(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121298
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】車載用マイクロフォンおよび車両
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240830BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240830BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H04R1/00 321
H04R1/02 106
H04R1/02 107
B60R11/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028323
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 一素
(72)【発明者】
【氏名】大谷 佳道
【テーマコード(参考)】
3D020
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC13
3D020BD05
5D017BC01
5D017BC18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロフォン内に侵入した水や異物を自然に除去でき、かつ、マイクロフォンの小型化が可能な車載用マイクロフォンおよび車両を提供する。
【解決手段】車載用マイクロフォン1は、音を検出するマイクセンサ51と、底面21および側面23を有するカバー2と、を備え、上記マイクセンサにより検出される音を収音する少なくとも1つの第1孔22が上記底面に開口するよう設けられている。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を検出するマイクセンサと、
底面および側面を有するカバーと
を備え、
前記マイクセンサにより検出される音を収音する少なくとも1つの第1孔が前記底面に開口するよう設けられている
車載用マイクロフォン。
【請求項2】
前記第1孔は、前記底面および前記側面の両方に開口するよう設けられている
請求項1に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項3】
前記第1孔から前記マイクセンサに到達する音の通路には、前記底面に対して斜め方向に直線状に伸びる部分が形成されている
請求項2に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項4】
前記マイクセンサを搭載する基板と、前記基板を保持するホルダとをさらに備え、
前記ホルダは前記基板が配置される側に突出する突起をさらに備え、
前記突起は、前記第1孔が収音した音が通過する第1開口部の周りに形成され、
前記基板が前記ホルダにより保持される場合に、前記基板からの圧力により押しつぶされる請求項1に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項5】
前記突起と前記基板との間に、前記第1孔が収音した音が通過する第2孔を有する防水膜をさらに備える
請求項4に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項6】
前記ホルダは、弾性体により構成される
請求項5に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項7】
前記基板は、前記防水膜の前記第2孔と連通する第3孔をさらに備え、
前記基板の前記第3孔上に、前記マイクセンサが配置される
請求項6に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項8】
車両のケーブルと電気的に接続されるコネクタをさらに備える
請求項7に記載の車載用マイクロフォン。
【請求項9】
請求項1に記載の車載用マイクロフォンが、車体の下方に向けて前記第1孔が開口するように配置されている車両。
【請求項10】
請求項2に記載の車載用マイクロフォンが、車体の下方および側面に向けて前記第1孔が開口するように配置されている車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体に配置される車載用マイクロフォンおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体の外側に配置され、車外の音を受けて電気信号に変換するマイクロフォンが使用されている。一般的に用いられるマイクロフォンには、車外からの土や砂ぼこり、水などの影響を受けやすいという課題がある。
【0003】
このような課題を解決するため、特許文献1では、保護キャップの下に設けられた保護膜にて、マイクユニットへの水や異物の侵入を防いでいる。また、特許文献2では、ヒータによる水沸騰や気体膨張によりマイク内から水を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/127408号
【特許文献2】中国特許出願公開第110418228号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、保護キャップと保護膜との間の空間に侵入した水や異物は保護膜上に留まり、保護膜の音圧印加時振動特性が変化し、音響性能を著しく損なうという問題があった。また、特許文献2の技術では、ヒータを設けなければならないため小型化が難しいという問題があった。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、マイクロフォン内に侵入した水や異物を自然に除去でき、かつマイクロフォンの小型化が可能な車載用マイクロフォンおよび車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る車載用マイクロフォンの一態様は、音を検出するマイクセンサと、底面および側面を有するカバーとを備え、上記マイクセンサにより検出される音を収音する少なくとも1つの第1孔が上記底面に開口するよう設けられている。
【0008】
また、本開示に係る車両の一態様は、上記記載の車載用マイクロフォンが、車体の下方に向けて上記第1孔が開口するように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、マイクロフォン内に侵入した水や異物を自然に除去でき、かつマイクロフォンを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、車載用マイクロフォンが車体に取り付けられた構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、車載用マイクロフォンのカバーが車体に配置されている構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態における車載用マイクロフォンを車体側の上方から見た分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態における車載用マイクロフォンを車体側の下方から見た分解斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施の形態における車載用マイクロフォンの断面図である。
【
図5B】
図5Bは、本実施の形態におけるカバーを示す底面図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施の形態における車載用マイクロフォンの断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施の形態におけるカバーを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
まず、実施の形態における車載用マイクロフォン1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、車載用マイクロフォン1が車体7に取り付けられた構成の一例を示す断面図であり、
図2は、車載用マイクロフォン1のカバー2が車体7に配置されている構成の一例を示す図である。
【0014】
車載用マイクロフォン1は、例えば、車体7後方の車体ボディの地面と向かい合う面72に取り付けられる。車載用マイクロフォン1のカバー2の底面21は地面と向かい合っている。マイクロフォン1のコネクタ6のカバー2側の部分は、車体7の地面と向かい合う面72に固定されている。コネクタ6は車体7の内部に配置され、カバー2は車体7の地面と向かい合う面72の外側に配置されている。
【0015】
また、カバー2の底面には、後述するマイクセンサにより検出される音を収音する第1孔22が形成されている。そのため、車体7の下方に第1孔22が開口するように車載用マイクロフォン1を配置することにより、車載用マイクロフォン1内に侵入した水や異物を自然に除去できる。また、従来のように、ヒータを設ける必要がないため、車載用マイクロフォン1を小型化することができる。
【0016】
さらに、第1孔22は、カバー2の底面だけでなく、カバー2の側面にも開口するように形成されている。そのため、車体7の側面71に第1孔22が開口するように車載用マイクロフォン1を配置することにより、第1孔22に車両が巻きあげた水、泥や埃等の異物を入りにくくすることができる。
【0017】
なお、第1孔22が車体7の側面71に向くように車載用マイクロフォン1を配置する必要は必ずしもないが、このように配置することにより、車両が巻きあげた水や異物が直接第1孔22に入ることを抑制することができる。
【0018】
また、車載用マイクロフォン1の配置は面72に限定されず、車体7の前方やバンパの底面、サイドミラー等に配置されてもよい。
【0019】
図3は、本実施の形態における車載用マイクロフォン1を車体7側の上方から見た分解斜視図である。
図4は、本実施の形態における車載用マイクロフォン1を車体7側の下方から見た分解斜視図である。車載用マイクロフォン1は、カバー2とホルダ3と防水膜4と基板5とコネクタ6とを有している。
【0020】
図5Aおよび
図6Aは、本実施の形態における車載用マイクロフォン1の断面図であり、
図5Bおよび
図6Bは、本実施の形態におけるカバー2を示す底面図である。
図5Aに示す断面図は、
図5Bに示されたA-A線に沿って車載用マイクロフォン1を切断した場合の図である。
図6Aに示す断面図は、
図6Bに示されたB-B線に沿って車載用マイクロフォン1を切断した場合の図である。
【0021】
カバー2は楕円形状の底面21と側面23とを有し、側面23の略直線状の部分には、5個の第1孔22が形成されている。第1孔22は、カバー2の底面21に、底面21と垂直な方向に開口するよう形成されている。
【0022】
また、第1孔22は、カバー2の側面23に、側面23と垂直な方向に開口するよう形成されている。具体的には、第1孔22は、2つの側面22aと、各側面22aと直角に交わる面22bとで画されており、面22bに垂直なカバー2の外側方向に開口するよう形成されている。
【0023】
カバー2の第1孔22を、底面21だけあるいは側面23だけに開口するよう設けた場合でも、水や異物の侵入を防ぐという効果が得られるが、底面21および側面23の両方に第1孔22を形成することにより、底面21だけに開口するよう第1孔22を設ける場合と比べて、車両の真下からの泥の巻き上げなどで第1孔22が埋まってしまう可能性を低減することができる。
【0024】
また、側面23だけに開口するよう第1孔22を設ける場合と比べて、水や異物を第1孔22から排出しやすくすることができる。また、音孔径を大きくすることができるため、音響性能(周波数性能)を向上させることができる。
【0025】
なお、第1孔22が5個ある理由は、埃や泥等が埋まって一部の第1孔22が使えなくなった時でも、残りの第1孔22が音を検出することができるためである。なお、第1孔22の数は5個に限定されず、他の個数であってもよい。
【0026】
カバー2には、底面21aと側面23aとにより、略楕円形状の凹部24が形成されている。また、カバー2の上部には、底面21より大きい楕円形状のフランジ面25が形成されている。さらに、第1孔22側のカバー2の内側には、フランジ面25から一段下がった段差面である面26が形成されている。
【0027】
ホルダ3は底面31と傾斜面32と側面33とを有し、傾斜面32には第1孔22で収音された音の通路となる第1開口部34が形成されている。第1開口部34の開口の形状は、矩形で角に丸みがある形状である。第1開口部34は傾斜面32からホルダ3の底面31に対して斜め方向に形成されている。傾斜面32の上部には、カバー2の面26と接する面35が形成されている。
【0028】
ホルダ3の底面31は略楕円形状であり、ホルダ3は内側に凹部36を有している。凹部36の第1開口部34が配置されている部分の上方には、円筒状の封止リブ37が配置され、封止リブ37には、第1孔22が収音した音が通過する円筒状の第2開口部34aが形成されている。封止リブ37の第2開口部34aと傾斜面32に形成された第1開口部34とは、連通している。
【0029】
封止リブ37の第2開口部34aの周囲には突起38が形成されている。また、突起38の上部には、第1孔22が収音した音が通過する第2孔41を有する輪状の防水膜4が配置される。ホルダ3の側面33の上部には、底面31より大きい略楕円形状のフランジ面39が形成されている。
【0030】
ホルダ3の底面31と側面33とは、カバー2の凹部24に固定される。ホルダ3の面35は、カバー2の面26に接し、ホルダ3の第2開口部34aはカバー2の第1孔22と連通する。また、ホルダ3の面39の裏面39aは、カバー2の面25と接しており、例えばレーザ溶着により接合される。
【0031】
防水膜4の第2孔41の直径は、第2開口部34aの円の直径と略同一である。防水膜4の輪状部分42の直径は、封止リブ37の直径と略同一である。
【0032】
基板5の表面には、他の電子部品や回路等が搭載され、第2開口部34aの上方にはマイクセンサ51が搭載されている。また、基板5には、マイクセンサ51が配置された位置に、音を通過させる円筒状の第3孔52が形成されている。基板5は矩形であり、角が丸みを有するように形成されている。
【0033】
基板5はホルダ3の面39上に配置され、基板5の第3孔52の中心は、ホルダ3の第2開口部34aの中心、および、防水膜4の第2孔41の中心と一致する。
【0034】
図4、
図5Aに示すように、第1孔22で収音された音は、第1開口部34、第2開口部34a、および第3孔52を通過してマイクロセンサ51に到達する。ここで、第1開口部34は、第1孔22が設けられたカバー2の底面21に対して斜め方向に直線状に形成されている。
【0035】
このように音の通路を直線状に形成することにより、音の通路を階段状または曲線状に形成する場合と比較して、音の通過する通路の長さを短くでき、音響性能(周波数性能)を向上させることができる。
【0036】
また、ホルダ3と基板5との間に配置された防水膜4により、仮に水や異物が基板5の第3孔52に到達したとしても、水や異物がマイクセンサ51まで到達することを防止し、マイクセンサ51が水や異物で破壊されることを防止できる。
【0037】
また、突起38を備えるホルダ3は、ゴム等の弾性体または軟質材で形成されている。また、防水膜4は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の材料で形成されている。そして、基板5がホルダ3により保持される場合に、基板5からの圧力により突起38が押しつぶされる。
【0038】
これにより、ホルダ3と基板5との間を確実に塞ぐことができ、水漏れや、音響特性劣化につながる音漏れを防ぐことができる。また、仮に勢いの良い水が車載用マイクロフォン1内に侵入しても、防水膜が剥がれにくくなる。
【0039】
なお、防水膜4はこれらの材料に限定されず、他の材料で成形されてもよい。また、防水膜4は両面テープにより、ホルダ3の封止リブ37と基板5とに接着してもよい。ただし、上記のような封止リブ37を用いることにより、製造工数を少なくすることができ、より安価に車載用マイクロフォン1を製造することが可能となる。
【0040】
コネクタ6は、固定部61と支持部62と収納部63とを有している。固定部61は、コネクタ6の下部に形成され、コネクタ6に対しカバー2とホルダ3と基板5とを固定する。ここで、コネクタ6とカバー2とは、密閉される。コネクタ6は、車両の一部であるケーブルと電気的に接続される。
【0041】
固定部61は楕円形状の底面64aを有し、底面64aはカバー2の面25を固定する。また、固定部61は、その内側に側面65aと、側面65aに垂直な面64bとを有する。側面65aは、ホルダ3の側面39bを固定し、面64bはホルダ3の面39を固定する。
【0042】
さらに、固定部61は、側面65aの上部に、角に丸みが有る矩形状の側面65bと、側面65bと垂直な面64cとを有する。側面65bは、基板5の側面53aを固定し、面64cは、基板5の表面53bを固定する。
【0043】
図1および
図3に示すように、固定部61の上面64dは、車載用マイクロフォン1が車体7に設置される時、車体7の面72に接する。支持部62は、弾性を有する一対の支持部材62aを有する。一対の支持部材62aを両側から手で挟んで車載用マイクロフォン1を面72に形成された穴に挿入し、その後一対の支持部材62aから手を放すことにより、車載用マイクロフォン1が車体7に設置される。
【0044】
収納部63は、コネクタ6の内部に設けられた空隙であり、基板5や2本の電極棒66等が収納されている。電極棒66は基板5に形成されている2つの孔54を貫通し、その先端がホルダ3の底面31の表側に形成された第4孔31aに固定されている。
【0045】
なお、本実施の形態では、基板5にマイクセンサ51、および、第1孔22が収音した音が通過する第1開口部34をそれぞれ1つずつ設ける場合について説明したが、また、基板5にマイクセンサを複数設け、それぞれに対応する音の通路となる孔を1つだけ設けることとしてもよい。
【0046】
また、基板5にマイクセンサを複数設け、それぞれに対応する音の通路となる孔を複数設けることとしてもよい。音の通路を複数設けることにより、音の通路となる孔を1つだけ設ける場合と比較して、指向性合成の精度を高めることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、
図1に示したように、第1孔22が形成されたカバー2の底面が地面と平行になるように車載用マイクロフォン1を車体7に設置することとしたが、カバー2の底面が地面と垂直になるように車載用マイクロフォン1を車体7に設置することとしてもよい。
【0048】
具体的には、
図1に示す車載用マイクロフォン1を横にして、車体7の側面71に開口している第1孔22の部分が車体7の下方に開口するように、かつ、車体7の下方に開口している第1孔22の部分が車体7の側面71に開口するように車載用マイクロフォン1を車体7に設置することとしてもよい。
【0049】
これにより、マイクロフォン内に侵入した水や異物を自然に除去でき、かつマイクロフォンを小型化することができるという
図1に示した車載用マイクロフォン1の効果と同様の効果を得つつ、車載用マイクロフォン1を車体7の側面に配置できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の技術は、マイクロフォン内に侵入した水や異物を自然に除去でき、かつマイクロフォンの小型化が可能な車載用マイクロフォンおよび車両に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車載用マイクロフォン
2 カバー
3 ホルダ
4 防水膜
5 基板
6 コネクタ
7 車体
22 第1孔
34 第1開口部
34a 第2開口部
38 突起
41 第2孔
51 マイクセンサ
52 第3孔