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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121245
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20240830BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240830BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240830BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240830BHJP
   H04B 5/00 20240101ALI20240830BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/12
H01F38/14
H01F27/28 K
H04B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028231
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】秋山 美郷
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宏靖
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏章
(72)【発明者】
【氏名】小畑 輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬久
(72)【発明者】
【氏名】北原 真
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】多氣 昌生
【テーマコード(参考)】
5E043
5K012
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5K012AB02
5K012AC06
5K012AE13
(57)【要約】
【課題】複雑な制御や構成になることを抑えて、送電コイルに対して受電コイルの配置がずれている状態において、高い効率で非接触給電を行う非接触給電装置を提供する。
【解決手段】送電側切替部16は、第1受電コイル21および第2受電コイル22の回転角度に応じて、第1送電コイル20および第1受電コイル21に生じる磁界の向きと、第2受電コイル22および第2送電コイル23に生じる磁界の向きと、が所定の向きになるように、第1送電コイル20と第2送電コイル23とに供給される電源電力を制御することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送電コイルおよび第2送電コイルを有する送電側共振器と、
第1受電コイルおよび第2受電コイルを有する受電側共振器と、
を備え、
前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように、前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルを配置させ、前記第1送電コイルと前記第1受電コイルとを共振させるとともに、前記第2送電コイルと前記第2受電コイルとを共振させて、前記送電側共振器から前記受電側共振器に電磁誘導によって電力を伝送させる非接触給電装置であって、
前記送電側共振器には、
前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルに電源電力を供給する送電側切替部が備えられて、
前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルが、前記第1送電コイルの中心軸と前記第2送電コイルの中心軸とを繋いだとき略一直線になるように配置され、
前記受電側共振器には、
前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルが、前記第1受電コイルの中心軸と前記第2受電コイルの中心軸とを繋いだとき略一直線になるように配置され、
前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルの中心軸と、前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルの中心軸と、の間の角度を回転角度としたとき、
前記送電側切替部は、
前記回転角度に応じて、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が所定の向きになるように、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとに供給される前記電源電力を制御する、
ことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
前記送電側切替部は、
前記回転角度が所定範囲内の角度であるとき、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が逆相になるように前記電源電力を制御し、
前記回転角度が前記所定範囲内の角度ではないとき、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が同相になるように前記電源電力を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記送電側切替部は、
前記第1送電コイルに供給する前記電源電力の位相と、
前記第2送電コイルに供給する前記電源電力の位相と、
を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記送電側切替部は、
前記第1送電コイルに供給する前記電源電力の電流の向きと、
前記第2送電コイルに供給する前記電源電力の電流の向きと、
を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、バッテリーを備えた機器に接触することなく給電を行う非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を用いて動作する機器に充電可能なバッテリーを備え、充電器等を直接接触(接続)させることなく、非接触状態で上記のバッテリーに充電電力を供給する技術がある。
非接触状態で電力を伝送する場合には、上記の機器等に設置された受電コイル等と、充電機器等に設置された送電コイル等とを対向配置して近接させ、電磁誘導などを用いて電力を伝送する。
【0003】
本件出願人の発明には、非接触状態において電力の伝送効率を高めるため、例えば、バッテリーを含む給電対象側(受電側の回路)に2つの受電コイルを備え、また、各受電コイルに対向配置される2つの送電コイルを充電器等の電力供給側(送電側の回路)に備えた、即ち、二対の送受電コイルを用いた非接触給電構造がある。この発明は、特開2018-143067号公報(特許文献1)によって開示されている。
【0004】
上記の二対の送受電コイルを備えた構成は、各コイルの中心軸を繋いだとき一本の直線になるように、二対の送受電コイルが配置されている。この構成では、二つの送電コイルの間という限定された空間において、各コイルの中心軸方向で、送電コイルに対して受電コイルの位置ずれが発生しても給電効率に影響がないという特徴がある。
換言すると、二つの送電コイルの間において、給電対象側(受電コイル)が、いずれか一方の送電コイルに偏って配置されても、給電効率には影響がないという特徴がある。
【0005】
また、送電コイルと受電コイルの位置関係が変化しても、非接触給電を可能にしたものがある。
例えば、動力伝達用の回転軸に、複数の面状コイル(受電コイル)を回転円周方向に沿って列状に設置し、機械装置の不動部分に給電コイル(送電コイル)を設置して、機械装置側から回転軸側に非接触給電を行うワイヤレス電力伝送装置等がある(特許文献2)。
この装置は、回転軸が回転している状態において、列状に並んでいる各面状コイルが、順次、給電コイルと対向して電磁結合(電磁誘導)によって電力を取得し、回転軸に備えられている電子回路部等を動作させるように構成されている。回転軸に備えられた電子回路等から出力される信号は、当該回転軸に備えられた通信回路を介して(回転軸と配線接続されていない)制御コンピュータなどにワイヤレスで送信される。
【0006】
例えば、タービンの回転体の周囲に複数の送電アンテナを環状に配置し、各送電アンテナ(送電コイル)にそれぞれ発信器を接続する。また、タービンの回転体には、各送電アンテナから受信した電波を電力に変換する受電モジュール(受電コイル等)と、電力モジュールの出力電力によって駆動される送信機やセンサなどを備え、タービンの周囲からタービンの回転体に電力を供給するワイヤレス給電システム等がある(特許文献3)。
このシステムは、任意の発信器から駆動を開始し、その後、隣の発信器を順次駆動させて各送電アンテナから送信される電波の位相ずれを抑制し、非接触給電の効率を良好にしている。
【0007】
例えば、略直交するように配置された二個の送電側共振器(送電コイル)の間に、これら送電側共振器よりも小型の受電側共振器を移動可能に配置した無線電力伝送装置がある(特許文献4)。
この装置は、90度の位相差をつけた高周波信号(電源電力)を二個の送電側共振器に分配し、これら送電側共振器によって生じる磁界ベクトルを回転させる。このように磁界ベクトルが回転している領域(磁界)内に、受電側共振器を配置させて、非接触給電を行っている。上記のように磁界ベクトルが回転している場合、受電側共振器の向き(回転角度)が変化しても、電力の伝送効率が大幅に低減することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-143067号公報
【特許文献2】特開2016-63683号公報
【特許文献3】特開2017-208888号公報
【特許文献4】特開2013-247718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の非接触給電装置等は上記のように構成されている。特許文献1に開示されている構成では、送電コイルの正面と受電コイルの正面とが正対するように配置されていないと、即ち、送電コイルの中心軸と受電コイルの中心軸とを繋いだとき、一本の直線になるように各コイルが配置されてないと、電力の伝送効率が低下してしまう。
特許文献2に開示されている構成では、多数の受電コイルを回転体に備えることから、受電側の構成が複雑になる。
特許文献3に開示された構成では、多数の送電コイルを環状に配置し、各送電コイルを動作させる発信器を、送電コイルと同じ数だけ備える必要がある。また、多数の発信器の動作を個別に制御する必要がある。即ち、システム(装置全体)の構成や制御が複雑になる。
特許文献4に開示されている構成では、二個の送電側共振器からそれぞれ精度よく位相差が生じている高周波を出力するため、精度の高い制御や複雑な構成が必要になる。
【0010】
本件発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、複雑な制御や構成になることを抑えて、送電コイルに対して受電コイルの配置がずれている状態において、高い効率で非接触給電を行う非接触給電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る非接触給電装置は、第1送電コイルおよび第2送電コイルを有する送電側共振器と、第1受電コイルおよび第2受電コイルを有する受電側共振器と、を備え、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように、前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルを配置させ、前記第1送電コイルと前記第1受電コイルとを共振させるとともに、前記第2送電コイルと前記第2受電コイルとを共振させて、前記送電側共振器から前記受電側共振器に電磁誘導によって電力を伝送させる非接触給電装置であって、前記送電側共振器には、前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルに電源電力を供給する送電側切替部が備えられて、前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルが、前記第1送電コイルの中心軸と前記第2送電コイルの中心軸とを繋いだとき略一直線になるように配置され、前記受電側共振器には、前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルが、前記第1受電コイルの中心軸と前記第2受電コイルの中心軸とを繋いだとき略一直線になるように配置され、前記第1送電コイルおよび前記第2送電コイルの中心軸と、前記第1受電コイルおよび前記第2受電コイルの中心軸と、の間の角度を回転角度としたとき、前記送電側切替部は、前記回転角度に応じて、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が所定の向きになるように、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとに供給される前記電源電力を制御することを特徴とする。
なお、本明細書では、各コイルの中心軸を繋いだときに「一直線」という表現を用いるが、この表現には、本発明を逸脱しない範囲で多少ずれた略一直線の配置が含まれる。
【0012】
また、前記送電側切替部は、前記回転角度が所定範囲内の角度であるとき、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が逆相になるように前記電源電力を制御し、前記回転角度が前記所定範囲内の角度ではないとき、前記第1送電コイルおよび前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと、前記第2受電コイルおよび前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと、が同相になるように前記電源電力を制御することを特徴とする。
【0013】
また、前記送電側切替部は、前記第1送電コイルに供給する前記電源電力の位相と、前記第2送電コイルに供給する前記電源電力の位相と、を制御することを特徴とする。
【0014】
また、前記送電側切替部は、前記第1送電コイルに供給する前記電源電力の電流の向きと、前記第2送電コイルに供給する前記電源電力の電流の向きと、を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、複雑な制御や構成になることを抑えて、送電コイルに対して受電コイルの配置がずれている状態でも、高い効率で非接触給電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態による非接触給電装置の概略構成を示す説明図である。
図2図1の非接触給電装置に備えられた各コイルによって生じる磁界を示す説明図である。
図3】挟み込み構造型タイプAにおける磁力線の形状を示す説明図である。
図4】挟み込み構造型タイプDにおける磁力線の形状を示す説明図である。
図5】電磁界解析に用いた、第1送電コイル、第1受電コイル、第2受電コイルおよび第2送電コイルの解析モデルを示す説明図である。
図6】各コイル間の距離を設定するための解析結果を示す説明図である。
図7】第1送電コイルおよび第2送電コイルに対して第1受電コイルおよび第2受電コイルを回転させた状態を示す説明図である。
図8】電磁界解析結果から求めた電力伝送効率を示す説明図である。
図9】解析モデルの、第1送電コイル、第1受電コイル、第2受電コイル、第2送電コイルを実際に製作し、回転角度が0度等の状態における電力伝送効率を実測するときに用いた装置の一部分を示す説明図である。
図10】解析モデルの、第1送電コイル、第1受電コイル、第2受電コイル、第2送電コイルを実際に製作し、回転角度が90度の状態における電力伝送効率を実測するときに用いた装置の一部分を示す説明図である。
図11】挟み込み構造型タイプAおよび挟み込み構造型タイプDの、電力伝送効率の実測値と解析値とを示す説明図である。
図12】送受電コイルの位置ずれに関する第1解析パターンを示す説明図である。
図13】第1解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。
図14】送受電コイルの位置ずれに関する第2解析パターンを示す説明図である。
図15】第2解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。
図16】従来型の送受電コイルの位置ずれに関する第3解析パターンを示す説明図である。
図17】第3解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。
図18】第1~第3解析パターンにおける各解析結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
[実施形態]
図1は、本開示の実施形態による非接触給電装置の概略構成を示す説明図である。
この非接触給電装置は、例えば装置本体に備えられる送電側共振器12と、給電対象の機器に備えられる受電側共振器13とを有する。
送電側共振器12は、第1送電コイル20と第2送電コイル23とを備え、受電側共振器13は、第1受電コイル21と第2受電コイル22とを備えている。
第1送電コイル20および第2送電コイル23を有する送電側共振器12、ならびに、第1受電コイル21および第2受電コイル22を有する受電側共振器13は、これらのコイルが同一の周波数で共振するように、例えば、図示されないコンデンサ等を備えて回路構成されている。
【0018】
送電側共振器12は、第1送電コイル20および第2送電コイル23に電力を供給する電源10を備え、例えば、第1送電コイル20、第2送電コイル23、電源10の各間の接続を切替える送電側切替部16を備えている。
電源10は、第1送電コイル20および第2送電コイル23に磁界を発生させる、例えば、所定周波数(ワイヤレス電力伝送が可能な高周波)の交流電力を生成、出力するように構成されている。
送電側切替部16は、例えば、スイッチング素子や位相器などを備え、第1送電コイル20が発生する磁界の向きと第2送電コイル23が発生する磁界の向きとが同じ向き(同相)、または、2つの磁界の向きが相互に対向する(逆相になる)ように切り替える構成を備えている。
受電側切替部15も同様に、第1受電コイル21、第2受電コイル22に生じる磁界の向きを切り替える構成を備えているが、以下、送電側切替部16を例に説明する。
【0019】
具体的には、電源10から、第1送電コイル20に供給する交流電力と、第2送電コイル23に供給する交流電力の位相を、同相または逆相となるように切替え制御するように、例えば位相器を備えて構成されている。
または、電源10から、第1送電コイル20に供給する電流(例えば直流のパルス電流)の向きと、第2送電コイル23に供給する電流(例えば直流のパルス電流)の向きが逆になるように(上記の各電流の向き、即ち、電流の正負極性を切替るように)、例えば、スイッチ素子等を備えて送電側切替部16を構成してもよい。
【0020】
受電側共振器13は、前述の給電対象の機器に備えられる負荷14に接続されており、第1受電コイル21および第2受電コイル22から負荷14に電力供給を行うように回路構成されている。
また、受電側共振器13は、第1受電コイル21および第2受電コイル22と負荷14との接続を制御する、即ち、第1受電コイル21、第2受電コイル22、負荷14の各接続を切り替える受電側切替部15を備えている。
受電側切替部15は、例えば、負荷14が充電可能なバッテリーである場合、第1受電コイル21および第2受電コイル22から供給される電力を所定の値の直流電力に調整し、この直流電力を負荷14の所定の電極に供給する受電回路等を備えて構成されている。
なお、負荷14が、第1受電コイル21および第2受電コイル22に発生した電圧を直接入力することができるように構成されている場合には、受電側切替部15を備えることなく受電側共振器13を構成してもよい。
【0021】
次に動作について説明する。
図2は、図1の非接触給電装置に備えられた各コイルによって生じる磁界を示す説明図である。
例えば、図2において、(a)従来型として示したように、一対の送電コイル30および受電コイル31を用いて非接触給電を行う場合、送電コイル30に生じる磁界の向きと受電コイル31に生じる磁界の向きが同じ方向になるように、送電コイル30および受電コイル31を配置する。このとき、送電コイル30の中心軸と受電コイル31の中心軸は、X軸上において重なり、一直線になる。
このように配置された送電コイル30および受電コイル31が非接触給電を行っているときには、これらコイルの周囲に磁力線201が生じる。なお、図2では、1本の磁力線201のみを示しているが、非接触給電を行っているときには、X軸を中心軸にして各コイルの周囲を囲むように磁力線201が生じる。
【0022】
この実施形態で説明する非接触給電装置は、図2(b)および(c)のように、二対の送受電コイルを備えており、前述の図1のように、送電側共振器12に第1送電コイル20および第2送電コイル23を有し、受電側共振器13に第1受電コイル21および第2受電コイル22を備えている。
送電側共振器12と受電側共振器13との間で非接触給電を行う場合、第1送電コイル20と第2送電コイル23との間に、第1受電コイル21および第2受電コイル22が挟み込まれるように配置される。
ここでは、上記のように各コイルが配置される態様(前述の特願2018-143067号公報に開示された各送受電コイルの配置)を挟み込み構造型と称呼する。
【0023】
また、ここでは、図2(b)のように、挟み込み構造型のうち、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の各コイルに生じる磁界の向きが同じ(ここでは、この磁界の向きを第1の磁界の向きと称呼する)、即ち、全てのコイルが同相になるように、これら各コイルを配置した態様を、挟み込み構造型タイプAと称呼する。
また、ここでは、図2(c)のように、挟み込み構造型のうち、第1送電コイル20および第1受電コイル21に生じる磁界の向きが同じ(第1の磁界の向き)で、第2受電コイル22および第2送電コイル23に生じる磁界の向きが同じ(ここでは、この磁界の向きを第2の磁界の向きと称呼する)であり、第1の磁界の向きと、第2の磁界の向きが対向するように、これら各コイルを配置した態様を、挟み込み構造型タイプDと称呼する。
換言すると、挟み込み構造型タイプDは、第1送電コイル20および第1受電コイル21の一対と、第2受電コイル22および第2送電コイル23の一対が逆相になるように配置されている。
【0024】
この実施形態による非接触給電装置は、挟み込み構造型タイプAと、挟み込み構造型タイプDと、のどちらの態様においても、第1送電コイル20と第1受電コイル21とを共振させて電磁誘導を生じさせ、また、第2送電コイル23と第2受電コイル22とを共振させて電磁誘導を生じさせ、送電側共振器12と受電側共振器13とを電磁結合させて、送電側共振器12から受電側共振器13に電力を伝送する。
なお、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23を全て同じ所定周波数で共振するように構成し、送電側共振器12と受電側共振器13とが電磁結合するように構成することも可能である。
【0025】
挟み込み構造型タイプAは、図2(b)に示したように、各コイルの中心軸が一直線になるように(X軸に重なるように)各コイルが並んでいる状態では、電磁結合している第1送電コイル20および第1受電コイル21の周囲に磁力線101が生じる。また、電磁結合している第2送電コイル23および第2受電コイル22の周囲に磁力線102が生じる。
【0026】
また、第1送電コイル20および第1受電コイル21の周囲に磁力線101が生じているとき、上記のように並んでいる第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の周囲には磁力線103が生じる。
また、第2送電コイル23および第2受電コイル22の周囲に磁力線102が生じているとき、上記のように並んでいる第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の周囲には磁力線104が生じる。
【0027】
図3は、挟み込み構造型タイプAにおける磁力線の形状を示す説明図である。
図2(b)に示した状態の挟み込み構造型タイプAは、前述のように全てのコイルが同相になることから、磁力線101、磁力線102、磁力線103および磁力線104は、同一方向に作用するように生じ、各コイルの中心軸がX軸に重なって一直線になっている状態においては、例えば、図3に示したように、磁力線101、磁力線102、磁力線103および磁力線104が混在する形状の磁力線が生じる。
【0028】
挟み込み構造型タイプDは、図2(c)に示したように、各コイルの中心軸が一直線になるように(X軸に重なるように)各コイルが並んでいる状態では、電磁結合している第1送電コイル20および第1受電コイル21の周囲に磁力線111が生じる。また、電磁結合している第2送電コイル23および第2受電コイル22の周囲に磁力線112が生じる。
【0029】
また、第1送電コイル20および第1受電コイル21の周囲に磁力線111が生じているとき、上記のように並んでいる第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の周囲に磁力線113が生じる。
また、第2送電コイル23および第2受電コイル22の周囲に磁力線112が生じているとき、上記のように並んでいる第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の周囲に磁力線114が生じる。
【0030】
図4は、挟み込み構造型タイプDにおける磁力線の形状を示す説明図である。
図2に示した状態の挟み込み構造型タイプDは、第1送電コイル20および第1受電コイル21の一対と、第2受電コイル22および第2送電コイル23の一対と、が逆相になることから、磁力線111と磁力線112は逆向きに(相互に反発するように)生じ、磁力線113および磁力線114は、作用方向が対向するものになる。
【0031】
上記のように生じる磁力線111、磁力線112、磁力線113および磁力線114は、実際には、各コイルの中心軸がX軸に重なって一直線になっている状態において、第1受電コイル21と第2受電コイル22との間で分かれた磁力線になって存在する。
即ち、逆相になるように設置された第1受電コイル21と第2受電コイル22との間に磁力線の境界が生じる。換言すると、第1受電コイル21と第2受電コイル22との間において対称になる形状の磁力線が生じる。挟み込み構造型タイプDの各コイルによって生じる磁力線は、例えば、図4に示した形状になる。
【0032】
図3および図4は、例えば、X軸上において並んでいる第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23をモデリングし、任意の電磁界解析ソフトウェアを用いて解析した結果(磁界配位)を示したものである。この電磁界解析ソフトウェアを用いて、図2(a)に示した従来型の磁界配位を解析すると、挟み込み構造型タイプAと同様な結果が得られた。
【0033】
図5は、上記の電磁界解析に用いた、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22および第2送電コイル23の解析モデルを示す説明図である。
上記の電磁界解析ソフトウェアによって解析を行うとき、図5に示したように、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の各直径を200[mm]、第1送電コイル20と第1受電コイル21との間隔を60[mm]、第1受電コイル21と第2受電コイル22との間隔を120[mm]、第2受電コイル22と第2送電コイル23との間隔を60[mm]としてモデリングを行った。
【0034】
また、第1送電コイル20および第2送電コイル23に対して、第1受電コイル21および第2受電コイル22が回転して配置された状態の電力伝送効率を、上記解析モデルを解析することによって得られた、各送受電コイル間の相互インダクタンスを用いて算出した。
ここでは、上記の電力伝送効率をηとし、次の式(1)を用いて算出した。
【0035】
【数1】
【0036】
式(1)において、Mtrans(θ)は後述する回転角度θの関数であり、図1に示した回路、即ち、送電側共振器12(第1送電コイル20および第2送電コイル23を含む回路)および受電側共振器13(第1受電コイル21および第2受電コイル22を含む回路)が有する相互インダクタンスの合計である。
式(1)のRは、送電側共振器12の回路における等価直列抵抗値である。また、式(1)のRは、受電側共振器13の回路における等価直列抵抗値である。また、式(1)のRは、負荷14が有している抵抗値である。また、式(1)のθは、後述する回転角度θである。
【0037】
なお、上記の第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の各間隔は、上記の電磁界解析ソフトウェアを用いて最適な距離を求めた。
図6は、各コイル間の距離を設定するための解析結果を示す説明図である。この図6は、縦軸が電力伝送の効率を表し、横軸が受電コイルの回転角度を表すグラフである。
ここでは、例えば、各コイルを挟み込み構造型タイプDのように配置し、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23の各間隔について、80-80-80[mm]、60-120-60[mm]、60-140-60[mm]、80-150-80[mm]、40-200-40[mm]、60-200-60[mm]の各間隔パターンを設定し、各間隔パターンの電力伝送効率を求めた。
このように電力伝送効率を求めておき、例えば、回転角度90[度]において電力伝送効率が最も良好になった60-120-60[mm]の間隔パターンを選択し、上記解析モデルの各コイル間の距離として設定した。
【0038】
図7は、第1送電コイル20および第2送電コイル23に対して第1受電コイル21および第2受電コイル22を回転させた状態を示す説明図である。
ここで、第1送電コイル20および第2送電コイル23に対する第1受電コイル21および第2受電コイル22の回転角度を、図7に示したθのように定義する。
第1送電コイル20と第2送電コイル23は、これらコイルの中心軸を繋いだとき一本の直線になるように配置されている。また、第1受電コイル21と第2受電コイル22は、これらコイルの中心軸を繋いだとき一本の直線になるように配置されている。
回転角度θは、第1送電コイル20および第2送電コイル23の中心軸と、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸との間に挟まれた角度である。
【0039】
なお、図7に示した各コイルの配置は、図示したX軸およびY軸の原点を、上記の2つの中心軸が通過する状態である。詳しくは、第1送電コイル20および第2送電コイル23の中心軸がX軸に重なり、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸が、X軸およびY軸の原点を通過している。即ち、第1受電コイル21および第2受電コイル22(これら受電コイルの中心軸)の回転中心が、上記X軸およびY軸の原点になっている。
即ち、図7に示した配置は、回転角度θが0[度]の場合、第1送電コイル20および第2送電コイル23の中心軸と、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸とが重なり合う状態であり、第1送電コイル20および第2送電コイル23の位置と、第1受電コイル21および第2受電コイル22の位置にずれが生じていない状態を表している。
【0040】
図8は、電磁界解析結果から求めた電力伝送効率を示す説明図である。図8の横軸は、前述の回転角度θを表し、縦軸は、送電側共振器12から受電側共振器13に電磁誘導を用いて電力を伝送させる際の効率(電力伝送効率η)を表している。
図8は、モデリングされた挟み込み構造型タイプAの各コイルについて、各回転角度θの電力伝送効率ηを算出し、また、モデリングされた挟み込み構造型タイプDの各コイルについて、各回転角度θの電力伝送効率ηを算出し、これらの算出結果をグラフに示したものである。
【0041】
図8に示された算出結果から、挟み込み構造型タイプAは、各送受電コイルが正対する状態になる、回転角度θが0度、ならびに、180度において、高い効率(図8では80%以上)で電力伝送ができることがわかる。
また、挟み込み構造型タイプAは、第1送電コイル20および第2送電コイル23に対する第1受電コイル21および第2受電コイル22の回転角度θが、上記の正対した状態から変化すると電力伝送効率ηが低下する。第1送電コイル20および第2送電コイル23に対して、第1受電コイル21および第2受電コイル22が直交する状態、即ち、回転角度θが90度、もしくはその近傍になると、電力伝送効率ηが極めて小さい値(図8では10%未満)になり、電力の伝送(非接触給電)ができなくなることが確認された。
【0042】
これに対して、挟み込み構造型タイプDは、図8の算出結果において、回転角度θがほぼ55度、ならびに、ほぼ125度において電力伝送効率ηが極めて小さい値になり、電力の伝送(非接触給電)ができなくなり、回転角度θが90度の場合には、回転角度θが0度の場合とほぼ同様な電力伝送効率ηになる(可能性がある)ことが確認された。
また、この挟み込み構造型タイプDでは、前述のように第1受電コイル21と第2受電コイル22との間を境界として、磁力線が対称な形状になる。
そのため、挟み込み構造型タイプDは、回転角度θが90度を中心として、0度から180度の範囲内で、電力伝送効率ηの値が対称になる特性を有していることがわかり、図8においても回転角度θが90度の場合を中心として、電力伝送効率ηの値が対称になることが示されている。
【0043】
上記の解析結果を確認するため、次のように電力伝送効率ηの実測を行った。
図9は、解析モデルの、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23を実際に製作し、回転角度θが0度等の状態における電力伝送効率ηを実測するときに用いた装置の一部分を示す説明図である。
また、図10は、解析モデルの、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23を実際に製作し、回転角度θが90度の状態における電力伝送効率ηを実測するときに用いた装置の一部分を示す説明図である。
図9に示されている各送受電コイルは、前述の解析モデルと同じ径を有し、また、解析モデルと同じ間隔を空けて配置されている。また、図10に示されている各送受電コイルは、図9に示した各送受電コイルのうち、二つの受電コイルを90度回転させたものである。
【0044】
図11は、挟み込み構造型タイプAおよび挟み込み構造型タイプDの、電力伝送効率ηの実測値と解析値とを示す説明図である。
図11の縦軸は電力伝送効率ηを表し、横軸は回転角度θを表している。なお、図11には、挟み込み構造型タイプAおよび挟み込み構造型タイプDの、電力伝送効率ηの実測値を実線で示し、実測値の比較対象として、図8に示した挟み込み構造型タイプAおよび挟み込み構造型タイプDの各解析値、即ち、前述の解析ソフトウェアによる解析結果から算出した電力伝送効率ηを破線で示している。
【0045】
なお、図9には、第1送電コイルおよび第2送電コイルと、回転角度θが0度(180度)の第1受電コイルおよび第2受電コイルとを示し、図10には、第1送電コイルおよび第2送電コイルと、回転角度θが90度の第1受電コイルおよび第2受電コイルとを示しているが、他の回転角度θにおいて、それぞれ第1受電コイルおよび第2受電コイルの設置を変化させて電力伝送効率ηの実測値を計測している。
【0046】
図11に示したように、解析結果から算出した電力伝送効率ηと、各受電コイルの回転角度θを変化させて計測した電力伝送効率ηの実測値は十分に一致している。
上記のように解析値と実測値とが一致することから、第1送電コイル20および第1受電コイル21に生じる磁界の向きと、第2受電コイル22および第2送電コイル23に生じる磁界の向きとを切替え制御することにより、即ち、挟み込み構造型タイプAと挟み込み構造型タイプDとを電力伝送効率が高い方に切替えることにより、回転角度θが0度から180度の範囲内においてどのような角度でも、従来型の非接触給電装置と比べて十分高い効率(図11では50%以上)で電力を伝送することが可能になることが確認された。
【0047】
例えば、回転角度θが60度以上、120度未満の範囲内の角度であれば、挟み込み構造型タイプDとなるように、第1送電コイル20に供給する電源電力(位相、または、電流の向き)と、第2送電コイル23に供給する電源電力(位相、または、電流の向き)とを、送電側切替部16が制御し、回転角度θが0度以上、60度未満の範囲内、ならびに、120度以上、180度以下の範囲内の角度であれば、挟み込み構造型タイプAとなるように、上記の電源電力を制御する。
【0048】
次に、送受電コイルの配置位置に、ずれが生じた場合の伝送効率を解析した結果を説明する。ここで説明する解析は、任意の第1~第3の各解析パターンを設定して、送電コイルと受電コイルとの位置ずれが電力伝送効率にどのように影響するかを解析したものである。
【0049】
(第1解析パターン)
図12は、第1送電コイル20および第2送電コイル23と、第1受電コイル21および第2受電コイル22との位置ずれに関する第1解析パターンを示す説明図である。
第1解析パターンは、挟み込み構造型タイプAの各コイルの配置位置にずれが生じた場合、どのように電力伝送効率に影響するかを解析するための各構成、設定等を定めている。
ここでは、第1解析パターンとして、図12の図中、右上側に示したように、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23を配置し、これらのコイルが挟み込み構造型タイプAとなるように回路接続(図示省略)している。このように配置(および回路接続)した上記の送受電コイルについて、図12の図中、右下側に示した回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における上記送受電コイル間の電力伝送効率を求めた。
【0050】
ここでは、図12の右下側に示した状態、即ち、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に0[mm]ずれている(位置ずれしていない)状態を「TypeA_X0Y0」と称呼する。
また、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に10[mm]、Y軸方向に0[mm]ずれている状態を「TypeA_X10Y0」と称呼する。
また、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「TypeA_X0Y40」と称呼する。
また、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に10[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「TypeA_X10Y40」と称呼する。
【0051】
第1解析パターンでは、送受電コイルの位置ずれがない状態、即ち、TypeA_X0Y0の状態において、回転角度θ=0~90[度]の範囲内において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
また、第1解析パターンでは、TypeA_X10Y0の状態において、0~90[度]の範囲内において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
また、第1解析パターンでは、TypeA_X0Y40の状態において、0~90[度]の範囲内において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
また、第1解析パターンでは、TypeA_X10Y40の状態において、0~90[度]の範囲内において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
なお、ここでは、各コイルの直径200[mm]の20[%]を、位置ずれの限界(送電コイルと受電コイルの物理的干渉による限界)として、Y軸方向のずれを最大で40[mm]として解析を行った。
【0052】
図13は、第1解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。この図13は、縦軸が電力伝送の効率を表し、横軸が回転角度θの角度を表すグラフであり、TypeA_X0Y0、TypeA_X10Y0、TypeA_X0Y40、TypeA_X10Y40の各状態において得られた電力伝送効率の値(挟み込み構造型タイプAにおけるXY位置ずれ時の効率-角度特性)をグラフ曲線で表している。
図13に示した解析結果から、回転角度θが0~40[度]の範囲、および、80~90[度]の範囲においては、上記の各状態の電力伝送効率に大きな差異が生じていない。即ち、電力伝送効率に対する、X軸、Y軸の各方向における位置ずれの影響は少ないことがわかる。
【0053】
(第2解析パターン)
図14は、第1送電コイル20および第2送電コイル23と、第1受電コイル21および第2受電コイル22との位置ずれに関する第2解析パターンを示す説明図である。
第2解析パターンは、挟み込み構造型タイプDの各コイルの配置位置にずれが生じた場合、どのように電力伝送効率に影響するかを解析するための各構成、設定等を定めている。
ここでは、第2解析パターンとして、図14の図中、右上側に示したように、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22、第2送電コイル23を配置し、これらのコイルが挟み込み構造型タイプDとなるように回路接続(図示省略)している。このように配置(および回路接続)した上記の送受電コイルについて、図14の図中、右下側に示した回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における上記送受電コイル間の電力伝送効率を求めた。
【0054】
ここでは、図14の右下側に示した状態、即ち、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に0[mm]ずれている(位置ずれが生じていない)状態を「TypeD_X0Y0」と称呼する。
また、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「TypeD_X0Y40」と称呼する。
また、第1受電コイル21および第2受電コイル22の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に10[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「TypeD_X10Y40」と称呼する。
第2解析パターンでは、TypeD_X0Y0、TypeD_X0Y40、TypeD_X10Y40の各状態において、回転角度θ=0~90[度]の範囲内において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
なお、ここでは、第1解析パターンと同様に、Y軸方向のずれを最大で40[mm]として解析を行った。
【0055】
図15は、第2解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。この図15は、縦軸が電力伝送の効率を表し、横軸が回転角度θの角度を表すグラフであり、TypeD_X0Y0、TypeD_X0Y40、TypeD_X10Y40の各状態において得られた電力伝送効率の値(挟み込み構造型タイプDにおけるXY位置ずれ時の効率-角度特性)をグラフ曲線で表している。
図15に示した解析結果から、回転角度θが0~30[度]の範囲、および、70~90[度]の範囲においては、上記の各状態の電力伝送効率に大きな差異が生じていない。即ち、電力伝送効率に対する、X軸、Y軸の各方向における位置ずれの影響は少ないことがわかる。
【0056】
(第3解析パターン)
図16は、従来型の非接触給電装置として図2(a)に示した送電コイル30と、受電コイル31との位置ずれに関する第3解析パターンを示す説明図である。
第3解析パターンは、1対の送受電コイルからなる従来型の非接触給電装置において、各コイルの配置位置にずれが生じた場合、どのように電力伝送効率に影響するかを解析するための各構成、設定等を定めている。
ここでは、第3解析パターンとして、図16の図中、右側に示したように、送電コイル30、受電コイル31を配置し、これらのコイル間で非接触給電が行われるように回路接続(図示省略)している。このように配置(および回路接続)した上記の送受電コイルについて、図16の図中、右側に示した回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における上記送受電コイル間の電力伝送効率を求めた。
【0057】
ここでは、図16の右側に示した状態、即ち、受電コイル31の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に0[mm]ずれている(位置ずれが生じていない)状態、即ち、X軸および送電コイル30の中心軸に重なっている状態を「one_pair_X0Y0」と称呼する。
また、受電コイル31の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に10[mm]、Y軸方向に0[mm]ずれている状態を「one_pair_X10Y0」と称呼する。
また、受電コイル31の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に0[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「one_pair_X0Y40」と称呼する。
また、受電コイル31の中心軸(回転中心の位置)が、X軸方向に10[mm]、Y軸方向に40[mm]ずれている状態を「one_pair_X10Y40」と称呼する。
【0058】
第3解析パターンでは、one_pair_X0Y0、one_pair_X10Y0、one_pair_X0Y40、one_pair_X10Y40の各状態において、0~90[度]の範囲において10[度]刻みで回転角度θを変化させ、各回転角度θの値における電力伝送効率を求めた。
なお、ここでは、前述の第1送電コイル20、第1受電コイル21等と同様な大きさに形成された、送電コイル30、受電コイル31の直径200[mm]の20[%]を、位置ずれの限界(送電コイルと受電コイルの物理的干渉による限界)として、Y軸方向のずれを最大で40[mm]として解析を行った。
また、送電コイル30と受電コイル31の距離は60[mm]、受電コイル31の中心からX軸とY軸の原点までの距離は60[mm]とした。
【0059】
図17は、第3解析パターンにおける解析結果を示す説明図である。この図17は、縦軸が電力伝送の効率を表し、横軸が回転角度θの角度を表すグラフであり、one_pair_X0Y0、one_pair_X10Y0、one_pair_X0Y40、one_pair_X10Y40の各状態において得られた電力伝送効率の値(従来型(送受電コイル1対)におけるXY位置ずれ時の効率-角度特性)をグラフ曲線で表している。
図17に示した解析結果から、回転角度θが0~40[度]の範囲では、位置ずれによって電力伝送効率に及ぼす影響は少ないが、回転角度θが70~90[度]の範囲においては、位置ずれによって電力伝送効率に大きな影響が生じることがわかる。
【0060】
ここで、第1~第3解析パターンで得られた各解析結果を比較する。
図18は、第1~第3解析パターンにおける各解析結果を示す説明図である。この図18は、縦軸が電力伝送の効率を表し、横軸が回転角度θの角度を表すグラフであり、図13のTypeA_X10Y40の状態において得られた電力伝送効率の値を示すグラフ曲線、図15のTypeD_X10Y40の状態において得られた電力伝送効率の値を示すグラフ曲線、および、図17のone_pair_X10Y40の状態において得られた電力伝送効率の値を示すグラフ曲線を同一グラフ上に示したものである。
換言すると、図18は、従来型(1対の送受電コイル)、挟み込み構造型タイプA、挟み込み構造型タイプDの、X=10[mm]、Y=40[mm]位置ずれ時の効率-角度特性を示したものである。
【0061】
図18に示した解析結果から、受電コイルの中心軸(回転中心)が、送電コイルの中心軸から位置ずれしている状態においても、挟み込み構造型タイプAと、挟み込み構造型タイプDとを組み合わせ、それぞれのタイプにおいて効率が低下する回転角度θの範囲を補うようにすると、従来型では電力伝送が低下、もしくは電力伝送ができない角度でも安定して高い電力伝送効率(図18では40%以上)を維持できることがわかる。
具体的には、挟み込み構造型タイプDよりも挟み込み構造型タイプAが効率の良い回転角度θの範囲(例えば、約40[度]~約60[度])においては、挟み込み構造型タイプAを使用し、挟み込み構造型タイプAよりも挟み込み構造型タイプDが効率の良い回転角度θの範囲(例えば、60[度]よりも大きな角度)においては、挟み込み構造型タイプDを使用すると、各回転角度θにおいて良好な電力伝送効率を維持することができる。
【0062】
以上の解析結果から、受電コイルの中心軸(回転中心)が、送電コイルの中心軸から位置ずれしている状態、ならびに、位置ずれしていない状態においても、挟み込み構造型タイプAと、挟み込み構造型タイプDとを組み合わせ、それぞれのタイプにおいて効率が低下する回転角度θの範囲を補うようにすると、安定して高い電力伝送効率を維持できることがわかる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、第1送電コイル20に供給する電源電力(位相、または、電流の向き)と第2送電コイル23に供給する電源電力(位相、または、電流の向き)とを制御し、第1送電コイル20および第1受電コイル21に生じる磁界の向きと、第2受電コイル22および第2送電コイル23に生じる磁界の向きとを、回転角度θに応じて切替えることにより、回転角度θが0度から180度までの間において、十分な高効率で非接触給電を行うことができる。
【0064】
本発明の用途としては、例えば、ロボット本体に備えるバッテリーの充電容量が不足する状態になると、当該ロボット本体が充電設備を設置した場所へ移動する自走式ロボットの充電装置等が考えられる。
【0065】
本発明の非接触給電装置は、前述のように回転角度θの大きさによって、挟み込み構造型タイプAと、挟み込み構造型タイプDのいずれかが適当になる(電力伝送効率が良好になる)場合がある。
そこで、本発明の非接触給電装置に、例えば、第1受電コイル21および第2受電コイル22の回転角度θを検出する角度検出機構を備えることが好ましい。
上記の角度検出機構を備える場合には、例えば、図1に示した送電側共振器12、または、受電側共振器13に当該角度検出機構を備える。この角度検出機構から出力される角度検出信号(回転角度θの値を示す信号)等は、例えば、送電側切替部16に入力される。
上記の角度検出信号等を入力した送電側切替部16は、回転角度θの値に応じて第1送電コイル20および第2送電コイル23に発生する磁界の向きが、挟み込み構造型タイプAまたは挟み込み構造型タイプDとなるように、第1送電コイル20および第2送電コイル23に供給する電流の向きを切り替え制御する。また、受電側切替部15に上記角度検出信号等を入力し、受電側切替部15が、第1受電コイル21および第2受電コイル22に発生する磁界の向きが、挟み込み構造型タイプAまたは挟み込み構造型タイプDとなるように、第1受電コイル21、第2受電コイル22および負荷14の各接続を切り替える。
【0066】
また、本発明の非接触給電装置は、上記の角度検出機構を、送電側共振器12と受電側共振器13の双方に備え、各角度検出機構の出力信号を用いて、送電側切替部16、受電側切替部15が、それぞれ上記のように各コイルに供給する電流や各コイルの接続等を切り替え制御するように構成してもよい。
【0067】
また、上記の角度検出機構を備えずに、充電開始前に、送電側切替部16が第1送電コイル20および第2送電コイル23に供給する電流の向きを切り替え制御し、また、受電側切替部15が第1受電コイル21および第2受電コイル22等の接続を切り替え制御して、各送受電コイルの磁界の向きについて、挟み込み構造型タイプAと挟み込み構造型タイプDの両方を順次試す。この後、送電側切替部16および受電側切替部15は、電力伝送効率が良いタイプ(磁界の向き)を選択して、挟み込み構造型タイプAまたは挟み込み構造型タイプDのいずれかとなるように、各コイルに供給する電流の向き、各コイルの接続等を制御して電力伝送を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 電源
12 送電側共振器
13 受電側共振器
14 負荷
15 受電側切替部
16 送電側切替部
20 第1送電コイル
21 第1受電コイル
22 第2受電コイル
23 第2送電コイル
30 送電コイル
31 受電コイル
101 磁力線
102 磁力線
103 磁力線
104 磁力線
111 磁力線
112 磁力線
113 磁力線
114 磁力線
201 磁力線
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