(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121301
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/088 20060101AFI20240830BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240830BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240830BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240830BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240830BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L27/088 331E
H01L27/088 331C
H01L27/088 C
H01L29/78 626C
H01L29/78 617S
H01L29/78 617N
H01L27/092 D
H01L27/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028326
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】津田 是文
(72)【発明者】
【氏名】槇山 秀樹
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5F110
【Fターム(参考)】
5F038AR02
5F038AR16
5F038AV17
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5F110HJ13
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5F110HK21
5F110HK34
5F110HM15
5F110NN62
5F110NN71
5F110NN78
5F110QQ19
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】SOI基板に、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qが形成されている。低耐圧MISFET1Qのオン動作およびオフ動作は、ゲート電極GE1に供給されるゲート電位Vg1と、ウェル領域PW1に供給されるバックゲート電位Vbn1とによって制御される。高耐圧MISFET2Qのオン動作およびオフ動作は、ウェル領域PW2が電気的にフローティングの状態で、ゲート電極GE2に供給されるゲート電位Vg2によって制御される。不純物領域LDD2に供給される電源電位Vd2の絶対値は、不純物領域LDD1に供給される電源電位Vd1の絶対値よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1MISFETが形成された第1領域と、前記第1導電型の第2MISFETが形成された第2領域とを有する半導体装置であって、
半導体基板、前記半導体基板上に形成された絶縁層、および、前記絶縁層上に形成された半導体層を有するSOI基板と、
前記第1領域の前記半導体基板中に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ウェル領域と、
前記第1領域の前記半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に形成された前記第1導電型の第1不純物領域と、
前記第2領域の前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第2ウェル領域と、
前記第2領域の前記半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に形成された前記第1導電型の第2不純物領域と、
を備え、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さは、前記第1ゲート絶縁膜の厚さよりも厚く、
前記第2ゲート電極のゲート長は、前記第1ゲート電極のゲート長よりも長く、
前記第1MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第1ゲート電極に供給される第1ゲート電位と、前記第1ウェル領域に供給される第1バックゲート電位とによって制御され、
前記第2MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第2ウェル領域が電気的にフローティングの状態で、前記第2ゲート電極に供給される第2ゲート電位によって制御され、
前記第2不純物領域に供給される第2電源電位の絶対値は、前記第1不純物領域に供給される第1電源電位の絶対値よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1領域の前記半導体層上に形成された第1エピタキシャル層と、
前記第1エピタキシャル層中および前記第1領域の前記半導体層中に形成された第1拡散領域と、
前記第2領域の前記半導体層上に形成された第2エピタキシャル層と、
前記第2エピタキシャル層中および前記第2領域の前記半導体層中に形成された第2拡散領域と、
を更に備え、
前記第1拡散領域の不純物濃度は、前記第1不純物領域の不純物濃度よりも高く、
前記第2拡散領域の不純物濃度は、前記第2不純物領域の不純物濃度よりも高く、
前記第1エピタキシャル層および前記第1拡散領域は、前記第1不純物領域よりも前記第1ゲート電極から離れた位置に形成され、
前記第2エピタキシャル層および前記第2拡散領域は、前記第2不純物領域よりも前記第2ゲート電極から離れた位置に形成されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第2不純物領域の不純物濃度は、前記第1不純物領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に存在し、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量は、前記第1不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に存在し、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量よりも多い、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
抵抗素子が形成された第3領域を更に有し、
前記抵抗素子は、前記第3領域の前記半導体層に形成された前記第2導電型の第3不純物領域を含み、
前記第2不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に存在し、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量は、前記第3不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に存在し、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量よりも多い、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1領域には、前記半導体層および前記絶縁層が除去された給電領域が設けられているが、前記第2領域には、前記半導体層および前記絶縁層が除去された給電領域が設けられておらず、
前記第1MISFETの前記オン動作および前記オフ動作は、前記第1ゲート電極に供給される第1ゲート電位と、前記第1領域に設けられた前記給電領域を介して前記第1ウェル領域に供給される前記第1バックゲート電位とによって制御される、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1導電型の第3MISFETが形成され、かつ、前記半導体層および前記絶縁層が除去された第4領域を更に有し、
前記第3MISFETは、
前記第4領域の前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第3ウェル領域と、
前記第4領域の前記半導体基板上に形成された第3ゲート絶縁膜と、
前記第3ゲート絶縁膜上に形成された第3ゲート電極と、
前記第3ゲート電極の横に位置する前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、
を含み、
前記第3ゲート絶縁膜の厚さは、前記第2ゲート絶縁膜の厚さよりも厚く、
前記第3ゲート電極のゲート長は、前記第2ゲート電極のゲート長よりも長く、
前記第3MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第3ゲート電極に供給される第3ゲート電位によって制御され、
前記第3不純物領域に供給される第3電源電位の絶対値は、前記第2不純物領域に供給される第2電源電位の絶対値よりも大きい、半導体装置。
【請求項8】
第1導電型の第1MISFETが形成された第1領域と、前記第1導電型の第2MISFETが形成された第2領域とを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板、前記半導体基板上に形成された絶縁層、および、前記絶縁層上に形成された半導体層を有するSOI基板を用意する工程、
(b)前記第1領域の前記半導体基板中に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ウェル領域を形成する工程、
(c)前記第2領域の前記半導体基板中に、前記第2導電型の第2ウェル領域を形成する工程、
(d)前記第2領域の前記半導体層上に、第2ゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記第1領域の前記半導体層上に、第1ゲート絶縁膜を形成する工程、
(f)前記第1ゲート絶縁膜上に、第1ゲート電極を形成する工程、
(g)前記第2ゲート絶縁膜上に、第2ゲート電極を形成する工程、
(h)イオン注入によって、前記第1ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に、前記第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(i)イオン注入によって、前記第2ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に、前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、
を備え、
前記第2ゲート絶縁膜の厚さは、前記第1ゲート絶縁膜の厚さよりも厚く、
前記第2ゲート電極のゲート長は、前記第1ゲート電極のゲート長よりも長く、
前記(i)工程の前記イオン注入のエネルギーは、前記(h)工程の前記イオン注入のエネルギーよりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程の前記イオン注入によって、前記第2不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に形成され、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量は、前記(h)工程の前記イオン注入によって、前記第1不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に形成され、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量よりも多い、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第1ゲート電極に供給される第1ゲート電位と、前記第1ウェル領域に供給される第1バックゲート電位とによって制御され、
前記第2MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第2ウェル領域が電気的にフローティングの状態で、前記第2ゲート電極に供給される第2ゲート電位によって制御され、
前記第2不純物領域に供給される第2電源電位の絶対値は、前記第1不純物領域に供給される第1電源電位の絶対値よりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
(j)前記第1領域の前記半導体層上に、第1エピタキシャル層を形成し、前記第2領域の前記半導体層上に、第2エピタキシャル層を形成する工程、
(k)前記第1エピタキシャル層中および前記第1領域の前記半導体層中に、前記第1導電型の第1拡散領域を形成し、前記第2エピタキシャル層中および前記第2領域の前記半導体層中に、前記第1導電型の第2拡散領域を形成する工程、
を更に備え、
前記第1拡散領域の不純物濃度は、前記第1不純物領域の不純物濃度よりも高く、
前記第2拡散領域の不純物濃度は、前記第2不純物領域の不純物濃度よりも高く、
前記(k)工程後、前記第1エピタキシャル層および前記第1拡散領域は、前記第1不純物領域よりも前記第1ゲート電極から離れた位置に形成され、
前記(k)工程後、前記第2エピタキシャル層および前記第2拡散領域は、前記第2不純物領域よりも前記第2ゲート電極から離れた位置に形成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程および前記(i)工程は、前記(j)工程と前記(k)工程との間に行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、前記第1ゲート電極の横に位置する前記第1領域の前記半導体層の一部に、前記第1不純物領域が形成され、
前記(i)工程では、前記第2ゲート電極の横に位置する前記第2領域の前記半導体層の一部に、前記第2不純物領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程および前記(i)工程は、前記(j)工程前に行われ、
前記(k)工程は、前記(j)工程後に行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、前記第1ゲート電極の横に位置する前記第1領域の前記半導体層の全体に、前記第1不純物領域が形成され、
前記(i)工程では、前記第2ゲート電極の横に位置する前記第2領域の前記半導体層の全体に、前記第2不純物領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2不純物領域の不純物濃度は、前記第1不純物領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
抵抗素子が形成された第3領域を更に有し、
(l)イオン注入によって、前記第3領域の前記半導体層中に、前記第2導電型の第3不純物領域を形成する工程、
を更に備え、
前記(i)工程の前記イオン注入のエネルギーは、前記(l)工程の前記イオン注入のエネルギーよりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程の前記イオン注入によって、前記第2不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に形成され、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量は、前記(l)工程の前記イオン注入によって、前記第3不純物領域の直下に位置する前記絶縁層中に形成され、かつ、前記絶縁層を構成する原子の一部が欠損している箇所であるダメージ層の量よりも多い、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、SOI基板を用いた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低消費電力向けの半導体装置として、半導体基板と、半導体基板上に形成された絶縁層と、絶縁層上に形成されたシリコン層とを有するSOI(Silicon On Insulator)基板に、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を形成する技術がある。このSOI基板に形成されたMISFETは、高いソフトエラー耐性を有し、シリコン層に形成される拡散領域に起因する寄生容量を低減することができる。このため、MISFETの動作速度の向上と低消費電力化とを図ることができる。
【0003】
特許文献1には、SOI基板にMISFETが形成され、絶縁層の直下に位置するウェル領域に、バックゲート電位を印加する技術が開示されている。MISFETのオン動作およびオフ動作は、ゲート電極に印加されるゲート電位と、上記バックゲート電位とによって制御される。
【0004】
特許文献2では、SOI基板の一部のシリコン層および絶縁層を除去することでバルク領域を形成している。SOI基板に低耐圧MISFETが形成され、バルク領域に高耐圧MISFETが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/097568号
【特許文献2】特開2019-102520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、SOI基板上に、低耐圧MISFETだけでなく、高耐圧MISFETも形成することを検討している。低耐圧MISFETおよび高耐圧MISFETの各々のオン動作およびオフ動作は、ゲート電位およびバックゲート電位によって制御できる。
【0007】
しかし、本願発明者らの検討によって、ゲート電位およびバックゲート電位の両方を使用すると、絶縁層にかかる電圧が大きくなり、絶縁層のTDDB寿命が劣化し易いという問題があることが分かった。それによって、半導体装置の信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態に係る半導体装置は、第1導電型の第1MISFETが形成された第1領域と、前記第1導電型の第2MISFETが形成された第2領域とを有する。半導体装置は、半導体基板、前記半導体基板上に形成された絶縁層、および、前記絶縁層上に形成された半導体層を有するSOI基板と、前記第1領域の前記半導体基板中に形成された、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ウェル領域と、前記第1領域の前記半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に形成された前記第1導電型の第1不純物領域と、前記第2領域の前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第2ウェル領域と、前記第2領域の前記半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、前記第2ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に形成された前記第1導電型の第2不純物領域と、を備える。前記第2ゲート絶縁膜の厚さは、前記第1ゲート絶縁膜の厚さよりも厚く、前記第2ゲート電極のゲート長は、前記第1ゲート電極のゲート長よりも長く、前記第1MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第1ゲート電極に供給される第1ゲート電位と、前記第1ウェル領域に供給される第1バックゲート電位とによって制御され、前記第2MISFETのオン動作およびオフ動作は、前記第2ウェル領域が電気的にフローティングの状態で、前記第2ゲート電極に供給される第2ゲート電位によって制御され、前記第2不純物領域に供給される第2電源電位の絶対値は、前記第1不純物領域に供給される第1電源電位の絶対値よりも大きい。
【0011】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1MISFETが形成された第1領域と、前記第1導電型の第2MISFETが形成された第2領域とを有する半導体装置の製造方法である。半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板、前記半導体基板上に形成された絶縁層、および、前記絶縁層上に形成された半導体層を有するSOI基板を用意する工程、(b)前記第1領域の前記半導体基板中に、前記第1導電型と反対の第2導電型の第1ウェル領域を形成する工程、(c)前記第2領域の前記半導体基板中に、前記第2導電型の第2ウェル領域を形成する工程、(d)前記第2領域の前記半導体層上に、第2ゲート絶縁膜を形成する工程、(e)前記第1領域の前記半導体層上に、第1ゲート絶縁膜を形成する工程、(f)前記第1ゲート絶縁膜上に、第1ゲート電極を形成する工程、(g)前記第2ゲート絶縁膜上に、第2ゲート電極を形成する工程、(h)イオン注入によって、前記第1ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に、前記第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、(i)イオン注入によって、前記第2ゲート電極の横に位置する前記半導体層中に、前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、を備える。前記第2ゲート絶縁膜の厚さは、前記第1ゲート絶縁膜の厚さよりも厚く、前記第2ゲート電極のゲート長は、前記第1ゲート電極のゲート長よりも長く、前記(i)工程の前記イオン注入のエネルギーは、前記(h)工程の前記イオン注入のエネルギーよりも大きい。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1における低耐圧MISFETおよび高耐圧MISFETの各々の電位関係を示す模式図、並びに、これらの主要な設計値などを示す表である。
【
図4】実施の形態1における半導体装置の主な特徴を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6】
図5に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7】
図6に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図8】
図7に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図9】
図8に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図10】
図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図11】
図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図12】
図11に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図13】
図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図14】
図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図15】
図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図16】
図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図17】実施の形態2における半導体装置を示す断面図である。
【
図18】実施の形態2における半導体装置の主な特徴を示す断面図である。
【
図19】実施の形態3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図20】
図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図21】
図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図22】
図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図23】
図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図24】実施の形態3における半導体装置の主な特徴を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に
図1を用いて、実施の形態1における半導体装置の構造について説明する。半導体装置は、互いに異なる領域である領域1Aおよび領域2Aを有する。領域1AのSOI基板10には、n型の低耐圧MISFET1Qが形成される。領域2AのSOI基板10には、n型の高耐圧MISFET2Qが形成される。
【0016】
低耐圧MISFET1Qは、低消費電力で駆動し、且つ、高耐圧MISFET2Qよりも高速で駆動することを目的した半導体素子である。高耐圧MISFET2Qは、低耐圧MISFET1Qよりも高い耐圧を有し、低耐圧MISFET1Qよりも高い電源電位で駆動する半導体素子である。
【0017】
なお、領域1AのSOI基板10には、p型の低耐圧MISFETも形成され、領域2AのSOI基板10には、p型の高耐圧MISFETも形成されている。p型の低耐圧MISFETおよびp型の高耐圧MISFETの構造は、それぞれ、n型の低耐圧MISFET1Qおよびn型の高耐圧MISFET2Qの各々に含まれる構造の導電型を反対にしたものである。ここでは、それらの詳細な説明を省略する。
【0018】
また、
図2に示されるように、半導体装置内の領域4Aは、半導体層SLおよび絶縁層BOXが除去されたバルク領域である。n型の高耐圧MISFET4Qnおよびp型の高耐圧MISFET4Qpは、領域4Aのバルク領域(半導体基板SUB)に形成されている。各高耐圧MISFET4Qn、4Qpは、高耐圧MISFET2Qよりも高い耐圧を有し、高耐圧MISFET2Qよりも高い電源電位で駆動する半導体素子である。
【0019】
SOI基板10に形成される低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qでは、動作時に使用されるゲート電圧が比較的小さいので、各高耐圧MISFET4Qn、4Qpと比較して、それらの閾値にバラつきが生じ易い。そこで、実施の形態1では、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qの各々のオン動作およびオフ動作を、ゲート電位だけでなく、バックゲート電位も用いて制御する。この結果、リーク電流を抑制し易くなり、低消費電力での駆動を行い易くなる。
【0020】
一方、各高耐圧MISFET4Qn、4Qpでは、動作時に使用されるゲート電圧が比較的大きい高いので、低耐圧MISFET1Qや高耐圧MISFET2Qと比較して、その閾値にバラつきが生じ難い。そこで、実施の形態1では、各高耐圧MISFET4Qn、4Qpのオン動作およびオフ動作を、バックバイアス電位は使用せずに、ゲート電位を用いて制御する。この結果、オフ動作時に、電流の遮断が可能である。また、実施の形態1で使用する絶縁層BOXの厚さは10nm台であり、非常に薄いので、仮に高耐圧MISFET4Qn、4QpをSOI基板10に形成すると、絶縁層BOXのTDDB寿命が著しく劣化する。更に、バックバイアス電位も使用すると、絶縁層BOXの絶縁耐性が維持できない。従って、高耐圧MISFET4Qn、4Qpはバルク領域に形成されている方が好ましい。
【0021】
実施の形態1の主な特徴は、SOI基板10に形成される低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qにあるので、以降の説明では、主にこれらの構造および製造方法について説明する。
【0022】
図1に示されるように、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qは、それぞれSOI基板10に形成されている。SOI基板10は、支持基板である半導体基板SUBと、半導体基板SUB上に形成された絶縁層BOXと、絶縁層BOX上に形成された半導体層SLとを有する。
【0023】
半導体基板SUBは、例えばp型の単結晶シリコンからなる。絶縁層BOXは、例えば酸化シリコンからなる。絶縁層BOXの厚さは、例えば10nm以上且つ20nm以下である。半導体層SLは、単結晶シリコンからなる。半導体層SLの厚さは、例えば10nm以上且つ20nm以下である。なお、半導体層SLは、イオン注入などによって、n型またはp型の不純物が導入されていない真性半導体層である。半導体層SL内にp型の不純物が導入されていたとしても、その不純物濃度は1×1013/cm3以下である。
【0024】
SOI基板10には、複数の素子分離部STIが形成されている。素子分離部STIは、半導体層SLおよび絶縁層BOXを貫通している。素子分離部STIの底部は、半導体基板SUBの内部に位置する。素子分離部STIは、SOI基板10に形成された溝と、上記溝に埋め込まれた絶縁膜とによって構成されている。上記絶縁膜は、例えば酸化シリコン膜である。
【0025】
領域1Aおよび領域2Aの半導体基板SUB中には、n型のウェル領域DNWが形成されている。領域1Aのウェル領域DNW内には、p型のウェル領域PW1が形成されている。領域2Aのウェル領域DNW内には、p型のウェル領域PW2が形成されている。ウェル領域PW1とウェル領域PW2との間には、素子分離部STIおよびウェル領域DNWが形成され、ウェル領域PW1およびウェル領域PW2は、電気的に分離されている。
【0026】
領域1Aおよび領域2Aには、半導体層SLおよび絶縁層BOXが除去されたバルク領域が設けられている。領域1Aのバルク領域は、ウェル領域PW1にバックゲート電位を供給するための給電領域SR1として機能する。領域2Aのバルク領域は、ウェル領域PW2にバックゲート電位を供給するための給電領域SR2として機能する。
【0027】
なお、後で詳細に説明するが、高耐圧MISFET2Qでは、バックゲート電位を使用しない場合がある。すなわち、領域2Aに形成されたウェル領域PW2を、電気的にフローティング状態とする場合がある。その場合、領域2Aにバルク領域(給電領域SR2)が設けられていなくてもよい。それによって、領域2Aの面積を縮小でき、半導体装置の小型化を図れる。
【0028】
また、絶縁層BOXに接するウェル領域PW1およびウェル領域PW2の各々の表面付近は、ウェル領域PW1およびウェル領域PW2のうち最も不純物濃度が高い領域であり、グランドプレーン層と呼ばれるが、ここではグランドプレーン層の図示を省略している。
【0029】
<領域1Aの低耐圧MISFET1Q>
領域1Aの半導体層SL上には、ゲート絶縁膜GI1が形成されている。ゲート絶縁膜GI1上には、ゲート電極GE1が形成されている。ゲート絶縁膜GI1は、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GE1は、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。半導体層SLのうち、ゲート電極GE1の直下に位置する箇所が、低耐圧MISFET1Qのチャネル領域となる。
【0030】
ゲート電極GE1の側面上には、オフセットスペーサOSを介してサイドウォールスペーサSW2が形成されている。オフセットスペーサOSは、絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜である。サイドウォールスペーサSW2は、絶縁膜であり、例えば窒化シリコン膜である。
【0031】
ゲート電極GE1の横に位置する半導体層SL中には、低濃度のn型の不純物領域LDD1が形成されている。なお、「ゲート電極GE1の横に位置する半導体層SL」とは、半導体層SLのうち、ゲート電極GE1の直下に位置する箇所(チャネル領域となる箇所)の隣に位置する箇所である。言い換えれば、不純物領域LDD1は、半導体層SLのうち、オフセットスペーサOS下およびサイドウォールスペーサSW2の直下に形成されている。
【0032】
サイドウォールスペーサSW2の横に位置する半導体層SL上には、エピタキシャル層EPが形成されている。なお、「サイドウォールスペーサSW2の横に位置する半導体層SL」とは、半導体層SLのうち、不純物領域LDD1の隣に位置する箇所である。エピタキシャル層EP中および半導体層SL中には、n型の拡散領域(不純物領域)ND1が形成されている。すなわち、エピタキシャル層EPおよび拡散領域ND1は、不純物領域LDD1よりもゲート電極GE1から離れた位置に形成されている。拡散領域ND1は、不純物領域LDD1よりも高い不純物濃度を有する。不純物領域LDD1および拡散領域ND1は、低耐圧MISFET1Qのソース領域またはドレイン領域を構成している。
【0033】
なお、半導体層SLおよびエピタキシャル層EPは実際には一体化されているが、ここでは説明を判り易くするために、これらを破線で区切って図示している。
【0034】
ゲート電極GE1上およびエピタキシャル層EP上には、シリサイド膜SIが形成されている。シリサイド膜SIは、例えば、ニッケルプラチナシリサイド、ニッケルシリサイドまたはコバルトシリサイドからなる。また、給電領域SR1であるウェル領域PW1の上面上にも、シリサイド膜SIが形成されている。
【0035】
なお、他のサイドウォールスペーサSW2は、素子分離部STI上にも形成され、半導体層SLの側面を覆っている。また、サイドウォールスペーサSW2はエピタキシャル層EPの一部に乗り上げており、サイドウォールスペーサSW2およびオフセットスペーサOSから露出している箇所に、シリサイド膜SIが形成されている。
【0036】
<領域2Aの高耐圧MISFET2Q>
領域2Aの半導体層SL上には、ゲート絶縁膜GI2が形成されている。ゲート絶縁膜GI2上には、ゲート電極GE2が形成されている。ゲート絶縁膜GI2は、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GE2は、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。半導体層SLのうち、ゲート電極GE2の直下に位置する箇所が、高耐圧MISFET2Qのチャネル領域となる。
【0037】
ゲート電極GE2の側面上には、オフセットスペーサOSを介してサイドウォールスペーサSW2が形成されている。ゲート電極GE2の横に位置する半導体層SL中には、低濃度のn型の不純物領域LDD2が形成されている。なお、「ゲート電極GE2の横に位置する半導体層SL」とは、半導体層SLのうち、ゲート電極GE2の直下に位置する箇所(チャネル領域となる箇所)の隣に位置する箇所である。言い換えれば、不純物領域LDD2は、半導体層SLのうち、オフセットスペーサOS下およびサイドウォールスペーサSW2の直下に形成されている。
【0038】
サイドウォールスペーサSW2の横に位置する半導体層SL上には、エピタキシャル層EPが形成されている。なお、「サイドウォールスペーサSW2の横に位置する半導体層SL」とは、半導体層SLのうち、不純物領域LDD2の隣に位置する箇所である。エピタキシャル層EP中および半導体層SL中には、n型の拡散領域(不純物領域)ND2が形成されている。すなわち、エピタキシャル層EPおよび拡散領域ND2は、不純物領域LDD2よりもゲート電極GE2から離れた位置に形成されている。拡散領域ND2は、不純物領域LDD2よりも高い不純物濃度を有する。不純物領域LDD2および拡散領域ND2は、高耐圧MISFET2Qのソース領域またはドレイン領域を構成している。
【0039】
ゲート電極GE2上およびエピタキシャル層EP上には、シリサイド膜SIが形成されている。また、給電領域SR2であるウェル領域PW2の上面上にも、シリサイド膜SIが形成されている。
【0040】
<領域4Aの高耐圧MISFET4Qn、4Qp>
図2に示されるように、領域4Aは、半導体層SLおよび絶縁層BOXが除去されたバルク領域である。n型の高耐圧MISFET4Qnおよびp型の高耐圧MISFET4Qpは、領域4Aの半導体基板SUBに形成されている。
【0041】
領域4Aの半導体基板SUB中には、n型のウェル領域DNWが形成されている。領域4Aのウェル領域DNW内には、p型のウェル領域PW4およびn型のウェル領域NW4が形成されている。
【0042】
ウェル領域PW4上には、ゲート絶縁膜GI4を介してゲート電極GE4nが形成されている。ゲート絶縁膜GI4は、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GE4nは、導電性膜であり、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。ウェル領域PW4のうち、ゲート電極GE4n下に位置する箇所が、高耐圧MISFET4Qnのチャネル領域となる。
【0043】
ゲート電極GE4nの側面上には、オフセットスペーサOSを介してサイドウォールスペーサSW2が形成されている。ゲート電極GE4nの横に位置するウェル領域PW4内には、低濃度のn型の不純物領域LDD4nが形成されている。サイドウォールスペーサSW2の横に位置するウェル領域PW4内には、n型の拡散領域(不純物領域)ND4が形成されている。拡散領域ND4は、不純物領域LDD4nよりも高い不純物濃度を有する。不純物領域LDD4nおよび拡散領域ND4は、高耐圧MISFET4Qnのソース領域またはドレイン領域を構成している。
【0044】
ウェル領域NW4上には、ゲート絶縁膜GI4を介してゲート電極GE4pが形成されている。ゲート電極GE4pは、導電性膜であり、例えばp型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。ウェル領域NW4のうち、ゲート電極GE4p下に位置する箇所が、高耐圧MISFET4Qpのチャネル領域となる。
【0045】
ゲート電極GE4pの側面上には、オフセットスペーサOSを介してサイドウォールスペーサSW2が形成されている。ゲート電極GE4pの横に位置するウェル領域NW4内には、低濃度のp型の不純物領域LDD4pが形成されている。サイドウォールスペーサSW2の横に位置するウェル領域NW4内には、p型の拡散領域(不純物領域)PD4が形成されている。拡散領域PD4は、不純物領域LDD4pよりも高い不純物濃度を有する。不純物領域LDD4pおよび拡散領域PD4は、高耐圧MISFET4Qpのソース領域またはドレイン領域を構成している。
【0046】
ゲート電極GE4n、拡散領域ND4、ゲート電極GE4pおよび拡散領域PD4の各々の上面上には、シリサイド膜SIが形成されている。
【0047】
<実施の形態1の主な特徴>
低耐圧MISFET1Qは、半導体装置内で最もゲート絶縁膜の厚さが薄い半導体素子であり、半導体装置内で最もゲート長が短い半導体素子である。高耐圧MISFET2Qは、低耐圧MISFET1Qよりもゲート絶縁膜の厚さが厚い半導体素子であり、低耐圧MISFET1Qよりもゲート長が長い半導体素子である。なお、各高耐圧MISFET4Qn、4Qpは、高耐圧MISFET2Qよりもゲート絶縁膜の厚さが厚い半導体素子であり、高耐圧MISFET2Qよりもゲート長が長い半導体素子である。
【0048】
図3に示されるように、ゲート絶縁膜GI1の厚さは、例えば1.5nm以上且つ3.0nm以下であり、好ましくは2.5nmである。ゲート絶縁膜GI2の厚さは、ゲート絶縁膜GI1の厚さよりも厚く、例えば4.0nm以上且つ8.0nm以下であり、好ましくは6.0nmである。
【0049】
ゲート電極GE1のゲート長は、例えば30nm以上且つ60nm以下であり、好ましくは40nmまたは45nmである。ゲート電極GE2のゲート長は、ゲート電極GE1のゲート長よりも長く、例えば200nm以上且つ300nm以下であり、好ましくは250nmである。
【0050】
低耐圧MISFET1Qのオン動作時およびオフ動作時において、ゲート電極GE1にはゲート電位Vg1が供給され、ソース領域にはソース電位Vs1が供給され、ドレイン領域には電源電位Vd1が供給され、ウェル領域PW1にはバックゲート電位Vbn1が供給される。なお、低耐圧MISFET1Qのソース領域およびドレイン領域は、それぞれ、不純物領域LDD1および拡散領域ND1によって構成されている。また、ソース電位Vs1は、例えば接地電位(GND)である。
【0051】
高耐圧MISFET2Qのオン動作時およびオフ動作時において、ゲート電極GE2にはゲート電位Vg2が供給され、ソース領域にはソース電位Vs2が供給され、ドレイン領域には電源電位Vd2が供給される。なお、高耐圧MISFET2Qのソース領域およびドレイン領域は、それぞれ、不純物領域LDD2および拡散領域ND2によって構成されている。また、ソース電位Vs2は、例えば接地電位(GND)である。
【0052】
高耐圧MISFET2Qでは、ウェル領域PW2にバックゲート電位Vbn2を供給することも可能であるが、実施の形態1においては、ウェル領域PW2には電位が供給されていない(OPEN)。言い換えれば、ウェル領域PW2は、電気的にフローティング状態である。
【0053】
すなわち、低耐圧MISFET1Qのオン動作およびオフ動作は、ゲート電位Vg1およびバックゲート電位Vbn1によって制御される。一方、高耐圧MISFET2Qのオン動作およびオフ動作は、ゲート電位Vg2によって制御されるが、バックゲート電位によっては制御されない。
【0054】
また、高耐圧MISFET2Qは、低耐圧MISFET1Qよりも高い電源電位で動作する。電源電位Vd2の絶対値は、電源電位Vd1の絶対値よりも大きい。オン動作時において、電源電位Vd2は例えば1.8Vであり、電源電位Vd1は例えば0.79Vである。さらに、各高耐圧MISFET4Qn、4Qpは、高耐圧MISFET2Qよりも高い電源電位で動作する。各高耐圧MISFET4Qn、4Qpのドレイン領域に供給される電源電位の絶対値は電源電位Vd2の絶対値よりも大きく、例えば、3.3Vである。
【0055】
ここで、本願発明者らの検討によれば、高耐圧MISFET2Qのオン動作およびオフ動作に、ゲート電位Vg2およびバックゲート電位Vbn2を使用すると、高耐圧MISFET2Qの絶縁層BOXのTDDB寿命が劣化し易くなることが分かった。この理由としては、高耐圧MISFET2Qの電源電位Vd2が高いことに起因する。
【0056】
すなわち、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qでは、同じ厚さの絶縁層BOXが使用されるが、高耐圧MISFET2Qでは、電源電位Vd2が高い分、高耐圧MISFET2Qの絶縁層BOXにかかる電圧が大きくなる。それ故、高耐圧MISFET2Qの絶縁層BOXのTDDB寿命が劣化し易いという問題があり、半導体装置の信頼性が低下するという問題がある。
【0057】
そこで、実施の形態1では、高耐圧MISFET2Qのウェル領域PW2(給電領域SR2)に、バックゲート電位Vbn2を供給していない。これにより、高耐圧MISFET2Qの絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善できるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0058】
一方で、低耐圧MISFET1Qの電源電位Vd1は相対的に小さいが、バックゲート電位Vbn1を使用するので、低耐圧MISFET1Qでも、絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化は起こり得る。
【0059】
本願発明者らが検討を行ったところ、イオン注入のエネルギーを変更し、絶縁層BOX中へのイオン注入のダメージ量を変動させることによって、絶縁層BOXのTDDB寿命が変動することが分かった。実施の形態1では、拡散領域ND1、ND2のイオン注入のエネルギーが、従来よりも低くなっており、
図3に示される条件になっている。これにより、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qの各々の絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善できる。
【0060】
また、実施の形態1では、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーも、従来よりも低くなっており、
図3に示される条件になっている。更に、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーが、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーよりも低くなっている。これにより、低耐圧MISFET1Qの絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を更に改善できる。
【0061】
高耐圧MISFET2Qでバックゲート電位Vbn2を使用する場合、高耐圧MISFET2QのTDDB寿命の劣化を更に改善するという観点からは、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーも、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーと同じ程度にすることが好ましい。しかし、実施の形態1の高耐圧MISFET2Qでは、上述のようにバックゲート電位Vbn2を使用しないことで、絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化の改善を図れる。
【0062】
そして、高耐圧MISFET2Qは、低耐圧MISFET1Qよりも高い電源電位Vd2で駆動する関係上、高耐圧MISFET2Qでは、低耐圧MISFET1Qよりも顕著になる課題がある。例えば、高耐圧MISFET2Qでは、ドレイン領域近傍に高電界が発生するので、ホットキャリア注入によるゲート絶縁膜GI2の継時劣化が問題になり易い。
【0063】
そこで、実施の形態1では、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーを不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーよりも高くする。これにより、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークを絶縁層BOXに近づけ、ゲート絶縁膜GI2から遠ざける。好ましくは、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークの位置が絶縁層BOX中になるように、イオン注入の設定を行う。
【0064】
高電界になり易い箇所、すなわち、ホットキャリアが発生し易い箇所が、ゲート絶縁膜GI2から遠ざけられるので、ホットキャリアは、ゲート絶縁膜GI2に注入され難くなる。従って、ゲート絶縁膜GI2の継時劣化が抑制される。
【0065】
図4は、
図1とほぼ同じ断面図であるが、
図4では、不純物領域LDD1、LDD2の形成位置が分かり易くなるように、拡散領域ND1、ND2などの一部の構成が省略されている。
図4に示されるダメージ層20は、不純物領域LDD1、LDD2のイオン注入によって発生する絶縁層BOX中のダメージを示している。具体的には、ダメージ層20は、絶縁層BOXを構成する原子の一部が欠損している箇所である。絶縁層BOXが酸化シリコン膜からなる場合、ダメージ層20は、シリコン原子(Si)若しくは酸素原子(O)、または、これらの両方が欠損している箇所である。
【0066】
不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーは、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーよりも高く、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークが、不純物領域LDD1の不純物濃度ピークよりも絶縁層BOXの近くに位置し、好ましくは絶縁層BOX中に位置している。
【0067】
そのため、
図4に示されるように、不純物領域LDD2下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量は、不純物領域LDD1下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量よりも多くなっている。
【0068】
以上のように、実施の形態1の半導体装置によれば、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qにおいて絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善できると共に、高耐圧MISFET2Qにおいてホットキャリア注入によるゲート絶縁膜GI2の継時劣化を改善できる。従って、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0069】
リーク電流を抑制し、低消費電力での駆動を行い易くするという観点からは、高耐圧MISFET2Qでもバックゲート電位Vbn2を使用することが好ましい。しかし、高耐圧MISFET2Qでは、低耐圧MISFET1Qと比較して、ゲート長が充分に長く、ゲート絶縁膜GI2の厚さが充分に厚い。従って、高耐圧MISFET2Qでは、低耐圧MISFET1Qよりもリーク電流などの影響が小さいので、バックゲート電位Vbn2を使用しなくても、高耐圧MISFET2Qの性能を低下させることなく運用できる。実施の形態1のように、絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化の改善を重要視する場合には、バックゲート電位Vbn2を使用しないことが好ましい。
【0070】
また、実施の形態1では、n型の低耐圧MISFET1Qおよびn型の高耐圧MISFET2Qについて例示したが、上述のように、領域1AのSOI基板10にはp型の低耐圧MISFETも形成され、領域2AのSOI基板10にはp型の高耐圧MISFETも形成されている。実施の形態1で説明した技術は、これらのp型の低耐圧MISFETおよびp型の高耐圧MISFETにも適用でき、同等の効果を得ることができる。
【0071】
<半導体装置の製造方法>
以下に
図5~
図16を用いて、実施の形態1における半導体装置の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。
【0072】
図5に示されるように、まず、SOI基板10を用意する。SOI基板10を用意する工程の一例を以下に説明する。SOI基板10は、例えば、貼り合わせ法によって製造できる。貼り合わせ法では、まず、シリコンからなる第1半導体基板の表面を酸化して絶縁層BOXを形成する。次に、絶縁層BOX上に、シリコンからなる第2半導体基板を高温下で圧着する。次に、第2半導体基板の上面を薄膜化する。絶縁層BOX上に残存する薄膜の第2半導体基板が半導体層SLとなり、絶縁層BOX下の第1半導体基板が半導体基板SUBとなる。
【0073】
次に、半導体層SL上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1の厚さは、例えば10nm以上且つ20nm以下である。次に、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコン膜を形成する。上記窒化シリコン膜の厚さは、例えば80nm以上且つ120nm以下である。次に、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、上記窒化シリコン膜をパターニングする。これにより、上記窒化シリコン膜からなるハードマスクHMが形成される。
【0074】
次に、ハードマスクHMをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、絶縁膜IF1、半導体層SLおよび絶縁層BOXを貫通し、且つ、半導体基板SUBの内部に達する複数の溝を形成する。次に、上記複数の溝の内部およびハードマスクHM上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、ハードマスクHM上に形成された上記酸化シリコン膜を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いた研磨処理によって除去する。これにより、上記複数の溝の内部に、それぞれ複数の素子分離部STIを形成する。
【0075】
図6に示されるように、まず、フッ酸を含む溶液を用いた等方性エッチング処理によって、素子分離部STIの上面を後退させる。次に、燐酸を含む溶液を用いた等方性エッチング処理によって、ハードマスクHMを除去する。
【0076】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、領域1Aおよび領域2Aの半導体基板SUB中にn型のウェル領域DNWを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、領域1Aのウェル領域DNW内にp型のウェル領域PW1を選択的に形成し、領域2Aのウェル領域DNW内にp型のウェル領域PW2を選択的に形成する。
【0077】
図7に示されるように、まず、領域1Aの一部および領域2Aの一部を選択的に開口するように、絶縁膜IF1上に、レジストパターンRP1を形成する。次に、レジストパターンRP1をマスクとして等方性エッチング処理および異方性エッチング処理を行うことで、レジストパターンRP1から露出している絶縁膜IF1および半導体層SLを順次除去する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP1を除去する。この状態で、領域1Aおよび領域2Aにおいて、絶縁層BOXの一部が、絶縁膜IF1から露出している。
【0078】
図8に示されるように、フッ酸を含む溶液を用いた等方性エッチング処理によって、絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1から露出していた絶縁層BOXの一部とを除去する。これにより、領域1Aの一部および領域2Aの一部において、半導体基板SUBが露出する。この露出した半導体基板SUBが、給電領域SR1、SR2(バルク領域)になる。なお、領域4Aのようなバルク領域も、ここまでの製造工程で形成される。また、ここまでの製造工程で、等方性エッチング処理に晒された素子分離部STIの一部の上面が後退している。
【0079】
図9に示されるように、まず、半導体層SL上および半導体基板SUB上に、例えば熱酸化処理によって、相対的に厚い酸化シリコン膜を形成する。次に、領域2Aの半導体層SL上の厚い酸化シリコン膜が残されるように、フォトリソグラフィ技術および等方性エッチング処理によって、他の厚い酸化シリコン膜を除去する。次に、半導体層SL上および半導体基板SUB上に、例えば熱酸化処理によって、相対的に薄い酸化シリコン膜を形成する。なお、この熱酸化処理によって、領域2Aの厚い酸化シリコン膜の厚さが、若干厚くなる。
【0080】
領域1Aの半導体層SL上の薄い酸化シリコン膜が、低耐圧MISFET1Qのゲート絶縁膜GI1となり、領域2Aの半導体層SL上の厚い酸化シリコン膜が、高耐圧MISFET2Qのゲート絶縁膜GI2となる。
【0081】
次に、ゲート絶縁膜GI1上およびゲート絶縁膜GI2上に、例えばCVD法によって、例えば多結晶シリコン膜からなる導電性膜CF1を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、領域1Aおよび領域2Aの導電性膜CF1に、n型の導電性を示す不純物を選択的に導入する。次に、導電性膜CF1上に、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF2を形成する。
【0082】
図10に示されるように、フォトリソグラフィ技術および異方性エッチング処理によって、絶縁膜IF2および導電性膜CF1を順次パターニングする。これにより、ゲート絶縁膜GI1上にゲート電極GE1およびキャップ膜CPが形成され、ゲート絶縁膜GI2上にゲート電極GE2およびキャップ膜CPが形成される。その後、等方性エッチング処理によって、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2から露出しているゲート絶縁膜GI1およびゲート絶縁膜GI2を除去する。
【0083】
図11に示されるように、まず、ゲート電極GE1、GE2およびキャップ膜CPを覆うように、半導体層SL上および半導体基板SUB上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF3を形成する。次に、絶縁膜IF3上に、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF4を形成する。
【0084】
次に、給電領域SR1、SR2を選択的に覆うレジストパターンRP2を形成する。次に、レジストパターンRP2をマスクとして、絶縁膜IF4および絶縁膜IF3に対して異方性エッチング処理を行うことで、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各々の側面上に、サイドウォールスペーサSW1およびオフセットスペーサOSを形成する。なお、サイドウォールスペーサSW1は、オフセットスペーサOSを介してゲート電極GE1、GE2の各々の側面上に形成される。また、給電領域SR1、SR2は、絶縁膜IF4、IF3によって覆われている。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP2を除去する。
【0085】
図12に示されるように、領域1Aおよび領域2Aの半導体層SL上に、エピタキシャル成長法によって、例えば単結晶シリコンからなるエピタキシャル層(半導体層)EPを形成する。この際、ゲート電極GE1、GE2の各々の上面は、キャップ膜CPで覆われているので、ゲート電極GE1、GE2の各々の上面上にエピタキシャル層EPは形成されない。また、給電領域SR1、SR2は、絶縁膜IF4で覆われているので、給電領域SR1、SR2の各々の半導体基板SUB上にエピタキシャル層EPは形成されない。
【0086】
図13に示されるように、まず、等方性エッチング処理によって、サイドウォールスペーサSW1、キャップ膜CPおよび絶縁膜IF4を除去する。次に、領域1Aの半導体層SL上を選択的に開口するパターンを有するレジストパターンRP3を形成する。次に、レジストパターンRP3をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域1Aの半導体層SL中およびエピタキシャル層EP中に、n型の不純物領域LDD1を形成する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP3を除去する。
【0087】
図13のイオン注入は、
図3に示される条件で行われる。すなわち、不純物領域LDD1のイオン注入は、砒素(As)を用いて行われ、注入エネルギーを5keV以下とし、ドーズ量を3.0×10
14/cm
2とした条件で行われる。この際、不純物領域LDD1の不純物濃度ピークの位置が半導体層SL中になるように、イオン注入の設定が行われる。
【0088】
なお、エピタキシャル層EPが厚いので、上記イオン注入では、ゲート電極GE1の横に位置する半導体層SLの全体には、イオンは到達しない。従って、領域1Aの半導体層SLの一部に不純物領域LDD1が形成される。
【0089】
図14に示されるように、まず、領域2Aの半導体層SL上を選択的に開口するパターンを有するレジストパターンRP4を形成する。次に、レジストパターンRP4をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域2Aの半導体層SL中およびエピタキシャル層EP中に、n型の不純物領域LDD2を形成する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP4を除去する。
【0090】
図14のイオン注入は、
図3に示される条件で行われる。ここでは、不純物領域LDD2のイオン注入を2回に分けて行う場合を例示するが、不純物領域LDD2のイオン注入は、2回目のイオン注入のみであってもよい。1回目のイオン注入は、砒素(As)を用いて行われ、注入エネルギーを5keVとし、ドーズ量を5.0×10
12/cm
2とした条件で行われる。2回目のイオン注入は、燐(P)を用いて行われ、注入エネルギーを25keV以上とし、ドーズ量を1.8×10
14/cm
2とした条件で行われる。この際、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークが、不純物領域LDD1の不純物濃度ピークよりも絶縁層BOXの近くに位置し、好ましくは絶縁層BOX中に位置するように、2回目のイオン注入の設定が行われる。
【0091】
図3および
図4で説明したように、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーは、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーよりも高い。従って、
図14のイオン注入によって、不純物領域LDD2の直下に位置する絶縁層BOX中に形成されるダメージ層20の量は、
図13のイオン注入によって、不純物領域LDD1の直下に位置する絶縁層BOX中に形成されるダメージ層20の量よりも多くなる。
【0092】
なお、エピタキシャル層EPが厚いので、上記イオン注入では、ゲート電極GE2の横に位置する半導体層SLの全体には、イオンは到達しない。従って、領域2Aの半導体層SLの一部に不純物領域LDD2が形成される。
【0093】
また、不純物領域LDD1のイオン注入工程と不純物領域LDD2のイオン注入工程とは、何れが先であってもよい。
【0094】
図15に示されるように、まず、ゲート電極GE1、GE2およびオフセットスペーサOSを覆うように、例えば窒化シリコン膜を形成する。次に、上記窒化シリコン膜に対して異方性エッチング処理を行うことで、ゲート電極GE1、GE2の各々の側面上に、オフセットスペーサOSを介して、サイドウォールスペーサSW2を形成する。サイドウォールスペーサSW2はエピタキシャル層EPの一部に乗り上げている。また、他のサイドウォールスペーサSW2は、素子分離部STI上にも形成され、半導体層SLの側面を覆っている。
【0095】
図16に示されるように、まず、給電領域SR1、SR2を覆い、且つ、領域1Aおよび領域2Aの半導体層SL上を選択的に開口するパターンを有するレジストパターンRP5を形成する。次に、レジストパターンRP5をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域1Aおよび領域2Aにおいて、サイドウォールスペーサSW2から露出している半導体層SLおよびエピタキシャル層EPに、n型の拡散領域ND1、ND2を形成する。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP5を除去する。
【0096】
図16のイオン注入は、
図3に示される条件で行われる。ここでは、拡散領域ND1、ND2のイオン注入を2回に分けて行う場合を例示するが、拡散領域ND1、ND2のイオン注入は、2回目のイオン注入のみであってもよい。1回目のイオン注入は、砒素(As)を用いて行われ、注入エネルギーを5keVとし、ドーズ量を2.0×10
15/cm
2とした条件で行われる。2回目のイオン注入は、燐(P)を用いて行われ、注入エネルギーを8keVとし、ドーズ量を3.0×10
15/cm
2とした条件で行われる。この際、拡散領域ND1、ND2の不純物濃度ピークの位置がエピタキシャル層EP中になるように、1回目および2回目のイオン注入の設定が行われる。
【0097】
以上により、領域1Aに低耐圧MISFET1Qが形成され、領域2Aに高耐圧MISFET2Qが形成される。
【0098】
その後、以下の製造工程を経て、
図1に示される構造体が得られる。まず、等方性エッチング処理によって、給電領域SR1、SR2に形成されている絶縁膜IF3を除去する。次に、ゲート電極GE1、GE2、エピタキシャル層EP、ウェル領域PW1(給電領域SR1)およびウェル領域PW2(給電領域SR2)の各々の上面上に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術によって、シリサイド膜SIを形成する。
【0099】
(実施の形態2)
以下に
図17および
図18を用いて、実施の形態2における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0100】
図17に示されるように、実施の形態2における半導体装置は、領域1A、領域2Aおよび領域4Aとは異なる領域である領域3Aを有する。領域3AのSOI基板10には、抵抗素子3Qが形成される。抵抗素子3Qは、アナログ回路などで使用される半導体素子である。実施の形態1で説明した技術は、抵抗素子3Qにも応用できる。
【0101】
領域3Aの半導体基板SUB中には、n型のウェル領域DNWが形成されている。領域3Aのウェル領域DNW内には、n型のウェル領域NW3が形成されている。
【0102】
領域3Aの半導体層SL中には、低濃度のp型の不純物領域LDD3が形成されている。領域3Aの半導体層SL上には、エピタキシャル層EPが形成されている。エピタキシャル層EP中および半導体層SL中には、p型の拡散領域(不純物領域)PD3が形成されている。拡散領域PD3は、不純物領域LDD3よりも高い不純物濃度を有する。
【0103】
領域3Aのエピタキシャル層EPの一部および半導体層SLを覆うように、絶縁膜IF5が形成されている。絶縁膜IF5は、シリサイド膜SIを形成する工程の直前に形成され、シリサイド膜SIを形成したくない領域を保護するために設けられている。絶縁膜IF5は、例えば酸化シリコン膜である。絶縁膜IF5から露出しているエピタキシャル層EP上には、シリサイド膜SIが形成されている。
【0104】
半導体層SLのうち不純物領域LDD3が形成されている箇所が、低抵抗部であり、抵抗素子3Qの主要部を構成する。不純物領域LDD3を挟む2箇所の拡散領域PD3(2箇所のエピタキシャル層EP)が、抵抗素子3Qの両端子Vin、Voutを構成する。なお、ここでは図示していないが、ウェル領域NW3の一部は、給電領域SR1、SR2のような給電領域を構成し、この給電領域からウェル領域NW3にバックゲート電位Vb3を供給できる。
【0105】
しかしながら、端子Vinと端子Voutとの間に電流が流れる際にバックゲート電位Vb3を使用すると、抵抗素子3Qの絶縁層BOXにかかる電圧が大きくなり、抵抗素子3Qの絶縁層BOXのTDDB寿命が劣化する場合がある。そこで、実施の形態2では、ウェル領域NW3に、バックゲート電位Vb3を供給していない(Open)。すなわち、ウェル領域NW3は、電気的にフローティング状態である。これにより、抵抗素子3Qの絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善できる。
【0106】
また、実施の形態2では、実施の形態1と同様の理由で、不純物領域LDD3および拡散領域PD3の各々のイオン注入のエネルギーが、従来よりも低くなっている。
【0107】
不純物領域LDD3のイオン注入は、二フッ化ボロン(BF2)を用いて行われ、注入エネルギーを5keV以下とし、ドーズ量を4.0×1014/cm2とした条件で行われる。この際、不純物領域LDD3の不純物濃度ピークの位置が半導体層SL中になるように、イオン注入の設定が行われる。
【0108】
拡散領域PD3のイオン注入は、ボロン(B)を用いて行われ、注入エネルギーを2keVとし、ドーズ量を4.0×1015/cm2とした条件で行われる。この際、拡散領域PD3の不純物濃度ピークの位置がエピタキシャル層EP中になるように、イオン注入の設定が行われる。
【0109】
不純物領域LDD3のイオン注入のエネルギーは、不純物領域LDD1と同様に、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーよりも低くなっている。このため、抵抗素子3Qの絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を更に改善できる。
【0110】
図18は、
図4と同様の主旨で、不純物領域LDD3の形成位置が分かり易くなるように、一部の構成が省略された断面図である。
図18に示されるダメージ層20は、不純物領域LDD3のイオン注入によって発生する絶縁層BOX中のダメージを示している。
【0111】
不純物領域LDD3のイオン注入のエネルギーを低くすることで、不純物領域LDD3の不純物濃度ピークが、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークよりも絶縁層BOXから遠くに位置している。そのため、不純物領域LDD3の直下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量は、不純物領域LDD2の直下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量よりも少なくなっている。
【0112】
以上のように、実施の形態2の半導体装置によれば、抵抗素子3Qの絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善でき、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0113】
なお、不純物領域LDD3のイオン注入を行う工程は、
図12の工程後であって
図15の工程前に、領域3Aを選択的に開口するパターンを有するレジストパターンを用いて行うことができる。また、拡散領域PD3のイオン注入を行う工程は、
図15の工程後であってシリサイド膜SIを形成する工程前に、領域3Aを選択的に開口するパターンを有するレジストパターンを用いて行うことができる。
【0114】
(実施の形態3)
以下に
図19~
図24を用いて、実施の形態3における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0115】
実施の形態1では、エピタキシャル層EPを形成した後に、不純物領域LDD1、LDD2を形成していた。実施の形態3では、不純物領域LDD1、LDD2を形成した後に、エピタキシャル層EPを形成する。
【0116】
実施の形態3の製造工程は、
図10までは実施の形態1と同様である。
図19は、
図10の製造工程に続く製造工程を示している。
【0117】
図19に示されるように、まず、ゲート電極GE1、GE2およびキャップ膜CPを覆うように、半導体層SL上および半導体基板SUB上に、例えばCVD法によって、絶縁膜IF3を形成する。絶縁膜IF3は、実施の形態1のものと同様である。
【0118】
次に、
図13と同様のレジストパターンRP3を形成する。次に、レジストパターンRP3をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域1Aの半導体層SL中に、n型の不純物領域LDD1を形成する。不純物領域LDD1のイオン注入は、実施の形態1と同様の条件で行われる。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP3を除去する。
【0119】
なお、この段階ではエピタキシャル層EPが形成されていないので、上記イオン注入では、ゲート電極GE1の横に位置する半導体層SLの全体に、不純物領域LDD1が形成される。
【0120】
図20に示されるように、まず、
図14と同様のレジストパターンRP4を形成する。次に、レジストパターンRP4をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域2Aの半導体層SL中に、n型の不純物領域LDD2を形成する。不純物領域LDD2のイオン注入は、実施の形態1と同様の条件で行われる。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP4を除去する。
【0121】
なお、この段階ではエピタキシャル層EPが形成されていないので、上記イオン注入では、ゲート電極GE2の横に位置する半導体層SLの全体に、不純物領域LDD2が形成される。
【0122】
また、不純物領域LDD1のイオン注入工程と不純物領域LDD2のイオン注入工程とは、何れが先であってもよい。
【0123】
図21に示されるように、まず、絶縁膜IF3上に、例えばCVD法によって、絶縁膜IF4を形成する。絶縁膜IF4は、実施の形態1のものと同様である。
【0124】
次に、
図11と同様のレジストパターンRP2を形成する。次に、レジストパターンRP2をマスクとして、絶縁膜IF4および絶縁膜IF3に異方性エッチング処理を行うことで、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各々の側面上に、サイドウォールスペーサSW1およびオフセットスペーサOSを形成する。なお、サイドウォールスペーサSW1は、オフセットスペーサOSを介してゲート電極GE1、GE2の各々の側面上に形成される。また、給電領域SR1、SR2は、絶縁膜IF4、IF3によって覆われている。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP2を除去する。
【0125】
図22に示されるように、領域1Aおよび領域2Aの半導体層SL上に、エピタキシャル成長法によって、エピタキシャル層EPを形成する。この際、ゲート電極GE1、GE2の各々の上面は、キャップ膜CPで覆われているので、ゲート電極GE1、GE2の各々の上面上にエピタキシャル層EPは形成されない。また、給電領域SR1、SR2は、絶縁膜IF4で覆われているので、給電領域SR1、SR2の各々の半導体基板SUB上にエピタキシャル層EPは形成されない。
【0126】
図23に示されるように、まず、
図16と同様のレジストパターンRP5を形成する。次に、レジストパターンRP5をマスクとしてイオン注入を行うことで、領域1Aおよび領域2Aにおいて、サイドウォールスペーサSW1から露出している半導体層SL中およびエピタキシャル層EP中に、n型の拡散領域ND1、ND2を形成する。拡散領域ND1、ND2のイオン注入は、実施の形態1と同様の条件で行われる。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP5を除去する。
【0127】
以上により、領域1Aに低耐圧MISFET1Qが形成され、領域2Aに高耐圧MISFET2Qが形成される。
【0128】
その後、給電領域SR1、SR2に形成されている絶縁膜IF4、IF3を選択的に除去した後、実施の形態1と同様なシリサイド膜SIを形成する。
【0129】
図24は、
図4と同様の主旨で、不純物領域LDD1、LDD2の形成位置が分かり易くなるように、一部の構成が省略された断面図である。
【0130】
実施の形態3でも実施の形態1と同様に、不純物領域LDD2のイオン注入のエネルギーが、不純物領域LDD1のイオン注入のエネルギーよりも高く、不純物領域LDD2の不純物濃度ピークが、不純物領域LDD1の不純物濃度ピークよりも絶縁層BOXの近くに位置し、好ましくは絶縁層BOX中に位置している。
【0131】
そのため、
図24に示されるように、不純物領域LDD2の直下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量は、不純物領域LDD1の直下に位置する絶縁層BOX中に存在するダメージ層20の量よりも多くなっている。
【0132】
実施の形態3でも、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qにおいて絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を改善できると共に、高耐圧MISFET2Qにおいてホットキャリア注入によるゲート絶縁膜GI2の継時劣化を改善できる。従って、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0133】
なお、実施の形態1では、ゲート電極GE1、GE2の横に位置する半導体層SLの一部に不純物領域LDD1、LDD2が形成されていた。一方で、実施の形態3では、ゲート電極GE1、GE2の横に位置する半導体層SLの全体に、不純物領域LDD1、LDD2が形成される。すなわち、エピタキシャル層EP下の半導体層SLにも、不純物領域LDD1、LDD2が形成されるので、エピタキシャル層EP下の半導体層SLにおいて低抵抗化が図れる。従って、実施の形態3では、実施の形態1よりも、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qの各々のソース領域およびドレイン領域の低抵抗化が図れる。
【0134】
また、ソース領域およびドレイン領域の全体の抵抗値を、実施の形態1と同程度に調整することもできる。例えば、不純物領域LDD1、LDD2の各々の不純物濃度を、実施の形態1よりも低くしてもよい。すなわち、不純物領域LDD1、LDD2の各々のイオン注入のドーズ量を、
図3の条件よりも低くしてもよい。これにより、絶縁層BOX中にイオンが注入される確率が減少するので、低耐圧MISFET1Qおよび高耐圧MISFET2Qの各々の絶縁層BOXのTDDB寿命の劣化を更に改善できる。
【0135】
また、高耐圧MISFET2Qにおいては、不純物領域LDD2の不純物濃度が低くなったことで、ドレイン領域近傍の電界を緩和できる。従って、ホットキャリアがゲート絶縁膜GI2に注入され難くなり、ゲート絶縁膜GI2の継時劣化を更に抑制できる。
【0136】
なお、高耐圧MISFET2Qのみ不純物領域LDD2の不純物濃度を低くしてもよい。すなわち、不純物領域LDD2の不純物濃度が、不純物領域LDD1の不純物濃度よりも低くなっていてもよい。
【0137】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0138】
10 SOI基板
20 ダメージ層
1A~4A 領域
1Q 低耐圧MISFET
2Q 高耐圧MISFET
3Q 抵抗素子
4Qn、4Qp 高耐圧MISFET
BOX 絶縁層
CF1 導電性膜
CP キャップ膜
DNW n型のウェル領域
EP エピタキシャル層
GE1、GE2、GE4n、GE4p ゲート電極
GI1、GI2、GI4 ゲート絶縁膜
HM ハードマスク
IF1~IF5 絶縁膜
LDD1、LDD2、LDD4n n型の不純物領域
LDD3、LDD4p p型の不純物領域
ND1、ND2、ND4 n型の拡散領域
NW3、NW4 n型のウェル領域
PD3、PD4 p型の拡散領域
PW1、PW2、PW4 p型のウェル領域
RP1~RP5 レジストパターン
SI シリサイド膜
SL 半導体層
SR1、SR2 給電領域
STI 素子分離部
SUB 半導体基板
SW1、SW2 サイドウォールスペーサ