(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121305
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】無線タグ通信システム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240830BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20240830BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240830BHJP
【FI】
G06K7/10 160
G06K7/10 144
G06K7/10 260
G06K7/10 128
H04B1/59
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028335
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 優人
(72)【発明者】
【氏名】榎本 康平
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB03
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】
【課題】 無線タグを箱内のどの位置においても、無線タグと通信可能にするための技術を提供する。
【解決手段】 無線タグ通信システムは、電波を遮断する箱と、前記箱に収容される無線タグへ電波を放射して、前記無線タグから応答波を受信するアンテナと、前記アンテナを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記箱が閉じられている閉状態に加えて、前記箱が開けられている開状態でも、前記電波を前記アンテナに放射させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を遮断する箱と、
前記箱に収容される無線タグへ電波を放射して、前記無線タグから応答波を受信するアンテナと、
前記アンテナを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記箱が閉じられている閉状態に加えて、前記箱が開けられている開状態でも、前記電波を前記アンテナに放射させる、無線タグ通信システム。
【請求項2】
前記アンテナは、複数個の前記無線タグのそれぞれから前記応答波を受信し、
前記無線タグ通信システムは、さらに、
前記複数個の無線タグのうちの第1の無線タグから受信した第1の応答波の電波強度の推移が、所定の特定のパターンを有する場合に、前記第1の無線タグが前記箱の外に位置すると判断し、前記複数個の無線タグのうちの第2の無線タグから受信した第2の応答波の電波強度の推移が、前記特定のパターンと異なる他のパターンを有する場合に、前記第2の無線タグが前記箱の中に位置すると判断する判断部を備える、請求項1に記載の無線タグ通信システム。
【請求項3】
前記特定のパターン及び他のパターンは、前記箱の開閉状態が所定の基準時間で変化する状況で予め決定されており、
前記無線タグ通信システムは、さらに、
前記箱の開閉状態が前記基準時間と異なる時間で変化する場合に、前記異なる時間を前記基準時間に合わせて、前記第2の応答波の電波強度の推移を補正する補正部を備える、請求項2に記載の無線タグ通信システム。
【請求項4】
前記箱は、前記箱の中の所定の場所に取り付けられている基準無線タグを備え、
前記アンテナは、前記箱の蓋に取り付けられており、
前記異なる時間は、前記アンテナが前記基準無線タグから受信した前記応答波の電波強度の推移を利用して決定される、請求項3に記載の無線タグ通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、無線タグと情報を通信する無線タグ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓋付きのキャビネット内の保管物に添付された非接触ICタグから情報を読み取るシステムが開示されている。システムは、蓋が閉じられていると判断した場合に、保管物に装着された非接触ICタグから情報を読み取る。非接触ICタグの情報の読み取りは、キャビネット内のアンテナから電波を放射することにより実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビネットの蓋を閉じた状態で電波が放射されると、キャビネット内に定在波が発生し、キャビネット内の電磁界の分布に大きな変化は無い。定在波の節は、キャビネット内の特定の場所に位置し、定在波の節では、電波強度が弱まる。非接触ICタグが特定の場所に位置すると、当該非接触ICタグとの通信ができない場合がある。
【0005】
本明細書は、無線タグを箱内のどの位置においても、無線タグと通信可能にするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する無線タグ通信システムは、電波を遮断する箱と、前記箱に収容される無線タグへ電波を放射して、前記無線タグから応答波を受信するアンテナと、前記アンテナを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記箱が閉じられている閉状態に加えて、前記箱が開けられている開状態でも、前記電波を前記アンテナに放射させる。
【0007】
閉状態では箱内の電磁界の分布があまり変化しないものの、閉状態から開状態へ変化するとき、及び、開状態から閉状態へ変化するときには、箱内の電磁界の分布が大きく変化する。箱内の電磁界の分布が大きく変化すると、閉状態では電波強度が弱かった特定の場所の電波強度が強まる。閉状態に加えて、開状態でも電波を放射することにより、特定の場所に位置する無線タグと通信する確率を高めることができる。
【0008】
ここで、閉状態では、箱の中の電波は箱の外へ伝搬しない。閉状態では、箱の外に位置する無線タグと通信することが防止される。一方、例えば、箱の前面に蓋がある場合には、開状態では箱の前方には電波が伝搬するものの、前方以外の方向へは電波は伝搬しない。この例では、箱の外側のうちの前方以外の方向に位置する無線タグと通信することが防止される。本明細書で開示する無線タグ通信システムは、箱の外に位置する無線タグと通信することを防止しつつ、通信できない無線タグが箱の中に存在する問題にも対処することができる。
【0009】
前記アンテナは、複数個の前記無線タグのそれぞれから前記応答波を受信し、前記無線タグ通信システムは、さらに、前記複数個の無線タグのうちの第1の無線タグから受信した第1の応答波の電波強度の推移が、所定の特定のパターンを有する場合に、前記第1の無線タグが前記箱の外に位置すると判断し、前記複数個の無線タグのうちの第2の無線タグから受信した第2の応答波の電波強度の推移が、前記特定のパターンと異なる他のパターンを有する場合に、前記第2の無線タグが前記箱の中に位置すると判断する判断部を備えてもよい。
【0010】
発明者は、箱の外に位置する無線タグと箱の中に位置する無線タグを比べて、電波強度の推移のパターンが互いに異なることを発見した。上記の構成によれば、電波強度の推移が特定のパターンを有するか否かを判断して、無線タグが箱の中と箱の外のいずれに位置するのか判断することができる。
【0011】
前記特定のパターン及び他のパターンは、前記箱の開閉状態が所定の基準時間で変化する状況で予め決定されており、前記無線タグ通信システムは、さらに、前記箱の開閉状態が前記基準時間と異なる時間で変化する場合に、前記異なる時間を前記基準時間に合わせて、前記第2の応答波の電波強度の推移を補正する補正部を備えてもよい。
【0012】
箱の開閉状態が変化する速さは、ユーザによって異なる。箱の開閉状態が変化する時間が基準時間と異なると、第2の応答波の電波強度の推移のパターンが、他のパターンとは異なるパターン、例えば、特定のパターンに類似し得る。この場合、制御装置が、第2の応答波の電波強度の推移が特定のパターンを有すると誤って判断する可能性が有る。これに対して、上記の構成によれば、第2の応答波の電波強度の推移が異なる時間を基準時間に合わせるように補正される。これにより、第2の応答波の電波強度の推移が特定のパターンを有すると誤って判断することを抑制することができる。
【0013】
前記箱は、前記箱の中の所定の場所に取り付けられている基準無線タグを備え、前記アンテナは、前記箱の蓋に取り付けられており、前記異なる時間は、前記アンテナが前記基準無線タグから受信した前記応答波の電波強度の推移を利用して決定されてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、アンテナの取り付け位置の工夫と基準無線タグの追加により、箱の開閉状態が実際に変化する時間を簡易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】各管理タグの電波強度の推移を示すグラフである。
【
図4】第2実施例の無線タグ読取システムの概念図である。
【
図5】分析装置の処理を示すフローチャート図である。
【
図7】各管理タグの電波強度の推移を示すグラフである。
【
図8】第3実施例の無線タグ読取システムの概念図である。
【
図9】電波強度の推移を補正する処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)
(無線タグ読取システム2の構成;
図1)
無線タグ読取システム2は、保管庫10と、リーダ100と、を備える。保管庫10には、様々な物品を保管する。物品には、無線タグが取り付けられている。無線タグには、物品情報、例えば、物品名、識別情報が記憶されている。無線タグ読取システム2は、無線タグから物品情報を読み取ることにより、保管庫10内に収容されている物品を管理する。なお、以下では、物品に取り付けられている無線タグを、「管理タグ」と記載する。
【0017】
無線タグは、物品情報を記憶するICチップを備える。ICチップは、受信した電波を動力源として動作し、受信した電波に対する応答波にICチップ内の物品情報を付与する。無線タグ読取システム2は、無線タグから応答波を受信することにより、無線タグから物品情報を読み取る。無線タグは、例えば、Radio Frequency IDentification(RFID)タグである。
【0018】
保管庫10は、箱12と、蓋14と、アンテナ16と、を備える。箱12は、電波を遮断する材料、例えば、金属により構成されている。箱12の前方には、開口12aが形成されている。なお、開口12aの位置は、前方に限らず、例えば、上方であってもよい。蓋14は、開口12aを開閉可能に構成されている。蓋14は、いわゆる、片開きの扉である。
【0019】
アンテナ16は、無線タグに電波を送信するとともに、無線タグから応答波を受信する。アンテナ16は、箱12の内側に取り付けられている。本実施例では、アンテナ16は、箱12の奥側の内壁に取り付けられている。なお、アンテナ16の取り付け位置は、箱12の上下の内壁、左右の内壁、又は、蓋14であってもよい。また、アンテナ16の取り付け箇所は、一か所でもいいし、複数個所でもいい。
【0020】
リーダ100は、アンテナ16を制御する。具体的には、リーダ100は、電波の送信をアンテナ16に指示する。また、リーダ100は、アンテナ16から応答波に対応する信号を受信する。リーダ100は、アンテナ16から受信した信号を解析して、無線タグに記憶されている物品情報を取得する。
【0021】
(物品を管理する処理;
図2)
図2は、物品を保管庫10に出し入れする具体例を示す。なお、
図2では、保管庫10は、断面で描かれている。また、
図2では、管理タグ20a等が記載され、物品の図示は省略されている。
【0022】
タイミングt0では、保管庫10の蓋14が閉じている。タイミングt0では、保管庫10の中に管理タグ20a、20b、及び、20cが収容されている。
図2のケースでは、管理タグ20cが保管庫10から取り出され、管理タグ20dが保管庫10に新たに収容される。
【0023】
ユーザは、管理タグの出し入れのために蓋14を開く。タイミングt1では、保管庫10の蓋14は開く途中である。タイミングt1の後のタイミングt2(
図3参照)では、保管庫10の蓋14は完全に開く。管理タグ20cは、蓋14が開く途中、又は、蓋14が完全に開いたときに保管庫10から取り出される。また、管理タグ20dは、蓋14が開く途中、蓋14が完全に開いたとき、又は、蓋14が閉じる途中に保管庫10に収容される。
【0024】
管理タグ20cの取り出し及び管理タグ20dの収容が完了すると、ユーザは、蓋14を閉める。タイミングt2の後のタイミングt3(
図3参照)では、蓋14は閉じる途中である。タイミングt3の後のタイミングt4では、蓋14は完全に閉じる。
【0025】
図2のケースは、一例であり、例えば、物品が取り出される一方で、新たな物品が収容されなくてもよい。また、例えば、蓋14の開閉が行われるものの、物品の出し入れが行われなくてもよい。リーダ100は、蓋14の開閉が行われる場合に、電波をアンテナ16に放射させる。別言すれば、蓋14の開閉が行われる毎に、保管庫10内の物品から物品情報が読み取られる。なお、アンテナ16が電波の放射を開始するトリガは、ユーザによる所定の開始操作である。開始操作は、例えば、蓋14の開錠、所定のボタンの押し下げである。所定のボタンは、例えば、保管庫10、又は、リーダ100に取り付けられている。
【0026】
リーダ100は、蓋14が閉じている閉状態に加えて、蓋14が開いている開状態でも、電波をアンテナ16に放射させる。閉状態は、例えば、タイミングt0又はt4の状態である。開状態は、例えば、タイミングt1、t2、又は、t3の状態である。
【0027】
図2のタイミングt0における破線領域30は、閉状態における箱12内の電磁界の分布を示す。閉状態では、電波が箱12内で反射して、箱12内に定在波が存在する。この場合、箱12内の電磁界の分布に大きな変化は無い。例えば、定在波の節は、箱12内の四隅に位置し、定在波の節では、電波強度が弱まる。
図2に示すように、管理タグ20bは、箱12内の隅に位置する。管理タグ20bに伝搬する電波の電波強度が管理タグ20bを動作させるのに十分な強さを有さず、管理タグ20bから応答波が送信されない場合がある。
【0028】
図2のタイミングt1における破線領域32は、開状態における箱12内の電磁界の分布を示す。開状態では、箱12の内部の空間が箱12の外部の空間と連通する。このため、電波の一部は、反射することなく、箱12の外側の空間へと伝搬する。開状態では、定在波が発生する条件が崩れ、箱12内の電磁界の分布が大きく変化する。箱12内の電磁界の分布が大きく変化すると、閉状態では電波強度が弱かった四隅の電波強度が強まる。この場合、箱12内の隅に位置する管理タグ20bに伝搬する電波の電波強度が管理タグ20bを動作させるのに十分な強さまで高まり、管理タグ20bから応答波が送信され得る。
【0029】
(各管理タグの電波強度の推移;
図2、
図3)
図3のグラフは、
図2のケースにおいて、各管理タグ20a~20dの応答波の電波強度の推移を示す。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は電波強度を示す。電波強度は、例えば、Received Signal Strength Indicator(RSSI)である。なお、以下では、アンテナ16から放射される電波に起因する電磁界の電波強度を、「放射電波強度」と記載し、管理タグの応答波の電波強度を、「応答電波強度」と記載する。
【0030】
図2に示すように、管理タグ20aは、箱12内の中心付近に位置する。そして、管理タグ20aは、箱12内に残される。例えば、閉状態における定在波の腹は、箱12の中心付近に位置する。タイミングt0以前の時間及びタイミングt4以後の時間では、箱12は閉状態である。
図3に示すように、管理タグ20aの応答電波強度は、タイミングt0以前の時間及びタイミングt4以後の時間では、略一定である。ここで、「略一定」は、例えば、応答電波強度の変動が、数パーセントの変動幅に収まることである。また、タイミングt0からタイミングt4の時間では、箱12は開状態である。開状態では、定在波が発生する条件が崩れ、管理タグ20aの応答電波強度が弱まる。特に、蓋14が完全に開いているタイミングt2では、管理タグ20aの応答電波強度が最も弱まる。
図3に示すように、箱12が閉状態、開状態、及び、閉状態の順番に変化する場合に、管理タグ20aの応答電波強度の推移は、水平な線が中心で窪むパターン(以下では「窪みパターン」と記載)を有する。
【0031】
図2に示すように、管理タグ20bは、箱12内の隅に位置する。そして、管理タグ20bは、箱12内に残される。上記したように、閉状態における定在波の節は、箱12内の隅に位置する。このため、タイミングt0以前の時間及びタイミングt4以後の時間では、管理タグ20bに伝搬する電波の放射電波強度は、管理タグ20aに伝搬する電波の放射電波強度よりも極めて弱い。閉状態では、管理タグ20bから情報を読み取ることができない。
【0032】
タイミングt1は、蓋14が開く途中であり、タイミングt2は、蓋14が完全に開いたタイミングであり、タイミングt3は、蓋14が閉まる途中である。本ケースでは、タイミングt0とタイミングt1の間、及び、タイミングt3とタイミングt4の間で、箱12内の隅の放射電波強度が最も強まる。また、タイミングt2における箱12内の隅の放射電波強度は、タイミングt0とタイミングt1の間、及び、タイミングt3とタイミングt4の間における箱12内の隅の放射電波強度よりも弱い。
図3に示すように、箱12が閉状態、開状態、及び、閉状態の順番に変化する場合に、管理タグ20bの応答電波強度の推移は、両端が山で中心が谷のパターン(以下では、「山谷山パターン」と記載)を有する。
【0033】
図2に示すように、管理タグ20cは、箱12の中から箱12の外に取り出される。本ケースでは、管理タグ20cが取り出されるタイミングは、タイミングt2とタイミングt3の間である。管理タグ20cが取り出されると、アンテナ16は、管理タグ20cから応答波を受信しない。
図3に示すように、箱12が閉状態、開状態、及び、閉状態の順番に変化する場合に、管理タグ20cの応答電波強度の推移は、タイミングt0からタイミングt2へと右下がりのパターン(以下では、「右下がりパターン」と記載)を有する。
【0034】
図2に示すように、管理タグ20dは、箱12の外から箱12の中に収容される。本ケースでは、管理タグ20dが収容されるタイミングは、タイミングt1とタイミングt2の間である。管理タグ20dが、箱12内のアンテナ16に近づくと、アンテナ16が、管理タグ20dから応答波を受信する。
図3に示すように、箱12が閉状態、開状態、及び、閉状態の順番に変化する場合に、管理タグ20dの応答電波強度の推移は、タイミングt2からタイミングt4へと右上がりのパターン(以下では、「右上がりパターン」と記載)を有する。
【0035】
管理タグ20aが箱12内に残っていることは、タイミングt0の前の閉状態及びタイミングt4の後の閉状態の双方において応答波を検知することにより判断することができる。また、管理タグ20cが箱12から取り出されたことは、タイミングt0の前の閉状態において応答波を検知し、タイミングt4の後の閉状態において応答波を検知しないことにより判断することができる。また、管理タグ20dが箱12に新たに収容されたことは、タイミングt0の前の閉状態において応答波を検知せず、タイミングt4の後の閉状態において応答波を検知することにより判断することができる。即ち、管理タグ20a、20c、及び、20dを管理するためには、閉状態において電波を放射すればよく、開状態において電波を放射しなくてもよい。
【0036】
しかし、
図3に示すように、閉状態において管理タグ20bには十分な強さの電波が伝搬しない。このため、本実施例では、管理タグ20a、20c、及び、20dに加えて、管理タグ20bも管理するために、リーダ100は、閉状態に加えて、開状態でもアンテナ16に電波を放射させる。これにより、箱12の隅に位置するか管理タグ20bから情報を読み取る確率を高めることができる。
【0037】
ここで、閉状態では、箱12の中の電波は箱12の外へ伝搬しない。閉状態では、箱12の外に位置する無線タグから情報を読み取ることが防止される。一方、開状態では、開口12aの外側へ電波が伝搬するものの、開口12aが位置する方向以外の方向へは電波は伝搬しない。即ち、本実施例の箱12では、開口12aが位置する方向以外の方向に位置する無線タグから情報を読み取ることが防止される。本実施例の無線タグ読取システム2は、箱12の外に位置する無線タグと通信することを防止しつつ、通信できない無線タグ(例えば管理タグ20b)が箱の中に存在する問題にも対処することができる。
【0038】
(対応関係)
無線タグ読取システム2が、「無線タグ通信システム」の一例である。箱12、アンテナ16が、それぞれ、「箱」、「アンテナ」の一例である。各管理タグ20a~20dが、「無線タグ」の一例である。リーダ100が、「制御部」の一例である。
図3のタイミングt0及びt4における状態が、「閉状態」の一例である。タイミングt1、t2、t3のいずれかにおける状態が、「開状態」の一例である。
【0039】
(第2実施例)
(無線タグ読取システム4の構成;
図4)
本実施例の無線タグ読取システム4は、分析装置200が追加された点を除いて、第1実施例の無線タグ読取システム2と同様である。
【0040】
(分析装置200の構成;
図4)
分析装置200は、デスクトップPC、ラップトップPC、スマートフォン、タブレット端末、サーバ等である。分析装置200は、リーダ100に接続されている。
【0041】
分析装置200は、CPU202と、分析プログラム204と、を備える。分析プログラム204は、無線タグの応答波を分析するためのコンピュータプログラムである。分析プログラム204は、例えば、リーダ100のベンダによって提供される。
【0042】
(分析プログラム204の処理;
図5、
図6、
図7)
図5を参照して、CPU202が、分析プログラム204に従って実行する処理について説明する。例えば、
図6に示すように、蓋14の開閉中に、箱12の開口12aの外側に管理対象ではない無線タグ20eが存在する状況が想定される。この状況では、タイミングt1等の開状態において、アンテナ16の電波は無線タグ20eに伝搬し、アンテナ16は、無線タグ20eの応答波を受信する。
【0043】
図7のグラフは、無線タグ20eの応答電波強度の推移を
図3のグラフに追加したものである。アンテナ16は、閉状態では無線タグ20eから応答波を受信しない一方で、開状態では無線タグ20eから応答波を受信する。
図7に示すように、箱12が閉状態、開状態、及び、閉状態の順番に変化する場合に、無線タグ20eの応答電波強度の推移は、タイミングt0からタイミングt4の間で山型のパターン(以下では、「山型パターン」と記載)を有する。
【0044】
蓋14の開閉中に、箱12の開口12aの外側に管理対象でない無線タグ20eが存在する状況では、無線タグ20eが箱12に収容されていないにも関わらず、リーダ100が、無線タグ20eに記憶されている情報を取得し得る。
図5の処理は、無線タグ20eを管理対象から除外する処理である。
【0045】
図5のS10では、CPU202は、ユーザにより開始操作が実行されることを監視する。CPU202は、開始指示をトリガとして、リーダ100からRSSIのデータを受信する。CPU202は、開始操作が実行される場合(S10でYES)に、S12に進む。なお、上記したように、開始操作は、アンテナ16が電波の放射を開始するトリガである。
【0046】
S12では、CPU202は、リーダ100から受信したRSSIのデータの記憶を開始する。
【0047】
S14では、CPU202は、RSSIのデータを分析し、蓋14が開いたことを検知する。例えば、
図3に示すように、閉状態では、RSSIの推移は略一定である。CPU202は、略一定だったRSSIの推移が変化する場合に、蓋14が開いたことを検知し、蓋14が開いたタイミングを取得する。
【0048】
S16では、CPU202は、RSSIのデータを分析して、蓋14が閉じたことを検知する。例えば、
図3に示すように、開状態では、RSSIの推移が変化し、閉状態では、RSSIの推移が略一定である。CPU202は、変化していたRSSIの推移が略一定となる場合に、蓋14が閉じたことを検知し、蓋14が閉じたタイミングを取得する。
【0049】
S18では、CPU202は、RSSIのデータから、蓋14が開いたタイミングから蓋14が閉じたタイミングまでのRSSIの推移を取得する。例えば、
図3のタイミングt0~t4までの推移である。
【0050】
S20では、CPU202は、S18で取得したRSSIの推移のパターンを分析し、開状態から閉状態の間における各管理タグの状態を決定する。例えば、
図3に示すように、箱12の中に残る管理タグの応答電波強度の推移は、窪みパターンP1、又は、山谷山パターンP2である。また、箱12から取り出される管理タグの応答電波強度の推移は、右下がりパターンP5である。また、箱12に新たに収容される管理タグの応答電波強度の推移は、右上がりパターンP4である。また、箱12の外に位置する管理タグの応答電波強度の推移は、山パターンP3である。
【0051】
分析プログラム204には、上記の5個のパターンP1~P5を示すパターン情報が記述されている。CPU202は、S18で取得したRSSIの推移と、パターン情報と、を比較して、リーダ100が応答波を受信した各無線タグの状態を決定する。例えば、
図6のケースでは、CPU202は、タイミングt0の前では、3個の管理タグ20a、20b、20cが箱12に収容されており、タイミングt4の後では、3個の管理タグ20a、20b、20dが箱12に収容されていることを決定する。また、CPU202は、タイミングt0~t4に亘って、無線タグ20eが箱12の外に位置していることを決定する。
【0052】
S22では、CPU202は、S20で決定した各無線タグの状態を出力する。例えば、
図6のケースでは、CPU202は、管理タグ20cの出庫と管理タグ20dの入庫を出力する。また、無線タグ20eが箱12の外に位置することがS20で決定されるので、CPU202は、無線タグ20eに記憶されている情報を無視し、無線タグ20eの情報を出力しない。即ち、無線タグ20eが管理対象から除外される。S22の処理が終了すると、CPU202は、
図5の処理を終了する。
【0053】
(本実施例の効果)
図7に示すように、箱12の中に収容されている管理タグ20a及び20bが送信する応答波のRSSIの推移は、パターンP1及びP2を有している。一方、箱12の外に位置している無線タグ20eが送信する応答波のRSSIの推移は、パターンP1及びP2と異なるパターンP3を有している。RSSIの推移がパターンP3を有しているのか否かを判断して、無線タグが箱12の中と箱12の外のいずれに位置するのか判断することができる。
【0054】
(対応関係)
無線タグ読取システム4が、「無線タグ通信システム」の一例である。リーダ100、分析装置200が、それぞれ、「制御部」、「判断部」の一例である。無線タグ20e、山パターンP3が、それぞれ、「第1の無線タグ」、「特定のパターン」の一例である。管理タグ20b、山谷山パターンP2が、それぞれ、「第2の無線タグ」、「他のパターン」の一例である。
【0055】
(第3実施例)
(無線タグ読取システム6の構成;
図8)
無線タグ読取システム6は、アンテナ16が蓋14に取り付けられている点、及び、基準タグ22が箱12に取り付けられている点を除いて、第2実施例の無線タグ読取システム4と同様である。
【0056】
基準タグ22は、
図5のS20においてRSSIの推移とパターン情報を比較するための基準となる応答波を送信する無線タグである。基準タグ22は、箱12のいずれか内壁に固定される。基準タグ22が固定される内壁は、奥の内壁、上の内壁、下の内壁、側方の内壁のいずれかである。また、基準タグ22の個数は、1個に限らず、2個以上であってもよい。
【0057】
(分析プログラム204の処理;
図5、
図9)
分析プログラム204に記述されているパターン情報は、蓋14を所定の基準時間、例えば、基準時間(t4-t0)で開閉する状況で予め決定されている。所定の基準時間は、分析プログラム204の設計段階で予め決められる。分析プログラム204には、基準タグ22のRSSIの推移を示すパターン情報も記憶されている。ここで、基準タグ22は、箱12に固定されている。本実施例では、
図9の中段の図に示すように、基準タグ22のパターン情報は、基準時間(t4-t0)においてパターンP1を示す。
【0058】
蓋14を開く速さは、ユーザによって異なる。例えば、ユーザが蓋14を開閉する実際の時間が基準時間よりも早い状況が想定される。この状況では、
図9の最上段の図に示すように、各管理タグのRSSIの推移が、実際の時間と基準時間が同じである
図7に対して、時間軸に沿って潰れたような形状を有する。特に、管理タグ20bのRSSIの推移において、山谷山パターンのうちの山の部分が、
図7と比較して小さくなる。このため、
図9の最上段の図をそのまま分析すると、
図12のS20において、CPU202が、管理タグ20bのRSSIの推移が山パターンP3を有すると誤って判断し得る。
【0059】
本実施例では、CPU202は、
図5のS20において、S18で取得したRSSIの推移の中から、基準タグ22のRSSIの推移を特定する。次いで、CPU202は、特定した基準タグ22のRSSIの推移と、基準タグ22のパターン情報と、を比較する。CPU202は、特定した基準タグ22のRSSIの推移における実際の時間(t3-t0)が、基準タグ22のパターン情報における基準時間(t4-t0)と一致するように、S18で取得したRSSIの推移の時間軸を補正する。
図9のケースでは、S18で取得したRSSIの推移の時間軸が、基準時間(t4-t0)と実際の時間(t3-t0)の差分だけ引き延ばされる。これにより、
図9の最上段の図が
図9の最下段の図のように補正される。なお、実際の時間が基準時間より長い場合には、S18で取得したRSSIの推移の時間軸が圧縮される。
【0060】
本実施例の構成によれば、箱12の開閉状態が実際に変化する時間が基準時間と異なる場合に、管理タグ20bの応答波のRSSIの推移を補正することにより、当該RSSIの推移が、山谷山パターンP2とは異なる山パターンP3を有すると誤って判断することを抑制することができる。
【0061】
また、本実施例の構成によれば、アンテナ16の取り付け位置の工夫と基準タグ22の追加により、箱12の開閉状態が実際に変化する時間を簡易に決定することができる。本実施例の基準タグ22、分析装置が、それぞれ、「基準無線タグ」、「補正部」の一例である。
【0062】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0063】
(変形例1~3) 箱12を開閉する構造は、片開きの蓋14に限らない。
図10には、変形例1、2、3が描かれている。変形例1の保管庫60は、箱12を開閉するスライド式の扉62を備える。扉62がスライドする方向は、例えば、上下、又は、左右である。また、変形例2の保管庫70は、両開きの扉72を備える。扉72が開く方向は、上下、又は、左右である。また、変形例3の保管庫80は、箱12内に収容される引き出し82を備える。保管庫80は、引き出し82が箱12内に収容されることにより閉じられる。保管庫80は、引き出し82が箱12から引き出されることにより開かれる。
【0064】
(変形例4) 本明細書で開示する技術は、無線タグから情報を読み取る無線タグ読取システムに限らず、無線タグに情報を書き込む無線タグ書き込みシステムにも適用可能である。本変形例では、無線タグ書き込みシステムが、「無線タグ通信システム」の一例である。
【0065】
(変形例5) 各実施例において、ユーザは、蓋14を完全に開かず、半開きの状態から閉じてもよい。本変形例では、半開き状態が、「開状態」の一例である。
【0066】
(変形例6) 各実施例において、箱12は、閉状態、開状態、閉状態の順に変化する。即ち、各実施例では、保管庫10は、通常、閉じている。これに代えて、箱12は、開状態、閉状態、開状態の順に変化してもよい。即ち、本変形例では、保管庫10は、通常、開いていてもよい。
【0067】
(変形例7) 第3実施例において、ユーザが蓋14を開閉する実際の時間は、基準タグ22とアンテナ16を利用する手段に限らず、例えば、開閉センサとタイマとの組み合わせ等の他の手段を利用して計測されてもよい。本変形例では、「基準無線タグ」を省略可能である。
【0068】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0069】
2、4、6 :無線タグ読取システム
10 :保管庫
12 :箱
12a :開口
14 :蓋
16 :アンテナ
20a、20b、20c、20d :管理タグ
20e :無線タグ
22 :基準タグ
30、32 :破線領域
60 :保管庫
62 :蓋
70 :保管庫
72 :蓋
80 :保管庫
82 :引き出し
100 :リーダ
200 :分析装置
202 :CPU
204 :分析プログラム
P1 :窪みパターン
P2 :山谷山パターン
P3 :山パターン
P4 :右上がりパターン
P5 :右下がりパターン
t0、t1、t2、t3、t4 :タイミング