソース電極591及びドレイン電極593を形成する(ステップS1013)。以上のプロセスを経て、図5に示した半導体装置10が完成する。
【0119】
ソース電極591及びドレイン電極593は、例えば、スパッタリング法により成膜される。ソース電極591及びドレイン電極593は、一般的な金属材料を用いて形成することができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物を用いることができる。ソース電極591及びドレイン電極593は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0120】
上記の製造方法で作製した半導体装置10では、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度とは、半導体装置10の飽和領域における電界効果移動度であって、ソース電極とドレイン電極との間の電位差(Vd)が、ゲート電極に供給される電圧(Vg)から半導体装置10の閾値電圧(Vth)を引いた値(Vg-Vth)より大きい領域における電界効果移動度の最大値を意味する。
【0121】
本実施形態の半導体装置10は、ソース領域544S及びドレイン領域544Dを構成する導電部403bの抵抗率が十分に低い。そのため、導電部403bと同一層で構成された酸化物半導体層を、配線(具体的には、映像信号線116)として用いることが可能である。酸化物半導体は、透光性を有するため、本実施形態のように酸化物半導体を配線材料として用いることが可能となれば、表示装置100における表示部110の開口率を向上させる上で非常に有利である。
【0122】
[画素構造の製造方法]
上記のとおり、酸化物半導体層で構成された配線パターンの上に走査信号線114が交差した状態で不純物元素のイオン注入が行われると、走査信号線114がマスクとなって配線パターンに不純物元素が添加されず、配線パターンの一部(交差部)において低抵抗化を行うことができない。そこで、本実施形態では、映像信号線116の交差部116aの低抵抗化を、他の部分とは異なる方法で実現している。以下、画素構造の製造方法について説明する。
【0123】
図19図22は、本発明の一実施形態の表示装置100の製造方法を示す断面図である。具体的には、図19図22は、いずれも図3に示した画素構造をA-A’で切断した断面図に対応する。また、図21及び図22は、説明の便宜のために、各積層構造の拡大図も示している。
【0124】
まず、上記の図9に示したシーケンス図に従って図15に示した状態までプロセスを進める。図19に示すように、絶縁層520の上には、酸化物半導体層544及び544aが形成されている。酸化物半導体層544は、半導体装置10の活性層として機能する。酸化物半導体層544aは、酸化物半導体層544と同一層で構成され、映像信号線116として用いるための配線パターンである。
【0125】
酸化物半導体層544及び544aの上には、それぞれ絶縁層550を介して走査信号線114が形成される。ここで、酸化物半導体層544と重畳する走査信号線114は、半導体装置10のゲート電極として機能する。酸化物半導体層544aと重畳する走査信号線114は、図3に示したように、単に酸化物半導体層544aと交差しているにすぎない。
【0126】
次に、図20に示すように、酸化物半導体層544aを覆うようにレジストマスク566を形成する。レジストマスク566は、後述するイオン注入工程において、酸化物半導体層544aに不純物元素が添加されないようにするために配置される。そのため、酸化物半導体層544aのサイズに対して十分なマージンを確保したサイズで形成することが望ましい。例えば、図20に示すように、レジストマスク566は、酸化物半導体層544aの端部(エッジ)から外側に向かって所定の距離Lだけ離れた範囲まで覆うように配置される。
【0127】
次に、図21に示すように、酸化物半導体層544の一部にイオン注入により不純物元素を添加する。このプロセスは、図9のS1010に対応し、イオン注入の条件等は、図16に示したプロセスと同様である。上記のとおり、不純物元素を添加する過程で酸化物半導体層544には、チャネル部403a及び導電部403bが形成される。このとき、酸化物半導体層544には走査信号線114(ゲート電極)をマスクとして不純物元素が添加されるため、セルフアラインでチャネル部403a及び導電部403bが形成される。
【0128】
なお、絶縁層550では、不純物元素を添加する過程でシリコンと水素との結合が分断され、水素が発生すると考えられる。絶縁層550で発生した水素は、酸化物半導体層544の内部の酸素欠損と結合し、浅いドナー準位を形成する。そのため、導電部403bは、図21に示したプロセスが行われた時点で、低抵抗化されていると考えられる。
【0129】
図21に示す拡大図において、「×」で示される記号は、イオン注入プロセスによって膜内部に形成された欠陥を模式的に示している。図21に示すように、欠陥は、絶縁層520の一部、酸化物半導体層544の一部(導電部403b)、及び絶縁層550の一部に形成される。具体的には、絶縁層520、酸化物半導体層544及び絶縁層550のうち、走査信号線114と重畳する部分には欠陥が形成されず、走査信号線114と重畳しない部分に欠陥が形成される。欠陥の形成は、不純物元素の添加によって発生する。換言すれば、絶縁層520、酸化物半導体層544及び絶縁層550で構成される積層構造のうち、走査信号線114と重畳しない領域(すなわち、欠陥が存在する領域)の各層には不純物元素が含まれ、走査信号線114と重畳する領域の各層には不純物元素が含まれていないと言える。
【0130】
他方、酸化物半導体層544aの上には、レジストマスク566が配置されているため、酸化物半導体層544aには不純物元素が添加されない。したがって、酸化物半導体層544aは、全体的にチャネル部403aと同じ状態(導電部403bに比べて抵抗率が高い状態)が維持され、不純物元素は含まれない。つまり、絶縁層520、酸化物半導体層544a及び絶縁層550で構成される積層構造は、走査信号線114と重畳する領域及び重畳しない領域のいずれの各層にも不純物元素が含まれていないと言える。
【0131】
また、酸化物半導体層544aの端部から外側に向かって所定の範囲内に位置する絶縁層520及び絶縁層550にも不純物元素は含まれない。このように、図21に示すプロセスを行った場合、酸化物半導体層544aの端部から外側に向かって所定の範囲内に位置する絶縁層520及び絶縁層550には不純物元素が含まれないのに対し、酸化物半導体層544の端部から外側に向かって所定の範囲内(所定の距離Lだけ離れた範囲の内側)に位置する絶縁層520及び絶縁層550には不純物元素が含まれる点で、両者の構成は異なっている。
【0132】
次に、図22に示すように、走査信号線114の上に絶縁層570を形成する。上記のとおり、本実施形態では、絶縁層570として窒化シリコン層を形成する。絶縁層570は、プラズマCVD法により成膜温度350℃以上400℃以下で成膜される。通常、プラズマCVD法で成膜した窒化シリコン層には、多くの水素が含まれている。本実施形態では、絶縁層570に含まれる水素を、酸化物半導体層544aの低抵抗化プロセスに利用する。
【0133】
本実施形態の場合、成膜中の温度が350℃以上であるため、窒化シリコン層に含まれる水素は絶縁層520及び絶縁層550を介して拡散する。図22に示す拡大図において、「〇」で示される記号は、絶縁層570から拡散した水素、又はイオン注入プロセスによって絶縁層520もしくは絶縁層550の内部で発生して拡散した水素を示している。
【0134】
図22の拡大図に示すように、酸化物半導体層544の周囲では、絶縁層520及び550に「×」で示される欠陥(主に、シリコンのダングリングボンド)が多数形成されているため、拡散した水素が欠陥と結合してトラップされる。したがって、酸化物半導体層544の周囲に拡散した水素のほとんどは、チャネル部403aまで到達せず、チャネル部403aの水素化による低抵抗化は起こらない。
【0135】
他方、酸化物半導体層544aの周囲では、絶縁層520及び550に欠陥が形成されていないため、拡散した水素は、酸化物半導体層544aの全体に到達する。その結果、酸化物半導体層544aの内部の酸素欠損は拡散してきた水素と結合し、浅いドナー準位を形成する。すなわち、酸化物半導体層544aは、ほぼ全体が水素化され、低抵抗化される。このような過程で低抵抗化した酸化物半導体層544aが、図3に示した交差部116aとして機能する。上記のとおり、酸化物半導体層544aのほぼ全体が水素化されるため、酸化物半導体層544a(すなわち交差部116a)は、走査信号線114と重畳する部分も重畳しない部分も同じ抵抗率であると言える。
【0136】
以上のように、本実施形態では、導電部403bを形成するためのイオン注入プロセスを行う際に、走査信号線114と映像信号線116とが交差する部分(交差部116aに相当する部分)にレジストマスクを配置する。これにより、映像信号線116として利用する配線パターン(酸化物半導体層544a)のうち走査信号線114と重畳する部分を十分に水素化することが可能となり、結果として、交差部116aの低抵抗化を実現することができる。
【0137】
本実施形態では、半導体装置10の活性層として機能する酸化物半導体層544と同一層で映像信号線116を形成する。そのため、映像信号線116の大部分は、半導体装置10のソース領域又はドレイン領域として機能する導電部403bと同一の抵抗率を有する。しかし、本実施形態では、走査信号線114と映像信号線116とが交差する部分に対し、映像信号線116の一部として交差部116aを形成する。交差部116aは、イオン注入により酸化物半導体層を低抵抗化した導電部403bとは異なり、水素化により酸化物半導体層を低抵抗化した部分である。したがって、交差部116aの抵抗率は、チャネル部403aよりも低い。
【0138】
〈第2実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で、映像信号線116のうち走査信号線114と交差する部分を低抵抗化する例について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、図面において同じ符号を用いて説明を省略し、第1実施形態との相違点に着目して説明する。
【0139】
図23図25は、本発明の一実施形態の表示装置100の製造方法を示す断面図である。図23図25において、左側の積層構造は、選択トランジスタ201に含まれる積層構造に対応し、右側の積層構造は、走査信号線114と映像信号線116の交差部に含まれる積層構造に対応する。図24及び図25は、説明の便宜のために、各積層構造の拡大図も示している。
【0140】
まず、第1実施形態の図9に示したシーケンス図に従って図14に示した状態までプロセスを進める。図23に示すように、絶縁層520の上には、酸化物半導体層544及び544aが形成されている。酸化物半導体層544は、選択トランジスタ201の活性層として機能する。酸化物半導体層544aは、酸化物半導体層544と同一層で構成され、映像信号線116として用いるための配線パターンである。
【0141】
その後、絶縁層550の上に、酸化物半導体層544と重畳するレジストマスク552を形成する。本実施形態において、レジストマスク552は、酸化物半導体層544のうち、最終的にチャネル部403aとして機能させたい部分の直上に位置するように位置合わせして配置される。
【0142】
次に、図24に示すように、酸化物半導体層544の一部及び酸化物半導体層544aの全体にイオン注入により不純物元素を添加する。イオン注入の条件等は、第1実施形態で説明した図16に示したプロセスと同様である。上記のとおり、不純物元素を添加する過程で酸化物半導体層544には、チャネル部403a及び導電部403bが形成される。なお、図24の拡大図において、「×」で示される記号は、第1実施形態と同様に、イオン注入プロセスによって膜内部に形成された欠陥を模式的に示している。
【0143】
他方、酸化物半導体層544aの上には、レジストマスク552が配置されていないため、酸化物半導体層544aの全体に不純物元素が添加される。したがって、酸化物半導体層544aは、不純物元素が添加される過程で低抵抗化される。つまり、本実施形態では、映像信号線116の全体が導電部403bと同じ構成(例えば同一の抵抗率)を有する酸化物半導体層で構成される。また、酸化物半導体層544aの全体に不純物元素が添加されるため、酸化物半導体層544aの周囲の絶縁層520及び550にも不純物元素が含まれる。
【0144】
次に、図25に示すように、酸化物半導体層544及び544aと重畳するように走査信号線114を形成する。酸化物半導体層544と重畳する走査信号線114は、チャネル部403aに合わせて配置される。すなわち、チャネル長方向における走査信号線114の幅は、チャネル部403aの幅と一致する、又は、チャネル部403aの幅よりも若干広くなるように設定される。このように走査信号線114を配置することにより、酸化物半導体層544と重畳する走査信号線114を半導体装置10のゲート電極として機能させることができる。
【0145】
その後、走査信号線114の上に絶縁層570を形成する。上記のとおり、本実施形態では、絶縁層570として窒化シリコン層を形成する。第1実施形態と同様に、絶縁層570を成膜する過程で絶縁層520及び550を介して水素が拡散するが、酸化物半導体層544の周囲は、絶縁層520及び550に欠陥が多数形成されているため、拡散した水素がトラップされる。したがって、酸化物半導体層544の周囲に拡散した水素のほとんどは、チャネル部403aまで到達せず、チャネル部403aの水素化による低抵抗化は起こらない。
【0146】
以上のように、本実施形態では、選択トランジスタ201の活性層となる酸化物半導体層544にチャネル部403a及び導電部403bを形成する際、レジストマスク552を用いる。その際、配線パターンである酸化物半導体層544aの上方にはレジストマスク552を配置しないため、酸化物半導体層544aの全体をイオン注入プロセスにより低抵抗化することができる。
【0147】
したがって、図25に示すように、絶縁層520、酸化物半導体層544及び絶縁層550で構成される積層構造のうち、走査信号線114と重畳しない領域(すなわち、欠陥が存在する領域)の各層には不純物元素が含まれ、走査信号線114と重畳する領域の各層には不純物元素が含まれていないと言える。また、絶縁層520、酸化物半導体層544a及び絶縁層550で構成される積層構造は、走査信号線114と重畳する領域及び重畳しない領域のいずれの各層にも不純物元素が含まれていると言える。
【0148】
〈第3実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で、映像信号線116のうち走査信号線114と交差する部分を低抵抗化する例について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、図面において同じ符号を用いて説明を省略し、第1実施形態との相違点に着目して説明する。
【0149】
図26図29は、本発明の一実施形態の表示装置100の製造方法を示す断面図である。図26図29において、左側の積層構造は、選択トランジスタ201に含まれる積層構造に対応し、右側の積層構造は、走査信号線114と映像信号線116の交差部に含まれる積層構造に対応する。図28図29は、説明の便宜のために、各積層構造の拡大図も示している。
【0150】
まず、第1実施形態の図9に示したシーケンス図に従って図14に示した状態までプロセスを進める。図26に示すように、絶縁層520の上には、酸化物半導体層544及び544aが形成されている。酸化物半導体層544は、選択トランジスタ201の活性層として機能する。酸化物半導体層544aは、酸化物半導体層544と同一層で構成され、映像信号線116として用いるための配線パターンである。
【0151】
その後、絶縁層550の上に、酸化物半導体層544と重畳するレジストマスク553を形成する。本実施形態において、レジストマスク553は、酸化物半導体層544の全体を覆うように配置される。ただし、この例に限らず、レジストマスク553は、酸化物半導体層544の一部を覆うように配置されてもよい。ただし、レジストマスク553のチャネル長方向における幅は、最終的にチャネル部403aとして機能する部分の幅(すなわち、走査信号線114の幅)よりも広くしておく。
【0152】
次に、図27に示すように、酸化物半導体層544aの全体にイオン注入により不純物元素を添加する。イオン注入の条件等は、第1実施形態で説明した図16に示したプロセスと同様である。図27の拡大図において、「×」で示される記号は、第1実施形態と同様に、イオン注入プロセスによって膜内部に形成された欠陥を模式的に示している。図27に示すプロセスにおいて、酸化物半導体層544は、全体がレジストマスク553で覆われているため、不純物元素が添加されない。すなわち、酸化物半導体層544は、抵抗率の高い状態が維持される。
【0153】
他方、酸化物半導体層544aの上には、レジストマスク552が配置されていないため、酸化物半導体層544aの全体に不純物元素が添加される。したがって、酸化物半導体層544aは、不純物元素が添加される過程で低抵抗化される。つまり、本実施形態では、映像信号線116の全体が導電部403bと同じ構成(例えば同一の抵抗率)を有する酸化物半導体層で構成される。また、酸化物半導体層544aの全体に不純物元素が添加されるため、酸化物半導体層544aの周囲の絶縁層520及び550にも不純物元素が含まれる。
【0154】
次に、図28に示すように、酸化物半導体層544及び544aと重畳するように走査信号線114を形成し、その後、再びイオン注入により不純物元素を添加する。この場合におけるイオン注入の条件等は、図27に示したプロセスと同様であってもよいし、異なっていてもよい。図28に示すプロセスによって、酸化物半導体層544には、チャネル部403a及び導電部403bが形成される。酸化物半導体層544には走査信号線114(ゲート電極)をマスクとして不純物元素が添加されるため、セルフアラインでチャネル部403a及び導電部403bが形成される。なお、酸化物半導体層544aにも再度不純物元素が添加されるが、既に1回目のイオン注入の際に十分な量の不純物元素が添加されているため、酸化物半導体層544aの抵抗率が大きく変わることはない。
【0155】
次に、図29に示すように、走査信号線114の上に絶縁層570を形成する。本実施形態では、絶縁層570として窒化シリコン層を形成する。第1実施形態と同様に、絶縁層570を成膜する過程で絶縁層520及び550を介して水素が拡散するが、酸化物半導体層544の周囲は、絶縁層520及び550に欠陥が多数形成されているため、拡散した水素がトラップされる。したがって、酸化物半導体層544の周囲に拡散した水素のほとんどは、チャネル部403aまで到達せず、チャネル部403aの水素化による低抵抗化は起こらない。
【0156】
以上のように、本実施形態では、あらかじめ配線パターンである酸化物半導体層544aの全体にイオン注入により不純物元素を添加し、酸化物半導体層544aの全体を低抵抗化する。その後、選択トランジスタ201の活性層となる酸化物半導体層544に、走査信号線114をマスクとして利用してチャネル部403a及び導電部403bを形成する。本実施形態によれば、酸化物半導体層544aの全体を導電部403bで構成しつつ、セルフアラインで選択トランジスタ201の活性層を形成することができる。
【0157】
また、本実施形態によれば、絶縁層520、酸化物半導体層544及び絶縁層550で構成される積層構造における不純物元素の分布と、絶縁層520、酸化物半導体層544a及び絶縁層550で構成される積層構造における不純物元素の分布は、第2実施形態と同じである。
【0158】
〈第4実施形態〉
第1実施形態から第3実施形態では、走査信号線114と映像信号線116とが交差する積層構造において、走査信号線114と重畳する映像信号線116を低抵抗化する例について説明した。しかしながら、第1実施形態から第3実施形態で説明した構成は、酸化物半導体で構成される導電層と他の導電層とが重畳する積層構造であれば、いかなる構造に対しても適用可能である。例えば、第1実施形態から第3実施形態で説明した構成は、容量素子を形成する場合についても適用可能である。
【0159】
図30は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素112の構造を示す断面図である。具体的には、図30は、画素112に配置された選択トランジスタ201及び容量素子202を示している。なお、第1実施形態の図4と同じ構成については、同じ符号で表して説明を省略する。
【0160】
本実施形態において、容量素子202の下部電極202aは、例えば選択トランジスタ201の活性層(酸化物半導体層544)と同一層で構成された酸化物半導体層を用いて形成することができる。図30に示す例では、第1実施形態と同様に、水素化により低抵抗化した酸化物半導体層を下部電極202aとして用いる。容量素子202の絶縁体としては、例えば絶縁層550を用いることができる。容量素子202の上部電極202bは、例えば例えば選択トランジスタ201のゲート電極(走査信号線114)と同一層で構成された金属層を用いて形成することができる。
【0161】
本実施形態では、容量素子202の上部電極202bの直下に位置する酸化物半導体層を十分に低抵抗化することができるため、酸化物半導体層を容量素子202の下部電極202aとして利用することが可能である。この場合、選択トランジスタ201と容量素子202とを接続する導電部403bが可視光に対して透明であるため、画素112内において導電部403bをどのように配置しても開口率の低下を気にする必要がないという利点を有する。
【0162】
〈第5実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態に示す半導体装置10の構成とは異なる構成を有する半導体装置10aについて説明する。
【0163】
本実施形態に係る半導体装置10aの構成は、第1実施形態の半導体装置10と類似しているが、下地となる絶縁層520と酸化物半導体層544との間に金属酸化物層530が設けられている点において、第1実施形態の半導体装置10と相違する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0164】
図31は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの構成を示す断面図である。図31に示すように、半導体装置10aは、絶縁層520、金属酸化物層530、酸化物半導体層544、絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極591、及びドレイン電極593を含む。
【0165】
金属酸化物層530は、絶縁層520の上に設けられている。金属酸化物層530は、絶縁層520に接している。酸化物半導体層544は、金属酸化物層530の上に設けられている。酸化物半導体層544の下面は、金属酸化物層530に接している。本実施形態において、金属酸化物層530の端部と酸化物半導体層544の端部とは略一致している。
【0166】
金属酸化物層530は、金属酸化物層555(図13参照)と同様にアルミニウムを主成分とする金属酸化物を含む層であり、酸素や水素などのガスを遮蔽するガスバリア膜としての機能を備える。金属酸化物層530としては、金属酸化物層555と同様の材料を用いることができるが、異なる材料を用いてもよい。
【0167】
半導体装置10aの平面形状は、図6と同様なので図示を省略するが、平面視において、金属酸化物層530の平面パターンは、酸化物半導体層544の平面パターンと略同一である。図31を参照すると、酸化物半導体層544の下面は金属酸化物層530によって覆われている。特に、本実施形態では、酸化物半導体層544の下面の全てが、金属酸化物層530によって覆われている。
【0168】
酸化物半導体層544におけるインジウムの比率が50%以上であることで、高移動度の半導体装置10aを実現することができる。他方、このような酸化物半導体層544では、酸化物半導体層544に含まれる酸素が還元されやすく、酸化物半導体層544に酸素欠陥が形成されやすい。
【0169】
半導体装置10aのようなトップゲート構造では、製造プロセスの熱処理工程において、酸化物半導体層544よりも基板500側に設けられる層(例えば、絶縁層520)から水素が放出される。そして、下層から放出された水素が酸化物半導体層544に到達することで、酸化物半導体層544に酸素欠陥が発生する場合がある。酸素欠陥の発生は、酸化物半導体層544のパターンサイズが大きいほど顕著である。このような酸素欠陥の発生を抑制するために、酸化物半導体層544の下面への水素の到達を抑制することが好ましい。
【0170】
また、酸化物半導体層544の上面は、酸化物半導体層544が形成された後の工程(例えば、パターニング工程又はエッチング工程)の影響を受ける。一方、酸化物半導体層544の下面は、上記のような影響を受けない。したがって、酸化物半導体層544の上面に形成される酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面に形成される酸素欠陥より多い。つまり、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の膜厚方向に一様な分布で存在しているのではなく、酸化物半導体層544の膜厚方向に不均一な分布で存在している。具体的には、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面側ほど少なく、酸化物半導体層544の上面側ほど多い。
【0171】
上記のように酸素欠陥が分布した酸化物半導体層544に対して、酸化物半導体層544の上面側に形成された酸素欠陥を修復するために必要な量の酸素を一様に供給すると、酸化物半導体層544の下面側には酸素が過剰に供給される。その結果、下面側では、過剰な酸素によって酸素欠陥とは異なる欠陥準位が形成されてしまい、信頼性試験における特性変動、又は電界効果移動度の低下などの現象が発生する虞がある。したがって、このような現象を抑制するためには、酸化物半導体層544の下面側への酸素供給を抑制しつつ、酸化物半導体層544の上面側へ酸素を供給することが望ましい。
【0172】
以上説明したように、第1実施形態の構成及び製造方法では、酸化物半導体層への酸素供給処理によって半導体装置の初期特性が改善されても、信頼性試験による特性変動が発生する虞がある。すなわち、初期特性と信頼性試験との間にはトレードオフの関係があると言える。しかし、本実施形態によれば、酸化物半導体層544の下面に金属酸化物層530を配置することにより、半導体装置10aの良好な初期特性及び信頼性試験を得ることができる。
【0173】
図32図35を用いて、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法について説明する。図32は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示すシーケンス図である。図33図35は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示す断面図である。
【0174】
図32に示すように、基板500の上に絶縁層520が形成される(ステップS2001)。ステップS2001については、図9及び図10に示すステップS1001の説明を参照すればよい。本実施形態では、絶縁層520の材料として、窒化シリコン及び酸化シリコンを用いる。酸化シリコンは、熱処理によって酸素を放出するため、酸化物半導体層544の酸素欠陥を低減する上で好ましい。
【0175】
図32及び図33に示すように、絶縁層520の上に金属酸化物層530及び酸化物半導体層540を形成する(ステップS2002)。金属酸化物層530及び酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0176】
金属酸化物層530の材料は、図13に示した金属酸化物層555の材料の説明を参照すればよい。金属酸化物層530の膜厚は、例えば、1nm以上100nm以下、1nm以上50nm以下、1nm以上30nm以下、又は1nm以上10nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層530として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層530として用いられた酸化アルミニウムは、絶縁層520から放出された水素及び酸素をブロックし、放出された水素及び酸素が酸化物半導体層540に到達することを抑制する。
【0177】
酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む酸化物が用いられる。後述するステップS2004で行われるOSアニールの前の酸化物半導体層540は、アモルファスである。
【0178】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。成膜後の酸化物半導体層540がアモルファスとなる成膜方法については、図9に示したステップS1002の説明を参照すればよい。
【0179】
次に、図32及び図34に示すように、酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS2003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。酸化物半導体層540のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングは、酸性のエッチャントを用いて行うことができる。酸性のエッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0180】
次に、図32に示すように、酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS2004)。本実施形態では、OSアニールによって、酸化物半導体層540が結晶化する。また、結晶化された酸化物半導体層を、酸化物半導体層544と記載する。
【0181】
次に、図32及び図35に示すように、金属酸化物層530のパターンを形成する(ステップS2005)。金属酸化物層530は、結晶化された酸化物半導体層544をマスクとしてエッチングされる。金属酸化物層530のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。結晶化された酸化物半導体層544は、アモルファスの酸化物半導体層540と比較して、希釈フッ酸に対するエッチング耐性を有する。そのため、酸化物半導体層544をマスクとして、自己整合的に金属酸化物層530をエッチングすることができる。これにより、フォトリソグラフィ工程を省略することができる。
【0182】
図32に示すステップS2006~ステップS2014に示す工程は、図9に示すステップS1005~ステップS1013と同様であるため、以降の説明を省略する。ステップS2006~ステップS2014を経ることにより、図31に示した半導体装置10aを形成することができる。
【0183】
上記の製造方法で作製した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が50cm/Vs以上、55cm/Vs以上、又は60cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0184】
〈第6実施形態〉
本実施形態では、第5実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第2実施形態で説明した半導体装置10aと同一であるため、以下の説明では半導体装置10aと記載する。本実施形態では、第5実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0185】
図36は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10aの製造方法を示すシーケンス図である。図36に示すように、本実施形態では、図32に示したステップS2007及びステップS2009の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS2008)を行う。酸化アニールにより、絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層540へと供給され、酸化物半導体層540に含まれる酸素欠陥が修復される。その際における金属酸化物層530の役割は、第5実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0186】
本実施形態の製造方法で作成した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0187】
〈第7実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第1実施形態で説明した半導体装置10と同一であるため、以下の説明では半導体装置10と記載する。本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0188】
図37は、本発明の一実施形態の表示装置100に用いる半導体装置10の製造方法を示すシーケンス図である。図37に示すように、本実施形態では、図9に示したステップS1006及びステップS1008の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS1007)を行う。酸化アニールにより、絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層544へと供給され、酸化物半導体層544に含まれる酸素欠陥が修復される。
【0189】
〈第8実施形態〉
第1実施形態では、表示装置100として液晶表示装置を例に挙げて説明したが、本実施形態では、有機EL表示装置に本発明を適用した例について説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0190】
図38は、本発明の一実施形態の表示装置における画素回路300の構成を示す図である。画素回路300は、各画素112(図1参照)の発光制御を行うための回路である。図38に示す例では、説明の便宜上、2つの半導体装置を用いた基本的な構成を例示するが、この例に限られるものではない。
【0191】
図38に示すように、本実施形態の画素回路300は、駆動トランジスタ301、選択トランジスタ302、保持容量303、及び発光素子304を含む。駆動トランジスタ301及び選択トランジスタ302は、酸化物半導体層を用いた半導体装置(具体的には、薄膜トランジスタ)で構成される。
【0192】
駆動トランジスタ301のソースは、アノード電源線311に接続され、駆動トランジスタ301のドレインは、発光素子304の一端(アノード)に接続されている。発光素子304の他端(カソード)は、共通配線312に接続されている。すなわち、表示期間において、共通配線312は、カソード電源線として機能する。アノード電源線311には、共通配線312よりも高い電源電圧が印加されている。
【0193】
選択トランジスタ302のゲートは、走査信号線114に接続され、選択トランジスタ302のソースは、映像信号線116に接続されている。選択トランジスタ302のドレインは、駆動トランジスタ301のゲートに接続されている。なお、選択トランジスタ302のソース及びドレインは、映像信号線116に印加された電圧と保持容量303に蓄積された電圧との関係によって入れ替わる場合がある。
【0194】
保持容量303は、駆動トランジスタ301のゲート及びドレイン、並びに選択トランジスタ302のドレインに接続されている。映像信号線116には、発光素子304の発光強度を決める階調信号が供給される。走査信号線114には、階調信号を書き込む画素を選択するための走査信号が供給される。
【0195】
以上説明した画素回路300では、選択トランジスタ302を介して映像信号線116から入力された諧調信号(諧調電圧)が保持容量303に保持される。表示期間(発光期間)では、保持容量303に保持された電圧に応じた電流が駆動トランジスタ301を介してアノード電源線311から発光素子304に向かって流れる。本実施形態において、発光素子304は、有機EL素子である。発光素子304は、アノード電極とカソード電極との間を流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0196】
図39は、本発明の一実施形態の表示装置における画素112の構造を示す断面図である。図39に示すように、駆動トランジスタ301は、絶縁層520が設けられた基板500の上に配置される。本実施形態の駆動トランジスタ301は、多結晶構造を有する酸化物半導体層544を含む。駆動トランジスタ301の基本的な構造は、第1実施形態の選択トランジスタ201の構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0197】
絶縁層520の上には、駆動トランジスタ301の酸化物半導体層544と同一層で構成された映像信号線116(具体的には、交差部116a)が設けられている。本実施形態の映像信号線116は、第1実施形態と同様のプロセスで酸化物半導体層を水素化することにより低抵抗化した配線である。
【0198】
駆動トランジスタ301には、発光素子304のアノード電極として機能する画素電極620が設けられている。本実施形態において、画素電極620は、ITO等の透明導電膜と銀等の金属層とを積層した構造を有する。画素電極620の端部は、バンク又はリブと呼ばれる樹脂層810に覆われている。樹脂層810に設けられた開口部815は、画素電極620の表面の一部を露出させる。開口部815によって露出された画素電極620の表面の外形が発光素子304の発光領域を画定させる。
【0199】
開口部815の内側には、発光層820及び共通電極830が設けられる。共通電極830は、発光素子304のカソード電極として機能し、複数の画素112に跨って配置される。他方、画素電極620及び発光層820は、各画素112に対して個別に設けられる。発光層820は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。なお、図39では発光層820のみを図示しているが、発光層820に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などの機能層を設けてもよい。
【0200】
発光素子304の上には、封止層840が設けられる。封止層840は、樹脂材料で構成してもよいが、樹脂材料と無機材料とを組み合わせて構成してもよい。本実施形態の封止層840は、窒化シリコン層で樹脂層を挟んだ三層構造で構成される。封止層840の上には、保護基板850が設けられる。保護基板850としては、ガラス基板等の透光性基板を用いることができる。
【0201】
本発明の実施形態として上記した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0202】
上記した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0203】
10、10a…半導体装置、100…表示装置、100A…回路基板、110…表示部、112…画素、114…走査信号線、116…映像信号線、120…走査側駆動部、130…端子部、140…フレキシブルプリント回路基板、150…表示制御回路、200…画素回路、201…選択トランジスタ、202…容量素子、203…液晶素子、204…共通配線、205…共通電極、300…画素回路、301…駆動トランジスタ、302…選択トランジスタ、303…保持容量、304…発光素子、311…アノード電源線、312…共通配線(カソード電源線)、403a…チャネル部、403b…導電部、500…基板、520…絶縁層、530…金属酸化物層、540、544、544a…酸化物半導体層、544CH…チャネル領域、544D…ドレイン領域、544S…ソース領域、550…絶縁層、555…金属酸化物層、570…絶縁層、571、573…コンタクトホール、580…絶縁層、591…ソース電極、593…ドレイン電極、610…平坦化層、620…画素電極、630…絶縁層、650…液晶層、700…基板、700A…対向基板、710…カラーフィルタ、810…樹脂層、815…開口部、820…発光層、830…共通電極、840…封止層、850…保護基板、1010…第1のエネルギー準位、1020…第2のエネルギー準位、1030…テイル準位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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