(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121310
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ひずみゲージおよびひずみセンサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/06 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
G01B7/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028342
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小峰 理枝子
(72)【発明者】
【氏名】小笠 洋介
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】竹身 一敏
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063CA28
2F063EC20
(57)【要約】
【課題】本開示は、断線の発生を抑制するひずみゲージを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、前記基材上に形成された一対の電極と、前記抵抗体の一端と一方の電極とを電気的に接続する第1配線と、前記抵抗体の他端と他方の電極とを電気的に接続する第2配線と、を備え、第1配線および第2配線はそれぞれ、電極と接続している側と反対側に終端部を有しており、前記第1配線および/または前記第2配線は、前記終端部から離隔した位置で前記抵抗体の一端と接続する、ひずみゲージ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された抵抗体と、
前記基材上に形成された一対の電極と、
前記抵抗体の一端と一方の電極とを電気的に接続する第1配線と、
前記抵抗体の他端と他方の電極とを電気的に接続する第2配線と、を備え、
第1配線および第2配線はそれぞれ、電極と接続している側と反対側に終端部を有しており、
前記第1配線および/または前記第2配線は、前記終端部から離隔した位置で前記抵抗体の一端と接続する、ひずみゲージ。
【請求項2】
前記第1配線および前記第2配線は、前記抵抗体と同一材料で一体に形成されている第1金属層と、前記第1金属層上に前記第1金属層よりも低抵抗の材料から形成された第2金属層と、を含み、
前記第1金属層および前記第2金属層はそれぞれ前記終端部を有する、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記第1配線および/または前記第2配線の前記第2金属層の前記終端部は、平面視において角が鈍角である、請求項2に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
前記第1配線および/または前記第2配線の前記第2金属層の前記終端部は、平面視において角が直角である、請求項2に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
前記第2金属層の終端部は、平面視において端辺の幅が50マイクロメートル以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項6】
前記第1配線および/または前記第2配線は、前記第2金属層の前記終端部から30マイクロメートル以上離隔した位置で前記抵抗体と接続する、請求項2~5のいずれか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項7】
前記抵抗体の周辺に、前記抵抗体、前記第1配線、および前記第2配線と離隔して配置された第3金属層を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のひずみゲージ。
【請求項8】
前記抵抗体は、
複数の受感部と、
前記受感部の間に配置される、前記第1配線および前記第2配線と同一材料から成る部材である接合部と、を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のひずみゲージ。
【請求項9】
前記受感部と前記接合部は、前記接合部の端部から離隔した位置で接続される、請求項8に記載のひずみゲージ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のひずみゲージを複数個含んだひずみセンサであって、
前記複数のひずみゲージは、各自の前記電極の少なくとも一方、および、各自の前記第1配線および第2配線の少なくとも一方を共有して接続されることでブリッジ回路を形成している、ひずみセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ひずみゲージおよびひずみセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可撓性を有する基材と、基材上に形成された抵抗体と、基材上に形成され、配線を介して抵抗体と電気的に接続された一対の電極と、を有するひずみゲージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ひずみゲージの一部分に応力が集中すると、断線することがある。
【0005】
本開示は、断線の発生を抑制するひずみゲージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、前記基材上に形成された一対の電極と、前記抵抗体の一端と一方の電極とを電気的に接続する第1配線と、前記抵抗体の他端と他方の電極とを電気的に接続する第2配線と、を備え、第1配線および第2配線はそれぞれ、電極と接続している側と反対側に終端部を有しており、前記第1配線および/または前記第2配線は、前記終端部から離隔した位置で前記抵抗体の一端と接続する、ひずみゲージが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示のひずみゲージによれば、断線の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図3】
図3は、比較例のひずみゲージについて説明する図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るひずみゲージについて説明する図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係るひずみセンサを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、以降の説明および図面において、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右および前後等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、それぞれ略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0011】
例えば、略平行は、2つの線または2つの面が互いに完全に平行でなくても、製造上許容される範囲内であれば互いに平行として扱うことができることを意味する。略直角、略直交、略水平および略垂直のそれぞれについても、略平行と同様に、2つの線または2つの面の相互の位置関係が製造上許容される範囲内であればそれぞれに該当することが意図される。
【0012】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。具体的には、
図2は、
図1におけるA-A断面図である。なお、図面には、説明の便宜のために、互いに直交するX軸およびY軸からなるXY直交座標系が設定される場合がある。なお、当該座標系は、説明のために定めるものであって、本実施形態に係るひずみセンサ等の姿勢について限定するものではない。
【0013】
ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、一対の配線40(第1配線および第2配線)と、一対の電極50と、を有する。
【0014】
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側または一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側または他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面または上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面または下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、または任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0015】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、基材10の厚さは、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0016】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0017】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0018】
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材10上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0019】
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図1では、便宜上、抵抗体30を濃い梨地模様で示している。
【0020】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、またはCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0021】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0022】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体30の厚さは、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜の断線や基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。抵抗体30の幅は、抵抗値や横感度等の要求仕様に対して最適化し、かつ断線対策も考慮して、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。
【0023】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCSおよび抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占めることを意味する。更に言えば、ゲージ特性をより向上させたい場合、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0024】
又、抵抗体30がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0025】
又、CrNおよびCr2N中のCr2Nの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrNおよびCr2N中のCr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCr2Nにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
【0026】
一方で、膜中に微量のN2もしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0027】
抵抗体30は、複数の細長状部31が長手方向を同一方向(
図1の例では、Y軸方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部31の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造を有している。
図1の例では、複数の細長状部31の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向(
図1の例では、X軸方向)がグリッド幅方向となる。なお、
図1の例では、細長状部31同士の連結部分の外周が曲線になっているが、連結部分の形状はこれに限定されない。これは、以降の図面においても同様である。
【0028】
抵抗体30の細長状部31のうち、両端に位置する2つの細長状部31において、当該細長状部31の端部は隣り合う配線40の方向(
図1の例ではX軸方向)に屈曲している。この屈曲している端部(以降、単に「抵抗体の端部」とも称する)は細長状部31と同一材料で構成されており、細長状部31が延出した部分である。
【0029】
配線40は基材10上に形成され、抵抗体30と電極50とを接続する。各配線40は直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、各配線40は任意の長さとすることができる。配線40はそれぞれ、第1金属層41と、第1金属層41の上面に積層された第2金属層42とから成る。なお、
図1では便宜上、第1金属層41を抵抗体30と同じ濃い梨地模様で示している。また、第2金属層42を抵抗体30よりも薄い梨地模様で示している。
【0030】
図1の例では、各配線40はY軸方向に沿って延びている。言い換えると、各配線40は、Y軸方向に長手方向を有する。本実施形態では便宜上、配線40の特定の部位に名称を付けて説明を行うが、以下で説明する配線40の各部位は、それぞれ一体に形成されている。
【0031】
配線40はそれぞれ、側部40hと、側部40gと、終端部40eと、接続部40aと、を含む。側部40hは、配線40のうち、平面視において抵抗体30が形成されている側の側部を示す。また、側部40gは、配線40のうち、平面視において抵抗体30が形成されていない側の側部を示す。そして、終端部40eは、配線40のうち、電極50と接続している側と反対側(
図1の例では、Y軸正方向側)の終端部分を示す。また、一対の配線40のうち少なくとも一方は、側部40hの、終端部40eから離隔した位置に接続部40aを有している。なお、
図1の例では、2本の配線40の両方が、終端部40eから離隔した位置に接続部40aを有している。接続部40aは、抵抗体30の端部と接続している。
【0032】
なお、各配線40の形状は上記に限られない。例えば、配線40は、それぞれY軸方向に対して平行でなくてもよい。また例えば、2本の配線40の位置関係も平行でなくてもよい。また例えば、各配線40の側部はY軸方向に傾斜していてもよいし、曲線になっていてもよい。
【0033】
抵抗体30の一端(例えばX負方向側の一端)と、2つの電極50のうち一方の電極50(例えばX負方向側の電極50)とは、配線40(第1配線)を介して電気的に接続される。また、抵抗体の他端(例えばX正方向側の一端)と、他方の電極50(例えばX正方向側の電極50)との間も、配線40(第2配線)を介して電気的に接続される。すなわち、抵抗体30は、一対の配線40を介して一対の電極50と電気的に接続されている。
【0034】
電極50は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための電極である。電極50には、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。各電極50は基材10上に形成される。電極50は、配線40を介して抵抗体30と電気的に接続される。電極50は、例えば、配線40よりも拡幅して略矩形状に形成されていてよい。
【0035】
電極50は、第1金属層51と、第1金属層51の上面に積層された第2金属層52とを有している。第1金属層51は、配線40の第1金属層41を介して、抵抗体30の端部と電気的に接続している。第1金属層51は、平面視において略矩形状に形成されている。第1金属層51は、配線40と同じ幅に形成しても構わない。
【0036】
なお、抵抗体30と、第1金属層41と、第1金属層51とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、抵抗体30と、第1金属層41と、第1金属層51は、それぞれ厚さが略同一である。また、第2金属層42と第2金属層52は便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、第2金属層42と、第2金属層52とは、厚さが略同一であってよい。
【0037】
第2金属層42および第2金属層52は、それぞれ抵抗体30(並びに第1金属層41および、第1金属層51)よりも低抵抗の材料から形成されていてよい。第2金属層42、第2金属層52の材料は、抵抗体30よりも低抵抗の材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、第2金属層42および第2金属層52の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、または、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。第2金属層42および第2金属層52の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、第2金属層42および第2金属層52の厚さはいずれも3μm~5μm程度とすることができる。
【0038】
第2金属層42は、第1金属層41の一部に形成されてもよいし、第1金属層41の全体に形成されてもよい。第2金属層52は、第1金属層51の一部に形成されてもよいし、第1金属層51の全体に形成されてもよい。第2金属層52の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。或いは、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極50の最上層を金層とすることで、電極50のはんだ濡れ性を向上できる。
【0039】
なお、抵抗体30および配線40を被覆し、電極50を露出するように、基材10の上面10aにカバー層を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗体30および配線40に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗体30および配線40を湿気等から保護できる。なお、カバー層は、電極50を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0040】
カバー層は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、カバー層の厚さは、2μm~30μm程度とすることができる。
【0041】
このように、配線40は、抵抗体30と同一材料からなる第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造である。そのため、各配線40は抵抗体30よりも抵抗が低くなるため、各配線40が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
【0042】
言い換えれば、抵抗体30よりも低抵抗な配線40を設けることで、ひずみゲージ1の実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
【0043】
特に、抵抗体30としてCr混相膜を用いた、ゲージ率10以上の高感度なひずみゲージにおいて、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化して実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限することは、ひずみ検出精度の向上に顕著な効果を発揮する。又また、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化することは、横感度を低減する効果も奏する。
【0044】
なお、抵抗体30と各電極50とを接続する配線40の長さは、配線40が直線状か否かにかかわらず、配線40に沿った長さで5mm以上とすることが好ましい。長さを5mm以上とすることで、電極50にリード線等をはんだ付けする際の熱が、抵抗体30や抵抗体30を覆うカバー層に伝わり難くなり、ゲージ諸特性の熱負荷を軽減できる。
【0045】
図3は、比較例のひずみゲージ1zについて説明する図である。なお、
図3では、配線の終端部付近を拡大して示している。ひずみゲージ1zは、抵抗体と配線との接続位置がひずみゲージ1と異なることと、配線の形状がひずみゲージ1と異なること以外は、
図1~
図2に示すひずみゲージ1と同様の構成を有している。
【0046】
図3に示すひずみゲージ1zでは、配線は終端部の近傍で抵抗体と接続している。このような形状のひずみゲージにおいて、例えば
図3に示すように、配線および/または抵抗体の接続部分が断線してしまうことがあった。
【0047】
一方、
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージ1において断線が発生した場合について説明する図である。なお、
図4は、ひずみゲージ1における、X軸負方向側の配線40の終端部40e付近を例にとって説明するが、X軸正方向側の配線40および終端部40eについても、同様の説明が成り立つ。
【0048】
例えば、何等かの原因で配線40の終端部40e付近に強い応力がかかり、
図4の曲線CLで示す部位に断線が発生したとする。しかしながら、
図4に示す通り、ひずみゲージ1では、抵抗体30と配線40とは、終端部40eから離隔した位置で接続している。そのため、例え曲線CLの部位に断線が生じて配線40の一部が導通しなくなっても、配線40と抵抗体30との接続部分にはこの断線は及んでいない。したがって、電極50と配線40、および、配線40と抵抗体30との間の通電に問題は生じない。このように、配線40と抵抗体30との接続部分を終端部40eから離隔した位置に設けることによって、断線が起きにくいひずみゲージを実現することができる。
【0049】
例えば、接続部40aと終端部42eとの距離Lは30マイクロメートル以上としてもよい。距離Lを30マイクロメートル以上とすることにより、上述したような断線をより高い確率で抑制できる。言い換えると、配線40は、第2金属層42の終端部42eから30マイクロメートル以上離隔した位置で抵抗体30と接続することが好ましい。
【0050】
さらに、ひずみゲージ1では、第2金属層42の終端部42eにおける端辺の幅Wを比較例に比べ幅広としている。この幅Wは例えば、平面視において50マイクロメートル以上とするとより好ましい。断線は、ひずみゲージの配線、電源、および抵抗体等の周端部の、細くなっている箇所で起こることが多い。そのため、幅Wを広くすることによって、断線の発生を抑制することができる。また、第2金属層42の角42cの少なくとも一方は、平面視において直角または鈍角に形成されていてもよい。角42cの少なくとも一方を直角または鈍角にすることによって、終端部40eの角が細く突出しないようにすることができる。したがって、配線40終端部の角部分における断線の発生を抑制することができる。
【0051】
ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体30、第1金属層41、および第1金属層51となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体30、第1金属層41、および第1金属層51の材料や厚さと同様である。
【0052】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0053】
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層Aを成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により所定の膜厚の機能層を真空成膜してもよい。
【0054】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能や、基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0055】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に金属層AがCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が金属層Aの酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0056】
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層A(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層の材料として、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種または複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、または、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0057】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。また、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0058】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0059】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0060】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0061】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0062】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0063】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0064】
なお、機能層の平面形状は、例えば、
図1に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。あるいは、機能層は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0065】
また、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材10側へ放熱できる。その結果、ひずみゲージ1において、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0066】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0067】
ただし、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0068】
機能層の材料と金属層Aの材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、金属層Aとしてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0069】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層Aを成膜できる。あるいは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層Aを成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nの割合、並びにCrNおよびCr2N中のCr2Nの割合を調整できる。
【0070】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。また、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCSおよび抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0071】
なお、金属層AがCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層Aの結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0072】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上できる。また、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上できる。
【0073】
次に、金属層Aの上面に、第2金属層42および第2金属層52を形成する。第2金属層42および第2金属層52は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
【0074】
具体的には、まず、金属層Aの上面を覆うように、例えば、スパッタ法や無電解めっき法等により、シード層を形成する。次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光および現像して第2金属層42および第2金属層52を形成する領域を露出する開口部を形成する。このとき、レジストの開口部の形状を調整することで、第2金属層42および第2金属層52を任意の形状とすることができる。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0075】
次に、例えば、シード層を給電経路とする電解めっき法により、開口部内に露出するシード層上に第2金属層42および第2金属層52を形成する。電解めっき法は、タクトが高く、かつ、第2金属層42および第2金属層52として低応力の電解めっき層を形成できる点で好適である。膜厚の厚い電解めっき層を低応力とすることで、ひずみゲージ1に反りが生じることを防止できる。なお、第2金属層42および第2金属層52は無電解めっき法により形成してもよい。
【0076】
次に、レジストを除去する。レジストは、例えば、レジストの材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
【0077】
次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光および現像して、
図1の抵抗体30、配線40および電極50と同様の平面形状にパターニングする。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。そして、レジストをエッチングマスクとし、レジストから露出する金属層Aおよびシード層を除去し、
図1の平面形状の抵抗体30、配線40、および電極50を形成する。
【0078】
例えば、ウェットエッチングにより、金属層Aおよびシード層の不要な部分を除去できる。金属層Aの下層に機能層が形成されている場合には、エッチングによって機能層は抵抗体30、配線40、および電極50と同様に
図1に示す平面形状にパターニングされる。なお、この時点では、抵抗体30、第1金属層41、および第1金属層51上にシード層が形成されている。
【0079】
次に、第2金属層42および第2金属層52をエッチングマスクとし、第2金属層42および第2金属層52から露出する不要なシード層を除去することで、第2金属層42および第2金属層52が形成される。なお、第2金属層42および第2金属層52の直下のシード層は残存する。例えば、シード層がエッチングされ、機能層、抵抗体30、配線40、および電極50がエッチングされないエッチング液を用いたウェットエッチングにより、不要なシード層を除去できる。
【0080】
その後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出するカバー層を設けることで、ひずみゲージ1が完成する。カバー層は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層は、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出するように液状またはペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。電極50を露出させる開口部は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
【0081】
なお、抵抗体30、第1金属層41、および第1金属層51の下地層として基材10の上面10aに機能層を設けた場合には、ひずみゲージ1は
図5に示す断面形状となる。符号20で示す層が機能層である。機能層20を設けた場合のひずみゲージ1の平面形状は、例えば、
図1と同様となる。但し、前述のように、機能層20は、基材10の上面10aの一部または全部にベタ状に形成される場合もある。
【0082】
〈第2実施形態〉
本開示に係るひずみゲージの抵抗体は、複数の受感部と、当該複数の受感部の間に配置される接合部とを有する構成であってもよい。
図6は、第2実施形態に係るひずみゲージ2を例示する平面図である。ひずみゲージ2は、抵抗体130に、第1受感部131および第2受感部132と、これらの間に配置される接合部133と、が含まれている点で、ひずみゲージ1と異なる。
【0083】
ひずみゲージ2は、基材110と、抵抗体130と、配線40と、電極50と、を有する。抵抗体130、および配線40は、基材110の表面110a上に形成される。
【0084】
なお、基材110は、基材10と大きさが異なる以外は同一の構成となることから、基材110についての説明は基材10の説明を参照することとして、ここでは説明を省略する。また、配線40および電極50については、第1実施形態における説明を参照することとして、ここでは説明を省略する。
【0085】
抵抗体130は、第1受感部131と、第2受感部132と、接合部133と、を備える。第1受感部131は、複数の細長状部31が長手方向を同一方向(Y軸方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部31の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造を有する。第1受感部131の一方の端部131e1は、配線40を介して、電極50と電気的に接続されている。また、この端部131e1は、接続部40aにおいて、配線40と接続している。図示の通り、接続部40aは配線40の終端部40eから離隔している。第1受感部131における他方の端部131e2は、接合部133と電気的に接続されている。
【0086】
第2受感部132も、第1受感部と同様の構成を有している。すなわち、第2受感部132は、複数の細長状部31が長手方向を同一方向(Y軸方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部31の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造を有する。第2受感部132の一方の端部132e1は、配線40を介して、電極50と電気的に接続されている。また、この端部132e1は、接続部40aにおいて配線40と接続しており、その接続部40aは配線40の終端部40eから離隔している。第2受感部132における他方の端部132e2は、接合部133と電気的に接続されている。
【0087】
接合部133は、第1受感部131と第2受感部132との間に配置される。接合部133は、配線40と同一材料からなる部材である。接合部133は、配線40と同様の方法で基材110上に形成されてよい。また、接合部133の形状および大きさは特に限定されない。
【0088】
接合部133は、終端部133eおよび終端部133fのそれぞれから離隔した位置において、第1受感部131の端部および/または第2受感部132の端部(すなわち、端部131e2および/または端部132e2)と接続してもよい。
【0089】
なお、上記の例では、ひずみゲージ2は、2つの受感部を備えていた。しかしながら、受感部の数は2に限らず3以上の複数の受感部を備えていてもよい。この場合、抵抗体は全体として3以上の受感部を直列に接続しており、当該3以上の受感部それぞれの間には、接合部が設けられる。
【0090】
第2実施形態に係るひずみゲージ2は、第1実施形態に係るひずみゲージ1と同様、抵抗体130が終端部40eから離隔した位置で配線40と接続している。したがって、ひずみゲージ2もひずみゲージ1と同様の理由から断線が起きにくいひずみゲージであるといえる。さらに、ひずみゲージ2は、抵抗体130のうち、受感部(第1受感部131および/または第2受感部132)が、接合部133の終端部133eおよび終端部133fから離隔した位置で接合部133と接続している。したがって、ひずみゲージ2によれば、接合部133の近傍(例えば、接合部133の終端部の角部分など)でも断線が起きにくいひずみゲージを実現することができる。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態では、抵抗体30の周辺に第3金属層を配置する例を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0092】
図7は、第3実施形態に係るひずみゲージ3を例示する平面図である。
図7を参照すると、ひずみゲージ3は、抵抗体30の周辺に、抵抗体30、配線40、および電極50と離隔して配置された第3金属層90を有する点が、ひずみゲージ1と相違する。
【0093】
第3金属層90は、抵抗体30と同一材料で形成されている。第3金属層90は、抵抗体30や第1金属層41等と同一工程で形成できる。第3金属層90は、抵抗体30の周辺の余剰スペースに、できるだけ大面積となるように配置することが好ましい。第3金属層90上に、第2金属層42等と同一材料からなる金属層を積層してもよい。
【0094】
このように、抵抗体30の周辺に第3金属層90を配置することで、ひずみゲージ3の剛性を、ひずみゲージ1よりもさらに高くできる。ひずみゲージ3の剛性を高めることにより、ひずみゲージ3の断線を抑制できる。
【0095】
第3実施形態に係るひずみゲージによれば、配線端部および抵抗体周辺(例えば、接合部133の近傍)に応力が集中した場合でも、ひずみゲージの断線が起こりにくくすることができる。また、第3実施形態に係るひずみゲージによれば、第3金属層を備えることにより、ひずみゲージの剛性を高めることにより、ひずみゲージ3の断線を抑制できる。
【0096】
<第4実施形態>
第4実施形態では、ひずみゲージを複数個含んだひずみセンサの例について説明する。第4実施形態に係るひずみセンサでは、複数のひずみゲージは、各自の電極の少なくとも一方、および、各自の配線の少なくとも一方を共有して接続されることでブリッジ回路を形成している。
【0097】
図8は、第4実施形態に係るひずみセンサ4を例示する平面図である。
図8を参照すると、ひずみセンサ4は、基材210と、抵抗体230A、抵抗体230B、抵抗体230Cおよび抵抗体230Dと、配線240A、配線240B、配線240Cおよび配線240Dと、を備える。抵抗体230A、抵抗体230B、抵抗体230C、抵抗体230D、配線240A、配線240B、配線240Cおよび配線240Dは、基材210の表面210a上に形成される。
【0098】
配線240Aおよび配線240Cのそれぞれは、Y軸方向に沿って延びている。言い換えると、配線240Aおよび配線240Cのそれぞれは、Y軸方向に長手方向を有する。配線240Bおよび配線240Dのそれぞれは、X軸方向に沿って延びている。言い換えると、配線240Bおよび配線240Dのそれぞれは、X軸方向に長手方向を有する。
【0099】
なお、
図8の例では、ひずみセンサ4が有する電極について明示的に記載していないが、同図の例では配線の一部がひずみセンサ4の電極として作用する。
【0100】
抵抗体230A、抵抗体230B、抵抗体230Cおよび抵抗体230Dのそれぞれは、第1実施形態に係る抵抗体30と同様の材料で同様に形成されてよい。同様に、配線240A、配線240B、配線240Cおよび配線240Dは、第1実施形態に係る配線40等と同様の材料で同様に形成されてよい。
【0101】
抵抗体230Aは、配線240Aと配線240Bに接続する。抵抗体230Bは、配線240Bと配線240Cに接続する。抵抗体230Cは、配線240Cと配線240Dに接続する。抵抗体230Dは、配線240Dと配線240Aに接続する。
【0102】
配線240Aは、第1金属層241Aと、第1金属層241Aの上面に積層された第2金属層242Aとを有する。配線240Bは、第1金属層241Bと、第1金属層241Bの上面に積層された第2金属層242Bとを有する。配線240Cは、第1金属層241Cと、第1金属層241cの上面に積層された第2金属層242Cとを有する。配線240Dは、第1金属層241Dと、第1金属層241Dの上面に積層された第2金属層242Dとを有する。
【0103】
第1金属層241A、第1金属層241B、第1金属層241C、および第1金属層241Dは、第1金属層41と同様の材料で同様に形成されてよい。また、第2金属層242A、第2金属層242B、第2金属層242C、および第2金属層242Dは、第2金属層42と同様の材料で同様に形成されてよい。
【0104】
配線240B、配線240Cおよび配線240Dのそれぞれは、方向は異なるものの、形状および抵抗体との接続関係については配線240Aと同様である。したがって、以下では配線240Aを用いて、第4実施形態に係る各配線と、抵抗体との接続について説明する。
【0105】
配線240Aは、平面視で略L字状の形状を有する。配線240Aは、端部240Aeから順に、側部240Aiと、端部240Ajと、側部240Ahと、端部240Afと、側部240Agと、を有する。
【0106】
抵抗体230Aは、端部240Aeに接続される。抵抗体230Aが接続される位置は、端部240Aeにおける側部240Agおよび側部240Aiのそれぞれから離隔した位置である。また、抵抗体230Dは、側部240Ahに接続される。抵抗体230Dが接続される位置は、側部240Ahにおける端部240Ajおよび端部240Afのそれぞれから離隔した位置である。
【0107】
また、例えば、端部240Aj付近に電極を設けた場合、抵抗体230Dが接続される位置は、側部240Ahにおける端部240Ae(終端部)から離隔した位置である。言い換えると、配線240Aにより、複数のひずみゲージにおける、各自の電極の少なくとも一方、および、各自の配線および第2配線の少なくとも一方を共有して電極と、配線および配線の少なくとも一方を共有する構成の一例となる。
【0108】
第4実施形態に係るひずみゲージによれば、断線の発生を抑制できる。第4実施形態に係るひずみセンサによれば、配線端部に応力が集中した場合でも、ひずみゲージに断線が起こりにくくすることができる。
【0109】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3 ひずみゲージ、4 ひずみセンサ、10、110、210 基材、30、130 抵抗体、40 配線、40a 接続部、40e 終端部、41 第1金属層、42 第2金属層、50 電極、51 第1金属層、52 第2金属層、90 第3金属層、131 第1受感部、132 第2受感部、133 接合部、230A、230B、230C、230D 抵抗体、240A、240B、240C、240D 配線