(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121351
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】信号生成装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20240830BHJP
H03G 3/30 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61B18/18 100
H03G3/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028401
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓二
【テーマコード(参考)】
4C160
5J100
【Fターム(参考)】
4C160JK03
4C160MM32
5J100JA01
5J100QA01
(57)【要約】
【課題】信号の出力を適切に制御する。
【解決手段】信号生成装置1は、所定の周波数で信号を出力する信号出力部2と、信号出力部2から出力された信号を指定されたゲインで増幅して出力するゲイン制御部3と、ゲイン制御部3から出力された信号を増幅し、所定の信号線である同軸ケーブル240に出力する増幅部4と、同軸ケーブル240に出力される信号に対する出力を上昇させる指示を受け付けた場合に、増幅部4から出力される信号の出力が増幅部4の飽和領域を超えない範囲になるようにゲイン制御部3のゲインを設定する制御部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で信号を出力する信号出力部と、
前記信号出力部から出力された前記信号を指定されたゲインで増幅して出力するゲイン制御部と、
前記ゲイン制御部から出力された前記信号を増幅し、所定の信号線に出力する増幅部と、
前記所定の信号線に出力される前記信号に対する出力を上昇させる指示を受け付けた場合に、前記増幅部から出力される前記信号の出力が前記増幅部の飽和領域を超えない範囲になるように前記ゲイン制御部のゲインを設定する制御部と、
を備える、信号生成装置。
【請求項2】
前記所定の信号線は、手術支援装置において手術対象の生体組織に前記信号を出力する電極部に接続されている、
請求項1に記載の、信号生成装置。
【請求項3】
前記手術支援装置に使用する前記所定の信号線は、
Φ2.8mm以下の径の同軸ケーブルである、
請求項2に記載の、信号生成装置。
【請求項4】
前記所定の信号線は、前記手術支援装置が備える軟性の鉗子チャネルに挿通可能である、
請求項2に記載の信号生成装置。
【請求項5】
前記ゲイン制御部から出力された前記信号の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、検出された電圧の強さに基づいて、前記ゲイン制御部のゲインを設定する、
請求項1に記載の、信号生成装置。
【請求項6】
前記制御部は、検出された電圧の強さが電圧に関する閾値より大きい場合に、前記ゲイン制御部に設定されているゲインを低下させる、
請求項5に記載の、信号生成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記増幅部から出力された前記信号の電力と前記制御部の記憶領域に記憶されているゲイン情報とに基づいて、前記ゲイン制御部のゲインを設定する、
請求項1に記載の、信号生成装置。
【請求項8】
前記ゲイン情報は、前記電力の強さと、前記電力の強さに応じて前記ゲイン制御部に設定されるゲインとの関係に基づいて定められている情報である、
請求項7に記載の、信号生成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記増幅部のドレイン-ソース間電圧を絶対最大定格を超えない範囲内で設定する、
請求項1に記載の、信号生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波の一種であるマイクロ波を用いて、人体などの生物組織に外科的処置を行う手術支援装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロ波を出力する手術支援装置は、内視鏡における人体に挿入される軟性部の先端に取り付けられる鉗子などの処置具に用いることが考えられる。マイクロ波を出力する信号線(同軸ケーブル)は、内視鏡の軟性部に挿入するために径を小さくする必要がある。
【0005】
しかしながら、マイクロ波を出力する手術支援装置において、信号線の径が小さい場合に、マイクロ波で高い電力を通すため、信号線が発熱してしまうという問題がある。
【0006】
また、マイクロ波を出力する手術支援装置において、手術の際に使用する他の医療機器に信号が影響を与えないようにするために定められている出力の基準を満たす必要がある。
【0007】
そのため、マイクロ波を出力する手術支援装置に搭載される信号生成装置では、信号の出力を適切に制御することについて、さらなる改善が求められている。
【0008】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、信号の出力を適切に制御することができる信号生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る信号生成装置は、所定の周波数で信号を出力する信号出力部と、前記信号出力部から出力された前記信号を指定されたゲインで増幅して出力するゲイン制御部と、前記ゲイン制御部から出力された前記信号を増幅し、所定の信号線に出力する増幅部と、前記所定の信号線に出力される前記信号に対する出力を上昇させる指示を受け付けた場合に、前記増幅部から出力される前記信号の出力が前記増幅部の飽和領域を超えない範囲になるように前記ゲイン制御部のゲインを設定する制御部と、を備える。
【0010】
本発明に係る信号生成装置によれば、信号の出力を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る信号生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る信号生成装置を備える手術支援装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る信号生成装置が備える増幅部における信号の入力及び出力それぞれの特性を模式的に示す図である。
【
図4】増幅部におけるリニア(直線増幅領域)領域の出力の波形の一例を示す模式図である。
【
図5】増幅部における飽和領域の出力の波形の一例を示す模式図である。
【
図6】増幅部におけるリニア領域のスペクトラムの一例を示す模式図である。
【
図7】増幅部における飽和領域のスペクトラムの一例を示す模式図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る信号生成装置の制御部における処理のフローチャートを示す模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る信号生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る信号生成装置の制御部における処理のフローチャートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る信号生成装置について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る信号生成装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、信号生成装置1は、信号出力部2と、ゲイン制御部3と、増幅部4と、制御部5と、電圧検出部6と、プリアンプ7と、入出力インタフェース8と、を備える。信号生成装置1の詳細は後述する。
【0014】
図2は、信号生成装置1を備える手術支援装置100の一例を模式的に示す図である。
図2に示すように、本実施の形態において、例えば、手術支援装置100は、内視鏡用手術支援装置としてのマイクロ波メスである。信号生成装置1は、例えば、手術支援装置100において人体に挿入される内視鏡の軟性部200の先端部210に取り付けられる電極部220に所定の周波数の信号の一例であるマイクロ波を出力する。電極部220は、増幅部4から同軸ケーブル240を介して入力された信号(マイクロ波)を外部に照射するための部品である。電極部220は、金属部材によって構成されている。電極部220は、例えば、信号生成装置1を手術支援装置100に適用した場合に、メスや鉗子として機能する。手術支援装置100の操作者(医師)は、電極部220から出力されるマイクロ波を用いて、メスや鉗子等の電極部220から手術対象の生体組織(患部)に照射することにより、生体組織を切り取ったり、焼灼させたりするなどの外科的処置を行う。
【0015】
手術支援装置100は、操作ハンドル230にRFケーブル260を介して信号生成装置1が接続されている。手術支援装置100は、信号生成装置1と電極部220との間に設けられている内視鏡の軟性部200に、マイクロ波を電極部220に出力するために電極部220と信号生成装置1とを接続する所定の信号線としての同軸ケーブル240(
図1参照)が収容されている。同軸ケーブル240は、手術支援装置100が備える軟性部200の内部に設けられている空間(鉗子チャネル)に挿通可能とするために、例えば、Φ2.8mm以下の径である。
【0016】
次に、
図1を参照して信号生成装置1の詳細な説明を行う。
【0017】
信号出力部2は、所定の周波数で信号を出力する。信号出力部2は、高周波、例えば、2.45GHzの周波数帯のマイクロ波を生成して出力する。信号出力部2は、例えば、VCO(voltage controlled oscillator)21とPLL(Phase Locked Loop)22などにより構成される。
【0018】
ゲイン制御部3は、信号出力部2から出力された信号を指定されたゲインで増幅して出力する。ゲイン制御部3は、増幅部4に出力される高調波ノイズを制限するために、信号出力部2から出力される信号の利得(ゲイン)を制御して増幅する。ゲイン制御部3は、減衰可能なゲインコントロールアンプを用いることができる。ゲイン制御部3は、具体的に、例えば、1つの増幅器及びステップ減衰器IC、あるいは、2つの増幅器及びステップ増幅器により構成される、ゲイン制御部3として用いられるゲインコントロールアンプには、出力の飽和レベルが大きい(P1dBが大きい)ICを選択するのがよい。
【0019】
なお、ゲイン制御部3は、ゲインコントロールアンプではなく、増幅器とステップアッテネッターとにより構成されていてもよい。
【0020】
プリアンプ7は、ゲイン制御部3から出力された信号を増幅し、増幅部4に出力する。プリアンプ7は、主にゲイン制御部3から出力された信号を固定のゲインで増幅する。信号生成装置1において、プリアンプ7が設けられていなくてもよい。ゲイン制御部3のプリアンプや増幅部4のHPAもP1dBの大きいICまたはFETを選択するのがよい。
【0021】
増幅部4は、プリアンプ7を経たゲイン制御部3から出力された信号を増幅し、同軸ケーブル240に出力する。増幅部4は、例えば、FET(Field Effect Transistor)アンプなどの大電力増幅器(HPA:High Power Amplifier)である。増幅部4は、同軸ケーブル240に接続されている電極部220などの信号の出力部において、増幅部4の飽和領域を超えない(増幅部4からの出力が歪まない)範囲のゲインで出力される。増幅部4のゲインは、後述する制御部5により設定される。
【0022】
電圧検出部6は、例えば、プリアンプ7と増幅部4との間に設けられている。電圧検出部6は、増幅部4に入力する信号の電圧を検出するために、プリアンプ7から出力された信号の電圧を検出する。電圧検出部6は、検出した信号の電圧を制御部5に出力する。なお、電圧検出部6は、増幅部4に入力する信号の電圧を検出することができればよい。このため、電圧検出部6は、プリアンプ7の後段に設けられているものに限定されず、例えば、ゲイン制御部3とプリアンプ7との間に設けられているものであってもよい。
【0023】
入出力インタフェース8は、使用者が信号生成装置1を操作するための入力インタフェース、及び、信号生成装置1における動作条件(信号の周波数、出力の強さ)や測定結果などの各種情報を出力するための出力インタフェースである。
【0024】
入出力インタフェース8が有する入力インタフェースとしては、各種のボタンやタッチパネル等を例示することができる。例えば、ユーザが入力インタフェースを操作することにより、信号生成装置1を使用するための各種条件等を信号生成装置1に設定するとともに、信号の出力及び停止を信号生成装置1に指示することができる。なお、入力インタフェースは、上述したボタンやタッチパネルに限定されず、使用者が信号生成装置1を操作するための入力を受け付けることができる機能を有していればよい。
【0025】
入出力インタフェース8が有する出力インタフェースとしては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELを備えた表示装置、または、スピーカなどの音声出力装置である。
【0026】
制御部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の各種メモリ、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、入出力I/F回路、及びクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU(Micro Control Unit)などのコンピュータ)である。制御部5は、メモリとして、例えば、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置を有している。
【0027】
制御部5は、ゲイン設定部51が、同軸ケーブル240に出力される信号に対する出力を上昇させる指示を受け付けた場合に、増幅部4から出力される信号が増幅部4の飽和領域を超えない(増幅部4からの出力が歪まない)範囲で出力することができるように、ゲイン制御部3のゲインを設定する。なお、ゲイン制御部3とプリアンプ7との間に電圧検出部6が設けられている場合に、制御部5はゲイン制御部3から出力された信号に基づいて、増幅部4から出力される信号が増幅部4の飽和領域を超えない範囲で出力されるように、ゲイン制御部3のゲインを設定する。
【0028】
制御部5は、
図1に示すように、ゲイン設定部51の他、周波数調整部52、スイッチ部53など、信号生成装置1における各種動作機能を実現する機能部を備える。周波数調整部52は、信号出力部2から出力する信号の周波数の変更など、周波数の調整を行う。スイッチ部53は、増幅部4に対する出力のON/OFFスイッチの切り替え制御を行う。制御部5により実現される機能は、上述したものに限定されない。
【0029】
ゲイン設定部51を含む、制御部5において実現される各種機能は、上述した制御部5を構成するMCU内のプロセッサが、メモリに記憶されている信号生成装置1の動作プログラムに従って各種演算を実行するとともに、タイマ及びカウンタ、A/D変換回路及び入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって、実現される。
【0030】
次に、ゲイン設定部51による、ゲイン制御部3のゲイン調整を行う具体的な方法の一例について説明する。
【0031】
図3は、信号生成装置1が備える増幅部4における信号の入力及び出力それぞれの特性を模式的に示す図である。
図3において、横軸が増幅部4に入力する信号の強さ、縦軸が増幅部4から出力される信号の強さを示している。また、
図3において、破線で示す線E1が増幅部4における信号の入力に対する出力の理想的な特性を示し、実線で示す線E2が増幅部4における信号の入力に対する出力の実際の特性を示している。
【0032】
図4は、
図3において符号E1で示す増幅部4におけるリニア(直線増幅領域)領域の出力の波形の一例を示す模式図である。
図5は、
図3において符号E2で示す増幅部4における飽和領域の出力の波形の一例を示す模式図である。
図6は、増幅部4におけるリニア領域E1のスペクトラムの一例を示す模式図である。
図7は、増幅部4における飽和領域E2のスペクトラムの一例を示す模式図である。
【0033】
図3に示すように、増幅部4からの出力は、入力する信号の出力が大きくなることで、リニア領域E1から飽和領域E2に入る。リニア領域E1と飽和領域E2とを比較すると、
図4及び
図5に示すように、増幅部4からの出力は、飽和特性などの波形の非線形性が顕著になる。また、リニア領域E1と飽和領域E2とを比較すると、
図6及び
図7に示すように、増幅部4からの出力は、高次の高調波成分が現れる。
【0034】
電極部220からマイクロ波を出力する手術支援装置において、信号の高調波成分は、不要な輻射ノイズ(EMC:Electromagnetic Compatibility)の要因となる。手術支援装置において、高調波による不要な輻射ノイズが生じることで、MRIやCTスキャン等の他の装置に影響を及ぼすことが考えられる。
【0035】
以上のように説明した手術支援装置100に搭載される信号生成装置1における課題に鑑みて、ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の出力の強さ(電圧)に基づいて、電極部220に接続している増幅部4からの出力が飽和しない範囲で増幅部4の出力を制限する。ゲイン設定部51は、具体的には、検出された電圧の強さが電圧に関する閾値より大きい場合に、ゲイン制御部3に設定されているゲインを低下させる。ゲイン制御部3に設定されているゲインを低下させるか否かの判定を行うために、ゲイン設定部51には、増幅部4に入力する信号の電圧が入力される。増幅部4に入力する信号の電圧は、電圧検出部6により検出される。
【0036】
ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の電圧が電圧の閾値に達しているか否かを判定する。電圧の閾値は飽和領域を超えない(増幅部4からの出力が歪まない)範囲であらかじめ定められる。電圧の閾値は、具体的には、増幅部4に搭載されるFETのドレイン-ソース間電圧の絶対最大定格値を越えない範囲であり、かつ、不具合の発生しない範囲などの所定の上限の範囲内で定めることができる。電圧の閾値は、電極部220と人体の患部との接触に伴ってインピーダンスが不整合した場合におけるマイクロ波の反射を考慮して、信号の電圧がFETのドレイン-ソース間電圧の絶対最大定格を超えないように設定される。電圧の閾値は、例えば、信号生成装置1における増幅部4に入力する信号の電圧と増幅部4から出力される信号が飽和しているか否かとの関係をあらかじめ評価することにより、特定することができる。信号生成装置1において、増幅部4に搭載されるFETのドレイン-ソース間電圧を高く設定することにより、同軸ケーブル240から同じ電力(W)の信号を出力する場合であっても、信号の電流を低減することができる。このため、信号生成装置1を備える手術支援装置100では、同軸ケーブル240における熱による損失を低減することができる。その結果、信号生成装置1を備える手術支援装置100によれば、内視鏡のマイクロ波メスなどの電極部220への出力線に細い(径の小さい)同軸ケーブル240を使用することができる。
【0037】
制御部5において、例えば、上述したフラッシュメモリやEEPROMなどのメモリに設けられている電圧閾値データテーブル56に、電圧に関する閾値が格納されている。
【0038】
ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の電圧が、上記閾値に達している場合に、ゲイン制御部3のゲインをそれ以上の値に上げることを停止する。ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の電圧が、上記閾値に達していない場合に、上昇させたゲインの値をゲイン制御部3に設定する。
【0039】
なお、信号生成装置1において、増幅部4の出力が線形増幅の限界レベルを超える直前に達した場合に、制御部5は、入出力インタフェース8を通じてその旨を使用者に通知する。入出力インタフェース8から使用者への通知の方法は、ディスプレイへの表示や音声による通知など、適宜な方法を取ることができる。また、信号生成装置1において、ゲイン制御部3に設定可能なゲインの最大値まで増幅させることを許可する操作が使用者から行われた場合には、ゲイン制御部3のゲインの最大値まで増幅させてもよい。ただし、ゲイン制御部3に設定可能なゲインの最大値は、マイクロ波メスなどの手術支援装置100において、不要輻射規格を超えない範囲で信号が出力されるようにゲインの設定を行う必要がある。
【0040】
図8は、信号生成装置1の制御部5における処理のフローチャートである。
図8を参照して、以上説明した信号生成装置1における処理を説明する。
【0041】
信号生成装置1において、ゲイン設定部51は、入出力インタフェース8を介して信号生成装置1から出力される信号の出力の設定を受け付ける(ステップS101)。ゲイン設定部51は、入出力インタフェース8を介して信号の出力を上昇させる指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS102)。出力を上昇させる指示が受付されていない場合(S102:NO)、ゲイン設定部51は、S102の処理を繰り返す。
【0042】
出力を上昇させる指示が受付されている場合(S102:YES)、ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の電圧を、電圧検出部6から取得する(ステップS103)。
【0043】
制御部5において、ゲイン設定部51は、電圧検出部6から取得した増幅部4に入力する信号の電圧と、電圧閾値データテーブル56に格納されている電圧の閾値との比較を行う(ステップS104)。ゲイン設定部51は、増幅部4に入力する信号の電圧が、電圧の閾値に到達しているか否かを判定する(ステップS105)。
【0044】
閾値に到達していない場合(S105:NO)、ゲイン設定部51は、信号の出力を上昇させることが可能であると判断して、ゲイン制御部3に対してゲインの上昇を設定する(ステップS106)。S106の後、ゲイン設定部51は、S102の処理に戻る。
【0045】
閾値に到達している場合(S105:YES)、ゲイン設定部51は、信号の出力の上昇を停止すると判断する(ステップS107)。ゲイン設定部51は、入出力インタフェース8を介して使用者に対して信号の出力の上昇を停止する旨を通知する(ステップS108)。
【0046】
ゲイン設定部51は、入出力インタフェース8を介して使用者からさらなる出力を上昇させる指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS109)。出力を上昇させる指示が受付されていない場合(S109:NO)、ゲイン設定部51は、処理を終了する。
【0047】
使用者からさらなる出力を上昇させる指示が受付されている場合(S109:YES)、ゲイン設定部51は、最大出力まで上昇することを許可して、増幅部4に設定するゲインを上昇させる(ステップS110)。S110の処理の後、ゲイン設定部51は、処理を終了する。
【0048】
以上のように、信号生成装置1において、ゲイン設定部51が、増幅部4に入力する信号の出力の強さと電圧の閾値とに基づいて、増幅部4からの出力を制限することで、増幅部4からの信号の出力が飽和領域を超えないように制御することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号生成装置1Bについて説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係る信号生成装置1と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る信号生成装置1Bの構成を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、第2の実施の形態に係る信号生成装置1Bは、先に説明した信号生成装置1と比較すると以下の点が相違する。信号生成装置1Bは、信号生成装置1においてプリアンプ7と増幅部4との間に設けられていた電圧検出部6を備えていない。また、信号生成装置1Bにおいて、制御部5により実現されるゲイン設定部51Bは、増幅部4から出力された信号の電力、及び、ゲイン情報データテーブル55に格納されているゲイン情報に基づいて、ゲイン制御部3のゲインを設定する。以下、信号生成装置1Bについて説明する。
【0051】
制御部5において、記憶領域、例えば、フラッシュメモリあるいはEEPROMには、ゲイン情報が、ゲイン情報データテーブル55に記憶されている。ゲイン情報は、信号生成装置1Bにおける、ゲイン制御部3のゲインの設定値と増幅部4からの信号の出力のレベルとの関係を示す。ゲイン情報は、電力の強さと、電力の強さに応じてゲイン制御部3に設定されるゲインとの関係に基づいて定められている。ゲイン情報は、例えば、増幅部4からの信号の出力のレベルが飽和領域に到達しないようにゲイン制御部3に設定される設定値(以下、「ゲイン値」という。)を含む。制御部5は、ゲイン値と入出力インタフェース8を介して受け付けた指示とに基づいてゲイン制御部3のゲインを設定する。
【0052】
図10は、第2の実施の形態に係る信号生成装置1Bの制御部5における処理のフローチャートである。
図10を参照して、以上説明した信号生成装置1Bにおける処理を説明する。
【0053】
信号生成装置1Bにおいて、ゲイン設定部51Bは、入出力インタフェース8を介して信号生成装置1から出力される信号の出力の設定を受け付ける(ステップS201)。ゲイン設定部51Bは、入出力インタフェース8を介して信号の出力を上昇させる指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS202)。出力を上昇させる指示が受付されていない場合(S202:NO)、ゲイン設定部51Bは、S202の処理を繰り返す。
【0054】
出力を上昇させる指示が受付されている場合(S202:YES)、ゲイン設定部51Bは、現在のゲイン制御部3に設定されているゲインの設定値をメモリから読み出す(ステップS203)。
【0055】
制御部5において、ゲイン設定部51Bは、現在のゲインの設定値と、ゲイン情報データテーブル55に格納されているゲイン値との比較を行う(ステップS204)。ゲイン設定部51Bは、現在のゲインの設定値が、ゲイン値に到達しているか否かを判定する(ステップS205)。
【0056】
ゲインの設定値がゲイン値に到達していない場合(S205:NO)、ゲイン設定部51Bは、信号の出力を上昇させることが可能であると判断して、ゲイン制御部3に対してゲインの上昇を設定する(ステップS206)。S206の後、ゲイン設定部51Bは、S202の処理に戻る。
【0057】
ゲインの設定値がゲイン値に到達している場合(S205:YES)、ゲイン設定部51Bは、信号の出力の上昇を停止すると判断する(ステップS207)。ゲイン設定部51Bは、入出力インタフェース8を介して使用者に対して信号の出力の上昇を停止する旨を通知する(ステップS208)。
【0058】
ゲイン設定部51Bは、入出力インタフェース8を介して使用者からさらなる出力を上昇させる指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS209)。出力を上昇させる指示が受付されていない場合(S209:NO)、ゲイン設定部51Bは、処理を終了する。
【0059】
使用者からさらなる出力を上昇させる指示が受付されている場合(S209:YES)、ゲイン設定部51Bは、最大出力まで上昇されるように増幅部4に設定するゲインの設定値を上昇させる(ステップS210)。S210の処理の後、ゲイン設定部51Bは、処理を終了する。
【0060】
信号生成装置1Bにおいて、以上のように増幅部4から出力された信号の電力、及び、制御部5の記憶領域に記憶されているゲイン情報に基づいて、ゲイン制御部3のゲインを設定することで、増幅部4からの信号の出力が飽和領域を超えないように制御することができる。また、信号生成装置1Bでは、電圧検出部6を設けることなく、増幅部4からの信号の出力を制御することができる。
【0061】
[実施の形態の作用効果]
以上説明した信号生成装置1,1Bは、所定の周波数で信号を出力する信号出力部2と、信号出力部2から出力された信号を指定されたゲインで増幅して出力するゲイン制御部3と、ゲイン制御部3から出力された信号を増幅し、所定の信号線である同軸ケーブル240に出力する増幅部4とを備える。信号生成装置1,1Bは、同軸ケーブル240に出力される信号に対する出力を上昇させる指示を受け付けた場合に、増幅部4から出力される信号の出力が増幅部4の飽和領域を超えない範囲になるようにゲイン制御部3のゲインを設定する制御部5と、を備える。
【0062】
信号生成装置1,1Bにおいて、同軸ケーブル240は、手術支援装置100において手術対象の生体組織に信号を出力する電極部220に接続されている。
【0063】
信号生成装置1,1Bにおいて、同軸ケーブル240は、Φ2.8mm以下の径である。同軸ケーブル240は、手術支援装置100が備える軟性部200の鉗子チャネルに挿通可能である。
【0064】
以上のような信号生成装置1,1Bによれば、内視鏡に入れることができる手術支援装置100の細い同軸ケーブル240に、大きな電力(30~50W)のマイクロ波(2.45GHz±0.5GHz)を通す際に、同軸ケーブル240の発熱を抑えることができる。具体的には、信号生成装置1,1Bにおいて、FETのドレイン-ソース間電圧を高く設定することにより信号の電流を低減するため、同軸ケーブル240における熱による損失を低減することができる。従って、信号生成装置1,1Bを備える手術支援装置100によれば、電極部220への出力線に径の小さい同軸ケーブル240を使用することができる。
【0065】
また、以上のような信号生成装置1,1Bによれば、ゲイン制御部3のゲインを増幅部4からの出力が歪まないように設定して増幅部4を線形領域で動作させることができる。このため、信号生成装置1,1Bによれば、手術支援装置100から不要な信号が輻射されることを抑制することができる。
【0066】
そのため、信号生成装置1,1Bによれば、マイクロ波を出力する手術支援装置において手術の際に使用する他の医療機器に信号が影響を与えないようにするために定められているので出力の基準を満たすことができる。つまり、信号生成装置1,1Bによれば、例えば、MRIやCTスキャンのような医療用診断装置で人体の臓器や血管を撮影しながら手術支援装置100を使用することができる。
【0067】
信号生成装置1は、ゲイン制御部3から出力された信号の電圧を検出する電圧検出部6を備える。制御部5は、検出された電圧の強さに基づいて、ゲイン制御部3のゲインを設定する。制御部5は、検出された電圧の強さが電圧に関する閾値より大きい場合に、ゲイン制御部3に設定されているゲインを低下させる。
【0068】
以上のような信号生成装置1によれば、ゲイン制御部3のゲインが飽和領域を超えないように設定することができる。
【0069】
信号生成装置1Bにおいて、制御部5は、増幅部4から出力された信号の電力と制御部5の記憶領域であるゲイン情報データテーブル55に記憶されているゲイン情報とに基づいて、前記ゲイン制御部のゲインを設定する。
【0070】
以上のような信号生成装置1Bによれば、増幅部4に入力する信号の電圧を検出することなく、ゲイン制御部3のゲインが飽和領域を超えないように設定することができる。
【0071】
[実施の形態の拡張]
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1,1B…信号生成装置、2…信号出力部、3…ゲイン制御部、4…増幅部、5…制御部、6…電圧検出部、7…プリアンプ、8…入出力インタフェース、51,51B…ゲイン設定部、52…周波数調整部、53…スイッチ部、55…ゲイン情報データテーブル、56…電圧閾値データテーブル、100…手術支援装置、200…軟性部、210…先端部、220…電極部、230…操作ハンドル、240…同軸ケーブル、260…RFケーブル