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特開2024-121353モータ駆動制御装置およびモータユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121353
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/22 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H02P3/22 A
H02P3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028403
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智敬
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正晃
(72)【発明者】
【氏名】村儀 雅史
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530AA07
5H530CC06
5H530CC23
5H530CD13
5H530CD23
5H530CD32
5H530CD34
5H530CE15
5H530DD03
5H530DD14
5H530EE07
5H530EF04
(57)【要約】
【課題】電源遮断にモータを速やかに停止させつつ、ブレーキ電流を抑える。
【解決手段】モータ駆動制御装置1は、駆動制御信号Sdを生成する制御回路10と、モータ3を駆動する駆動回路2とを備える。駆動回路2は、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続されたハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5およびローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を含む複数のスイッチングレグ20u,20v,20wと、電源ラインVccとローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6の各制御電極との間に接続されたプルアップ抵抗Ru2,Ru4,Ru6とを有する。制御回路10は、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いことを検出した場合に、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5をオフし、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を周期的にスイッチングさせる駆動制御信号Sdを生成するブレーキ制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相のコイルを有するモータを駆動するための駆動制御信号を出力する制御回路と、
前記制御回路から出力された前記駆動制御信号に基づいて前記コイルを駆動する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、
前記コイルを駆動する複数のスイッチングレグを有するインバータ回路と、プルアップ抵抗と、プリドライブ回路と、を有し、
前記スイッチングレグは、電源電圧が供給される電源ラインとグラウンド電位との間に直列に接続されたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、
前記ローサイドトランジスタと前記ハイサイドトランジスタとが共通に接続されるノードが対応する前記コイルの一端に接続され、
前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタは、前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタのオン・オフを制御するための制御電極をそれぞれ有し、
前記プルアップ抵抗は、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記電源ラインとの間に接続され、
前記プリドライブ回路は、前記駆動制御信号に応じて、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記ハイサイドトランジスタの前記制御電極とを駆動し、
前記制御回路は、前記電源電圧が閾値電圧より低いことを検出した場合に、前記複数のスイッチングレグにおいて、前記ハイサイドトランジスタをオフし、前記ローサイドトランジスタを周期的にスイッチングさせる前記駆動制御信号を生成するブレーキ制御を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、前記電源電圧が閾値電圧より低いことを検出してから前記制御回路が動作不能な状態になるまで、前記ブレーキ制御を継続する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、前記電源電圧が前記閾値電圧より低いことを検出してから所定の期間、前記ブレーキ制御を継続する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記ハイサイドトランジスタをオフし、前記ローサイドトランジスタを周期的にスイッチングさせる前記駆動制御信号のうち前記ローサイドトランジスタを駆動するための信号は、50%以下のデューティ比を有する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、を備える
モータユニット。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置およびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンに搭載されるブラシレスDCモータ等のモータは、電源遮断時等において短時間に停止させることが望まれている。モータの回転を速やかに停止させるためには、モータを駆動するためのインバータ回路を構成するローサイドトランジスタをオンしてモータにブレーキをかける技術が知られている。
【0003】
また、ファンモータでは、制御基板上の限られたスペース内に、モータを制御するための構成部品を搭載する必要があるため、これら個々の構成部品の大きさは小さい方が望ましい。例えば特許文献1には、電源ラインの動作電圧を昇圧して昇圧電圧を発生させる昇圧回路を設け、この昇圧電圧をローサイドトランジスタのゲートに与えることによって、ローサイドトランジスタをオンさせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-269808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、ローサイドトランジスタを制御するために、電源電圧よりも大きな電圧を発生させる昇圧回路を必要としている。昇圧回路は、複数のキャパシタと昇圧動作を制御するための集積回路(IC:integrated circuit)で構成されているものがある。ファンモータでは、制御基板上の限られたスペース内に、モータを制御するための構成部品を搭載しなければならないため、コイルを駆動するトランジスタのオン・オフを制御するために、電源電圧とは別の昇圧電圧を発生する昇圧回路を制御基板上に配置することは困難となるケースが想定され、改善が望まれていた。
【0006】
そこで、本願発明者は、本願に先立って、モータを制御する構成部品を容易に配置することができ、モータを高効率で駆動しつつ電源遮断時にモータを速やかに停止させることが可能な新たなモータ駆動制御装置を検討した。
【0007】
具体的に、本願発明者による先行検討例のモータ駆動制御装置は、モータを駆動するインバータ回路と、インバータ回路を駆動するためのプリドライブ回路と、モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成してプリドライブ回路を制御するマイクロコントローラからなる制御回路とを備える。ここで、制御回路は、第1電源ラインから供給される電源電圧(例えば、5V)によって動作し、プリドライブ回路およびインバータ回路は、第2電源ラインから供給される電源電圧(例えば、12V)によって動作する。
【0008】
先行検討例のモータ駆動制御装置において、プリドライブ回路は、制御回路から出力される駆動制御信号の信号レベルを、制御回路の電源電圧(5V)よりも高い電源電圧(12V)を基準とした信号レベルに変換(レベルシフト)して、インバータ回路のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを駆動する。
【0009】
これにより、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタのオン抵抗を小さくできるので、高効率でモータを駆動することができる。このレベルシフト変換は、ローサイドトランジスタの制御電極(MOSトランジスタの場合、ゲート電極)と電源電圧(例えば、12V)との間に、抵抗を付加することにより実現される。これにより、ローサイドトランジスタの制御電極には、制御基板上において比較的小さな面積を要する抵抗によって、電源電圧を印加することができる。
【0010】
更に、これによれば、電源遮断時に、プルアップ抵抗によってローサイドのトランジスタを強制的にオンさせることができるので、モータに強いブレーキをかけてモータを速やかに停止させることが可能となる。
【0011】
しかしながら、上述した先行検討例のモータ駆動制御装置は以下に示す課題を有していることが、本願発明者による更なる検討によって明らかとなった。
【0012】
具体的には、先行検討例のモータ駆動制御装置の電源が遮断されたとき、制御回路の第1電源ラインの電圧(5V)がプリドライブ回路およびインバータ回路の第2電源ラインの電圧(12V)よりも速く低下するため、第2電源ラインの電圧が十分に低下する前に、制御回路への電源供給が停止し、制御回路が動作不能の状態に陥る。
【0013】
これにより、制御回路からプリドライブ回路への駆動制御信号の供給が停止し、プリドライブ回路によるインバータ回路の駆動が停止する。このとき、インバータ回路のローサイドトランジスタの制御電極がプルアップ抵抗を介して電源ライン(12V)に接続されているため、ローサイドのトランジスタがオンする。これにより、モータに強いブレーキ(ショートブレーキ)がかかる。
【0014】
一般に、モータのブレーキ時にモータのコイルに流れる電流(以下、「ブレーキ電流」とも称する。)は、モータにブレーキをかけたときのモータの回転速度が大きいほど大きくなる。上述の先行検討例の場合、モータにブレーキをかけたときにモータの回転速度が十分に低下していない上に、電源ライン(12V)の電圧が十分に低下してない。そのため、制御回路の動作停止後、制御電極が電源ラインにプルアップされているローサイドトランジスタに非常に大きなブレーキ電流が流れ、ローサイドトランジスタが非常に高温になるという課題があることを本願発明者は見出した。
【0015】
本発明は、少なくとも上述した課題を解消するためのものであり、制御基板上の限られたスペース内にモータを制御する構成部品を容易に配置することができ、電源遮断時にモータを速やかに停止させつつ、ブレーキ電流を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、複数相のコイルを有するモータを駆動するための駆動制御信号を出力する制御回路と、前記制御回路から出力された前記駆動制御信号に基づいて前記コイルを駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記コイルを駆動する複数のスイッチングレグを有するインバータ回路と、プルアップ抵抗と、プリドライブ回路と、を有し、前記スイッチングレグは、電源電圧が供給される電源ラインとグラウンド電位との間に直列に接続されたハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含み、前記ローサイドトランジスタと前記ハイサイドトランジスタとが共通に接続されるノードが対応する前記コイルの一端に接続され、前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタは、前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタのオン・オフを制御するための制御電極をそれぞれ有し、前記プルアップ抵抗は、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記電源ラインとの間に接続され、前記プリドライブ回路は、前記駆動制御信号に応じて、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記ハイサイドトランジスタの前記制御電極とを駆動し、前記制御回路は、前記電源電圧が閾値電圧より低いことを検出した場合に、前記複数のスイッチングレグにおいて、前記ハイサイドトランジスタをオフし、前記ローサイドトランジスタを周期的にスイッチングさせる前記駆動制御信号を生成するブレーキ制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、制御基板上の限られたスペース内にモータを制御する構成部品を容易に配置することができ、電源遮断時にモータを速やかに停止させつつ、ブレーキ電流を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータユニットの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係るモータ駆動制御装置における制御回路の機能ブロック構成を示す図である。
図3】ブレーキ制御における駆動信号の一例を示すタイミングチャートである。
図4A】実施の形態に係るモータ駆動制御装置において、電源が遮断されたときのモータの電流のシミュレーション結果を示す図である。
図4B】本願発明者による先行検討例に係るモータ駆動制御装置(比較例)において、電源が遮断されたときのモータの電流のシミュレーション結果を示す図である。
図5図5は、電源遮断時のインバータ回路のローサイドトランジスタの温度変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0020】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、複数相のコイル(Lu,Lv,Lw)を有するモータ(3)を駆動するための駆動制御信号(Sd)を出力する制御回路(10)と、前記制御回路から出力された前記駆動制御信号に基づいて前記コイルを駆動する駆動回路(2)と、を備え、前記駆動回路は、前記コイルを駆動する複数のスイッチングレグ(20u,20v,20w)を有するインバータ回路(2a)と、プルアップ抵抗(Ru2,Ru4,Ru6)と、プリドライブ回路(2b)と、を有し、前記スイッチングレグは、電源電圧(Vcc)が供給される電源ライン(Vcc)とグラウンド電位(GND)との間に直列に接続されたハイサイドトランジスタ(Q1,Q3,Q5)およびローサイドトランジスタ(Q2,Q4,Q6)を含み、前記ローサイドトランジスタと前記ハイサイドトランジスタとが共通に接続されるノード(Nu,Nv,Nw)が対応する前記コイルの一端に接続され、前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタは、前記ローサイドトランジスタおよび前記ハイサイドトランジスタのオン・オフを制御するための制御電極(Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwl)をそれぞれ有し、前記プルアップ抵抗は、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記電源ラインとの間に接続され、前記プリドライブ回路は、前記駆動制御信号に応じて、前記ローサイドトランジスタの前記制御電極と前記ハイサイドトランジスタの前記制御電極とを駆動し、前記制御回路は、前記電源電圧が閾値電圧(Vth)より低いことを検出した場合に、前記複数のスイッチングレグにおいて、前記ハイサイドトランジスタをオフし、前記ローサイドトランジスタを周期的にスイッチングさせる前記駆動制御信号を生成するブレーキ制御を行うことを特徴とする。
【0021】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記電源電圧が閾値電圧より低いことを検出してから前記制御回路が動作不能な状態になるまで、前記ブレーキ制御を継続してもよい。
【0022】
〔3〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記電源電圧が前記閾値電圧より低いことを検出してから所定の期間、前記ブレーキ制御を継続してもよい。
【0023】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置において、前記ハイサイドトランジスタをオフし、前記ローサイドトランジスタを周期的にスイッチングさせる前記駆動制御信号のうち前記ローサイドトランジスタを駆動するための信号は、50%以下のデューティ比を有していてもよい。
【0024】
〔5〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(100)は、上記〔1〕乃至〔4〕の何れかに一つに記載のモータ駆動制御装置と、前記モータ(3)と、を備えることを特徴する。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
≪実施の形態≫
図1は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1を備えたモータユニット100の構成を示す図である。
【0027】
図1に示すように、モータユニット100は、モータ3と、モータ3の回転を制御するモータ駆動制御装置1と、を備えている。モータユニット100は、例えばファン等の、モータを駆動源として用いる種々の機器に適用することができる。
【0028】
モータ3は、例えば、永久磁石同期モータである。本実施の形態において、モータ3は、例えば、3相のコイルLu,Lv,Lwを有するブラシレスDCモータである。コイルLu,Lv,Lwは、例えば、互いにY結線されている。
【0029】
モータ駆動制御装置1は、モータ3の3相のコイルLu,Lv,Lwを駆動することにより、モータ3のロータを回転させる。例えば、モータ駆動制御装置1は、モータ3に正弦波駆動信号を与えることにより、モータ3の3相のコイルLu,Lv,Lwに周期的に正弦波状の相電流を流してロータを回転させる。
【0030】
モータ駆動制御装置1は、例えば、制御回路10、駆動回路2、電圧生成回路5、および電圧検出回路6を有している。
なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0031】
電圧生成回路5は、制御回路10の電源電圧を生成する回路である。電圧生成回路5は、例えば、外部から供給された直流電圧Vccに基づいて直流電圧を生成し、電源電圧として制御回路10に供給する。例えば、電圧生成回路5は、直流電圧Vcc(例えば、12V)を降圧して直流電圧Vdd(例えば、5V)を生成する。電圧生成回路5は、例えば、シリーズレギュレータやスイッチングレギュレータ等の電源回路を含む。
【0032】
直流電圧Vccは、駆動回路2の電源電圧として供給される。直流電圧Vddは、上述したように、制御回路10の電源電圧として供給される。例えば、Vdd<Vccである。
【0033】
以下、直流電圧Vccを「電源電圧Vcc」、直流電圧Vddを「電源電圧Vdd」と表記する場合がある。また、電源電圧Vccが供給される配線を「電源ラインVcc」と、電源電圧Vddが供給される配線を「電源ラインVdd」と表示する場合がある。
【0034】
電圧検出回路6は、駆動回路2の電源電圧Vccを検出する回路である。電圧検出回路6は、例えば、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に接続された抵抗分圧回路を含む。例えば、図1に示すように、抵抗分圧回路は、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に直列に接続された抵抗R1および抵抗R2によって形成されている。電圧検出回路6は、電源電圧Vccを分圧した電圧を電圧検出信号Svとして出力する。
【0035】
なお、抵抗R1,R2に基づく分圧比は、電圧検出信号Svの信号レベル(電圧)が制御回路10に入力可能な大きさになるように調整されていればよい。また、電圧検出回路6の回路構成は上述の例に限定されず、電源電圧Vccの大きさを示す信号を生成可能な種々の回路構成を採用することができる。
【0036】
駆動回路2は、制御回路10から出力された駆動制御信号Sdに基づいてモータ3を駆動する。駆動回路2は、例えば、インバータ回路2a、プリドライブ回路2b、電流検出回路2c、およびプルアップ抵抗Ru2,Ru4,Ru6を有する。
【0037】
インバータ回路2aは、電源ラインVcc(電源電圧Vcc)とグラウンド電位との間に配置され、入力された駆動制御信号Sdに基づいて、負荷としてのモータ3の複数相のコイルLu,Lv,Lwを駆動する回路である。
【0038】
具体的には、インバータ回路2aは、直列に接続された少なくとも2つの駆動トランジスタを含むスイッチングレグを有し、入力された駆動制御信号Sdに基づいて、2つの駆動トランジスタが交互にオン・オフ動作(スイッチング動作)を行うことにより、負荷としてのモータ3のコイルLu,Lv,Lwを駆動する。
【0039】
より具体的には、インバータ回路2aは、モータ3のU相、V相、およびW相にそれぞれ対応するスイッチングレグ20u,20v,20wを有する。
【0040】
例えば、図1に示すように、U相に対応するスイッチングレグ20uは、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に電流検出回路2cを介して直列に接続された2つの駆動トランジスタQ1,Q2を有する。駆動トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2とが共通に接続されるノードNuは、負荷としてのコイルLuの一端に接続されている。
【0041】
V相に対応するスイッチングレグ20vは、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に電流検出回路2cを介して直列に接続された2つの駆動トランジスタQ3,Q4を有する。駆動トランジスタQ3と駆動トランジスタQ4とが共通に接続されるノードNvは、負荷としてのコイルLvの一端に接続されている。
【0042】
W相に対応するスイッチングレグ20wは、電源ラインVccとグラウンド電位GNDとの間に電流検出回路2cを介して直列に接続された2つの駆動トランジスタQ5,Q6を有する。駆動トランジスタQ5と駆動トランジスタQ6とが共通に接続されるノードNwは、負荷としてのコイルLwの一端に接続されている。
【0043】
駆動トランジスタQ1~Q6は、当該駆動トランジスタQ1~Q6の駆動(オン/オフ)を制御するための制御電極をそれぞれ有している。駆動トランジスタQ1,Q3,Q5は、例えば、Pチャネル型のMOSFETであり、各トランジスタのゲート電極がそれぞれ制御電極Vuh,Vvh,Vwhとなる。駆動トランジスタQ2,Q4,Q6は、例えば、Nチャネル型のMOSFETであり、各トランジスタのゲート電極が制御電極Vul,Vvl,Vwlとなる。なお、駆動トランジスタQ1~Q6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のトランジスタであってもよい。
【0044】
以下、駆動トランジスタQ2,Q4,Q6を「ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6」、駆動トランジスタQ1,Q3,Q5を「ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5」とも称する。また、Vuh,Vvh,Vwh,Vul,Vvl,Vwlは、制御電極のみならず、各制御電極に印加される駆動信号(電圧)をも表すものとする。
【0045】
プルアップ抵抗Ru2,Ru4,Ru6は、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6の各制御電極を電源電圧Vccにプルアップする抵抗である。具体的に、プルアップ抵抗Ru2は、ローサイドトランジスタQ2の制御電極Vulと電源ラインVccとの間に接続される。プルアップ抵抗Ru4は、ローサイドトランジスタQ4の制御電極Vvlと電源ラインVccとの間に接続される。プルアップ抵抗Ru6は、ローサイドトランジスタQ6の制御電極Vwlと電源ラインVccとの間に接続される。
【0046】
なお、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5の各制御電極Vuh,Vvh,Vwhと電源ラインVccとの間にプルアップ抵抗がそれぞれ接続されているが、図1においてそれらのプルアップ抵抗の図示は省略されている。
【0047】
プリドライブ回路2bは、制御回路10から出力された駆動制御信号Sdに応じて、各駆動トランジスタQ1~Q6の制御電極Vuh,Vvh,Vwh,Vul,Vvl,Vwlを駆動する。
【0048】
ここで、駆動制御信号Sdは、モータ3の駆動を制御するための信号であり、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。具体的には、駆動制御信号Sdは、インバータ回路2aを構成する各駆動トランジスタQ1~Q6のオン/オフの状態によって定まるモータ3のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンを切り替えるための信号である。より具体的には、駆動制御信号Sdは、インバータ回路2aの各駆動トランジスタQ1~Q6に対応する6種類のPWM信号を含む。
【0049】
プリドライブ回路2bは、制御回路10から供給された駆動制御信号Sdとしての6種類のPWM信号に基づいて、インバータ回路2aの各駆動トランジスタQ1~Q6の制御電極(ゲート電極)を駆動するのに十分な電力を供給可能な6種類の駆動信号Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwlを生成する。
【0050】
これらの駆動信号Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwlがインバータ回路2aの各駆動トランジスタQ1~Q6の制御電極(ゲート電極)に入力されることにより、各駆動トランジスタQ1~Q6がオン・オフ動作(スイッチング動作)を行う。例えば、各相に対応するスイッチングレグの上側アームのハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5と下側アームのローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6は、交互にオン・オフ動作を行う。これにより、モータ3の各相のコイルに電源ラインVccから電力が供給され、モータ3が回転する。
【0051】
なお、プリドライブ回路2bは、制御回路10内に設けられていてもよい。
【0052】
電流検出回路2cは、モータ3の複数相のコイルLu,Lv,Lwに流れる電流を検出するための回路である。電流検出回路2cは、各相のコイルLu,Lv,Lwに流れる電流(相電流)を検出し、検出した電流に応じた電流検出信号Siを出力する。
【0053】
電流検出回路2cは、例えば、インバータ回路2aと直列に接続され、電流検出信号Siとして、各コイルLu,Lv,Lwの相電流を示す信号を出力する。
【0054】
例えば、電流検出回路2cは、電流検出素子としての少なくとも一つの抵抗(シャント抵抗)を含む。シャント抵抗は、例えば、電源ラインVccとグラウンド電位との間にインバータ回路2aと直列に接続されている(1シャント方式)。本実施の形態では、一例として、電流検出回路2cとしてのシャント抵抗が、インバータ回路2aの負側(グラウンド側)に接続されている。電流検出回路2cは、モータ3のコイルLu,Lv,Lwの各相電流を上記抵抗によって電圧に変換し、その電圧を電流検出信号Siとして制御回路10に入力する。
【0055】
位置センサ4は、モータ3のロータの回転位置を検出するための装置である。位置センサ4は、ロータの回転位置に応じた信号を出力する。位置センサ4は、例えば、ホール素子である。図1には、一例として、モータ3のU相、V相、およびW相毎に、位置センサ4u,4v,4wとしてのホール素子が設けられた場合が示されている。以下、位置センサ4u,4v,4wを「ホール素子4u,4v,4w」とも称する。
【0056】
ホール素子4u,4v,4wは、例えば、互いに略等間隔(例えば、隣り合うものと120度の間隔)にモータ3のロータの周囲に配置されている。ホール素子4u,4v,4wは、それぞれ、ロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を回転位置検出信号Hu,Hv,Hwとして出力する。回転位置検出信号Hu,Hv,Hwは、制御回路10に入力される。
【0057】
なお、制御回路10には、このようなホール信号に代えて、モータ3のロータの回転位置に対応する他の信号が回転位置検出信号として入力されるように構成されていてもよい。例えば、エンコーダやレゾルバ等を設け、その検出信号が制御回路10に入力されるようにしてもよい。
【0058】
制御回路10は、モータ3の駆動を制御するための駆動制御信号Sdを生成する回路である。制御回路10は、例えば、外部から入力される、モータ3の動作の目標状態を指示する駆動指令信号Scに基づいて、モータ3を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成し、モータ3の駆動を制御する。例えば、制御回路10は、電流検出回路2cからの電流検出信号Si、および位置センサ4u,4v,4wからの回転位置検出信号Hu,Hv,Hwに基づいて、モータ3のロータの回転速度やトルク等の情報を得ることでモータ3の回転状態を監視するとともに、モータ3が駆動指令信号Scによって指定された動作状態となるように駆動制御信号Sdを生成して、駆動回路2に与える。また、制御回路10は、駆動回路2の電源電圧Vcc(電源ラインVcc)を監視し、電源電圧Vccの低下を検出した場合に、後述するブレーキ制御を行う。
【0059】
制御回路10は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)である。
【0060】
なお、モータ駆動制御装置1において、制御回路10と駆動回路2がそれぞれ個別の集積回路装置として夫々パッケージ化されていてもよいし、制御回路10の少なくとも一部と駆動回路2の少なくとも一部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化されていてもよい。
【0061】
図2は、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1における制御回路10の機能ブロック構成を示す図である。
【0062】
図2に示すように、制御回路10は、駆動制御信号Sdを生成するための機能ブロックとして、例えば、駆動指令取得部11、回転速度取得部12、電源電圧監視部13、および駆動制御信号生成部14を有する。
【0063】
これらの機能ブロックは、例えば、制御回路10としてのプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。なお、これらの機能ブロックのうち少なくとも一部が専用のハードウェアロジック回路によって実現されていてもよい。
【0064】
駆動指令取得部11は、例えば外部から駆動指令信号Scを受信し、受信した駆動指令信号Scを解析することにより、駆動指令信号Scで指定されたモータ3の目標となる動作状態を指定する値を取得する。
【0065】
駆動指令信号Scは、モータ3の動作の目標状態を指示する値を含む。駆動指令信号Scは、例えば、モータ駆動制御装置1の外部に設けられた、モータユニット100を制御するための上位装置から出力される信号である。
【0066】
駆動指令信号Scは、例えば、モータ3のロータの回転速度を指定する速度指令信号である。例えば、駆動指令信号Scは、モータ3のロータの目標となる回転速度(目標回転速度)の値を含んでいる。駆動指令信号Scは、例えば、指定する目標回転速度に応じたデューティ比を有するPWM信号である。駆動指令取得部11は、例えば、駆動指令信号ScとしてのPWM信号のデューティ比を計測し、計測したデューティ比に応じた回転速度を目標回転速度として出力する。
【0067】
回転速度取得部12は、モータ3のロータの回転速度の計測値を取得する機能部である。回転速度取得部12は、位置センサ4u,4v,4wから出力された回転位置検出信号Hu,Hv,Hwに基づいて、公知の計算手法により、モータ3のロータの回転速度を算出する。
【0068】
電源電圧監視部13は、駆動回路2の電源電圧Vccを監視する機能部である。電源電圧監視部13は、電圧検出回路6から出力された電圧検出信号Svに基づいて電源電圧Vccの大きさを計測するとともに、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いか否かを判定し、判定結果を示す電圧判定信号Smを出力する。電源電圧監視部13は、例えば、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより大きい場合に、信号レベルが第1論理レベル(例えば、ローレベル)である電圧判定信号Smを出力し、電源電圧Vccが閾値電圧Vth以下の場合に、信号レベルが第2論理レベル(例えば、ハイレベル)である電圧判定信号Smを出力する。
【0069】
なお、電源電圧監視部13は、電源電圧Vccが閾値電圧Vth以下となったことを検出した場合に、電圧判定信号Smの信号レベルを第2論理レベルに固定してもよいし、閾値電圧Vthをより高い値に再設定してもよい(ヒステリシス特性)。これにより、電源電圧Vccの変動によって電圧判定信号Smの信号レベルが頻繁に切り替わることを防止することができる。
【0070】
駆動制御信号生成部14は、駆動制御信号Sdを生成する機能部である。駆動制御信号生成部14は、電源電圧監視部13から出力された電圧判定信号Sm、駆動指令取得部11から出力された目標回転速度、回転速度取得部12から出力された回転速度、および電流検出回路2cから出力された電流検出信号Siの少なくとも一つに基づいて、駆動制御信号Sdを生成する。
【0071】
ここで、駆動制御信号Sdは、インバータ回路2aの各駆動トランジスタQ1~Q6を駆動するための駆動信号Vuh,Vvh,Vwh,Vul,Vvl,Vwlにそれぞれ対応する6種類のPWM信号を含む。
【0072】
例えば、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより大きい場合(例えば、電圧判定信号Smがローレベル)に、駆動制御信号生成部14は通常制御を行う。通常制御は、例えば、PID制御演算やベクトル制御演算等の公知の演算手法により、目標回転速度と回転速度取得部12から出力された回転速度とが一致するようにデューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する制御である。
【0073】
なお、通常制御では、駆動制御信号生成部14は、電流検出信号Siに基づく相電流が所定値を超えないように、デューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力してもよい。
【0074】
一方、電源電圧Vccが閾値電圧Vth以下である場合(例えば、電圧判定信号Smがハイレベル)に、駆動制御信号生成部14はブレーキ制御を行う。ブレーキ制御は、複数のスイッチングレグ20u,20v,20wにおいて、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5をオフし、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を周期的にスイッチングさせる駆動制御信号Sdを生成する制御である。
【0075】
駆動制御信号生成部14は、制御回路10(電源電圧監視部13)が電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いこと(例えば、Vcc≦Vth)を検出してから制御回路10が動作不能な状態になるまで、ブレーキ制御を継続する。
【0076】
ここで、制御回路10が動作不能な状態とは、例えば制御回路10の電源電圧Vddの低下等により、制御回路10が制御回路10として要求されている機能(仕様)を発揮できない状態をいう。
【0077】
以下、ブレーキ制御について、図を用いて詳細に説明する。
【0078】
図3は、ブレーキ制御における駆動信号Vuh,Vvh,Vwh,Vul,Vvl,Vwlの一例を示すタイミングチャートである。
【0079】
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は各信号の信号レベルを表している。図3において、図3の紙面の上側から下側に向かって電源電圧Vcc、電圧判定信号Sm、ハイサイドトランジスタQ1の駆動信号Vuh、ハイサイドトランジスタQ3の駆動信号Vvh、ハイサイドトランジスタQ5の駆動信号Vwh、ローサイドトランジスタQ2の駆動信号Vul、ローサイドトランジスタQ4の駆動信号Vvl、ローサイドトランジスタQ6の駆動信号Vwlのそれぞれの波形が示されている。
【0080】
ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5は、例えば、それぞれに対応する駆動信号Vuh,Vvh,Vwhがハイレベルであるときにオフし、ローレベルであるときにオンする。ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6は、例えば、それぞれに対応する駆動信号Vul,Vvl,Vwlがローレベルであるときにオフし、ハイレベルであるときにオンする。
【0081】
なお、図3に示す各電圧の波形は模式的なものであり、実際の波形とは異なることに留意されたい。
【0082】
例えば、初期状態として、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより大きい場合を考える。この場合、電源電圧監視部13がローレベルの電圧判定信号Smを出力し、駆動制御信号生成部14が、通常制御によって駆動制御信号Sdを生成してモータ3を駆動する。
【0083】
その後、例えば図3の時刻t1において、外部からモータ駆動制御装置1への電源(直流電圧)の供給が停止したとする。このとき、電源ラインVccに接続されている安定化容量などにより、電源ラインVccの電圧、すなわち電源電圧Vccは、緩やかに低下し始める。
【0084】
例えば、時刻t2において電源電圧Vccが閾値電圧Vth以下となったとき、電源電圧監視部13は、電圧判定信号Smの信号レベルをローレベルからハイレベルに切り替える。これにより、駆動制御信号生成部14が、通常制御からブレーキ制御に切り替えて駆動制御信号Sdを生成する。より好ましくは、駆動制御信号生成部14は、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5およびローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を共にオフさせる期間(デッドタイム)Tdの経過後に、通常制御からブレーキ制御に切り替えて、駆動制御信号Sdを生成する。
【0085】
例えば、時刻t2において、駆動制御信号生成部14は、電圧判定信号Smの信号レベルをローレベルからハイレベルに切り替わったことを検出した場合に、先ず、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5およびローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を共にオフさせる。そして、時刻t2から所定時間が経過した時刻t3において、駆動制御信号生成部14は、ブレーキ制御を開始する。ブレーキ制御において、駆動制御信号生成部14は、ハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5の駆動信号Vuh,Vvh,Vwhをハイレベルにし、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6の駆動信号Vul,Vvl,Vwlを所定のデューティ比のPWM信号とする。なお、特に限定されないが、ブレーキ制御におけるローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6の駆動信号Vul,Vvl,Vwlのデューティ比は、例えば、50%以下であることが好ましい。これによれば、ブレーキ制御の開始直後に電源電圧Vccが上がり過ぎることを防止できる。
【0086】
その後、電源電圧Vddが低下して制御回路10の電源が遮断され、制御回路10が動作不能な状態になる時刻t4まで、駆動制御信号生成部14は、ブレーキ制御による駆動制御信号Sdの生成を継続する。
【0087】
ブレーキ制御において、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がオンしている期間では、各相のコイルLu,Lv,Lwがグラウンド電位に短絡される。これにより、モータ3はブレーキ(ショートブレーキ)がかけられた状態となるので、モータ3(ロータ)の回転速度が低下する。
【0088】
一方、ブレーキ制御において、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がオフしている期間では、ロータが惰性で回転する。このとき、各相のコイルLu,Lv,Lwから電源ラインVcc側に電流が流れ込むので、電源電圧Vccが上昇する。これにより、電源電圧Vccの低下が緩やかになるため、電圧生成回路5から制御回路10に供給される電源電圧Vddの低下も緩やかになり、制御回路10の動作可能な時間を延ばすことが可能となる。すなわち、ブレーキ制御が行われる期間が長くなる。
【0089】
このように、ブレーキ制御によれば、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がオンする期間にモータ3(ロータ)にブレーキをかけ、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がオフする期間にモータ3(ロータ)を惰性で回転させることが交互に繰り返される。これにより、電源が遮断されてから制御回路10の動作が停止するまでの間に、モータ3の回転速度を十分に低下させることが可能となり、制御回路10の動作停止後のブレーキ電流を低減させることができる。
【0090】
図4Aは、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1において、電源が遮断されたときのモータの電流のシミュレーション結果を示す図である。
【0091】
図4Bは、本願発明者による先行検討例に係るモータ駆動制御装置(比較例)において、電源が遮断されたときのモータの電流のシミュレーション結果を示す図である。
【0092】
図4Aおよび図4Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は各信号の信号レベルを表している。図4Aおよび図4Bにおいて、図4Aおよび図4Bの紙面の上側から下側に向かって電源電圧Vcc、2相のコイル間の電圧Vcoil、コイルの相電流Icoilのそれぞれの波形が示されている。
【0093】
図4Bに示すように、本願発明者の先行検討例のモータ駆動制御装置によれば、時刻tb1において外部からの電源供給が停止し、時刻tb2において制御回路(マイコン)が電源遮断状態となった場合、ブレーキ制御が行われていないことからモータの回転速度が十分に低下しない。そのため、時刻tb2においてインバータ回路のローサイドトランジスタがプルアップ抵抗によって強制的にオンさせられることにより、大きなブレーキ電流(コイルの電流)が流れる。
【0094】
これに対し、図4Aに示すように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、制御回路10の電源遮断後に発生するモータのブレーキ電流が、上述の先行検討例に比べて小さくなる。具体的には、時刻ta1において外部からの電源供給が停止し、時刻ta2において電源電圧Vccが閾値電圧以下となったとき、制御回路10が、ブレーキ制御を開始し、インバータ回路2aのハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5をオフした状態でローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を所定のデューティ比のPWM信号によってスイッチングする。これにより、モータ3のブレーキ動作とモータ3の惰性回転が繰り返されるので、モータ3の回転速度の低下が促進される。
【0095】
また、上述したように、ブレーキ制御によって電源電圧Vccの低下が緩やかになるため、先行検討例に比べて、制御回路10の動作可能な時間が長くなる。これにより、ブレーキ制御が行われる期間が長くなるので、回転速度の低下がより促進される。
【0096】
その後、時刻ta3において制御回路10が電源遮断状態となったとき、先行検討例と同様にインバータ回路2aのローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がプルアップ抵抗によって強制的にオンさせられ、ブレーキ電流が流れる。このとき、モータ3の回転速度が十分に低下しているため、図4Aに示すように、上述の先行検討例に比べてブレーキ電流が大幅に小さくなる。
【0097】
図5は、電源遮断時のインバータ回路のローサイドトランジスタの温度変化の一例を示す図である。
【0098】
図5において、横軸は時間を表し、縦軸は温度を表している。参照符号501は、先行検討例に係るモータ駆動制御装置における、電源遮断前後のインバータ回路のローサイドトランジスタの最大温度の変化を表し、参照符号502は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1における、電源遮断前後のインバータ回路のローサイドトランジスタの最大温度の変化を表している。
【0099】
図5から理解されるように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、上述したように電源遮断後にローサイドトランジスタに流れるモータ3のブレーキ電流を大幅に抑制できるので、先行検討例に比べて、ローサイドトランジスタの温度上昇を抑えることができる。
【0100】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、上述したように、モータ3を駆動するインバータ回路2aのローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6の制御電極Vul,Vvl,Vwlと電源ラインVccとの間に接続されたプルアップ抵抗Ru2,Ru4,Ru6を備える。モータ駆動制御装置1は、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低い場合に、インバータ回路2aのハイサイドトランジスタQ1,Q3,Q5をオフし、ローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6を周期的にスイッチングさせる駆動制御信号Sdを生成するブレーキ制御を行う。
【0101】
これによれば、上述したように、モータ駆動制御装置1への電源供給が停止してから制御回路10の電源遮断が発生するまでの間に、モータ3のブレーキ動作とモータ3の惰性回転とが交互に繰り返されるので、モータ3の回転速度を十分に低下させることが可能となる。その結果、電源遮断後にローサイドトランジスタQ2,Q4,Q6がプルアップ抵抗Ru2,Ru4,Ru6によって強制的にオンさせられたときに、モータ3に流れるブレーキ電流を抑えることが可能となる。
【0102】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、電源遮断に、モータ3を速やかに停止させつつ、ブレーキ電流を抑えることが可能となる。
【0103】
また、制御回路10は、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いことを検出してから制御回路10が動作不能な状態になるまで、ブレーキ制御を継続する。これによれば、ブレーキ制御が行われる期間を可能な限り延ばすことができるので、モータ3の回転速度をより低下させることが可能となる。
【0104】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、インバータ回路2aを駆動するための昇圧回路が不要であるから、制御基板上の限られたスペース内にモータを制御する構成部品を容易に配置することが可能となる。
【0105】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0106】
例えば、上記実施の形態において、制御回路10は、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いことを検出してから制御回路10が動作不能な状態になるまで、ブレーキ制御を継続する場合を例示したが、これに限られない。具体的には、制御回路10は、電源電圧Vccが閾値電圧Vthより低いことを検出してから所定の期間、ブレーキ制御を継続してもよい。例えば、ブレーキ制御の実施期間を指定する情報を制御回路10内の記憶装置(不図示)に予め記憶させておく。制御回路10は、ブレーキ制御の開始とともにタイマによる計時を開始し、計測時間が上記記憶装置に記憶された実施期間に到達した場合に、ブレーキ制御を停止する。これによれば、モータユニット100が適用されるアプリケーション等に応じた適切な期間だけブレーキ制御を実施することが可能となる。また、ブレーキ制御の実施期間を指定する情報を書き換えとすることにより、ユーザ等がブレーキ制御の実施期間を任意に設定することが可能となる。
【0107】
また、上記実施の形態おいて、モータ3の回転速度を位置センサ4u,4v,4wからの位置検出信号に基づいて算出する場合を例示したが、これに限られず、公知のモータのセンサレス制御に基づく演算によって、制御回路10(回転速度取得部12)が回転速度を算出してもよい。この場合、位置センサ4u,4v,4wは不要である。
【0108】
また、上記実施の形態おいて、電流検出回路2cとしてインバータ回路2aに直列に接続されたシャント抵抗によって各相電流を検出する手法を例示したが、公知の他の電流検出技術によって各相電流を検出してもよい。例えば、各相のコイルとそれらに接続されるインバータ回路2aの各駆動トランジスタが共通に接続される点との間に設けられたシャント抵抗によって各相電流を検出してもよい(3シャント方式)。なお、モータユニット100が、電流検出が不要なアプリケーションに適用される場合には、電流検出回路2cを設けなくてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態おいて、駆動指令信号Scが、モータ3の回転速度の目標値(目標回転速度)を含む速度指令信号である場合を例示したが、これに限られない。例えば、駆動指令信号Scは、モータ3のトルクを指定するトルク指令信号であってもよい。
【0110】
また、上記実施の形態において、モータ駆動制御装置により駆動されるモータ3の相数は、3相に限られない。
【符号の説明】
【0111】
1…モータ駆動制御装置、2…駆動回路、2a…インバータ回路、2b…プリドライブ回路、2c…電流検出回路、3…モータ、4u,4v,4w…位置センサ(ホール素子)、5…電圧生成回路、6…電圧検出回路、10…制御回路、11…駆動指令取得部、12…回転速度取得部、13…電源電圧監視部、14…駆動制御信号生成部、20u,20v,20w…スイッチングレグ、Nu,Nv,Nw…ノード、Q1,Q3,Q5…ハイサイドトランジスタ、Q2,Q4,Q5…ローサイドトランジスタ、R1,R2…抵抗、Ru2,Ru4,Ru6…プルアップ抵抗、Vcc・・・電源電圧、Vdd…電源電圧、Vuh,Vul,Vvh,Vvl,Vwh,Vwl…制御電極(駆動信号)、Sc…駆動指令信号、Sd…駆動制御信号、Si…電流検出信号、Sm…電圧判定信号、Sv…電圧検出信号、Hu,Hv,Hw…回転位置検出信号。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5