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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012126
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電動セイルドライブおよび船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 23/24 20060101AFI20240118BHJP
   B63H 21/20 20060101ALI20240118BHJP
   B63J 2/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B63H23/24
B63H21/20
B63J2/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110452
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022113419
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 貴生
(72)【発明者】
【氏名】ファンダイク ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】ファンデブルグ イゴール
(72)【発明者】
【氏名】畑山 和也
(57)【要約】
【課題】電動モータの冷却を簡単な構成で実現して、電動モータを長時間安定した出力で駆動することができる電動セイルドライブと、上記電動セイルドライブを備えた船舶と、を提供する。
【解決手段】電動セイルドライブは、電動モータと、電動モータによって駆動されるドライブユニットと、ドライブユニットの内部の潤滑油を、電動モータを介して循環させるポンプと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動されるドライブユニットと、
前記ドライブユニットの内部の潤滑油を、前記電動モータを介して循環させるポンプと、を備える、電動セイルドライブ。
【請求項2】
前記電動モータは、前記潤滑油が流れるモータ冷却用油路を有する、請求項1に記載の電動セイルドライブ。
【請求項3】
電動モータを制御するモータ制御部をさらに備え、
前記ポンプは、前記潤滑油を、前記モータ制御部を介して循環させる、請求項1に記載の電動セイルドライブ。
【請求項4】
前記ドライブユニットから前記電動モータに向かって前記潤滑油が流れる油路において、
前記ポンプは、前記電動モータよりも、前記潤滑油の流れ方向の上流側に位置し、
前記モータ制御部は、前記ポンプと前記電動モータとの間に位置する、請求項3に記載の電動セイルドライブ。
【請求項5】
前記モータ制御部は、
前記電動モータに電力を供給するインバータと、
前記インバータを制御するコントローラと、を含む、請求項3に記載の電動セイルドライブ。
【請求項6】
前記モータ制御部は、前記インバータおよび前記コントローラが配置される放熱板をさらに含み、
前記放熱板は、前記潤滑油が流れる放熱用油路を有する、請求項5に記載の電動セイルドライブ。
【請求項7】
前記ドライブユニットに取り付けられるアダプタをさらに備え、
前記電動モータ、前記モータ制御部、および前記ポンプは、前記アダプタに搭載される、請求項3に記載の電動セイルドライブ。
【請求項8】
前記ドライブユニットは、前記潤滑油を収容する油室を有し、
前記アダプタは、
前記ポンプと第1配管を介して接続される第1接続口と、
前記第1接続口と前記油室とを接続する接続管と、
前記電動モータと第2配管を介して接続される第2接続口と、
前記第2接続口と連通するとともに、前記油室と連通する潤滑油収容部と、を有する、請求項7に記載の電動セイルドライブ。
【請求項9】
前記アダプタにおいて、前記潤滑油は、前記潤滑油収容部の一部に収容される、請求項8に記載の電動セイルドライブ。
【請求項10】
前記ドライブユニットは、前記油室と隔てられた水路をさらに有し、
前記水路は、海水の取込口とつながる、請求項8に記載の電動セイルドライブ。
【請求項11】
前記アダプタは、前記潤滑油収容部と連通する給油口を有する、請求項8に記載の電動セイルドライブ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の電動セイルドライブを備えた船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動セイルドライブおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
帆が受ける風力を利用して帆走する帆船は、入港時または出港時などにおいて、エンジンによって推進装置(セイルドライブ)を駆動することにより機走する。エンジンによって駆動されるセイルドライブは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-223811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境面への配慮から、エンジンの代わりに電動モータを用いてセイルドライブを駆動する試みがなされている。電動モータもエンジンと同様に、駆動に伴って発熱する。したがって、電動モータを長時間安定した出力で駆動するためには、電動モータの冷却機構を工夫することが必要となる。このとき、電動モータの冷却機構として例えば熱交換器を用いると、コストが高くつく。したがって、コスト面を考えると、簡単な構成で電動モータを冷却することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電動モータの冷却を簡単な構成で実現して、電動モータを長時間安定した出力で駆動することができる電動セイルドライブと、その電動セイルドライブを備えた船舶とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電動セイルドライブは、電動モータと、前記電動モータによって駆動されるドライブユニットと、前記ドライブユニットの内部の潤滑油を、前記電動モータを介して循環させるポンプと、を備える。
【0007】
本発明の他の側面に係る船舶は、上記電動セイルドライブを備える。
【発明の効果】
【0008】
電動モータの冷却を簡単な構成で実現して、電動モータを長時間安定した出力で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態に係る船舶の概略の構成を示す説明図である。
図2】上記船舶に取り付けられる電動セイルドライブの概略の構成を示す斜視図である。
図3】上記電動セイルドライブを、蓋体を取り除いて示す斜視図である。
図4】上記電動セイルドライブの模式的な断面図である。
図5】上記電動セイルドライブが有するモータ制御部の概略の構成を示すブロック図である。
図6】上記電動セイルドライブの下部の構成を上下方向に分解して示す斜視図である。
図7】上記電動セイルドライブが有するアダプタを一方向から見たときの斜視図である。
図8】上記アダプタを他方向から見たときの斜視図である。
図9】上記電動セイルドライブの上部の構成を拡大して示す斜視図である。
図10】上記電動セイルドライブが有する電動モータのモータ冷却用油路を模式的に示す説明図である。
図11】上記モータ制御部が有する放熱板の放熱用油路を模式的に示す説明図である。
図12】変形例の電動セイルドライブの上部を右前方から見たときの斜視図である。
図13】上記電動セイルドライブの上部を左前方から見たときの斜視図である。
図14】上記電動セイルドライブの上部の分解斜視図である。
図15】上記電動セイルドライブの上部を左前方から見たときの、蓋体の図示を省略した状態での斜視図である。
図16】上記電動セイルドライブの上部の詳細な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、船舶の船首側を「前」とし、船尾側を「後」とする。そして、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。このとき、船舶に搭乗した操舵者が前方を向いたときの左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、適宜、前方向をFで示し、後方向をBで示し、左方向をLで示し、右方向をRで示し、上方向をUで示し、下方向をDで示す。
【0011】
〔1.船舶〕
図1は、本実施形態の船舶1の概略の構成を示す説明図である。船舶1は、例えば帆船で構成される。帆船は、帆2が受ける風力を利用して帆走する。一方、入港時、出港時、緊急時などにおいては、帆船に搭載された電動セイルドライブ3を駆動してプロペラ3aを回転させることにより機走する。すなわち、船舶1は、電動セイルドライブ3を備える。電動セイルドライブ3は、船舶1の船底1aに取り付けられる。以下、本実施形態の電動セイルドライブ3の詳細について説明する。
【0012】
〔2.電動セイルドライブ〕
図2は、電動セイルドライブ3の概略の構成を示す斜視図である。図3は、図2の電動セイルドライブ3を、蓋体4を取り除いて示す斜視図である。図4は、電動セイルドライブ3の模式的な断面図である。なお、図2以降の図面では、便宜的に、図1のプロペラ3aの図示を省略している。
【0013】
図2図4に示すように、電動セイルドライブ3は、電動モータ11と、ドライブユニット12と、ポンプ13と、モータ制御部14と、アダプタ15と、フランジ16と、を備える。電動モータ11、ポンプ13、およびモータ制御部14は、アダプタ15に搭載される。蓋体4(図2参照)は、アダプタ15に取り付けられて、電動モータ11、ポンプ13、およびモータ制御部14を上方から覆う。
【0014】
電動モータ11は、船舶1(図1参照)に搭載されるバッテリユニット(図示せず)から、モータ制御部14のインバータ141b(図5参照)を介して供給される電力により駆動される。電動モータ11は、ドライブユニット12の上方に位置する。電動モータ11の回転軸11a(図4参照)は、上下方向に沿って位置する。
【0015】
ドライブユニット12は、電動モータ11によって駆動されてプロペラ3a(図1参照)を回転させることにより、推進力を発生する推進装置である。図4に示すように、ドライブユニット12は、ドライブシャフト121と、プロペラシャフト122と、を有する。ドライブシャフト121およびプロペラシャフト122は、上下方向に延びるハウジング123内で、軸受12Bによって回転可能に支持される。
【0016】
ドライブシャフト121は、上下方向に延びて位置する。ドライブシャフト121の上端は、ハウジング123から上方に突出して位置する。ドライブシャフト121の上端は、電動モータ11の回転軸11aと連結される。ドライブシャフト121の下端には、第1ギア121aが取り付けられている。第1ギア121aは、例えばベベルギアで構成される。
【0017】
プロペラシャフト122は、前後方向に延びて位置する。プロペラシャフト122の前後方向の中央付近には、第2ギア122aが取り付けられている。第2ギア122aは、例えばベベルギアで構成され、第1ギア121aと噛み合う。プロペラシャフト122の後端は、ハウジング123から後方に突出して位置する。プロペラシャフト122の後端には、プロペラ3a(図1参照)が取り付けられる。
【0018】
モータ制御部14によって電動モータ11が駆動されると、電動モータ11の回転駆動力が、回転軸11a、ドライブシャフト121、第1ギア121a、および第2ギア122aを介してプロペラシャフト122に伝達され、プロペラシャフト122が回転する。これにより、プロペラ3aが回転して推進力が発生し、船舶1が航走する。このとき、モータ制御部14によって電動モータ11の回転軸11aの回転方向(正転/逆転)を制御することにより、船舶1の前進および後進を切り替えることができる。
【0019】
図4に示すように、ドライブユニット12は、ハウジング123内に油室12Rを有する。油室12Rは、潤滑油Lを収容する。潤滑油Lは、相対的に移動する2部材の接触部における摩耗および摩擦を低減し、これらの相対運動を円滑にする目的で用いられる。上記2部材としては、例えば第1ギア121aと第2ギア122aとを考えることができる。また、軸受12Bにおいては、内輪とボール、外輪とボールとを考えることができる。すなわち、第1ギア121a、第2ギア122a、軸受12Bは、油室12Rに位置して潤滑油Lに浸されている。潤滑油Lとしては、例えばギアオイルなどのオイルを用いることができる。
【0020】
ドライブユニット12は、ハウジング123内で油室12Rと隔てられた水路12Wを有する。より詳しくは、水路12Wは、油室12Rに対して、ドライブシャフト121の径方向外側に隔壁12Tを介して円環状に位置する。水路12Wは、ハウジング123の底部前方に設けられた通水口123aとつながる。また、水路12Wは、ハウジング123の側壁後方に設けられた連通孔123bとつながる。これにより、通水口123aおよび連通孔123bの一方を介して、ドライブユニット12の外部の海水が水路12Wに取り込まれる。また、通水口123aおよび連通孔123bの他方を介して、水路12W内の海水がドライブユニット12の外部に放出される。つまり、水路12Wへの海水の取込口は、通水口123aとなる場合もあり得るし、連通孔123bとなる場合もあり得る。なお、図2等では、ハウジング123に連通孔123bを3つ設けた構成を図示しているが、連通孔123bの数は上記の3つには限定されず、1つであってもよいし、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0021】
図3で示したポンプ13は、ドライブユニット12(特に油室12R)の内部の潤滑油Lを吸い込み、電動モータ11を介して循環させる。このようなポンプ13は、ギアポンプなどの油圧ポンプで構成される。なお、ポンプ13は、ギアポンプ以外の油圧ポンプで構成されてもよい。
【0022】
モータ制御部14は、電動モータ11を制御する。図5は、モータ制御部14の概略の構成を示す説明図である。モータ制御部14は、筐体141と、放熱板142と、を備える。
【0023】
筐体141の内部には、コントローラ141aと、インバータ141bと、が配置される。すなわち、モータ制御部14は、コントローラ141aと、インバータ141bと、を含む。コントローラ141aは、インバータ141bを制御する電子制御ユニットで構成される。このような電子制御ユニットは、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。
【0024】
インバータ141bは、電動モータ11に電力を供給する。より詳しくは、インバータ141bは、船内のバッテリ(図示せず)から供給される直流電圧を、3相(U相、V相、W相)の交流電圧に変換し、コントローラ141aから出力される回転指令に基づいて、電動モータ11に交流電圧を供給する。これにより、電動モータ11が回転する。
【0025】
放熱板142は、放熱性の高い金属(例えばアルミニウム)またはその合金からなる金属板で構成される。放熱板142上には、上記の筐体141が配置される。筐体141の内部には、コントローラ141aおよびインバータ141bが配置されることから、放熱板142上には、コントローラ141aおよびインバータ141bが配置されると言える。
【0026】
図6は、電動セイルドライブ3の下部の構成を上下方向に分解して示す斜視図である。アダプタ15およびフランジ16は、例えば金属で構成される。アダプタ15は、支持部151と、凹部152と、を有する。支持部151は、上述した電動モータ11、ポンプ13、モータ制御部14、蓋体4を支持する。凹部152は、支持部151の中央に位置して下方に窪む形状を有する。凹部152は、フランジ16の中央に位置する開口部16aに上方から挿入され、ドライブユニット12の上部に例えばボルト締結により取り付けられる。すなわち、電動セイルドライブ3は、ドライブユニット12に取り付けられるアダプタ15を備える。
【0027】
アダプタ15は、フランジ16に対して防振部材17を介して支持される。防振部材17は防振ゴムを含んで構成され、フランジ16の開口部16aの周囲に位置する。図6では、3つの防振部材17を図示しているが、防振部材17の数は特に限定されない。このように、アダプタ15は、フランジ16に対して防振支持される。
【0028】
フランジ16は、シール材としての環状のダイヤフラム18を挟んで、船舶1(図1参照)の船底1aに取り付けられる。図4に示すように、船底1aには、孔部1bが形成されており、この孔部1bに、ドライブユニット12のハウジング123が入り込む。ダイヤフラム18の外周部18aは、フランジ16の下面に設けられた溝部16bに入り込んで保持される。ダイヤフラム18の内周部18bは、ハウジング123とアダプタ15(凹部152の下部)とで上下方向に挟まれている。これにより、フランジ16を船底1aに取り付けたときに、フランジ16と船底1aとの間でのシール性が確保され、海水が孔部1bを介して船内に入り込むおそれが低減される。
【0029】
図7は、アダプタ15を一方向から見たときの斜視図である。図8は、アダプタ15を他方向から見たときの斜視図である。図9は、電動セイルドライブ3の上部の構成を拡大して示す斜視図である。なお、図7以降の図面では、便宜的に、後述する潤滑油Lの流れを太線の矢印で示す。アダプタ15は、第1接続口153と、接続管154と、第2接続口155と、潤滑油収容部156と、を有する。
【0030】
第1接続口153は、ポンプ13と第1配管P1を介して接続される接続口である。第1接続口153は、アダプタ15の支持部151の右側部に位置する。接続管154は、第1接続口153と、ドライブユニット12の油室12R(図4参照)とを接続する管である。接続管154は、第1接続口153から左方向に延びた後、下方に屈曲して油室12Rまで延びる。第2接続口155は、電動モータ11と第2配管P2を介して接続される接続口である。第2接続口155は、アダプタ15の支持部151の右側部に、第1接続口153と前後方向に並んで位置する。潤滑油収容部156は、アダプタ15の凹部152の内面で形成され、ドライブユニット12の油室12Rと連通する。潤滑油収容部156内には、第2接続口155と接続される吐出管157(図8参照)が位置している。
【0031】
上記した電動モータ11およびモータ制御部14について、説明を補足する。図9に示すように、電動モータ11は、第1モータ接続部111と、第2モータ接続部112と、を有する。第1モータ接続部111は、第3配管P3が接続される接続ポートであり、電動モータ11の上面から上方に突出して位置する。第2モータ接続部112は、上記の第2配管P2が接続される接続ポートであり、電動モータ11の上面から上方に突出して位置するとともに、第1モータ接続部111と並んで位置する。
【0032】
電動モータ11の内部には、図10に示すように、潤滑油Lが通るモータ冷却用油路113が形成されている。電動モータ11の内部において、モータ冷却用油路113の一方の端部は第1モータ接続部111と接続され、他方の端部は第2モータ接続部112と接続されている。モータ冷却用油路113は、第1モータ接続部111から第2モータ接続部112に向かって、電動モータ11の内部を上下方向に折り返しながら周方向に進んで形成される。なお、電動モータ11の内部でのモータ冷却用油路113の形状は、図10の例には限定されない。
【0033】
また、図9に示すように、モータ制御部14の放熱板142は、第1放熱用接続部142aと、第2放熱用接続部142bと、を有する。第1放熱用接続部142aは、第4配管P4が接続される接続ポートであり、放熱板142の右側面に設けられる。なお、第4配管P4は、ポンプ13とも接続される。第2放熱用接続部142bは、上記の第3配管P3が接続される接続ポートであり、放熱板142の右側面に第1放熱用接続部142aと並んで設けられる。
【0034】
放熱板142の内部には、図11に示すように、潤滑油Lが通る放熱用油路143が形成されている。放熱板142の内部において、放熱用油路143の一方の端部は第1放熱用接続部142aと接続され、他方の端部は第2放熱用接続部142bと接続されている。放熱用油路143は、第1放熱用接続部142aから第2放熱用接続部142bに向かって、放熱板142の内部をU字状に延びて形成される。なお、放熱板142の内部での放熱用油路143の形状は、図11の例には限定されない。
【0035】
上記の構成において、ポンプ13を駆動させると、ドライブユニット12の油室12R内の潤滑油Lが、図7図11に示した矢印の経路で流れる。すなわち、ポンプ13を駆動させると、油室12R内の潤滑油Lは、図4および図7で示したアダプタ15の接続管154を介して吸い上げられ、第1接続口153および第1配管P1を順に通ってポンプ13に送られる。そして、上記潤滑油Lは、ポンプ13から第4配管P4に排出され、その後、モータ制御部14の放熱板142の第1放熱用接続部142aから放熱用油路143に入り、放熱用油路143を流れる。放熱用油路143を流れた潤滑油Lは、第2放熱用接続部142bから第3配管P3に排出される。
【0036】
第3配管P3に排出された上記潤滑油Lは、電動モータ11の第1モータ接続部111からモータ冷却用油路113に入り、モータ冷却用油路113を流れた後、第2モータ接続部112から第2配管P2に排出される。第2配管P2に排出された潤滑油Lは、アダプタ15の第2接続口155から潤滑油収容部156内の吐出管157に流れ、潤滑油収容部156内に収容されている潤滑油Lの油面S(図4参照)の上部に吐出される。アダプタ15の潤滑油収容部156と、ドライブユニット12の油室12Rとは連通しているため、ポンプ13の駆動によって油室12R内の潤滑油Lがアダプタ15の接続管154を介して吸い上げられるのと同時に、吐出管157から潤滑油収容部156に吐出された潤滑油Lがドライブユニット12の油室12Rに入る。以降は、このような潤滑油Lの流れが繰り返される。すなわち、ドライブユニット12の内部の潤滑油Lが、ポンプ13、モータ制御部14、および電動モータ11を介して循環して流れる。
【0037】
ドライブユニット12の内部の潤滑油Lは、ドライブユニット12の内部の水路12Wに取り込まれる低温の海水によって冷却される。したがって、ポンプ13により、ドライブユニット12の内部の潤滑油Lを、電動モータ11を介して循環させることにより、電動モータ11を冷却することができる。これにより、電動モータ11を長時間安定した出力で駆動することができる。しかも、ドライブユニット12の内部で潤滑の目的で用いられる流体(潤滑油L)を、電動モータ11の冷却媒体として利用するため、電動モータ11を冷却する専用の冷却媒体および冷却機構(例えば熱交換器)を別途用意する必要がない。その結果、電動モータ11の冷却を簡単な構成で実現することができる。つまり、上記構成によれば、電動モータ11の冷却を簡単な構成で実現して、電動モータ11を長時間安定した出力で駆動することができる。
【0038】
特に、上記潤滑油Lによる電動モータ11の冷却を確実に実現する観点では、電動モータ11は、(ドライブユニット12から供給される)潤滑油Lが流れるモータ冷却用油路113を有することが望ましい。
【0039】
ドライブユニット12の内部の潤滑油Lを、モータ制御部14の冷却媒体としても有効利用する観点では、ポンプ13は、図9で示したように、上記潤滑油Lを、モータ制御部14を介して循環させることが望ましい。
【0040】
ところで、モータ制御部14は、コントローラ141aを含んでいることから、電動モータ11に比べて許容温度(耐熱温度)が低い。このため、潤滑油Lが低温であるうちに(昇温しない間に)、モータ制御部14に供給してモータ制御部14を効率よく(優先して)冷却することが望ましい。この点、例えばモータ制御部14よりも先に電動モータ11に潤滑油Lを供給して電動モータ11を冷却すると、電動モータ11の熱を吸収した後の(温度の上がった)潤滑油Lをモータ制御部14に供給することになるため、モータ制御部14を効率よく冷却することが困難となる。
【0041】
許容温度が低いモータ制御部14を、低温の潤滑油によって効率よく冷却する観点では、ドライブユニット12から電動モータ11に向かって潤滑油Lが流れる油路(第1配管P1、第4配管P4、第3配管P3を含む)において、ポンプ13、モータ制御部14、および電動モータ11の位置関係を本実施形態のように設定して、電動モータ11よりも先に低温の潤滑油Lをモータ制御部14に供給することが望ましい。すなわち、図9に示すように、上記油路において、ポンプ13は、電動モータ11よりも、潤滑油Lの流れ方向の上流側に位置し、モータ制御部14は、ポンプ13と電動モータ11との間に位置することが望ましい。
【0042】
コントローラ141aおよびインバータ141bは、電動モータ11の駆動時に発熱して高温となる。本実施形態のように、モータ制御部14がコントローラ141aおよびインバータ141bを含む構成では、モータ制御部14に潤滑油Lを供給することにより、コントローラ141aおよびインバータ141bを冷却することができる。したがって、ポンプ13により、モータ制御部14および電動モータ11を介して潤滑油Lを循環させる本実施形態の構成は、モータ制御部14がコントローラ141a等を含む構成において非常に有効となる。
【0043】
また、コントローラ141aおよびインバータ141bを確実に冷却するためには、コントローラ141aおよびインバータ141bが配置される放熱板142を潤滑油Lによって冷却することが非常に有効である。この観点では、本実施形態のように、放熱板142は、上記潤滑油Lが流れる放熱用油路143を有することが望ましい。
【0044】
電動セイルドライブ3を1つのユニットとして扱うことが可能になる観点では、本実施形態のように、電動モータ11、モータ制御部14、およびポンプ13がアダプタ15に一括して搭載され、アダプタごとドライブユニット12に取り付けられる構成が望ましい。
【0045】
電動モータ11の冷却に用いられた潤滑油Lをドライブユニット12の内部に戻して(海水によって)冷却し、冷却した潤滑油Lをポンプ13によって取り出して、電動モータ11等の冷却に再度利用するためには、電動モータ11等が搭載されてドライブユニット12に取り付けられるアダプタ15において、上記潤滑油Lの通り道となる油路を確保することが望ましい。上記油路を確保する観点では、アダプタ15は、上述した第1接続口153と、接続管154と、第2接続口155と、潤滑油収容部156と、を有する構成が望ましい。
【0046】
ところで、例えば潤滑油収容部156に潤滑油Lが充填されていると(潤滑油収容部156内に空間が存在しないと)、電動モータ11の熱によって潤滑油Lが膨張したときに、ドライブユニット12の外部の油路に、潤滑油Lの熱膨張を吸収する空間を有する構造部を別途設けることが必要となる。
【0047】
本実施形態では、図4で示すように、アダプタ15において、潤滑油Lは、潤滑油収容部156の一部に収容される。すなわち、潤滑油Lは、潤滑油収容部156の全体に充填されない。この構成では、潤滑油収容部156において、潤滑油Lが存在しない残りの部分(油面Sよりも上方の空間)を、潤滑油Lの熱膨張を吸収する空間として利用することができ、潤滑油Lの熱膨張による体積変動に容易に対応することができる。したがって、例えば、ドライブユニット12の外部の油路に、潤滑油の熱膨張を吸収する専用の上記構造部を別途設ける必要がなくなる。
【0048】
ドライブユニット12の内部の潤滑油Lを、海水によって確実に冷却するためには、ドライブユニット12の内部に、取込口を介して低温の海水を取り込み、その低温の海水によって、油室12R内の潤滑油Lを冷却することが望ましい。この観点では、図4で示したように、ドライブユニット12が、油室12Rと(隔壁12Tを介して)隔てられた水路12Wを有し、水路12Wが海水の取込口とつながる構成が望ましい。なお、上記取込口は、前述のように、通水口123aまたは連通孔123bで構成され得る。
【0049】
なお、ドライブユニット12は、内部に水路12Wを持たない構成であってもよい。つまり、ドライブユニット12の内部で流体が充填される部屋は、油室12Rのみであってもよい。この場合、ドライブユニット12のハウジング123が、油室12Rの側壁(外壁)を構成する。この構成では、油室12Rの内部の潤滑油Lは、金属製のハウジング123を介して隔てられる周囲の海水によって冷却される。したがって、ドライブユニット12が内部に水路12Wを持たない構成であっても、ポンプ13によってドライブユニット12の内部の潤滑油Lを、電動モータ11等を介して循環させることにより、電動モータ11等を冷却することができる。
【0050】
図7図9に示すように、アダプタ15は、さらに給油口158を有する。給油口158は、潤滑油収容部156と連通する(図7参照)。図9に示すように、給油口158には蓋158aが装着されるが、図7および図8では、蓋158aの図示を省略している。
【0051】
この構成では、例えば電動セイルドライブ3の工場出荷時、代理店または顧客への納品時、メンテナンス時、等の適切なタイミングで、アダプタ15の蓋158aを外して給油口158から潤滑油収容部156に潤滑油Lを流し込み、ドライブユニット12の内部に潤滑油Lを充填または補充することができる。このように、アダプタ15が給油口158を有する構成では、給油口158を介して潤滑油Lの充填等を適切なタイミングで行うことができるため、利便性が向上する。
【0052】
なお、ポンプ13の下流側に、第4配管P4(図9参照)から分岐して、ドライブユニット12の内部の潤滑油Lを取り出す専用のパイプを設けてもよい。メンテナンス時にポンプ13を駆動して、ドライブユニット12の内部の潤滑油Lを、上記パイプを介して取り出すことにより、潤滑油Lの定期的な交換を行うことも可能となる。
【0053】
〔3.変形例〕
次に、本実施形態の電動セイルドライブ3の変形例について説明する。変形例の電動セイルドライブ3において、潤滑油Lが流れる油路、潤滑油Lが流れる順序なども含めて、電動モータ11を冷却するための基本的な構成は、図2図11で示した電動セイルドライブ3と同じである。ただし、変形例の電動セイルドライブ3では、図2等で示した電動セイルドライブ3とは蓋体4の構成が異なる。以下、変形例の電動セイルドライブ3における蓋体4の構成について説明する。
【0054】
図12は、変形例の電動セイルドライブ3の上部を右前方から見たときの斜視図である。図13は、上記電動セイルドライブ3の上部を左前方から見たときの斜視図である。図14は、上記電動セイルドライブ3の上部の分解斜視図である。図15は、上記電動セイルドライブ3の上部を左前方から見たときの斜視図であって、蓋体4の図示を省略した状態で示したものである。
【0055】
電動セイルドライブ3の蓋体4は、図2で示したように単一のカバーで構成されてもよいが、図12図14で示すように、複数のカバーを含んで構成されてもよい。図12等の例では、蓋体4は、第1カバー41と、第2カバー42と、を含んで構成されている。なお、蓋体4は、3つ以上のカバーを含んで構成されていてもよい。
【0056】
(3-1.第1カバー)
第1カバー41は、例えば金属板で構成されており、蓋体4を補強するために設けられる。上記金属板を構成する金属は、例えばアルミニウムである。これにより、第1カバー41をアルミ鋳造で容易に製造することができる。なお、第1カバー41は、ステンレス鋼などの他の金属で構成されてもよい。図14に示すように、第1カバー41は、第1ボルトB1を挿入するための挿入孔41aを有する。第1カバー41において、挿入孔41aは4つ設けられているが、挿入孔41aの数は特に限定されない。第1カバー41は、電動モータ11の上方に位置する。
【0057】
第1カバー41の左右方向の中央部には、溝部41bが形成されている。溝部41bは前後方向に延びて形成される。溝部41bの存在により、第1カバー41の表面に段差が形成される。これにより、第1カバー41の剛性(特に曲げ剛性)が増す。溝部41bには、樹脂板43が嵌め込まれており、これによって第1カバー41の表面(上面)が、外見上、面一に形成される。なお、樹脂板43を設けることは、必ずしも必要ではない。
【0058】
第1カバー41は、左右方向に延びる取付ステー44に第1ボルトB1によって固定される。取付ステー44は、前後方向に間隔をあけて2つ設けられている。各取付ステー44は、アダプタ15に取り付けられた左右の側壁部45Rおよび45Lの上部にボルト締結され、左右方向に架け渡される。したがって、第1カバー41は、各取付ステー44と、左右の側壁部45Rおよび45Lとを介して、アダプタ15に支持される。
【0059】
このように、第1カバー41は、電動モータ11の上方に位置して、各取付ステー44等を介してアダプタ15に支持されるため、外部からの力に対して、電動モータ11を保護することができる。例えば、船舶1(図1参照)に乗り込んだ搭乗者が電動セイルドライブ3にメンテナンスを目的としてアクセスしようとしたときに、誤って電動セイルドライブ3を足で踏みつけてしまった場合でも、第1カバー41が踏みつけ時の押圧力を受け止める。これにより、電動モータ11が損傷するおそれが低減される。
【0060】
また、電動モータ11の上部には、電動モータ11の出力軸の回転数を検知するエンコーダENが設けられている。そして、エンコーダENの出力信号をコントローラ141a(図5参照)に導くための配線(図示せず)が、エンコーダENから引き出される。加えて、電動モータ11の上述した第1モータ接続部111および第2モータ接続部112も、電動モータ11の上部に位置している(図15参照)。搭乗者が誤って電動セイルドライブ3を上方から足で踏みつけてしまった場合でも、第1カバー41が上記押圧力を受け止めるため、上記配線がエンコーダENから外れてしまうおそれも低減される。さらに、第1モータ接続部111および第2モータ接続部112が破損するおそれも低減される。
【0061】
電動モータ11の後方は、第1カバー41および他の部材によって覆われておらず、外部に露出している(図14図15参照)。これにより、電動モータ11の放熱性の向上が図られる。
【0062】
(3-2.第2カバー)
第2カバー42は、例えばポリカーボネートなどの樹脂で構成されるが、アクリルなどの他の樹脂で構成されてもよい。また、第2カバー42は、第1カバー41と同様に金属で構成されてもよい。つまり、蓋体4の少なくとも一部は金属カバーであってもよい。第2カバー42を樹脂で構成するか、金属で構成するかは、例えばコストに応じて適宜選択されればよい。第2カバー42は、第1カバー41の前方に位置して、モータ制御部14(図3等参照)を覆う。
【0063】
図14に示すように、第2カバー42は、上部カバー42aと、前部カバー42bと、有する。上部カバー42aは、モータ制御部14の上方に位置する。前部カバー42bは、モータ制御部14の前方から左右方向に延び、左右方向の両端部がさらに後方に延びて形成される。前部カバー42bは、上部カバー42aの周縁の一部と連結される。
【0064】
上部カバー42aの後部には、上下方向に貫通する第1貫通孔42a1が、左右方向に並んで形成されている。前部カバー42bには、前後方向に貫通する第2貫通孔42b1が、左右方向に並んで形成されている。第2ボルトB2を第1貫通孔42a1に挿入し、さらに、第1カバー41の前部に形成された取付穴41cに挿入して、裏面側のナットN1と締結する。また、第3ボルトB3を第2貫通孔42b1に挿入して、アダプタ15に取り付けられる取付カバー159の開口部159aにねじ込む。これにより、第2カバー42は、第1カバー41およびアダプタ15の両方に取り付けられる。なお、取付カバー159の上面には、各種のハーネスが引き回されているが、図面では便宜的に上記ハーネスの図示を省略している。
【0065】
第2カバー42の上部カバー42aの左右方向の中央部には、凹部42pが形成されている。凹部42pは、前後方向に延びて形成されるとともに、第1カバー41の溝部41bを前方に延長した位置に形成される。凹部42pの存在により、第2カバー42の表面に段差が形成され、これによって第2カバー42の剛性(特に曲げ剛性)が増す。凹部42pには、第1カバー41の樹脂板43に相当する部材は嵌め込まれていないが、上記部材が嵌め込まれていてもよい。
【0066】
(3-3.電力供給部の詳細)
図16は、変形例の電動セイルドライブ3の上部の詳細な構成を示す斜視図である。なお、図16では、便宜的に、上述した蓋体4およびその支持部(取付ステー44、側壁部45Rおよび45L、取付カバー159を含む)の図示を省略している。
【0067】
変形例の電動セイルドライブ3は、電力供給部19を備えている。電力供給部19は、バッテリ(図示せず)から供給される電力を、モータ制御部14を介して電動モータ11に供給する。なお、変形例の電動セイルドライブ3において示す電力供給部19は、図2等に基づいて先に示した電動セイルドライブ3にも勿論適用可能である。
【0068】
電力供給部19は、第1コネクタ191と、第2コネクタ192と、第1導通板193と、リレー194と、第2導通板195と、第3導通板196と、バスバー197と、を含む。
【0069】
第1コネクタ191および第2コネクタ192はそれぞれ、モータ制御部14の右前方および左前方に位置し、ブラケット198を介してアダプタ15に取り付けられている。第1コネクタ191には、上記バッテリから直流電圧(例えば+48V)が供給される。上記直流電圧は、銅製の第1導通板193を介してリレー194に入力される。リレー194の内部では、必要に応じて導通のオン/オフが切り換えられる。導通がオンのとき、上記直流電圧は、銅製の第2導通板195を介してモータ制御部14のインバータ141b(図4参照)に入力される。
【0070】
第2コネクタ192には、上記バッテリから直流電圧(例えば-48V)が供給される。上記直流電圧は、銅製の第3導通板196を介してモータ制御部14のインバータ141bに入力される。
【0071】
インバータ141bでは、第2導通板195および第3導通板196を介して入力された直流電圧が、コントローラ141a(図4参照)からの制御信号に基づいて、3相(U相、V相、W相)の交流電圧に変換される。上記交流電圧は、U相、V相、W相に対応して設けられる各バスバー197を介して、インバータ141bから電動モータ11に供給される。これにより、電動モータ11が駆動される。
【0072】
〔4.補足〕
コントローラ141aは、冷却対象である電動モータ11およびモータ制御部14の温度を監視しつつ、ポンプ13の駆動および停止を制御してもよい。例えば、コントローラ141aは、電動モータ11およびモータ制御部14のいずれか一方または両方が高温(例えば判定閾値以上で限界温度以下)になったときのみにポンプ13を駆動させ、逆に、両者とも十分に低温(例えば判定閾値未満)であるときには、ポンプ13を停止させてもよい。このようなポンプ13の制御により、電動モータ11およびモータ制御部14の冷却不要時に、ポンプ13の駆動によって無為に電力を消費することを防止することができる。また、特に電動モータ11が停止状態または低回転であるときに、ポンプ13を駆動させると、ポンプ13の音が電動モータ11の音よりも大きく聞こえがちになる。電動モータ11が停止状態等であり、電動モータ11の温度が低いときにポンプ13を停止させることにより、ポンプ13の騒音を低減することができる。
【0073】
本実施形態では、潤滑油Lが流れる油路において、ポンプ13、モータ制御部14、および電動モータ11を直列に配置して、モータ制御部14および電動モータ11をこの順で冷却する構成としている。このような構成において、潤滑油Lの循環に何らかの問題が発生し、電動モータ11およびモータ制御部14のいずれかが判定閾値を超えた高温になれば、コントローラ141aは、電動モータ11に対して以下の制御を行ってもよい、すなわち、電動モータ11等のさらなる温度上昇を防ぐために、電動モータ11の駆動を制限する制限運転モードに移行する2次的な制御を行ってもよい。
【0074】
また、潤滑油Lが流れる上記油路において、モータ制御部14および電動モータ11は並列に配置されてもよい。この場合、モータ制御部14および電動モータ11のそれぞれの油路にセンサを設けて、各油路において潤滑油Lの循環の異常検知を行ってもよい。なお、上記した直列配置の場合、潤滑油Lが流れる油路のどこか1か所に上記センサを設ければ、潤滑油Lの循環の異常を検知することが可能となり、センサを設ける数が並列の場合よりも少なくて済む。
【0075】
潤滑油Lが流れる上記油路に位置する配管(第1配管P1~第4配管P4)は、金属製の配管であってもよいし、樹脂製の配管(ゴム配管)であってもよい。例えばポンプ13は駆動によって振動するため、ポンプ13と接続される第1配管P1および第4配管P4は、振動によって疲労が起こり得る金属製の配管よりも、上記振動を吸収できる樹脂製の配管であることが望ましい。
【0076】
〔5.付記〕
本実施形態で説明した電動セイルドライブおよび船舶は、以下の付記のように表現することができる。
【0077】
付記(1)の電動セイルドライブは、
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される(前記電動モータによって駆動されて推進力を発生する)ドライブユニットと、
前記ドライブユニットの内部の潤滑油を、前記電動モータを介して循環させるポンプと、を備える。
【0078】
付記(2)の電動セイルドライブは、付記(1)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記電動モータは、前記潤滑油が流れるモータ冷却用油路を有する。
【0079】
付記(3)の電動セイルドライブは、付記(1)または(2)に記載の電動セイルドライブにおいて、
電動モータを制御するモータ制御部をさらに備え、
前記ポンプは、前記潤滑油を、前記モータ制御部を介して循環させる。
【0080】
付記(4)の電動セイルドライブは、付記(3)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記ドライブユニットから前記電動モータに向かって前記潤滑油が流れる油路において、
前記ポンプは、前記電動モータよりも、前記潤滑油の流れ方向の上流側に位置し、
前記モータ制御部は、前記ポンプと前記電動モータとの間に位置する。
【0081】
付記(5)の電動セイルドライブは、付記(3)または(4)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記モータ制御部は、
前記電動モータに電力を供給するインバータと、
前記インバータを制御するコントローラと、を含む。
【0082】
付記(6)の電動セイルドライブは、付記(5)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記モータ制御部は、前記インバータおよび前記コントローラが配置される放熱板をさらに含み、
前記放熱板は、前記潤滑油が流れる放熱用油路を有する。
【0083】
付記(7)の電動セイルドライブは、付記(3)から(6)のいずれかに記載の電動セイルドライブにおいて、
前記ドライブユニットに取り付けられるアダプタをさらに備え、
前記電動モータ、前記モータ制御部、および前記ポンプは、前記アダプタに搭載される。
【0084】
付記(8)の電動セイルドライブは、付記(7)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記ドライブユニットは、前記潤滑油を収容する油室を有し、
前記アダプタは、
前記ポンプと第1配管を介して接続される第1接続口と、
前記第1接続口と前記油室とを接続する接続管と、
前記電動モータと第2配管を介して接続される第2接続口と、
前記第2接続口と連通するとともに、前記油室と連通する潤滑油収容部と、を有する。
【0085】
付記(9)の電動セイルドライブは、付記(8)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記アダプタにおいて、前記潤滑油は、前記潤滑油収容部の一部に収容される。
【0086】
付記(10)の電動セイルドライブは、付記(8)または(9)に記載の電動セイルドライブにおいて、
前記ドライブユニットは、前記油室と隔てられた水路をさらに有し、
前記水路は、海水の取込口とつながる。
【0087】
付記(11)の電動セイルドライブは、付記(8)から(10)のいずれかに記載の電動セイルドライブにおいて、
前記アダプタは、前記潤滑油収容部と連通する給油口を有する。
【0088】
付記(12)の船舶は、付記(1)から(11)のいずれかに記載の電動セイルドライブを備える。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の電動セイルドライブは、例えば帆船などの船舶に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 船舶
3 電動セイルドライブ
11 電動モータ
12 ドライブユニット
12R 油室
12W 水路
13 ポンプ
14 モータ制御部
15 アダプタ
113 モータ冷却用油路
123a 通水口(取込口)
123b 連通孔(取込口)
141a コントローラ
141b インバータ
142 放熱板
143 放熱用油路
153 第1接続口
154 接続管
155 第2接続口
156 潤滑油収容部
158 給油口
L 潤滑油
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16