(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121244
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】画像形成システム、および、画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240830BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240830BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20240830BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240830BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G06T7/00 610
H04N1/387 110
H04N1/04 106A
H04N1/00 002A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028229
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 将雄
【テーマコード(参考)】
2H270
5C062
5C072
5C076
5L096
【Fターム(参考)】
2H270KA53
2H270LA22
2H270LC06
2H270LC19
2H270LD03
2H270LD14
2H270LD15
2H270MA11
2H270MB11
2H270MB25
2H270MB28
2H270MH11
2H270MH12
2H270ZC03
2H270ZC04
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB22
5C062AB40
5C062AB42
5C062AC02
5C062AC55
5C062AC58
5C062AC67
5C062AF10
5C072AA01
5C072BA04
5C072DA25
5C072EA07
5C072NA01
5C072RA03
5C076AA19
5C076AA23
5C076BA01
5C076BA06
5L096BA03
5L096CA16
5L096DA02
5L096EA13
5L096EA16
5L096FA32
5L096FA60
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】校正処理の簡略化を実現する。
【解決手段】画像形成システム100は、用紙に画像を形成する画像形成装置30と、画像形成装置の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する用紙検査装置20と、画像形成装置の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する画像検査装置40と、画像検査装置で読み取られた校正用チャートのパターンを後段側パターンとし、後段側パターンを用いて基準値を算出し、基準値を用いて用紙検査装置に対して校正処理を行う制御部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する用紙検査装置と、
前記画像形成装置の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する画像検査装置と、
前記画像検査装置で読み取られた校正用チャートのパターンを後段側パターンとし、前記後段側パターンを用いて基準値を算出し、当該基準値を用いて前記用紙検査装置に対して校正処理を行う制御部と、を備える、
画像形成システム。
【請求項2】
前記校正用チャートは、画像の位置、回転、歪み、倍率が判断可能なパターンが印刷されている、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記後段側パターンに対して任意の処理を行うことで正解画像を取得し、前記正解画像から前記基準値を算出する、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記用紙検査装置で読み取られた前記校正用チャートのパターンを前段側パターンとし、
前記制御部は、前記前段側パターンと前記基準値とから、前記用紙検査装置に対して校正処理を行うための校正値を算出する、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記用紙検査装置で読み取られた前記校正用チャートのパターンを前段側パターンとし、
前記制御部は、前記基準値として、前記用紙検査装置の読取手段の傾きによる前記前段側パターンの歪みを補正するための歪み基準値と、前記用紙検査装置の読取手段の読取幅倍率と用紙搬送速度による前記前段側パターンの読取倍率誤差を補正するための倍率基準値と、を生成し、当該歪み基準値と当該倍率基準値とを校正値として用いることで、前記用紙検査装置に対して校正処理を行う、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記用紙検査装置は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有しており、かつ、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、前記用紙のサイズを検出するように構成されており、
前記制御部は、さらに、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の主走査方向の有効画像幅と、副走査方向の画像シフト量と、を校正値として用いることで、前記用紙検査装置に対して校正処理を行う、
請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記用紙検査装置は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有しており、かつ、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、前記用紙のサイズを検出するように構成されており、
前記制御部は、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の合成時に発生する1画素以下の画素の値を補正値として記憶部に保持し、
前記用紙検査装置は、前記2つの読取画像から算出される用紙サイズの値に前記記憶部に保持された補正値を加算することで、前記用紙サイズを検知する、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像形成装置に前記校正用チャートを印刷させることができる、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記画像検査装置は、レンズと撮像素子とを含む縮小光学系の読取部を有しており、かつ、縮小光学系の読取部で読み取られた読取画像から前記用紙に印刷された印刷画像を検査する、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項10】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する用紙検査装置と、前記画像形成装置の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する画像検査装置と、を備える画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法において、
前記用紙検査装置に校正用チャートを読み取らせる前段側チャート読取工程と、
前記画像検査装置に校正用チャートを読み取らせる後段側チャート読取工程と、
前記後段側チャート読取工程で読み取られた前記校正用チャートのパターンを後段側パターンとし、前記後段側パターンを用いて基準値を算出する基準値算出工程と、
前記用紙検査装置で読み取られた前記校正用チャートのパターンを前段側パターンとし、前記前段側パターンと前記基準値とから、前記用紙検査装置に対して校正処理を行うための校正値を算出する校正値算出工程と、を含む、
画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、および、画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙検査装置と、画像形成装置と、画像検査装置と、を有する画像形成システムがある。画像形成システムは、用紙検査装置で印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知し、画像形成装置で画像を用紙に形成(印刷)し、画像検査装置で用紙に形成された画像を検査する。このような画像形成システムでは、工場での製造時や、工場から出荷された後の現地での設置時に、用紙検査装置と画像検査装置に対して校正処理(読取調整処理)が行われる。校正処理は、例えば、特許文献1に記載された記録媒体を用いて行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成システムは、出荷後の現地での設置時に、各装置を組み合わせる際に、装置間でずれが発生する可能性がある。そのため、画像形成システムは、現地で用紙検査装置と画像検査装置との両装置の校正処理を保守員に手動で行わせる。このような画像形成システムは、両装置の校正処理を保守員に行わせるため、保守員に負担を強いており、校正処理が簡単にできることが望まれている。
【0005】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、校正処理の簡略化を実現する画像形成システム、および、画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0007】
(1)画像形成システムであって、用紙に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する用紙検査装置と、前記画像形成装置の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する画像検査装置と、前記画像検査装置で読み取られた校正用チャートのパターンを後段側パターンとし、前記後段側パターンを用いて基準値を算出し、当該基準値を用いて前記用紙検査装置に対して校正処理を行う制御部と、を備える、画像形成システム。
【0008】
(2)前記校正用チャートは、画像の位置、回転、歪み、倍率が判断可能なパターンが印刷されている、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0009】
(3)前記制御部は、前記後段側パターンに対して任意の処理を行うことで正解画像を取得し、前記正解画像から前記基準値を算出する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0010】
(4)前記用紙検査装置で読み取られた前記校正用チャートのパターンを前段側パターンとし、前記制御部は、前記前段側パターンと前記基準値とから、前記用紙検査装置に対して校正処理を行うための校正値を算出する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0011】
(5)前記用紙検査装置で読み取られた前記校正用チャートのパターンを前段側パターンとし、前記制御部は、前記基準値として、前記用紙検査装置の読取手段の傾きによる前記前段側パターンの歪みを補正するための歪み基準値と、前記用紙検査装置の読取手段の読取幅倍率と用紙搬送速度による前記前段側パターンの読取倍率誤差を補正するための倍率基準値と、を生成し、当該歪み基準値と当該倍率基準値とを校正値として用いることで、前記用紙検査装置に対して校正処理を行う、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0012】
(6)前記用紙検査装置は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有しており、かつ、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、前記用紙のサイズを検出するように構成されており、前記制御部は、さらに、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の主走査方向の有効画像幅と、副走査方向の画像シフト量と、を校正値として用いることで、前記用紙検査装置に対して校正処理を行う、上記(5)に記載の画像形成システム。
【0013】
(7)前記用紙検査装置は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有しており、かつ、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、前記用紙のサイズを検出するように構成されており、前記制御部は、前記2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の合成時に発生する1画素以下の画素の値を補正値として記憶部に保持し、前記用紙検査装置は、前記2つの読取画像から算出される用紙サイズの値に前記記憶部に保持された補正値を加算することで、前記用紙サイズを検知する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0014】
(8)前記制御部は、前記画像形成装置に前記校正用チャートを印刷させることができる、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0015】
(9)前記画像検査装置は、レンズと撮像素子とを含む縮小光学系の読取部を有しており、かつ、縮小光学系の読取部で読み取られた読取画像から前記用紙に印刷された印刷画像を検査する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0016】
(10)用紙に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する用紙検査装置と、前記画像形成装置の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する画像検査装置と、を備える画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法において、前記用紙検査装置に校正用チャートを読み取らせる前段側チャート読取工程と、前記画像検査装置に校正用チャートを読み取らせる後段側チャート読取工程と、前記後段側チャート読取工程で読み取られた前記校正用チャートのパターンを後段側パターンとし、前記後段側パターンを用いて基準値を算出する基準値算出工程と、前記前段側パターンと前記基準値とから、前記用紙検査装置に対して校正処理を行うための校正値を算出する校正値算出工程と、を含む、画像形成システムの用紙検査装置に対する校正方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、校正処理の簡略化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略図である。
【
図2A】用紙検査装置に設けられた等倍光学系の読取部の概略図である。
【
図2B】画像検査装置に設けられた縮小光学系の読取部の概略図である。
【
図3A】用紙検査装置における読取処理の説明図(1)である。
【
図3B】用紙検査装置における読取処理の説明図(2)である。
【
図3C】用紙検査装置における読取処理の説明図(3)である。
【
図6】実施形態に係る画像形成システムの校正処理時の動作を示すフローチャートである。
【
図7】後段側読取画像に対する回転処理の説明図である。
【
図8】後段側読取画像に対する倍率補正処理の説明図である。
【
図10】前段側読取画像に対する回転処理の説明図である。
【
図11】前段側読取画像に対する歪み補正処理の説明図である。
【
図12】前段側回転処理画像と前段側歪み補正処理画像に対する倍率補正処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0020】
なお、従来の画像形成システムは、出荷後の現地での設置時に、保守員が専用の治工具を用いて用紙検査装置と画像検査装置との両装置の校正処理を物理的に行う構成のものであった。これに対し、本実施形態は、専用の治工具を用いることなく用紙検査装置と画像検査装置との両装置の校正処理を容易に行うことができる画像形成システムを提供することも意図している。また、本実施形態は、両装置で読取精度を揃え、定量的な補正残差を無くすことができる画像形成システムを提供することも意図している。
【0021】
<画像形成システムの構成>
以下、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成システム100の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成システム100の構成を示す図である。以下の説明では「上流」と「下流」は、用紙の搬送方向を基準にしている。また、「主走査方向」は用紙の搬送方向に対して垂直な方向であり、「副走査方向」は用紙の搬送方向であるものとして説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システム100は、上流側から下流側に向けて順に、給紙装置10と、用紙検査装置20と、画像形成装置30と、画像検査装置40と、排紙装置50と、を備えている。また、画像形成システム100は、画像形成装置30に制御部60を有している。
【0023】
給紙装置10は、用紙検査装置20を介して画像形成装置30に用紙P(記録媒体)を供給する装置である。
用紙検査装置20は、画像形成装置30の前段側に配置され、印刷前の用紙Pを読み取って用紙Pのサイズや形状等を検査する装置である。
画像形成装置30は、画像形成部31で用紙Pに画像を形成する装置である。画像形成装置30は、用紙反転機構(図示せず)で用紙Pの表面と裏面を反転させることで両面に画像を形成するようにしてもよい。
画像検査装置40は、画像形成装置30の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する装置である。
排紙装置50は、画像検査装置40を通過した用紙Pを集積部に排出する装置である。
【0024】
制御部60は、画像形成システム100の動作を制御する構成要素である。制御部60は、任意の処理を実行する演算部61と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部62と、を有している。制御部60は、後記する校正値を記憶部62に保持し、用紙検査装置20で読み取られる読取データ(読取画像)の位置や傾きに対して校正値を適用して読取データ(読取画像)を電子的に画像処理することで、校正処理を行う。
【0025】
なお、
図1に示す例では、制御部60は、画像形成装置30に設けられているが、画像形成装置30以外の装置に設けることができる。また、制御部60は、複数の装置に分散して設けることもできる。例えば、用紙検査装置20と画像形成装置30と画像検査装置40は、個々の制御部を有する構成であってもよい。
【0026】
制御部60は、画像検査装置40から読取データ(読取画像)を取得して、画像検査装置40の読取データ(読取画像)に対して、回転処理(
図7参照)、倍率補正処理(
図8参照)を行う。また、制御部60は、用紙検査装置20から読取データ(読取画像)を取得して、用紙検査装置20の読取データ(読取画像)に対して、回転処理(
図10参照)、倍率補正処理(
図12参照)、画像合成処理(
図13参照)を行う。このような制御部60は、用紙検査装置20から後記する校正用チャート90(
図5参照)の画像(前段側読取画像)を取得するとともに、画像検査装置40から校正用チャート90(
図5参照)の画像(後段側読取画像)を取得する。そして、制御部60は、後段側読取画像、又は後段側読取画像に対して任意の処理を行うことで得られる後段側処理画像を正解画像とし、用紙検査装置20で読み取られた前段側読取画像の位置関係と正解画像の位置関係とが近似する関係になるように、用紙検査装置20で読み取られた前段側読取画像に対して校正処理を行う。
【0027】
画像形成システム100は、印刷前の用紙のサイズ等の検査と印刷後の画像検査をインラインで行う。画像形成システム100は、用紙のサイズ等を検査するための読取手段21(
図2A参照)が用紙検査装置20に設けられ、用紙に印刷された画像を検査するための読取手段41(
図2B参照)が画像検査装置40に設けられている。画像検査装置40の読取手段41(
図2B参照)は、用紙に印刷された画像の検査に用いられるため、用紙検査装置20の読取手段21(
図2A参照)よりも高精度な読取部を用いている。
【0028】
図2Aは、用紙検査装置20に設けられた等倍光学系の読取部21a,21bの概略図である。読取手段21には、例えば、2つの等倍光学系の読取部21a,21bが用いられる。
【0029】
2つの等倍光学系の読取部21a,21bは、それぞれ、用紙を走行させるガラス板26の下方に、密着型イメージセンサが配置された構成になっている。用紙検査装置20は、複数のLED(発光ダイオード)22と長尺な正立等倍レンズ23と複数の受光素子24とライトガイド25とを有している。複数のLED22は、直線状に配置され、ライトガイド25に支持されている。また、正立等倍レンズ23は、数のLED22と平行に配置され、ライトガイド25に支持されている。正立等倍レンズ23の下方には、複数の受光素子24が直線状に配置されている。用紙検査装置20は、LED22を点灯させながらガラス板26の上でスキャン方向A10に沿って用紙を搬送することで、正立等倍レンズ23を介して、用紙で反射した光を受光素子24に導き、用紙の画像を読み取る。つまり、読取手段21は、印刷前の用紙全体を片面側から撮影して、用紙の画像データを作成する。
【0030】
用紙検査装置20は、密着型イメージセンサ(CIS)として構成された主走査方向に並べられた2つの等倍光学系の読取部21a,21bのそれぞれで用紙の画像を読み取ることで2つの読取データ(読取画像)を取得する。そして用紙検査装置20は、読取データ(読取画像)から用紙サイズを検知し、検知結果を画像形成装置30にフィードバックする。
【0031】
また、
図2Bは、画像検査装置40に設けられた縮小光学系の読取部41a,41bの概略図である。読取手段41には、例えば、2つの縮小光学系の読取部41a,41bが設けられている。縮小光学系の読取部41a,41bは、用紙の両面側に一つずつ配置され、用紙の両面に印刷された画像を読み取ることができる。
【0032】
2つの縮小光学系の読取部41a,41bは、それぞれ、任意の位置にレンズ43とCCD(電荷結合素子)イメージセンサ44が配置された構成になっている。画像検査装置40は、用紙を走行させるガラス板46の下方に、光源42とミラー45とを有している。画像検査装置40は、光源42を点灯させながらガラス板46の上でスキャン方向A10に沿って用紙を搬送することで、レンズ43を介して、用紙で反射した光又は用紙とミラー45で反射した光をCCDイメージセンサ44に導き、用紙の画像を読み取る。
【0033】
画像検査装置40は、撮像素子(CCD)とレンズで構成された縮小光学系の読取部41a,41bのそれぞれが単体でレンズ倍率を変えて用紙の画像を読み取ることで読取データ(読取画像)を取得する。そして画像検査装置40は、読取データ(読取画像)から用紙に形成(印刷)された画像の位置や色を検知し、検知結果を画像形成装置30にフィードバックする。
【0034】
係る構成において画像形成システム100は、用紙検査装置20の読取手段21と画像検査装置40の読取手段41にスキャナ装置の撮像素子を用いている。一般的なスキャナ装置で読み取る最大用紙サイズはA3(297mm)である。これに対して、画像形成装置30で印刷する最大用紙サイズは13インチ(330mm)ほどである。そのため、用紙検査装置20では2つの等倍光学系の読取部21a,21bを主走査方向に並べることで、読取幅を広げている。また、画像検査装置40では縮小光学系の読取部41aのレンズ倍率を変えることで、読取幅を広げている。
【0035】
<用紙検査装置における読取処理>
以下、
図3Aから
図3Cを参照して、用紙検査装置20における読取処理について説明する。
図3Aから
図3Cは、それぞれ、用紙検査装置20における読取処理の説明図である。
【0036】
図3Aの左図は側面方向から見た用紙検査装置20の読取手段21の構成を示している。また、
図3Aの右図は上面方向から見た用紙検査装置20の読取手段21の構成を示している。
図3Aの左図に示すように、用紙検査装置20の読取手段21は、2つの等倍光学系の読取部21a,21bの撮像方向が同方向になるように配置されている。また、
図3Aの右図に示すように、用紙検査装置20の読取手段21は、2つの等倍光学系の読取部21a,21bが互い違いで略平行に配置された構成になっている。2つの等倍光学系の読取部21a,21bは、用紙Pの搬送方向A11に対して直交するように配置されている。用紙検査装置20は、2つの等倍光学系の読取部21a,21bで用紙Pに印刷された印刷画像Iを読み取る。
【0037】
なお、本実施形態では、印刷前の用紙を読取手段21によって読み取るので、印刷時には用紙Pに印刷画像Iが印刷されていないが、
図3Bおよび
図3Cでの処理を説明し易くするために印刷画像Iを便宜上示している。なお、詳細は後述するが、用紙検査装置20の校正処理を行う場合に、後記する校正用チャート90(
図5参照)を用紙Pとして用いる。後記する校正用チャート90(
図5参照)は、特定のパターンが印刷された用紙であり、その印刷されたパターンが
図3Aの印刷画像Iに相当する。
【0038】
図3Bは、等倍光学系の読取部21aで読み取った読取領域R1aの中に含まれる用紙Pの読取画像I1aと、等倍光学系の読取部21bで読み取った読取領域R1bの中に含まれる用紙Pの読取画像I1bと、を示している。
図3Cは、
図3Bに示す読取画像I1aと読取画像I1bとを合成することで合成画像I2が生成されることを示している。なお、
図3Cに示す例では、等倍光学系の読取部21aの主走査方向の有効画像幅がW1aとなっており、等倍光学系の読取部21bの主走査方向の有効画像幅がW1bとなっており、等倍光学系の読取部21aと等倍光学系の読取部21bとの副走査方向の画像シフト量がL1bとなっている。合成画像I2は、このような配置関係になるように、読取画像I1aと読取画像I1bとを合成することで、生成される。
【0039】
画像形成システム100では、任意のサイズに裁断された用紙Pが用いられる。しかしながら、
図4に示すように、用紙Pの中には、裁断の精度が低いものがあり、例えば、用紙四辺の長さ、直角度が不揃いなものがある。
図4は、用紙形状の説明図である。
図4の左図は、後端Pbに対して先端Paが傾斜した用紙Pを先端Pa側から搬送する場合の例を示している。また、
図4の右図は、その用紙Pを後端Pb側から搬送する場合の例を示している。画像形成システム100は、このような用紙Pを使用した場合に、傾斜した先端Paの影響により、
図3Cに示すように、用紙検査装置20で読取画像I1aと読取画像I1bとを合成する際に、合成画像I2に歪みが発生する可能性がある。画像形成システム100は、用紙検査装置20で読み取られた読取データ(読取画像)にそのような歪みが発生しないように、校正用チャート90(
図5参照)を用いて、読取データ(読取画像)に対して校正処理を行う。
【0040】
なお、傾斜した先端Paは、読取画像I1aと読取画像I1bとを合成する場合における合成画像I2の歪みの発生だけでなく、例えば、画像形成装置30で両面印刷する場合における表裏見当のずれの発生に影響を与える可能性がある。例えば、画像形成装置30は、用紙Pの両面に画像を形成(印刷)する場合に、表面印刷時と裏面印刷時において用紙Pの先端を検知し、それに同期して用紙Pに画像を形成する。このとき、主走査方向の辺の直角度が正確でないと、表面と裏面で検知する用紙Pに先端の位置及び先端の直角度が異なるため、用紙Pの裁断精度のバラツキが表裏見当に上乗せされ、表裏見当のずれが発生する可能性がある。しかしながら、画像形成システム100は、校正用チャート90(
図5参照)を用いて、読取データ(読取画像)に対して校正処理を行うことで、表裏見当のずれが発生することを抑制することができ、表裏見当の精度を向上することができる。
【0041】
また、画像検査装置40と用紙検査装置20とは、読取精度が一致しないことで、表裏見当のずれが発生する可能性がある。しかしながら、画像形成システム100は、画像検査装置40と用紙検査装置20との読取精度を揃えることで、表裏見当の精度を向上することができる。
【0042】
図5は、校正用チャート90の説明図である。
図5は、一例として、校正用チャート90a,90b,90c,90d,90eの5種類の校正用チャート90を示している。
校正用チャート90aは、格子パターン91が印刷されている用紙である。格子パターン91は、複数の縦線と横線とが等間隔で直交するパターンである。
校正用チャート90bは、複数のトンボパターンが印刷されている用紙である。トンボパターンは、縦線と横線とが十字に直交するパターンである。
校正用チャート90cは、縦線のラダーパターンが印刷されている用紙である。縦線のラダーパターンは、複数の縦線が平行に配置されたパターンである。
校正用チャート90dは、横線のラダーパターンが印刷されている用紙である。横線のラダーパターンは、複数の横線が平行に配置されたパターンである。
校正用チャート90eは、斜線のラダーパターンが印刷されている用紙である。斜線のラダーパターンは、複数の斜線が平行に配置されたパターンである。
【0043】
<画像形成システムの校正処理時の動作>
以下、
図6を参照して、画像形成システム100の校正処理時の動作について説明する。
図6は、画像形成システム100の校正処理時の動作を示すフローチャートである。本実施形態では、画像形成システム100が校正用チャート90aを用いて校正処理を行う場合を想定して説明する。校正用チャート90aにおいて格子パターン91の線と線との間隔やサイズは予め規定されており、これらの間隔情報やサイズ情報が制御部60の記憶部62に保持されている。
【0044】
図6に示すように、画像形成システム100の制御部60は、保守員が操作部(図示せず)から校正モードを選択したことを検知する(ステップS105)。
【0045】
次に、画像形成システム100は、給紙装置10から校正用チャート90aを用紙検査装置20に搬送する(ステップS110)。
【0046】
次に、画像形成システム100の制御部60又は用紙検査装置20は、校正用チャート90aの先端が検知されるまで、用紙検査装置20で校正用チャート90aの先端を検知したか否かを繰り返し判定する(ステップS115)。
【0047】
次に、ステップS115の判定で、校正用チャート90aの先端を検知したと判定された場合(“Yes”の場合)に、画像形成システム100は、用紙検査装置20で校正用チャート90aの読取処理を開始する(ステップS120)。ステップS120の処理は、後記する「前段側チャート読取工程」に相当する。
【0048】
次に、画像形成システム100の制御部60又は用紙検査装置20は、校正用チャート90aの後端が検知されるまで、用紙検査装置20で校正用チャート90aの後端を検知したか否かを繰り返し判定する(ステップS125)。
【0049】
ステップS125の判定で、校正用チャート90aの後端を検知したと判定された場合(“Yes”の場合)に、画像形成システム100は、用紙検査装置20での校正用チャート90aの読取処理を終了し、校正用チャート90aを画像形成装置30に搬送する(ステップS130)。
【0050】
次に、用紙検査装置20は、用紙検査装置20で読み取った読取画像(以下、「前段側読取画像」と称する場合がある)を制御部60に送信する(ステップS135)。
【0051】
次に、画像形成装置30は、印刷動作を行わずに校正用チャート90aを画像検査装置40に搬送する(ステップS140)。
【0052】
次に、画像形成システム100の制御部60又は画像検査装置40は、校正用チャート90aの先端が検知されるまで、画像検査装置40で校正用チャート90aの先端を検知したか否かを繰り返し判定する(ステップS145)。
【0053】
ステップS145の判定で、校正用チャート90aの先端を検知したと判定された場合(“Yes”の場合)に、画像形成システム100は、画像検査装置40で校正用チャート90aの読取処理を開始する(ステップS150)。ステップS150の処理は、後記する「後段側チャート読取工程」に相当する。
【0054】
次に、画像形成システム100の制御部60又は画像検査装置40は、校正用チャート90aの後端が検知されるまで、画像検査装置40で校正用チャート90aの後端を検知したか否かを繰り返し判定する(ステップS155)。
【0055】
ステップS155の判定で、校正用チャート90aの後端を検知したと判定された場合(“Yes”の場合)に、画像形成システム100は、画像検査装置40での校正用チャート90aの読取処理を終了し、校正用チャート90aを排紙装置50に搬送する(ステップS160)。
【0056】
次に、画像検査装置40は、画像検査装置40で読み取った読取画像(以下、「後段側読取画像」と称する場合がある)を制御部60に送信する(ステップS165)。
【0057】
次に、画像形成システム100の制御部60は、後段側読取画像に対して回転処理と副走査方向の変更倍率処理を行い、後段側読取画像である校正用チャート90aのパターン(後段側パターン)から、用紙検査装置20で読み取られた前段読取画像のパターン(以下、「前段側パターン」と称する場合がある)に対する基準値を算出する(ステップS170)。ステップS170の処理は、後記する「基準値算出工程」に相当する。
【0058】
次に、画像形成システム100の制御部60は、前段側読取画像に対して回転処理を行い、校正用チャート90aのパターン(前段側パターン)と基準値から校正値を算出する(ステップS175)。ステップS175の処理は、後記する「校正値算出工程」に相当する。
【0059】
次に、画像形成システム100の制御部60は、校正値を記憶部62に保持する(ステップS180)。
【0060】
次に、画像形成システム100の制御部60は、記憶部62に保持された校正値を用紙検査装置20に対する校正処理に適用する(ステップS185)。
【0061】
ステップS185の後、画像形成システム100は、
図6に示す一連のルーチンの処理を終了する。
【0062】
ただし、ステップS185の処理は、
図6に示す一連のルーチンの処理を終了した後に、任意のタイミングで行う(例えば、画像形成装置30で用紙Pに画像を形成するときに行う)ようにしてもよい。
【0063】
なお、用紙検査装置20で読み取った前段側読取画像のパターン(前段側パターン)ではなく、画像検査装置40で読み取った後段側読取画像のパターン(後段側パターン)を基準値の算出に用いる理由は、画像検査装置40の読取手段41には用紙検査装置20の読取手段21よりも高精度な読取部が用いられているからである。つまり、前記した理由は、後段側読取画像のパターン(後段側パターン)の方が前段側読取画像のパターン(前段側パターン)よりも細密な画像になっているからである。
【0064】
<用紙検査装置の読取データに対する校正処理及び画像合成処理>
図6に示すステップS170において、画像形成システム100は、画像検査装置40で読み取った読取データから校正用チャート90aのサイズ情報を算出して基準値とする。そのための処理として、画像形成システム100は、以下のような処理を行う。
【0065】
(1)まず、画像形成システム100は、校正用チャート90aを通紙し、用紙検査装置20と画像検査装置40で読み取りを行う。この処理は、
図6のステップ120とステップS150の処理である。
【0066】
(2)前記(1)の処理の後、画像形成システム100の制御部60は、画像検査装置40で読み取った読取データから、用紙検査装置20で読み取られた校正用チャートのパターン(前段側パターンる)に対する基準値を算出する。この処理は、
図6のステップ170の処理である。
【0067】
このとき、まず、制御部60は、読取データから校正用チャート90aの用紙辺を検出して回転処理を行うことで、用紙搬送の曲がりを補正する。つまり、校正用チャート90aの用紙辺が水平又は垂直でない場合(つまり、校正用チャート90aが斜めに搬送された場合)に、制御部60は、読取データに対して回転処理を行う。例えば、
図7に示すように、制御部60は、用紙辺が垂直・水平になるように、画像検査装置40で読み取られた読取データである後段側読取画像81に対して回転処理を行う。これにより、制御部60は、後段側回転処理画像82を作成する。
図7は、後段側読取画像に対する回転処理の説明図である。
【0068】
次に、制御部60は、副走査方向の倍率を補正することで、搬送速度の誤差を補正する。例えば、搬送速度が理想値より早いと用紙搬送方向(副走査方向)が縮小され、一方、搬送速度が理想値より遅いと用紙搬送方向(副走査方向)が拡大される。そのため、
図8に示すように、制御部60は、記憶部62に保持された校正用チャート90aの用紙辺の長さ、格子パターン91の長さ、その他(例えば、基準値が予め判っている長さ)に基づいて、画像検査装置40で読み取られた後段側回転処理画像82の格子パターン91(以下、「後段側パターン81a」と称する場合がある)におけるずれ量を求めて、副走査方向の倍率補正(変倍)を行う。これにより、制御部60は、後段側倍率補正処理画像83を作成する。
図8は、後段側読取画像に対する倍率補正処理の説明図である。
【0069】
なお、
図8に示す倍率補正は、初期校正時(製造時)に行うものなので、必ずしも現地で行わなくてもよい。
【0070】
次に、
図9に示すように、制御部60は、後段側倍率補正処理画像83(又は、
図8に示す倍率補正を現地で行わない場合の後段側回転処理画像82)の校正用チャート90aの格子パターン91から基準値を求める。
図9は、基準値の説明図である。
【0071】
このとき、制御部60は、格子パターン91の交点(縦線と横線が交差する重心)の座標を求める。また、後段側倍率補正処理画像83(又は後段側回転処理画像82)を正解画像とし、正解画像における格子パターン91の直角度は読取手段41の読取精度の関係で厳密な直角に対して僅かなずれがあるため、制御部60は、正解画像(後段側倍率補正処理画像83又は後段側回転処理画像82)の任意の領域における格子パターン91の直角度を求めてその平均値を求める。また、制御部60は、正解画像(後段側倍率補正処理画像83又は後段側回転処理画像82)における校正用チャート90aの各辺の長さ及び格子パターン91の各辺の長さを求めてその平均値を求める。
【0072】
(3)前記(2)の処理の後、制御部60は、用紙検査装置20で読み取られた読取データである前段側読取画像71に対して前記(2)の処理で算出された基準値を用いて校正値を算出する。この処理は、
図6のステップ175の処理である。
【0073】
このとき、
図10に示すように、まず、制御部60は、用紙検査装置20で読み取られた読取データである前段側読取画像71に対して基準値を元に回転処理を行うことで、用紙搬送の曲がりを補正する。これにより、制御部60は、前段側回転処理画像72を作成する。
図10は、前段側読取画像に対する回転処理の説明図である。
【0074】
このとき、制御部60は、用紙検査装置20の2つの等倍光学系の読取部21a,21bで読み取られた2つの前段側読取画像71のそれぞれから格子パターン91の交点の座標を求め、縦辺が垂直になるように2つの前段側読取画像71のそれぞれに対して回転処理を行う。なお、このとき、2つの等倍光学系の読取部21a,21bで読み取られた2つの前段側読取画像71を用いるのは、等倍光学系の読取部21a,21bの単体では校正用チャート90aの4辺を読み取れないからである。また、このとき、横辺が水平になるように前段側読取画像71に対して回転処理を行わないのは、前段側読取画像71の中に、
図11に示すような、この後に補正される歪み成分が含まれている可能性があるからである。
【0075】
次に、
図11に示すように、制御部60は、読取位置の傾きを校正することで、基準値を元に歪み補正を行う。
図11は、校正処理の説明図である。
【0076】
密着型イメージセンサである2つの等倍光学系の読取部21a,21bのいずれか一方又は双方の読取位置が理想値に対して傾いていると、
図11に示すように、用紙検査装置20は、校正用チャート90aの画像を台形状に歪んで読んでしまう。そのため、制御部60は、前段側回転処理画像72に対して歪み補正処理を行う。
【0077】
図11に示す例では、等倍光学系の読取部21aの読取位置が理想値に対して傾いており、その結果、校正用チャート90aの左側部分の画像を台形状に歪んで読んでいる。そこで、制御部60は、校正用チャート90aの左側部分の画像(前段側回転処理画像72)に対して歪み補正処理を行う。このとき、制御部60は、前段側回転処理画像72から、格子パターン91の交点の座標と直角度の平均値を求めて、基準値と比較する。次に、制御部60は、基準値に対する交点の座標と直角度の平均値の差分を歪み補正量とし、歪み補正処理を行う。これにより、制御部60は、前段側歪み補正処理画像73を作成する。そして、制御部60は、この歪み補正値を校正値の1つとして記憶部62に保持する。
【0078】
次に、
図12に示すように、制御部60は、副走査方向の倍率を補正することで、搬送速度の誤差を補正する。
図12は、前段側回転処理画像と前段側歪み補正処理画像に対する倍率補正処理の説明図である。
【0079】
このとき、制御部60は、前段側歪み補正処理画像73(又は、前段側回転処理画像72)から、前段側歪み補正処理画像73の格子パターン91(以下、「前段側パターン71a」と称する場合がある)の交点の座標と各辺の長さの平均値を求め、基準値と比べてその差分となる主走査方向と副走査方向の倍率値を算出して、倍率の補正処理を行う。そして、制御部60は、倍率の補正値を校正値の1つとして記憶部62に保持する。
【0080】
(4)前記(3)の処理の後、
図13に示すように、制御部60は、2つの読取データの画像合成する位置を決める。
図13は、画像合成処理の説明図である。
【0081】
このとき、制御部60は、前記(3)の処理で倍率の補正処理を行った2つの読取データ(
図13に示す例では、前段側歪み補正処理画像73と前段側回転処理画像72)に対して、画像合成する位置を決める。その際に、例えば、制御部60は、格子パターン91の交点の座標を元に、1乃至複数の任意の格子パターン91が一致する位置関係を求める。次に、制御部60は、2つの読取データ(
図13に示す例では、前段側歪み補正処理画像73と前段側回転処理画像72)に対して主走査方向の有効画像幅W1a,W1bと副走査方向の画像シフト量L1bを求める。そして、制御部60は、主走査方向の有効画像幅W1a,W1bと副走査方向の画像シフト量L1bを校正値の1つとして記憶部62に保持する。この後、制御部60は、記憶部62に保持された校正値を用いて、前記(3)の処理で倍率の補正処理を行った2つの読取データ(
図13に示す例では、前段側歪み補正処理画像73と前段側回転処理画像72)の合成処理を行う。これにより、制御部60は、合成処理画像74を作成する。
【0082】
なお、制御部60は、画像合成において、補正しきれない1画素以下の値(例えば、「0.5画素」)に関しては補正値として記憶部62に保持し、用紙検査装置20での検査において読取データから算出した値に補正値(例えば、「0.5画素」)を加算するとよい。
【0083】
<画像形成システムの主な特徴>
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システム100は、用紙検査装置20と、画像形成装置30と、画像検査装置40と、制御部60と、を備える。用紙検査装置20は、画像形成装置30の前段側に配置され、印刷前の用紙を読み取って用紙サイズを検知する。画像形成装置30は、用紙に画像を形成する。画像検査装置40は、画像形成装置30の後段側に配置され、用紙に印刷された画像を検査する。制御部60は、用紙検査装置20で読み取られた校正用チャート90(
図5参照)のパターンを前段側パターンとし、画像検査装置40で読み取られた校正用チャート90(
図5参照)のパターンを後段側パターンとし、後段側パターンを用いて基準値を算出する。そして、制御部60は、基準値を用いて用紙検査装置20に対して校正処理を行う。なお、前記した実施形態では、校正用チャート90は校正用チャート90aとなっており、そのパターンは格子パターン91となっている(
図5参照)。
【0084】
このような本実施形態に係る画像形成システム100は、画像検査装置40で読み取った校正用チャート90の読取データを基準にして用紙検査装置20の読取データを電子的に画像処理することで、用紙検査装置20の読取データに対する校正処理を行う。これにより、本実施形態に係る画像形成システム100は、用紙検査装置20と画像検査装置40との両装置の校正処理を容易に行うこと(つまり、校正処理の簡略化を実現すること)ができる。
また、専用の治工具を用いることなく用紙検査装置20と画像検査装置40との両装置の校正処理を容易に行うことができる。
また、用紙検査装置20と画像検査装置40とで読取精度を揃え、定量的な補正残差を無くすことができる。
また、校正用チャート90(
図5参照)を用いて、読取データ(読取画像)に対して校正処理を行うことで、表裏見当のずれが発生することを抑制することができ、表裏見当の精度を向上することができる。
また、画像検査装置40と用紙検査装置20との読取精度を揃えることで、表裏見当の精度を向上することができる。
【0085】
(2)
図5に示すように、本実施形態に係る画像形成システム100において、校正用チャート90は、画像の位置、回転、歪み、倍率が判断可能なパターンが印刷されているとよい。
【0086】
このような本実施形態に係る画像形成システム100は、用紙検査装置20の読取データに対する校正処理を容易に行うことができる。
【0087】
(3)本実施形態に係る画像形成システム100において、制御部60は、後段側パターンに対して任意の処理を行うことで正解画像を取得し、正解画像から基準値を算出するとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0088】
(4)
図6に示すステップS175ように、本実施形態に係る画像形成システム100において、用紙検査装置20で読み取られた校正用チャート90のパターンを前段側パターンとし、制御部60は、前段側パターンと基準値とから、用紙検査装置20に対して校正処理を行うための校正値を算出するとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0089】
(5)本実施形態に係る画像形成システム100において、用紙検査装置20で読み取られた校正用チャート90のパターンを前段側パターンとし、制御部60は、基準値として、用紙検査装置20の読取手段の傾きによる前段側パターンの歪みを補正するための歪み基準値と、用紙検査装置20の読取手段の読取幅倍率と用紙搬送速度による前段側パターンの読取倍率誤差を補正するための倍率基準値と、を生成し、歪み基準値と倍率基準値とを校正値として用いることで、用紙検査装置20に対して校正処理を行うとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0090】
(6)
図3Aに示すように、本実施形態に係る画像形成システム100において、用紙検査装置20は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有している。
図3C及び
図13に示すように、2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、用紙のサイズを検出するように構成されている。
図13に示すように、制御部60は、2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の主走査方向の有効画像幅W1a,W1bと、副走査方向の画像シフト量L1bと、を校正値として用いることで、用紙検査装置20に対して校正処理を行うとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0091】
(7)
図3Aに示すように、本実施形態に係る画像形成システム100において、用紙検査装置20は、一部の読取領域が主走査方向に重なるように互い違いに配置された2つの密着型イメージセンサを読取手段として有している。
図3C及び
図13に示すように、2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像を合成することで、用紙のサイズを検出するように構成されている。制御部60は、2つの密着型イメージセンサで読み取られた2つの読取画像の合成時に発生する1画素以下の画素の値を補正値として記憶部62に保持し、用紙検査装置20は、2つの読取画像から算出される用紙サイズの値に記憶部62に保持された補正値を加算することで、用紙サイズを検知するとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、2つの読取画像から算出される用紙サイズの値に1画素以下の画素の値を補正値として加算することで、用紙検査装置20において、用紙サイズを高精度に検知することができる。
【0092】
(8)本実施形態に係る画像形成システム100において、制御部60は、画像形成装置30に校正用チャート90を印刷させることができるとよい。
【0093】
このような本実施形態に係る画像形成システム100は、保守員が校正用チャート90を持っていかなくても現地で入手して校正処理を行うことができる。そのため、保守員が校正用チャート90を持っていくことを忘れた場合であっても、対応することができる。また、保守員の負担を軽減することができる。
【0094】
(9)本実施形態に係る画像形成システム100において、画像検査装置40は、レンズと撮像素子とを含む縮小光学系の読取手段を有しており、かつ、縮小光学系の読取手段で読み取られた読取画像から用紙に印刷された印刷画像を検査するとよい。このような本実施形態に係る画像形成システム100は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0095】
(10)
図6に示すように、本実施形態に係る画像形成システム100は、以下の用紙検査装置20に対する校正方法を実行する。
すなわち、用紙検査装置20に対する校正方法であって、用紙検査装置20に対する校正方法は、用紙検査装置20に校正用チャート90を読み取らせる前段側チャート読取工程と、画像検査装置40に校正用チャート90を読み取らせる後段側チャート読取工程と、後段側チャート読取工程で読み取られた校正用チャート90のパターンを後段側パターンとし、後段側パターンを用いて基準値を算出する基準値算出工程と、前段側パターンと基準値とから、用紙検査装置20に対して校正処理を行うための校正値を算出する校正値算出工程と、を含む。
【0096】
このような本実施形態に係る用紙検査装置20に対する校正方法は、校正処理の簡略化を実現することができる。
【0097】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0098】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【符号の説明】
【0099】
10 給紙装置
20 用紙検査装置
21,41 読取手段
21a,21b 等倍光学系の読取部(CIS)
22 LED(発光ダイオード)
23 正立等倍レンズ
24 受光素子
25 ライトガイド
26,46 ガラス板
30 画像形成装置
31 画像形成部
40 画像検査装置
41a,41b 縮小光学系の読取部(CCD)
42 光源
43 レンズ
44 CCDイメージセンサ
45 ミラー
50 排紙装置
60 制御部
61 演算部
62 記憶部
71 前段側読取画像
71a 前段側パターン
72 前段側回転処理画像
73 前段側歪み補正処理画像
74 合成処理画像
81 後段側読取画像
81a 後段側パターン
82 後段側回転処理画像
83 後段側倍率補正処理画像
90,90a,90b,90c,90d,90e 校正用チャート
91 格子パターン(パターン)
100 画像形成システム
I 印刷画像
I1a,I1b 読取画像
I2 合成画像
L1b 画像シフト量
P 用紙
Pa 先端
Pb 後端
R1a,R1b 読取領域
W1a,W1b 有効画像幅