(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121267
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】拡径部削成装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20240830BHJP
B23B 41/06 20060101ALI20240830BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240830BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20240830BHJP
E21B 10/32 20060101ALI20240830BHJP
B23B 31/107 20060101ALI20240830BHJP
B23B 29/034 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B41/06
B28D7/02
B23B47/34 Z
E21B10/32
B23B31/107 B
B23B29/034 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028275
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 俊一
(72)【発明者】
【氏名】草壁 史
【テーマコード(参考)】
2D129
3C032
3C036
3C046
3C069
【Fターム(参考)】
2D129AA06
2D129AB20
2D129AC09
2D129BA19
2D129DA21
2D129EB23
2D129GA01
2D129GA21
2D129GA34
3C032BB23
3C036AA23
3C036HH09
3C046LL01
3C046PP03
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】 消耗部品の交換が短時間で容易に行える拡径部削成装置を提供する。
【解決手段】 先端方向に設けられた軸方向ガイド孔を有する本体と、軸方向ガイド孔に沿って軸方向に移動する軸部と、先端方向に設けられた先端部に設けられ、先端方向に向かって軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられた傾斜ガイド部と、を有する芯体と、傾斜面に沿って移動することで広がる切削部を有し、本体の先端に取り付けるカッターブレードと、本体と芯体との間で芯体を先端方向に付勢する第1付勢部材と、本体に沿って軸方向に移動する移動体を有するストッパリングと、を備え、本体は、軸方向に延びる本体側溝を有し、芯体は、軸部の基端方向に設けられ、軸方向に延びる芯体側溝を有し、ストッパリングは、移動体から中心軸の方向に突出して本体側溝と芯体側溝とに係合するキー部材と、移動体と前記芯体とを係合させる係合部材と、を有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下孔の内壁面に拡径部を削成する拡径部削成装置であって、
先端方向に設けられた軸方向ガイド孔を有する本体と、
前記軸方向ガイド孔に沿って軸方向に移動する軸部と、前記軸部の先端方向に設けられた先端部と、前記先端部に設けられ、先端方向に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられた傾斜ガイド部と、を有する芯体と、
前記傾斜面に沿って先端方向に移動することで広がる切削部を有し、前記本体の先端に取り付けるカッターブレードと、
前記本体と前記芯体との間で前記芯体を先端方向に付勢する第1付勢部材と、
前記本体に沿って軸方向に移動する移動体を有するストッパリングと、を備え、
前記本体は、前記カッターブレードの軸方向移動量で軸方向に延びる本体側溝を有し、
前記芯体は、前記カッターブレードの軸方向移動量で前記軸部の基端方向に設けられ、軸方向に延びる芯体側溝を有し、
前記ストッパリングは、前記移動体から前記中心軸の方向に突出して前記本体側溝と前記芯体側溝とに係合するキー部材と、前記移動体と前記芯体とを係合させる係合部材と、を有している、拡径部削成装置。
【請求項2】
前記ストッパリングは、前記移動体の外周部分で軸方向に移動するスリーブと、前記スリーブを軸方向に付勢する第2付勢部材と、前記移動体に保持され、半径方向に移動可能な前記係合部材と、を備え、
前記係合部材は、球体で構成され、
前記芯体は、前記軸部の所定位置に前記球体が係合する凹状部を有し、
前記凹状部に前記球体が係合した状態で前記スリーブが前記付勢部材の付勢力で前記球体の外方に位置して前記球体と前記凹状部との係合状態を保つように構成されている、請求項1に記載の拡径部削成装置。
【請求項3】
前記キー部材は、前記移動体から前記本体側溝を介して前記芯体側溝に挿入され、
前記芯体側溝は、前記キー部材が先端方向端部に当接した状態で前記本体の先端方向に取り付けた前記カッターブレードの刃部が前記傾斜面に近接する位置となる長さで形成されている、請求項1又は2に記載の拡径部削成装置。
【請求項4】
前記ストッパリングは、前記移動体の前記キー部材が設けられた位置の周方向対向位置に前記球体を保持している、請求項3に記載の拡径部削成装置。
【請求項5】
前記芯体は、前記先端部から前記基端方向に延びる第1通路と、前記第1通路と連通して半径方向に延びる第2通路と、を有し、
前記本体は、前記第2通路と連通し、該本体の外面に開口する第3通路を有し、
前記第3通路と連通する吸引通路を有し、前記本体の外周部に回動自在に備えられた吸塵部をさらに備えている、請求項1又は2に記載の拡径部削成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、既設の下孔の内壁面に拡径部を削成する拡径部削成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固化したコンクリート面に下孔を削成し、その下孔の内壁面に下孔径より直径の大きい拡径部を削成してアンカーボルト植設用孔を形成することが知られている。
【0003】
この種の先行文献として、本出願人が先に出願したアンカーボルト植設用孔の拡径部削成装置がある(例えば、特許文献1参照)。
図7は、この拡径部削成装置110を示す正面視の断面図である。この拡径部削成装置110は、電動工具100に取り付けられるシャンク121を有する本体120と、本体120の軸方向ガイド孔124に沿って移動する芯体140と、芯体140の先端部142において芯体140の中心軸Gから離れる方向に傾斜する傾斜面143に沿って広がる切削部132を有するカッターブレード130と、本体120と芯体140との間に設けられて芯体140を先端方向に付勢するスプリング128と、芯体140とピン152で連結されて芯体140と一体的に本体120の軸方向に移動するストッパリング150と、を有している。
図7は、拡径部削成装置110が被削成物であるコンクリート床200に設けられた下孔210に挿入された状態を示している。
【0004】
この拡径部削成装置110による拡径部212の削成は、
図8に示すように、電動工具100で本体120を回転させながら先端方向に移動させることで、カッターブレード130の切削部132が芯体140の先端部142に備えられた傾斜面143に沿って広がりながら先端方向に移動する。そして、ストッパリング150が本体120の突起部123に当接するまで押し込むことで、下孔210の内壁面211を切削部132の刃部133で切削して拡径部212を削成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カッターブレード130は、切削部132に設けられた刃部133が回転しながら先端方向に移動して内壁面211を切削するので刃部133が摩耗する。また、芯体140は、先端部142が下孔210に接した状態で回転するので先端部142が摩耗する。このため、カッターブレード130および芯体140は、消耗部品として扱われ、必要に応じて交換する必要がある。
【0007】
しかし、上記拡径部削成装置110は、
図9に示すように、本体120と芯体140およびストッパリング150とがピン152で連結されているため、ピン152は本体120を介してカッターブレード130で拡径部212を削成するときの切削反力を回転方向の力として受ける。しかも、拡径部212の削成は、カッターブレード130の切削部132を芯体140の傾斜面143に沿って広げながら先端方向に移動させることで削成される。このため、ピン152は、芯体140と本体120からの軸方向の力も受ける。
【0008】
その上、ピン152は、回転方向の力を受けながら軸方向の大きさの力を本体120の大径部122と芯体140とから受けるため、これらの接触面Fで固着してしまう場合がある。また、ピン152は、これらの大きな力で変形する場合もある。このため、芯体140およびカッターブレード130の交換時にピン152の抜き取り作業に多くの時間を要する場合がある。また、ピン152は、作業時の振動などで脱落しないように溝153と、ビス154、スプリングで押された鋼球155を有しており、変形していない場合でも、抜き取り作業に時間を要する。このように、従来の拡径部削成装置110は、消耗部品の交換に多くの時間と労力を要する場合がある。
【0009】
そこで、本出願は、消耗部品の交換が短時間で容易に行える拡径部削成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の一態様に係る拡径部削成装置は、下孔の内壁面に拡径部を削成する拡径部削成装置であって、先端方向に設けられた軸方向ガイド孔を有する本体と、前記軸方向ガイド孔に沿って軸方向に移動する軸部と、前記軸部の先端方向に設けられた先端部と、前記先端部に設けられ、先端方向に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられた傾斜ガイド部と、を有する芯体と、前記傾斜面に沿って先端方向に移動することで広がる切削部を有し、前記本体の先端に取り付けるカッターブレードと、前記本体と前記芯体との間で前記芯体を先端方向に付勢する第1付勢部材と、前記本体に沿って軸方向に移動する移動体を有するストッパリングと、を備え、前記本体は、前記カッターブレードの軸方向移動量で軸方向に延びる本体側溝を有し、前記芯体は、前記カッターブレードの軸方向移動量で前記軸部の基端方向に設けられ、軸方向に延びる芯体側溝を有し、前記ストッパリングは、前記移動体から前記中心軸の方向に突出して前記本体側溝と前記芯体側溝とに係合するキー部材と、前記移動体と前記芯体とを係合させる係合部材と、を有している。
【0011】
この構成により、本体に設けられた軸方向ガイド孔に沿って移動する軸部を有する芯体は、本体と芯体との間に設けられた付勢部材によって先端方向に付勢され、本体の先端には刃部が設けられた切削部を有するカッターブレードが設けられる。本体と芯体は、本体側溝と芯体側溝とに係合するストッパリングのキー部材によって回転動力が伝達される。ストッパリングによる本体と芯体との係合を解除すれば、芯体を先端方向に取り外すことができる。芯体を取り外すことで、カッターブレードを本体から取り外すことができる。よって、消耗部品である芯体およびカッターブレードの交換作業を短時間で容易に行うことができる。
【0012】
また、前記ストッパリングは、前記移動体の外周部分で軸方向に移動するスリーブと、前記スリーブを軸方向に付勢する第2付勢部材と、前記移動体に保持され、半径方向に移動可能な前記係合部材と、を備え、前記係合部材は、球体で構成され、前記芯体は、前記軸部の所定位置に前記球体が係合する凹状部を有し、前記凹状部に前記球体が係合した状態で前記スリーブが前記付勢部材の付勢力で前記球体の外方に位置して前記球体と前記凹状部との係合状態を保つように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、ストッパリングの球体が芯体の凹状部に係合し、スリーブが球体の外周に位置して球体と凹状部の係合状態を保っている保持状態では、ストッパリングは芯体と一体的に軸方向に移動する。スリーブを付勢部材に抗して軸方向に移動させることで、球体と凹状部の係合を解除した解除状態となり、芯体を先端方向に取り外すことができる。芯体を取り外すことで、カッターブレードを本体から取り外すことができる。ストッパリングは、ワンタッチで芯体との係合を解除でき、消耗部品である芯体およびカッターブレードの交換作業に要する時間と労力を大幅に削減できる。
【0014】
また、前記キー部材は、前記移動体から前記本体側溝を介して前記芯体側溝に挿入され、前記芯体側溝は、前記キー部材が先端方向端部に当接した状態で前記本体の先端方向に取り付けた前記カッターブレードの刃部が前記傾斜面に近接する位置となる長さで形成されていてもよい。
【0015】
このように構成すれば、キー部材が芯体側溝の先端方向端部に当接した状態で、刃部が傾斜面に近接した状態にでき、芯体の組込み位置を設定できる。
【0016】
また、前記ストッパリングは、前記移動体の前記キー部材が設けられた位置の周方向対向位置に前記球体を保持していてもよい。
【0017】
このように構成すれば、ストッパリングは本体部の同一周方向にキー部材と球体とが配置されるので、ストッパリングの軸方向寸法を小さくできる。
【0018】
また、前記芯体は、前記先端部から前記基端方向に延びる第1通路と、前記第1通路と連通して半径方向に延びる第2通路と、を有し、前記本体は、前記第2通路と連通し、該本体の外面に開口する第3通路を有し、前記第3通路と連通する吸引通路を有し、前記本体の外周部に回動自在に備えられた吸塵部をさらに備えていてもよい。
【0019】
このように構成すれば、カッターブレードの刃部による切削で生じた粉塵などは、芯体の先端部から第1通路、第2通路、第3通路および吸引通路を備えた吸塵部から外部へ吸引することができる。よって、粉塵の飛散が少ない拡径部削成装置を提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本出願によれば、拡径部削成装置における消耗部品の交換を短時間で容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本出願の一実施形態に係る拡径部削成装置を示す正面視の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す拡径部削成装置を示す側面視の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すIII-III矢視の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す拡径部削成装置の使用状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す拡径部削成装置のストッパリングを示す図面であり、(A)は保持状態を示す断面図、(B)は解除状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す拡径部削成装置における消耗部品の交換状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、従来の拡径部削成装置を示す正面視の断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す拡径部削成装置の使用状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示すIX-IX矢視の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願の一実施形態に係る拡径部削成装置10を図面に基づいて説明する。以下の実施形態の拡径部削成装置10は、ストッパリング50がワンタッチ式となっている。また、以下の実施形態の拡径部削成装置10は、拡径部212の削成時に発生する粉塵を除去する吸塵機構60を備えた例を説明する。この明細書および特許請求の範囲の書類中における基端方向、先端方向の概念は、
図1に示す拡径部削成装置10のシャンク21の方向を基端方向、芯体40の先端部42の方向を先端方向とする。また、拡径部削成装置10の中心軸Gは、本体20、芯体40、カッターブレード30のそれぞれの中心軸Gでもある。
【0023】
<拡径部削成装置の構成>
図1は、一実施形態に係る拡径部削成装置10を示す正面視の断面図である。
図2は、
図1に示す拡径部削成装置10を示す側面視の断面図である。
図3は、
図1に示すIII-III矢視の拡大断面図である。
【0024】
図1、2に示すように、この実施形態の拡径部削成装置10は、本体20と、本体20の先端に取り付けられたカッターブレード30と、本体20の軸方向ガイド孔24に挿入された芯体40と、本体20に設けられたストッパリング50と、を備えている。
【0025】
本体20は、基端方向にシャンク21が設けられ、先端方向は円筒状の大径部22となっている。大径部22は、基端方向の外周位置にストッパリング50の軸方向移動を止める突起部23が設けられている。大径部22には、中心軸G上に先端方向から軸方向ガイド孔24が設けられている。軸方向ガイド孔24は、芯体40の軸部41が挿入される孔であり、芯体40と本体20との間に付勢部材たる第1スプリング28を入れる深さを有している。大径部22の先端には、カッターブレード30を保持する保持部25が設けられている。保持部25は、先端面から軸方向に窪む凹部とすることができる。また、本体20の大径部22の所定位置には、本体20の外周部分に設けられるストッパリング50の後述するキー部材52が軸方向に移動する本体側溝26と、後述する球体53が軸方向に移動する球体用溝27と、が軸方向ガイド孔24まで貫通して設けられている。本体側溝26と球体用溝27は、後述するように本体20に対して芯体40が軸方向に所定範囲で移動できる長溝となっている。
【0026】
カッターブレード30は、基端方向の端部に本体20の保持部25に取り付ける取付部31が設けられている。取付部31は、保持部25に嵌り込む凸部とすることができる。本体20の保持部25とカッターブレード30の取付部31は、本体20にカッターブレード30を保持することができればよく、この例に限定されない。カッターブレード30は、先端方向に一対の切削部32を有している。切削部32は、先端に刃部33を有している。切削部32は、中心軸Gに対して対称位置に2つ設けられている。2つの切削部32は、その間に開口部34が設けられており、後述する芯体40の傾斜面43に沿って広がるときに撓む可撓性を有している。刃部33はチップ状であって、切削部32の外面と先端の縁面のそれぞれから突出している。
【0027】
芯体40は、基端方向に軸部41が設けられ、先端部42には中心軸Gから離れる方向に傾斜する傾斜面43が設けられた傾斜ガイド部45を有している。軸部41は、本体20の軸方向ガイド孔24に挿入される直径となっている。傾斜ガイド部45は、中心軸Gを中心に対向する位置に2つの傾斜面43が設けられ、傾斜面43と直交する位置には2つの刃部ガイド44が設けられている。傾斜面43は、カッターブレード30の切削部32がスライドする面であり、基端方向から先端方向に向かって中心軸Gから離れる方向に傾斜している。傾斜面43は、中心軸Gの方向に凹状の湾曲面でもよい。このように、一対の傾斜面43は、中心軸Gを挟むように配置されており、一対の傾斜面43の間隔は、基端方向から先端方向に向かうに伴い広がっている。2つの刃部ガイド44は、切削部32が軸方向に移動するときに側面をガイドする。
【0028】
また、芯体40の軸部41には、ストッパリング50の後述するキー部材52が挿入される芯体側溝46が設けられている。芯体側溝46は、本体20に対して芯体40が軸方向に所定範囲で移動できる長溝である。この実施形態では、芯体側溝46は、本体20の先端方向に取り付けたカッターブレード30の切削部32の先端が傾斜面43に近接する位置までキー部材52が入り込む長さとなっている。芯体40には、芯体側溝46の先端方向端部付近に、ストッパリング50の後述する球体53の一部が係合する凹状部47が設けられている。
【0029】
ストッパリング50は、本体20に沿って軸方向に移動する移動体51を有する。移動体51は、本体20の軸方向に延びる本体側溝26を貫通して、芯体40の軸方向に延びる芯体側溝46まで至る上記キー部材52を有している。キー部材52は、本体側溝26と芯体側溝46とに係合している。移動体51は、中心軸Gに対してキー部材52と対向する位置に係合部材たる球体53(例えば、鋼球)を有している。すなわち、移動体51は、キー部材52と球体53とが周方向対向位置に設けられている。球体53は、本体20の球体用溝27を介して芯体40の凹状部47と係合する。
【0030】
ストッパリング50は、移動体51の外周位置にスリーブ54を有している。スリーブ54は、円筒状に形成されており、移動体51との間に設けられた第2スプリング55によって先端方向に付勢されている。スリーブ54は、先端方向に段部56が設けられており、段部56の先端方向は大径部57に形成されている。スリーブ54は、移動体51の外周に設けられた止めリング58に段部56が当接した状態で止まり、この状態では球体53の外周に位置している。この状態の球体53は、スリーブ54で外方への移動が止められて芯体40の凹状部47に係合している状態が保たれるので、移動体51と芯体40を一体的に移動させる。スリーブ54は、第2スプリング55の付勢力に抗して基端方向に移動させることで大径部57が球体53の外周に位置する。この状態では、球体53が外方に移動でき、凹状部47の係合が解除される。ストッパリング50と本体20および芯体40との係合状態の詳細は、後述する。
【0031】
<吸塵機構>
この実施形態の拡径部削成装置10は、本体20の外周部にカッターブレード30の刃部33による切削で生じた粉塵などを吸引する吸塵機構60の吸塵部61が設けられている。吸塵部61は、本体20に対して回動自在な状態で取り付けられており、本体20が回転しても吸塵部61は回転しない。吸塵部61の基端方向部分と本体20との間には、シールリング62が設けられている。
【0032】
吸塵機構60は、芯体40の中心軸Gの部分に、先端部42から基端方向に延びる第1通路63が設けられ、芯体40の所定位置には第1通路63と連通して半径方向に開口する第2通路64が設けられている。第2通路64は、本体20に対して芯体40が軸方向に移動する長さの長溝となっている。また、本体20は、第2通路64と連通し、外面に開口する第3通路65を有しており、本体20の外周部に設けられた吸塵部61の吸引通路66と連通している。吸塵部61は、図示しない吸引配管に接続される。
【0033】
この拡径部削成装置10によれば、カッターブレード30の切削部32で削成するときに生じる粉塵を、芯体40の先端部42から第1通路63、第2通路64および本体20の第3通路65を介して吸塵部61の吸引通路66から吸引することができる。よって、この実施形態の拡径部削成装置10によれば、コンクリートの削成時に生じる粉塵などを吸塵機構60で外部へ排出することができる。
【0034】
<拡径部削成装置の組み立て>
この実施形態の拡径部削成装置10は、以下のようにして組み立てることができる。本体20は、外周部分にストッパリング50が取り付けられる。ストッパリング50は、本体20に先端方向から移動体51が入れられ、本体側溝26の位置でキー部材52が取り付けられ、球体用溝27の位置に球体53が入れられる。その後、移動体51の外周部分に第2スプリング55が入れられ、その外周にスリーブ54が入れられ、移動体51の所定位置に止めリング58が設けられる。これにより、本体20の所定位置にストッパリング50が備えられる。また、本体20の所定位置には、この実施形態では吸塵部61が取り付けられる。そして、本体20は、先端部分の保持部25にカッターブレード30の取付部31が取り付けられる。
【0035】
その後、本体20は、軸方向ガイド孔24に先端方向から第1スプリング28が入れられ、その軸方向ガイド孔24に先端方向から芯体40の軸部41が入れられる。芯体40の軸部41は、ストッパリング50の球体53に当接すると止まる。ストッパリング50は、スリーブ54を第2スプリング55に抗して基端方向に移動させることで球体53が大径部57の部分で半径方向外方へ移動する。芯体40は、この状態で軸部41を基端方向へ押し込まれる。この時、芯体40の軸部41に設けられた芯体側溝46にキー部材52が挿入される。芯体40は、軸部41の基端方向端部が第1スプリング28に当接した状態で、凹状部47に球体53が係合する位置まで挿入される。ストッパリング50は、球体53が凹状部47に係合した状態で、スリーブ54を第2スプリング55の付勢力で先端方向へ移動させ、スリーブ54が球体53の外周に位置した状態とする。球体53は、この状態で半径方向へ移動できなくなり、芯体40の凹状部47に係合した状態が保たれる。
図1、2は、拡径部削成装置10を組み立てた状態を示している。
【0036】
図3に示すように、拡径部削成装置10のキー部材52の位置での断面は、ストッパリング50に設けられたキー部材52が、本体20の本体側溝26を挿通して芯体40の芯体側溝46まで延びており、本体側溝26と芯体側溝46とに係合している。また、ストッパリング50の球体53は、芯体40の凹状部47に係合した状態で外周部分にスリーブ54が位置して保持状態となっている。
【0037】
拡径部削成装置10は、このような構造により、本体20の回転動力はキー部材52を介して芯体40に伝達され、本体20と芯体40とが一体的に回転させられる。この拡径部削成装置10によれば、本体20を介してカッターブレード30で拡径部212を削成するときの回転方向の切削反力は、キー部材52の面で適切に受けることができる。また、拡径部212の削成時に芯体40と本体20とから受ける軸方向の力は、キー部材52の先端方向の面で適切に受けることができる。
【0038】
一方、芯体40は、ストッパリング50の球体53が凹状部47に係合しているため、芯体40とストッパリング50とが一体となって第1スプリング28に抗して本体側溝26の範囲で軸方向に移動可能となっている。すなわち、本体20に対して、芯体40とストッパリング50とが一体で軸方向に移動可能となっている。
【0039】
<拡径部削成装置による拡径部の削成>
図4は、
図1に示す拡径部削成装置10の使用状態を示す断面図である。拡径部削成装置10は、シャンク21を電動工具100に取り付け、芯体40の先端部42から下孔210に挿入される。そして、拡径部削成装置10は、電動工具100で本体20を回転させながら下孔210の先端方向に押し込まれる。これにより、本体20と一体的に回転するカッターブレード30の切削部32は、芯体40の先端部42に設けられた傾斜面43に沿って広がりながら先端方向へ移動させられる。芯体40は、本体20の軸方向移動分で第1スプリング28を圧縮させる。そして、切削部32の刃部33により、下孔210の内壁面211が切削されて拡径部212が削成される。本体20とカッターブレード30の先端方向への移動は、芯体40が第1スプリング28を圧縮し、芯体40と一体的に移動するストッパリング50が本体20の突起部23に当接することで止められる。これにより、カッターブレード30の切削部32が適切に広がる状態まで押し込まれ、拡径部212の削成が完了する。
【0040】
この拡径部削成装置10によれば、本体20を介してカッターブレード30で拡径部212を削成するときの切削反力を、キー部材52の面で適切に受けることができる。しかも、拡径部212の削成時に芯体40と本体20とから受ける軸方向の力は、キー部材52の先端方向の面で適切に受けることができる。
【0041】
拡径部削成装置10は、拡径部212の削成後、電動工具100を基端方向に移動させることで本体20を基端方向に移動させる。この時、芯体40は第1スプリング28の付勢力で本体20から先端方向に付勢された状態が保たれているので、カッターブレード30の切削部32が芯体40の傾斜面43に沿って基端方向に移動する。そして、切削部32は、傾斜面43に沿って自身の弾性力で下孔210に挿入した状態に戻る。これにより、拡径部削成装置10を下孔210から取り出すことができる。
【0042】
<ストッパリングの動作>
図5は、
図1に示す拡径部削成装置10のストッパリング50を示す図面であり、(A)は保持状態を示す断面図、(B)は解除状態を示す断面図である。
図6は、
図1に示す拡径部削成装置10における消耗部品の交換状態を示す断面図である。
【0043】
図5(A)に示すように、本体20にカッターブレード30(
図1)と芯体40を取り付けた時は、ストッパリング50の球体53が芯体40の凹状部47に係合し、スリーブ54が球体53の外周に位置して球体53と凹状部47の係合状態を保っている。この保持状態では、芯体40はストッパリング50の球体53と係合した状態が保たれるため、芯体40はストッパリング50と一体的に軸方向に移動する。
【0044】
図5(B)に示すように、本体20から芯体40とカッターブレード30を取り外す時は、スリーブ54を付勢部材たる第2スプリング55の付勢力に抗して基端方向に移動させる。これにより、ストッパリング50の球体53の外方に空間ができ、球体53が凹状部47に係合している状態を解除した解除状態にできる。このように、この実施形態のストッパリング50は、芯体40と球体53との係合解除がワンタッチ式となっている。
【0045】
図6に示すように、拡径部削成装置10は、ストッパリング50の球体53が芯体40の凹状部47と係合している状態を解除すれば、芯体40を本体20の先端方向に取り外すことができる。芯体40の取り外しは、キー部材52に係合している芯体側溝46の部分を先端方向へ抜く作業になるため、短時間で容易に取り外すことができる。
【0046】
しかも、拡径部削成装置10は、本体20から芯体40への動力をキー部材52の軸方向に延びる面で受け、カッターブレード30の刃部33による拡径部212の削成時に生じる軸方向反力をキー部材52の先端方向の面で受けている。これにより、大きな力でキー部材52が変形することを抑え、芯体40の取り外し時に、芯体側溝46をキー部材52に沿って先端方向へ取り外すことが容易にできる。本体20から芯体40を取り外すことで、本体20からカッターブレード30を取り外すことができる。
【0047】
よって、上記拡径部削成装置10は、消耗部品である芯体40およびカッターブレード30の交換に要する時間と労力を大幅に削減できる。
【0048】
<その他の変形例>
上記した実施形態の拡径部削成装置10は、吸塵部61を有する吸塵機構60を備えた構成を説明したが、吸塵機構60がない場合もある。吸塵機構60がない場合、芯体40の第1通路63、第2通路64および本体20の第3通路65と吸塵部61は必要ない。
【0049】
また、上記した実施形態の拡径部削成装置10は、2つの切削部32を有する例を説明したが、切削部32は3つ以上であってもよい。その場合、芯体40の先端部42に設けられる傾斜面43も同じ数が設けられる。上記した実施形態は一例を示しており、本出願の要旨を損なわない範囲で種々の変更は可能であり、本出願は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0050】
また、上記した実施形態では、被削成物としてコンクリート床200を例に説明したが、被削成物はコンクリート床200に限定されるものではなく、拡径部削成装置10は他の壁や天井などの被削成物に対しても拡径部212を削成することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 拡径部削成装置
20 本体
24 軸方向ガイド孔
26 本体側溝
27 球体用溝
28 第1スプリング
30 カッターブレード
32 切削部
33 刃部
40 芯体
41 軸部
42 先端部
43 傾斜面
46 芯体側溝
47 凹状部
50 ストッパリング
51 移動体
52 キー部材
53 球体
54 スリーブ
55 第2スプリング
56 段部
57 大径部
58 止めリング
60 吸塵機構
61 吸塵部
210 下孔
211 内壁面
212 拡径部