(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121268
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】防水板
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240830BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240830BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240830BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20240830BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240830BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
B32B5/18
B32B5/24 101
B32B27/32 C
B32B27/42
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028276
(22)【出願日】2023-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】509010263
【氏名又は名称】多摩防水技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523069625
【氏名又は名称】Nicoldsystem株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】木村 大原
(72)【発明者】
【氏名】石村 憲之
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
4F100
【Fターム(参考)】
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
4F100AK07B
4F100AK36C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02C
4F100DG15A
4F100DJ02B
4F100GB07
4F100JA13
4F100JD05C
4F100JG06B
4F100JK04
4F100JK07
(57)【要約】
【課題】耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも止水板相互に接合密着性があるので、止水板相互間からの漏れも心配のない防水板を提供する。
【解決手段】基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8で構成し、表面をポリウレア樹脂9をシームレスにコーティングした横長矩形の板状体からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成し、表面をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングした横長矩形の板状体からなることを特徴とした防水板。
【請求項2】
基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成する請求項1記載の防水板。
【請求項3】
ポリウレア樹脂は、主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけた被覆層である請求項1または請求項2記載の防水板。
【請求項4】
基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、その上をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングする請求項1記載の防水板。
【請求項5】
基体の裏側左右端近くに上下方向の突条を形成し、ネオジウム磁石はこの突条に埋め込む請求項4記載の防水板。
【請求項6】
板状体の表側下縁にポリウレア樹脂の成型シートをスカート部として垂下した請求項1記載の防水板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豪雨や災害時に建物の中、地下などへ水が流れ込むのを防ぐ板である防水板(止水板)に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では大雨による河川の氾濫や津波などによる浸水被害が毎年のように発生している。地球温暖化の影響による気候変動は、1時間降水量50mm以上の豪雨を全国で増加させ、万が一水害が起こった際、家族や住宅を守るための対策や備えを行っておく必要がある。
【0003】
台風や集中豪雨などによって増水が発生すると、地下道や建物などの入口の床面を水位が超えるような場合があり、その際には通路や屋内が浸水するなどして甚大な被害を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、このような事態に備えて、予め地下道や建物などの入口の両脇に溝付きの支柱を対向させて立設しておくと共に、防水板をその近傍に格納しておき、いざ増水が発生したときには、防水板を取り出してきて前記支柱の溝内へ差し込み、入口を閉鎖して浸水をくい止めるようにしたものが従来よりある。
【0005】
防水板は、多量の流水による水圧にも耐え得るだけの十分な強度を有し、かつ取り扱いに優れる軽量なアルミニウム合金製のものやFRPなどのプラスチック製のものが広く知られており、下記特許文献に従来例として説明されているように、
図7の様に、入り口の柱5の内側に、縦パッキング3付の溝レール4を設け、上から防水板本体1を差し込み、上側や前側からネジで固定する物や、
図8の様に柱5の前側に縦パッキング3を取り付け、防水板本体1を前側からネジ6で固定する物が多い。図中2は防水板本体1の下縁に設けた下パッキングである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-87465号公報
【特許文献2】実用新案登録第3214872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防水板(止水板)は設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。
【0008】
また、防水板(止水板)を設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。多くの止水板は戸溝という設備がないと設置できないため、その課題をクリアする。
【0009】
前記ネジ6で固定するものでは、上から下への方向、又は、前から後ろへの方向のどちらかにしか、ネジ6による力が加わらない為、使用時水漏れする。又、ネジ6の調整が難しく、設置に時間がかかる。
【0010】
例えば、
図8で縦パッキング3の高さを40センチメートル、防水板本体1の長さを200センチメートルとすると、止水する為のパッキングへの押付力は、0.35キログラム/平方センチメートル程である。これはゴムパッキングでもウレタンスポンジパッキングでもほぼ同じある。
【0011】
パッキングの巾を1.5センチメートルとすると、
図2で防水板を下へ押す力(FW)は、FW=(0.35キログラム/平方センチメートル)×200センチメートル×1.5センチメートル=105kgf、防水板を後ろへ押す力(FX)は、FX=(0.35キログラム/平方センチメートル)×40センチメートル×1.5センチメートル×2=42kgf必要である。
【0012】
防水板本体1が100キログラム以上の重量があれば良いが、手動で設置する防水板本体1は通常30キログラム以下である。
【0013】
又、下へ押す力、FW=105kgfと後ろへ押す力、FX=42kgfを同時にかけないといけない。これは、先にどちらかの力をかけてしまうと、後にかけた力によって先にかけたパッキングがよじれてしまい、機能しなくなるからである。
【0014】
よって、下へ押す力FWと後へ押す力FXを徐々に均等にかけていかなければならないので、非常に困難である。
【0015】
多く見られる製品は、下へ押す力FWを無視して防水板本体の重量のみでまかなおうとしている為、使用時、必ず防水板の下側から水漏れする。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のない防水板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成し、表面をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングした横長矩形の板状体からなることを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成したので、高い圧縮強度により、耐久性、耐摩耗性の高いものとなる。経年劣化がない。
【0019】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性にも富む。合板に比べ比重が1/6と軽量である。
【0020】
また、薄い不織布を積層したので各種接着剤が使え、ポリウレア樹脂を吹き付けてもこれを付着させることができる。
【0021】
そして、横長矩形の板状体は凹凸の少ないシンプルなものであり、表面をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることで止水性の高いものとなり、特にこの防水板はウレタンゴムでコーティングされているため、水圧がかかると自着により密着し、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものとなる。
【0022】
また、ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは紫外線や水分に常時さらされる耐候性に乏しい。そこで、ポリウレア樹脂を塗布することにより、耐久性、耐候性、製品の軽量化が実現できる。
【0023】
請求項2記載の本発明は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成することを要旨とするものである。
【0024】
請求項2記載の本発明によれば、表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで基体を横長矩形の板状体として構成するのにボードを貼り合わせることで所定の厚さを確保でき、箱状にして内部を中空にするなどの手間がいらない。
【0025】
請求項3記載の本発明は、ポリウレア樹脂は、主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけた被覆層であることを要旨とするものである。
【0026】
請求項3記載の本発明によれば、ポリウレア樹脂は吹きつけにより被覆層を形成するのでシームレスなコーティングが簡単に得られる。
【0027】
請求項4記載の本発明は、基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、その上をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることを要旨とするものである。
【0028】
請求項4記載の本発明によれば、ネオジウム磁石によりネジ等で固定することなく浮力に負けずに簡単に固定できる。また、製作段階で、止水板の四つ角にネオジウム磁石を埋め込むこと。その後塗装するもので、塗装してあるので、ネオジウム磁石が外れる心配はない。ネオジウム磁石の数量を工夫することで、人力でも簡単に着脱できるように仕込むことが可能である。
【0029】
請求項5記載の本発明は、基体の裏側左右端近くに上下方向の突条を形成し、ネオジウム磁石はこの突条に埋め込むことを要旨とするものである。
【0030】
請求項5記載の本発明によれば、基体の裏側左右端近くに上下方向の突条を形成し、ネオジウム磁石はこの突条に埋め込むことにより、基体にネオジウム磁石を埋め込むための場所を突条で確保でき、また、該突条は基体の裏側左右端近くに設ける上下方向の脚を形成する凸部として横長矩形の板状体からなる防水板をこの突条分だけ前に出して縦並びで安定して設置できる。
【0031】
請求項6記載の本発明は、板状体の表側下縁にポリウレア樹脂の成型シートをスカート部として垂下したことを要旨とするものである。
【0032】
請求項6記載の本発明によれば、防水板設置の際には最下段に位置するものはこのスカート部が湾曲して地面と接地し、ある程度の不陸部からの浸水もカバーできるとともにスカート部には水の圧力が上からかかるので浮くことを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
以上述べたように本発明の防水板は、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の防水板の1実施形態を示す背面図である。
【
図2】本発明の防水板の1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の防水板の1実施形態を示す横断平面図である。
【
図4】本発明の防水板の1実施形態を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す正面図である。
【
図6】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の防水板の1実施形態を示す背面図、
図2は同上平面図で、本発明の防水板7は横長矩形の板状体からなるが、この板状体は 基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8で構成し、その表面をポリウレア樹脂9をシームレスにコーティングした。
【0036】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物である
【0037】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性能にも富む。
【0038】
また、薄いPET不織布を積層したので各種接着剤が使え、後述のようにポリウレア樹脂9を吹き付けても付着させることができる。
【0039】
このような独立気泡発泡ボード8としては積水化学工業株式会社の商品名「ゼットロン」を好適なものとして採用でき、その製品仕様は、(サイズ)幅910×長さ1,820mm、(厚さ)3、4、5、5.5、6、7、8、9、10、12、15、20mmである。かかる市販のサイズボードを適宜切断して使用する。
【0040】
【0041】
横長矩形の板状体として成形するが、防水板7として所定厚さを確保するには
図3,
図4に示すように表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8を接着剤で貼り合わせて構成することも可能である。図示の例では厚さ20mmの板を中にして厚さ10mmの板で囲うようにして厚さ40mmのものとした。
【0042】
基体の裏側左右端近くに上下方向の突条10を形成し、ネオジウム磁石11をこの突条10に埋め込んだ。この突条10は50mm巾で3mm厚のポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードの桟木として形成したものを貼り付けて形成し、その3mm厚のゼットロンに30mm×20mmのネオジウム磁石用の穴をあけ、ネオジウム磁石11をはめ込む。
【0043】
前記ネオジウム磁石11をはめ込む突条10も含めて横長矩形の板状体の表面を被覆するポリウレア樹脂9は、下記主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつける。
(主材)
水酸基を2個以上有するポリプロピレングリコール(PPG)の水酸基当量に対して、過剰な当量比のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略すこともある。)を混合し、加熱、攪拌することにより反応させて得られた、イソシアネート基を2個以上有するMDI系プレポリマーに0%以上、15%以下の可塑剤を加えたNCO%が、8%以上~16%以下
(硬化剤)
アミノ基を2個以上有するDETDAやPOAPA等のアミン、水酸基を2個以上有するPPG、および必要に応じて可塑剤、老化防止剤、反応触媒、消泡剤および顔料を混合した。
【0044】
硬化剤のアミノ基と水酸基の割合は、アミノ基:水酸基=100:0~60:40であることが望ましい。
【0045】
100:0は、全てアミノ基となるため、ポリウレア樹脂となり、水酸基が60:40の40部入ること、その40部との反応物は、ウレタン樹脂となる。アミノ基との反応によるポリウレア樹脂と水酸基との反応によるウレタン樹脂が混在するポリウレアウレタン樹脂となる。本発明のポリウレア樹脂4は正確にはこのポリウレアウレタン樹脂をいう。
【0046】
ウレア結合とウレタン結合では、結合エネルギーが異なり、ウレア結合>ウレタン結合となり、一定以上のウレア結合が性能を担保するために必要となる。
【0047】
主剤のNCO基と硬化剤のアミノ基と水酸基を合計した基の比率は、NCO基:(アミノ基+水酸基)=1.0:1.05~1.0:0.75とする。
【0048】
主剤のNCO基に対し、アミノ基+水酸基を合計した基が多くなりすぎると、物性が低下し、硬化不良となり、少なすぎるとNCO基が空気中の水分と反応し、塗膜が発泡してしまう。
【0049】
ポリウレア樹脂9の吹き付け厚さは、1.5~3mmであるが、7~9mmまでの厚さが可能である。
【0050】
板状体の表側下縁に沿ってポリウレア樹脂の成型シートをスカート部12として垂下した。
【0051】
スカート部12は接着剤の貼付けにより取り付けるもので、ポリウレア樹脂の成型シートとは主材と硬化剤とからなる2液タイプの材料を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して平坦、凹状もしくは凸状型枠に吹きつけて成形したもので、前記ポリウレア樹脂9と同一の材料を用いることができる。
【0052】
次に使用法について説明する。防水板7は非使用時には積み重ねで収納されており、店舗、住宅、ビル等で浸水するおそれがある時は縦向きにして並べて設置するが、ネオジウム磁石11により鋼製の支柱等に簡単かつ迅速に接着させて設置することができる。
【0053】
最下段に位置させる防水板7にはスカート部12があるのでこれを湾曲させながら接地させる。
【0054】
非鉄など磁力をおびないものに接着させる場合はマグネットまたは鋼製プレートを事前に設置したものに取付けることもできる。
【0055】
相並ぶ防水板7相互はポリウレア樹脂9が水圧がかかると自着により密着し、防水板相互間からの漏れも心配のない。
【符号の説明】
【0056】
1…防水板本体 2…下パッキング
3…縦パッキング 4…溝レール
5…柱 6…ネジ
7…防水板
8…ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード
9…ポリウレア樹脂 10…突条
11…ネオジウム磁石 12…スカート部
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豪雨や災害時に建物の中、地下などへ水が流れ込むのを防ぐ板である防水板(止水板)に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では大雨による河川の氾濫や津波などによる浸水被害が毎年のように発生している。地球温暖化の影響による気候変動は、1時間降水量50mm以上の豪雨を全国で増加させ、万が一水害が起こった際、家族や住宅を守るための対策や備えを行っておく必要がある。
【0003】
台風や集中豪雨などによって増水が発生すると、地下道や建物などの入口の床面を水位が超えるような場合があり、その際には通路や屋内が浸水するなどして甚大な被害を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、このような事態に備えて、予め地下道や建物などの入口の両脇に溝付きの支柱を対向させて立設しておくと共に、防水板をその近傍に格納しておき、いざ増水が発生したときには、防水板を取り出してきて前記支柱の溝内へ差し込み、入口を閉鎖して浸水をくい止めるようにしたものが従来よりある。
【0005】
防水板は、多量の流水による水圧にも耐え得るだけの十分な強度を有し、かつ取り扱いに優れる軽量なアルミニウム合金製のものやFRPなどのプラスチック製のものが広く知られており、下記特許文献に従来例として説明されているように、
図7の様に、入り口の柱5の内側に、縦パッキング3付の溝レール4を設け、上から防水板本体1を差し込み、上側や前側からネジで固定する物や、
図8の様に柱5の前側に縦パッキング3を取り付け、防水板本体1を前側からネジ6で固定する物が多い。図中2は防水板本体1の下縁に設けた下パッキングである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-87465号公報
【特許文献2】実用新案登録第3214872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防水板(止水板)は設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。
【0008】
また、防水板(止水板)を設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。多くの止水板は戸溝という設備がないと設置できないため、その課題をクリアする。
【0009】
前記ネジ6で固定するものでは、上から下への方向、又は、前から後ろへの方向のどちらかにしか、ネジ6による力が加わらない為、使用時水漏れする。又、ネジ6の調整が難しく、設置に時間がかかる。
【0010】
例えば、
図8で縦パッキング3の高さを40センチメートル、防水板本体1の長さを200センチメートルとすると、止水する為のパッキングへの押付力は、0.35キログラム/平方センチメートル程である。これはゴムパッキングでもウレタンスポンジパッキングでもほぼ同じある。
【0011】
パッキングの巾を1.5センチメートルとすると、
図2で防水板を下へ押す力(FW)は、FW=(0.35キログラム/平方センチメートル)×200センチメートル×1.5センチメートル=105kgf、防水板を後ろへ押す力(FX)は、FX=(0.35キログラム/平方センチメートル)×40センチメートル×1.5センチメートル×2=42kgf必要である。
【0012】
防水板本体1が100キログラム以上の重量があれば良いが、手動で設置する防水板本体1は通常30キログラム以下である。
【0013】
又、下へ押す力、FW=105kgfと後ろへ押す力、FX=42kgfを同時にかけないといけない。これは、先にどちらかの力をかけてしまうと、後にかけた力によって先にかけたパッキングがよじれてしまい、機能しなくなるからである。
【0014】
よって、下へ押す力FWと後へ押す力FXを徐々に均等にかけていかなければならないので、非常に困難である。
【0015】
多く見られる製品は、下へ押す力FWを無視して防水板本体の重量のみでまかなおうとしている為、使用時、必ず防水板の下側から水漏れする。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のない防水板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、防水板を構成する基体は表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成した横長矩形の板状体の基体からなり、基体はポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物で、基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、このネオジウム磁石を含めて基体の表面を主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけたポリウレア樹脂の被覆層でシームレスにコーティングし、さらに板状体の表側下縁に前記被覆層と同一の材料であるポリウレア樹脂の成型シートによるスカート部を湾曲可能に垂下したことを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成したので、高い圧縮強度により、耐久性、耐摩耗性の高いものとなる。経年劣化がない。
【0019】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性にも富む。合板に比べ比重が1/6と軽量である。
【0020】
また、薄い不織布を積層したので各種接着剤が使え、ポリウレア樹脂を吹き付けてもこれを付着させることができる。
【0021】
そして、横長矩形の板状体は凹凸の少ないシンプルなものであり、表面をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることで止水性の高いものとなり、特にこの防水板はウレタンゴムでコーティングされているため、水圧がかかると自着により密着し、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものとなる。
【0022】
また、ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは紫外線や水分に常時さらされる耐候性に乏しい。そこで、ポリウレア樹脂を塗布することにより、耐久性、耐候性、製品の軽量化が実現できる。
また、ポリウレア樹脂は吹きつけにより被覆層を形成するのでシームレスなコーティングが簡単に得られる。
【0023】
さらに、基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、その上をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることにより、ネオジウム磁石によりネジ等で固定することなく浮力に負けずに簡単に固定できる。また、製作段階で、止水板の四つ角にネオジウム磁石を埋め込むこと。その後塗装するもので、塗装してあるので、ネオジウム磁石が外れる心配はない。ネオジウム磁石の数量を工夫することで、人力でも簡単に着脱できるように仕込むことが可能である。
【0024】
また、防水板設置の際には最下段に位置するものはこのスカート部が湾曲して地面と接地し、ある程度の不陸部からの浸水もカバーできるとともにスカート部には水の圧力が上からかかるので浮くことを防止できる。
【0025】
請求項2記載の本発明は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成することを要旨とするものである。
【0026】
請求項2記載の本発明によれば、表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで基体を横長矩形の板状体として構成するのにボードを貼り合わせることで所定の厚さを確保でき、箱状にして内部を中空にするなどの手間がいらない。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の防水板は、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の防水板の1実施形態を示す背面図である。
【
図2】本発明の防水板の1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の防水板の1実施形態を示す横断平面図である。
【
図4】本発明の防水板の1実施形態を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す正面図である。
【
図6】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の防水板の1実施形態を示す背面図、
図2は同上平面図で、本発明の防水板7は横長矩形の板状体からなるが、この板状体は 基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8で構成し、その表面をポリウレア樹脂9をシームレスにコーティングした。
【0030】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物である
【0031】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性能にも富む。
【0032】
また、薄いPET不織布を積層したので各種接着剤が使え、後述のようにポリウレア樹脂9を吹き付けても付着させることができる。
【0033】
このような独立気泡発泡ボード8としては積水化学工業株式会社の商品名「ゼットロン」を好適なものとして採用でき、その製品仕様は、(サイズ)幅910×長さ1,820mm、(厚さ)3、4、5、5.5、6、7、8、9、10、12、15、20mmである。かかる市販のサイズボードを適宜切断して使用する。
【0034】
【0035】
横長矩形の板状体として成形するが、防水板7として所定厚さを確保するには
図3,
図4に示すように表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8を接着剤で貼り合わせて構成することも可能である。図示の例では厚さ20mmの板を中にして厚さ10mmの板で囲うようにして厚さ40mmのものとした。
【0036】
基体の裏側左右端近くに上下方向の突条10を形成し、ネオジウム磁石11をこの突条10に埋め込んだ。この突条10は50mm巾で3mm厚のポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードの桟木として形成したものを貼り付けて形成し、その3mm厚のゼットロンに30mm×20mmのネオジウム磁石用の穴をあけ、ネオジウム磁石11をはめ込む。
【0037】
前記ネオジウム磁石11をはめ込む突条10も含めて横長矩形の板状体の表面を被覆するポリウレア樹脂9は、下記主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつける。
(主材)
水酸基を2個以上有するポリプロピレングリコール(PPG)の水酸基当量に対して、過剰な当量比のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略すこともある。)を混合し、加熱、攪拌することにより反応させて得られた、イソシアネート基を2個以上有するMDI系プレポリマーに0%以上、15%以下の可塑剤を加えたNCO%が、8%以上~16%以下
(硬化剤)
アミノ基を2個以上有するDETDAやPOAPA等のポリアミン、水酸基を2個以上有するPPG、および必要に応じて可塑剤、老化防止剤、反応触媒、消泡剤および顔料を混合した。
【0038】
硬化剤のアミノ基と水酸基の割合は、アミノ基:水酸基=100:0~60:40であることが望ましい。
【0039】
100:0は、全てアミノ基となるため、ポリウレア樹脂となり、水酸基が60:40の40部入ること、その40部との反応物は、ウレタン樹脂となる。アミノ基との反応によるポリウレア樹脂と水酸基との反応によるウレタン樹脂が混在するポリウレアウレタン樹脂となる。本発明のポリウレア樹脂4は正確にはこのポリウレアウレタン樹脂をいう。
【0040】
ウレア結合とウレタン結合では、結合エネルギーが異なり、ウレア結合>ウレタン結合となり、一定以上のウレア結合が性能を担保するために必要となる。
【0041】
主剤のNCO基と硬化剤のアミノ基と水酸基を合計した基の比率は、NCO基:(アミノ基+水酸基)=1.0:1.05~1.0:0.75とする。
【0042】
主剤のNCO基に対し、アミノ基+水酸基を合計した基が多くなりすぎると、物性が低下し、硬化不良となり、少なすぎるとNCO基が空気中の水分と反応し、塗膜が発泡してしまう。
【0043】
ポリウレア樹脂9の吹き付け厚さは、1.5~3mmであるが、7~9mmまでの厚さが可能である。
【0044】
板状体の表側下縁に沿ってポリウレア樹脂の成型シートをスカート部12として垂下した。
【0045】
スカート部12は接着剤の貼付けにより取り付けるもので、ポリウレア樹脂の成型シートとは主材と硬化剤とからなる2液タイプの材料を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して平坦、凹状もしくは凸状型枠に吹きつけて成形したもので、前記ポリウレア樹脂9と同一の材料を用いることができる。
【0046】
次に使用法について説明する。防水板7は非使用時には積み重ねで収納されており、店舗、住宅、ビル等で浸水するおそれがある時は縦向きにして並べて設置するが、ネオジウム磁石11により鋼製の支柱等に簡単かつ迅速に接着させて設置することができる。
【0047】
最下段に位置させる防水板7にはスカート部12があるのでこれを湾曲させながら接地させる。
【0048】
非鉄など磁力をおびないものに接着させる場合はマグネットまたは鋼製プレートを事前に設置したものに取付けることもできる。
【0049】
相並ぶ防水板7相互はポリウレア樹脂9が水圧がかかると自着により密着し、防水板相互間からの漏れも心配のない。
【符号の説明】
【0050】
1…防水板本体 2…下パッキング
3…縦パッキング 4…溝レール
5…柱 6…ネジ
7…防水板
8…ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード
9…ポリウレア樹脂 10…突条
11…ネオジウム磁石 12…スカート部
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水板を構成する基体は表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成した横長矩形の板状体の基体からなり、基体はポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物で、基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、このネオジウム磁石を含めて基体の表面を主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけたポリウレア樹脂の被覆層でシームレスにコーティングし、さらに板状体の表側下縁に前記被覆層と同一の材料であるポリウレア樹脂の成型シートによるスカート部を湾曲可能に垂下したことを特徴とした防水板。
【請求項2】
基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成する請求項1記載の防水板。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豪雨や災害時に建物の中、地下などへ水が流れ込むのを防ぐ板である防水板(止水板)に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では大雨による河川の氾濫や津波などによる浸水被害が毎年のように発生している。地球温暖化の影響による気候変動は、1時間降水量50mm以上の豪雨を全国で増加させ、万が一水害が起こった際、家族や住宅を守るための対策や備えを行っておく必要がある。
【0003】
台風や集中豪雨などによって増水が発生すると、地下道や建物などの入口の床面を水位が超えるような場合があり、その際には通路や屋内が浸水するなどして甚大な被害を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、このような事態に備えて、予め地下道や建物などの入口の両脇に溝付きの支柱を対向させて立設しておくと共に、防水板をその近傍に格納しておき、いざ増水が発生したときには、防水板を取り出してきて前記支柱の溝内へ差し込み、入口を閉鎖して浸水をくい止めるようにしたものが従来よりある。
【0005】
防水板は、多量の流水による水圧にも耐え得るだけの十分な強度を有し、かつ取り扱いに優れる軽量なアルミニウム合金製のものやFRPなどのプラスチック製のものが広く知られており、下記特許文献に従来例として説明されているように、
図7の様に、入り口の柱5の内側に、縦パッキング3付の溝レール4を設け、上から防水板本体1を差し込み、上側や前側からネジで固定する物や、
図8の様に柱5の前側に縦パッキング3を取り付け、防水板本体1を前側からネジ6で固定する物が多い。図中2は防水板本体1の下縁に設けた下パッキングである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-87465号公報
【特許文献2】実用新案登録第3214872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防水板(止水板)は設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。
【0008】
また、防水板(止水板)を設置することにより通路が封鎖されるため、設置する都度人力にて設置を行う必要があり、いかに軽量でかつ、簡単に着脱可能であるかが課題である。多くの止水板は戸溝という設備がないと設置できないため、その課題をクリアする。
【0009】
前記ネジ6で固定するものでは、上から下への方向、又は、前から後ろへの方向のどちらかにしか、ネジ6による力が加わらない為、使用時水漏れする。又、ネジ6の調整が難しく、設置に時間がかかる。
【0010】
例えば、
図8で縦パッキング3の高さを40センチメートル、防水板本体1の長さを200センチメートルとすると、止水する為のパッキングへの押付力は、0.35キログラム/平方センチメートル程である。これはゴムパッキングでもウレタンスポンジパッキングでもほぼ同じある。
【0011】
パッキングの巾を1.5センチメートルとすると、
図2で防水板を下へ押す力(FW)は、FW=(0.35キログラム/平方センチメートル)×200センチメートル×1.5センチメートル=105kgf、防水板を後ろへ押す力(FX)は、FX=(0.35キログラム/平方センチメートル)×40センチメートル×1.5センチメートル×2=42kgf必要である。
【0012】
防水板本体1が100キログラム以上の重量があれば良いが、手動で設置する防水板本体1は通常30キログラム以下である。
【0013】
又、下へ押す力、FW=105kgfと後ろへ押す力、FX=42kgfを同時にかけないといけない。これは、先にどちらかの力をかけてしまうと、後にかけた力によって先にかけたパッキングがよじれてしまい、機能しなくなるからである。
【0014】
よって、下へ押す力FWと後へ押す力FXを徐々に均等にかけていかなければならないので、非常に困難である。
【0015】
多く見られる製品は、下へ押す力FWを無視して防水板本体の重量のみでまかなおうとしている為、使用時、必ず防水板の下側から水漏れする。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のない防水板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、
防水板を構成する基体は表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成した横長矩形の板状体からなり、板状体は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成し、独立気泡発泡ボードは、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物であり、
基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、このネオジウム磁石を含めて基体の表面を主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけたポリウレア樹脂の被覆層でシームレスにコーティングし、さらに板状体の表側下縁に前記被覆層と同一の材料であるポリウレア樹脂の成型シートによるスカート部を湾曲可能に垂下したことを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成したので、高い圧縮強度により、耐久性、耐摩耗性の高いものとなる。経年劣化がない。
【0019】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性にも富む。合板に比べ比重が1/6と軽量である。
【0020】
また、薄い不織布を積層したので各種接着剤が使え、ポリウレア樹脂を吹き付けてもこれを付着させることができる。
【0021】
そして、横長矩形の板状体は凹凸の少ないシンプルなものであり、表面をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることで止水性の高いものとなり、特にこの防水板はウレタンゴムでコーティングされているため、水圧がかかると自着により密着し、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものとなる。
【0022】
また、ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードは紫外線や水分に常時さらされる耐候性に乏しい。そこで、ポリウレア樹脂を塗布することにより、耐久性、耐候性、製品の軽量化が実現できる。
また、ポリウレア樹脂は吹きつけにより被覆層を形成するのでシームレスなコーティングが簡単に得られる。
【0023】
さらに、基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、その上をポリウレア樹脂をシームレスにコーティングすることにより、ネオジウム磁石によりネジ等で固定することなく浮力に負けずに簡単に固定できる。また、製作段階で、止水板の四つ角にネオジウム磁石を埋め込むこと。その後塗装するもので、塗装してあるので、ネオジウム磁石が外れる心配はない。ネオジウム磁石の数量を工夫することで、人力でも簡単に着脱できるように仕込むことが可能である。
【0024】
また、防水板設置の際には最下段に位置するものはこのスカート部が湾曲して地面と接地し、ある程度の不陸部からの浸水もカバーできるとともにスカート部には水の圧力が上からかかるので浮くことを防止できる。
【0025】
請求項2記載の本発明は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成することを要旨とするものである。
【0026】
請求項2記載の本発明によれば、表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで基体を横長矩形の板状体として構成するのにボードを貼り合わせることで所定の厚さを確保でき、箱状にして内部を中空にするなどの手間がいらない。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の防水板は、耐久性、耐候性に富み、形状がシンプルな上に軽量でかつ強度があるので扱い易く、しかも防水板自体に自着による密着性があるので、縦に上下に並べても防水板相互間からの漏れも心配のないものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の防水板の1実施形態を示す背面図である。
【
図2】本発明の防水板の1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の防水板の1実施形態を示す横断平面図である。
【
図4】本発明の防水板の1実施形態を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す正面図である。
【
図6】本発明の防水板の最下段に使用するものの1実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の防水板の1実施形態を示す背面図、
図2は同上平面図で、本発明の防水板7は横長矩形の板状体からなるが、この板状体は 基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8で構成し、その表面をポリウレア樹脂9をシームレスにコーティングした。
【0030】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物である
【0031】
ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8は硬質発泡ボードで、ラグビーボール状の気泡が厚さ方向に整列しているため、軽量なのに高い圧縮強度を有し、曲げても割れにくく、しかもカッターでも簡単に切断でき、湿気による伸び縮みもなく、合板の約3倍の断熱性がある。水に強く、衝撃緩和性やピンナップ性能にも富む。
【0032】
また、薄いPET不織布を積層したので各種接着剤が使え、後述のようにポリウレア樹脂9を吹き付けても付着させることができる。
【0033】
このような独立気泡発泡ボード8としては積水化学工業株式会社の商品名「ゼットロン」を好適なものとして採用でき、その製品仕様は、(サイズ)幅910×長さ1,820mm、(厚さ)3、4、5、5.5、6、7、8、9、10、12、15、20mmである。かかる市販のサイズボードを適宜切断して使用する。
【0034】
【0035】
横長矩形の板状体として成形するが、防水板7として所定厚さを確保するには
図3,
図4に示すように表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード8を接着剤で貼り合わせて構成することも可能である。図示の例では厚さ20mmの板を中にして厚さ10mmの板で囲うようにして厚さ40mmのものとした。
【0036】
基体の裏側左右端近くに上下方向の突条10を形成し、ネオジウム磁石11をこの突条10に埋め込んだ。この突条10は50mm巾で3mm厚のポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードの桟木として形成したものを貼り付けて形成し、その3mm厚のゼットロンに30mm×20mmのネオジウム磁石用の穴をあけ、ネオジウム磁石11をはめ込む。
【0037】
前記ネオジウム磁石11をはめ込む突条10も含めて横長矩形の板状体の表面を被覆するポリウレア樹脂9は、下記主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつける。
(主材)
水酸基を2個以上有するポリプロピレングリコール(PPG)の水酸基当量に対して、過剰な当量比のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略すこともある。)を混合し、加熱、攪拌することにより反応させて得られた、イソシアネート基を2個以上有するMDI系プレポリマーに0%以上、15%以下の可塑剤を加えたNCO%が、8%以上~16%以下
(硬化剤)
アミノ基を2個以上有するDETDAやPOAPA等のポリアミン、水酸基を2個以上有するPPG、および必要に応じて可塑剤、老化防止剤、反応触媒、消泡剤および顔料を混合した。
【0038】
硬化剤のアミノ基と水酸基の割合は、アミノ基:水酸基=100:0~60:40であることが望ましい。
【0039】
100:0は、全てアミノ基となるため、ポリウレア樹脂となり、水酸基が60:40の40部入ること、その40部との反応物は、ウレタン樹脂となる。アミノ基との反応によるポリウレア樹脂と水酸基との反応によるウレタン樹脂が混在するポリウレアウレタン樹脂となる。本発明のポリウレア樹脂4は正確にはこのポリウレアウレタン樹脂をいう。
【0040】
ウレア結合とウレタン結合では、結合エネルギーが異なり、ウレア結合>ウレタン結合となり、一定以上のウレア結合が性能を担保するために必要となる。
【0041】
主剤のNCO基と硬化剤のアミノ基と水酸基を合計した基の比率は、NCO基:(アミノ基+水酸基)=1.0:1.05~1.0:0.75とする。
【0042】
主剤のNCO基に対し、アミノ基+水酸基を合計した基が多くなりすぎると、物性が低下し、硬化不良となり、少なすぎるとNCO基が空気中の水分と反応し、塗膜が発泡してしまう。
【0043】
ポリウレア樹脂9の吹き付け厚さは、1.5~3mmであるが、7~9mmまでの厚さが可能である。
【0044】
板状体の表側下縁に沿ってポリウレア樹脂の成型シートをスカート部12として垂下した。
【0045】
スカート部12は接着剤の貼付けにより取り付けるもので、ポリウレア樹脂の成型シートとは主材と硬化剤とからなる2液タイプの材料を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して平坦、凹状もしくは凸状型枠に吹きつけて成形したもので、前記ポリウレア樹脂9と同一の材料を用いることができる。
【0046】
次に使用法について説明する。防水板7は非使用時には積み重ねで収納されており、店舗、住宅、ビル等で浸水するおそれがある時は縦向きにして並べて設置するが、ネオジウム磁石11により鋼製の支柱等に簡単かつ迅速に接着させて設置することができる。
【0047】
最下段に位置させる防水板7にはスカート部12があるのでこれを湾曲させながら接地させる。
【0048】
非鉄など磁力をおびないものに接着させる場合はマグネットまたは鋼製プレートを事前に設置したものに取付けることもできる。
【0049】
相並ぶ防水板7相互はポリウレア樹脂9が水圧がかかると自着により密着し、防水板相互間からの漏れも心配のない。
【符号の説明】
【0050】
1…防水板本体 2…下パッキング
3…縦パッキング 4…溝レール
5…柱 6…ネジ
7…防水板
8…ポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボード
9…ポリウレア樹脂 10…突条
11…ネオジウム磁石 12…スカート部
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水板を構成する基体は表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成した横長矩形の板状体からなり、板状体は、基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードで構成し、独立気泡発泡ボードは、ポリオレフィン系樹脂と、ジオキシム化合物、ビスマレイミド化合物、アリル系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマー、キノン化合物、およびこれらの2以上の組み合わせよりなる群から選ばれた変性用モノマーとを溶融混和下に反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物であり、
基体の裏側左右端近くにネオジウム磁石を埋め込み、このネオジウム磁石を含めて基体の表面を主材と硬化剤を、専用の機械にて加温し、ホース圧送してホース先端にて混合、攪拌して吹きつけたポリウレア樹脂の被覆層でシームレスにコーティングし、さらに板状体の表側下縁に前記被覆層と同一の材料であるポリウレア樹脂の成型シートによるスカート部を湾曲可能に垂下したことを特徴とした防水板。
【請求項2】
基体を表面に不織布を積層したポリプロピレンを主原料とする無架橋または微架橋の独立気泡発泡ボードを貼り合わせて構成する請求項1記載の防水板。