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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012130
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20240118BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111104
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2022112760
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】森川 稔之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓巳
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC232
4C083AC302
4C083AC392
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC792
4C083AD132
4C083BB07
4C083BB34
4C083CC38
4C083DD01
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】コアセルベートの形成能に優れるとともに、ポンプからの吐出がし易く、洗浄時に泡立て易い適度な粘度を有し、低温時においても透明な外観を維持できる低温安定性を有する毛髪洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】成分(A):下記式(1)で表される界面活性剤を1~20質量%、成分(B):両性界面活性剤を1~20質量%、成分(C):カチオン化ポリマーを0.03~3質量%、成分(D):β-アラニンおよび/またはその誘導体を0.001~1.5質量%含有し、質量比((A)/(B))が0.2~4であり、かつ質量比((A)/(D))が15~300である毛髪洗浄剤組成物。
【化1】
(RCOは炭素数8~22の脂肪族アシル基を示し、Rは水素原子、または1つの水酸基を有していてもよい炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、Mはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、または有機アンモニウムを示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):下記式(1)で表される界面活性剤を1~20質量%、
成分(B):両性界面活性剤を1~20質量%、
成分(C):カチオン化ポリマーを0.03~3質量%、
成分(D):下記式(2)で表される化合物および/またはその塩を0.001~1.5質量%
含有し、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が0.2~4であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))が15~300である毛髪洗浄剤組成物。
【化1】
(式(1)中、RCOは炭素数8~22の脂肪族アシル基を示し、Rは水素原子、または1つの水酸基を有していてもよい炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、Mはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、または有機アンモニウムを示す。)

【化2】
(式(2)中、Rは水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪の洗浄に用いられる毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムを始めとしたアシル-β-アラニン塩は毛髪洗浄剤組成物に含有されている化合物であり、アミノ酸系界面活性剤を含有する近年の毛髪洗浄剤の流行に伴って、その化合物の利用は増えている。
【0003】
本化合物を含有する毛髪洗浄剤組成物の特徴の1つに、すすぎ時の良好な指通り性が挙げられる。例えば、特許文献1には、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体を含有する毛髪洗浄剤組成物が開示され、この組成物が、すすぎ時の指通り性の観点から、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムを含有すると記載されている(段落[0016]を参照)。
【0004】
また、このすすぎ時の指通り性を定量的に評価する方法として、毛髪洗浄剤を希釈した場合に観察される濁りを濁度として計測する方法がある。その原理は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン化ポリマーの3成分を含有した毛髪洗浄剤が多量の水によって希釈されることで、水不溶性の複合体(コアセルベート)を形成し、これによって希釈液が濁る、というものである。このコアセルベートは水に不溶であるため、すすぎ時に毛髪に付着し、毛髪と指との摩擦を軽減することで、指通り性が良好となる効果を発揮する。
【0005】
例えば、特許文献2には、イオン性界面活性剤、カチオン化タラガム、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンを含むシャンプー組成物が開示され、イオン性界面活性剤として先に挙げたラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムを含有するシャンプー組成物について、すすぎ時のコアセルベート生成能の評価が行われている(実施例2,3、段落[0020]を参照)。
【0006】
更に、このコアセルベートの形成を促進する技術も提案されている。例えば、特許文献3には、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性高分子、アルカリ金属の無機塩に加えて、特定のアルキレンオキシド誘導体を含むシャンプー組成物が開示され、本組成物では、特定のアルキレンオキシド誘導体がアニオン性界面活性剤とカチオン性高分子との凝集を促進することが記載されている(段落[0024]を参照)。
【0007】
また、このコアセルベートの形成は毛髪と指との摩擦を軽減するだけでなく、毛髪同士の摩擦も軽減し、引っ掛かりを抑えることで、絡まり難くする効果も発揮する。これによって、洗浄時に泡立てた泡が毛髪の絡まり内に残らず、すすぎ易くなる効果へとつながっている。
【0008】
このように、上述した組成物を例とする洗浄剤組成物によって、コアセルベートの形成、それに伴うすすぎ時の指通り性の改善などが提案されてきた。しかしながら、これらの組成物は、コアセルベートの形成能には優れるものの、毛髪洗浄剤組成物の粘度が高くなるために、ポンプから出難くなる場合や、洗浄時に泡立て難くなる場合がある。
【0009】
また、近年の毛髪洗浄剤は、意匠性に着目することが増え、組成物として透明なものが求められている。しかし、上述した組成物はコアセルベートの形成の促進を目的とするものであるので、調製した希釈前の毛髪洗浄剤組成物においてもコアセルベートが析出し、外観の透明性の維持に劣る場合がある。特に、冬季においても透明性の維持に劣る場合、すなわち、低温における透明性(低温安定性)に劣る場合がある。
そのため、コアセルベートの形成能に優れるとともに、ポンプからの吐出がし易く、洗浄時に泡立て易い適度な粘度を有し、冬季などにおける低温時においても透明な外観を維持できる低温安定性を有する毛髪洗浄剤組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-24828号公報
【特許文献2】特開2009-120559号公報
【特許文献3】特開2013-216639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、毛髪の洗浄に用いられる洗浄剤組成物であって、コアセルベートの形成能に優れるとともに、ポンプからの吐出がし易く、洗浄時に泡立て易い適度な粘度を有し、低温時においても透明な外観を維持できる低温安定性を有する毛髪洗浄剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、特定のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン化ポリマー、および特定の化合物および/またはその塩を特定の質量比で組み合わせることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0013】
すなわち本発明は以下の毛髪洗浄剤組成物である。
成分(A):下記式(1)で表される界面活性剤を1~20質量%、
成分(B):両性界面活性剤を1~20質量%、
成分(C):カチオン化ポリマーを0.03~3質量%、
成分(D):下記式(2)で表される化合物および/またはその塩を0.001~1.5質量%
含有し、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が0.2~4であり、かつ成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))が15~300である毛髪洗浄剤組成物。
【化1】
(式(1)中、RCOは炭素数8~22の脂肪族アシル基を示し、Rは水素原子、または1つの水酸基を有していてもよい炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、Mはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、または有機アンモニウムを示す。)
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の毛髪洗浄剤組成物(以下、単に「洗浄剤組成物」とも言う。)は、コアセルベートの形成能に優れるとともに、ポンプからの吐出がし易く、洗浄時に泡立て易い適度な粘度を有し、低温時においても透明な外観を維持できる低温安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は本明細書で説明される実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値または実施例から一義的に導き出される値に置き換えることができる。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、下記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において各成分の含有量は、本発明の洗浄剤組成物の全量を100質量%としたときの含有量である。また、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計含有量を意味する。
【0017】
〔成分(A)〕
本発明で用いられる成分(A)は、下記式(1)で表される界面活性剤である。
【化1】
【0018】
式(1)中のRCOは炭素数8~22、好ましくは炭素数8~18の脂肪族アシル基を示す。脂肪族アシル基には、炭素数8~22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を由来とするアシル基のみならず、これら脂肪酸の2種以上を含む混合脂肪酸由来のアシル基も含まれる。脂肪族アシル基としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基、カプリロイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、ベヘニル基などが挙げられる。その中で好ましくは、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基であり、より好ましくは、ラウロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基である。
【0019】
式(1)中のRは水素原子、または1つの水酸基を有していてもよい炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。また、1つの水酸基を有する炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシイソプロピル基、2-ヒドロキシイソプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基、1-ヒドロキシイソブチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、3-ヒドロキシイソブチル基などが挙げられる。その中で好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0020】
式(1)中のMはアルカリ金属、1/2アルカリ土類金属、または有機アンモニウムを示す。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。また、有機アンモニウムとしては、例えば、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどが挙げられる。Mとして好ましくは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアンモニウムであり、より好ましくは、ナトリウムである。
なお、「1/2アルカリ土類金属」における1/2は、アルカリ土類金属が陽イオンになるときの価数(二価)を一価にするための係数を表す。
【0021】
式(1)で表される界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-β-アラニンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-エチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-2-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-2-ヒドロキシエチル-β-アラニントリエタノールアミン、N-ラウロイル-N-3-ヒドロキシプロピル-β-アラニントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-2-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウムなどが挙げられる。
成分(A)としては、上記式(1)の界面活性剤から選ばれる1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0022】
成分(A)の含有量は、1~20質量%であり、好ましくは3~15質量%、より好ましくは5~10質量%である。成分(A)の含有量が少なすぎる場合、粘度が低くなり過ぎたり、コアセルベート形成能に劣ることがあり、成分(A)の含有量が多すぎる場合、粘度が高くなり過ぎたり、低温安定性に劣ることがある。
【0023】
〔成分(B)〕
本発明に用いられる成分(B)は、両性界面活性剤であり、N-アシル基またはN-アルキル基と、カチオン性基と、アニオン性基とを併せ持つ構造を有する界面活性剤である。例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドヒドロキシエチルアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルイミノジ酢酸塩などが挙げられる。
【0024】
上記の両性界面活性剤に含まれるN-アシル基は、例えば、炭素数8~18の直鎖または分岐鎖の脂肪酸残基である。脂肪酸残基の脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などの飽和脂肪酸;パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸などが挙げられる。これらの中で好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸であり、より好ましくは、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸である。
【0025】
上記の両性界面活性剤に含まれるN-アルキル基は、例えば、炭素数8~18の炭化水素基であり、混合脂肪酸由来の混合アルキル基も含まれる。アルキル基としては、例えば、カプリリル基、カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基などのアルキル基;ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基、牛脂アルキル基などの混合アルキル基が挙げられる。これらの中で好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基であり、より好ましくは、ラウリル基、ヤシ油アルキル基、パーム核油アルキル基である。
【0026】
成分(B)の両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ココアンホ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
成分(B)としては、上記両性界面活性剤から選ばれる1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0027】
成分(B)の含有量は、1~20質量%であり、好ましくは3~15質量%、より好ましくは4~13質量%、特に好ましくは5~10質量%である。成分(B)の含有量が少なすぎる場合、粘度が低くなり過ぎたり、低温安定性に劣ることがあり、成分(B)の含有量が多すぎる場合、粘度が高くなり過ぎたり、コアセルベート形成能に劣ることがある。
【0028】
〔成分(C)〕
成分(C)は、カチオン化ポリマーであり、例えば、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリレートとの共重合体、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ポリ塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、カチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化キサンタンガム、カチオン化フェヌグリークガム、ビニルイミダゾリニウムトリクロリドとビニルピロリドンとの共重合体、ヒドロキシエチルセルロースとジメチルジアリルアンモニウムクロリドとの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとの共重合体、ポリビニルピロリドンとアルキルアミノアクリレートとビニルカプロラクタムとの共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体、アルキルアクリルアミドとアクリレートとアルキルアミノアルキルアクリルアミドとポリオキシエチレングリコールメタクリレートとの共重合体、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミンとの共重合体などが挙げられる。これらの中で好ましくは、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドと(メタ)アクリルアミドとの共重合体である。
なお、「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを表す。
成分(C)としては、上記カチオン化ポリマーから選ばれる1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0029】
カチオン化ポリマーのカチオン化度は、0.2~3meq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5~2meq/g、特に好ましくは0.8~1.5meq/g、更に好ましくは1.0~1.4meq/gである。本明細書においてカチオン化ポリマーのカチオン化度は、ケルダール法などによるN含有率の測定値から算出された値である。なお、カチオン化度の単位であるmeq/gとは、試料1g当たりのNカチオン基のミリ当量数を示す。
【0030】
また、カチオン化ポリマーの重量平均分子量は、100,000~3,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは400,000~2,000,000、特に好ましくは600,000~1,900,000、更に好ましくは800,000~1,800,000、殊に好ましくは850,000~1,750,000の範囲である。
なお、本明細書においてカチオン化ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリエチレングリコール換算で求められた値である。
【0031】
成分(C)の含有量は、0.03~3質量%であり、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.3~1質量%、特に好ましくは0.4~0.8質量%である。成分(C)の含有量が少なすぎる場合、粘度が低くなり過ぎたり、コアセルベート形成能に劣ることがあり、成分(C)の含有量が多すぎる場合、粘度が高くなり過ぎたり、低温安定性に劣ることがある。
【0032】
〔成分(D)〕
成分(D)は、β-アラニンまたはその誘導体であり、下記式(2)で表される化合物またはその塩である。
【化2】
【0033】
式(2)中のRは水素原子、または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示す。炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。その中で好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基である。
式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、β-アラニン、N-メチル-β-アラニン、N-エチル-β-アラニン、N-t-ブチル-β-アラニンなどが挙げられる。
【0034】
上記式(2)の化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、塩酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。その中で好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩であり、より好ましくは、ナトリウム塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩である。
成分(D)としては、上記式(2)の化合物およびその塩から選ばれる1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0035】
成分(D)の含有量は、0.001~1.5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.01~0.7質量%、特に好ましくは0.05~0.5質量%、更に好ましくは0.05~0.3質量%である。成分(D)の含有量が少なすぎる場合、コアセルベート形成能や低温安定性に劣ることがあり、成分(D)の含有量が多すぎる場合、粘度が低くなり過ぎることがある。
【0036】
〔各成分の量的関係〕
本発明の洗浄剤組成物における成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、0.2~4であり、好ましくは0.3~3、より好ましくは0.6~2、特に好ましくは0.7~1.8、更に好ましくは0.7~1.6である。質量比((A)/(B))が小さすぎる場合、コアセルベート形成能に劣ることがあり、質量比((A)/(B))が大きすぎる場合、低温安定性に劣ることがある。
【0037】
また、本発明の洗浄剤組成物における成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))は、15~300であり、好ましくは25~150、より好ましくは60~150、特に好ましくは80~140である。質量比((A)/(D))が小さすぎる場合、粘度が低くなり過ぎることがあり、質量比((A)/(D))が大きすぎる場合、低温安定性に劣ることがある。
【0038】
〔水〕
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分(A)~(D)に加え、通常、水を含有する。水としては、例えば、蒸留水やイオン交換水などの精製水、水道水が挙げられる。この中で好ましくは、蒸留水やイオン交換水などの精製水である。
本発明の洗浄剤組成物における水の含有量は、好ましくは55~98質量%であり、より好ましくは65~95質量%、特に好ましくは75~90質量%、更に好ましくは75~85質量%である。
なお、上記成分(A)~(D)および水の総含有量は80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0039】
〔その他の任意成分〕
本発明の洗浄剤組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(A)~(D)および水に加え、その他の任意成分を更に含有していてもよい。
その他の任意成分として、例えば、植物油脂、動物油脂などの油脂類;スクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテンなどの炭化水素油;セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコール類;環状シリコーン、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサンなどのシリコーン類;パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸石けん、成分(A)以外のN-アシルアミノ酸系界面活性剤などのアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ココイルアルギニンエチルPCAなどのカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミドなど)、脂肪酸アルキレングリコールエステル(例えば、ラウリン酸モノブチレングリコールエステルなど)などの非イオン性界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどの成分(C)以外の水溶性高分子;エタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどの溶剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、塩酸、硫酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸などのpH調整剤;トコフェロールなどの抗酸化剤;安息香酸ナトリウム、1,3-ブチレングリコールなどの防腐剤;エチルヘキシルグリセリンなどの保湿剤、多糖類、アミノ酸、ペプチド、香料、着色料などを適宜含有させることができる。
その他の任意成分の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは0.1~15質量%、特に好ましくは1~10質量%である。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物のpHは、特に限定されるものではないが、25℃、水で希釈せず原液の状態で、好ましくは4.5~8.0、より好ましくは5.0~7.5、特に好ましくは5.5~7.0である。
洗浄剤組成物のpHを上記範囲に調整するには、上記のpH調整剤、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、乳酸が用いられ、より好ましくはクエン酸、乳酸が用いられる。pH調整剤の含有量は、好ましくは0.05~5質量%であり、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。
なお、本明細書における洗浄剤組成物のpHは、pHメータを用いてJIS Z8802により測定された値である。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、上記成分(A)~(D)、必要に応じてその他の任意成分を加えて、組成物の全量が100質量%となるように水で調整する。その後、必要に応じて加熱して、撹拌混合することで、本発明の洗浄剤組成物が得られる。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0043】
[実施例1~16、比較例1~10]
<洗浄剤組成物の調製>
表1に示す成分(A)、表2~4に示す成分(B)~(D)、およびその他の成分を順次水に添加して混合し、均一に溶解して実施例1~16、比較例1~10の毛髪洗浄剤組成物を調製した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1~4中の各成分としては、化粧品用として提供されている市販の製品を用いた。なお、表2~4中の各成分の含有量は質量%にて示し、毛髪洗浄剤組成物の全量は100質量%である。また成分(C)についてのカチオン化度および重量平均分子量は、本明細書に記載の方法により算出された値である。
【0046】
実施例1~16および比較例1~10の各洗浄剤組成物について、下記(1)~(3)に記載のとおり、粘度、コアセルベート形成能、低温安定性の各評価を行った。なお、各洗浄剤組成物のpHは、水で希釈されていない原液(全量100質量%の洗浄剤組成物)での測定値である。
【0047】
<洗浄剤組成物の評価>
(1)粘度
実施例および比較例の各洗浄剤組成物に対して、B型粘度計(東機産業株式会社製「TV-20」)、ローターNo.2~4を使用して、12rpmまたは30rpmの速度で、25℃において測定した。測定した粘度(mPa・s、25℃)に基づき、下記評価基準に従って洗浄剤組成物の粘度を「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階にて評価した。前記評価が「◎」である場合および「○」である場合を合格とした。
<評価基準>
◎:粘度が2,000以上10,000未満
○:粘度が1,000以上2,000未満、または10,000以上20,000未満
△:粘度が1,000未満
×:粘度が20,000以上
【0048】
(2)コアセルベート形成能
実施例および比較例の各洗浄剤組成物をそれぞれ1g採り、全量が100mLとなるように40℃の水道水で希釈した。これらの希釈液に対して、UV-Vis分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U-3010」)を用いて、波長420nmにおける透過率を測定した。この各値から以下の式に則り、濁度を算出した。算出した濁度に基づき、下記評価基準に従って洗浄剤組成物のコアセルベート形成能を「◎」、「○」、「△」、「×」の4段階にて評価した。前記評価が「◎」である場合および「○」である場合を合格とした。
濁度(%)=100-透過率(%)
<評価基準>
◎:濁度が40%以上
○:濁度が30%以上40%未満
△:濁度が20%以上30%未満
×:濁度が20%未満
【0049】
(3)低温安定性
実施例および比較例の各洗浄剤組成物を透明ガラス容器に密封し、0℃、5℃にそれぞれ1ヶ月保存して、その外観を観察した。観察した外観に基づき、下記評価基準に従って洗浄剤組成物の低温安定性を「○」、「△」、「×」の3段階にて評価した。前記評価が「○」である場合を合格とした。
<評価基準>
○:0℃、5℃のいずれにおいても外観に変化がない。
△:5℃において外観に変化はないが、0℃において組成物が白濁状に変化する。
×:0℃、5℃のいずれにおいても組成物が白濁状に変化する。
【0050】
上記(1)~(3)の評価結果を表2~4に併せて示した。
実施例1~16の組成物は、いずれも粘度、コアセルベート形成能、低温安定性が良好であった。
一方、比較例1では、成分(A)の代わりに、アニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(成分(A’))を用いているため、粘度が高く、コアセルベート形成能が劣っていた。
比較例2では、成分(A)の代わりに、N-アシルアミノ酸系界面活性剤であるN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-メチルタウリンナトリウム(成分(A’))を用いているため、粘度が低く、コアセルベート形成能と低温安定性がともに不十分であった。
比較例3では、成分(A)の代わりに、N-アシルアミノ酸系界面活性剤であるN-ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム(成分(A’))を用いているため、粘度が低く、低温安定性も不十分であった。
比較例4では、成分(A)が含まれていないため、粘度が低く、コアセルベート形成能が劣っていた。
比較例5では、成分(B)が含まれていないため、粘度が低く、低温安定性も不十分であった。
比較例6では、成分(C)が含まれていないため、粘度が低く、コアセルベート形成能が劣っていた。
比較例7では、成分(D)が含まれていないため、コアセルベート形成能が劣り、低温安定性も不十分であった。
比較例8では、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が0.2未満であるため、粘度が低く、コアセルベート形成能が劣っていた。
比較例9では、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))が4より大きいため、粘度が高く、低温安定性が劣っていた。
比較例10では、成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))が15未満であるため、粘度が低く、コアセルベート形成能が不十分であった。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
更に、本発明の毛髪洗浄剤組成物の処方例を以下に具体的に示す。なお、いずれの処方例においても精製水を用いて全量を100質量%に調整した。
【0055】
【表5】
なお、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウムが成分(A)に相当し、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが成分(B)に相当し、カチオン化セルロースが成分(C)に相当し、N-メチル-β-アラニンが成分(D)に相当する。質量比((A)/(B))が1.3であり、質量比((A)/(D))が90である。
【0056】
【表6】
なお、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウムおよびN-ラウロイル-N-2-ヒドロキシエチル-β-アラニンナトリウムが成分(A)に相当し、ラウリルヒドロキシスルホベタインが成分(B)に相当し、カチオン化セルロースが成分(C)に相当し、N-メチル-β-アラニンが成分(D)に相当する。質量比((A)/(B))が1.1であり、質量比((A)/(D))が90である。
【0057】
【表7】
なお、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウムが成分(A)に相当し、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが成分(B)に相当し、カチオン化セルロースが成分(C)に相当し、N-メチル-β-アラニンが成分(D)に相当する。質量比((A)/(B))が0.8であり、質量比((A)/(D))が50である。
【0058】
これら処方例の毛髪洗浄剤組成物についても上記(1)~(3)の評価を行ったところ、コアセルベートの形成能に優れ、適度な粘度を有し、良好な低温安定性を示したことから、本発明の効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、コアセルベートの形成能に優れ、ポンプからの吐出がし易く、洗浄時に泡立て易い適度な粘度を有し、冬季などにおける低温時においても透明な外観を維持できる低温安定性を有するので、良好なすすぎ時の指通り性が得られるだけでなく、使い勝手が良く、意匠性にも優れる。