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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121302
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】RFタグ用のアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20240830BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240830BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20240830BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240830BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q21/06
H01Q21/08
H01Q13/08
G06K7/10 264
G06K7/10 236
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028332
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 康平
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021HA10
5J045AB06
5J045DA09
5J045DA12
5J045EA07
5J045HA03
5J045NA01
5J046AA04
5J046AA09
5J046AB02
5J046AB03
5J046AB13
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】調整作業を簡易にするための技術を提供する。
【解決手段】RFタグ用のアンテナは、誘電体層と、前記誘電体層の裏面に形成されたグランド層と、前記誘電体層の表面に形成された伝送線路と、を備え、前記伝送線路は、電波を放射する素子である放射素子として機能する第1線路と、前記放射素子として機能する第2線路と、を備え、前記第1線路は、特定の方向に沿って延びており、前記第2線路は、前記第1線路と平行に延びており、前記伝送線路に電流が流入すると、前記第2線路には、前記第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
前記誘電体層の裏面に形成されたグランド層と、
前記誘電体層の表面に形成された伝送線路と、
を備え、
前記伝送線路は、電波を放射する素子である放射素子として機能する第1線路と、前記放射素子として機能する第2線路と、を備え、
前記第1線路は、特定の方向に沿って延びており、
前記第2線路は、前記第1線路と平行に延びており、
前記伝送線路に電流が流入すると、前記第2線路には、前記第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れる、RFタグ用のアンテナ。
【請求項2】
前記伝送線路は、第1方向に沿って並ぶ複数個のセルを含み、
前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1線路と前記第2線路とを含む、請求項1に記載のRFタグ用のアンテナ。
【請求項3】
前記複数個のセルのそれぞれは、4回回転対称の形状を有し、
前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1線路と前記第2線路に加えて、第3線路と第4線路を含み、
前記第3線路は、前記特定の方向と交差する方向に沿って延びており、
前記第4線路は、前記第3線路と平行に延びており、
前記伝送線路に前記第1方向から前記電流が流入すると、前記第2線路には、前記第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れ、
前記伝送線路に前記第1方向と直交する第2方向から前記電流が流入すると、前記第4線路には、前記第3線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れる、請求項2に記載のRFタグ用のアンテナ。
【請求項4】
前記伝送線路の前記第1方向に沿った全長は、前記放射素子として機能する前記第1線路及び前記放射素子として機能する前記第2線路から放射される前記電波の波長の半分よりも短い、請求項2又は3に記載のRFタグ用のアンテナ。
【請求項5】
前記複数個のセルのうちの第1セルと、前記複数個のセルのうち、前記第1セルと隣接する第2セルと、の間には所定の隙間が形成されており、
前記伝送線路に対する等価回路は、前記所定の隙間に基づく直列共振回路と、前記第1線路及び前記第2線路に基づく並列共振回路と、を含み、
前記所定の隙間、前記第1線路、及び、前記第2線路は、前記直列共振回路の共振周波数と前記並列共振回路の共振周波数が一致するように調整されている、請求項4に記載のRFタグ用のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、RFタグから情報を読み取るためのアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、RFタグから情報を読み取るためのリーダアンテナが開示されている。リーダアンテナは、誘導体層と、ストリップ導体と、グランド導体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-040720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、リーダアンテナは、棚に並べられた物品を管理するシステムに利用される。具体的には、RFタグは、各物品に取り付けられ、リーダアンテナは、各棚板に配置される。例えば、第1の棚板に並べられた物品のRFタグは、第1の棚板に配置された第1のリーダアンテナによって読み取られる。第1のリーダアンテナが、第1の棚板の上側に位置する第2の棚板に並べられた物品のRFタグを読み取らないように、作業者は、システムの導入時に調整作業を行う。当該調整作業は、複数の工程、例えば、第1のリーダアンテナに供給される電力の調整、第1の棚板に対する第2の棚板の高さの調整である。
【0005】
作業者は、複数の工程を有する調整作業を面倒に感じ得る。本明細書では、調整作業を簡易にするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示するRFタグ用のアンテナは、誘電体層と、前記誘電体層の裏面に形成されたグランド層と、前記誘電体層の表面に形成された伝送線路と、を備え、前記伝送線路は、電波を放射する素子である放射素子として機能する第1線路と、前記放射素子として機能する第2線路と、を備え、前記第1線路は、特定の方向に沿って延びており、前記第2線路は、前記第1線路と平行に延びており、前記伝送線路に電流が流入すると、前記第2線路には、前記第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れる。
【0007】
上記の構成によれば、第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が第2線路に流れることにより、伝送線路から遠方の空間では、第2線路から放射される電波と、第1線路から放射される電波と、が互いに相殺される。ここで、物品は、アンテナ上に並べられるため、RFタグは、伝送線路から近傍の空間内に位置する。近傍の空間では、遠方の空間と比較して、相殺されない電波が残存している。アンテナは、近傍の空間において残存する電波を利用して、近傍の空間内に位置するRFタグを読み取ることができる。即ち、上記のアンテナでは、近傍の空間にのみ電波が残存するように予め調整されている。これにより、例えば、棚板と棚板の間の高さを調整しなくても、上記のアンテナを棚に導入することができる。アンテナの導入時における作業者の調整作業を簡易にすることができる。
【0008】
前記伝送線路は、第1方向に沿って並ぶ複数個のセルを含み、前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1線路と前記第2線路とを含んでもよい。
【0009】
前記複数個のセルのそれぞれは、4回回転対称の形状を有し、前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1線路と前記第2線路に加えて、第3線路と第4線路を含み、前記第3線路は、前記特定の方向と交差する方向に沿って延びており、前記第4線路は、前記第3線路と平行に延びており、前記伝送線路に前記第1方向から前記電流が流入すると、前記第2線路には、前記第1線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れ、前記伝送線路に前記第1方向と直交する第2方向から前記電流が流入すると、前記第4線路には、前記第3線路を流れる電流とは反対方向の電流が流れてもよい。
【0010】
このような構成によれば、伝送線路に電流を流入する方向が、第1方向であっても第2方向であっても、近傍の空間にのみ電波が残存する機能を得ることができる。例えば、電源の位置をアンテナから第1方向に向かった位置とアンテナから第2方向に向かった位置とのいずれにも設定することができる。ユーザの利便性が向上する。
【0011】
前記伝送線路の前記第1方向に沿った全長は、前記放射素子として機能する前記第1線路及び前記放射素子として機能する前記第2線路から放射される前記電波の波長の半分よりも短くてもよい。
【0012】
このような構成によれば、波長に対して全長が十分に短い。この場合には、電波が伝送線路内で反射しても、入射波と反射波との間の位相差が小さく、入射波が反射波によって打ち消されない。伝送線路内における反射によって、電波の強さが弱まることを抑制することができる。
【0013】
前記複数個のセルのうちの第1セルと、前記複数個のセルのうち、前記第1セルと隣接する第2セルと、の間には所定の隙間が形成されており、前記伝送線路に対する等価回路は、前記所定の隙間に基づく直列共振回路と、前記第1線路及び前記第2線路に基づく並列共振回路と、を含み、前記所定の隙間、前記第1線路、及び、前記第2線路は、前記直列共振回路の共振周波数と前記並列共振回路の共振周波数が一致するように調整されていてもよい。
【0014】
伝送線路の第1方向に沿った全長が放射される電波の波長の半分より短くなるように伝送線路を設計すると、放射される電波の周波数は、禁止帯(バンドギャップ)に近づく。放射される電波の周波数が禁止帯に近づくと、アンテナの損失が悪化する。ここで、上記のように、セルとセルの間に所定の隙間を形成することにより、伝送線路は、直列共振回路と並列共振回路を含む等価回路として定義することができる。このような等価回路では、直列共振回路の共振周波数と並列共振回路の共振周波数との間にバンドギャップが発生する。しかし、直列共振回路の共振周波数と並列共振回路の共振周波数が一致するように、所定の隙間、第1線路、及び、第2線路を調整することにより、バンドギャップを無くすことができる。バンドギャップを無くすことにより、アンテナの損失が悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】アンテナの使用態様の一例である。
図2】アンテナの斜視図である。
図3】アンテナ素子の平面図である。
図4】様々なアンテナ素子の放射パターンである。
図5】アンテナの等価回路である。
図6】アンテナ素子の概念図である。
図7】アンテナの特性を示す分散曲線の一例である。
図8】第2実施例のアンテナ素子の平面図である。
図9】第2実施例のアンテナの等価回路である。
図10】第2実施例の変形例である。
図11】第3実施例のアンテナ素子の平面図である。
図12】アンテナの使用態様の一例である。
図13】第3実施例のアンテナ素子の変形例である。
図14】第4実施例のアンテナ素子の平面図である。
図15】第4実施例のアンテナの等価回路である。
図16】アンテナの特性を示す分散曲線の一例である。
図17】アンテナの使用態様の一例である。
図18】第4実施例の変形例である。
図19】第4実施例の変形例である。
図20】第4実施例の変形例である。
図21】第1参考例のアンテナ素子の平面図である。
図22】第2参考例のアンテナ素子の平面図である。
図23】第3参考例のアンテナ素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)
(RFタグ用のアンテナ10の使用態様;図1
アンテナ10は、RFタグ6に記憶された情報を読み取るために利用される。例えば、図1に示すように、RFタグ6は、物品4に取り付けられる。物品4は、棚2の棚板3上に配置される。棚2は、複数段の棚板3を有し、アンテナ10は、複数段の棚板3のそれぞれに取り付けられる。なお、図1の棚板3の段数は、一例に過ぎない。また、図1では、「3」、「4」、「6」、及び、「10」の各符号は、1つの要素に付され、残りの要素に符号を付すことは省略されている。また、各図では、XYZ座標が定義されている。
【0017】
複数個の棚板3に対応する複数個のアンテナ10は、リーダ8に接続されている。アンテナ10は、リーダ8から供給される電力により動作する。図1の例では、リーダ8は、棚2の側壁(即ちX軸方向に位置する壁)に取り付けられている。
【0018】
また、リーダ8は、複数個のアンテナ10のそれぞれから、当該アンテナ10によって読み取られた情報を収集し、管理装置12に送信する。管理装置12は、例えば、デスクトップPC、ラップトップPC、スマートフォン、タブレット端末、サーバである。
【0019】
RFタグ6は、Radio Frequency IDentification(RFID)の技術を利用したICタグである。例えば、物品4のRFタグ6には、物品4に関する物品情報、例えば、物品名、識別子、製造日が記憶されている。管理装置12は、リーダ8及びアンテナ10を利用して物品4のRFタグ6に記憶されている物品情報を読み取ることにより、棚2に保管されている複数個の物品4を管理する。図1に示すシステムは、例えば、物品4の在庫管理に利用される。
【0020】
(RFタグ用のアンテナ10の構成;図2
アンテナ10は、棚板3と同様に、X軸方向に長手な形状を有する。アンテナ10は、グランド層20と、誘電体層22と、アンテナ素子24と、を備える。グランド層20は、回路のグランドとして機能する導電体である。誘電体層22は、誘電体を含む。アンテナ素子24は、電波を放射する放射素子として機能する伝送線路である。
【0021】
図2に示すように、グランド層20は、誘電体層22の裏面(即ちZ軸負方向の面)に形成されており、アンテナ素子24は、誘電体層22の表面(即ちZ軸正方向の面)に形成されている。アンテナ10は、いわゆる、マイクロストリップアンテナである。
【0022】
(アンテナ素子24の構成;図3
アンテナ素子24は、複数個のセル30をX軸方向に連結して構成されている。本実施例では、セル30は、十字の形状を有している。セル30は、X軸方向に延びる主線路32と、主線路32からY軸正方向に延びるスタブ線路34aと、主線路32からY軸負方向に延びるスタブ線路34bと、を備える。スタブ線路34a及び34bは、同軸線上に位置し、スタブ線路34a及び34bは、互いに平行である。スタブ線路34a及び34bの双方の端部は、開放されている。第1のセル30の主線路32は、第1のセル30と隣接する第2のセル30の主線路32と連結する。
【0023】
例えば、リーダ8は、アンテナ素子24のうち、X軸正方向の端部に位置するセル30に接続される。これにより、図3に示すように、アンテナ素子24には、X軸正方向から電流が流入する。X軸正方向から電流が流入すると、当該電流は、主線路32から2個のスタブ線路34a及び34bへ分流する。スタブ線路34aには、Y軸正方向に沿って電流が流れる。一方、スタブ線路34bには、Y軸負方向に沿って電流が流れる。即ち、スタブ線路34bには、スタブ線路34aを流れる電流とは反対方向の電流が流れる。
【0024】
図3に示すように、複数個のセル30は、所定のピッチpで等間隔に並ぶ。本明細書では、アンテナ素子24の全長をLで示す。全長Lは、例えば、N×pを含む式で計算される。ここで、「N」は、セル30の個数であり、L≧N×pの関係が成り立つ。
【0025】
また、スタブ線路34aは、長さd1を有し、スタブ線路34bは、長さd2を有する。長さd1及びd2を調整することにより、アンテナ素子24の放射パターンを調整することができる。なお、本実施例では、スタブ線路34aの幅は、スタブ線路34bの幅と同一である。なお、変形例では、スタブ線路34aの幅は、スタブ線路34bの幅と異なっていてもよい。
【0026】
(アンテナ素子24の放射パターン;図4
図4では、比較例のアンテナ素子と、d1>d2の関係を有するアンテナ素子24と、d1=d2の関係を有するアンテナ素子24と、のそれぞれの放射パターンを示す。図4に示す各放射パターンは、Z軸正方向の空間への放射パターンを示す。ここで、比較例のアンテナ素子は、複数個のT字形状のセルを連結して構成されている。比較例のアンテナ素子の各セルは、本実施例のセル30と異なり、スタブ線路を1本だけ備える。
【0027】
上記したように、本実施例のアンテナ素子24では、スタブ線路34aに流れる電流とは反対方向の電流がスタブ線路34bに流れる。これにより、アンテナ素子24から遠方の空間では、スタブ線路34bから放射される電波と、スタブ線路34aから放射される電波と、が互いに相殺される。一方、アンテナ素子24から近傍の空間では、遠方の空間と比較して、相殺されない電波が残存している。
【0028】
図4において、比較例の放射パターンと本実施例の放射パターンを比較すると、比較例のアンテナ素子から放射される電波は、本実施例のアンテナ素子24から放射される電波よりも遠方まで到達する。これは、比較例のアンテナ素子の各セルが1本のスタブ線路のみを備え、遠方の空間において電波の相殺が発生しないからである。
【0029】
本実施例のアンテナ10は、例えば、図1の棚2に導入される。そして、物品4は、アンテナ10上に並べられる。このため、RFタグ6は、アンテナ素子24から近傍の空間内に位置する。アンテナ10は、近傍の空間において残存する電波を利用して、近傍の空間内に位置するRFタグ6を読み取ることができる。一方、アンテナ10から遠方の空間では、電波が相殺される。アンテナ10から遠方の空間には、上段の棚板3が位置している。即ち、アンテナ10から放射される電波(以下では「放射電波」と記載)は、上段の棚板3まで到達しない。このため、アンテナ10は、アンテナ10が取り付けられている棚板3上の物品4から情報を読み取り、当該棚板3よりも上段の棚板3上の物品4からは情報を読み取らない。
【0030】
例えば、比較例のアンテナ素子を備えるアンテナを図1の棚2に導入すると、当該アンテナから放射される電波は、当該アンテナが取り付けられている棚板3だけでなく、当該棚板3よりも上段の棚板3まで到達し得る。比較例のアンテナ素子において、上段の棚板3に電波が到達しないようにするには、例えば、比較例のアンテナ素子に供給する電力を下げる、棚板3と棚板3の間の高さを高くするなどの調整が必要となる。このような作業を作業者は煩わしく感じる。
【0031】
これに対して、本実施例のアンテナ10は、近傍の空間にのみ電波が残存するように、互いに反対方向に電流が流れる2本のスタブ線路34a及び34bを備える。これにより、例えば、棚板3と棚板3の間の高さを調整しなくても、アンテナ10を棚に導入することができる。アンテナ10の導入時における作業者の調整作業を簡易にすることができる。
【0032】
また、図4において、d1>d2の関係を有するアンテナ素子24の放射パターンとd1=d2の関係を有するアンテナ素子24の放射パターンを比較すると、d1>d2に対応するアンテナ素子24から放射される電波は、d1=d2に対応するアンテナ素子24から放射される電波よりも遠方まで到達する。これは、d1>d2の関係において、短いスタブ線路34bから放射される電波の方が、長いスタブ線路34aから放射される電波よりも減衰し易いからである。スタブ線路34aの長さd1とスタブ線路34bの長さd2を調整することにより、アンテナ素子24から放射される電波の放射パターンを調整することができる。
【0033】
(アンテナ10の等価回路;図5
図3に示すアンテナ素子24を備えるアンテナ10の等価回路は、図5の通りである。図5に示すように、当該アンテナ10の等価回路は、2個の並列共振回路を含み、両者は互いに並列である。2個の並列共振回路のうちの一方が、スタブ線路34aに対応し、2個の並列共振回路のうちの他方が、スタブ線路34bに対応する。
【0034】
(アンテナ素子24の概念図;図6
アンテナ素子24から遠方の空間において電波を相殺するような伝送線路の形状は、図3の十字形状に限らない。このような伝送線路は、一般的には、図6に示すように、第1線路M1と、第1線路M1と平行な第2線路M2と、を備えていればよい。そして、第1線路M1を流れる電流A1が、第2線路M2を流れる電流A2と反対方向であればよい。
【0035】
(アンテナ10の設計要件;図7
図7の実線のグラフは、図3のアンテナ素子24を有するアンテナ10内を伝送する電波の分散関係を示す分散曲線である(即ち、アンテナ10内の電波の伝搬特性である)。また、図7の破線のグラフは、空気を伝送する電波の分散関係を示す直線である。図7では、横軸が伝搬定数を示し、縦軸が角周波数を示す。図7に示すように、アンテナ10を伝送する電波の角周波数は、禁止帯を有し、禁止帯は、図5に示す並列共振回路における共振角周波数ωshより小さい角周波数帯である。
【0036】
本実施例では、アンテナ素子24の全長Lが、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たすように、アンテナ10の各種パラメータが設計される。ここで、各種パラメータは、スタブ線路34a及び34bの長さd1及びd2、ピッチp、誘電体層22の誘電率等である。具体例では、L<λg/4の関係が成り立つように、各種パラメータが設計される。ここで、λgは、アンテナ10内を伝送する電波の波長であり、空気中を伝送する電波(即ち放射電波)の波長よりも短い。これは、電波の波長が、誘電体層22を伝送することにより短縮されるからである。
【0037】
図7の分散曲線において、上記の条件を満たす設計範囲は、図7の破線で囲まれる領域である。図7に示すように、設計範囲は禁止帯に近い。この設計範囲では、放射電波の波長は、比較的に長くなる。電波は、伝送線路であるアンテナ素子24内を伝送し、アンテナ素子24内で反射する。そして、長い波長に対して、全長Lが十分に短ければ、電波がアンテナ素子24内で反射しても、入射波と反射波との間の位相差が小さく、入射波が反射波によって打ち消されない。伝送線路内における反射によって、放射電波の強さが弱まることを抑制することができる。
【0038】
また、従来の定在波アンテナでは、アンテナの全長は、定在波の半波長の整数倍に制限される。これに対して、本実施例のアンテナ10では、全長Lは、ピッチpの整数倍で調整することができる。本実施例では、アンテナの全長が定在波の波長により制限される定在波アンテナと比較して、全長Lの自由度を高めることができる。
【0039】
また、定在波アンテナでは、アンテナの端部に定在波の節が位置する。このため、アンテナの端部に位置するRFタグ6から情報を読み取れない可能性がある。これに対して、本実施例のアンテナ10では、全長Lに対して波長が十分に長い。アンテナ10内に波長の節が存在せず、アンテナ10の端部に位置するRFタグ6からも情報を読み取ることができる。
【0040】
(対応関係)
アンテナ10、誘電体層22、グランド層20、アンテナ素子24が、それぞれ、「RFタグ用のアンテナ」、「誘電体層」、「グランド層」、「伝送線路」の一例である。スタブ線路34a、スタブ線路34bが、それぞれ、「第1線路」、「第2線路」の一例である。Y軸方向が、「特定の方向」の一例である。セル30が、「セル」の一例である。X軸方向が、「第1方向」の一例である。
【0041】
(第2実施例)
(アンテナ素子の構成;図8
本実施例は、アンテナ素子24がセル30とは異なる形状を有するセル130によって構成されている点を除いて、第1実施例と同様である。
【0042】
図8に示すように、セル130は、主線路132と、一対の副線路133a及び133bと、屈折線路134と、を備える。主線路132は、X軸方向に延びる。一対の副線路133a及び133bは、主線路132のX軸方向における両端からY軸正方向及びY軸負方向の双方に延びている。屈折線路134は、副線路133bのY軸負方向における端からX軸正方向に延びている。屈折線路134のY軸負方向における端は開放されている。なお、互いに隣接するセル130の間に隙間136が存在する。隙間136は、コンデンサとして機能する。このため、第1のセル130を伝送する電波は、隙間136を介して、第1のセル130に隣接する第2のセル130にも伝送する。
【0043】
例えば、図8に示すように、X軸正方向から電流が流入すると、当該電流は、主線路132から副線路133bに流れ、さらに、副線路133bから屈折線路134に流れる。この場合、図8に示すように、主線路132にはX軸負方向に沿って電流が流れ、屈折線路134にはX軸正方向に沿って電流が流れる。即ち、屈折線路134には、主線路132を流れる電流とは反対方向の電流が流れる。
【0044】
本実施例のアンテナ10でも、近傍の空間にのみ電波が残存するように、互いに反対方向に電流が流れる主線路132及び屈折線路134を備える。これにより、第1実施例と同様に、アンテナ10の導入時における作業者の調整作業を簡易にすることができる。
【0045】
また、本実施例でも、第1実施例と同様に、アンテナ素子24の全長Lが、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たすように、アンテナ10の各種パラメータが設計される。伝送線路内における反射によって、放射電波の強さが弱まることを抑制することができる。
【0046】
(アンテナ10の等価回路;図9
図8に示すアンテナ素子24を備えるアンテナ10の等価回路は、図9の通りである。図9に示すように、図8のアンテナ10の等価回路は、2個の直列共振回路を含み、両者は直列に接続されている。2個の直列共振回路のうちの一方が、主線路132に対応し、2個の直列共振回路のうちの他方が、屈折線路134に対応する。
【0047】
(対応関係)
主線路132、屈折線路134が、それぞれ、「第1線路」、「第2線路」の一例である。X軸方向が、「特定の方向」の一例である。
【0048】
(第2実施例の変形例)
(アンテナ素子の構成;図10
本変形例のアンテナ素子24は、主線路142と、一対の副線路143a及び143bと、一対の屈折線路144a及び144bと、を備える。主線路142、一対の副線路143a及び143bは、それぞれ、図9の主線路132、一対の副線路133a及び133bと同様である。屈折線路144bは、図9の屈折線路134と同様である。屈折線路144aは、副線路143aのY軸正方向における端からX軸負方向に延びている。また、本変形例でも、互いに隣接するセル140の間に隙間146が存在する。
【0049】
例えば、図10に示すように、X軸正方向から電流が流入すると、当該電流は、主線路132から副線路143a及び屈折線路144aへ流れるとともに、主線路132から副線路143b及び屈折線路144bへも流れる。この場合、図10に示すように、屈折線路144aにはX軸負方向に沿って電流が流れ、屈折線路144bにはX軸正方向に沿って電流が流れる。即ち、屈折線路144bには、屈折線路144aを流れる電流とは反対方向の電流が流れる。本変形例でも、近傍の空間にのみ電波が残存し、アンテナ10の導入時における作業者の調整作業を簡易にすることができる。
【0050】
(対応関係)
屈折線路144a、屈折線路144bが、それぞれ、「第1線路」、「第2線路」の一例である。
【0051】
(第3実施例)
(アンテナ素子の構成;図11
本実施例のアンテナ素子24は、複数個のセル230を備え、複数個のセル230は、X軸方向だけでなく、Y軸方向にも、連結されている。セル230は、2本の主線路232a及び232bと、4本のスタブ線路234a~234dと、を備える。主線路232aは、Y軸方向に延び、主線路232bは、X軸方向に延びる。2本のスタブ線路234a及び234bは、主線路232aから互いに反対方向にX軸方向に延びる。2本のスタブ線路234c及び234dは、主線路232bから互いに反対方向にY軸方向に延びる。例えば、2本のスタブ線路234a及び234bが、2個の並列共振回路を含む図5の等価回路として表現される。
【0052】
例えば、図11に示すように、X軸方向から電流が流入すると、スタブ線路234bに、スタブ線路234aに流れる電流とは反対方向の電流が流れるとともに、スタブ線路234dに、スタブ線路234cに流れる電流とは反対方向の電流が流れる。また、Y軸方向から電流が流入する場合でも、X軸方向から電流が流入する場合と同様に、各スタブ線路234a~234dに電流が流れる。本実施例の構成によれば、X軸正方向から電流が流入する場合とY軸方向から電流が流入する場合の双方で、電流の流れるパターンが同じである。そして、当該パターンは、互いに反対方向に流れる電流を有する。このため、本実施例の構成によれば、X軸正方向から電流が流入してもY軸方向から電流が流入しても、近傍の空間にのみ電波が残存する機能を得ることができる。アンテナ10の導入時における作業者の調整作業を簡易にすることができる。
【0053】
(RFタグ用のアンテナ10の使用態様;図12
図12の使用態様は、リーダ8の取り付け位置が異なる点を除いて、図1の使用態様と同様である。なお、図12では、管理装置12の図示が省略されている。
【0054】
図12の使用態様では、リーダ8は、棚2の裏側の壁(即ちY軸負方向に位置する壁)に取り付けられている。この場合には、リーダ8から延びるケーブルは、アンテナ10のY軸方向における端部に接続され、リーダ8からの電力は、Y軸方向からアンテナ10に流入する。
【0055】
また、本実施例のアンテナ素子24を備えるアンテナ10は、図1の使用態様にも適用可能である。この場合には、リーダ8から延びるケーブルは、アンテナ10のX軸方向における端部に接続され、リーダ8からの電力は、X軸方向からアンテナ10に流入する。
【0056】
本実施例の構成によれば、アンテナ素子24に電流を流入する方向が、X軸方向であってもY軸方向であっても、近傍の空間にのみ電波が残存する機能を得ることができる。電源であるリーダ8の位置をアンテナ10からX軸方向に向かった位置(例えば側壁上の位置、図1参照)とアンテナからY方向に向かった位置(例えば裏側の壁上の位置、図12参照)のいずれにも設定することができる。ユーザの利便性が向上する。
【0057】
(対応関係)
スタブ線路234a、スタブ線路234b、X軸方向が、それぞれ、「第1線路」、「第2線路」、「第1方向」の一例である。スタブ線路234c、スタブ線路234d、Y軸方向が、それぞれ、「第3線路」、「第4線路」、「第2方向」の一例である。
【0058】
(第3実施例の変形例)
図13には、第3実施例と同様の機能を発揮するアンテナ素子24の変形例C1~C3が列挙されている。図11のアンテナ素子24及び図13のC1~C3は、4回回転対象の形状である点で共通する。また、図11のアンテナ素子24及び図13の変形例C1~C3は、X軸方向において互いに平行で互いに反対方向に電流が流れる2本の線路と、Y軸方向において互いに平行で互いに反対方向に電流が流れる2本の線路と、を備える点で共通する。なお、図11及び図13に記載の形状は、単なる一例に過ぎず、上記の共通点を備える4回回転対象の形状であれば、第3実施例と同様の機能を得ることができる。
【0059】
(第4実施例)
(アンテナ素子24の構成及び等価回路;図14図15
本実施例の図14に示すアンテナ素子24は、セル30とセル30との間に所定の隙間36が形成されている点を除いて、第1実施例のアンテナ素子24と同様である。スタブ線路34a及び34bは、第1実施例と同様に、並列共振回路として機能する。一方、互いに隣接する主線路32及び隙間36は、直列共振回路として機能する。このため、図14に示すアンテナ素子24の等価回路は、図15に示すように、右手系左手系複合線路として定義可能である。ここで、並列共振回路の共振角周波数に符号ωshを付し、直列共振回路の共振角周波数に符号ωseを付す。
【0060】
(アンテナ10の設計要件;図16
図16の上側の実線のグラフは、図14のアンテナ素子24に対応する分散曲線である。図16に示すにように、本実施例のアンテナ10を伝送する電波の角周波数は、バンドギャップを有し、バンドギャップは、共振角周波数ωshと共振角周波数ωseの間である。本実施例でも、第1実施例と同様に、アンテナ素子24の全長Lが、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たすように、アンテナ10の各種パラメータが設計される。当該条件を満たす範囲は、図16の破線で囲まれる領域である。図16に示すように、設計範囲はバンドギャップに近い。
【0061】
放射電波の角周波数がバンドギャップに近づくと、アンテナの損失が悪化する。上記したように、バンドギャップは、共振角周波数ωshと共振角周波数ωseの間である。共振角周波数ωshが共振角周波数ωseと一致するように、隙間36、スタブ線路34a及び34b等のサイズを調整すれば、図16の下側の実線のグラフで示すように、バンドギャップを無くすことができる。バンドギャップを無くすことにより、アンテナ10の損失が悪化することを抑制することができる。隙間36が、「所定の隙間」の一例である。
【0062】
(アンテナ10の使用態様;図1図17
図14のアンテナ素子24のX軸方向の両端は、グランドへ短絡されてもよいし、開放されてもよい。アンテナ素子24のX軸方向の両端をグランドへ短絡して使用する場合には、アンテナ10は、図1のような側壁を有する棚2に適用するのがよい。例えば、棚2の側壁の材料を金属とすることにより、当該側壁を利用してアンテナ素子24のX軸方向の両端をグランドへ短絡することができるからである。ここで、アンテナ素子24のX軸方向の両端が短絡される場合には、直列共振回路を流れる電流が最大となる。
【0063】
また、アンテナ素子24のX軸方向の両端を開放して使用する場合には、アンテナ10は、図17のような側壁を有しない棚500に適用するのがよい。アンテナ10の両端を棚500の端部まで延ばしても、アンテナ10の両端の開放が維持されるからである。ここで、アンテナ素子24のX軸方向の両端が開放される場合には、並列共振回路を流れる電流が最大となる。
【0064】
アンテナ素子24のX軸方向の両端を短絡して使用する場合でも、アンテナ10を図17の棚500に適用することができる。ただし、アンテナ素子24のX軸方向の両端を短絡するための導体が別途に必要である。また、アンテナ素子24のX軸方向の両端を開放して使用する場合でも、アンテナ10を図1の棚2に適用することができる。ただし、アンテナ素子24のX軸方向の両端を開放するために、アンテナ10の端部と側壁との間に所定の隙間を設ける必要がある。
【0065】
(第4実施例の変形例:図18図19図20
第4実施例と同様の機能を得るためには、アンテナ素子24が右手系左手系複合線路の等価回路として定義可能であればよい。図14の形状は、一例に過ぎない。
【0066】
図18には、第4実施例と同様の機能を有するアンテナ素子24の変形例C4、C5が列挙されている。変形例C4及びC5のアンテナ素子24は、共振角周波数ωshを有する並列共振回路として機能する2本のスタブ線路(ωshで指し示す破線で囲まれた部分)と、共振角周波数ωseを有する直列共振回路として機能する2本の屈曲線路(ωseで指し示す破線で囲まれた部分)と、を有する。このように、直列共振回路は、セルとセルとの間の隙間だけでなく、2本の屈曲線路によって実現されてもよい。変形例C4及びC5において、共振角周波数ωshと共振角周波数ωseとを一致させることにより、第4実施例と同様に、アンテナの損失が悪化することを抑制することができる。
【0067】
図19にも、第4実施例と同様の機能を有するアンテナ素子24の変形例C6、C7、C8が列挙されている。変形例C6、C7、及び、C8も、それぞれ、図18と同様に、2本のスタブ線路と、2本の屈曲線路と、を備える。また、変形例C6、C7、及び、C8の各セルは、4回回転対象の形状を有する。このため、変形例C6、C7、及び、C8は、第4実施例と同様の機能(即ちアンテナの損失の悪化の抑制)だけでなく、第3実施例と同様の機能(即ちX軸及びY軸のいずれの方向からでも給電可能)を得ることができる。
【0068】
図20には、図19の変形例と同様の機能を有するアンテナ素子24の変形例C9及びC10が列挙されている。変形例C9は、図19の変形例C6のセルと同一形状のセルで構成されている。変形例C9では、互いに隣接するセルのサイズが異なる。なお、互いに隣接するセルのサイズが異なる構成は、図19の変形例C7及びC8にも適用可能である。また、変形例C10は、変形例C6のセルと変形例C7のセルを交互に並べて構成されている。なお、交互に並べるセルの組み合わせは、変形例C6及びC8の組み合わせ、又は、変形例C7及びC8の組み合わせであってもよい。
【0069】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0070】
(変形例1) 第1及び第2実施例において、全長Lは、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たさなくてもよい。
【0071】
(変形例2) 第4実施例において、共振角周波数ωshと共振角周波数ωseを一致させなくてもよい。
【0072】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0073】
また、本明細書では、以下に示す第1~第3参考例も開示する。これら参考例も、新規で有用である。
【0074】
(第1参考例)
第1参考例は、アンテナ素子24に代えてアンテナ素子800を備える点を除いて、第1実施例と同様である。アンテナ素子800は、複数個のセル830を並べて構成されている、セル830は、T字形状を有する。セル830は、主線路832と、主線路832から延びるスタブ線路834と、を備える。セル830は、第1実施例のセル30と異なり、スタブ線路834を流れる電流と反対方向の電流が流れる他のスタブ線路を備えない。
【0075】
本変形例でも、第1実施例と同様に、アンテナ素子800の全長Lが、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たすように、アンテナ素子800を備えるアンテナの各種パラメータが設計される。本変形例では、近傍の空間にのみ電波が残存する第1実施例のような効果は望めないものの、第1実施例と同様に、伝送線路内における反射によって、放射電波の強さが弱まることを抑制することができる。
【0076】
(第2参考例)
第2参考例は、アンテナ素子24に代えてアンテナ素子810を備える点を除いて、第4実施例と同様である。アンテナ素子810は、セル830とセル830との間に所定の隙間836が形成されている点を除いて、第1参考例と同様である。本参考例のアンテナ素子810も、第4実施例と同様に、右手系左手系複合線路の等価回路として定義できる。例えば、スタブ線路834が並列共振回路として機能し、所定の隙間836が直列共振回路として機能する。本参考例でも、並列共振回路の共振角周波数ωshと直列共振回路の共振角周波数ωseとを一致させることにより、第4実施例と同様に、アンテナの損失が悪化することを抑制することができる。
【0077】
(第3参考例)
第3参考例は、アンテナ素子24に代えてアンテナ素子900を備える点を除いて、第2実施例と同様である。アンテナ素子900は、複数個のセル930を並べて構成されている、セル930は、H字形状を有する。セル930は、主線路932と、一対の副線路933a及び933bと、を備える。セル930は、第2実施例のセル30と異なり、主線路932を流れる電流と反対方向の電流が流れる屈折線路を備えない。
【0078】
本変形例でも、第2実施例と同様に、アンテナ素子900の全長Lが、放射電波の波長の半分よりも短い条件を満たすように、アンテナ素子900を備えるアンテナの各種パラメータが設計される。本変形例では、近傍の空間にのみ電波が残存する第2実施例のような効果は望めないものの、第2実施例と同様に、伝送線路内における反射によって、放射電波の強さが弱まることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
2 :棚
3 :棚板
4 :物品
6 :RFタグ
8 :リーダ
10 :アンテナ
12 :管理装置
20 :グランド層
22 :誘電体層
24 :アンテナ素子
30 :セル
32 :主線路
34a、34b :スタブ線路
36 :隙間
130 :セル
132 :主線路
133a、133b:副線路
134 :屈折線路
136 :隙間
140 :セル
142 :主線路
143a、143b:副線路
144a、144b:屈折線路
146 :隙間
230 :セル
232a、232b:主線路
234a、234b、234c、234d:スタブ線路
500 :棚
800 :アンテナ素子
810 :アンテナ素子
830 :セル
832 :主線路
834 :スタブ線路
836 :隙間
900 :アンテナ素子
930 :セル
932 :主線路
933a :副線路
A1、A2 :電流
M1、M2 :第2線路
L :全長
p :ピッチ
ωse :共振角周波数
ωsh :共振角周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23