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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121261
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】止水装置及び止水装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240830BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028265
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 止水板と下方側の不動面との間で水漏れが生じるのを防ぐ。
【解決手段】 不動面Gに立設される止水板10により水の流れを阻むようにした止水装置において、止水板10の下端側と不動面Gとの間に、係止具30が設けられ、係止具30は、不動面Gに固定されるとともに、止水板10の上方への移動を阻むように止水板10に係止される。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動面に立設される止水板により水の流れを阻むようにした止水装置において、
前記止水板の下端側と前記不動面との間に、係止具が設けられ、
前記係止具は、前記不動面に固定されるとともに、前記止水板の上方への移動を阻むように前記止水板に係止されることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記係止具が、前記止水板の横幅方向の中央寄りに設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
前記係止具は、前記止水板に対し、想定される水の流れ方向の上流側に設けられ、前記止水板が下流側へ移動しないように前記止水板に係止されることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項4】
前記止水板には、係合穴が設けられ、
前記係止具は、上片部と、該上片部の先端側で下方を向く先側片部とを有し、これら上片部と先側片部を前記係合穴に挿入して係止することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項5】
前記止水板は、前記係合穴の下縁部の内側に、前記先側片部によって係止されるように、補強片を重ね合わせていることを特徴とする請求項4記載の止水装置。
【請求項6】
前記止水板の上端側を前記不動面に連結する連結具が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項7】
前記係止具と前記連結具が一体的に構成されていることを特徴とする請求項6記載の止水装置。
【請求項8】
前記止水板が、横幅方向に2つ連結され、
前記係止具は、前記2つの止水板に跨って係止されることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項9】
前記止水板を前記不動面に立設する工程と、前記止水板の下端側を前記係止具により前記不動面に連結する工程とを含むことを特徴とする請求項1~8何れか1項に記載の止水装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水時に建物や地下道の開口部を略板状の止水体により閉鎖して水の侵入を阻む止水装置、及び止水装置の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が建物や地下道の開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態に備えて、予め建物や地下道などの開口部の近傍に止水板を格納しておき、増水が発生したときには、この止水板を前記開口部の両側の支柱に固定し、水の侵入を阻むようにした止水装置が従来知られている(特許文献1参照)。
この止水装置では、止水板における左右端部側の押圧機構が操作されることで、止水板の下端の横方向水密材を下方側不動面(例えば床面等)に圧接して、水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、下方側不動面である床面の不陸によっては止水性能が理想状態よりは低下する。特に、止水板の左右端部側は上記押圧機構等の係合部材により左右の枠部材に係合するのに対し、止水板の中央側は、前記係合部材等が無いため、下方側不動面との間で止水性能が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
不動面に立設される止水板により水の流れを阻むようにした止水装置において、前記止水板の下端側と前記不動面との間に、係止具が設けられ、前記係止具は、前記不動面に固定されるとともに、前記止水板の上方への移動を阻むように前記止水板に係止されることを特徴とする止水装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、止水板と下方側の不動面との間で水漏れが生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水装置の一例を示す正面図である。
図2図1における(II)-(II)線に沿う縦断面図である。
図3】同止水装置の平面図である。
図4】係止具の一例を示す三面図である。
図5図1における(II)-(II)線に沿う縦断面において、止水板を支柱に装着している様子を示す図である。
図6】同縦断面において、連結具及び係止具を装着している様子を示す図である。
図7】係止具の装着部分を示す要部拡大縦断面図である。
図8】本発明に係る止水装置の他例を示す要部縦断面である。
図9】本発明に係る止水装置の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、上流側とは、想定される水の流れ方向の上流側を意味し、図示例によれば、当該止水装置1の設置対象となる構築物の屋外側が上流側であり、同構築物の屋内側が下流側である。なお、他例としては、上流側を屋内側とし、下流側を屋外側とすることも可能である。
【0009】
<具体的実施形態>
止水装置1は、横幅方向に間隔を置いて立設される左右の支柱X,X間に、単数又は複数(図示例によれば左右二つ)の止水板10,10を設置して、左右の支柱X,X間を通過しようとする水の流れを止水板10,10によって阻むものである(図1参照)。
【0010】
この止水装置1は、二枚の止水板10,10と、これら止水板10,10の下端側と不動面Gとの間に設けられた係止具30と、止水板10,10の上流側で止水板10,10の上部を下方側の不動面Gに連結する連結具40とを具備する(図2参照)。
【0011】
支柱Xは、止水装置1の設置対象である構築物の開口部における左右両側の部分を構成している。前記開口部の具体例としては、自動ドアの扉体によって開閉される開口部や、地下道の出入口等が挙げられる。
各支柱Xは、硬質金属材料によって不動面Gから上方へ延びる柱状に形成される。
各支柱Xの開口部側の面には、上側被係合部x1及び下側被係合部x2(図2参照)が設けられている。これら上側被係合部x1と下側被係合部x2には、後述する止水板10の上側係合部15と下側係合部16によってそれぞれ係合される。
【0012】
上側被係合部x1と下側被係合部x2の各々は、硬質金属材料からなる円柱ピン状に構成される。そして、上側被係合部x1と下側被係合部x2は、それぞれ、支柱Xの上部側と下部側において、左右の支柱X,X間の内側(開口部中央側)へ突出する。
【0013】
止水板10は、支柱X,X間の開口部の左半部と左半部をそれぞれ覆うように二つ設けられ、互いに隣接している(図1参照)。これら二つの止水板10,10は、これらの横幅方向の中央側において着脱可能に連結されている。
二つの止水板10、10は、左右対称に構成され、第二の縦方向水密材13を介して水密に接している(図3参照)。
【0014】
各止水板10は、正面視略矩形状の止水板本体11と、止水板本体11の下流側面において、横幅方向の一端側から突出するとともに上下方向へわたって長尺状に連続する第一の縦方向水密材12(図3参照)と、同止水板本体11の他端側における側面から突出する上下方向へわたって長尺状に連続する第二の縦方向水密材13と、止水板本体11から下方へ突出するとともに横幅方向へわたって長尺状に連続する横方向水密材14(図1参照)と、止水板本体11の左端側又は右端側から対応する支柱Xへ向かって突出する上側係合部15及び下側係合部16(図2参照)とを一体的に具備する。
【0015】
止水板本体11は、左右に間隔を置いた縦枠11a,11bと、これら縦枠11a,11bの上端側と下端側を連結する横枠11c,11dと、これら縦枠11a,11b及び横枠11c,11dによって囲まれた空間を水密に覆う覆板11eとから一体の略矩形板状に形成される。
【0016】
縦枠11a,11b及び横枠11c,11dの各々は、金属等の硬質材料より長尺状に形成される。
覆板11eは、硬質合成樹脂材料(例えば、ポリカーボネート)や金属材料等により矩形板状に形成され、その上下左右の端部が、対向する前記縦枠又は前記横枠に対し水密に接続されている。
【0017】
止水板本体11(詳細には縦枠11b)の下流側の面は、支柱Xに対向する部分が、横断面略L字状に切欠されており(図3参照)、この切欠部分に、第一の縦方向水密材12、上側係合部15及び下側係合部16等が設けられる。
【0018】
また、止水板10の上流面側には、係止具30の上片部31c及び先側片部31aを係止するための被係止部11a1が設けられる。この被係止部11a1は、二つの止水板10,10の中央寄り且つ下端寄り位置する。
詳細に説明すれば、両側の止水板10,10の中央側部分を構成する縦枠11a,11aは、それぞれ、矩形状の横断面を上下方向へ延設した角筒状に形成される。そして、各縦枠11aの下端側に被係止部11a1が設けられる(図7参照)。
【0019】
被係止部11a1は、縦枠11aの上流側の壁部を貫通する係合穴11a11と、同壁部における係合穴11a11よりも下側の立ち上がり部分である被係止壁部11a12と、被係止壁部11a12の内側に重ね合わせられた補強片11a13とを具備して構成される(図7参照)。
【0020】
補強片11a13は、例えば、ステンレス等の金属製の板材等、高強度且つ耐腐食性の硬質材料によって形成され、係止具30の上片部31c及び先側片部31aに掛止されるとともに、先側片部31aに重なり合う。
この補強片11a13は、縦枠11aにおける被係止壁部11a12の内側に重ね合わせられ、ねじ止めやリベット止め、溶接等の固定手段(図示例によれば、ねじ止め)により固定されている。
すなわち、この補強片11a13は、止水板10の被係止壁部11a12と、係止片31の先側片部31aとの間に挟まれる(図7参照)。
【0021】
また、第一の縦方向水密材12と第二の縦方向水密材13は、それぞれ、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から上下方向へ連続する長尺状に形成される(図3参照)。
【0022】
第一の縦方向水密材12は、止水板本体11及び横方向水密材14を上下方向の全長にわたって跨るように設けられる。この第一の縦方向水密材12は、上下方向の全長にわたって支柱Xに圧接される。
【0023】
第二の縦方向水密材13は、止水板本体11及び横方向水密材14を上下方向の全長にわたって跨るように設けられる。この第二の縦方向水密材13は、隣接する止水板10の第二の縦方向水密材13に対し、上下方向の全長にわたって圧接される。
【0024】
横方向水密材14は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から長尺状に形成され、止水板本体11の下端面において、左右方向の略全長にわたって長尺状に連続している(図1参照)。
【0025】
第一の縦方向水密材12、第二の縦方向水密材13、及び横方向水密材14をそれぞれ止水板本体11に接合する手段は、接着材(両面テープや接着剤等を含む)による接着や、図示しないブラケットを介在した嵌合等とすればよい。
【0026】
係止具30は、両止水板10,10の上流側における両止水板10,10の横幅方向の中央寄りにて、不動面Gに固定されるとともに、両止水板10,10に対し、これら止水板10,10を跨るようにして係止される。
そして、この係止具30は、両止水板10,10の中央側が、上方へ移動するのを阻むとともに、下流側へ移動するのも阻む。
【0027】
詳細に説明すれば、この係止具30は、一端側が止水板本体11に係止されるとともに他端側が不動面Gに接する係止片31と、この係止片31を着脱可能に不動面Gに止着する着脱部材32とを備える(図2参照)。
【0028】
係止片31は、係合穴11a11に挿通される上片部31cと、この上片部31cの先端側で略フォーク状に分かれた二つの先側片部31a,31aと、上流側で不動面Gに重なり合って固定される平板上の固定部31bとを有する(図4参照)。
【0029】
二つの先側片部31a,31aは、左右の止水板10,10の被係止部11a1,11a1にそれぞれ対応するように配設される。
各先側片部31aは、上片部31cの先端側で下方を向く略フック状に形成される。上片部31c及び先側片部31aは、係合穴11a11に挿入され、止水板本体11の被係止壁部11a12及び補強片11a13に係止される(図7参照)。
【0030】
固定部31bは、下方側不動面Gに重なり合う平板状に形成され、着脱部材32を上下に挿通するための貫通孔31b1を有する。
【0031】
着脱部材32は、先端側に雄ネジ部を有するボルトの後端側に、手で回転操作可能な摘まみ部を固定したものである。
この着脱部材32の雄ネジ部は、係止片31の固定部31bを貫通し、不動面Gに埋設され固定されたアンカーg1に螺合し締め付けられる。
【0032】
また、連結具40は。止水板10の上部と不動面Gとの間に斜めに設けられ(図2参照)、止水板10の上部を斜め下方へ引っ張る。
【0033】
詳細に説明すれば、この連結具40は、止水板10の上部を斜め下方へ引っ張るように回転操作される引寄せ具41と、この引寄せ具41の上端側に枢支されるとともに止水板10の上部側に離脱可能に嵌り合う嵌脱部材42と、引寄せ具41の下端側を支持するとともに下方側不動面Gに対し着脱可能に止着される止着部43とを備える。
【0034】
引寄せ具41は、回転操作されることで全長を伸縮したり伸長したりする部材である。この引寄せ具41には、周知構造のターンバックルを用いることが可能である。
【0035】
嵌脱部材42は、横幅方向に隣接する二つの止水板10,10に跨って嵌り合うように、下方を開口した縦断面略凹状に形成される。
この嵌脱部材42は、連結具40の上端側に、止水板横幅方向の中心軸を支点にして回動するように枢支されている。
【0036】
止着部43は、連結具40の下端側を枢支するとともに不動面Gに固定された支持部材43aと、この支持部材43aを不動面Gに対し着脱可能に接続する着脱部材43bとを具備して構成される。
【0037】
支持部材43aは、止水板横幅方向の回転軸により引寄せ具41を回動自在に支持している。
なお、図示例以外の他例としては、支持部材43aに対し引寄せ具41を回動不能に固定することも可能である。
【0038】
着脱部材43bは、上記着脱部材32と同様に、先端側に雄ネジ部を有するボルトの後端側に、手で回転操作可能な摘まみ部を固定したものである。
この着脱部材43bの雄ネジ部は、支持部材43aを下方へ貫通し、不動面Gに埋め込まれたアンカーg2に螺合し締め付けられる。
【0039】
次に、上記構成の止水装置1を設置する手順について説明する。
先ず、左右の止水板10,10をそれぞれ左右の支柱X,Xに掛止するとともに下方側不動面G上に立設する。
【0040】
詳細に説明すれば、一方の止水板10について。第一の縦方向水密材12を支柱Xに圧接するとともに横方向水密材14を不動面Gに圧接させて、上側係合部15と下側係合部16を、それぞれ、支柱Xの上側被係合部x1と下側被係合部x2に掛合する(図5及び図6参照)。
【0041】
次に、他方の止水板10について、第一の縦方向水密材12を支柱Xに圧接するとともに横方向水密材14を下方側不動面Gに圧接させ、第二の縦方向水密材13を一方の止水板10の第二の縦方向水密材13に圧接させて、上側係合部15と下側係合部16を、それぞれ、支柱Xの上側被係合部x1と下側被係合部x2に掛合する。
【0042】
次に、左右の止水板10,10の下端側を、係止具30によって不動面Gに連結する。
詳細に説明すれば、係止具30における係止片31の先側片部31a,31aがそれぞれ、左右の止水板10,10の被係止部11a1,11a1に掛止され、固定部31bが着脱部材32によって不動面Gに止着される。
【0043】
次に、左右の止水板10,10の上部を、連結具40によって下方側不動面Gに連結する。
詳細に説明すれば、連結具40上端側の嵌脱部材42が、左右の止水板10,10に対し左右に跨るようにして上方から被せられ嵌め合わせられる。
そして、連結具40下端側の支持部材43aが着脱部材43bによって下方側不動面Gに止着される。この後、連結具40を回転操作して緊締する。
【0044】
よって、上記構成の止水装置1よれば、両止水板10,10の下端の横方向水密材14を、係止具30により不動面Gに十分に圧接して弾性変形させることができる。このため、仮に不動面Gに若干の凹凸がある場合等でも、この凹凸を横方向水密材14の弾性変形により吸収し、両止水板10,10と不動面Gの間に隙間が生じるのを防ぐことができ、ひいては、前記隙間による水漏れを防ぐことができる。
【0045】
しかも、係止具30の先側片部31aを、上流側から止水板10の内側に掛止しているため、両止水板10,10に対し上流側から水圧が加わった場合でも、両止水板10,10の中央側が下流側へずれるのを防ぐことができる。
【0046】
また、図示例によれば、連結具40によって両止水板10,10の上端側を不動面Gに連結しているため、例えば、上流側の水位が比較的高くなった場合でも、水圧を受けて両止水板10,10の上端側や、両止水板10,10間が下流側へ変形するようなことを防ぐことができる。
【0047】
<係止具及び連結具の変形例>
図8に示す止水装置2は、上記止水装置1における係止具30及び連結具40を、一体的な係止具30’及び連結具40’として構成したものである。
ここで、前記一体的とは、係止具30’と連結具40’が、一体の物として扱われるように連結されていることを意味する。すなわち、係止具30’と連結具40’は、一体物として搬送したり、不動面に対し同時に着脱したりすることが可能である。
【0048】
係止具30’及び連結具40’は、上記構成の係止片31及び引寄せ具41を、ベース部材44に対し一体的に設けている。
【0049】
ベース部材44は、引寄せ具41の下方側から係止片31にわたって不動面Gに接する板状を呈する。
【0050】
ベース部材44における下流側部分には、係止片31の固定部31bが一体的に固定される。
また、同ベース部材44の上流側部分には、引寄せ具41の下端側を支持する支持部材43aが一体的に固定される。
【0051】
係止片31、支持部材43a及びベース部材44等を一体化する手段は、ねじ止めや、リベット止め、溶接等によるものとしてもよいし、予め、ベース部材44自体に、係止片31及び支持部材43aを一体加工してもよい。
【0052】
上記構成のベース部材44は、着脱部材32によって、不動面Gに止着される。
着脱部材32は、係止片31と支持部材43aの間において、上方からベース部材44へ貫通し、先端側の雄ネジ部を、不動面Gに埋め込まれたアンカーg1に螺合する。
【0053】
よって、図8に例示する態様によれば、係止具30’及び連結具40’を、一体的な治具として扱うことができ、この係止具30’及び連結具40’を止水板10と不動面Gの間に組み付ける作業を効率的に行うことができる。
【0054】
<止水板の変形例>
図9に示す止水装置3は、上記止水装置1において、複数(図示例によれば2つ)の止水板10を単数の止水板10’に置換したものである。
止水板10’は、支柱X,X間の開口部を左右に跨る単一の止水板本体11’と、この止水板本体11’の下流側面の両側にそれぞれ設けられた第一の縦方向水密材12、上側係合部15及び下側係合部16と、止水板本体11’下端から下方へ突出するとともに横幅方向の全長にわたる横方向水密材(図示せず)と具備し、構成される。
【0055】
止水板本体11’は、横幅方向の中央寄りにおける下端側に、係止具30を係合するための係合穴11a11、被係止壁部11a12及び補強片11a13等を有する。
なお、止水板本体11’を上記止水板本体11と同様に左右の縦枠及び上下の横枠と中央の覆板により構成した場合、係合穴11a11、被係止壁部11a12及び補強片11a13等は、下側の横枠に設ければよい。
【0056】
図9に示す止水装置3によれば、単一の止水板10の中央側部分を下方へ押圧し、止水板10’下端の横方向水密材(図示せず)を不動面Gに対し密接させることができ、ひいては、止水板10’と不動面Gの間で水漏れが生じるのを防ぐことができる。
【0057】
<その他の変形例>
上記実施形態の止水装置1(図1参照)によれば、止水板本体11を縦枠11a,11b、横枠11c,11d及び覆板11e等の複数の部材から板状に形成したが、この止水板本体11の他例としては、単一の板状部材から形成した態様や、図示例以外の複数の部材から板状に形成した態様等とすることが可能である。
【0058】
また、上記実施の形態によれば、被係止部11a1を止水板10の外面から内部にわたる構成としたが、この被係止部11a1の他例としては、止水板10の外壁面から外部に突出する構成とすることも可能である。
【0059】
また、上記実施の形態は、特に好ましい一例として、係止具30と連結具40を併用したが、他例としては、連結具40を省き、係止具30のみによって止水板10を不動面Gに連結する構成とすることも可能である。
【0060】
上記実施形態によれば、係止具30及び連結具40を止水板10の上流側に設けたが、他例としては、係止具30と連結具40の何れか一方又は双方を止水板10の下流側に設けたり、係止具30と連結具40の何れか一方又は双方を止水板10の上流側と下流側の両方に設けたり等することも可能である。
【0061】
上記実施形態によれば、係止具30及びこの係止具30によって係止される係合穴11a11を止水板10の上流側に設け、この係合穴11a11の内側(下流側)に、係止具30の先側片部31aが係止されるようにした(図7参照)が、他例としては、係止具30及びこの係止具30によって係止される係合穴11a11を止水板10の下流側に設け、この係合穴11a11の内側(上流側)に、係止具30の先側片部31aが係止されるようにする(図示せず)ことも可能である。
【0062】
上記実施形態によれば、止水板10の上部を連結具40(又は40’)によって上流側斜め下方へ引っ張ったが、図示例以外の他例としては、止水板10の上部を略真下に引っ張るようにすることも可能である。この他例では、止水板10の上部に上流側へ突出するアームを設け、このアームの先端側を、図示しない連結具により下方側不動面Gに連結して、下方へ引っ張るようにすればよい。
【0063】
また、上記実施形態によれば、連結具40(又は40’)を引寄せ具41により構成したが、この連結具40は、止水板10の上部を下方側不動面Gに連結する構成であればよく、他例としては、バネ等の付勢部材や、紐、ワイヤー、帯状部材(例えば、可撓性のベルト等)、棒状部材等による構成、あるいはこれらを適宜に組み合わせた構成とすることも可能である。
【0064】
上記実施態様において、左右の止水板10,10間の水密構造や、止水板10と支柱Xの間の水密構造、止水板10と下方側不動面Gの間の水密構造等は、それぞれ、図示例以外の態様にすることが可能である。
【0065】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
不動面に立設される止水板により水の流れを阻むようにした止水装置において、前記止水板の下端側と前記不動面との間に、係止具が設けられ、前記係止具は、前記不動面に固定されるとともに、前記止水板の上方への移動を阻むように前記止水板に係止されることを特徴とする止水装置(図1図9参照)。
ここで、前記「前記止水板の下端側と前記不動面との間に、係止具が設けられ」という構成には、前記不動面と前記止水板がなす角度(例えば約90°)の内角側に前記係止具が設けられている態様(図2参照)や、前記不動面と前記止水板の間に挟まれるようにして前記係止具が設けられている態様(図示せず)等を含む。
さらに、この構成には、前記係止具が前記止水板に対し、想定される水の流れの上流側に設けられた態様と、前記係止具が前記止水板に対し、想定される水の流れの下流側に設けられた態様との双方を含む。
(2)
前記係止具が、前記止水板の横幅方向の中央寄りに設けられていることを特徴とする(1)に記載の止水装置(図1図3及び図9参照)。
(3)
前記係止具は、前記止水板に対し、想定される水の流れ方向の上流側に設けられ、前記止水板が下流側へ移動しないように前記止水板に係止されることを特徴とする(1)または(2)に記載の止水装置(図2図7及び図8参照)。
(4)
前記止水板には、係合穴が設けられ、前記係止具は、上片部と、該上片部の先端側で下方を向く先側片部とを有し、これら上片部と先側片部を前記係合穴に挿入して係止することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の止水装置(図7参照)。
(5)
前記止水板は、前記係合穴の下縁部の内側に、前記先側片部によって係止されるように、補強片を重ね合わせていることを特徴とする(4)に記載の止水装置(図7参照)。
(6)
前記止水板の上端側を前記不動面に連結する連結具が設けられていることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の止水装置(図1図3図6図8及び図9参照)。
(7)
前記係止具と前記連結具が一体的に構成されていることを特徴とする(6)に記載の止水装置(図8参照)。
(8)
前記止水板が、横幅方向に2つ連結され、前記係止具は、前記2つの止水板に跨って係止されることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の止水装置(図3参照)。
(9)
前記止水板を前記不動面に立設する工程と、前記止水板の下端側を前記係止具により前記不動面に連結する工程とを含むことを特徴とする(1)~(8)いずれかに記載の止水装置の設置方法(図5及び図6参照)。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3:止水装置
10:止水板
11a1:被係止部
11a11:係合穴
11a12:被係止壁部
11a13:補強片
30,30’:係止具
31:係止片
31a:先側片部
31c:上片部
31b:固定部
32,42:着脱部材
40,40’:連結具
41:引寄せ具
43:止着部
43a:支持部材
44:ベース部材
G:不動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9