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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121345
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】二次電池及び電池構成部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/411 20210101AFI20240830BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240830BHJP
   H01M 10/26 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M50/411
H01M4/62 C
H01M10/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028394
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高澤 康行
(72)【発明者】
【氏名】中村 涼
(72)【発明者】
【氏名】原田 弘子
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE01
5H028AA05
5H028AA06
5H028EE06
5H028FF04
5H050AA07
5H050BA11
5H050CA03
5H050CA05
5H050CB13
5H050EA22
(57)【要約】
【課題】二次電池において析出物による電極の劣化を充分に防止できる方法を提供する。
【解決手段】重合性基含有化合物を含む電池構成部材を含んで構成される二次電池である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基含有化合物を含む電池構成部材を含んで構成されることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記重合性基含有化合物は、更に、酸(塩)基を有することを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記重合性基含有化合物は、カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するエチレン性不飽和モノマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電池構成部材は、セパレータ、電解液、又は、電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項5】
重合性基含有化合物を含み、二次電池に用いられることを特徴とする電池構成部材。
【請求項6】
重合性基含有化合物の重合体からなる被膜を有することを特徴とする正極。
【請求項7】
請求項6に記載の正極を含んで構成されることを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び電池構成部材に関する。より詳しくは、特にニッケル電極又はマンガン電極を含んで構成される二次電池及び電池構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型携帯機器から自動車等の大型用途まで多くの産業において、電池の重要性が急速に高まっている。しかしながら、繰り返し充放電を行うことができる二次電池において、長期間充放電を繰り返すと、電極の活物質層等の近傍で充放電反応が起こる過程で、析出物により電極の容量低下等の劣化が生じるという課題があった(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JOURNAL OF APPLIED ELECTROCHEMISTRY 25 (1995) 433-440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池において析出物による電極の劣化を充分に防止できる方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、二次電池において析出物による電極の劣化を充分に防止できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、二次電池において析出物による電極の劣化を充分に防止できる方法について種々検討し、重合性基含有化合物を含む電池構成部材を含んで構成される二次電池とすれば、析出物による電極の劣化を充分に防止できることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明(1)は、重合性基含有化合物を含む電池構成部材を含んで構成される二次電池である。
【0008】
本発明(2)は、上記重合性基含有化合物は、更に、酸(塩)基を有する本発明(1)の二次電池である。
【0009】
本発明(3)は、上記重合性基含有化合物は、カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有するビニルモノマーである本発明(1)又は(2)の二次電池である。
【0010】
本発明(4)は、上記電池構成部材は、セパレータ、電解液、又は、電極である本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せの二次電池である。
【0011】
本発明(5)は、重合性基含有化合物を含み、二次電池に用いられる電池構成部材である。
【0012】
本発明(6)は、重合性基含有化合物の重合体からなる被膜を有する正極である。
【0013】
本発明(7)は、本発明(6)の正極を含んで構成される二次電池である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二次電池又は電池構成部材によれば、析出物による電極の劣化を充分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】比較例1の電池評価におけるサイクル数に対する放電容量と充電後電圧を示すグラフである。
図2】クラックのあるセパレータを用いて電池を評価した場合のサイクル数に対する充電後電圧を示すグラフである。
図3】比較例1の電池評価におけるサイクル数別の容量に対する電圧(充放電曲線)を示すグラフである。
図4】参考例1の充電状態模擬試験におけるNi箔の写真である。
図5】参考例1の充電状態模擬試験におけるNi箔の卓上顕微鏡写真である。
図6】参考例1の充電状態模擬試験におけるクロマトグラフィーの分析結果を示すグラフである。
図7】参考例1の結果から推測されるモデル反応の式である。
図8】比較参考例1の充電状態模擬試験におけるNi箔の写真である。
図9】比較参考例1の充電状態模擬試験におけるNi箔の卓上顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の形態である。
【0017】
<二次電池>
本発明の二次電池は、重合性基含有化合物を含む電池構成部材を含んで構成される。
【0018】
(電池構成部材)
本発明に係る電池構成部材は、特に限定されないが、電解液又は電解液に直接接している部材が好ましく、例えば、セパレータ、電解液、又は、電極であることが好ましい。
二次電池は、長期間の充放電に伴って、電極表面に析出物が生じ、これにより電極において容量低下等の劣化が生じるが、本発明に係る電池構成部材は、重合性基含有化合物を含むことで、当該電池構成部材を含んで構成される二次電池において電極近傍の電解液中に重合性基含有化合物が溶け込み、二次電池の充放電に伴って、重合性基含有化合物由来の膜が電極を覆う状態になる。その結果、電極表面に析出物が生じにくくなり、また、電極表面に析出物が生じたとしても電極への影響が小さくなり、電極における容量低下等の劣化を充分に防止することができると考えられる。
【0019】
(セパレータ)
本発明の電池構成部材がセパレータである場合、セパレータは、重合性基含有化合物を2質量%以上含む。なお、セパレータは、正極と負極とを隔離しつつ、正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。
上記セパレータにおける重合性基含有化合物の含有割合は、セパレータ100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
上記セパレータにおける重合性基含有化合物の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、セパレータ100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0020】
上記重合性基含有化合物における重合性基は、重合性を有する基をすべて包含し、エチレン性不飽和二重結合等のラジカル重合性基;エポキシ基、グリシジル基、グリシジルエーテル基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基;シアノ基等のアニオン重合性基が挙げられ、中でもラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和二重結合がより好ましい。
上記重合性基含有化合物としては、上述した重合性基を有するもの(ラジカル重合性基含有化合物、カチオン重合性基含有化合物、アニオン重合性基含有化合物)であればよく、例えば、立体障害の影響等で通常の電池反応では重合反応があまり効率的に進まなくても、条件を適宜調整することで効率的に重合し得る化合物であればよいが、中でも、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物であるエチレン性不飽和モノマー、イミン化合物等が好適なものとして挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、エチレン性不飽和モノマーが好ましい。
上記エチレン性不飽和モノマーは、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリルアミド、スチレン、エナミン化合物のように酸(塩)基を有しないものであってもよいが、更に、酸(塩)基を有することが好ましい。酸(塩)基は、酸基及び/又は酸塩基を意味する。
上記酸(塩)基としては、カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基が好適なものとして挙げられる。
カルボン酸(塩)基は、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を意味する。リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基もそれぞれ同様である。
なお、本明細書中、亜リン酸基は、亜リン酸のP-H又はP-OHから水素原子が脱離したかたちの1価の基をいう。次亜リン酸基は、次亜リン酸のP-H又はP-OHから水素原子が脱離したかたちの1価の基をいう。
【0021】
上記エチレン性不飽和モノマーは、酸(塩)基を有し、更に、エチレン性不飽和二重結合を有するものであり、例えば、酸(塩)基として、カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基、及び、スルホン酸(塩)基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有することがより好ましく、中でも、カルボン酸(塩)基を有することが更に好ましい。
【0022】
上記カルボン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、これらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。上記カルボン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和モノマーは、無水マレイン酸、無水フマル酸等の無水物であってもよい。
上記カルボン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和モノマーは、中でも、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸の塩((メタ)アクリル酸(塩))であることがより好ましい。
上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等の周期律表第1族金属元素の塩、マグネシウム、カルシウム等の周期律表第2族金属元素の塩、その他の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好適なものとして挙げられ、中でも、周期律表第1族金属元素の塩がより好ましい。
【0023】
また上記セパレータは、上述した重合性基含有化合物以外に、バインダーポリマー(結着剤)及び無機粒子を含むことが好ましく、言い換えれば、バインダーポリマー及び無機粒子を含む複合膜(有機無機複合膜ともいう)であることが本発明における好ましい実施形態の1つである。該複合膜は、アニオン伝導性膜であることが好ましい。
【0024】
上記バインダーポリマー及び無機粒子を含む複合膜は、その緻密構造により耐久性に優れるものであり、電池を長寿命化することができる。また、上記複合膜は、無機粒子を含むことにより、無機粒子表面がイオン伝導パスとなるとともに、バインダーポリマーが粒子間を結着する際に粒子間の空隙の大部分を埋めてしまうことを充分に防止でき、複合膜のイオン伝導性を充分に高いものとすることができる。電池内部におけるイオン伝導性を充分に高いものとし、内部抵抗の低い二次電池とすることで、電池を適切に駆動することができ、長寿命化に寄与する。なお、無機粒子は、粒子形状であることで複合膜のイオン伝導性を非常に優れたものとすることができる。
【0025】
以下では、上記複合膜に含まれるバインダーポリマー、無機粒子、その他の成分について順に説明する。
【0026】
〔バインダーポリマー〕
上記バインダーポリマーとしては、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよいが、通常、ガラス転移温度が60℃未満である成分をいう。バインダーポリマーが粒子間を結着することで、セパレータの構造安定性に寄与できる。バインダーポリマーは、ガラス転移温度が50℃以下であることが好ましい。
本明細書中、ガラス転移温度は、ポリマー等の材料をガラス板に塗布し、120℃で1時間乾燥して得られた乾燥体について、示差走査熱量計(装置名:熱分析装置DSC3100S、BRVKER)を用いて測定されるものである。
【0027】
上記バインダーポリマーは、ガラス転移温度が60℃未満である非結晶性のバインダーポリマーであることが好ましい。非結晶性であることにより、周囲の部材と結合を作りやすく、結着成分として好適に機能する。
上記バインダーポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー;ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;共役ジエン系ポリマー;(メタ)アクリル系ポリマー;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマーなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、ハロゲン含有ポリマー、共役ジエン系ポリマーが好ましい。
これらのポリマーは、電池用セパレータの無機粒子のバインダーとしてはたらき、クラックの発生を防止できる。
【0028】
上記ハロゲン含有ポリマーは、ハロゲン原子を含有するポリマーであればよいが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリペンタフルオロエチレンが好ましいものとして挙げられ、中でもポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリペンタフルオロエチレンがより好ましい。
【0029】
上記共役ジエン系ポリマーは、共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位を有するものである。
上記共役ジエン系ポリマーとしては、スチレン-ブタジエン系ポリマー(SBR)、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマー、ポリブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性ポリブタジエン系ポリマー、ポリイソプレン系ポリマー、カルボキシ変性ポリイソプレン系ポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマーが好ましい。
【0030】
上記共役ジエン系ポリマーは、脂肪族共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位、芳香族ビニルモノマー由来のモノマー単位、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位以外の、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記共役ジエン系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー由来のモノマー単位を有するものであり、代表的なものとしては(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とする(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とするとは、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー100質量%中、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位の含有割合が50質量%以上であることをいう。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。
【0033】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位以外に、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位や、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
上記バインダーポリマーは、熱や圧力等によりセパレータの強度、アニオン伝導度等を好適に調節することができる。
【0035】
上記バインダーポリマーの質量割合は、複合膜100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
上記バインダーポリマーの質量割合は、その上限値は特に限定されないが、複合膜100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
〔無機粒子〕
本明細書中、無機粒子とは、通常、ガラス転移温度を有さない無機化合物粒子である。無機粒子は、例えば、粒子全体が無機化合物で構成された粒子であってもよいし、表面が無機化合物で被覆された粒子であってもよい。
【0037】
以下では、まず、主として粒子全体が無機化合物で構成された粒子について説明するが、表面が無機化合物で被覆された粒子の無機化合物部分についても同様のことがいえる。
上記無機粒子を構成する無機化合物としては、種々の無機化合物を用いることができるが、例えば、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、及び、リン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書中、水酸化物は、ヒドロキシ基を有する化合物であって、層状複水酸化物以外のものをいう。
【0038】
上記酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタノイド、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化銅、酸化カドミウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛、酸化リン、酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、成膜時の分散液中やアルカリ性条件下の蓄電池内であっても安定なものが好ましく、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが好ましく、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。なお、酸化ジルコニウムは、例えば、イットリウム、スカンジウム、イッテルビウム等の元素を固溶化したものであってもよく、酸素欠陥を持つものであってもよい。
【0039】
上記水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化スカンジウム、水酸化イットリウム、水酸化ランタノイド、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化ニオブ、水酸化ルテニウム、水酸化ニッケル、水酸化パラジウム、水酸化銅、水酸化カドミウム、ホウ酸、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化タリウム、ケイ酸、水酸化ゲルマニウム、水酸化スズ、水酸化鉛、リン酸、水酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、アルカリ性条件下での溶解度が低いものが好ましく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、水酸化ジルコニウムが好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。
【0040】
上記層状複水酸化物は、下記一般式:
[M 1-x (OH)](An-x/n・mH
(Mは、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mnのいずれかである二価金属イオンを表す。Mは、Al、Fe、Mn、Co、Cr、Inのいずれかである三価金属イオンを表す。An-は、Cl、NO 、CO 2-、COO等の1価以上、3価以下のアニオンを表す。中でも、An-は、2価以下のアニオンを表すことが好ましい。mは0以上の数であり、nは1以上、3以下の数である。xは0.20以上、0.40以下の数である。)に代表される化合物であり、このような層状複水酸化物としては、例えば、ハイドロタルサイト、マナッセイト、モツコレアイト、スティッヒタイト、ショグレナイト、バーバートナイト、パイロアウライト、イオマイト、クロロマガルミナイト、ハイドロカルマイト、グリーン ラスト1、ベルチェリン、タコバイト、リーベサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライト等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、工業的に利用が容易である点で、前記一般式におけるMがMg、MがAlであるハイドロタルサイトが好ましい。
なお、これら層状複水酸化物は、例えば、150℃以上、900℃以下で焼成することにより脱水した化合物や層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物であってもよい。
上記層状複水酸化物には、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。また、上記層状複水酸化物は層間内に有機物を有していてもよい。
【0041】
上記リン酸化合物としては、例えばヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、ヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンの一部又は全部をマグネシウムに置換したマグネシウムヒドロキシアパタイト、ストロンチウムに置換したストロンチウムヒドロキシアパタイト、バリウムに置換したバリウムヒドロキシアパタイト等が挙げられる。中でも、ヒドロキシアパタイト、マグネシウムヒドロキシアパタイトが好ましい。
【0042】
上記無機化合物は、中でも、マグネシウム含有化合物であることが好ましい。また、該無機化合物としては、水酸化物、層状複水酸化物、リン酸化合物が好ましく、層状複水酸化物及び/又は水酸化物であることがより好ましい。上記無機化合物は、セパレータの強度をより優れたものとする観点からは、水酸化物であることが更に好ましく、セパレータのイオン伝導性をより優れたものとする観点からは、層状複水酸化物、水酸化マグネシウムであることが更に好ましく、セパレータの耐久性をより優れたものとする観点からは、水酸化マグネシウムであることが特に好ましい。
【0043】
上記無機粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
上記無機粒子は、平均粒子径が2μm以下であるものが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは1μm以下であり、更に好ましくは0.5μm以下である。また、該平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。
上記平均粒子径とは、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、無機粒子を分散媒(0.2%ヘキサメタりん酸ナトリウム含有イオン交換水)で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器(パーティクルサイジングシステムズ〔Particle Sizing Systems〕社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定されるものである。
【0044】
なお、体積平均粒子径が上記のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒子径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
【0045】
上記無機粒子は、アスペクト比(縦/横)が1以上であればよい。また、該アスペクト比(縦/横)は、8以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
上記アスペクト比(縦/横)の求め方は、上述した通りである。
また、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の粒子は、上述した方法により得ることができる。
【0046】
上記無機粒子の質量割合は、上記複合膜100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。
上記無機粒子の質量割合は、その上限値は特に限定されないが、上記複合膜100質量%中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
本明細書中では、上記アニオン伝導性膜は、バインダーポリマーと、無機粒子を含む複合膜の中でも、電池の反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンを透過する膜をいう。上記アニオン伝導性膜は、無機粒子等の作用により、透過するアニオンの選択性を有する。なお、当該アニオンの選択性は、水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな、活物質に由来する金属含有イオン(例えば、Zn(OH) 2-)等の透過は充分に防止する。本明細書中、アニオン伝導性とは、水酸化物イオン等のイオン半径の小さなアニオンを充分に透過すること、ないし、当該アニオンの透過性能を意味する。金属含有イオン等のイオン半径の大きなアニオンは、より透過しにくいものであり、全く透過しなくても構わない。
【0048】
〔多孔質支持体〕
上記複合膜は、更に、ポリオレフィン系ポリマー等からなる多孔質支持体(多孔質基材)を有し、多孔質支持体に、重合性基含有化合物、バインダーポリマー、無機粒子、並びに、必要に応じてその他の成分の混合物が含浸した樹脂含浸層であってもよく、多孔質基材に該混合物を接触させ、必要に応じて混合物を乾燥させて得られる積層構造のものであってもよい。
【0049】
上記多孔質支持体は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、環状ポリオレフィン系ポリマー等のポリオレフィン系ポリマー;ビニロン等のポリビニルアルコール系ポリマー;脂肪族ポリアミド;芳香族ポリアミド;スチレン系ポリマー;ポリエステル系ポリマー;ポリフェニレンサルファイド系ポリマー等の樹脂材料により構成された不織布、織布、微多孔質フィルム等が好適なものとして挙げられ、中でも、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーがより好ましい。
上記複合膜は、例えば、上記混合物を多孔質支持体に含浸させて得られる樹脂含浸層と多孔質支持体とが少なくとも部分的に一体化したものである。該複合膜では、上記混合物の固形分が多孔質支持体中の空孔の少なくとも一部を埋めている。
【0050】
上記複合膜が上記多孔質支持体を含む場合、上記多孔質支持体の質量割合は、上記複合膜100質量%中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、該質量割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
上記多孔質支持体の坪量は、混合物含浸時の観点から、1g/m以上が好ましく、10g/m以上がより好ましい。また、該坪量は、80g/m以下が好ましく、40g/m以下が更に好ましい。
【0052】
上記多孔質支持体の膜厚は、電池性能や強度を優れたものとしたり、含浸時に無機成分との分離を抑えたりする観点から、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。また、該膜厚は、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0053】
〔その他の成分〕
上記複合膜は更に、従来公知の増粘剤、導電性カーボン、導電性セラミックス等のその他の成分を含んでいてもよい。
上記複合膜におけるその他の成分の含有割合は、複合膜の強度の観点から複合膜100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0054】
本発明に係るセパレータの作製方法は特に限定されない。たとえば、重合性基含有化合物、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を含む混合液を剥離基材上に塗布、乾燥した後、得られた複合膜を剥離基材から剥離する方法があげられる。本発明のセパレータが多孔質支持体を含む場合、本発明のセパレータの作製方法としては、たとえば、該混合液を多孔質支持体に塗布、乾燥する方法、該混合液中に多孔質支持体を浸漬した後、乾燥する方法、該混合液を剥離基材上に塗工し、塗膜を多孔質支持体に接触させた状態で乾燥した後に剥離基材を剥離する方法等があげられる。
重合性基含有化合物、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を含む混合液の作製方法は特に制限されない。たとえば、溶媒に重合性基含有化合物、無機粒子、バインダーポリマー、必要に応じてその他の成分を混合し分散装置を用いる方法であってもよいし、無機粒子と、有機溶剤や水等の溶媒とを混合し分散装置を用いて無機粒子の分散液を作製し、これにバインダーポリマーの分散液、重合性基含有化合物、必要に応じてその他の成分を添加、混合する方法であってもよい。上記分散装置としては、超音波やボールミル、ペイントシェーカー等の従来公知の分散装置を用いることができる。また無機粒子を分散させるために分散剤を用いてもよく、分散剤として有機酸(塩)の重合体を用いてもよい。
【0055】
〔高分子膜〕
本発明に係るセパレータは、上記複合膜とともに、高分子膜を含むものであってもよい。
そのような高分子膜としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン部位含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン部位含有ポリマー、セルロース、フィブリル化セルロース、ビスコースレイヨン、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール含有ポリマー、セロファン、ポリスチレン等の芳香環部位含有ポリマー、ポリアクリロニトリル部位含有ポリマー、ポリアクリルアミド部位含有ポリマー、ポリハロゲン化ビニル部位含有ポリマー、ナイロン等のポリアミド部位含有ポリマー、ポリイミド部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩部位含有ポリマー、ポリイソプレノールやポリ(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ポリマー、ポリカーボネート等のカーボネート基含有ポリマー、ポリエステル等のエステル基含有ポリマー、ポリウレタン等のカルバメートやカルバミド基部位含有ポリマー、イオン交換膜性ポリマー、環化ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩含有ポリマー、環状炭化水素基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。上記ポリマーが特定の部位・官能基を含有するとは、ポリマーが、その一部において当該部位・官能基を有する単量体単位を含むものであればよく、当該部位・官能基を有さない単量体単位を含むものであってもよい。言い換えれば、ポリマーは、コポリマーであってもよい。
上記高分子膜は、例えば、上記ポリマーから構成される、不織布又は微多孔膜であることが好ましい。
【0056】
上記高分子膜を構成するポリマーが官能基を有する場合には、該官能基は主鎖にあっても側鎖にあってもよい。また、主鎖がエステル結合、アミド結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、アゴスティック相互作用、水素結合、アセタール結合、ケタール結合、エーテル結合、ペルオキシド結合、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、カルバメート結合、チオカルバメート結合、カルバミド結合、チオカルバミド結合、オキサゾリン部位含有結合、トリアジン結合等を介して架橋されていてもよい。
上記高分子膜は、抵抗が上昇し電池性能が低下しなければ、任意の枚数を使用することができる。
例えば、セパレータとして、上記複合膜と上記高分子膜を積層させたものを使用できる。
【0057】
上記セパレータは、平均膜厚が10μm~1mmであることが好ましい。10μm以上であると耐久性をより優れたものとすることができる。また、1mm以下であるとコスト面から有利となる上、イオンの透過の能力も充分に優れる。該平均膜厚は、20μm以上であることがより好ましい。また、該平均膜厚は、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、150μm以下であることが特に好ましい。
本明細書中、平均膜厚は、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて任意の10点を測定した平均値である。
【0058】
上記セパレータは、ガス透過性であることが好ましい。
ガス透過性とは、透気度がガーレー値で10000秒以下であればよい。該ガーレー値は、9500秒以下であることが好ましい。
また上記ガーレー値は、500秒以上であることが好ましく、1000秒以上であることがより好ましい。
上記ガーレー値は、JIS P 8117に準じて、ガーレー測定器を用いて、100ccの空気が透過する時間を測定したものである。ガーレー値は、気体の通過しやすさを表す指標であり、値が大きいほど気体を通しにくい。
なお、上記ガーレー値は、セパレータが複数の複合膜が積層された積層体を含む場合は、積層体について測定されたガーレー値である。
【0059】
上記セパレータは、抵抗値が5Ω・cm以下であることが好ましく、2Ω・cm以下であることがより好ましく、1Ω・cm以下であることが更に好ましく、0.5Ω・cm以下であることが特に好ましい。
上記抵抗値は、その下限値は特に限定されないが、通常、0.01Ω・cm以上である。
上記抵抗値は、交流インピーダンス測定により測定されるものである。
【0060】
上記セパレータは、接触角の平均値は、その下限値は特に限定されないが、電解液の含浸性がより優れるものとなり易い観点から、10°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上が更に好ましい。
また接触角の平均値は、その上限値は特に制限されないが、70°以下であることが好ましく、65°以下であることがより好ましく、60°以下であることが更に好ましい。接触角の平均値の上限値が上記範囲である場合、水系電解液の含浸性が特に優れるものとなり易い傾向がある。
上記接触角の平均値は、セパレータサンプルの裏表それぞれ任意の場所3点について、イオン交換水を2μL滴下し、60秒後の接触角を測定し、平均値を算出したものである。
【0061】
(電解液)
本発明の電池構成部材が電解液である場合、電解液が、重合性基含有化合物を含む。
上記電解液における重合性基含有化合物の含有割合は、電解液100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
上記電解液における重合性基含有化合物の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、電解液100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記重合性基含有化合物の好ましいものは、上述した通りである。
【0062】
上記電解液としては、電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、有機溶剤系電解液、水系電解液、固体電解質等が挙げられる。有機溶剤系電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられ、これらの1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等などが挙げられる。これらの中でも、水系電解液が好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性の水系電解液がより好ましい。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、有機溶媒を含んでいてもよく、該有機溶媒としては、例えば、上記有機溶剤系電解液として例示した有機溶媒が挙げられる。
上記電解液における電解質の濃度は、特に制限されないが、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0063】
(電極)
本発明の電池構成部材が電極である場合、電極が、重合性基含有化合物を含む。
上記電極における重合性基含有化合物の含有割合は、電極100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。
上記電極における重合性基含有化合物の含有割合は、その上限値は特に限定されないが、電極100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記重合性基含有化合物の好ましいものは、上述した通りである。
【0064】
上記電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。以下では、本発明において用いられる正極、負極について説明する。
【0065】
(正極)
上記正極の活物質としては、特に限定されず、電池の正極活物質として用いられるいずれのものも用いることができるが、例えば、金属、金属酸化物、金属水酸化物、酸素、活性炭、導電性重合体を用いることが好ましい。金属、金属酸化物、金属水酸化物としては、多孔質であるもの(多孔質金属、多孔質金属酸化物、多孔質金属水酸化物)が好ましく、また、金属、金属酸化物、金属水酸化物における金属成分が遷移金属であるもの(遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物)が好ましい。正極活物質は、中でも、水酸化ニッケル、酸化マンガンがより好ましい。
正極活物質として酸素以外の成分を用いる場合、上記正極の活物質層中、正極活物質の含有割合は、60~99質量%であることが好ましい。正極は、結着剤や導電助剤、触媒、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを基板に塗布、乾燥して得ることができる。また、プレス成形してペレットとすることもできる。結着剤や導電助剤、触媒については、後述する。
なお、正極活物質として酸素を用いる場合、電池外部に存在する空気から酸素を供給することになるため、正極活物質の含有割合は0%となる。この場合、正極は、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、白金含有化合物等より構成される空気極となる。
【0066】
(負極)
上記負極の活物質としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、銅、ビスマス、亜鉛、ニッケル、錫等の金属;これらの金属の化合物(金属化合物);炭素;水素吸蔵合金;シリコン含有材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができる。中でも、負極活物質として、亜鉛、リチウム、ニッケル、マグネシウム等の金属、これらの金属の化合物(金属化合物)等の充放電に伴って形態変化が起こり易いものであることが好ましい。中でも、負極活物質が金属亜鉛及び/又は亜鉛化合物を含むことが好ましい。
上記金属化合物としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫酸塩が好ましく、金属酸化物がより好ましく、これらの金属化合物に異種金属元素が固溶した固溶体金属化合物もまた好ましい。
上記金属としては、単一金属からなる金属であってもよいが、異種金属元素が微量(たとえば1~1000ppm/金属総質量)固溶した固溶体金属(合金)も好ましく用いることができる。上記固溶体金属化合物、固溶体金属に固溶している異種金属元素は1種であってもよいが2種以上であってもよい。
たとえば、負極活物質が金属亜鉛または亜鉛化合物である場合、金属亜鉛、亜鉛化合物の中でも、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、これらに異種金属元素が固溶した固溶体がより好ましく、金属亜鉛、酸化亜鉛、金属亜鉛に異種金属元素が固溶した金属亜鉛固溶体(亜鉛合金)、酸化亜鉛に異種金属元素が固溶した酸化亜鉛固溶体がさらに好ましい。上記異種元素としては、インジウム、ビスマス、スズ、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記金属亜鉛固溶体、酸化亜鉛固溶体に固溶している異種金属元素は1種であってもよいが2種以上であってもよい。
上記負極の活物質層中、負極活物質の含有割合は、60~99質量%であることが好ましい。
【0067】
上記負極も、必要に応じて、活物質層内に、上記活物質とともに後述する結着剤、導電助剤、触媒等のその他の成分等を含んでいてもよい。
【0068】
上記結着剤としては種々の公知のポリマーを用いることができるが、接着成分として上述したバインダーポリマーを好適に使用できる。なお、上記結着剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
上記正極又は負極の活物質層中、結着剤の含有割合は、2~15質量%であることが好ましい。
【0069】
上記導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記触媒としては、特に制限されず、従来公知の触媒を使用できる。
上記正極又は負極の活物質層中、導電助剤、触媒の含有割合は、適宜調整することができる。
【0070】
本発明に係る活物質層の平均厚みは、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることが更に好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。該活物質層の平均厚みは、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。
上記活物質層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に10点を測定して算出することができる。
【0071】
上記正極及び負極は、更に、集電体を含むことが好ましい。
上記集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;電気化学素子に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
【0072】
本発明の二次電池としては、例えば、ニッケル正極を含んで構成される電池、マンガン正極を含んで構成される二次電池が好ましく、ニッケル亜鉛電池、マンガン亜鉛電池がより好ましい。本発明の二次電池がこのような形態であると、正極の劣化を防止する効果が顕著になる。
【0073】
本発明の二次電池は、密閉されていてもよい。本発明の二次電池が密閉されていることにより、電解液が蒸発することを充分に防止できる。また、大気中の水分や二酸化炭素が混入することを充分に防止でき、例えば、大気中の二酸化炭素と電解液中の水酸化物イオンとの反応を抑制することができる。
【0074】
本発明の二次電池は、公知の方法を適宜用いて製造することができる。例えば、負極をセル中に配置し、電解質溶液をセル中に導入し、更に、正極、セパレータ等を配置して電池を作製することができる。
【0075】
本発明の二次電池は、長寿命であるため、小型携帯機器から自動車等の大型用途にわたって好適に使用できる。
【0076】
<電池構成部材>
本発明は、重合性基含有化合物を含み、二次電池に用いられる電池構成部材でもある。本発明の電池構成部材は、本発明の二次電池を構成するために用いられる。
なお、上記重合性基含有化合物の好ましいものは、上述した通りである。
【0077】
<正極>
本発明は、重合性基含有化合物の重合体からなる被膜を有する正極でもある。
重合性基含有化合物の重合体は、重合性基含有化合物を用いて重合して得られた重合体、又は、該重合体と同じ構造の重合体であることが好ましい。
本発明の正極は、例えば、析出物が析出し得る面上に上記被膜を有することで、劣化が抑制されたものである。
本発明の正極としては、特に限定されず、上述した正極活物質を使用した正極とすることができるが、例えばニッケル正極、マンガン正極が好ましい。
【0078】
なお、本発明は、本発明の正極を含んで構成される二次電池でもある。
また本発明の二次電池としては、上述したように、例えば、ニッケル正極を含んで構成される二次電池、マンガン正極を含んで構成される二次電池が好ましく、ニッケル亜鉛二次電池、マンガン亜鉛二次電池がより好ましい。
【実施例0079】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0080】
[充電状態の模擬]
充電状態の模擬は下記条件でおこなった。
・作用極:Ni箔
・参照極及び対極:亜鉛金属
・温度:25℃
・電圧条件(定電圧掃引後、定電圧保持)
参照極の亜鉛金属に対して1.9Vまで10mV/secの速度で電圧を掃引し、1.9Vの電圧で10時間定電圧保持を行った。
【0081】
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)]
GPCは下記条件でおこなった。
・サンプル調整:試料を2M HCl水溶液へ溶解し、その後0.1M HPO水溶液と混合した。
・測定条件
装置:東ソー社製HLC-8320GPC
溶離液:0.1M HPO水溶液
カラム:TSKgel G3000PWXL
GPC測定はポリアクリル酸換算で実施した。
【0082】
[亜鉛負極]
酸化亜鉛(平均粒子径1μm)と金属亜鉛(亜鉛単体)とポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形分濃度60%)とイオン交換水を60:8:4:28の質量比で混合しスラリー化した分散液をビニロン不織布に含浸させ、乾燥し、シート状の電極前駆体を作成した。上記混合は、プロペラ型攪拌翼を備えた縦型攪拌機付き相型攪拌装置を用いて、回転数100rpmで5分間行った。得られた電極前駆体と錫でメッキされたパンチング鋼板とを重ねることにより亜鉛負極(1)(サイズ:35mm×35mm)とした。
【0083】
[Ni正極]
水酸化コバルトでコートされた水酸化ニッケルとポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形分濃度60%)とイオン交換水を100:1.5:100の質量比で混合しスラリー化した分散液を発泡ニッケルに含浸させ、乾燥し、プレスすることでNi正極(1)(サイズ:30mm×30mm)とした。作成したNi正極の理論容量は250mAh/(30×30mm)だった。
【0084】
[電解液]
30重量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させた水溶液を電解液(1)とした。
【0085】
[比較例1]
亜鉛負極(1)、セパレータ(A)、ビニロン不織布、Ni正極(1)、ビニロン不織布、セパレータ(A)、亜鉛負極(1)をこの順に積層するように配置して評価電池を作成した。なお、セパレータ(A)とはポリプロピレン製微多孔膜(平均細孔径64nm、多孔度55%、サイズ40mm×40mm)である。
更に電解液(1)を5g注液し、下記の条件で充放電を行い、放電維持率が90%以下となったときのサイクルを寿命とした。
充電:1.8Cレートで1.9Vまで充電し、1.9Vに到達してから60秒間電圧保持
放電:0.8Cレートで59秒放電後、5.5Cで1秒放電
電池評価の結果、寿命は5500サイクルだった。
【0086】
比較例1の電池評価におけるサイクル数に対する放電容量と充電後電圧の推移を図1に示す。
比較例1では、5500サイクル以降で放電容量が低下しても、充電後の電圧に大きな変化がない。このことは、5500サイクル以降でも充電は可能であること、すなわち、電極間で短絡はしていないことを示している。したがって、容量低下は、電極間の短絡ではなく電極劣化が原因と考えられる。
参考として、クラックのあるセパレータを用いて同様に電池を評価した場合のサイクル数に対する充電後電圧の推移を図2に示す。図2では、充電後電圧が急激に低下している。このことは、電極間が短絡しており、そもそも充電が不可能である(本来充電できているはずの電圧になっていない)ことを示している。
なお、図3は、比較例1の電池評価におけるサイクル数別の容量に対する電圧(充放電曲線)を示すグラフである。5500サイクル以降でも充電は可能であり、電極間で短絡はしていないことを示している。
【0087】
[比較例2]
電解液(1)の代わりに、30重量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させた水溶液100部に、ポリアクリル酸ナトリウム(分子量3500)を3部添加したものを電解液として用いた以外は、比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。
電池評価の結果、寿命は5500サイクルだった。
【0088】
[実施例1]
電解液(1)の代わりに、30重量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させた水溶液100部に、アクリル酸カリウムを3部添加したものを電解液として用いた以外は、比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。
電池評価の結果、寿命は9000サイクルだった。
【0089】
[実施例2]
無機粒子として水酸化マグネシウム(平均粒子径250nm)、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム水分散体(分子量3500、固形分濃度44%)とイオン交換水を質量比で100:2.7:75となるように混合しスラリー化して水酸化マグネシウム分散液とした。
上記水酸化マグネシウム分散液とアクリル酸カリウムと結着剤としてスチレンブタジエンゴムディスパージョンが固形分質量比で70:2:8となるように混合することによりセパレータ作成用塗料(b)を得た。得られたセパレータ作成用塗料(b)をビニロン不織布(坪量26.5g/m、サイズ40mm×40mm)に含浸した後、90℃で乾燥することによりセパレータ(B)(サイズ40mm×40mm)を得た。得られたセパレータ(B)の坪量は143g/mでそのうちアクリル酸カリウムの含有割合は2%だった。
比較例1の評価電池においてはセパレータ(A)を2枚用いているが、それぞれのセパレータ(A)の代わりにセパレータ(B)を用いた以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。電池評価の結果、寿命は10500サイクルだった。
【0090】
[実施例3]
無機粒子として水酸化マグネシウム(平均粒子径250nm)、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム水分散体(分子量3500、固形分濃度44%)とイオン交換水を質量比で100:2.7:75となるように混合しスラリー化して水酸化マグネシウム分散液とした。
上記水酸化マグネシウム分散液と結着剤としてスチレンブタジエンゴムディスパージョン及びポリテトラフルオロエチレンディスパージョンが固形分質量比で69:3.8:8となるように混合し、更にアクリル酸ナトリウムを2部添加し、セパレータ作成用塗料(c)を得た。得られたセパレータ作成用塗料(c)をビニロン不織布(坪量26.5g/m)に含浸した後、90℃で乾燥することでセパレータ(C)を得た。
得られたセパレータ(C)のサイズは40mm×40mm、坪量は142g/mでそのうちアクリル酸ナトリウムの含有割合は2%だった。
比較例1の評価電池においてはセパレータ(A)を2枚用いているが、それぞれのセパレータ(A)の代わりにセパレータ(C)を用いた以外は比較例1と同様にして評価電池を作成し、電池評価を実施した。電池評価の結果、寿命は10000サイクルだった。
【0091】
以上より、電解液又はセパレータに対して重合性基含有化合物であるアクリル酸塩を添加したことで、電極の劣化を抑制できたものと考えられる。
【0092】
[参考例1]
6.7M KOH/飽和ZnO水溶液である電解液にアクリル酸ナトリウム塩を添加して充電状態を模擬し、Ni箔上を観察した。
電解液に対してアクリル酸ナトリウム塩を10%添加すると、Ni箔上に粘性の析出物が観察された(図4)。(株)日立ハイテク製 卓上顕微鏡Miniscope TM3000を用いて観察したところ、Ni箔上に有機物系の堆積物(析出物)が生成していることが分かった(図5)。
堆積物は、HPO水溶液には大部分不溶であった。一方、HCl水溶液にはすべて溶解した。溶解液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分析した結果、図6に示すように、重量平均分子量16万(以上)に対応するピーク、重量平均分子量600に対応するピーク、重量平均分子量94に対応すると思われるピークがそれぞれ観察された。この結果から、図7にモデル反応として示したようなアクリル酸塩の酸化重合と亜鉛の架橋により、正極に保護被膜が形成されたことが示唆された。
【0093】
[比較参考例1]
電解液に対してアクリル酸ナトリウム塩を添加しなかった以外は、参考例1と同様に実験をおこなった。Ni箔上に析出物(堆積物)は観察されなかった(図8図9)。
【0094】
[比較参考例2]
電解液に対してアクリル酸ナトリウム塩を添加する代わりに、同質量のプロピオン酸を添加し、それ以外は、参考例1と同様に実験をおこなった。Ni箔上に析出物(堆積物)は観察されなかった。
【0095】
[比較参考例3]
電解液に対してアクリル酸ナトリウム塩を添加する代わりに、同質量のポリアクリル酸ナトリウム塩を添加し、それ以外は、参考例1と同様に実験をおこなった。Ni箔上に析出物(堆積物)は観察されなかった。
【0096】
以上より、電解液に対して重合性基含有化合物であるアクリル酸塩を添加したことで、Ni箔上に、その重合物であるポリアクリル酸の被膜が形成されたものと考えられる。上述した実施例・比較例の結果も考慮すると、この重合体被膜は、二次電池において、電極の劣化を防止できると考えられる。Ni箔に限らず、例えば正極であれば、電池反応で重合体被膜が形成され得るし、重合体被膜を形成した正極であれば同様の効果が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9