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特開2024-121349増幅回路、電力増幅回路、および、通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121349
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】増幅回路、電力増幅回路、および、通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/72 20060101AFI20240830BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20240830BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240830BHJP
   H03F 3/21 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
H03F3/72
H03F1/02
H03F3/68
H03F3/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028398
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田部井 慎
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AA51
5J500AC36
5J500AC57
5J500AC81
5J500AC85
5J500AF10
5J500AF18
5J500AH19
5J500AH24
5J500AH25
5J500AH39
5J500AK04
5J500AK12
5J500AM08
5J500AM17
5J500AS14
5J500AT01
5J500LV08
5J500WU08
(57)【要約】
【課題】リーク電流による電力消費を抑止する。
【解決手段】増幅回路は、第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETと、電源と基準電位との電位差を分圧し、第2FETのゲートバイアスを生成する第1分圧抵抗回路と、電源と第1分圧抵抗回路との接続をオンオフする第1スイッチ素子と、電源と基準電位との電位差を分圧し、第2FETのゲートバイアスを生成する第2分圧抵抗回路および第3分圧抵抗回路と、電源と第3分圧抵抗回路との接続をオンオフする第2スイッチ素子とを含む。第1FETおよび第2FETは、隣り合うドレインとソースとが接続され、第2分圧抵抗回路の各抵抗値は第1分圧抵抗回路の各抵抗値より大きく、第3分圧抵抗回路の各抵抗値は第2分圧抵抗回路の各抵抗値より小さく、第2分圧抵抗回路と第3分圧抵抗回路との分圧比が同じである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅すべき信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、
前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETと、
前記第2FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、
電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第1分圧抵抗回路と、
前記第1分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第1分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第1スイッチ素子と、
前記電源と前記基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第2分圧抵抗回路と、
電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第3分圧抵抗回路と、
前記第3分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第3分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第2スイッチ素子と、
を含み、
前記第1FETおよび前記第2FETは、隣り合うドレインとソースとが接続されており、
前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第1分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より大きく、
前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より小さく、
前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比と、前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比とが同じである
増幅回路。
【請求項2】
増幅動作を行う状態から、増幅動作を行わないスタンバイ状態に移行する際、前記第1スイッチ素子をオフ状態にして前記第1分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に切り離すとともに、前記第2スイッチ素子をオン状態にして前記第3分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に接続し、
前記スタンバイ状態に移行した後、さらに所定時間経過後に前記第2スイッチ素子をオフ状態にして前記第3分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に切り離す
請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記第2分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第3スイッチ素子をさらに含み、
前記第3スイッチ素子を介して、前記第2分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第3スイッチ素子は、
前記第1スイッチ素子がオン状態になる場合に、オフ状態になり、かつ、
前記第1スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になる
請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記第1分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第4スイッチ素子と、
前記第3分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第5スイッチ素子と、
をさらに含み、
前記第4スイッチ素子を介して、前記第1分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第5スイッチ素子を介して、前記第3分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第4スイッチ素子は、
前記第1スイッチ素子がオン状態になる場合に、オン状態になり、かつ、
前記第1スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になり、
前記第5スイッチ素子は、
前記第2スイッチ素子がオン状態になる場合に、オン状態になり、かつ、
前記第2スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になる
請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項5】
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗に並列に接続される第1ダイオードをさらに含み、
前記第1ダイオードのアノードは、前記抵抗の前記電源側に接続され、
前記第1ダイオードのカソードは、前記抵抗の前記基準電位側に接続される、
請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項6】
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗のうちの、前記基準電位側に最も近い抵抗には、前記第1ダイオードが接続されない、
請求項5に記載の増幅回路。
【請求項7】
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗に並列に接続される第2ダイオードをさらに含み、
前記第2ダイオードのアノードは、前記抵抗の前記基準電位側に接続され、
前記第2ダイオードのカソードは、前記抵抗の前記電源側に接続される、
請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項8】
前記第1スイッチ素子は、前記第1FETおよび前記第2FETによる増幅動作が行われない時にオフ状態になる、
請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項9】
前記電源の電圧値は変動する、請求項1または請求項2に記載の増幅回路。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む、電力増幅回路。
【請求項11】
前記パワー段増幅回路はバイポーラトランジスタによって構成される請求項10に記載の電力増幅回路。
【請求項12】
請求項11に記載の電力増幅回路を複数含み、複数の前記電力増幅回路は共通の電源によって供給される電圧によって択一的に増幅動作を行う通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路、電力増幅回路、および、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅素子であるトランジスタを縦積みに接続した増幅回路が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の増幅回路においては、電源と基準電位との間に、複数段のトランジスタを設けている。また、複数段のトランジスタのうち、接地電位に最も近いトランジスタのベースに、増幅すべき信号が入力されている。そして、複数段のトランジスタのうち、電源に最も近いトランジスタと電源との間に負荷が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5420768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数種類の周波数帯を利用する通信装置は、各周波数帯に対応する増幅回路を有することがある。例えば、高周波数帯(ハイバンド)に対応する増幅回路と、中周波数帯(ミッドバンド)に対応する増幅回路とを、移動通信装置に設けることがある。それらの増幅回路の動作タイミングは互いに異なる。それらの増幅回路が共通の電源供給ラインに接続されている場合、増幅回路が信号増幅を行っていない時(すなわち、スタンバイ状態の時)においても、電源電圧が印加され続ける。このように印加される電源電圧によってリーク電流が発生することがある。このリーク電流によって、電力が無駄に消費されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、リーク電流による電力消費を抑止できる増幅回路、電力増幅回路、および、通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のある態様による増幅回路は、増幅すべき信号が入力される入力端子と、前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETと、前記第2FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第1分圧抵抗回路と、前記第1分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第1分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第1スイッチ素子と、前記電源と前記基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第2分圧抵抗回路と、電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第3分圧抵抗回路と、前記第3分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第3分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第2スイッチ素子と、を含み、前記第1FETおよび前記第2FETは、隣り合うドレインとソースとが接続されており、前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第1分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より大きく、前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より小さく、前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比と、前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比とが同じである。
【0007】
本開示のある態様による電力増幅回路は、上記の増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む。
【0008】
本開示のある態様による通信装置は、上記の電力増幅回路を複数含み、複数の前記電力増幅回路は共通の電源によって供給される電圧によって択一的に増幅動作を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、リーク電流による電力消費を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、増幅回路を含む通信装置の構成例を示す図である。
図2図2は、比較例による増幅回路を示す回路図である。
図3図3は、第1実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図4図4は、図3中のスイッチの構成例を示す図である。
図5図5は、図3中の各スイッチへの制御信号の変化の例を示す図である。
図6図6は、増幅回路が増幅動作を行う動作状態からスタンバイ状態に移行する場合のシミュレーション結果の例を示す図である。
図7図7は、所定時間だけハイレベルになる信号の例を示す図である。
図8図8は、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図10図10は、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図11図11は、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図13図13は、図3に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図14図14は、図3に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図15図15は、図3に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図16図16は、第2実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図17図17は、16のダイオードを接続していない場合のシミュレーション結果を示す図である。
図18図18は、図16のようにダイオードを接続した場合の動作を示す図である。
図19図19は、第3実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図20図20は、第4実施形態による増幅回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
(通信装置)
最初に、増幅回路を含む通信装置について説明する。図1は、増幅回路を含む通信装置の構成例を示す図である。図1において、通信装置1000は、電力増幅回路M1と、電力増幅回路H1と、バンドセレクトスイッチBS1、BS2と、フィルタSF1~SF5と、アンテナスイッチAS1、AS2と、アンテナANT1、ANT2と、電源制御部400と、ベースバンドIC(Integrated Circuit)500と、を備える。
【0013】
電力増幅回路M1、電力増幅回路H1は、それぞれ、PA(Power Amplifier)モジュールであり、電力増幅回路としての機能を有する。電力増幅回路M1および電力増幅回路H1は、一方が増幅動作を行っている時、他方は増幅動作を行わないスタンバイ状態になる。つまり、電力増幅回路M1および電力増幅回路H1は、択一的に動作状態になり、動作状態でない場合はスタンバイ状態になる。電力増幅回路M1および電力増幅回路H1のうちの増幅動作状態である方は、例えば、高出力動作モード(High Power Mode:HPM)、中出力動作モード(Middle Power Mode:MPM、低出力動作モード(Low Power Mode:LPM)のいずれかのモードで動作する。
【0014】
電力増幅回路M1は、増幅回路101および201と、制御回路301と、を有する。増幅回路101は、前段すなわちドライバ段の増幅回路である。増幅回路201は、後段すなわちパワー段の増幅回路である。パワー段の増幅回路201は、例えば、バイポーラトランジスタによって構成される。制御回路301は、増幅回路101および201を制御する制御信号を出力する回路である。例えば、制御回路301は、ゲートバイアス制御信号ssw1を増幅回路101に入力する。制御回路301は、バイアス電流を増幅回路201に入力する。増幅回路101および制御回路301は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板801によって実現される。増幅回路201は、例えば、GaAs基板901によって実現される。
【0015】
電力増幅回路H1は、増幅回路102および202と、制御回路302と、を有する。増幅回路102は、前段すなわちドライバ段の増幅回路である。増幅回路202は、後段すなわちパワー段の増幅回路である。パワー段の増幅回路202は、例えば、バイポーラトランジスタによって構成される。制御回路302は、増幅回路102および202を制御する制御信号を出力する回路である。例えば、制御回路302は、ゲートバイアス制御信号ssw2を増幅回路102に入力する。制御回路302は、バイアス電流を増幅回路202に入力する。本例において、増幅回路102および制御回路302は、例えば、SOI基板802によって実現される。増幅回路202は、例えば、GaAs基板902によって実現される。
【0016】
バンドセレクトスイッチBS1は、バンドセレクト制御信号SS1によって周波数帯を選択するスイッチである。バンドセレクトスイッチBS2は、バンドセレクト制御信号SS2によって周波数帯を選択するスイッチである。
【0017】
フィルタSF1~SF5は、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタである。フィルタSF1およびSF2は、バンドセレクトスイッチBS1の出力から必要な周波数帯の信号を取り出す。フィルタSF3~SF5は、バンドセレクトスイッチBS2の出力から必要な周波数帯の信号を取り出す。
【0018】
アンテナスイッチAS1は、バンドセレクト制御信号SS1によってフィルタSF1の出力またはSF2の出力を選択する。アンテナスイッチAS2は、バンドセレクト制御信号SS2によってフィルタSF3の出力、フィルタSF4の出力またはフィルタSF5の出力を選択する。アンテナANT1は、アンテナスイッチAS1によって選択される信号を電磁波として放出する。アンテナANT2は、アンテナスイッチAS2によって選択される信号を電磁波として放出する。
【0019】
電源制御部400は、電源Vddを出力する電源制御モジュールである。電源Vddは、電力増幅回路M1および電力増幅回路H1に入力される。電源制御部400は、例えば、直流電圧レベルを変換するDC-DC(Direct Current-Direct Current)コンバータを含む。
【0020】
ベースバンドIC500は、電力増幅回路M1、電力増幅回路H1に、RF信号を送信する。また、ベースバンドIC500は、出力すべき周波数帯に応じて、通信装置1000内の各部に制御信号CS1、CS2、バンドセレクト制御信号SS1、SS2を送る。ベースバンドIC500は、バンドセレクトスイッチBS1、BS2、アンテナスイッチAS1、AS2に制御信号を送る。
【0021】
(動作)
ベースバンドIC500は、所望の経路に信号が通過するように、通信装置1000の各部を制御し、RF信号を送信する。電力増幅回路M1および電力増幅回路H1のうちの増幅動作状態である方に、RF信号が入力される。例えば、電力増幅回路H1が増幅動作状態である場合に、電力増幅回路H1にRF信号RF2が入力される。電力増幅回路H1は、増幅回路102、202によって、RF信号RF2について増幅動作を行う。増幅された信号は、バンドセレクトスイッチBS2、フィルタSF3~SF5、アンテナスイッチAS2を介して、アンテナANT2から出力される。
【0022】
また、電力増幅回路M1が増幅動作状態である場合に、電力増幅回路M1にRF信号RF1が入力される。電力増幅回路M1は、増幅回路101、201によって、RF信号RF1について増幅動作を行う。増幅された信号は、バンドセレクトスイッチBS1、フィルタSF1またはSF2、アンテナスイッチAS1を介して、アンテナANT1から出力される。
【0023】
電源制御部400が出力する電源Vddの電圧値は、動作状態になっている、電力増幅回路M1または電力増幅回路H1の出力電力に応じて制御される。このため、電源Vddの電圧値は、変動する。例えば、平均電力トラッキング(average power tracking:APT)や、包絡線トラッキング(envelope tracking:ET)を行う場合に、電源Vddの電圧値が変動する。
【0024】
制御回路301は、増幅回路101および201を制御する制御信号を出力する回路である。本例では、電力増幅回路M1がスタンバイ状態であり、電力増幅回路H1が動作状態とする。スタンバイ状態である電力増幅回路M1にはRF信号RF1は入力されない。電力増幅回路M1と電力増幅回路H1とは同じ構成および機能を有する。このため、以下は、電力増幅回路M1について主に説明し、電力増幅回路H1についての説明は適宜省略する。
【0025】
以下、実施形態の理解を容易にするために、比較例について先に説明する。
【0026】
(比較例)
図2は、比較例による増幅回路100を示す回路図である。増幅回路100は、図1中のドライバ段の増幅回路101または102に相当する。図2において、本例の増幅回路100は、複数の電界効果トランジスタ、すなわちFET(Field Effect Transistor、以下、FETと呼ぶ)を含む。FET11、12、13、14、15と、抵抗21、22、23、24、25と、抵抗31、32、33、34、35と、キャパシタ41、42、43、44、45と、FET16と、を含む。
【0027】
FET11、12、13、14、15は、基準電位と電源Vddとの間に設けられる。FET11、12、13、14、15は、隣り合うドレインとソースとが接続されることにより、縦積み接続される。すなわち、FET11のドレインが基準電位に接続され、FET11のソースがFET12のドレインに接続される。FET12のソースは、FET13のドレインに接続される。FET13のソースは、FET14のドレインに接続される。FET14のソースは、FET15のドレインに接続される。FET15のソースは、チョークコイルLを介して電源Vddに接続される。本稿において、FET11を第1FETと、FET12を第2FETと、FET13を第3FETと、FET14を第4FETと、FET15を第5FETと、それぞれ呼ぶことがある。基準電位は、例えば、接地電位である。以降の説明においても同様である。
【0028】
電源Vddは可変電源であり、その電圧値は固定値ではなく、変動する。チョークコイルLとFET15との間には整合回路MNを介して出力端子RFoutが接続される。出力端子RFoutには、負荷RLが接続される。なお、FET15のドレインからみると、負荷RLに、チョークコイルLおよび整合回路MNを含めた部分が、負荷インピーダンスとしてみえる。出力端子RFoutは、チョークコイルLを介して電源Vddに接続される。出力端子RFoutは、第2FETであるFET12と負荷RLとの間に設けられている。
【0029】
抵抗31およびキャパシタ41は、FET11に対応して設けられる。FET11のゲートには、抵抗31の一端、キャパシタ41の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ41の他端は、入力端子RFinが接続される。入力端子RFinには、増幅すべき信号が入力される。
【0030】
抵抗32およびキャパシタ42は、FET12に対応して設けられる。FET12のゲートには、抵抗32の一端、キャパシタ42の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ42の他端は、基準電位に接続される。
【0031】
抵抗33およびキャパシタ43は、FET13に対応して設けられる。FET13のゲートには、抵抗33の一端、キャパシタ43の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ43の他端は、基準電位に接続される。
【0032】
抵抗34およびキャパシタ44は、FET14に対応して設けられる。FET14のゲートには、抵抗34の一端、キャパシタ44の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ44の他端は、基準電位に接続される。
【0033】
抵抗35およびキャパシタ45は、FET15に対応して設けられる。FET15のゲートには、抵抗35の一端、キャパシタ45の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ45の他端は、基準電位に接続される。
【0034】
FET16は、そのドレインとゲートとが接続され、いわゆるダイオード接続になっている。FET16は、抵抗21と基準電位との間に、設けられる。
【0035】
抵抗31、32、33、34、35の抵抗値は、例えば、数[kΩ]である。また、キャパシタ41、42、43、44、45の各容量値は、例えば、数十[pF]から数[pF]である。
【0036】
抵抗21、22、23、24、25は、電源Vddと基準電位との間に直列に接続された、ラダー抵抗である。抵抗21、22、23、24、25は、分圧抵抗回路20となる。分圧抵抗回路20は、電源Vddと基準電位との電位差を分圧し、FET12からFET15の各ゲートに与えるバイアスを生成する。各抵抗21、22、23、24、25を、同じラダー抵抗によって実現することにより、抵抗同士のペア性のズレなどによる各段のゲートバイアスの逆転などを防ぐことができる。ここで、「同じラダー抵抗」とは、製造プロセスや材料が同じであるラダー抵抗を指す。
【0037】
抵抗21の一端は、FET16のドレインおよびゲートに接続される。抵抗21の一端は、FET16によるダイオードを介して基準電位に接続される。FET16は、分圧抵抗回路20の基準電位側に接続されている。このため、FET16は、分圧抵抗回路20と基準電位との間に、設けられる。
【0038】
分圧抵抗回路20において、抵抗21と抵抗22とは直列に接続される。抵抗21と抵抗22との接続点は、抵抗32の他端に接続される。抵抗21と抵抗22との接続点の電圧は、バイアスvg2としてFET12のゲートに与えられる。抵抗22と抵抗23とは直列に接続される。抵抗22と抵抗23との接続点は、抵抗33の他端に接続される。抵抗22と抵抗23との接続点の電圧は、バイアスvg3としてFET13のゲートに与えられる。抵抗23と抵抗24とは直列に接続される。抵抗23と抵抗24との接続点は、抵抗34の他端に接続される。抵抗23と抵抗24との接続点の電圧は、バイアスvg4としてFET14のゲートに与えられる。抵抗24と抵抗25とは直列に接続される。抵抗24と抵抗25との接続点は、抵抗35の他端に接続される。抵抗24と抵抗25との接続点の電圧は、バイアスvg5としてFET15のゲートに与えられる。
【0039】
また、図2において、本例の増幅回路100は、FET17と、定電流源60と、を含む。定電流源60は、一定電流を出力する。定電流源60の出力側には、FET17が接続される。FET17は、そのドレインとゲートとが接続され、いわゆるダイオード接続になっている。FET17には、抵抗31の他端が接続される。FET17は、第1FET11とともにカレントミラー回路を形成するレプリカ(replica)トランジスタである。FET1およびFET17によるカレントミラー回路によって、定電流源60から出力される一定電流に比例した電流がFET1のドレイン-ソース間に流れる。
【0040】
(比較例の動作)
図2に示す増幅回路100において、FET12からFET15の各ゲートには、分圧抵抗回路20の抵抗分圧によって生成されるバイアス(すなわち、ゲートバイアス)が与えられる。増幅回路100は、入力端子RFinに入力される高周波信号を増幅する。増幅回路100は、増幅した信号を出力端子RFoutから出力する。
【0041】
ここで、図1に示す複数の電力増幅回路M1および電力増幅回路H1のうちの1つが増幅動作を行っていて、他の電力増幅回路が増幅動作を行っていない場合がある。複数の電力増幅回路M1および電力増幅回路H1が電源Vddを共用するため、増幅動作を行っていない電力増幅回路にも電源Vddが供給される。
【0042】
図2に示す増幅回路100が増幅動作を行っていない場合、増幅回路100はスタンバイ状態になる。スタンバイ状態になっている場合においても、増幅回路100に電源Vddが供給される。このため、スタンバイ状態になっている場合においても、矢印Y1のように、分圧抵抗回路20にリーク電流が流れる。すなわち、電源Vddから分圧抵抗回路20を通ってFET16に向かってリーク電流が流れる。また、矢印Y2のように、電源VddからチョークコイルLを通り、FET15からFET11に向かってリーク電流が流れる。
【0043】
つまり、増幅回路100が、動作タイミングの異なる他の増幅回路と共通の電源供給ラインに接続されていた場合、増幅回路100が増幅動作をしていない場合(すなわち、スタンバイ状態の時)にも電源Vddの電圧が増幅回路100に印加されることとなる。このとき、この当該電源Vddによりリーク電流が発生することがある。スタンバイ状態の時の増幅回路については、電源Vddによるリーク電流を少なく抑えたいという課題がある。
【0044】
(第1実施形態)
次に、実施形態について説明する。
【0045】
(構成)
図3は、第1実施形態による増幅回路100aを示す回路図である。増幅回路100aは、図1中のドライバ段の増幅回路101または102に相当する。図3において、増幅回路100aは、図2を参照して説明した増幅回路100に、分圧抵抗回路80、スイッチswa1と、スイッチswa2と、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aと、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bと、スイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cと、を追加した構成である。本稿では、スイッチswa1を第1スイッチ素子、スイッチswa2を第2スイッチ素子、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bを第3スイッチ素子、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aを第4スイッチ素子、スイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cを第5スイッチ素子、と呼ぶことがある。また、本稿では、分圧抵抗回路20を第1分圧抵抗回路、分圧抵抗回路80を第2分圧抵抗回路、分圧抵抗回路70を第3分圧抵抗回路、と呼ぶことがある。
【0046】
第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aは、分圧抵抗回路20と、FET12からFET15との間に設けられる。分圧抵抗回路20は、スイッチsw2a、sw3a、sw4a、sw5aを介して、FET12からFET15へ、バイアスを供給する。
【0047】
第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bは、分圧抵抗回路80と、FET12からFET15との間に設けられる。分圧抵抗回路80は、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bを介して、FET12からFET15へ、バイアスを供給する。
【0048】
第5スイッチ素子であるスイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cは、分圧抵抗回路70とFET12との間に設けられる。分圧抵抗回路70は、スイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cを介して、FET12からFET15へ、バイアスを供給する。
【0049】
第2分圧抵抗回路である分圧抵抗回路80は、電源Vddと基準電位との間に設けられる。分圧抵抗回路80は、抵抗81、82、83、84および85を含む。分圧抵抗回路80は、電源Vddと基準電位との電位差を分圧し、FET12からFET15のゲートに与えるバイアスを生成する。
【0050】
第3分圧抵抗回路である分圧抵抗回路70は、スイッチswa2と基準電位との間に設けられる。分圧抵抗回路70は、スイッチswa2を介して電源Vddに接続される。分圧抵抗回路70は、抵抗71、72、73、74および75を含む。分圧抵抗回路70は、スイッチswa2がオン状態である場合に、電源Vddと基準電位との電位差を分圧し、FET12からFET15のゲートに与えるバイアスを生成する。
【0051】
分圧抵抗回路80に含まれる各抵抗81、82、83、84、85の抵抗値は、分圧抵抗回路20に含まれる各抵抗21、22、23、24、25の抵抗値より大きい。分圧抵抗回路70に含まれる各抵抗71、72、73、74、75の抵抗値は、分圧抵抗回路80に含まれる各抵抗81、82、83、84、85の抵抗値より小さい。例えば、分圧抵抗回路20において、抵抗21は15[kΩ]、抵抗22は12[kΩ]、抵抗23、抵抗24および抵抗25は10[kΩ]、である。また、例えば、分圧抵抗回路80において、抵抗81から抵抗85は、すべて1[MΩ]である。本例では、分圧抵抗回路70の各抵抗の抵抗値はすべて10[kΩ]である。分圧抵抗回路70の各抵抗の分圧比は、分圧抵抗回路80の各抵抗の分圧比と同じである。分圧比が同じとは、分圧抵抗回路70と分圧抵抗回路80との分圧比同士が一致している場合をいう。分圧抵抗回路70と分圧抵抗回路80との分圧比同士が一致しているとは、分圧抵抗回路70と分圧抵抗回路80との分圧比同士が完全一致している態様に加え、分圧抵抗回路70と電源Vddとの電気的接続のオンオフによって、FET12からFET15のゲートに与えるバイアスに影響を与えない範囲で、分圧比同士に差がある態様を含む。
【0052】
スイッチswa1は、分圧抵抗回路20と電源Vddとの間に設けられる。スイッチswa1は、電源Vddと分圧抵抗回路20との電気的接続をオンオフするためのスイッチ素子である。スイッチswa1は、増幅回路100aによる増幅動作が行われる時にオン状態になる。また、スイッチswa1は、増幅回路100aによる増幅動作が行われない時にオフ状態になる。つまり、スイッチswa1は、FET11からFET15による増幅動作が行われる時にオン状態になる。また、スイッチswa1は、FET11からFET15による増幅動作が行われない時(すなわち、スタンバイ状態の時)にオフ状態になる。
【0053】
スイッチswa1、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aは、同時にオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw11によってオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw11がハイレベル(High)の時にオン状態、制御信号ssw11がローレベル(Low)の時にオフ状態になる。以下、スイッチswa1、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aを、スイッチ群SG1と呼ぶことがある。制御信号ssw11は、制御回路301から出力されるゲートバイアス制御信号ssw1(図1参照)に含まれる。制御信号ssw11は、ベースバンドIC500(図1を参照)から送られてきた制御信号をもとにPAモジュール内の制御回路で生成される。
【0054】
スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bは、同時にオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw12によってオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw12がハイレベル(High)の時にオン状態、制御信号ssw12がローレベル(Low)の時にオフ状態になる。以下、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bを、スイッチ群SG2と呼ぶことがある。制御信号ssw12は、制御回路301から出力されるゲートバイアス制御信号ssw1(図1参照)に含まれる。制御信号ssw12は、ベースバンドIC500(図1を参照)から送られてきた制御信号をもとにPAモジュール内の制御回路で生成される。
【0055】
スイッチswa2、スイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cは、同時にオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw13によってオン状態またはオフ状態になる。これらの各スイッチは、制御信号ssw13がハイレベル(High)の時にオン状態、制御信号ssw13がローレベル(Low)の時にオフ状態になる。以下、スイッチswa2、スイッチsw2c、sw3c、sw4cおよびsw5cを、スイッチ群SG3と呼ぶことがある。制御信号ssw13は、制御回路301から出力されるゲートバイアス制御信号ssw1(図1参照)に含まれる。制御信号ssw13は、ベースバンドIC500(図1を参照)から送られてきた制御信号をもとにPAモジュール内の制御回路で生成される。
【0056】
スイッチ群SG1とスイッチ群SG2とは、択一的にオンまたはオフになる。すなわち、スイッチ群SG1がオン状態である場合、スイッチ群SG2はオフ状態である。スイッチ群SG1がオフ状態である場合、スイッチ群SG2はオン状態である。このように、スイッチ群SG1とスイッチ群SG2とは、独立してオンオフする。スイッチ群SG1は、増幅動作を行う動作状態の時にオン状態になり、スタンバイ状態の時にオフ状態になる。スイッチ群SG2は、増幅動作を行う動作状態の時にオフ状態になり、スタンバイ状態の時にオン状態になる。スイッチ群SG3は、増幅動作を行う動作状態から、スタンバイ状態に切り替わった後、短時間(例えば、数百ns~数μs程度)だけオン状態になり、他のタイミングではオフ状態になる。
【0057】
第3スイッチ素子sw2b~sw5bは、第1スイッチ素子swa1がオン状態になる場合に、オフ状態になる。第3スイッチ素子sw2b~sw5bは、第1スイッチ素子swa1がオフ状態になる場合に、オン状態になる。
【0058】
第4スイッチ素子sw2a~sw5aは、第1スイッチ素子swa1がオン状態になる場合に、オン状態になる。第4スイッチ素子sw2a~sw5aは、第1スイッチ素子swa1がオフ状態になる場合に、オフ状態になる。
【0059】
第5スイッチ素子sw2c~sw5cは、第2スイッチ素子swa2がオン状態になる場合に、オン状態になる。第5スイッチ素子sw2c~sw5cは、第2スイッチ素子swa2がオフ状態になる場合に、オン状態になる。
【0060】
したがって、第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオン状態である場合、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bはオフ状態である。第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオフ状態である場合、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bはオン状態である。
【0061】
第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aと、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bとは、択一的にオンまたはオフになる。すなわち、第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオン状態である場合、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bはオフ状態である。第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオフ状態である場合、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bはオン状態である。このように、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aと、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bとは、独立してオンオフする。
【0062】
スイッチ群SG1において、スイッチswa1と、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aとは、連動してオンオフする。つまり、スイッチswa1と、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aとは、同時に、オン状態またはオフ状態になる。すなわち、スイッチswa1がオン状態である場合、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aはオン状態である。スイッチswa1がオフ状態である場合、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aはオフ状態である。要するに、第1スイッチ素子であるスイッチswa1は、第2スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオン状態になる場合に、オン状態になる。また、スイッチswa1は、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aがオフ状態になる場合に、オフ状態になる。さらに、第4スイッチ素子であるスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aは、第3スイッチ素子であるスイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bがオン状態になる場合に、オフ状態になる。また、スイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aは、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bがオフ状態になる場合に、オン状態になる。
【0063】
(スイッチの構成例)
図4は、図3中のスイッチの構成例を示す図である。図4に示すスイッチswは、図3中の各スイッチの構成例を示す。図4において、スイッチswは、N型MOSトランジスタTr1と、P型MOSトランジスタTr2と、インバータ(NOT回路)N3と、端子T1およびT2とを含む。インバータN3は、制御信号Sを反転させる。
【0064】
N型MOSトランジスタTr1とP型MOSトランジスタTr2とは、ソース同士が接続され、ドレイン同士が接続される。N型MOSトランジスタTr1のゲート、および、P型MOSトランジスタTr2のゲートには、インバータN3によって互いに反転した信号が印加される。したがって、N型MOSトランジスタTr1およびP型MOSトランジスタTr2は、同時にオン状態になり、同時にオフ状態になる。このため、スイッチswは、制御信号Sに基づき、端子T1と端子T2との間に信号を通過させるオン状態、または、端子T1と端子T2との間に信号を通過させないオフ状態になる。したがって、スイッチswによって、端子T1と端子T2との間の電気的接続をオンオフすることができる。以降の各実施形態において用いる各スイッチについても、図4と同様の構成とする。
【0065】
(動作)
図3に戻り、増幅回路100aによって増幅動作を行う場合、スイッチswa1をオン状態にする。これにより、FET12からFET15の各ゲートには、分圧抵抗回路20の抵抗分圧によって生成されるバイアス(すなわち、ゲートバイアス)が与えられる。増幅回路100は、入力端子RFinに入力される高周波信号を増幅する。増幅回路100aは、増幅した信号を出力端子RFoutから出力する。
【0066】
図3に示す増幅回路100aによって増幅動作を行わないスタンバイ状態である時、スイッチswa1をオフ状態にする。これにより、電源Vddによる電圧は、分圧抵抗回路20に印加されない。しかしながら、耐圧対策のために、増幅回路100aにおいてバイアスを印加しておく必要がある。そこで、最低限のリーク電流となるように、大きな抵抗値の抵抗による分圧抵抗回路80によってバイアスを生成する。
【0067】
(動作)
図5は、図3中の各スイッチへの制御信号の変化の例を示す図である。図5において、横軸は時間の経過を示す。図5は、図3中の制御信号ssw11、ssw12、ssw13の変化のタイミングと、増幅回路の状態を示す。図5において、制御信号ssw11は、スイッチ群SG1の制御信号である。時刻t0において、制御信号ssw11がハイレベルの時、スイッチ群SG1に含まれる各スイッチがオン状態になり、増幅回路100aは、増幅動作を行う動作状態になる。この時、制御信号ssw12はローレベルであり、スイッチ群SG2に含まれる各スイッチはオフ状態である。また、制御信号ssw13はローレベルであり、スイッチ群SG3に含まれる各スイッチはオフ状態である。
【0068】
次に、増幅回路100aが増幅動作を行う動作状態から、増幅動作を行わないスタンバイ状態に移行する際、以下の動作になる。すなわち、時刻t1において、制御信号ssw11がローレベル、制御信号ssw12がハイレベルになる。スイッチ群SG1に含まれる各スイッチはオフ状態になり、スイッチ群SG2に含まれる各スイッチはオン状態になる。これにより、増幅回路100aはスタンバイ状態に移行する。
【0069】
また、時刻t1から時刻t2までの短い時間だけ、制御信号ssw13をハイレベルにして第1スイッチ素子であるスイッチswa1をオフ状態にして分圧抵抗回路20と電源Vddとを電気的に切り離す。制御信号ssw13がハイレベルになることにより、スイッチ群SG3に含まれる第2スイッチ素子swa2などの各スイッチがオン状態になる。これにより、時刻t1から時刻t2までの短い時間だけ、分圧抵抗回路70と電源Vddとを電気的に接続する。
【0070】
時刻t1から時刻t2までの短い時間の後、すなわち所定時間経過後の時刻t2の後、制御信号ssw13がローレベルになる。これにより、第2スイッチ素子swa2をオフ状態にして分圧抵抗回路70と電源Vddとを電気的に切り離す。つまり、増幅回路100aがスタンバイ状態に移行した時刻t1から、さらに所定時間経過後の時刻t2にスイッチ群SG3に含まれる第2スイッチ素子swa2などの各スイッチがオフ状態になる。これにより、分圧抵抗回路70と電源Vddとを電気的に切り離す。なお、時刻t1から時刻t2までの所定時間は、例えば、数百ns~数μs程度である。
【0071】
時刻t2から時刻t3までは、制御信号ssw11、ssw12、およびssw13に変化がないため、各スイッチの状態が維持される。このため、増幅回路100aはスタンバイ状態である。
【0072】
その後、時刻t3において、制御信号ssw11がハイレベルになると、スイッチ群SG1に含まれる各スイッチがオン状態になり、増幅回路100aは、増幅動作を行う動作状態になる。この時、制御信号ssw12はローレベルであり、スイッチ群SG2に含まれる各スイッチはオフ状態である。また、制御信号ssw13はローレベルであり、スイッチ群SG3に含まれる各スイッチはオフ状態である。
【0073】
図6は、増幅回路が増幅動作を行う動作状態からスタンバイ状態に移行する場合のシミュレーション結果の例を示す図である。図6は、図3中の各バイアスvg1、vg2、vg3、vg4、vg5の変化を示す。図6において、縦軸は電圧[V]を示し、横軸は時間[μsec]を示す。また、図6において、一点鎖線PAenは、増幅回路の動作状態を制御するための信号を示す。本例では、一点鎖線PAenがハイレベルの場合は増幅回路が動作状態になり、一点鎖線PAenがローレベルの場合は増幅回路がスタンバイ状態になるように回路を作成している。
【0074】
図6は、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する場合を示す。図5を参照して説明したように各スイッチを制御した場合、各バイアスvg1、vg2、vg3、vg4、vg5は図6中の実線で示すように変化する。すなわち時刻t1において、所定時間だけ抵抗値の小さい分圧抵抗回路70を接続するため、バイアスvg2、vg3、vg4、vg5は、速やかに低下する。
【0075】
一方、各スイッチを制御しない場合、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、図6中の破線で示すように、バイアスvg2’、vg3’、vg4’、vg5’は徐々に低下する。これは、大きな抵抗値と各FET12~15のゲートのキャパシタ42~45の容量値とに基づく時定数の影響を受けるからである。なお、図6において、バイアスvg1については、上記時定数の影響を受けないため、各スイッチを制御しない場合のバイアスvg1’と同様に変化する。
【0076】
図7は、所定時間だけハイレベルになる信号の例を示す図である。図7において、縦軸は電圧[V]を示し、横軸は時間[μsec]を示す。また、図7において、図6と同様に、一点鎖線PAenは、増幅回路の動作状態を示す。時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、図7に示す信号pdbstは、時刻t1から時刻t2までの所定時間だけハイレベルになる。この所定時間は、上述したように、例えば500nsecである。上述したように、この所定時間だけ、分圧抵抗回路70を接続することにより、バイアスvg2、vg3、vg4、vg5を速やかに低下させることができる。
【0077】
図8から図12は、増幅回路100aが動作状態からスタンバイ状態に移行する際の、各FETのドレイン-ゲート間電圧Vdgのシミュレーション結果を示す図である。図8から図12において、図6と同様に、一点鎖線PAenは、増幅回路の動作状態を示す。時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行する。
【0078】
図8は、FET15のドレイン-ゲート間電圧Vdg5のシミュレーション結果を示す図である。図9は、FET14のドレイン-ゲート間電圧Vdg4のシミュレーション結果を示す図である。図10は、FET13のドレイン-ゲート間電圧Vdg3のシミュレーション結果を示す図である。図11は、FET12のドレイン-ゲート間電圧Vdg2のシミュレーション結果を示す図である。図12は、FET11のドレイン-ゲート間電圧Vdg1のシミュレーション結果を示す図である。
【0079】
図8に示すように、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、FET15のドレイン-ゲート間電圧Vdg5は、図8中の実線で示すように約0.8[V]から0.3[V]程度上昇した後、所定時間後に低下する。その後、ドレイン-ゲート間電圧Vdg5は、緩やかに上昇し、約1.1[V]で安定する。一方、上述した各スイッチの制御を行わない場合、図8中の破線で示すドレイン-ゲート間電圧Vdg5’は0.4[V]程度低下した後、緩やかに上昇する。FET15のドレイン-ゲート間電圧Vdg5、Vdg5’は、ともに未破壊領域A1を超えていない。すなわち、FET15の耐圧を超えない。
【0080】
図9に示すように、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、FET14のドレイン-ゲート間電圧Vdg4は、図9中の実線で示すように約0.7[V]から0.5[V]程度上昇した後、所定時間後に低下する。その後、ドレイン-ゲート間電圧Vdg4は、緩やかに上昇し、約1.2[V]で安定する。一方、上述した各スイッチの制御を行わない場合、図8中の破線で示すドレイン-ゲート間電圧Vdg4’は約0.7[V]から緩やかに上昇する。FET14のドレイン-ゲート間電圧Vdg4、Vdg4’は、ともに未破壊領域A1を超えていない。すなわち、FET14の耐圧を超えない。
【0081】
図10に示すように、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、FET13のドレイン-ゲート間電圧Vdg3は、図10中の実線で示すように約0.7[V]から0.5[V]程度上昇した後、さらに上昇する。ドレイン-ゲート間電圧Vdg3は、未破壊領域A1をわずかに超えるが、その後は未破壊領域A1を超えずに安定する。一方、上述した各スイッチの制御を行わない場合、図10中の破線で示すドレイン-ゲート間電圧Vdg3’は約0.7[V]から上昇するが、未破壊領域A1を超えていない。FET13のドレイン-ゲート間電圧Vdg3、Vdg3’は、ともに未破壊領域A1を超えていない。
【0082】
図11に示すように、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、FET12のドレイン-ゲート間電圧Vdg2は、図11中の実線で示すように約0.5[V]から1.8[V]程度まで上昇し、その後低下する。ドレイン-ゲート間電圧Vdg2は、未破壊領域A1を超えることがあるが、その後は未破壊領域A1を超えずに安定する。一方、上述した各スイッチの制御を行わない場合、図11中の破線で示すドレイン-ゲート間電圧Vdg2’は約0.5[V]から1.6[V]程度まで上昇し、その後低下する。ドレイン-ゲート間電圧Vdg2’は、未破壊領域A1を超えることがあるが、その後は未破壊領域A1を超えずに安定する。
【0083】
図12に示すように、時刻t1において、増幅回路が動作状態からスタンバイ状態に移行すると、FET11のドレイン-ゲート間電圧Vdg1は、図12中の実線で示すように約0.6[V]から1.8[V]程度まで上昇し、その後低下する。ドレイン-ゲート間電圧Vdg2は、未破壊領域A1を超えることがあるが、その後は未破壊領域A1を超えずに安定する。一方、上述した各スイッチの制御を行わない場合、図12中の破線で示すドレイン-ゲート間電圧Vdg1’は約0.6[V]から1.8[V]程度まで上昇し、その後緩やかに低下する。ドレイン-ゲート間電圧Vdg1’は、未破壊領域A1を超える期間が長い。
【0084】
図8から図12の破線で示すように、上述した各スイッチの制御を行わない場合、FET15のドレイン-ゲート間電圧Vdg5や、FET14のドレイン-ゲート間電圧Vdg4が低くなり、その分FET11のドレイン-ゲート間電圧Vdg1の電位差が大きくなってしまう。図8から図12の実線で示すように、上述した各スイッチの制御を行うことにより、FET11~15の各段のドレイン-ゲート間電圧Vdgが均等になり、ドレイン-ゲート間電圧Vdgが安定した後はどの段も未破壊領域A1を超えていない。すなわち、FET11~15の各段において、FETの耐圧を超えない。
【0085】
図13図14および図15は、図3に示す増幅回路100aの動作例を示す図である。図13は、ドレイン-ゲート間の電位差のシミュレーション結果を示す図である。図13は、増幅回路100aが増幅動作を行っていないスタンバイ状態におけるシミュレーション結果を示す。
【0086】
図13において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧Vdgの値[V]である。図13に示すように、電源Vddの電圧値が1[V]から上昇すると、その変化にしたがって、各バイアスvg1~vg5に対応する電圧Vdg1~Vdg4の値も変化する。電圧Vdg1~Vdg4については、いずれも未破壊領域A1を超えることはない。なお、未破壊領域A1は、その領域内での動作であれば、FETが破壊に至らない領域である。
【0087】
図14は、ドレイン-ソース間電位差のシミュレーション結果を示す図である。図14は、増幅回路100aが増幅動作を行っていないスタンバイモードにおけるシミュレーション結果を示す。
【0088】
図14において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ソース間の電圧Vdsの値[V]である。図14に示すように、電源Vddの電圧値が1[V]から上昇すると、その変化にしたがって、各バイアスvg1~vg5に対応する電圧Vds1~Vds5の値も変化する。電圧Vds1~Vdsについては、いずれも未破壊領域A1を超えることはない。
【0089】
図15は、リーク電流のシミュレーション結果を示す図である。図15において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はリーク電流の値[μA]である。図15において、電流L1は、増幅回路100aの増幅動作時のリーク電流である。また、リーク電流L2は、スタンバイモードの時に第1分圧抵抗回路20を切り離し、第2分圧抵抗回路80を接続した場合のリーク電流である。すなわち、スイッチswa1をオフ状態とし、それに連動してスイッチsw2a、sw3a、sw4aおよびsw5aをオフ状態とし、スイッチsw2b、sw3b、sw4bおよびsw5bをオン状態とする。これにより、第1分圧抵抗回路20の各抵抗より抵抗値の大きい抵抗値の抵抗からなる第2分圧抵抗回路80を接続する。抵抗値の大きい第2分圧抵抗回路80を接続することにより、矢印YJ1のように、リーク電流L2の電流値を低下させることができる。
【0090】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態による増幅回路100aによれば、スタンバイモードの時に高い抵抗値による分圧抵抗回路80に切り替えることで、直流的には耐圧を超えないようにバイアスを制御しつつリーク電流も抑えることができる。電源Vddの電圧値が変動する場合において、直流的には耐圧を超えないようにバイアスを制御しつつリーク電流も抑えることができる。リーク電流を抑えることにより、電力が無駄に消費されることを抑止できる。特に、バッテリを電源とする通信装置においては、電力の消費を抑えることにより、バッテリの持ちを長くすることができる。
【0091】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。上述したように増幅回路100aによれば、スタンバイモードの時に高い抵抗値による分圧抵抗回路80に切り替えることで、直流的には耐圧を超えないようにバイアスを制御しつつリーク電流を抑えることができる。ただし、電源Vddの電圧変動時に、各FET12~15のゲートに与えるバイアスが追従できずに遅れてしまうことも考えられる。この遅れによって、一時的に耐圧を超えてしまう可能性がある。また、スタンバイモードから動作状態に移行した際に、上記のローパスフィルタの影響で一部のFETについてはゲートへのバイアスが速やかに切り替わらない可能性がある。そこで、第2実施形態では、ダイオードを追加する。
【0092】
(構成)
図16は、第2実施形態による増幅回路100bを示す回路図である。増幅回路100bは、図1中のドライバ段の増幅回路101または102に相当する。図16において、増幅回路100bは、図3を参照して説明した増幅回路100aに、ダイオードを追加した構成である。図16に示すように、第2分圧抵抗回路80の各抵抗に、ダイオードが並列に接続される。すなわち、抵抗82に、並列に、ダイオードD21およびD22が接続される。抵抗83に、並列に、ダイオードD31およびD32が接続される。抵抗84に、並列に、ダイオードD41およびD42が接続される。抵抗85に、並列に、ダイオードD51およびD52が接続される。これらの各ダイオードのアノードは、電源Vdd側に接続される。これらの各ダイオードのカソードは、基準電位側に接続される。これらの各ダイオードは、分圧抵抗回路80に含まれる抵抗に並列に接続される第1ダイオードである。
【0093】
ここで、図16において、各抵抗に並列に接続される第1ダイオードの接続数は2つである。すなわち、直列に2段接続された、ダイオードが各抵抗に並列に接続されている。第1ダイオードについては、段数すなわちダイオードの直列接続数を調整し、閾値電圧(すなわち、順方向電圧VF)の合計値が各FETの耐圧以下になるようにする。言い換えれば、第1ダイオードの接続数は1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0094】
ここで、電源Vddの電圧値を5.5[V]とすると、分圧抵抗回路80の各段の抵抗による電位差は1.1[V]程度である。直列に2段接続されたダイオードの閾値は約1.4[V]である。このため、2段接続されたダイオードは、通常時にはオン状態にならない。これに対し、過渡応答時に電位差が大きくなり、閾値を超えた時には2段接続されたダイオードがオン状態になる。このため、2段接続されたダイオードによって、電位差を制限することができる。
【0095】
すなわち、例えば、電源Vddの電圧が使用動作範囲の最大値の時、分圧抵抗回路80の分圧比を超えた電圧が印加されると、ダイオードがオンする。ダイオードがオンすることにより、通常の動作状態と同様の電位差に速やかに移行させる。なお、上記の各ダイオードの代わりに、ダイオード接続したFETを採用してもよい。
【0096】
ところで、分圧抵抗回路80の各抵抗81~85のうち、基準電位に最も近い抵抗81については、その両端に、大きな電位が印加されることはない。つまり、バイアスvg2を生成するための抵抗81には大きな電位が印加されることはない。このため、抵抗81については、ダイオードが並列接続されていない。こうすることで、各ダイオードがオン状態になった時も、すべてのダイオードを貫通する電流を制限することができる。特に、回路が高温になった場合に、閾値電圧が下がり、ダイオードがオン状態のままになることがある。このような場合においても、ダイオードを貫通する電流を抑制できる。したがって、大きなリーク電流が流れることを抑制できる。
【0097】
(動作)
図16に示すように、スタンバイモードの時に電源Vddの電圧が変動した場合の対策として、分圧抵抗回路20の各抵抗の抵抗値より大きな抵抗値を有する抵抗からなる分圧抵抗回路80を設け、さらに各抵抗に並列にダイオードを接続している。このため、ダイオードがオンすることにより、通常の動作状態と同様の電位差に速やかに移行させる。
【0098】
(効果)
増幅動作を行わないスタンバイモードの時に、リーク電流を抑えつつ、電源Vddの電圧の変動に追従してFETのゲートへのバイアスを制御でき、耐圧を超えない動作を実現できる。リーク電流を抑えることにより、電力が無駄に消費されることを抑止できる。特に、バッテリを電源とする通信装置においては、電力の消費を抑えることにより、バッテリの持ちを長くすることができる。また、ダイオードを追加するだけでリーク電流を抑制できるので、リーク電流を抑制するために複雑な制御を行う必要はない。
【0099】
ここで、図17は、図16のダイオードを接続していない場合のシミュレーション結果を示す図である。図17において、横軸は時間[μs]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧Vdgの値[V]である。図17において、電圧Vdg2はFET2のドレイン-ゲート間の電圧、電圧Vdg3はFET3のドレイン-ゲート間の電圧、電圧Vdg4はFET4のドレイン-ゲート間の電圧、電圧Vdg5はFET5のドレイン-ゲート間の電圧、である。図17において、電源Vddの電圧値が1.0[V]から5.5[V]に瞬時に変化すると、ドレイン-ゲート間電圧のピーク値は2.5[V]程度であり、未破壊領域A1を超える時間は6[μs]程度である。
【0100】
一方、図18は、図16のようにダイオードを接続した場合の動作を示す図である。図18において、横軸は時間[μs]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧Vdgの値[V]である。図18において、10[nsec]の間に、電源Vddの電圧値が1.0[V]から5.5[V]に変化すると、ドレイン-ゲート間電圧のピーク値は1.9[V]程度であり、について、未破壊領域A1を超える時間は4[μs]程度である。このように、
ドレイン-ゲート間電圧のピーク値を抑え、かつ、未破壊領域A1を超える時間を短くすることができる。
【0101】
つまり、分圧抵抗回路80の各抵抗に並列にダイオードを入れることによって、ゲートバイアスの上昇の遅延を改善できる。例えば、電源Vddが5.5[V]の時に抵抗85の両端の電位差が直流的には1.1[V]になるように設計した場合を考える。この場合に、電源Vddが上昇した時にゲートバイアスvg5の立ち上りが遅延して一時的に抵抗85の両端の電位差が1.8[V]になる可能性がある。ここで、ダイオードが並列に接続されていると、抵抗85の両端の電位差がダイオードの直列接続数分のVFよりも大きくなった時はダイオードがオンして電流を供給する。このため、抵抗85の両端の電位差がダイオードの直列接続数分のVF程度に抑えることができる。
【0102】
ダイオードの直列接続数は、例えば、以下の関係になるように決定する。すなわち、電源Vddが最大である時の各抵抗両端の電位差<ダイオードの直列接続数×VF<FETの最大定格、である。なお、以上は、急激に電源Vddが上昇した場合の対策を行う方向にダイオードの向きを設定したが、後述するように、ダイオードの向きを逆にしてもよい。ダイオードの向きを逆にすることにより、電源Vddが急激に下降した場合には逆方向のダイオードを入れることで同じ原理で対策を行うことができる。
【0103】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
【0104】
(構成)
図19は、第3実施形態による増幅回路100cを示す回路図である。増幅回路100cは、図1中のドライバ段の増幅回路101または102に相当する。図19において、増幅回路100cは、図16を参照して説明した増幅回路100bに、ダイオードをさらに追加し、ダイオードを双方向に接続した構成である。図19に示すように、第2分圧抵抗回路80の各抵抗に、さらに、ダイオードが並列に接続される。すなわち、抵抗82に、並列に、ダイオードD23およびD24が接続される。抵抗83に、並列に、ダイオードD33およびD34が接続される。抵抗84に、並列に、ダイオードD43およびD44が接続される。抵抗85に、並列に、ダイオードD53およびD54が接続される。これらの各ダイオードのアノードは、基準電位側に接続される。これらの各ダイオードのカソードは、電源Vdd側に接続される。これらの各ダイオードは、分圧抵抗回路80に含まれる抵抗に並列に接続される第2ダイオードである。
【0105】
(動作)
第2分圧抵抗回路80の各抵抗に並列に、さらに第2ダイオードを接続することにより、電源Vddの電圧値が変動した場合において、ダイオードの閾値を超える電圧が印加された場合は、ダイオードがオン状態になるので、通常の動作状態と同様の電位差に速やかに移行させる。このため、高い電圧値から低い電圧値に移行する時、すなわち立ち下げ時においても、時定数による遅延を抑制できる。
【0106】
(効果)
第2実施形態の場合と同様に、リーク電流を抑えることにより、電力が無駄に消費されることを抑止できる。特に、バッテリを電源とする通信装置においては、電力の消費を抑えることにより、バッテリの持ちを長くすることができる。また、第2分圧抵抗回路80の各抵抗に並列に、さらに第2ダイオードを接続することにより、電源Vddが高い電圧値から低い電圧値に移行する時、すなわち立ち下げ時においても、時定数による遅延を抑制できる。
【0107】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。
【0108】
図20は、第4実施形態による増幅回路100dを示す回路図である。増幅回路100dは、図1中のドライバ段の増幅回路101または102に相当する。図20において、増幅回路100dは、増幅回路100bの各ダイオードの向きを逆にした構成である。
【0109】
図20に示すように、第2分圧抵抗回路80の各抵抗に、ダイオードが並列に接続される。すなわち、抵抗82に、並列に、ダイオードD23およびD24が接続される。抵抗83に、並列に、ダイオードD33およびD34が接続される。抵抗84に、並列に、ダイオードD43およびD44が接続される。抵抗85に、並列に、ダイオードD53およびD54が接続される。これらの各ダイオードのアノードは、基準電位側に接続される。これらの各ダイオードのカソードは、電源Vdd側に接続される。これらの各ダイオードは、分圧抵抗回路80に含まれる抵抗に並列に接続される第2ダイオードである。図20に示す増幅回路100dは、図19を参照して説明した増幅回路100cのダイオードの一部を削除した構成であるということもできる。
【0110】
(動作)
電源Vddの電圧値が変動した場合において、ダイオードの閾値を超える電圧が印加された場合は、ダイオードがオン状態になるので、通常の動作状態と同様の電位差に速やかに移行させる。このため、高い電圧値から低い電圧値に移行する時、すなわち立ち下げ時においても、時定数による遅延を抑制できる。
【0111】
(効果)
第2実施形態の場合と同様に、リーク電流を抑えることにより、電力が無駄に消費されることを抑止できる。特に、バッテリを電源とする通信装置においては、電力の消費を抑えることにより、バッテリの持ちを長くすることができる。また、第2分圧抵抗回路80の各抵抗に並列に、第2ダイオードを接続することにより、電源Vddが高い電圧値から低い電圧値に移行する時、すなわち立ち下げ時においても、時定数による遅延を抑制できる。
【0112】
(電力増幅回路、通信装置)
図1を参照して説明したように、上記の増幅回路100a~100cのいずれかをドライバ段増幅回路とし、このドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに設けて電力増幅回路としてもよい。こうすることにより、通信装置などに用いて好適な電力増幅回路を実現できる。
【0113】
図1を参照して説明したように、ドライバ段増幅回路およびパワー段増幅回路からなる電力増幅回路を通信装置に複数設けておき、それらを択一的に動作させてもよい。図1に示す通信装置1000においては、2つの電力増幅回路M1およびH1を通信装置に設けている。上述したように、電力増幅回路M1およびH1は、それぞれ別のPAモジュールとして形成される。そして、それら電力増幅回路M1およびH1は共通の電源Vddによって供給される電圧によって択一的に増幅動作を行う。このように構成すれば、リーク電流による電力消費を抑止できる通信装置を実現できる。
【0114】
請求項の記載に関して、本開示は以下の態様をとりうる。
<1>
増幅すべき信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、
前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETと、
前記第2FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、
電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第1分圧抵抗回路と、
前記第1分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第1分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第1スイッチ素子と、
前記電源と前記基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第2分圧抵抗回路と、
電源と基準電位との電位差を分圧し、前記第2FETのゲートに与えるバイアスを生成する第3分圧抵抗回路と、
前記第3分圧抵抗回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記電源と前記第3分圧抵抗回路との電気的接続をオンオフするための第2スイッチ素子と、
を含み、
前記第1FETおよび前記第2FETは、隣り合うドレインとソースとが接続されており、
前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第1分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より大きく、
前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値は、前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の抵抗値より小さく、
前記第2分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比と、前記第3分圧抵抗回路に含まれる各抵抗の分圧比とが同じである
増幅回路。
<2>
増幅動作を行う状態から、増幅動作を行わないスタンバイ状態に移行する際、前記第1スイッチ素子をオフ状態にして前記第1分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に切り離すとともに、前記第2スイッチ素子をオン状態にして前記第3分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に接続し、
前記スタンバイ状態に移行した後、さらに所定時間経過後に前記第2スイッチ素子をオフ状態にして前記第3分圧抵抗回路と前記電源とを電気的に切り離す
<1>に記載の増幅回路。
<3>
前記第2分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第3スイッチ素子をさらに含み、
前記第3スイッチ素子を介して、前記第2分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第3スイッチ素子は、
前記第1スイッチ素子がオン状態になる場合に、オフ状態になり、かつ、
前記第1スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になる
<1>または<2>に記載の増幅回路。
<4>
前記第1分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第4スイッチ素子と、
前記第3分圧抵抗回路と前記第2FETとの間に設けられた第5スイッチ素子と、
をさらに含み、
前記第4スイッチ素子を介して、前記第1分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第5スイッチ素子を介して、前記第3分圧抵抗回路から前記第2FETへ、バイアスを供給し、
前記第4スイッチ素子は、
前記第1スイッチ素子がオン状態になる場合に、オン状態になり、かつ、
前記第1スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になり、
前記第5スイッチ素子は、
前記第2スイッチ素子がオン状態になる場合に、オン状態になり、かつ、
前記第2スイッチ素子がオフ状態になる場合に、オン状態になる
<1>から<3>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<5>
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗に並列に接続される第1ダイオードをさらに含み、
前記第1ダイオードのアノードは、前記抵抗の前記電源側に接続され、
前記第1ダイオードのカソードは、前記抵抗の前記基準電位側に接続される、
<1>から<4>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<6>
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗のうちの、前記基準電位側に最も近い抵抗には、前記第1ダイオードが接続されない、
<5>に記載の増幅回路。
<7>
前記第2分圧抵抗回路に含まれる抵抗に並列に接続される第2ダイオードをさらに含み、
前記第2ダイオードのアノードは、前記抵抗の前記基準電位側に接続され、
前記第2ダイオードのカソードは、前記抵抗の前記電源側に接続される、
<1>から<6>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<8>
前記第1スイッチ素子は、前記第1FETおよび前記第2FETによる増幅動作が行われない時にオフ状態になる、
<1>から<7>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<9>
前記電源の電圧値は変動する、<1>から<8>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<10>
<1>から<9>のいずれか1つに記載の増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む、電力増幅回路。
<11>
前記パワー段増幅回路はバイポーラトランジスタによって構成される<10>に記載の電力増幅回路。
<12>
<11>に記載の電力増幅回路を複数含み、複数の前記電力増幅回路は共通の電源によって供給される電圧によって択一的に増幅動作を行う通信装置。
【符号の説明】
【0115】
11~17 FET
20、70、80 分圧抵抗回路
21~25、31~35、71~75、81~85 抵抗
41~45 キャパシタ
60 定電流源
100、100a、100b、100c、
100d、101、102、201、202 増幅回路
301、302 制御回路
400 電源制御部
500 ベースバンドIC
1000 通信装置
ANT1、ANT2 アンテナ
AS1、AS2 アンテナスイッチ
BS1、BS2 バンドセレクトスイッチ
D21~D24、D31~D34、D41~D44、D51~D54 ダイオード
H1、M1 電力増幅回路
L チョークコイル
MN 整合回路
RFin RF入力端子
RFout RF出力端子
SF1~SF5 フィルタ
SS1、SS2 バンドセレクト制御信号
swa1、swa2、sw2a~sw5a、
sw2b~sw5b、sw2c~sw5c スイッチ
Vdd 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20