(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121315
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】建造物の基礎地盤及び基礎地盤の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/26 20060101AFI20240830BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E02D27/26
E02D3/12 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028353
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】515269844
【氏名又は名称】株式会社小野設計
(71)【出願人】
【識別番号】500105953
【氏名又は名称】本田冷蔵株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛島 和果
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB08
(57)【要約】
【課題】工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象を発生しにくくできる建造物の基礎地盤及び建造物の基礎地盤の施工方法を提供する。
【解決手段】建造物の基礎地盤10は、土に固化材を混合した第1改良土によって形成された第1改良土層18を有し、前記第1改良土層18は、凍結による体積膨張を防ぐ強度を有している。基礎地盤の施工方法は、前記建造物の建設予定地の地盤を掘削する掘削工程と、土に固化材を混合して第1改良土を形成し、前記第1改良土によって前記第1改良土層を形成する第1改良土層形成工程と、を経る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土に固化材を混合した第1改良土によって形成された第1改良土層を有し、
前記第1改良土層は、凍結による体積膨張を防ぐ強度を有している、建造物の基礎地盤。
【請求項2】
前記第1改良土層の下方に、第2改良土層を備え、
前記第2改良土層は、土に固化材を混合した第2改良土によって形成され、
前記第2改良土における前記固化材の添加量は、前記第1改良土における前記固化材の添加量よりも少なく、
前記第2改良土層は、前記建造物の荷重を支持可能な強度を有している、請求項1に記載の建造物の基礎地盤。
【請求項3】
前記土は、建造物の建設予定地を掘削することによって発生した残土である、請求項1又請求項2に記載の建造物の基礎地盤。
【請求項4】
前記第1改良土層と前記第2改良土層との間に砕石層を備えている、請求項2に記載の建造物の基礎地盤。
【請求項5】
請求項1に記載の建造物の基礎地盤を施工する方法であって、
前記建造物の建設予定地の地盤を掘削する掘削工程と、
土に固化材を混合して第1改良土を形成し、前記第1改良土によって前記第1改良土層を形成する第1改良土層形成工程と、を経る基礎地盤の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎地盤及び基礎地盤の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵施設や冷凍施設等の建造物を支持する基礎地盤において凍上現象を発生しにくくするための技術が知られている。例えば下記特許文献1には、建造物の床下に空気層や空気管を設けることによって、冷蔵施設や冷凍施設からの冷熱を基礎地盤に伝達しにくくし、基礎地盤の凍上現象を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、建造物の床下に空気層を設けるためには、基礎、地中梁、構造スラブ等の地中構造物を施工する必要があるため、工事費が高騰しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象を発生しにくくできる建造物の基礎地盤及び建造物の基礎地盤の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建造物の基礎地盤は、土に固化材を混合した第1改良土によって形成された第1改良土層を有し、前記第1改良土層は、凍結による体積膨張を防ぐ強度を有しているものである。
【0007】
本発明の基礎地盤の施工方法は、前記建造物の基礎地盤を施工する方法であって、前記建造物の建設予定地の地盤を掘削する掘削工程と、土に固化材を混合して第1改良土を形成し、前記第1改良土によって前記第1改良土層を形成する第1改良土層形成工程と、を経る方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1改良土層によって凍上現象の発生を抑制できる。建造物の床下に空気層を設けるための構造を備えなくてよいから、工事費の高騰を抑制できる。したがって、工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象を発生しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例における建造物の基礎地盤を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
【0011】
本発明の建造物の基礎地盤は、前記第1改良土層の下方に、第2改良土層を備え、前記第2改良土層は、土に固化材を混合した第2改良土によって形成され、前記第2改良土における前記固化材の添加量は、前記第1改良土における前記固化材の添加量よりも少なく、前記第2改良土層は、前記建造物の荷重を支持可能な強度を有しているものとしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、第2改良土層によって建造物の自重及び積載荷重を下層地盤に伝えることができる。第2改良土層は、凍上現象の発生を抑制するための補助的な役割を果たす。第2改良土の固化材の添加量は、第1改良土の固化材の添加量より少ないから、第2改良土に第1改良土と同等の固化材を使用する場合よりも固化材の使用量を低減できる。したがって、工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象をより発生しにくくできる。
【0013】
本発明の建造物の基礎地盤において、前記土は、建造物の建設予定地を掘削することによって発生した残土であるものとしてもよい。このような構成によれば、残土を再利用することによって残土の処分量を減らせるから、全ての残土を処分する場合よりも工事費を低減できる。また、残土に汚染物質等が混入していても、法律に規定された範囲内で、場内処理にて解決できる。
【0014】
本発明の建造物の基礎地盤は、前記第1改良土層と前記第2改良土層との間に砕石層を備えているものとしてもよい。このような構成によれば、毛細管現象によって地下水が地表に向かって上昇することを抑制できるから、凍上現象をより発生しにくくできる。
【0015】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における基礎地盤10は、図示しない冷蔵施設や冷凍施設等の建造物を支持する。建造物は、例えば純氷、カチ割り袋詰氷、プレートアイス等の氷雪を製造する施設であってもよいし、冷凍品や冷蔵品を貯蔵する倉庫であってもよい。建造物は、例えば25000トンの冷凍品を保管可能な大規模倉庫であっても良いし、それより小規模な施設であっても良い。建造物の室内の温度は-10℃~-30℃程度であっても良い。
【0016】
基礎地盤10は、
図1に示すように、上層地盤11及び下層地盤12を備えている。下層地盤12は、既存の地盤及び改良された地盤のいずれであってもよい。下層地盤12は、建造物を支えるのに適した十分な固さを持つ支持地盤であってもよい。
【0017】
上層地盤11は、床面の高さ位置であるフロアラインFLから下方へ順に、押えコンクリート13、第1断熱層14、土間コンクリート15、第2断熱層16、下地層17、第1改良土層18、防湿シート19、砕石層21及び第2改良土層22を有している。
【0018】
押えコンクリート13は、第1断熱層14の劣化を防ぎ第1断熱層14を保護する。押えコンクリート13は、床面を精度良く水平に均し、建造物の設置に好適な表面を形成する。押えコンクリート13の厚さ寸法は、280~400mm程度であって良い。
【0019】
第1断熱層14は、建造物からの冷熱を遮断するように機能する。冷熱は、建造物から生じる0℃以下の熱である。第1断熱層14は、発泡ポリスチレン、例えばスタイロフォーム(登録商標)を用いてよい。建造物からの冷熱は、第1断熱層14によって下方への伝搬を抑制される。第1断熱層14の厚さ寸法は、200mm程度であって良い。
【0020】
土間コンクリート15は、建造物の荷重を平準化して地盤に伝える。土間コンクリート15の厚さ寸法は、180mm程度であってよい。
【0021】
第2断熱層16は、建造物からの冷熱を遮断する機能を有している。第2断熱層16は、例えば発泡ポリスチレンを用いてよい。第2断熱層16は、長期にわたる建造物の使用によって、基礎地盤にゆっくりとわずかずつ冷熱が伝わったとしても、それより下方への冷熱の伝搬を抑制する。第2断熱層16の厚さ寸法は、150~175mm程度であってよい。
【0022】
下地層17は、捨てコンクリートや砂であって良い。下地層17の厚さ寸法は、30~50mm程度であってよい。
【0023】
第1改良土層18は、土に固化材を混合した第1改良土によって形成されている。固化材は、例えばセメントである。第1改良土の固化材の添加量は、100kg/m3程度である。第1改良土の固化材の添加量は、土の種類、建設予定地を含む周辺の地下水位、及び建設予定地の気温等を鑑みて、所定の強度を有するように適宜調整すると良い。
【0024】
第1改良土層18は、凍結による体積膨張を防ぐ強度を有している。第1改良土層18は、通常予想される水分補給量を超えた過度の水分補給がなければ、凍結による破壊を防ぐことが可能な固さを有している。また、第1改良土層18は、建造物からの冷熱を蓄積する機能を有している。建造物からの冷熱は、第1改良土層18によって、下層への伝搬を抑制される。第1改良土層18の厚さ寸法T1は、400mm程度であってよい。
【0025】
防湿シート19は、建造物の床面全体の95%程度の範囲に敷き詰められている。防湿シート19は、毛細管現象の発生を最小限にする。防湿シート19によって、地下水が第1改良土層18まで上昇することを抑制できる。
【0026】
砕石層21は、第1改良土層18と第2改良土層22との間に備えられている。砕石層21は、毛細管現象を抑制する機能を有している。砕石層21は、地下水が第1改良土層18まで上昇することを抑制する。また、砕石層21は、建造物からの冷熱を遮断する機能を有している。砕石層21の厚さ寸法T2は、500mm程度であってよい。
【0027】
第2改良土層22は、第1改良土層18の下方に設けられている。第2改良土層22は、土に固化材を混合した第2改良土によって形成されている。第2改良土の固化材の添加量は、第1改良土の固化材の添加量よりも少ない。第2改良土層22の固化材の添加量は、75kg/m3程度であってよい。第2改良土の固化材の添加量は、土の種類、建設予定地を含む周辺の地下水位、建設予定地の気温及び建造物の荷重等を鑑みて適宜調整して設定すると良い。
【0028】
第2改良土層22は、建造物の荷重を支持可能な強度を有している。第2改良土層22の強度は、第1改良土層18の強度よりも小さい。第2改良土層22の強度は、建造物の自重や積載荷重によって変形しない強さを有している。第2改良土層22は、毛細管現象によって地下水の保有量を調整する。地下水の水温は、通常、冷熱よりも高い。第2改良土層22に保有された地下水は、基礎地盤10の温度の低下を抑制する。第2改良土層22の厚さ寸法T3は、第1改良土層18の厚さ寸法T1よりも大きい。第2改良土層22の厚さ寸法T3は、940~1075mm程度であってよい。第2改良土層22の厚さ寸法T3は、下層地盤12の深さにあわせて変化してよい。
【0029】
第1改良土及び第2改良土はいずれも建造物の建設予定地を掘削することによって発生した残土を利用して形成されている。残土を再利用することによって、残土処分量を低減できる。
【0030】
次に、基礎地盤10を施工する方法の一例を説明する。基礎地盤10の施工方法は、掘削工程、第2改良土層形成工程、砕石層形成工程、及び第1改良土層形成工程を経る。
【0031】
まず、掘削工程を行う。掘削工程は、建設予定地の現地盤を建造物の設置面積に対応した広さにわたって所定深さまで掘り下げる。掘削工程の後、必要に応じて、下層地盤12の地盤改良を実施し、下層地盤12を補強する。
【0032】
次に、第2改良土層形成工程を行う。第2改良土層形成工程は、掘削工程において発生した残土に所定量の固化材を撹拌混合し、第2改良土を形成する。下層地盤12の上に第2改良土を埋め戻して締固め、第2改良土層22を形成する。
【0033】
次に、砕石層形成工程を行う。第2改良土層22の上に砕石を敷き均し、転圧することによって砕石層21を形成する。
【0034】
次に、第1改良土層形成工程を行う。第1改良土形成工程は、掘削工程において発生した残土に所定量の固化材を撹拌混合し、第1改良土を形成する。砕石層21の表面に防湿シート19を敷き詰めた後、第1改良土を埋め戻して締固め、第1改良土層18を形成する。
【0035】
その後、第1改良土層18の上方に、下地層17、第2断熱層16、土間コンクリート15、第1断熱層14及び押えコンクリート13を順に施工する。以上によって、基礎地盤10の施工方法は完了する。
【0036】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。建造物の基礎地盤10は、土に固化材を混合した第1改良土によって形成された第1改良土層18を有している。第1改良土層18は、凍結による体積膨張を防ぐ強度を有している。基礎地盤10の施工方法は、建造物の建設予定地の地盤を掘削する掘削工程と、土に固化材を混合して第1改良土を形成し、第1改良土によって第1改良土層18を形成する第1改良土層形成工程と、を経る。
【0037】
この構成によれば、冷熱が第1断熱層14及び第2断熱層16から下方へ漏れて伝わっても、第1改良土層18によって凍上現象の発生を抑制できる。建造物の床下に空気層を設けるための地中構造物を備えなくてよいから、工期を短縮でき、コスト低減を図ることができる。したがって、工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象を発生しにくくできる。また、建造物の床下に空気層を設ける場合、建造物の冷熱が空気層に逃げるため、エネルギー損失が大きくなりがちである。しかしながら、基礎地盤10によれば、建造物の冷熱を逃げにくくできるから、エネルギー損失を低減できる。これによって、建造物の温度を保つためにかかる維持費を低減できる。
【0038】
建造物の基礎地盤10は、第1改良土層18の下方に、第2改良土層22を備えている。第2改良土層22は、土に固化材を混合した第2改良土によって形成されている。第2改良土における固化材の添加量は、第1改良土における固化材の添加量よりも少ない。第2改良土層22は、建造物の荷重を支持可能な強度を有している。この構成によれば、第2改良土層22によって建造物の自重及び積載荷重を下層地盤12に伝えることができる。第2改良土層22によって地下水の保有量が調整されるから、基礎地盤10の温度低下を抑制できる。第2改良土の固化材の添加量は、第1改良土の固化材の添加量より少ないから、第2改良土に第1改良土と同等の固化材を使用する場合よりも固化材の使用量を低減できる。したがって、工事費の高騰を抑制しつつ凍上現象をより発生しにくくできる。
【0039】
第1改良土及び第2改良土の土は、建造物の建設予定地を掘削することによって発生した残土である。この構成によれば、残土を再利用することによって残土の処分量を減らせるから、全ての残土を処分する場合よりも工事費を低減できる。また、残土に汚染物質等が混入していても、法律に規定された範囲内で、場内処理にて解決できる。
【0040】
建造物の基礎地盤10は、第1改良土層18と第2改良土層22との間に砕石層21を備えている。この構成によれば、毛細管現象によって地下水が地表に向かって上昇することを抑制できるから、凍上現象をより発生しにくくできる。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例において上層地盤11は土間コンクリート15を有している。これに限らず、土間コンクリートのかわりにスラブコンクリートなどを採用しても良い。また、建造物の基礎は、杭基礎など、建造物の規模や地盤にあわせて適宜変更してよい。
(2)上記実施例において上層地盤11は第1断熱層14及び第2断熱層16を有している。第1断熱層14及び第2断熱層16の設置の有無、材質や厚さ寸法等は、建造物の規模や設定温度、建設予定地の環境、気温、地質、地下水位の高さ等によって適宜変更してよい。
(3)上記実施例において基礎地盤10は第1改良土層18及び第2改良土層22を有している。これに限らず、基礎地盤は、第1改良土層のみで凍上防止を見込める場合、第2改良土層を有していなくても良い。第1改良土層及び第2改良土層の厚さ寸法は、建造物の規模や設定温度、建設予定地の環境、気温、地質、地下水位の高さ等によって適宜変更してよい。
(4)上記実施例において第1改良土の固化材の添加量及び第2改良土の固化材の添加量を具体的に例示した。第1改良土の固化材の添加量及び第2改良土の固化材の添加量は、建造物の規模や設定温度、建設予定地の環境、気温、地質、地下水位の高さ等によって適宜調整するとよい。
(5)上記実施例において基礎地盤10は砕石層21を有している。これに限らず、基礎地盤は必ずしも砕石層を有していなくても良い。
(6)上記実施例では固化材としてセメントを用いる場合を例示した。これに限らず、固化材はセメント系固化材、石灰、石灰系固化材等を用いて良い。
【符号の説明】
【0042】
10…基礎地盤
18…第1改良土層
21…砕石層
22…第2改良土層