(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121352
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】信号生成装置および手術支援装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/40 20060101AFI20240830BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20240830BHJP
H03F 3/20 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H03H7/40
A61B18/18 100
H03F3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028402
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓二
【テーマコード(参考)】
4C160
5J500
【Fターム(参考)】
4C160JK02
4C160JK03
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC36
5J500AC75
5J500AC87
5J500AC92
5J500AH02
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH26
5J500AH29
5J500AH30
5J500AH33
5J500AH34
5J500AH39
5J500AK29
5J500AK55
5J500AK66
5J500AK68
5J500AM01
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】信号の反射波を低減する。
【解決手段】信号生成装置100は、信号生成回路1によって生成した信号を増幅回路5によって増幅して第2伝送路16を介して電極部24から出力する。信号生成装置100は、電極部24からの反射波の信号レベルを検波回路9によって検出し、その信号レベルに応じて、第2伝送路16に接続されている整合回路10のインピーダンスが所定の値(例えば、50Ω)に近づくように、整合回路10内の可変インピーダンス回路102の所定の周波数におけるインピーダンスを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を生成する信号生成回路と、
前記信号生成回路から出力された信号を伝送する第1伝送路と、
前記第1伝送路を介して入力された信号を増幅して出力する増幅回路と、
前記増幅回路から出力された信号を伝送する第2伝送路と、
前記第2伝送路に挿入されたアイソレータと、
第1端子、第2端子、および第3端子を有し、前記第2伝送路から前記アイソレータを経由して前記第1端子に入力された進行波を前記第2端子から出力し、前記第2端子に入力された反射波を前記第3端子から出力する方向性結合器と、
電極部と、
前記方向性結合器の前記第2端子と前記電極部とを接続する第3伝送路と、
前記方向性結合器の前記第3端子から出力された反射波の大きさを検出する検波回路と、
前記第2伝送路に接続された受動素子を含み、前記受動素子の値が変更可能な可変インピーダンス回路を含む整合回路と、
前記検波回路によって検出された前記反射波の信号レベルに基づいて、前記整合回路のインピーダンスが所定の値に近づくように、前記可変インピーダンス回路の所定の周波数におけるインピーダンスを制御する制御回路と、を備える
信号生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号生成装置において、
前記整合回路は、前記可変インピーダンス回路を複数有し、
夫々の前記可変インピーダンス回路は、前記受動素子の値として、互いに異なる二つの値に切り替え可能に構成され、
前記制御回路は、前記反射波の信号レベルに応じて、前記整合回路のインピーダンスが前記所定の値に近づくように、複数の前記可変インピーダンス回路の前記受動素子の値を選択的に切り替える
信号生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の信号生成装置において、
前記制御回路は、前記反射波の信号レベルと前記受動素子の値を調整すべき前記可変インピーダンス回路との対応関係を示す対応関係情報を記憶し、
前記制御回路は、前記対応関係情報を参照して、前記検波回路によって検出された前記反射波の信号レベルに対応する前記可変インピーダンス回路を選択し、選択した前記可変インピーダンス回路の前記受動素子の値を調整する
信号生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の信号生成装置において、
前記可変インピーダンス回路は、
リアクタンス成分を有し、一端が前記第2伝送路に接続された第1受動素子と、
リアクタンス成分を有し、前記第1受動素子の他端と第1固定電位との間に接続された第2受動素子と、
リアクタンス成分を有し、一端が前記第1受動素子の他端に接続された第3受動素子と、
制御信号に応じて前記第3受動素子の前記第1固定電位への接続と遮断を切り替えるスイッチ回路と、を含み、
前記制御回路は、前記反射波の信号レベルに応じて前記制御信号を変化させる
信号生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の信号生成装置において、
前記スイッチ回路は、
第1アノード電極と第1カソード電極を有し、前記第1アノード電極が前記第3受動素子の他端に接続され、前記第1カソード電極が前記第1固定電位に接続された第1ダイオードと、
第2アノード電極と第2カソード電極を有し、前記第2カソード電極が前記第1ダイオードの前記第1アノード電極に接続された第2ダイオードと、
第1主電極、第2主電極、および制御電極を有し、前記第1主電極が前記第1固定電位よりも高い第2固定電位に接続され、前記第2主電極が前記第2ダイオードの前記第2アノード電極に接続されるとともに負荷を介して前記第1固定電位に接続され、前記制御電極に閾値電圧よりも小さい電圧が印加されている場合に前記第1主電極と前記第2主電極との間を遮断し、前記制御電極に閾値電圧よりも大きい電圧が印加されている場合に前記第1主電極と前記第2主電極との間に電流経路を形成するトランジスタと、を含み、
前記第1ダイオードは、PINダイオードであって、
前記制御回路は、前記制御電極に前記制御信号を入力する
信号生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の信号生成装置において、
前記スイッチ回路は、
前記トランジスタの前記第2主電極と前記第2ダイオードの前記第2アノード電極との間に接続された抵抗と、
前記第2ダイオードの前記第2アノード電極と前記第1固定電位との間に接続されたキャパシタと、を更に含む
信号生成装置。
【請求項7】
請求項5に記載の信号生成装置において、
前記制御回路は、選択した前記可変インピーダンス回路の前記受動素子の値を変化させる場合に、前記制御信号の電圧を、前記閾値電圧の前後の範囲において時間の経過とともに変化させる
信号生成装置。
【請求項8】
請求項5に記載の信号生成装置において、
前記第1受動素子、前記第2受動素子、および前記第3受動素子はそれぞれ、キャパシタである
信号生成装置。
【請求項9】
請求項5に記載の信号生成装置において、
前記第1受動素子および前記第2受動素子はそれぞれ、キャパシタであり、
前記第3受動素子はインダクタである
信号生成装置。
【請求項10】
請求項5に記載の信号生成装置と、
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1伝送路としての第1同軸ケーブルと、
前記第3伝送路としての第2同軸ケーブルと、を備え、
前記第1筐体には、前記信号生成回路と前記制御回路が収容され、
前記第2筐体には、前記電極部を操作するための操作部と、前記増幅回路と、前記第2伝送路と、前記アイソレータと、前記方向性結合器と、前記検波回路と、前記整合回路と、が収容され、
前記第1同軸ケーブルは、前記第1筐体および前記第2筐体の少なくとも一方に対して挿抜可能である
手術支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の手術支援装置において、
前記第2同軸ケーブルの径は、前記第1同軸ケーブルの径より小さい
手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号生成装置および手術支援装置に関し、例えば、高周波の信号を生成する信号生成装置、および当該信号生成装置によって生成した信号を利用して手術を支援する手術支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人や動物の外科手術を支援する装置として、マイクロ波を利用した手術支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような手術支援装置は、マイクロ波をメスや鉗子等の電極部から手術対象の生体組織に照射することにより、生体組織を切り取ったり、焼灼(蛋白質の熱凝固性によって止血する方法)したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手術支援装置は、マイクロ波を生成して出力する信号生成装置を備えている。信号生成装置は、生成したマイクロ波を増幅回路によって増幅し、同軸ケーブルを介してメスや鉗子等の電極部から出力する。ここで、増幅回路の出力端子から同軸ケーブルを介して電極部に至る伝送路において、インピーダンスが整合されている(例えば、50Ω)。
【0005】
しかしながら、手術中に電極部が手術対象の生体組織に接触したとき、電極部側のインピーダンスが変化する。これにより、増幅回路の出力端子から電極部までの伝送路においてインピーダンスの不整合が生じ、増幅回路から出力されたマイクロ波が電極部において反射する。この反射した信号(反射波)は、同軸ケーブルを介して増幅回路側に伝搬し、増幅回路から出力される信号(進行波)と反射波とが合成される。例えば、反射波が全反射した場合には、進行波の2倍の大きさの反射波が増幅回路の出力端子に入力されてしまい、増幅回路が破壊されるおそれがある。
【0006】
そこで、従来の信号生成装置では、増幅回路の出力側にアイソレータ(抵抗)を設けることにより、電極部からの反射波を熱に変えて、増幅回路が破壊されることを防止していた。しかしながら、単にアイソレータを設けるだけでは、電極部に伝導する実効電力が低下し、生体組織の切断や焼灼が困難になる場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、信号の反射波を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係る信号生成装置は、信号を生成する信号生成回路と、前記信号生成回路から出力された信号を伝送する第1伝送路と、前記第1伝送路を介して入力された信号を増幅して出力する増幅回路と、前記増幅回路から出力された信号を伝送する第2伝送路と、前記第2伝送路に挿入されたアイソレータと、第1端子、第2端子、および第3端子を有し、前記第2伝送路から前記アイソレータを経由して前記第1端子に入力された進行波を前記第2端子から出力し、前記第2端子に入力された反射波を前記第3端子から出力する方向性結合器と、電極部と、前記方向性結合器の前記第2端子と前記電極部とを接続する第3伝送路と、前記方向性結合器の前記第3端子から出力された反射波の大きさを検出する検波回路と、前記第2伝送路に接続された受動素子を含み、前記受動素子の値が変更可能な可変インピーダンス回路を含む整合回路と、前記検波回路によって検出された前記反射波の信号レベルに基づいて、前記整合回路のインピーダンスが所定の値に近づくように前記可変インピーダンス回路の所定の周波数におけるインピーダンスを制御する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、信号の反射波を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る信号生成装置の構成を示す図である。
【
図3A】可変インピーダンス回路の回路構成例を示す図である。
【
図3B】可変インピーダンス回路の別の回路構成例を示す図である。
【
図4】整合回路の具体的な回路構成例を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る信号生成装置を適用した手術支援装置を模式的に示す図である。
【
図6】本実施の形態に係る信号生成装置を適用した手術支援装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
≪実施の形態≫
図1は、本実施の形態に係る信号生成装置の構成を示す図である。
図1に示される信号生成装置100は、信号を生成して出力する装置である。ここで、信号とは、例えば、高周波(RF:Radio Frequency)信号である。本実施の形態では、信号生成装置100が、周波数が300MHzから300GHzの範囲にあるマイクロ波を生成して出力するものとして説明する。信号生成装置100は、例えば、マイクロ波を利用した手術支援装置に適用することができる。
【0013】
図1に示すように、信号生成装置100は、例えば、信号生成回路1、第1伝送路15、増幅回路(HPA)5、第2伝送路16、アイソレータ7、方向性結合器8、検波回路9、整合回路10、制御回路11、第3伝送路17、および電極部24を備えている。
【0014】
信号生成回路1は、信号を生成する回路である。信号生成回路1は、例えば、高周波信号(マイクロ波)を生成する。信号生成回路1は、例えば、電圧制御発振器(VCO:Voltage-Controlled Oscillator)2、位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)3、および増幅回路4を含む。
【0015】
電圧制御発振器2は、後述する制御回路11から供給される制御電圧に応じた周波数を有する信号を生成する回路である。位相同期回路3は、例えば、電圧制御発振器2から出力された信号を一定の周波数に安定化させる。また、位相同期回路3は、例えば、電圧制御発振器2から出力された信号の周波数を逓倍して、所望の周波数の信号を生成して出力する。なお、位相同期回路3は、電圧制御発振器2から出力された信号を、その周波数を変更せずに出力してもよい。例えば、位相同期回路3は、2.45GHzのマイクロ波を生成して出力する。増幅回路4は、位相同期回路3から出力された信号を増幅して出力する。増幅回路4は、例えば、増幅率が変更可能に構成されている。増幅回路4から出力された信号は第1伝送路15に入力される。
【0016】
第1伝送路15は、信号生成回路1(増幅回路4)から出力された信号を伝送する。第1伝送路15は、信号生成回路1(増幅回路4)の出力端子と増幅回路5の入力端子とを接続する。第1伝送路15は、高周波信号(マイクロ波)を低損失で伝送可能な線路であって、例えば、第3伝送路17を構成する同軸ケーブルよりも太い径を有する同軸ケーブルによって実現される。
【0017】
増幅回路5は、第1伝送路15を介して入力された信号(マイクロ波)を増幅して出力する回路である。増幅回路5は、例えば、マイクロ波を増幅可能な大電力増幅回路(HPA:High Power Amplifier)である。増幅回路5の出力端子と第2伝送路16との間にはキャパシタChpが接続されている。キャパシタChpにより、増幅回路5から出力された信号の直流成分が除去され、増幅回路5から出力された信号の交流成分が第2伝送路16に伝送される。
【0018】
第2伝送路16は、増幅回路5から出力された信号を伝送する。第2伝送路16は、増幅回路5の出力端子と方向性結合器8の第1端子81とを接続する。第2伝送路16は、高周波信号(マイクロ波)を低損失で伝送可能な線路であって、例えば、プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)に形成されたマイクロストリップラインによって実現される。
【0019】
アイソレータ7は、第1方向から入力された進行波を出力し、第1方向と反対方向から入力された反射波を減衰させる回路部品である。アイソレータ7は、第2伝送路16に挿入されている。アイソレータ7は、増幅回路5側から第2伝送路16に入力された進行波を方向性結合器8側に伝送し、方向性結合器8側から第2伝送路16に入力された反射波を減衰させる。
【0020】
方向性結合器8は、第1端子81、第2端子82、および第3端子83を有する回路部品である。方向性結合器8は、第2伝送路16からアイソレータ7を経由して第1端子81に入力された進行波を第2端子82から出力し、第2端子82から入力された反射波を第3端子83から出力する。
【0021】
第3伝送路17は、方向性結合器8の第2端子82から出力された信号を伝送する。第3伝送路17は、方向性結合器8の第2端子82と電極部24とを接続する。第3伝送路17は、例えば、高周波信号(マイクロ波)を低損失で伝送可能な線路であって、例えば、同軸ケーブルによって実現される。
【0022】
電極部24は、方向性結合器8の第2端子82から第3伝送路17を介して入力された信号(マイクロ波)を外部に照射するための部品である。電極部24は、金属部材によって構成されている。電極部24は、例えば、信号生成装置100を手術支援装置に適用した場合に、メスや鉗子として機能する。
【0023】
検波回路9は、電極部24側からの反射波を検出する回路である。検波回路9は、方向性結合器8の第3端子83から出力された反射波を検出し、当該反射波の大きさ(強度)に応じた検出信号Srを出力する。例えば、検波回路9は、検出した反射波の大きさに応じた直流電圧を生成し、検出信号Srとして出力する。
【0024】
整合回路10は、増幅回路5と電極部24との間のインピーダンスを整合させるための回路である。整合回路10は、インピーダンスが変更可能な可変インピーダンス回路102を含む。
図2に示す可変インピーダンス回路102は、第2伝送路16に接続されている。なお、整合回路10の詳細については後述する。
【0025】
制御回路11は、信号生成装置100を統括的に制御する回路である。制御回路11は、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラム処理装置である。
【0026】
制御回路11は、例えば、信号生成回路1の出力信号(マイクロ波)を監視し、当該出力信号の周波数が所望の値(例えば、2.45GHz)となるように制御電圧を生成して電圧制御発振器2に与える。また、制御回路11は、検波回路9から出力された検出信号Srに基づいて、整合回路10を制御する。具体的には、制御回路11は、検出信号Srに基づいて電極部24からの反射波の信号レベル(強度)を判定し、その信号レベルに応じて整合回路10のインピーダンスが所定の値(例えば、50Ω)に近づくように、整合回路10の可変インピーダンス回路102(
図2参照)を制御する。換言すれば、制御回路11は、電極部24からの反射波の信号レベルが小さくなるように、整合回路10の可変インピーダンス回路102を制御する。
【0027】
制御回路11と検波回路9および整合回路10との間の通信は、信号線を利用した有線通信であってもよいし、公知の近距離無線通信技術を利用した無線通信であってもよい。本実施の形態では、一例として、制御回路11と検波回路9および整合回路10とが、専用の信号線によって接続されているものとする。
【0028】
次に、整合回路10の構成および整合回路10のインピーダンスの調整方法について説明する。
【0029】
【0030】
上述したように、整合回路10は、インピーダンスが変更可能に構成されている。具体的には、
図2に示すように、整合回路10は、第2伝送路16に接続された受動素子を含み、当該受動素子の値が変更可能な少なくとも一つの可変インピーダンス回路102を有している。制御回路11は、検波回路9によって検出された反射波の信号レベルに基づいて、整合回路10のインピーダンスが所定の値(例えば、50Ω)に近づくように、可変インピーダンス回路102の所定の周波数におけるインピーダンスを制御する。ここで、所定の周波数とは、信号生成装置100によって出力すべき信号(マイクロ波)の周波数であり、本実施の形態では、例えば、2.45GHである。
【0031】
整合回路10は、可変インピーダンス回路102に加えて、受動素子の値が固定された固定インピーダンス回路101を有していてもよい。
【0032】
ここで、受動素子の値とは、抵抗値、キャパシタの容量値、またはインダクタのインダクタンス値を意味する。
【0033】
本実施の形態では、一例として、整合回路10がn個(nは2以上の整数)の可変インピーダンス回路102_1~102_nと固定インピーダンス回路101を有しているものとする。以下の説明において、各可変インピーダンス回路102_1~102_nを区別しない場合には、サフィックスを付さず、単に「可変インピーダンス回路102」と表記する場合がある。
【0034】
固定インピーダンス回路101は、第2伝送路16と固定電位との間に接続されている。例えば、固定インピーダンス回路101は、第2伝送路16とグラウンド電位GNDとの間に接続されている。
図2に示すように、固定インピーダンス回路101は、例えば、抵抗R0とキャパシタC0とを含む。抵抗R0とキャパシタC0は、互いに並列に、第2伝送路16とグラウンド電位GNDとの間に接続されている。なお、固定インピーダンス回路101は受動素子の値が固定であればよく、固定インピーダンス回路101の回路構成および各受動素子の値は、特に限定されない。
【0035】
可変インピーダンス回路102は、第2伝送路16と第1固定電位との間に接続されている。具体的には、可変インピーダンス回路102は、第2伝送路16とグラウンド電位GNDとの間に接続されている。可変インピーダンス回路102は、受動素子を含む。例えば、可変インピーダンス回路102は、受動素子の値が互いに異なる二つの値に切り替え可能に構成されている。すなわち、可変インピーダンス回路102_1~102_nは、制御信号Sc_1~Sc_nによって、第2伝送路16とグラウンド電位GNDとの間のインピーダンスが変更可能に構成されている。
【0036】
なお、以下の説明において、各制御信号Sc_1~Sc_nを区別しない場合には、サフィックスを付さず、単に「制御信号Sc」と表記する場合がある。
【0037】
図3Aは、可変インピーダンス回路102の回路構成例を示す図である。
【0038】
図3Aに示すように、可変インピーダンス回路102は、例えば、リアクタンス成分を有する第1受動素子としてのキャパシタC1、リアクタンス成分を有する第2受動素子としてのキャパシタC2、リアクタンス成分を有する第3受動素子としてのキャパシタC3、およびスイッチ回路103を含む。
【0039】
キャパシタC1およびキャパシタC2は、第2伝送路16と第1固定電位(グラウンド電位GND)との間に直列に接続されている。すなわち、キャパシタC1は、一端が第2伝送路16に接続されている。キャパシタC2は、キャパシタC1の他端と第1固定電位(グラウンド電位)との間に接続されている。
【0040】
キャパシタC1,C2は、固定インピーダンス回路101を構成する抵抗R0およびキャパシタC0と同様に、インピーダンスが固定された整合素子である。例えば、増幅回路5の出力側(第2伝送路16)のインピーダンスと電極部24の入力側のインピーダンスはそれぞれ50Ωに設定されている。すなわち、電極部24が生体組織等に接触していないときに増幅回路5の出力側のインピーダンスが50Ωとなるように、抵抗R0およびキャパシタC0~C2の値が設定されている。
【0041】
キャパシタC3は、一端がキャパシタC1の他端に接続されている。
【0042】
図3Aおよび
図3Bに示すスイッチ回路103は、
図1に示す制御信号Scに応じて、第3受動素子の他端の第1固定電位への接続と遮断を切り替える回路である。具体的には、スイッチ回路103は、第3受動素子としてのキャパシタC3の他端と第1固定電位(グラウンド電位GND)との接続を遮断することにより、
図3Aおよび
図3Bに示す可変インピーダンス回路102のインピーダンスを高い状態にし、キャパシタC3の他端をグラウンド電位GNDに接続することにより、可変インピーダンス回路102のインピーダンスを低い状態にする。
【0043】
例えば、スイッチ回路103は、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、およびドランジスタQ1を含む。
【0044】
第1ダイオードD1は、第1アノード電極と第1カソード電極を有する。第1ダイオードD1において、第1アノード電極がキャパシタC3の他端に接続され、第1カソード電極がグラウンド電位GNDに接続されている。第1ダイオードD1は、例えば、PIN(p-intrinsic-n)ダイオードである。
【0045】
第2ダイオードD2は、第2アノード電極と第2カソード電極を有する。第2ダイオードD2において、第2カソード電極が第1ダイオードD1の第1アノード電極に接続されている。第2ダイオードD2は、PINダイオードであってもよいし、PN接合ダイオードであってもよい。
【0046】
トランジスタQ1は、可変インピーダンス回路102の受動素子の値を切り替えるためのスイッチとして機能する。トランジスタQ1として、例えば、バイポーラトランジスタ、電解効果トランジスタ(例えば、MOSFET等)を用いることができる。本実施の形態では、一例として、トランジスタQ1がNPNトランジスタであるとする。
【0047】
トランジスタQ1は、第1主電極としてのコレクタ電極と、第2主電極としてのエミッタ電極と、制御電極としてのベース電極とを有する。トランジスタQ1において、コレクタ電極は、グラウンド電位(第1固定電位)より高い第2固定電位としての電源電圧VDDに接続されている。エミッタ電極は、第2ダイオードD2の第2アノード電極に接続されるとともに負荷(例えば、抵抗R2)を介してグラウンド電位に接続されている。
【0048】
トランジスタQ1は、ベース電極にトランジスタQ1の閾値電圧より小さい電圧が印加されている場合に、コレクタ電極とエミッタ主電極との間を遮断(オフ)し、ベース電極に閾値電圧より大きい電圧が印加されている場合にコレクタ電極とエミッタ電極との間を導通(オン)させる。より具体的には、トランジスタQ1は、ベース電極とエミッタ電極との間の電圧であるベース・エミッタ間電圧VBEがトランジスタQ1より小さい場合に、コレクタ電極とエミッタ主電極との間を遮断し、ベース・エミッタ間電圧VBEが閾値電圧より大きい場合にコレクタ電極とエミッタ電極との間に電流経路を形成する。
【0049】
トランジスタQ1および抵抗R2は、エミッタフォロア回路(ソースフォロア回路)を構成しており、出力インピーダンスが低い。これにより、PINダイオード(第1ダイオードD1)に安定した電流を供給することが可能となる。
【0050】
例えば、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧VBEが閾値電圧より小さくなる制御信号Scがスイッチ回路103に入力されている場合を考える。この場合、トランジスタQ1がオフするので、第2ダイオードD2の第2アノード電極が抵抗R2を介してグラウンド電位GNDに接続される。これにより、第2ダイオードD2は非導通状態(オフ)となり、第1ダイオードD1も非導通状態(オフ)となるので、可変インピーダンス回路102のインピーダンスは、主にキャパシタC1とキャパシタC2の直列回路のインピーダンスが支配的となる。
【0051】
トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧VBEが閾値電圧より大きくなる制御信号Scがスイッチ回路103に入力されている場合を考える。この場合、トランジスタQ1がオンするので、電源電圧VDDからトランジスタQ1に電流が流れ、トランジスタQ1のエミッタ電極が上昇し、第2ダイオードD2が導通状態(オン)となる。これにより、第1ダイオードD1の第1アノード電極の電圧が上昇し、第1ダイオードD1も導通状態(オン)となる。この場合、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2が確実にオンし、第1ダイオードD1の抵抗値が十分小さくなるように、制御信号Scの電圧が設定される。例えば、トランジスタQ1のエミッタ電圧が第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の順方向電圧Vf以上となるように、制御信号Scの電圧が設定されている。
【0052】
上述したように、第1ダイオードD1としてPINダイオードを採用しているので、第1ダイオードD1のオン抵抗は非常に小さい。そのため、第3受動素子としてのキャパシタC3の他端がグラウンド電位GNDに接続(略短絡)された状態となる。これにより、可変インピーダンス回路102のインピーダンスは、並列に接続されたキャパシタC2およびキャパシタC3とキャパシタC1との直列回路のインピーダンスが支配的となる。
【0053】
このように、
図3Aに示す可変インピーダンス回路102によれば、制御信号Scの電圧を変化させることにより、可変インピーダンス回路102の受動素子の値(キャパシタンス値、インダクタンス値、抵抗値)を制御することができる。これにより、可変インピーダンス回路102の所定の周波数(2.45GHZ)におけるインピーダンスが調整され、第2伝送路16のインピーダンスを調整することができる。
【0054】
ここで、キャパシタC3の値をキャパシタC0、C1、C2の10倍以上の値に設定することにより、キャパシタC3のグラウンド電位GNDへの接続の有無によるインピーダンスの変化量が大きくすることができる。すなわち、1つの可変インピーダンス回路102による第2伝送路16のインピーダンスの変化量を大きくすることができる。
【0055】
なお、可変インピーダンス回路102の回路構成は上述の例(
図3A)に限定されない。例えば、第1受動素子および第2受動素子として、キャパシタの代わりにインダクタを用いてもよい。
【0056】
図3Bは、可変インピーダンス回路102の別の回路構成例を示す図である。
【0057】
図3Bに示すように、可変インピーダンス回路102は、例えば、リアクタンス成分を有する第1受動素子としてインダクタL1を用い、リアクタンス成分を有する第2受動素子としてインダクタL2を用いてもよい。
【0058】
図3Bに示す可変インピーダンス回路102の動作原理は、
図3Aに示した可変インピーダンス回路102と同様である。具体的には、制御信号ScによってトランジスタQ1をオフさせた場合、第1ダイオードD1がオフするのでキャパシタC3の他端がハイインピーダンス状態となり、可変インピーダンス回路102のインピーダンスは、主にインダクタL1とインダクタL2の直列回路のインピーダンスが支配的となる。一方、制御信号ScによってトランジスタQ1をオンさせた場合、第1ダイオードD1がオンするのでキャパシタC3の他端がグラウンド電位GNDに接続され、可変インピーダンス回路102のインピーダンスは、並列に接続されたインダクタL2およびキャパシタC3とインダクタL1との直列回路のインピーダンスが支配的となる。
【0059】
このように、
図3Bに示す可変インピーダンス回路102によれば、
図3Aに示す可変インピーダンス回路102と同様に、制御信号Scによって第2伝送路16のインピーダンスを調整することができる。
【0060】
なお、
図3Aおよび
図3Bに示すように、トランジスタQ1のベース電極には、ベース電流を制限するための抵抗R3が接続されていてもよい。これにより、ベース・エミッタ間電圧VBEが0.7V程度に固定され、直流電流増幅率hfeを十分に高くすることが可能となる。トランジスタQ1がMOSFETである場合には、抵抗R3によってゲート電極を保護することができる。
【0061】
また、
図3Aおよび
図3Bに示すように、トランジスタQ1のエミッタ電極と第2ダイオードD2の第2アノード電極との間に抵抗R1を挿入してもよい。これによれば、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2に流れる電流を制限することができるので、過電流による第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の破壊を防止することができる。
【0062】
更に、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第2ダイオードD2の第2アノード電極とグラウンド電位GNDとの間にキャパシタC4を接続してもよい。これによれば、抵抗R1とキャパシタC4とによってローパスフィルタが形成されるので、第1ダイオードD1に印加される電圧のノイズを低減させることができる。
【0063】
また、上記ローパスフィルタにより、第1ダイオードD1の第1アノード電極の電圧がローパスフィルタの時定数に基づいて変化するので、第1ダイオードD1を緩やかにオンさせることができる。これによれば、第2伝送路16を伝導するマイクロ波の不要輻射の発生を防止できる。具体的には、PINダイオードを急激にオンさせたとき、PINダイオードのチャタリングによりノイズが発生する。このノイズは、信号生成装置100から出力されるマイクロ波に隣接する周波数成分を有しているため、第2伝送路16を伝導するマイクロ波の不要輻射となる。そこで、上記ローパスフィルタによって第1ダイオードD1を緩やかにオンさせることにより、不要輻射の低減することができる。
【0064】
なお、キャパシタC4の等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)はできるだけ小さいことが好ましい。また、ローパスフィルタとしての効果をより大きくするために、キャパシタC4を、異なる種類のコンデンサ(容量値の小さいコンデンサと容量値の大きいコンデンサ)を組み合わせて実現してもよい。
【0065】
図4は、整合回路10の具体的な回路構成例を示す図である。
【0066】
図4には、整合回路10が4(n=4)個の可変インピーダンス回路102_1~102_nを有する場合の回路構成例が示されている。また、
図4には、一例として、可変インピーダンス回路102_1,102_3が、第1受動素子および第2受動素子としてキャパシタを有する回路構成(
図3A参照)を採用し、可変インピーダンス回路102_2,102_4が、第1受動素子および第2受動素子としてインダクタを有する回路構成(
図3B参照)を採用した場合が示されている。
【0067】
上述したように、信号生成装置100を手術支援装置に適用した場合において、手術中に電極部24が生体組織に接触したとき、増幅回路4と電極部24との間でインピーダンスの不整合が生じる。すなわち、電極部24が生体組織に接触することにより、電極部24側のインピーダンスが50Ωからずれる。その結果、電極部24においてマイクロ波が反射し、反射波によって電極部24に伝導するマイクロ波の実効電力が低下する。
【0068】
そこで、制御回路11は、検波回路9からの検出信号Srを監視することにより、電極部24からの反射波の信号レベルに応じて整合回路10のインピーダンスが所定の値(例えば、50Ω)に近づくように、複数の可変インピーダンス回路102_1~102_nの受動素子の値を選択的に切り替える。これにより、増幅回路4の出力側のインピーダンスを50Ωに近づける。
【0069】
具体的には、制御回路11は、電極部24からの反射波のレベルに応じて、受動素子の値を変更すべき可変インピーダンス回路102_1~102_nを選択する。より具体的には、制御回路11は、電極部24からの反射波の信号レベルが小さくなるように、整合回路10の可変インピーダンス回路102を制御する。例えば、反射波の信号レベルが大きくなるほど整合回路10全体のインピーダンスが小さくなるように、受動素子の値を変更すべき可変インピーダンス回路102_1~102_nを選択することにより、電極部24からの反射波の信号レベルが小さくする
【0070】
例えば、反射波の信号レベルに関して、大きさの異なる複数の閾値を予め設けておく。そして、制御回路11は、検出信号Srに基づく反射波の信号レベルとそれぞれの閾値とを比較し、それらの比較結果に基づいて、受動素子の値を変更すべき可変インピーダンス回路102_1~102_nを選択する。例えば、
図4に示した整合回路10において、第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、および第4閾値Vth4(Vth1<Vth2<Vth3<Vth4)を設定する。
【0071】
反射波の信号レベルVが第1閾値Vth1より小さい場合(V<Vth1)、制御回路11は、整合回路10の全ての可変インピーダンス回路102_1~102_4のスイッチ回路103(トランジスタQ1)をオフする。反射波の信号レベルVが第1閾値Vth1以上第2閾値Vth2より小さい場合(Vth1≦V<Vth2)、例えば、制御回路11は、可変インピーダンス回路102_1のスイッチ回路103のみをオンする。反射波の信号レベルVが第2閾値Vth2以上第3閾値Vth3より小さい場合(Vth2≦V<Vth3)、例えば、制御回路11は、可変インピーダンス回路102_1,102_2のスイッチ回路103をオンする。反射波の信号レベルVが第3閾値Vth3以上第4閾値Vth4より小さい場合(Vth3≦V<Vth4)、例えば、制御回路11は、可変インピーダンス回路102_1~102_3のスイッチ回路103をオンする。反射波の信号レベルVが第4閾値Vth4以上である場合(Vth4≦V)、例えば、制御回路11は、全ての可変インピーダンス回路102_1~102_4のスイッチ回路103をオンする。
【0072】
受動素子の値を調整すべき可変インピーダンス回路102_1~102_nの決定方法は、上述した閾値を用いた方法に限定されない。
例えば、
図4に示すように、制御回路11は、反射波の信号レベルと受動素子の値を調整すべき可変インピーダンス回路102(
図2参照)との対応関係を示す対応関係情報110を制御回路11内の記憶部(例えば、不揮発性メモリ)に記憶しておく。
図4に示す対応関係情報110は、例えば、反射波の信号レベルの範囲毎に、受動素子の値を調整すべき可変インピーダンス回路102_1~102_4の組み合わせが記録されたテーブルである。
【0073】
制御回路11は、対応関係情報110を参照して、検出信号Srに基づいて検出した反射波の信号レベルに対応する可変インピーダンス回路102を選択し、選択した可変インピーダンス回路102の受動素子の値を調整する。具体的には、制御回路11は、先ず、検出した反射波の信号レベルが属する、対応関係情報110(テーブル)における反射波の信号レベルの範囲を特定する。次に、制御回路11は、テーブルに基づいて、特定した範囲に対応する可変インピーダンス回路102を選択する。そして、制御回路11は、選択した可変インピーダンス回路102に対して、制御信号Sc_1~Sc_nによってスイッチ回路103(トランジスタQ1)をオンする。
【0074】
このように、制御回路11が、電極部24からの反射波のレベルに応じて整合回路10に含まれる可変インピーダンス回路102_1~102_nの受動素子の値を選択的に切り替えることにより、増幅回路4の出力側のインピーダンスを50Ωに近づけることが可能となる。
【0075】
制御回路11は、選択した可変インピーダンス回路102のスイッチ回路103をオンさせるとき、例えば、トランジスタQ1のベース電極にトランジスタQ1の閾値電圧より大きく、且つ第1ダイオードD1および第2ダイオードD2を確実にオンさせる電圧の制御信号Scを印加する。
【0076】
例えば、制御回路11としてのMCUは、選択した可変インピーダンス回路102のトランジスタQ1をオフさせる場合に、入出力I/F回路の出力ポートからローレベル(例えば0V)の制御信号Scを出力し、トランジスタQ1をオンさせる場合に、出力ポートからハイレベル(3.3Vまたは5.0V)の制御信号Scを出力する。
【0077】
制御回路11は、選択した可変インピーダンス回路102(
図2参照)のトランジスタQ1をオンさせる場合に、制御信号Scの電圧を、ピンダイオードD1の閾値電圧Vf(約0.7V)の前後の範囲において時間の経過とともに変化させてもよい。すなわち、制御回路11は、制御信号Scの電圧をデジタル的に切り替えるのではなく、アナログ的に切り替えてもよい。例えば、制御回路11は、制御信号Scを生成するデジタル/アナログ変換回路(DAC)を有する。トランジスタQ1をオンさせるとき、制御回路11は、デジタル/アナログ変換回路によって時間の経過とともに制御信号Scの電圧を緩やかに(連続的にまたは段階的に)増加させる。
【0078】
これによれば、第1ダイオードD1(PINダイオード)の急峻なスイッチングを防止することができるので、上述した第1ダイオードD1がオンするときのチャタリングによるノイズを抑えることができる。これにより、上述したローパスフィルタを構成するキャパシタC4の容量値を小さくすることも可能となる。
【0079】
次に、本実施の形態に係る信号生成装置100の適用例について説明する。
【0080】
図5は、本実施の形態に係る信号生成装置100を適用した手術支援装置を模式的に示す図である。
図6は、本実施の形態に係る信号生成装置100を適用した手術支援装置の構成を示す図である。
【0081】
図5および
図6に示す手術支援装置200は、例えば、
図1に示す信号生成装置100によって生成したマイクロ波をメスや鉗子等の電極部から手術対象の生体組織(患部)に照射することにより、生体組織を切り取ったり、焼灼させたりすることが可能な外科手術用の装置である。例えば、手術支援装置200は、内視鏡用手術支援装置としての内視鏡用マイクロ波メスである。
【0082】
図5に示すように、手術支援装置200は、例えば、本体装置20と、操作装置22と、電極部24と、本体装置20と
図6に示す操作装置22とを接続する
図5に示すケーブル31と、操作装置22と電極部24とを接続するケーブル32と、を備えている。
【0083】
本体装置20は、例えば、電源ケーブル33を介したAC電源からの給電により動作し、高周波信号(例えば、2.45GHのマイクロ波)を生成して出力する。
【0084】
図6に示すように、本体装置20は、
図1に示す本実施の形態に係る信号生成装置100の一部の回路を第1筐体21に収容することによって構成されている。第1筐体21は、信号生成装置100の一部の回路が形成されたプリント基板等を収容する容器であって、例えば、樹脂部材や金属部材、またはそれらを組み合わせた構造を有している。例えば、
図6に示すように、第1筐体21には、信号生成回路1と制御回路11が収容されている。
【0085】
第1筐体21には、電源回路27が収容されていてもよい。電源回路27は、例えば、電源ケーブル33を介して供給された交流電圧(例えば、AC100V~240V)を直流電圧(例えば、50V)に変換して出力するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータから出力された直流電圧を各回路の電源電圧として適切な大きさの直流電圧に変換して出力するDC/DCコンバータとを含む。電源回路27から出力された直流電圧は、第1筐体21内の信号生成回路1および制御回路11に電源電圧として供給されるとともに、電源線12を介して後述する第2筐体23内の各回路に電源電圧として供給される。
【0086】
図5に示す操作装置22は、ユーザの操作に応じて、本体装置20から入力されたマイクロ波を増幅し、電極部24から照射する。操作装置22は、
図5に示す信号生成装置100の一部の回路を収容する容器としての機能と、電極部24を操作する操作端末としての機能とを有する。
【0087】
具体的に、
図5に示す操作装置22としての第2筐体23には、増幅回路5、第2伝送路16、アイソレータ7、方向性結合器8、検波回路9、および整合回路10が収容されている。例えば、増幅回路5、第2伝送路16、アイソレータ7、方向性結合器8、検波回路9、および整合回路10が形成されたプリント基板や配線等が第2筐体23に収容されている。第2筐体23は、例えば、樹脂部材や金属部材、またはそれらを組み合わせた構造を有している。
【0088】
図5に示す第1筐体21内の信号生成回路1と第2筐体23内の増幅回路5とは、第1伝送路15としての第1同軸ケーブルによって互いに接続されている。第1筐体21内の制御回路11と第2筐体内23内の整合回路10とは、制御信号Sc(Sc_1~Sc_n)を伝送する第1信号線13によって互いに接続されている。第1筐体21内の制御回路11と第2筐体23内の検波回路9とは、検出信号Srを伝送する第2信号線14によって互いに接続されている。第1筐体21と第2筐体23とは、第1筐体21内の電源回路27から第2筐体23内の各回路に電源電圧を供給するための電源線12によって互いに接続されている。電極部24と方向性結合器8の第2端子82とは、第3伝送路17としての第2同軸ケーブルによって接続されている。
【0089】
手術支援装置200において、電極部24は、信号生成装置100から出力されたマイクロ波を手術対象の生体組織に照射することによって生体組織の切断および焼灼等が可能なメスや鉗子として機能する。
【0090】
操作装置22は、電極部24を操作するための操作部26を備えている。操作部26は、例えば、
図5に示すように、はさみや鉗子等のようなハンドル形状であってもよいし、ジョイスティック形状であってもよい。
【0091】
ユーザは、操作部26を操作することにより、電極部24からのマイクロ波の照射の可否を制御することができる。また、ユーザは、操作部26を操作することにより、電極部24を機械的に動作させることができる。例えば、
図5に示すように、ユーザが操作部26を操作することにより、電極部24によって生体組織50の把持や切断等を行うことができる。
【0092】
上述した電極部24の機械的な操作は、操作部26と電極部24とをワイヤーやトルクコイル18によって接続することによって実現してもよいし、電極部24にアクチュエータ等を内蔵し、操作部26からアクチュエータに電気信号を送信することによって実現してもよい。
【0093】
図5および
図6に示すように、電源線12、第1信号線13、第2信号線14、および第1伝送路15(第1同軸ケーブル)は、例えば、互いに束ねられた状態で絶縁材料によって被覆され、一つのケーブル31を構成している。
【0094】
第3伝送路17としての第2同軸ケーブルと、電極部24を操作するためのトルクコイル18(または信号線)は、例えば、互いに束ねられた状態で絶縁材料によって被覆され、一つのケーブル32を構成している。例えば、ケーブル32において、第2同軸ケーブルが、中空のトルクコイル18の軸線に沿ってトルクコイル18内に挿通されている。また、手術支援装置200が内視鏡用装置である場合、電極部24を含む先端部にはカメラやLED照明が設けられているため、カメラやLED照明を駆動するための信号線や電源線等もトルクコイル18内に挿通されている。
【0095】
ここで、本実施の形態に係る信号生成装置100を内視鏡用マイクロ波メスに適用する場合、第3伝送路17としての第2同軸ケーブルの径(例えば、芯線の径)は、第1伝送路15としての第1同軸ケーブルの径より小さいことが好ましい。これにより、上述したように、カメラやLED照明を駆動するための信号線や電源線と一緒に第2同軸ケーブルをトルクコイル18の中空部分に挿通させることが容易となる。
【0096】
ケーブル31、すなわち、第1信号線13、第2信号線14、および第1伝送路15としての第1同軸ケーブルは、第1筐体21および第2筐体23の少なくとも一方に対して挿抜可能であってもよい。これによれば、感染対策として、手術中に生体組織等に接触する部分(操作装置22、第2同軸ケーブル、電極部24)を手術毎に使い捨てることが可能となる。
【0097】
以上、
図1に示す本実施の形態に係る信号生成装置100は、信号生成回路1によって生成した高周波信号(マイクロ波)を増幅回路5によって増幅して電極部24から出力した場合に、検波回路9によって検出した電極部24からの反射波の信号レベルに応じて、増幅回路5の出力側(第2伝送路16)に接続されている整合回路10のインピーダンスが所定の値(例えば、50Ω)に近づくように、整合回路10を構成する可変インピーダンス回路102の受動素子の値を調整する。
【0098】
これによれば、高周波信号の出力端子である電極部24のインピーダンスが変化し、増幅回路5と電極部24との間のインピーダンスが不整合となった場合であっても、増幅回路5の出力側のインピーダンスを調整することにより、増幅回路5と電極部24との間のインピーダンスを整合させて、反射波を低減することができる。
【0099】
また、上述したように、
図1に示す整合回路10は、受動素子の値として、互いに異なる二つの値に切り替え可能に構成された
図2に示す可変インピーダンス回路102を複数有していてもよい。
図1に示す制御回路11は、反射波の信号レベルに応じて、整合回路10のインピーダンスが所定の値に近づくように、
図2に示す複数の可変インピーダンス回路102_1~102_nの受動素子の値を選択的に切り替える。これによれば、整合回路10のインピーダンスを微調整することができるので、整合回路10のインピーダンスを所定の値に近づけることが容易となる。
【0100】
また、上述したように、
図1に示す制御回路11は、反射波の信号レベルと受動素子の値を調整すべき、
図2に示す可変インピーダンス回路102_1~102_nとの対応関係を示す対応関係情報110を参照して、検波回路9によって検出した反射波の信号レベルに対応する可変インピーダンス回路102を選択し、選択した可変インピーダンス回路102の受動素子の値を調整してもよい。
【0101】
これによれば、反射波の強度に応じて適切な、
図2に示す可変インピーダンス回路102を選択することが容易となるので、
図1に示す制御回路11としてのプログラム処理装置(MCU)の演算負荷を抑えつつ、より高速にインピーダンスを整合させることが可能となる。
【0102】
また、
図3Aおよび
図3B等に示したように、可変インピーダンス回路102は、リアクタンス成分を有し、一端が第2伝送路16に接続された第1受動素子としてのキャパシタC1またはインダクタL1と、リアクタンス成分を有し、第1受動素子の他端と第1固定電位(グラウンド電位GND)との間に接続された第2受動素子としてのキャパシタC2またはインダクタL2とを含む。更に、可変インピーダンス回路102は、リアクタンス成分を有し、一端が第1受動素子の他端に接続された第3受動素子としてのキャパシタC3と、制御信号Scの大きさに応じて、第3受動素子の第1固定電位への接続と遮断を切り替えるスイッチ回路103と、を含む。
【0103】
これによれば、制御信号Scによってスイッチ回路103を制御することにより、可変インピーダンス回路102における受動素子の値(インピーダンス)を互いに異なる二つの値の間で切り替えることが容易となる。
【0104】
また、
図3Aおよび
図3B等に示したように、スイッチ回路103は、第1アノード電極がキャパシタC3の他端に接続され、第1カソード電極が第1固定電位(グラウンド電位GND)に接続された第1ダイオードD1としてのPINダイオードと、第2カソード電極が第1ダイオードD1の第1アノード電極に接続された第2ダイオードD2とを含む。更に、スイッチ回路103は、第1主電極が第1固定電位よりも高い第2固定電位(電源電圧VDD)に接続され、第2主電極が第2ダイオードD2の第2アノード電極に接続されるとともに負荷(抵抗R2)を介して第1固定電位に接続されたトランジスタQ1を含む。トランジスタQ1は、制御電極に閾値電圧よりも小さい電圧が印加されている場合に第1主電極と第2主電極との間を遮断し、制御電極に閾値電圧よりも大きい電圧が印加されている場合に第1主電極と第2主電極との間に電流経路を形成する。
【0105】
これによれば、スイッチ回路103を、より簡単な回路構成によって実現することができる。特に、第3受動素子としてのキャパシタC3の接続先の切り替えるスイッチ(第1ダイオードD1)としてPINダイオードを採用することにより、整合回路10のコストを更に抑えることができる。
【0106】
例えば、キャパシタC3の接続先の切り替えるスイッチをトランジスタで実現する場合、GaAsやGaNなどの化合物半導体やLDMOSから成る高周波用の高耐圧のFET(Field Effect Transistor)を採用する必要がある。これらのFETは非常に高価であり、部品のサイズも大きくなる。これに対し、上記スイッチとしてPINダイオードを採用することにより、コストおよび部品のサイズを抑えることができる。
【0107】
また、高周波用の高耐圧のFETをスイッチとして採用した場合、FETのオン抵抗を下げるためにFETに大電流を流す必要があり、整合回路10における損失が大きくなるおそれがある。これに対し、PINダイオードのオン抵抗は小さいので、PINダイオードに流れる電流を抑えることができ、整合回路10における損失を抑えることが可能となる。
【0108】
本実施の形態に係る
図1に示す信号生成装置100を
図2に示す手術支援装置200に採用する場合に、上述したように、
図6に示す第1筐体21に信号生成回路1と制御回路11を収容して本体装置20を実現し、第2筐体23に、電極部24を操作するための操作部26、増幅回路5、第2伝送路16、アイソレータ7と、方向性結合器8、検波回路9、および整合回路10を収容して操作装置22を実現する。更に、第1伝送路15を第1同軸ケーブルによって実現し、第3伝送路17を第2同軸ケーブルによって実現し、第1同軸ケーブルは、第1筐体21および第2筐体23の少なくとも一方に対して挿抜可能とする。
【0109】
これによれば、上述したように、感染対策として、手術中に生体組織等に接触する部分(操作装置22、第2同軸ケーブル、電極部24)を手術毎または数回の手術毎に使い捨てることが可能となる。また、信号生成装置100を構成する回路が二つの筐体に分かれて収容されているので、例えば、信号生成装置100の構成する全ての回路を一つの筐体(操作装置22)にまとめて収容する場合に比べて、操作装置22をより小型にすることができ、ユーザの操作性を向上させることが可能となる。
【0110】
また、
図5に示すように、比較的高価な電子部品が用いられる信号生成回路1および制御回路11を第1筐体21(本体装置20)に収容しておくことにより、使い捨てる部品を最小限に抑えることが可能となり、使い捨て部品の交換に要するコストを抑えることができる。特に、上述したように、
図2に示すように、整合回路10の可変インピーダンス回路102内のスイッチとしてPINダイオード(第1ダイオードD1)を採用することにより、高周波用の高耐圧のFETを用いる場合に比べて安価となり、使い捨て部品の交換に要するコストを更に抑えることが可能となる。
【0111】
また、破棄される第2筐体23には、マイクロ波を生成する回路の一部が形成された回路基板が含まれる。この回路基板には、増幅回路(HPA)5および整合回路10という最小限の回路のみが形成されているので、破棄される回路基板の面積を抑えることができる。これにより、回路基板を廃棄することによる環境等への影響を小さくすることができ、ESG(Environment,Social,Governance)の観点において好ましい。
【0112】
また、
図1に示す増幅回路5を
図6に示す第2筐体23に収納することにより、増幅回路5を第1筐体21に収容する場合よりも増幅回路5と電極部24との距離を近づけることができるので、電極部24に接続される第2同軸ケーブル(第3伝送路17)を必要最小限の長さにすることができる。これにより、上述したように第3伝送路17としての第2同軸ケーブルの径を第1同軸ケーブルの径よりも小さくした場合であっても、第3伝送路17を伝搬する信号の減衰量を小さくすることができる。これにより、電力効率が高い内視鏡用の手術支援装置を実現することが可能となる。
【0113】
また、第1筐体21側の信号生成回路1を内蔵し、第2筐体23(ハンドル部)側に増幅回路(HPA)5および整合回路10を内蔵することにより、本実施の形態に係る信号生成装置100を内視鏡用マイクロ波メスに適用した場合に、第1筐体21側の信号生成回路1におけるゲイン制御によって、増幅回路(HPA)5以降に接続されている同軸ケーブルや鉗子等におけるゲインロスを最低限に抑えることが可能となる。
【0114】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
例えば、上記実施の形態において、
図1に示す整合回路10が
図2に示す可変インピーダンス回路102_1~102_nに加えて固定インピーダンス回路101を有している場合を説明したが、これに限定されない。整合回路10は、可変インピーダンス回路102_1~102_nのみを有していてもよいし、可変インピーダンス回路102を一つだけ有していてもよい。
【0116】
また、上記実施の形態において、
図6に示す本体装置20内に電源回路27を設け、電源回路27から電源線12を介して操作装置22内の各回路に電源電圧を供給する場合を例示したが、これに限られない。例えば、本体装置20がバッテリおよび電源回路を内蔵し、本体装置20において、当該電源回路がバッテリの電圧を所望の電圧に変換し、電源電圧として操作装置22内の各回路に供給してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…信号生成回路、2…電圧制御発振器、3…位相同期回路(PLL)、4…増幅回路(AMP)、5…増幅回路(HPA)、7…アイソレータ、8…方向性結合器、9…検波回路、10…整合回路、11…制御回路、12…電源線、13…第1信号線、14…第2信号線、15…第1伝送路(第1同軸ケーブル)、16…第2伝送路、17…第3伝送路(第2同軸ケーブル)、18…トルクコイル、20…本体装置、21…第1筐体、22…操作装置、23…第2筐体、24…電極部、26…操作部、27…電源回路、31…ケーブル、32…ケーブル、33…電源ケーブル、50…生体組織、81…第1端子、82…第2端子、83…第3端子、101…固定インピーダンス回路、102,102_1~102_n…可変インピーダンス回路、103…スイッチ回路、C0~C4…キャパシタ、R0~R3…抵抗(抵抗素子)、L1,L2…インダクタ、Sc,Sc_1~Sc_n…制御信号、Sr…検出信号。