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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121251
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】雨樋および雨樋の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/064 20060101AFI20240830BHJP
   E04D 13/072 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E04D13/064 501P
E04D13/072 501F
E04D13/064 501M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028244
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】細谷 卓人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慶昌
(57)【要約】
【課題】本発明は、雨樋および雨樋の支持構造の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、底板と、該底板の幅方向両端から立ち上がる側板と、を有する樋部材と、前記樋部材に一部が埋設された補強シートと、を備え、前記側板の上端部に、該側板の外側に前記側板と一体的に延出する頂部と、該頂部の先端部から前記側板と離間し前記側板に沿って下方に一体的に延出する側部と、該側部の下端部から前記側板に向かって一体的に延在し前記側板に一体化された底部と、を具備する耳部が形成され、前記補強シートが、前記側板の内部に埋設された側板補強シートと、前記側板の上端部に位置する前記側板補強シートから一体的に延出されて前記頂部を補強した頂部補強シートと、前記頂部補強シートから一体的に延出されて前記側部を補強した側部補強シートを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、該底板の幅方向両端から立ち上がる側板と、を有する樋部材と、
前記樋部材に一部が埋設された補強シートと、を備え、
前記側板の上端部に、該側板の外側に前記側板と一体的に延出する頂部と、該頂部の先端部から前記側板と離間し前記側板に沿って下方に一体的に延出する側部と、該側部の下端部から前記側板に向かって一体的に延在し前記側板に一体化された底部と、を具備する耳部が形成され、
前記補強シートが、前記側板の内部に埋設された側板補強シートと、前記側板の上端部に位置する前記側板補強シートから一体的に延出されて前記頂部に沿って設けられた頂部補強シートと、前記頂部補強シートから一体的に延出されて前記側部に沿って設けられた側部補強シートを具備することを特徴とする雨樋。
【請求項2】
前記側板補強シートが前記側板の厚さ方向内部側に埋設された、
請求項1に記載の雨樋。
【請求項3】
前記側板補強シートが前記耳部の内側において前記側板の側面に沿って延在された、
請求項1または請求項2に記載の雨樋。
【請求項4】
前記頂部補強シートが前記耳部の内側において前記頂部の下面に沿って延在され、前記側部補強シートが前記耳部の内側において前記側部の内面に沿って延在された、
請求項1または請求項2に記載の雨樋。
【請求項5】
底板と、該底板の幅方向両端から立ち上がる側板と、を有する樋部材と、
前記樋部材に一部が埋設された補強シートと、を備え、
前記側板の上端部に、該側板の外側に前記側板と一体的に延出する頂部と、該頂部の先端部から前記側板と離間し前記側板に沿って下方に一体的に延出する側部と、該側部の下端部から前記側板に向かって一体的に延在し前記側板に一体化された底部と、を具備する耳部が形成され、
前記補強シートが、前記側板の内部に埋設された側板補強シートと、前記側板の上端部に位置する前記側板補強シートから一体的に延出されて前記頂部に沿って設けられた頂部補強シートと、前記頂部補強シートから一体的に延出されて前記側部に沿って設けられた側部補強シートを具備した雨樋が、
建物の軒先に支持され、前記底板に接して前記雨樋を支持する雨樋支持具により支持された、
雨樋の支持構造。
【請求項6】
前記側板補強シートが前記側板の厚さ方向内部側に埋設された、
請求項5に記載の雨樋の支持構造。
【請求項7】
前記側板補強シートが前記耳部の内側において前記側板の側面に沿って延在された、
請求項5または請求項6に記載の雨樋の支持構造。
【請求項8】
前記頂部補強シートが前記耳部の内側において前記頂部の下面に沿って延在され、前記側部補強シートが前記耳部の内側において前記側部の内面に沿って延在された、
請求項5または請求項6に記載の雨樋の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋および雨樋の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、雨樋は天候等の影響を受け易い軒先に設置され、温度変化や風雨等にさらされているため、劣化や変形を生じ易い。また、雨樋は蛇行や湾曲等の変形が生じ易いため、蛇行や湾曲等の変形を発生し難くする高強度のものが提案されている。
【0003】
また、雨樋において合成樹脂製の樋本体の内部に補強シートを埋設し、雨樋の剛性を向上させ、現場にて切断可能とした雨樋も知られている。この種の雨樋は、底板と側板からなる横断面凹型の樋本体を吊り金具で軒先に支持する構成が一般的である。
雨樋の支持構造として従来から、樋本体の側板上端部に形成した耳部を支持する樋耳保持部を備えた雨樋吊具による支持構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-62726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の耳部を支持する構成の雨樋は、雨水の荷重が耳部に集中するため、耳部の強度が必要となる。例えば、雨樋の底面積が大きくなると、耳部を支持する構成の吊具では支持できなくなる重量となるので、雨樋を取り囲み、雨樋の底板を直接支持する構成の支持具が必要となる。
しかし、軒樋の底板を直接下から支える構成の雨樋支持具は、雨樋耳部の抑えが充分ではないため、雨樋の蛇行や変形を生じるおそれがあるという課題を有している。例えば、耳部の保持が充分ではない場合、雨樋の側板がその長さ方向に沿って内側や外側に撓むように変形し、雨樋が蛇行するおそれがある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みなされたものであって、補強シートで補強した雨樋において、側板上端部に設けた補強シートの上端部に外側への折曲部分を設けることで補強構造を導入し、蛇行や変形を抑制できるようにした雨樋の提供を目的とする。
また、本発明は、前述の構成の雨樋を雨樋支持具で支持した雨樋の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。
[1]本形態に係る雨樋は、底板と、該底板の幅方向両端から立ち上がる側板と、を有する樋部材と、前記樋部材に一部が埋設された補強シートと、を備え、前記側板の上端部に、該側板の外側に前記側板と一体的に延出する頂部と、該頂部の先端部から前記側板と離間し前記側板に沿って下方に一体的に延出する側部と、該側部の下端部から前記側板に向かって一体的に延在し前記側板に一体化された底部と、を具備する耳部が形成され、前記補強シートが、前記側板の内部に埋設された側板補強シートと、前記側板の上端部に位置する前記側板補強シートから一体的に延出されて前記頂部に沿って設けられた頂部補強シートと、前記頂部補強シートから一体的に延出されて前記側部に沿って設けられた側部補強シートを具備することを特徴とする。
【0008】
雨樋を構成する底板と側板に補強シートを埋設しているので、雨樋の剛性を向上させ、必要な強度を得ることができる。側板の上端部に耳部を設けるとともに、耳部の内側に補強シートを延出させて設けることで耳部の存在と耳部内側の補強シートの存在も相俟って雨樋全体に高い強度を付与できる。このため、雨樋が大型であっても必要な強度を確保できる。
雨樋が大型であって、雨樋の底板を支持するタイプの雨樋支持具により雨樋を支持した場合、耳部の拘束は弱いので、雨樋が長手方向に蛇行することや変形するおそれを生じるが、耳部の存在と耳部内側の補強シートの存在も相俟って蛇行することのない変形のおそれを生じ難い雨樋を提供できる。
【0009】
[2]本発明に係る雨樋において、前記側板補強シートが前記側板の厚さ方向内部側に埋設された構成を採用できる。
【0010】
側板の内部側に側板補強シートを設けることにより、側板を補強し、側板の変形を防止できる。また、側板補強シートを側板の内部側に埋設することで、補強シートの存在を隠すことができ、側板の内外面ともに補強シートの存在が目立たない構成とすることができる。
【0011】
[3]本発明に係る雨樋において、前記側板補強シートが前記耳部の内側において前記側板の側面に沿って延在された構成を採用できる。
【0012】
雨樋を押出成型で製造する場合、耳部の肉厚方向内部側には補強シートを埋設することはできない。しかし、押出成型時に側板上端部の耳部の内面側に補強シートを配設することは可能であり、側板上端部において耳部の内面側に補強シートを配設することにより側板上端部と耳部の剛性を向上させ、雨樋全体の剛性向上に寄与できる。
【0013】
[4]本発明に係る雨樋において、前記頂部補強シートが前記耳部の内側において前記頂部の下面に沿って延在され、前記側部補強シートが前記耳部の内側において前記側部の内面に沿って延在された構成を採用できる。
【0014】
雨樋を押出成型で製造する場合、耳部の肉厚方向内部側には補強シートを埋設することはできない。しかし、押出成型時に耳部の内面側に補強シートを配設することは可能であり、耳部の内面側に補強シートを配設することにより耳部の剛性を向上させ、耳部を補強し、雨樋全体の強度向上に寄与できる。
【0015】
[5]本発明に係る雨樋の支持構造は、底板と、該底板の幅方向両端から立ち上がる側板と、を有する樋部材と、前記樋部材に一部が埋設された補強シートと、を備え、前記側板の上端部に、該側板の外側に前記側板と一体的に延出する頂部と、該頂部の先端部から前記側板と離間し前記側板に沿って下方に一体的に延出する側部と、該側部の下端部から前記側板に向かって一体的に延在し前記側板に一体化された底部と、を具備する耳部が形成され、前記補強シートが、前記側板の内部に埋設された側板補強シートと、前記側板の上端部に位置する前記側板補強シートから一体的に延出されて前記頂部に沿って設けられた頂部補強シートと、前記頂部補強シートから一体的に延出されて前記側部に沿って設けられた側部補強シートを具備した雨樋が、建物の軒先に支持され、前記底板に接して前記雨樋を支持する雨樋支持具により支持されたことを特徴とする。
【0016】
雨樋に対し、雨樋の底板を支持する構成の雨樋支持具により雨樋を支持した場合、雨樋の側板上端部を雨樋支持具により押さえることは難しい。このような支持構造の場合であっても、側板上端部側面に沿って補強シートを配設し、耳部の内側に補強シートを延出させることで側板上端部の剛性を向上させ、長さ方向への蛇行や変形を生じ難い雨樋支持構造を提供できる。
【0017】
[6] 本発明に係る雨樋の支持構造において、前記側板補強シートが前記側板の厚さ方向内部側に埋設されたことが好ましい。
[7] 本発明に係る雨樋の支持構造において、前記側板補強シートが前記耳部の内側において前記側板の側面に沿って延在されたことが好ましい。
[8] 本発明に係る雨樋の支持構造において、前記頂部補強シートが前記耳部の内側において前記頂部の下面に沿って延在され、前記側部補強シートが前記耳部の内側において前記側部の内面に沿って延在されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の雨樋であれば、雨樋を構成する底板と側板に補強シートを埋設しているので、雨樋の剛性を向上させ、雨樋として必要充分な強度を得ることができる。側板の上端部に耳部を設けるとともに、耳部の内側に補強シートを延出させて設けることで耳部の存在と耳部内側の補強シートの存在も相俟って雨樋全体に高い強度を付与できる。このため、雨樋が大型であっても必要な強度を確保できる。
雨樋が大型であって、雨樋の底板を支持するタイプの雨樋支持具により支持した場合、耳部の拘束は弱いので、雨樋が長手方向に蛇行することや変形のおそれを生じるが、側板上端部における耳部の存在と耳部内側の補強シートの存在も相俟って蛇行することのない変形のおそれを生じ難い雨樋とその支持構造を提供できる。
を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1実施形態の雨樋が雨樋支持具により支持された雨樋支持構造の一例を示す斜視図。
図2】同第1実施形態の雨樋を示す部分断面図。
図3】同第1実施形態の雨樋を雨樋支持具で支持した状態を示す部分断面図。
図4】雨樋とその支持構造の変形例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る雨樋および雨樋支持構造の一例について説明する。
本実施形態に係る雨樋1は、例えば、屋根2において軒先の先端部に取り付けられ、雨樋支持具3により支持されている。なお、以下の実施形態では折板屋根の軒先に取り付けられた雨樋1を例示して説明するが、雨樋1を取り付ける屋根の構成に特に制限はない。
図1に示すように雨樋1は、帯板状の底板5と、底板5の幅方向両端側(底板5の長辺側)に一体的に立設された側板6、6とから構成された樋部材7から構成されている。樋部材7は、横断面視で側板6、6が上方に開口しつつ略U字状に形成されている。樋部材7において、屋根2の軒先の外側に配設された一方の側板6を前方側板6と称することができ、軒先の内側、即ち建物の外壁側に配設された他方の側板6を後方側板6と称することができる。なお、本実施形態で用いる雨樋1は底板5の内幅を200mm以上とする大型の雨樋である。
【0021】
樋部材7において側板6の上端部に側板6の外側に突出するように耳部6Aが形成されている。耳部6Aは、側板6の上端部から側板6の外方に向いて略水平に延出する頂部6aと、頂部6aの先端部から下方に側板6と離間して延出する側部6bと、側部6bの下端からほぼ水平に側板6の側面に向いて延出する底部6cを有する。耳部6Aは樋部材7の全長に形成されているので、頂部6a、側部6b、底部6cは側板6の上端部に沿って側板6の全長に渡り形成されている。
【0022】
側板6の上端部から頂部6aに連続する部分には湾曲部6dが形成され、側板6の内面から頂部6aの上面に至る部分は滑らかな曲面とされている。頂部6aの先端部から側部6bの上端部に至る部分に湾曲部6eが形成され、頂部6aの上面から側部6bの外面に至る部分は滑らかな曲面とされている。側部6bの下端部から底部6cの端部に至る部分に湾曲部6fが形成され、側部6bの下端部から底部6cの底面に至る部分は滑らかな曲面とされている。
【0023】
樋部材7において、底板5と側板6の内部に補強シート9が埋設されている。底板5と側板6の内部に埋設されている補強シート9は、底板5の厚さ方向内部側と側板6の厚さ方向内部側に埋設されている。
補強シート9は、側板6の底部から上端部近くまでは側板6の厚さ方向中央部に埋設され、延在されているが、耳部6Aが形成された部分では異なる位置に配設されている。
【0024】
耳部6Aの底部6cが側板6に接する位置まで、補強シート9は側板6の厚さ方向中央部に埋設されている。これに対し、底部6cが側板6に接する位置より上方、即ち、耳部6Aの内側では補強シート9が側板上端部の側面に沿って配設されている。更に、補強シート9は、頂部6aの内側では頂部6aの底面に沿って延在され、側部6bの内側では側部6bの内面(側板6に近い側の面)に沿って延在されている。
換言すると補強シート9は、側板6の底部から上端部近くまでは側板6の内部に埋設されているが、耳部6Aの内側においては、側板6の側面側に露出され、頂部6aの底面側に配設され、側部6bの内面側に配設されている。補強シート9はその一部を底板5と側板6に埋設し、他の部分を耳部6Aの内側に配設し雨樋1に一体化されている。
【0025】
補強シート9において、側板6に沿って設けられた部分を側板補強シート9aと称することができる。補強シート9において、耳部6Aの内側に位置し、頂部6aの下面側に配設された部分を頂部補強シート9bと称することができ、側部6bの内側に配設された部分を側部補強シート9cと称することができる。
【0026】
樋部材7の底板5と側板6はそれぞれ延伸熱可塑性樹脂シートから構成されるか、あるいは塩化ビニル系樹脂成形体から構成されていて良い。それらの線膨張係数は7.0×10-5(1/℃)が望ましい。例えば、底板5と側板6は、塩化ビニル等の樹脂や、アスファルト等で形成される被覆層と補強シート9から構成されていて良い。
補強シート9は芯材であり、底板5と側板6を構成する樹脂より線膨張係数が小さく高強度である。補強シート9の線膨張係数は、7.0×10-5(1/℃)未満であり、6.5×10-5(1/℃)以下が好ましく、3.0×10-5(1/℃)以下がより好ましい。
補強シート9として、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、熱耐久性等に優れた熱可塑性ポリエステル系樹脂等を使用できる。
補強シート9は、金属板からなる構成を採用しても良く、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛、アルミニウム合金めっき鋼板、塗装溶融亜鉛、アルミニウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、ポリ塩化ビニル被覆金属板、冷間圧延ステンレス鋼板、塗装ステンレス鋼板、チタン板又はチタン合金板、高耐候性圧延鋼板、アスファルト又は樹脂被覆鋼板、アルミニウム合金板等を用いてもよい。また、雨樋1の表面にはシボ、ヘアライン、ローレット等を施してもよい。
前記補強シート9において、特に線膨張係数が6.5×10-5(1/℃)と小さく、軽量で耐衝撃性、耐久性等に優れた熱可塑性ポリエステル系樹脂が好ましい。本実施形態ではポリエチレンテレフタレートを一軸延伸した熱可塑性ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、その線膨張係数は3.0×10-5(1/℃)未満であり、高強度で、低伸縮性及び耐熱性に優れている。
一軸延伸した熱可塑性ポリエチレンテレフタレートとしては、線膨張係数が2.5×10-5(1/℃)以下のものがより好ましく、1.2×10-5(1/℃)以下のものがさらに好ましく、-0.1×10-5(1/℃)以下のものが最も好ましい。
【0027】
補強シート9は、望ましくは厚さ0.3mm以上1.0mm以下の範囲に設定され、0.35mm以上0.5mm以下の範囲がより望ましく、本実施形態では一例として0.4mm厚程度に設定される。補強シート9の厚さを0.3mm以上0.5mm以下程度の範囲に設定することで、補強シート9を含む多層構造体は曲げ易くなる上に高強度、低伸縮性、耐熱性という特性を良好に発揮できる。
一方、補強シート9の厚さが0.5mm以上であるとその強度と剛性が大きくなり曲げ難くなる。また、補強シート9の厚さが0.3mm未満であると強度が低下し、低伸縮性と耐熱性という特性を発揮しにくい。
【0028】
なお、図示はしていないが、雨樋1において雨水に接する側の底板5の上面と側板6内外面側に表層が形成されていても良い。
表層として、例えばAES樹脂等の高耐候性特殊樹脂を用いることができる。表層は樋部材7の表面に被覆されて積層されている。表層は、底板5の上面および側板6の内外周面に被覆形成されており、その一端部は耳部6Aの外周面側まで伸びていても良い。表層を設けることで雨風や日光等に耐え得て、雨樋1の耐久性を向上できる。
【0029】
底板5および側板6と補強シート9の界面には、図示略の接着剤層が設けられていても良い。
接着剤層として適宜の材質を採用できるが、例えばホットメルト型接着剤や反応性接着剤が用いられ、ホットメルト型接着剤としては、例えば、ウレタン系ホットメルト型接着剤、ポリエステル系ホットメルト型接着剤、ゴム系ホットメルト型接着剤、オレフィン系ホットメルト型接着剤、アクリル系ホットメルト型接着剤、アミド系ホットメルト接着剤等が挙げられる。また、反応性接着剤としては、例えば、シリコーン系接着剤、変成シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0030】
補強シート9の厚さを例えば0.4mmとして、底板5と側板6とを形成する多層構造体は、その全体の厚さが例えば1.4mmに設定されている。この多層構造体は押出成形法等により成形される。なお、多層構造体のうち、補強シート9以外の厚さの合計は、例えば、0.7~1.8mmとすることができる。
【0031】
補強シート9が前述した熱可塑性ポリエチレンテレフタレートからなる場合、高強度(引張強度400MPa)で低伸縮性(線膨張係数-0.5×10-5(1/℃)であり、耐熱性も高い(融点256℃、ガラス転移温度130℃)ため湾曲加工し難い。しかし、補強シート9は、その厚さを0.5mm未満の例えば0.4mmに設定したため、曲率半径1.0mm以下で屈曲(湾曲)可能である。補強シート9を含む多層構造体は、小径で湾曲形成加工できて耳部6Aを形成できる上に、樋部材7を断面略U字状や断面略半円状等の適宜の形状に加工容易である。
【0032】
なお、耳部6Aにおいては、押出成型で樋部材7を形成する関係から、一例として補強シート9が耳部6Aの内面側に配設されている。押出成型で樋部材7を製造する場合、帯状の補強シート9を型に沿って図2に示す横断面形状に折り曲げつつ補強シート9の周囲に樹脂を押出ししながら成型する。この場合、耳部6Aの内側では側板6の上端部側面側に側板補強シート9aの上端部が配設され、頂部6aの下面側に頂部補強シート9bが配設され、側部6bの内面側に側部補強シート9cが配設される。なお、補強シート9は本実施形態においては耳部6Aの内側に配設されているが、外側に配設されていても良い。例えば、亜鉛めっき鋼板製の補強シートを用いてその内外表面側に樹脂を設けた構造を適用してもよい。
耳部6Aでは、補強シート9の屈曲部における湾曲角度や折り曲げ角度を鈍角に形成すると、より一層加工が容易であり、しかも高強度を確保できる。
【0033】
「雨樋支持具の構成」
本実施形態において用いる雨樋1は、例えば底板5の内幅を200mm以上とする大型であるので、図1図3に例示するような底板5を直接支持できる雨樋支持具3を適用することが好ましい。雨樋支持具3は、雨樋1の長さ方向に所定間隔で配置され、雨樋1を支持する。
この例において雨樋支持具3は、底部支持片10と側部支持片11、12と上部支持片13とからなる矩形枠状に形成されている。底部支持片10は雨樋1の底板5の下面に接して雨樋1を支持する。雨樋1の支持状態において側部支持片11は、雨樋1の前方側板6に沿って配置され、側部支持片12は雨樋1の後方側板6に沿って配置される。
なお、図3においては図面を見易くするために雨樋内部の補強シート9を省略している。
【0034】
上部支持片13は側部支持片11の上端部に接続される略L字型の第1接続片13Aと側部支持片12の上端部に接続されるL字型の第2接続片13Bからなる。第1接続片13Aは接続ボルト15とナット16により側部支持片11の上端部に接続されている。第2接続片13Bは接続ボルト17とナット18を介し側部支持片12の上端部に接続されている。
雨樋支持具3は、図1図3に示す屋根2を構成する屋根板2Aの先端を第1接続片13Aと第2接続片13Bで上下から挟み付け、第1接続片13Aと屋根板2Aと第2接続片13Bを上下に貫通する2組の取付ボルト20とナット21により屋根2の軒先に取り付けられている。
【0035】
雨樋支持具3において側部支持片11の上部内側に、雨樋1における前方側板6の耳部6Aを保護するためのL字型の耳片22が形成されている。雨樋支持具3において側部支持片12の上部内側に、雨樋1における後方側板6の耳部6Aを保護するためのL字型の耳片23が形成されている。
これらの耳片22、23は、図1図3に示すように雨樋1を雨樋支持具3により支持した状態において雨樋1の耳部6A、6Aを押さえ、雨樋1の安定支持に寄与する。
【0036】
雨樋支持具3において底部支持片10と側部支持片11の接続部分には、底部支持片10の延出部10Aと側部支持片11の延出部11Aが形成され、これらを貫通する接続ボルト24とナット25により底部支持片10と側部支持片11が接続されている。底部支持片10と側部支持片11が接続ボルト24とナット25により接続されているので、これらボルトナットの接続を緩めることで、底部支持片10に対し側部支持片11を回動させることができる。
接続ボルト15とナット16を外して側部支持片11と第1接続片13Aの接続を解除し、接続ボルト24とナット25を緩めることで、側部支持片11を回動し、第1接続片13Aと底部支持片10の間を開放することができる。この開放部分を利用し、雨樋1を雨樋支持具3の内側に設置することができる。
【0037】
図1図3に示す雨樋1の支持構造では、雨樋支持具3の底部支持片10により直接雨樋1の底板5を支持できるため、底板5が内幅200mmを超える大型の雨樋1であり、雨水が流れて重量がかかったしても、支障なく雨樋1を支持することができる。
また、雨樋1は底板5と側板6の内部側に補強シート9を設けてこれらを補強するとともに、耳部6Aの内側に、側板補強シート9aの上端部と頂部補強シート9bと側部補強シート9cを設け、耳部6Aも補強している。このため、雨水が流れて荷重が作用したり、夏場や冬場の気温差などにより熱膨張と熱収縮が作用したとして、雨樋1に蛇行や変形を生じ難い特徴を有する。
【0038】
雨樋1においては、耳部6Aにおいて、補強シート9を頂部補強シート9bと側部補強シート9cとして2回折り曲げて配設しているので、耳部6Aの強度を充分に確保している。更に、補強シート9と頂部補強シート9bを側板6に対し両方とも外側に折り曲げること、即ち、補強シート9を2回同じ方向に折り曲げることにより耳部6Aに対し適切な補強を実現している。
また、耳部6Aにおいて底部6c側には補強シート9が延在されていないが、底部6cはその先端側において側板6に一体化され、耳部6Aは樹脂により横断面ロの字型に一体形成されているので、耳部6Aの強度は充分に高い。なお、補強シート9を底部6c側に延出させて設け、底部6cも補強した構成とすることもできる。
【0039】
図4は、先に説明した構造の雨樋1において、底板5の内幅が200mm以下の小型の雨樋であった場合に雨樋を支持するために用いる雨樋支持具30を示す。
この雨樋支持具30は、例えば、ステンレス鋼板製の帯板部31の両端に雨樋1の耳部6Aを保持可能な鉤形の樋耳保持部32、32を設けて構成される。帯板部31を貫通した支持軸33をナット34、35で帯板部31に取り付け、支持軸33を屋根の軒先で支持することで雨樋を支持することができる。
雨樋1が小型の場合、雨樋支持具30で耳部6Aを支持することで雨樋1の蛇行や収縮を抑えることができ、雨樋1の強度はそれほど必要ではないが、図1図3に示した雨樋1を支持する構造は、図1図3に示す構構造に限らず、図4に示す雨樋支持具30を用いた構造でも差し支えない。
【0040】
なお、本願の雨樋1は図1図4に示す形態ではいずれも軒先に設ける軒樋として説明したが、本願の雨樋1は軒樋に限らず、谷樋に適用しても良い。また、雨樋の支持構造についても、図1図3図4に示す構成に限らず、雨樋を支持できる構成であれば、一般に使用されている種々の支持構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…雨樋、2…屋根、2A…屋根板、3…雨樋支持具、5…底板、6…側板、6A…耳部、6b…頂部、6c…底部、7…樋部材、9…補強シート、9a…側板補強シート、9b…頂部補強シート、9c…側部補強シート、10…底部支持片、11、12…側部支持片、13…上部支持片、13A…第1接続片、13B…第2接続片。
図1
図2
図3
図4