(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121344
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電池構成部材及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/411 20210101AFI20240830BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240830BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240830BHJP
H01M 10/26 20060101ALI20240830BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20240830BHJP
H01M 10/32 20060101ALI20240830BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240830BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240830BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20240830BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240830BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M50/411
H01M50/414
H01M10/0568
H01M10/26
H01M10/30 A
H01M10/32 A
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M12/06 D
H01M12/06 G
H01M50/42
H01M4/62 C
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028393
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高澤 康行
(72)【発明者】
【氏名】中村 涼
(72)【発明者】
【氏名】原田 弘子
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H029
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE17
5H021HH01
5H028AA05
5H028AA06
5H028EE01
5H028EE06
5H028FF04
5H028HH01
5H029AJ12
5H029AM01
5H029AM07
5H029DJ04
5H029DJ08
5H029EJ11
5H029EJ12
5H029HJ01
5H032AA02
5H032AS03
5H032CC06
5H032CC16
5H032CC17
5H032CC18
5H032EE04
5H032EE11
5H032HH01
5H050AA15
5H050BA11
5H050BA15
5H050BA20
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA12
5H050CA16
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB13
5H050CB16
5H050DA13
5H050DA19
5H050EA22
5H050EA23
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】電池においてデンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止できる方法を提供する。
【解決手段】有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータ、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液、又は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極である電池構成部材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータであることを特徴とする電池構成部材。
【請求項2】
有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液であることを特徴とする電池構成部材。
【請求項3】
有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極であることを特徴とする電池構成部材。
【請求項4】
有機酸(塩)及び/又はその重合体を30質量%以下含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電池構成部材。
【請求項5】
前記有機酸(塩)は、(メタ)アクリル酸(塩)であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電池構成部材。
【請求項6】
前記電池構成部材は、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする電池に用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電池構成部材。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の電池構成部材を含んで構成される電池。
【請求項8】
構成部材の1つとして電解液を含み、構成部材の少なくとも1つが有機酸(塩)及び/又はその重合体を含む電池であって、
該構成部材の少なくとも1つに含まれる有機酸(塩)及び/又はその重合体の合計含有割合が、電解液100質量%に対して0.2質量%以上であることを特徴とする電池。
【請求項9】
金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする請求項8に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池構成部材及び電池に関する。より詳しくは、特に金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする電池の構成部材及び当該電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型携帯機器から自動車等の大型用途まで多くの産業において、電池の重要性が急速に高まっている。例えば、亜鉛を負極活物質とする亜鉛負極が、電池の普及とともに古くから研究されてきており、特に、空気・亜鉛一次電池、マンガン・亜鉛一次電池、銀・亜鉛一次電池は実用化され、広く世界で使用されている。
しかしながら、蓄電池の負極に亜鉛を用いると、充電時に負極表面で形成されるデンドライトによって正極と負極とが短絡し、電池が充放電できなくなるという課題があった。
【0003】
このような課題に対し、多くの技術開発がなされており、例えば、所定割合のリン酸塩とホウ酸塩等を含む電解質を備える充電式ニッケル亜鉛電池(例えば、特許文献1参照)や、エチレンオキシド構造を有する特定の溶媒を含む電解質を備える亜鉛二次電池(例えば、特許文献2、3参照)、炭素数が2個以上のアルコール又は環状オニウム塩等を含む電解質を備えるアルカリ電池(例えば、特許文献4~6参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-214125号公報
【特許文献2】特開2015-191781号公報
【特許文献3】特開2015-191782号公報
【特許文献4】特開2014-192078号公報
【特許文献5】特開2015-192066号公報
【特許文献6】特開2014-192067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池性能を充分に優れたものとしながら、デンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止できる新たな方法が望まれるところであった。
なお、デンドライトによる正極と負極との短絡を防止できる方法のバリエーションを増やすことは、電池を製造する際に選択の幅を広げることになり、大きな技術的意義がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電池においてデンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、電池におけるデンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止できる方法について種々検討し、有機酸(塩)及び/又はその重合体を所定量以上含む電池構成部材とすれば、デンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止できることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明(1)は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータである電池構成部材である。
【0009】
本発明(2)は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液である電池構成部材である。
【0010】
本発明(3)は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極である電池構成部材である。
【0011】
本発明(4)は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を30質量%以下含む本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せの電池構成部材である。
【0012】
本発明(5)は、上記有機酸(塩)は、(メタ)アクリル酸(塩)である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せの電池構成部材である。
【0013】
本発明(6)は、上記電池構成部材が、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする電池に用いられる本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せの電池構成部材である。
【0014】
本発明(7)は、本発明(1)~(6)のいずれかの電池構成部材を含んで構成される電池である。
【0015】
本発明(8)は、構成部材の1つとして電解液を含み、構成部材の少なくとも1つが有機酸(塩)及び/又はその重合体を含む電池であって、該構成部材の少なくとも1つに含まれる有機酸(塩)及び/又はその重合体の合計含有割合が、電解液100質量%に対して0.2質量%以上である電池である。
【0016】
本発明(9)は、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする本発明(7)又は(8)の電池である。
【0017】
なお、本発明は、電池構成部材として、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータ、並びに、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液を含んで構成される電池であってもよい。
【0018】
本発明はまた、電池構成部材として、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータ、並びに、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極を含んで構成される電池であってもよい。
【0019】
本発明は更に、電池構成部材として、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液、並びに、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極を含んで構成される電池であってもよい。
【0020】
本発明はそして、電池構成部材として、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータ、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液、並びに、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極を含んで構成される電池であってもよい。
【0021】
本発明はまた、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含むセパレータ、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む電解液、又は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む電極である電池構成部材であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電池構成部材又は電池によれば、デンドライトによる正極と負極との短絡を充分に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の形態である。
【0024】
<電池構成部材>
本発明の電池構成部材は、特に限定されないが、電解液又は電解液に直接接している部材が好ましく、例えば、セパレータ、電解液、又は、電極であることが好ましい。
本発明の電池構成部材は、有機酸(塩)及び/又はその重合体を所定量以上含むことで、当該電池構成部材を含んで構成される電池においてセパレータ内又は周囲の電解液中に有機酸(塩)及び/又はその重合体が溶け込んでいる状態になる。その結果、セパレータ内又は周囲の遊離の活物質由来のイオン(例えば、亜鉛酸イオン)の溶解度が低下し、その濃度が低いものとなるため、活物質成分(例えば、亜鉛成分)の溶解析出反応が起こる過程で生じるデンドライトの発生・成長を抑制することができ、電池を長寿命化することができると考えられる。
【0025】
(セパレータ)
本発明の電池構成部材がセパレータである場合、セパレータは、セパレータ100質量%中、有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含む。なお、セパレータは、正極と負極とを隔離しつつ、正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。
上記セパレータにおける有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、セパレータ100質量%中、2.5質量%以上であることが好ましい。
上記セパレータにおける有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、セパレータ100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
上記セパレータにおける有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、セパレータが有機酸(塩)及びその重合体を含む場合、有機酸(塩)及びその重合体の合計質量の割合である。
なお、セパレータが有機酸(塩)及び/又はその重合体を2質量%以上含む場合、有機酸(塩)及び/又はその重合体の親水性により、セパレータの電解液保液性、含浸性が向上するため、イオン伝導性にも寄与すると考えられる。
【0026】
上記有機酸(塩)は、有機酸及び/又は有機酸塩を意味する。
上記有機酸(塩)は、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、ビニルスルホン酸、硫酸ビニル等の炭素-炭素不飽和結合含有有機酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、これらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。上記有機酸(塩)は、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水酢酸等の、有機酸の無水物であってもよい。
有機酸(塩)は、中でも、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有するものが好ましい。
また有機酸(塩)は、炭素-炭素不飽和結合含有有機酸(塩)であることが好ましく、中でも、重合性有機酸(塩)であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)であることが更に好ましい。
上記有機酸塩としては、ナトリウム、カリウム等の周期律表第1族金属元素の塩、マグネシウム、カルシウム等の周期律表第2族金属元素の塩、その他の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好適なものとして挙げられ、中でも、周期律表第1族金属元素の塩がより好ましい。
【0027】
上記重合体(有機酸(塩)の重合体)は、例えば、重合性有機酸(塩)が重合してなるものであり、ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリ硫酸、これらの塩などが挙げられ、中でもポリカルボン酸及び/又はその塩が好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩がより好ましい。
【0028】
上記重合体の重量平均分子量は、通常、1000万以下であり、本発明の効果を顕著にする観点からは、500万以下が好ましく、200万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましく、20万以下が一層好ましく、5万以下がより一層好ましく、1万以下が特に好ましい。
上記重量平均分子量は、その下限値は特に限定されないが、例えば500以上であり、好ましくは1500以上である。
上記重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算された重量平均分子量として測定することができる。
装置:東ソー株式会社製 HCL-8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM-H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
【0029】
例えば、上述した有機酸(塩)及び/又はその重合体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の周期律表第1族金属元素の塩、及び、その重量平均分子量20万以下の重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また上記セパレータは、上述した有機酸(塩)及び/又はその重合体以外に、バインダーポリマー(結着剤)及び無機粒子を含むことが好ましく、言い換えれば、バインダーポリマー及び無機粒子を含む複合膜(有機無機複合膜ともいう)であることが本発明における好ましい実施形態の1つである。中でも、該複合膜がアニオン伝導性膜であることがより好ましい。
【0030】
上記バインダーポリマー及び無機粒子を含む複合膜は、その緻密構造により耐久性に優れるものであり、特に、充放電に伴って形態変化が起こり易い、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とする電池にセパレータとして用いられる場合に、電池の使用時において、複合膜中の実質的な電解液量が制限されることになり、複合膜中の遊離の活物質由来のイオン(例えば、亜鉛酸イオン)濃度が更に低いものとなるため、活物質成分(例えば、亜鉛成分)の溶解析出反応が起こる過程で生じるデンドライトの発生・成長をより抑制することができ、電池を長寿命化することができる。また、上記複合膜は、無機粒子を含むことにより、無機粒子表面がイオン伝導パスとなるとともに、バインダーポリマーが粒子間を結着する際に粒子間の空隙の大部分を埋めてしまうことを充分に防止でき、複合膜のイオン伝導性を充分に高いものとすることができる。電池内部におけるイオン伝導性を充分に高いものとし、内部抵抗の低い蓄電池とすることで、電池を適切に駆動することができ、長寿命化に寄与する。なお、無機粒子は、粒子形状であることで複合膜のイオン伝導性を非常に優れたものとすることができる。
【0031】
以下では、上記複合膜に含まれるバインダーポリマー、無機粒子、その他の成分について順に説明する。
【0032】
〔バインダーポリマー〕
上記バインダーポリマーとしては、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよいが、通常、ガラス転移温度が60℃未満である成分をいう。バインダーポリマーが粒子間を結着することで、セパレータの構造安定性に寄与できる。バインダーポリマーは、ガラス転移温度が50℃以下であることが好ましい。
本明細書中、ガラス転移温度は、ポリマー等の材料をガラス板に塗布し、120℃で1時間乾燥して得られた乾燥体について、示差走査熱量計(装置名:熱分析装置DSC3100S、BRVKER)を用いて測定されるものである。
【0033】
上記バインダーポリマーは、ガラス転移温度が60℃未満である非結晶性のバインダーポリマーであることが好ましい。非結晶性であることにより、周囲の部材と結合を作りやすく、結着成分として好適に機能する。
上記バインダーポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー;ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;共役ジエン系ポリマー;(メタ)アクリル酸ポリマー以外の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマーなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、ハロゲン含有ポリマー、共役ジエン系ポリマーが好ましい。また、バインダーポリマーは、一部粒子形状を保ち、疎水性粒子として空隙を埋めてセパレータを緻密化することで、二次電池の寿命を更に向上する観点からは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマーであることがより好ましい。
これらのポリマーは、電池用セパレータの無機粒子のバインダーとしてはたらき、クラックの発生を防止できる。
【0034】
上記ハロゲン含有ポリマーは、ハロゲン原子を含有するポリマーであればよいが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリペンタフルオロエチレンが好ましいものとして挙げられ、中でもポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリペンタフルオロエチレンがより好ましい。
【0035】
上記共役ジエン系ポリマーは、共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位を有するものである。
上記共役ジエン系ポリマーとしては、スチレン-ブタジエン系ポリマー(SBR)、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマー、ポリブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性ポリブタジエン系ポリマー、ポリイソプレン系ポリマー、カルボキシ変性ポリイソプレン系ポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマーが好ましい。
【0036】
上記共役ジエン系ポリマーは、脂肪族共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位、芳香族ビニルモノマー由来のモノマー単位、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位以外の、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記共役ジエン系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
なお、上記(メタ)アクリル酸ポリマー以外の(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸ポリマー以外の、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー由来のモノマー単位を有するものであり、代表的なものとしては(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とする(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とするとは、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー100質量%中、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位の含有割合が50質量%以上であることをいう。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。
【0039】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位以外に、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位や、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
上記バインダーポリマーは、熱や圧力等によりセパレータの強度、アニオン伝導度等を好適に調節することができる。
【0041】
上記バインダーポリマーの質量割合は、複合膜100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
上記バインダーポリマーの質量割合は、その上限値は特に限定されないが、複合膜100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0042】
〔無機粒子〕
本明細書中、無機粒子とは、通常、ガラス転移温度を有さない無機化合物粒子である。無機粒子は、例えば、粒子全体が無機化合物で構成された粒子であってもよいし、表面が無機化合物で被覆された粒子であってもよい。
【0043】
以下では、まず、主として粒子全体が無機化合物で構成された粒子について説明するが、表面が無機化合物で被覆された粒子の無機化合物部分についても同様のことがいえる。
上記無機粒子を構成する無機化合物としては、種々の無機化合物を用いることができるが、例えば、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、及び、リン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書中、水酸化物は、ヒドロキシ基を有する化合物であって、層状複水酸化物以外のものをいう。
【0044】
上記酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタノイド、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化銅、酸化カドミウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛、酸化リン、酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、成膜時の分散液中やアルカリ性条件下の蓄電池内であっても安定なものが好ましく、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが好ましく、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。なお、酸化ジルコニウムは、例えば、イットリウム、スカンジウム、イッテルビウム等の元素を固溶化したものであってもよく、酸素欠陥を持つものであってもよい。
【0045】
上記水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化スカンジウム、水酸化イットリウム、水酸化ランタノイド、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化ニオブ、水酸化ルテニウム、水酸化ニッケル、水酸化パラジウム、水酸化銅、水酸化カドミウム、ホウ酸、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化タリウム、ケイ酸、水酸化ゲルマニウム、水酸化スズ、水酸化鉛、リン酸、水酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、アルカリ性条件下での溶解度が低いものが好ましく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、水酸化ジルコニウムが好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。
【0046】
上記層状複水酸化物は、下記一般式:
[M1
1-xM2
x(OH)2](An-)x/n・mH2O
(M1は、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mnのいずれかである二価金属イオンを表す。M2は、Al、Fe、Mn、Co、Cr、Inのいずれかである三価金属イオンを表す。An-は、Cl-、NO3
-、CO3
2-、COO-等の1価以上、3価以下のアニオンを表す。中でも、An-は、2価以下のアニオンを表すことが好ましい。mは0以上の数であり、nは1以上、3以下の数である。xは0.20以上、0.40以下の数である。)に代表される化合物であり、このような層状複水酸化物としては、例えば、ハイドロタルサイト、マナッセイト、モツコレアイト、スティッヒタイト、ショグレナイト、バーバートナイト、パイロアウライト、イオマイト、クロロマガルミナイト、ハイドロカルマイト、グリーン ラスト1、ベルチェリン、タコバイト、リーベサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライト等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、工業的に利用が容易である点で、前記一般式におけるM1がMg、M2がAlであるハイドロタルサイトが好ましい。
なお、これら層状複水酸化物は、例えば、150℃以上、900℃以下で焼成することにより脱水した化合物や層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物であってもよい。
上記層状複水酸化物には、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。また、上記層状複水酸化物は層間内に有機物を有していてもよい。
【0047】
上記リン酸化合物としては、例えばヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、ヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンの一部又は全部をマグネシウムに置換したマグネシウムヒドロキシアパタイト、ストロンチウムに置換したストロンチウムヒドロキシアパタイト、バリウムに置換したバリウムヒドロキシアパタイト等が挙げられる。中でも、ヒドロキシアパタイト、マグネシウムヒドロキシアパタイトが好ましい。
【0048】
上記無機化合物は、中でも、マグネシウム含有化合物であることが好ましい。また、該無機化合物としては、水酸化物、層状複水酸化物、リン酸化合物が好ましく、層状複水酸化物及び/又は水酸化物であることがより好ましい。上記無機化合物は、セパレータの強度をより優れたものとする観点からは、水酸化物であることが更に好ましく、セパレータのイオン伝導性をより優れたものとする観点からは、層状複水酸化物、水酸化マグネシウムであることが更に好ましく、セパレータの耐久性をより優れたものとする観点からは、水酸化マグネシウムであることが特に好ましい。
【0049】
上記無機粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
上記無機粒子は、平均粒子径が2μm以下であるものが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは1μm以下であり、更に好ましくは0.5μm以下である。また、該平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。
上記平均粒子径とは、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、無機粒子を分散媒(0.2%ヘキサメタりん酸ナトリウム含有イオン交換水)で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器(パーティクルサイジングシステムズ〔Particle Sizing Systems〕社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定されるものである。
【0050】
なお、体積平均粒子径が上記のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒子径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
【0051】
上記無機粒子は、アスペクト比(縦/横)が1以上であればよい。また、該アスペクト比(縦/横)は、8以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
上記アスペクト比(縦/横)の求め方は、上述した通りである。
また、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の粒子は、上述した方法により得ることができる。
【0052】
上記無機粒子の質量割合は、上記複合膜100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。
上記無機粒子の質量割合は、その上限値は特に限定されないが、上記複合膜100質量%中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0053】
本明細書中では、上記アニオン伝導性膜は、バインダーポリマーと、無機粒子を含む複合膜の中でも、電池の反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンを透過する膜をいう。上記アニオン伝導性膜は、無機粒子等の作用により、透過するアニオンの選択性を有する。なお、当該アニオンの選択性は、水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな、活物質に由来する金属含有イオン(例えば、Zn(OH)4
2-)等の透過は充分に防止する。本明細書中、アニオン伝導性とは、水酸化物イオン等のイオン半径の小さなアニオンを充分に透過すること、ないし、当該アニオンの透過性能を意味する。金属含有イオン等のイオン半径の大きなアニオンは、より透過しにくいものであり、全く透過しなくても構わない。
【0054】
〔多孔質支持体〕
上記複合膜は、更に、ポリオレフィン系ポリマー等からなる多孔質支持体(多孔質基材)を有し、多孔質支持体に、有機酸(塩)及び/又はその重合体、バインダーポリマー、無機粒子、並びに、必要に応じてその他の成分の混合物が含浸した樹脂含浸層であってもよく、多孔質基材に該混合物を接触させ、必要に応じて混合物を乾燥させて得られる積層構造のものであってもよい。
【0055】
上記多孔質支持体は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、環状ポリオレフィン系ポリマー等のポリオレフィン系ポリマー;ビニロン等のポリビニルアルコール系ポリマー;脂肪族ポリアミド;芳香族ポリアミド;スチレン系ポリマー;ポリエステル系ポリマー;ポリフェニレンサルファイド系ポリマー等の樹脂材料により構成された不織布、織布、微多孔質フィルム等が好適なものとして挙げられ、中でも、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーがより好ましい。
上記複合膜は、例えば、上記混合物を多孔質支持体に含浸させて得られる樹脂含浸層と多孔質支持体とが少なくとも部分的に一体化したものである。該複合膜では、上記混合物の固形分が多孔質支持体中の空孔の少なくとも一部を埋めている。
【0056】
上記複合膜が上記多孔質支持体を含む場合、上記多孔質支持体の質量割合は、上記複合膜100質量%中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、該質量割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0057】
上記多孔質支持体の坪量は、混合物含浸時の観点から、1g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましい。また、該坪量は、80g/m2以下が好ましく、40g/m2以下が更に好ましい。
【0058】
上記多孔質支持体の膜厚は、電池性能や強度を優れたものとしたり、含浸時に無機成分との分離を抑えたりする観点から、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。また、該膜厚は、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0059】
〔その他の成分〕
上記複合膜は更に、従来公知の増粘剤、導電性カーボン、導電性セラミックス等のその他の成分を含んでいてもよい。
上記複合膜におけるその他の成分の含有割合は、複合膜の強度の観点から複合膜100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0060】
本発明のセパレータの作製方法は特に限定されない。たとえば、有機酸(塩)及び/又はその重合体、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を含む混合液を剥離基材上に塗布、乾燥した後、得られた複合膜を剥離基材から剥離する方法があげられる。本発明のセパレータが多孔質支持体を含む場合、本発明のセパレータの作製方法としては、たとえば、該混合液を多孔質支持体に塗布、乾燥する方法、該混合液中に多孔質支持体を浸漬した後、乾燥する方法、該混合液を剥離基材上に塗工し、塗膜を多孔質支持体に接触させた状態で乾燥した後に剥離基材を剥離する方法等があげられる。
有機酸(塩)及び/又はその重合体、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を含む混合液の作製方法は特に制限されない。たとえば、溶媒に有機酸(塩)及び/又はその重合体、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を混合し分散装置を用いる方法であってもよいし、無機粒子と、有機溶剤や水等の溶媒とを混合し分散装置を用いて無機粒子の分散液を作製し、これにバインダーポリマーの分散液、有機酸(塩)及び/又はその重合体、必要に応じてその他の成分を添加、混合する方法であってもよい。上記分散装置としては、超音波やボールミル、ペイントシェーカー等の従来公知の分散装置を用いることができる。また無機粒子を分散させるために分散剤を用いてもよく、分散剤として本発明に係る有機酸(塩)の重合体を用いてもよい。
【0061】
上記セパレータは、平均膜厚が10μm~1mmであることが好ましい。10μm以上であると耐久性をより優れたものとすることができる。また、1mm以下であるとコスト面から有利となる上、イオンの透過の能力も充分に優れる。該平均膜厚は、20μm以上であることがより好ましい。また、該平均膜厚は、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが特に好ましい。
本明細書中、平均膜厚は、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて任意の10点を測定した平均値である。
【0062】
上記セパレータは、ガス透過性であることが好ましい。
ガス透過性とは、透気度がガーレー値で10000秒以下であればよい。該ガーレー値は、9500秒以下であることが好ましい。
また上記ガーレー値は、500秒以上であることが好ましく、1000秒以上であることがより好ましい。
上記ガーレー値は、実施例に記載されるように、JIS P 8117に準じて、ガーレー測定器を用いて、100ccの空気が透過する時間を測定したものである。ガーレー値は、気体の通過しやすさを表す指標であり、値が大きいほど気体を通しにくい。
なお、上記ガーレー値は、セパレータが複数の複合膜が積層された積層体を含む場合は、積層体について測定されたガーレー値である。
【0063】
上記セパレータは、抵抗値が5Ω・cm2以下であることが好ましく、2Ω・cm2以下であることがより好ましく、1Ω・cm2以下であることが更に好ましく、0.5Ω・cm2以下であることが特に好ましい。
上記抵抗値は、その下限値は特に限定されないが、通常、0.01Ω・cm2以上である。
上記抵抗値は、実施例に記載の方法により測定されるものである。
【0064】
上記セパレータは、接触角の平均値は、その下限値は特に限定されないが、電解液の含浸性がより優れるものとなり易い観点から、10°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上が更に好ましい。
また接触角の平均値は、その上限値は特に制限されないが、70°以下であることが好ましく、65°以下であることがより好ましく、60°以下であることが更に好ましい。接触角の平均値の上限値が上記範囲である場合、水系電解液の含浸性が特に優れるものとなり易い傾向がある。
上記接触角の平均値は、実施例に記載の方法により測定・算出されるものである。
【0065】
(電解液)
本発明の電池構成部材が電解液である場合、電解液は、電解液100質量%中、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.2質量%以上含む。
上記電解液における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、電解液100質量%中、0.3質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましい。
上記電解液における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、電解液100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
上記電解液における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、電解液が有機酸(塩)及びその重合体を含む場合、有機酸(塩)及びその重合体の合計質量の割合である。
なお、上記有機酸(塩)及び/又はその重合体の好ましいものは、上述した通りである。
【0066】
上記電解液としては、電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、有機溶剤系電解液、水系電解液、固体電解質等が挙げられる。有機溶剤系電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられ、これらの1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等などが挙げられる。これらの中でも、水系電解液が好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性の水系電解液がより好ましい。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、有機溶媒を含んでいてもよく、該有機溶媒としては、例えば、上記有機溶剤系電解液として例示した有機溶媒が挙げられる。
上記電解液における電解質の濃度は、特に制限されないが、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0067】
(電極)
本発明の電池構成部材が電極である場合、電極は、電極100質量%中、有機酸(塩)及び/又はその重合体を0.01質量%以上含む。
上記電極における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、電極100質量%中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。
上記電極における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、電極100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
上記電極における有機酸(塩)及び/又はその重合体の含有割合は、電極が有機酸(塩)及びその重合体を含む場合、有機酸(塩)及びその重合体の合計質量の割合である。
なお、上記有機酸(塩)及び/又はその重合体の好ましいものは、上述した通りである。
【0068】
上記電極としては、本発明の効果を顕著なものとする観点からは、後述するように、充放電に伴って形態変化が起こる電極であることが好ましい。また、上記電極としては、正極であってもよく、負極であってもよい。以下では、本発明において用いられる正極、負極について説明する。
【0069】
(正極)
上記正極の活物質としては、特に限定されず、電池の正極活物質として用いられるいずれのものも用いることができるが、例えば、金属、金属酸化物、金属水酸化物、酸素、活性炭、導電性重合体を用いることが好ましい。金属、金属酸化物、金属水酸化物としては、多孔質であるもの(多孔質金属、多孔質金属酸化物、多孔質金属水酸化物)が好ましく、また、金属、金属酸化物、金属水酸化物における金属成分が遷移金属であるもの(遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物)が好ましい。正極活物質は、中でも、水酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸素、活性炭がより好ましい。
正極活物質として酸素以外の成分を用いる場合、上記正極の活物質層中、正極活物質の含有割合は、60~99質量%であることが好ましい。正極は、結着剤や導電助剤、触媒、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを基板に塗布、乾燥して得ることができる。また、プレス成形してペレットとすることもできる。結着剤や導電助剤、触媒については、後述する。
なお、正極活物質として酸素を用いる場合、電池外部に存在する空気から酸素を供給することになるため、正極活物質の含有割合は0%となる。この場合、正極は、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、白金含有化合物等より構成される空気極となる。
【0070】
(負極)
上記負極の活物質としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、銅、ビスマス、亜鉛、ニッケル、錫等の金属;これらの金属の化合物(金属化合物);炭素;水素吸蔵合金;シリコン含有材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができる。中でも、負極活物質として、亜鉛、リチウム、ニッケル、マグネシウム等の金属、これらの金属の化合物(金属化合物)等の充放電に伴って形態変化が起こり易いものであることが好ましい。中でも、負極活物質が金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物であることがより好ましい。
上記金属化合物としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫酸塩が好ましく、金属酸化物がより好ましく、これらの金属化合物に異種金属元素が固溶した固溶体金属化合物もまた好ましい。
上記金属としては、単一金属からなる金属であってもよいが、異種金属元素が微量(たとえば1~1000ppm/金属総質量)固溶した固溶体金属(合金)も好ましく用いることができる。上記固溶体金属化合物、固溶体金属に固溶している異種金属元素は1種であってもよいが2種以上であってもよい。
たとえば、負極活物質が金属亜鉛又は亜鉛化合物である場合、金属亜鉛、亜鉛化合物の中でも、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、これらに異種金属元素が固溶した固溶体がより好ましく、金属亜鉛、酸化亜鉛、金属亜鉛に異種金属元素が固溶した金属亜鉛固溶体(亜鉛合金)、酸化亜鉛に異種金属元素が固溶した酸化亜鉛固溶体が更に好ましい。上記異種元素としては、インジウム、ビスマス、スズ、及び、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記金属亜鉛固溶体、酸化亜鉛固溶体に固溶している異種金属元素は1種であってもよいが2種以上であってもよい。
上記負極の活物質層中、負極活物質の含有割合は、60~99質量%であることが好ましい。
【0071】
上記負極も、必要に応じて、活物質層内に、上記活物質とともに後述する結着剤、導電助剤、触媒等のその他の成分等を含んでいてもよい。
【0072】
上記結着剤としては種々の公知のポリマーを用いることができるが、接着成分として上述したバインダーポリマーを好適に使用できる。なお、上記結着剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
上記正極又は負極の活物質層中、結着剤の含有割合は、2~15質量%であることが好ましい。
【0073】
上記導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記触媒としては、特に制限されず、従来公知の触媒を使用できる。
上記正極又は負極の活物質層中、導電助剤、触媒の含有割合は、適宜調整することができる。
【0074】
本発明に係る活物質層の平均厚みは、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることが更に好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。該活物質層の平均厚みは、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
上記活物質層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に10点を測定して算出することができる。
【0075】
上記正極及び負極は、更に、集電体を含むことが好ましい。
上記集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;電気化学素子に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
【0076】
<電池>
本発明は、本発明の電池構成部材を含んで構成される電池でもある。
また本発明は、構成部材の1つとして電解液を含み、構成部材の少なくとも1つが有機酸(塩)及び/又はその重合体を含む電池であって、該構成部材の少なくとも1つに含まれる有機酸(塩)及び/又はその重合体の合計含有割合が、電解液100質量%に対して0.2質量%以上である電池でもある。
上記合計含有割合は、電解液100質量%に対して、0.3質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましい。
上記合計含有割合は、その上限値は特に限定されないが、電解液100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
上記合計含有割合は、構成部材が有機酸(塩)及びその重合体を含む場合、有機酸(塩)及びその重合体の合計質量の割合であり、また、構成部材の2つ以上が有機酸(塩)及び/又はその重合体を含む場合は、各構成部材の有機酸(塩)、その重合体の合計質量の割合である。例えば、セパレータにアクリル酸ナトリウムの重合体が電解液に対し0.1質量%、電解液にアクリル酸カリウムが電解液に対し0.1質量%含まれる場合、上記合計含有割合は0.2質量%となる。
なお、上記有機酸(塩)及び/又はその重合体の好ましいものは、上述した通りである。
【0077】
本発明の電池は、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とするものが好ましい。本発明の電池において、金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を負極活物質とすることで、電解液中の亜鉛等の溶解度を大きく低減することができ、本発明の効果が顕著となる。
また本発明の電池としては、例えば、炭素亜鉛電池、ニッケル亜鉛電池、マンガン亜鉛電池、銀亜鉛電池、空気亜鉛電池が特に好適である。
【0078】
本発明の電池は、密閉されていてもよい。本発明の電池が密閉されていることにより、電解液が蒸発することを充分に防止できる。また、大気中の水分や二酸化炭素が混入することを充分に防止でき、例えば、大気中の二酸化炭素と電解液中の水酸化物イオンとの反応を抑制することができる。
【0079】
本発明の電池は、公知の方法を適宜用いて製造することができる。例えば、負極をセル中に配置し、電解質溶液をセル中に導入し、更に、正極、セパレータ等を配置して電池を作製することができる。
【0080】
本発明の電池は、長寿命であるため、小型携帯機器から自動車等の大型用途にわたって好適に使用できる。
【実施例0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0082】
[透気度]
JIS P 8117に準じて、ガーレー測定器を用いて、100ccの空気が透過する時間を測定した。
【0083】
[抵抗値]
以下の条件で抵抗値(Ω)を測定した。
・仕込みセル数:5セル(平均値を記載)
・セル構成
作用極及び対極:Ni板
電解液:6.7mol/L濃度の水酸化カリウム水溶液
測定サンプル:上記電解液に1晩浸漬
有効面積:φ15mm(1.766cm2)
・交流インピーダンス測定
25℃の恒温槽内で30分静置した後、印加電圧10mV、周波数1kHzの条件でサンプルを入れた時の抵抗(Ra)からサンプルを入れていないブランクの抵抗(Rb)を記録し、下記式により抵抗値(R)を算出した。
R=(Ra-Rb)×1.766[Ω・cm2]
【0084】
[接触角]
セパレータサンプルの裏表それぞれ任意の場所3点について、イオン交換水を2μL滴下し、60秒後の接触角を測定し、平均値を算出した。
【0085】
[亜鉛負極]
酸化亜鉛(平均粒子径1μm)と金属亜鉛(亜鉛単体)とポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形分濃度60%)とイオン交換水を60:8:4:28の質量比で混合しスラリー化した分散液をビニロン不織布に含浸させ、乾燥し、シート状の電極前駆体を作成した。上記混合は、プロペラ型攪拌翼を備えた縦型攪拌機付き相型攪拌装置を用いて、回転数100rpmで5分間行った。得られた電極前駆体と錫でメッキされたパンチング鋼板とを重ねることにより亜鉛負極(1)(サイズ:35mm×35mm)とした。
【0086】
[活性炭正極]
EDLC用活性炭(ATエレクトロード社製BELLFINE AP-0010)とスチレンブタジエンエマルジョン(固形分濃度48%)とイオン交換水を100:20:100の質量比で混合しスラリー化した分散液をニッケルメッシュに塗布して活性炭正極(1)(サイズ:30mm×30mm)とした。上記混合は、プロペラ型攪拌翼を備えた縦型攪拌機付き相型攪拌装置を用いて、回転数100rpmで5分間行った。
【0087】
[電解液]
30質量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させた水溶液を電解液(1)とした。
【0088】
[比較例1]
無機粒子として水酸化マグネシウム(平均粒子径250nm)、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム水分散体(分子量3500、固形分濃度44%)とイオン交換水を質量比で100:2.7:75となるように混合しスラリー化して水酸化マグネシウム分散液とした。
上記水酸化マグネシウム分散液と結着剤としてスチレンブタジエンゴムディスパージョン及びポリテトラフルオロエチレンディスパージョンが固形分質量比で69:3.8:8となるように混合することによりセパレータ作成用塗料(c1)を得た。得られたセパレータ作成用塗料(c1)をビニロン不織布(坪量26.5g/m2、サイズ40mm×40mm)に含浸した後、90℃で乾燥することによりセパレータ(c1)(サイズ40mm×40mm)を得た。得られたセパレータ(c1)の坪量は141g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は0.9%だった。
セパレータ(c1)の抵抗値は0.16Ω・cm2、透気度は2000sec、接触角は55°だった。
上記電池構成部材(亜鉛負極(1)、活性炭正極(1)、電解液(1)、及び、セパレータ(c1))を用いて、評価電池を作成した。この時、使用したセパレータは40×80mm、注液した電解液(1)は3gであり、セパレータ(c1)サイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウムの含有量は4mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は0.14%であった。
充放電条件は電流密度30mA/cm2で1.2Vまで充電し、電流密度5mA/cm2で1時間の放電を繰り返し、放電効率(放電容量/充電容量)が90%以下となったところを寿命と判定した。その結果、300サイクルで寿命判定に達した。
【0089】
[実施例1]
比較例1のセパレータ作成用塗料(c1)の作成において更にポリアクリル酸ナトリウム(分子量3500)を2.8部添加した以外は比較例1と同様にしてセパレータ(1)を作成し、セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(1)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。得られたセパレータ(1)の坪量は141g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は3.1%、セパレータサイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウムの含有量は14mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は0.47%だった。
セパレータ(1)の抵抗値は0.17Ω・cm2、透気度は2200sec、接触角は51°だった。
電池評価の結果、1080サイクルで寿命判定に達した。
【0090】
[実施例2]
比較例1のセパレータ作成用塗料(c1)の作成において更にアクリル酸カリウムを2.8部添加した以外は比較例1と同様にしてセパレータ(2)を作成し、セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(2)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。得られたセパレータ(2)の坪量は143g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸カリウムの含有割合は3.1%、セパレータサイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸カリウムの合計含有量は14mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸カリウムの合計含有割合は0.47%だった。
セパレータ(2)の抵抗値は0.16Ω・cm2、透気度は2100sec、接触角は50°だった。
電池評価の結果、800サイクルで寿命判定に達した。
【0091】
[実施例3]
比較例1のセパレータ作成用塗料(c1)の作成において更にポリアクリル酸ナトリウム(分子量170000)を2.8部添加した以外は比較例1と同様にしてセパレータ(3)を作成し、セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(3)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。得られたセパレータ(3)の坪量は142g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は3.1%、セパレータサイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウムの含有量は14mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は0.47%だった。
セパレータ(3)の抵抗値は0.17Ω・cm2、透気度は2200sec、接触角は51°だった。
電池評価の結果、900サイクルで寿命判定に達した。
【0092】
[実施例4]
比較例1のセパレータ作成用塗料(c1)の作成において更にポリアクリル酸ナトリウム(分子量300~500万)を2.8部添加した以外は比較例1と同様にしてセパレータ(4)を作成し、セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(4)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。得られたセパレータ(4)の坪量は141g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は3.1%、セパレータサイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウムの含有量は14mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウムの含有割合は0.47%だった。
セパレータ(4)の抵抗値は0.18Ω・cm2、透気度は2300sec、接触角は53°だった。
電池評価の結果、580サイクルで寿命判定に達した。
【0093】
[実施例5]
比較例1のセパレータ作成用塗料(c1)の作成において更にアクリル酸ナトリウムを2.5部添加した以外は比較例1と同様にしてセパレータ(5)を作成し、セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(5)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。得られたセパレータ(5)の坪量は142g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸ナトリウムの合計含有割合は2.9%、セパレータサイズ及び坪量から計算される評価電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウムの含有量は13mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸ナトリウムの合計含有割合は0.44%だった。
セパレータ(5)の抵抗値は0.16Ω・cm2、透気度は2200sec、接触角は50°だった。
電池評価の結果、1050サイクルで寿命判定に達した。
【0094】
[実施例6]
無機粒子として水酸化マグネシウム(平均粒子径250nm)、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム水分散体(分子量3500、固形分濃度44%)とイオン交換水を質量比で100:2.7:75となるように混合しスラリー化して水酸化マグネシウム分散液とした。
上記水酸化マグネシウム分散液とアクリル酸カリウムと結着剤としてスチレンブタジエンゴムディスパージョンが固形分質量比で70:2:8となるように混合することによりセパレータ作成用塗料(6)を得た。得られたセパレータ作成用塗料(6)をビニロン不織布(坪量26.5g/m2)に含浸した後、90℃で乾燥することによりセパレータ(6)を得た。得られたセパレータ(6)の坪量は143g/m2でそのうちポリアクリル酸ナトリウムとアクリル酸カリウムの含有割合は3%だった。
セパレータ(6)の抵抗値は0.19Ω・cm2、透気度は4000sec、接触角は45°だった。
セパレータ(c1)の代わりにセパレータ(6)を用いる以外は比較例1と同様にして評価電池を作成した。セパレータサイズ及び坪量から計算される電池内部におけるポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸カリウムの合計含有量は14mg、電解液に対するポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸カリウムの合計含有割合は0.46%であり、電池評価の結果、580サイクルで寿命判定に達した。