(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121247
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】シングル葺き屋根用外装部材取付金具及び同屋根の外装部材設置工法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20240830BHJP
E04D 13/10 20060101ALI20240830BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240830BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
E04D13/00 K ETD
E04D13/10 B
E04D13/18
H02S20/23 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028236
(22)【出願日】2023-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】523069533
【氏名又は名称】有限会社入山屋根工事店
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】入 山 徹
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM04
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】アスファルトシングル材やファイバーグラスシングル材と称される可撓性の屋根板Aを、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根に、外装部材を設置する金具を提供する。
【解決手段】前方を屋根板Aの厚みで折り返して屈曲した上下装着板2.3からなるベース部と、上装着板の上面に設けた外装部材取付部4とを備え、上装着板2を後方に突出させ、突出部21に後方釘孔22を形成すると共に、外装部材取付部4を尾根板露出部分と対応する前方範囲に設け、下装着板3の前方範囲に前方釘孔31を設けると共に、上装着板における前方釘孔31に対応する位置に、釘打設を可能とする作業用透孔23を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根に使用する金具で、
前方を屋根板の厚みで折り返して屈曲した上下装着板からなるベース部と、上装着板の上面に設けた外装部材取付部とを備え、
上装着板が屋根板の露出部分の長さより後方に突出させ、前記突出部分適宜数か所に後方釘孔を形成すると共に、外装部材取付部を尾根板露出部分と対応する前方範囲に設け、
下装着板における屋根板露出部分と対応する前方範囲の適宜数か所に前方釘孔を設けると共に、上装着板における前記前方釘孔に対応する位置に、釘打設を可能とする作業用透孔を設けてなるシングル葺き屋根用外装部材取付金具。
【請求項2】
外装部材取付部を、作業用透孔を兼ねる調整長孔とし、前記調整長孔に装着したボルト棒とした請求項1記載のシングル葺き屋根用外装部材取付金具。
【請求項3】
可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根の屋根葺き施工時において、
請求項1記載の金具を、
外装部材を設置するのに必要な箇所の各屋根板の下縁対応位置に、前記屋根板を葺く前に前方釘孔を使用して釘着し、
しかる後前記屋根板を上下装着板の間に差し入れて屋根葺きを行い、
後方釘孔を使用して前記屋根板上面に釘着して金具の屋根面に固定し、
次段の屋根板で後方釘孔箇所を覆って次段屋根板葺きを行い、
屋根面に固定した各金具の外装部材取付部を使用して所望の外装部材を設置してなるシングル葺き屋根の外装部材設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根葺きをアスファルトシングル材やファイバーグラスシングル材を使用した屋根において使用される外装部材取付金具及び前記金具を使用した外装部材の設置工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根上に雪止め部材や太陽光モジュール等の外装部材の設置は、屋根面上に固着した取付金具に、当該外装部材を装着することで行われている。本発明は、アスファルトシングル材やファイバーグラスシングル材のような板状物(屋根板)を、軒先側の面を露出させるように順次棟方向に重ね合わせて屋根下地に固定するシングル葺き屋根を対象とする。
【0003】
前記の屋根に適用される取付金具の屋根装着構造(固定手段として)は、屋根板の軒先側端縁部を挟持する装着手段(特許文献1)、下方屋根板の軒先側端縁部に金具先端を係止し、上方屋根板の軒先側端を挟持する装着手段(特許文献2)、金具ベース部分を上方屋根板の下面で釘着し、上方屋根板から軒先側に突出する部分に前記の上方屋根板の軒先側端縁部に係合する係合部を設けて装着する手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-58210号公報
図10。
【特許文献2】特開2018-71091号公報
図3。
【特許文献3】特開2002-21258号公報
図6。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の対象とする屋根は、可撓性材質のアスファルトシングル材やファイバーグラスシングル材を屋根葺き材(屋根板)として使用しており、直接釘など以て固定した場合、当該箇所の水仕舞処置が煩瑣であり、露出した屋根板部分は、その軒先側端縁の裏面を下層屋根板(下段屋根板)に接着剤で固定しているが、特許文献1,2記載のように屋根板の軒先側端縁部を挟持する構造を採用した場合、外装部材によっては当該箇所への負担が大きくなり耐久性に問題が生ずる。
【0006】
また釘着と屋根板の軒先側端縁部の係合は、挟持による固定を必要としないので、十分な耐久性は認められるが、外装部材の負荷(外装部材に対する積雪や風の影響)が、当該係合屋根板の軒先端縁部に対しての捲れ方向(引きはがし方向)に加わった場合の耐久性(浮き上がり)が懸念される。
【0007】
そこで本発明は、取付金具の屋根装着の堅牢性を実現し、金具装着屋根板の捲れ事故が生じないようにした新規のシングル葺き屋根用外装部材取付金具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシングル葺き屋根用外装部材取付金具は、可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根に使用する金具で、前方を屋根板の厚みで折り返して屈曲した上下装着板からなるベース部と、上装着板の上面に設けた外装部材取付部とを備え、上装着板が屋根板の露出部分の長さより後方に突出させ、前記突出部分適宜数か所に後方釘孔を形成すると共に、外装部材取付部を屋根板露出部分と対応する前方範囲に設け、下装着板における尾根板露出部分と対応する前方範囲の適宜数か所に前方釘孔を設けると共に、上装着板における前記前方釘孔に対応する位置に、釘打設を可能とする作業用透孔を設けてなる。
【0009】
また本発明に係るシングル葺き屋根の外装部材設置工法は、上記した金具を使用するもので、可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行う屋根葺き施工時において、外装部材を設置するのに必要な箇所の各屋根板(設置屋根板:以下「中段屋根板」という)の下縁対応位置に、前記屋根板を葺く前に前方釘孔を使用して下段屋根板に釘着し、しかる後中段屋根板を上下装着板の間に差し入れて、当該中段屋根板の屋根葺きを行い、中段屋根板上に後方釘孔を使用して釘着して金具の屋根面に固定する。次に次段の屋根板で後方釘孔箇所を覆って次段屋根板葺きを行い、屋根面に固定した各金具の外装部材取付部を使用して所望の外装部材を設置するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成は上記のとおりで、上下装着板の各々を釘着で固定され、金具設置屋根板はその端縁を金具で係合されており、設置された外装部材の負荷によって当該屋根板が捲れ上がることもなく堅牢に金具が屋根面に固定され、且つ釘着部分の表面は全て屋根板で被覆されることになり、水仕舞の作業を必要とせず、金具装着作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について説明する。本発明の対象となる屋根は、アスファルトシングル材やファイバーグラスシングル材と称される可撓性の屋根板Aを屋根下地(一般的には屋根下地板に防水紙を敷設している)Bに、屋根板Aの一部(軒先側)を露出させながら順次重ね合わせ、釘着や接着で屋根下地Bに固定して屋根葺きを行っている。
【0013】
本発明の金具は、ベース部に適宜な外装部材取付部を設けているもので、ベース部は一端(前方)を屋根板Aの厚みで折り返して屈曲(屈曲部1)した上下装着板2,3からなる。上装着板2は、屋根板Aの露出部分の長さより後方に突出させ、前記突出部21に後方釘孔22を適宜数設け、下装着板3は、尾根板露出部分と対応する前方範囲に前方釘孔31を適宜数設けている。
【0014】
また特に上装着板2における前記前方釘孔31に対応する位置(上方位置)に、釘打設を可能とする作業用透孔23を設けてなる。
【0015】
実施形態に示した外装部材取付部4は、上装着板2の前後方向に形成した調整長孔41と、前記調整長孔41に固定可能としたボルト棒42からなる。ボルト棒42は調整長孔41の裏面に配置した頭部と、ボルト棒42に螺合した固定ナット43からなり、固定ナット43の緊締によってボルト棒42を固定する。
【0016】
次に前記金具の屋根への取付作業について説明する。金具の取付は
図2に示すように屋根板Aを、軒先から屋根板Aの一部を露出させながら順次重ね合わせていく屋根葺き施工時において、外装部材を設置するのに必要な箇所の各屋根板(中段屋根板A1)の下縁と対応位置に金具の屈曲部1の位置を合わせ、中段屋根板A1を葺く前に下段屋根板A2上に、前方釘孔31を使用して下段屋根板A2に釘着する。前記の釘着作業は、上装着板2の調整長孔41(作業用透孔23と兼用)を通して行う。
【0017】
金具を下段屋根板A2に釘着した後、中段屋根板A1を上下装着板の間に差し入れて、通常通りの中段屋根板A1の屋根葺きを行う。中段屋根板A1の屋根葺きを終えると、中段屋根板A1上若しくは中段屋根板A1の後方に位置している突出部21の後方釘孔22を使用して釘着して金具の屋根板Aに固定する。前記の金具の取付作業を終えると、上段屋根板(次段屋根板)A3の屋根葺きを実施するもので、上段屋根板A3は、金具の突出部21部分を覆うように屋根葺きがなされるものである。
【0018】
屋根面の所望位置に金具を固定すると、各金具の外装部材取付部4を利用して、例えば
図3に例示すように太陽光発電モジュールC1や、
図4に例示するように雪止め部材(雪止めアングル装着部材)C2を屋根面上に設置するものである。
【0019】
また本発明の外装部材取付部4は、
図5に示すようにボルト棒42以外にも、例えばボルト孔44を備える連結板部45で形成した外装部材取付部4aのように、外装部材を取り付け可能であれば、任意の構造を採用できるものである。
【符号の説明】
【0020】
A 屋根板
A1 中段屋根板
A2 下段屋根板
A3 上段屋根板(次段屋根板)
C1 太陽光発電モジュール
C2 雪止め部材
C1 太陽光モジュール
C2 雪止め部材
1 屈曲部
2 上装着板
21 突出部
22 後方釘孔
23 作業用透孔
3 下装着板
31 前方釘孔
4,4a 外装部材取付部
41 調整長孔
42 ボルト棒
43 固定ナット
44 ボルト孔
45 連結板部
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の軒先側の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根に使用する金具で、
前方を屋根板の厚みで折り返して屈曲した上下装着板からなるベース部と、上装着板の上面に設けた外装部材取付部とを備え、
上装着板を屋根板の露出部分の長さより後方に突出させ、前記突出部分適宜数か所に後方釘孔を形成し、下装着板における屋根板露出部分の長さと対応する前方範囲内の適宜数か所に前方釘孔を設けると共に、上装着板における前記前方釘孔に対応する位置に、釘打設を可能とする作業用透孔を設け、外装部材取付部をボルト棒とし、前記作業用透孔を兼ねる調整長孔に装着してなるシングル葺き屋根用外装部材取付金具。
【請求項2】
可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の軒先側の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根の屋根葺き施工時において、
請求項1記載の金具を、
外装部材を設置するのに必要な箇所の各屋根板の軒先側の下縁対応位置に、前記屋根板を葺く前に前方釘孔を使用して釘着し、
しかる後前記屋根板を上下装着板の間に差し入れて屋根葺きを行い、
後方釘孔を使用して前記屋根板上面に釘着して金具を屋根面に固定し、
次段の屋根板で後方釘孔箇所を覆って次段屋根板葺きを行い、
屋根面に固定した各金具の外装部材取付部を使用して所望の外装部材を設置してなるシングル葺き屋根の外装部材設置工法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係るシングル葺き屋根用外装部材取付金具は、可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の軒先側の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行うシングル葺き屋根に使用する金具で、前方を屋根板の厚みで折り返して屈曲した上下装着板からなるベース部と、上装着板の上面に設けた外装部材取付部とを備え、上装着板を屋根板の露出部分の長さより後方に突出させ、前記突出部分適宜数か所に後方釘孔を形成し、下装着板における屋根板露出部分の長さと対応する前方範囲内の適宜数か所に前方釘孔を設けると共に、上装着板における前記前方釘孔に対応する位置に、釘打設を可能とする作業用透孔を設け、外装部材取付部をボルト棒とし、前記作業用透孔を兼ねる調整長孔に装着してなる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また本発明に係るシングル葺き屋根の外装部材設置工法は、上記した金具を使用するもので、可撓性板状の屋根板を、軒先から屋根板の一部を露出させながら順次重ね合わせて屋根葺きを行う屋根葺き施工時において、外装部材を設置するのに必要な箇所の各屋根板(設置屋根板:以下「中段屋根板」という)の下縁対応位置に、前記屋根板を葺く前に前方釘孔を使用して下段屋根板に釘着し、しかる後中段屋根板を上下装着板の間に差し入れて、当該中段屋根板の屋根葺きを行い、中段屋根板上に後方釘孔を使用して釘着して金具を屋根面に固定する。次に次段の屋根板で後方釘孔箇所を覆って次段屋根板葺きを行い、屋根面に固定した各金具の外装部材取付部を使用して所望の外装部材を設置するものである。