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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121357
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】駆動軸の製造方法、金型及び駆動軸
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/072 20060101AFI20240830BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16D1/072
F16D1/06 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028419
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】舘 良坪
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 暁生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 允厚
(57)【要約】
【課題】製造効率の低下を抑制できる駆動軸の製造方法などを提供する。
【解決手段】駆動軸の製造方法は、ヨーク(171)と、ヨークに対して同一の軸方向に沿って組み付けられた軸部材(150)とを備える駆動軸(100)の製造方法である。ヨーク及び軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔(174)であって、軸方向に延びる凹溝(176)が内周面(175)に形成された貫通孔を有している。他方は、軸方向に延びる筒状に形成されている。製造方法は、一方の貫通孔に他方を挿入する挿入工程と、挿入工程の後に、凹溝に対応する凸条部(223)を有する金型(200)を他方の先端部(152)内に押し込んで、他方の先端部を凹溝に対応する外形に変形させる変形工程と、を含む。
【選択図】図9C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークと、前記ヨークに対して同一の軸方向に沿って組み付けられた軸部材とを備える駆動軸の製造方法であって、
前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、
前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、
前記製造方法は、
前記一方の前記貫通孔に前記他方を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記凹溝に対応する凸条部を有する金型を前記他方の先端部内に押し込んで、前記他方の先端部を前記凹溝に対応する外形に変形させる変形工程と、を含む、
駆動軸の製造方法。
【請求項2】
前記金型は、当該金型を前記他方の先端部に押し込む際の先方側の一端部よりも外形の大きい拡大部を有し、
前記製造方法は、
前記変形工程の後に、さらに前記金型を前記他方の先端部内に押し込んで、前記他方の先端部を径方向外方に突出させることで、前記他方の先端部が前記貫通孔から抜けるのを規制する規制部を形成する規制部形成工程を含む、
請求項1に記載の駆動軸の製造方法。
【請求項3】
ヨークと、軸部材とを同一の軸方向に沿って組み付ける際に用いられる軸状の金型であって、
前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、
前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、
前記金型は、
前記凹溝に対応する凸条部を有し、
前記一方の前記貫通孔に挿入された前記他方の先端部内に押し込められることで、前記凸条部によって前記他方の先端部を前記凹溝に対応する外形に変形させる
金型。
【請求項4】
前記金型は、当該金型を前記他方の先端部に押し込む際の先方側の一端部よりも外形の大きい拡大部を有する、
請求項3に記載の金型。
【請求項5】
ヨークと、前記ヨークに対して同一の軸方向に沿って組み付けられた軸部材とを備える駆動軸であって、
前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、
前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、
前記他方の外周面には前記凹溝に嵌合する凸部が形成されていて、
前記他方の内周面における前記凸部に対応する部位は窪んでいる、
駆動軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸の製造方法、金型及び駆動軸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインターミディエイトシャフトにおいては、ヨークと軸部材とのそれぞれにセレーションが形成されていて、これらが圧入されて噛み合うことで嵌合されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-40420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヨークと軸部材との双方にセレーションを形成するには、それだけ高精度な加工が必要であり、製造効率が低下する一因となっていた。
【0005】
このため、本発明の目的は、製造効率の低下を抑制できる駆動軸の製造方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る駆動軸の製造方法は、ヨークと、前記ヨークに対して同一の軸方向に沿って組み付けられた軸部材とを備える駆動軸の製造方法であって、前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、前記製造方法は、前記一方の前記貫通孔に前記他方を挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後に、前記凹溝に対応する凸条部を有する金型を前記他方の先端部内に押し込んで、前記他方の先端部を前記凹溝に対応する外形に変形させる変形工程と、を含む。
【0007】
本発明の他の態様に係る金型は、ヨークと、軸部材とを同一の軸方向に沿って組み付ける際に用いられる軸状の金型であって、前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、前記金型は、前記凹溝に対応する凸条部を有し、前記一方の前記貫通孔に挿入された前記他方の先端部内に押し込められることで、前記凸条部によって前記他方の先端部を前記凹溝に対応する外形に変形させる。
【0008】
本発明の他の態様に係る駆動軸は、ヨークと、前記ヨークに対して同一の軸方向に沿って組み付けられた軸部材とを備える駆動軸であって、前記ヨーク及び前記軸部材の一方は、他方が挿入される貫通孔であって、前記軸方向に延びる凹溝が内周面に形成された貫通孔を有しており、前記他方は、前記軸方向に延びる筒状に形成されており、前記他方の外周面には前記凹溝に嵌合する凸部が形成されていて、前記他方の内周面における前記凸部に対応する部位は窪んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動軸の製造効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るインターミディエイトシャフトの使用形態の一例を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係るインターミディエイトシャフトの概略構成を示す平面図である。
図3】実施の形態1に係る内軸の一端部の接合前の状態を示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係る内軸の一端部の接合前の状態を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係る第一ヨークの接合前の状態を示す斜視図である。
図6】実施の形態1に係る第一ヨークの接合前の状態を示す平面図である。
図7】実施の形態1に係る金型を示す斜視図である。
図8】実施の形態1に係る金型を示す平面図である。
図9A図9Aは、実施の形態1に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
図9B図9Bは、実施の形態1に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
図9C図9Cは、実施の形態1に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
図10】実施の形態1に係る金型のテーパ部が、内軸の一端部に挿入される直前の状態を示す平面図である。
図11】実施の形態1に係る変形工程後の内軸の一端部及び第一ヨークを示す平面図である。
図12A図12Aは、実施の形態2に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
図12B図12Bは、実施の形態2に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
図12C図12Cは、実施の形態2に係る接合方法の一工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0012】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0013】
(実施の形態1)
[インターミディエイトシャフトの構造]
図1は、実施の形態1に係るインターミディエイトシャフト100の使用形態の一例を示す模式図である。図1に示すように、インターミディエイトシャフト100は、自動車のステアリング装置10に設けられている。具体的には、ステアリング装置10は、一端にステアリングホイール11が連結されたステアリングシャフト12と、ピニオン軸13及びラック軸14を含むラックアンドピニオン機構からなり転舵輪15を転舵する転舵機構16と、ステアリングシャフト12とピニオン軸13との間に介在して操舵トルクを伝達するインターミディエイトシャフト100とを備えている。
【0014】
インターミディエイトシャフト100の一方の端部は、第一自在継手17を介してステアリングシャフト12と連結されている。インターミディエイトシャフト100の他方の端部は、第二自在継手18を介してピニオン軸13と連結されている。
【0015】
ステアリングホイール11が操作されてステアリングシャフト12が回転されると、その回転がインターミディエイトシャフト100を介してピニオン軸13及びラック軸14に伝達される。これにより、転舵機構16は転舵輪15を転舵させる。
【0016】
次に、本実施の形態に係るインターミディエイトシャフト100について詳細に説明する。インターミディエイトシャフト100は、本発明に係る駆動軸の一例である。図2は、実施の形態1に係るインターミディエイトシャフト100の概略構成を示す平面図である。図2以降の図において、X軸方向をインターミディエイトシャフト100の軸方向とした直交座標系とする。つまり、互いに直交するY軸方向及びZ軸方向も、X軸方向に直交している。以下の説明では、X軸プラス方向の端部を一端部と称し、X軸マイナス方向の端部を他端部と称す。
【0017】
図2に示すようにインターミディエイトシャフト100は、伸縮自在な中間シャフト110と、中間シャフト110の一端部に設けられた第一自在継手17と、中間シャフト110の他端部に設けられた第二自在継手18とを備えている。なお、図2においては、第一自在継手17の一部である第一ヨーク171のみを図示している。第一自在継手17は、第一ヨーク171と、ステアリングシャフト12に結合された第二ヨーク(図示省略)と、第一ヨーク171と第二ヨークとを連結する十字軸(図示省略)とを含む。十字軸の各軸部は、図示しない軸受を介して、第一ヨーク171と第二ヨークとのそれぞれのアームに回転自在に支持されている。
【0018】
第一ヨーク171は、鉄、アルミニウムなどの金属から形成されており、基部172と、一対のアーム173とを有している。基部172は、その中央にX軸方向に沿う貫通孔174が形成されている。貫通孔174は、X軸方向視における断面形状が、内軸150の断面形状に対応した形状となっている。一対のアーム173は、基部172のZ軸方向の両端部からX軸プラス方向に延設された部位である。この一対のアーム173には、図示しない軸受を介して十字軸における一対の軸部が回転自在に支持されている。
【0019】
また、図2においては、第二自在継手18の一部である第一ヨーク181のみを図示している。第二自在継手18は、第一ヨーク181と、ピニオン軸13に結合された第二ヨーク(図示省略)と、第一ヨーク181と第二ヨークとを連結する十字軸(図示省略)とを含む。十字軸の各軸部は、図示しない軸受を介して、第一ヨーク181と第二ヨークのそれぞれのアームに回転自在に支持されている。第一ヨーク181の具体的な構成は、第一自在継手17の第一ヨーク171と同等であるので詳細な説明は省略する。
【0020】
中間シャフト110は、外軸140と、内軸150とを備えている。外軸140の他端部には、第二自在継手18の第一ヨーク181が接合されている。外軸140は、例えば鉄、アルミニウムなどの金属から形成された円筒状の軸部材であり、X軸方向視における中央部に貫通孔141を有している。貫通孔141は、X軸方向視における断面形状が全長にわたって一様な形状となっているが、一様な形状でなくてもよい。貫通孔141内には、X軸プラス方向から内軸150がX軸方向にスライド自在に挿入されている。貫通孔141の断面形状は、内軸150をX軸方向にスライド自在とし、X軸方向を中心とした回転を規制する形状となっている。具体的には、貫通孔141の断面形状は、内軸150の断面形状に対応した形状となっている。外軸140の他端部には、第一ヨーク181が接合されている。
【0021】
内軸150は、例えば鉄、アルミニウムなどの金属からなる円筒状の軸部材である。具体的には、内軸150は、本体部151と、本体部151に連続し、第一自在継手17の第一ヨーク171が接合された一端部152とを有している。
【0022】
[接合方法]
次に、インターミディエイトシャフト100の製造方法の一工程である、内軸150の一端部152と、第一ヨーク171との接合方法について説明する。まず、内軸150の一端部152と、第一ヨーク171とのそれぞれの接合前の状態について説明する。
【0023】
図3は、実施の形態1に係る内軸150の一端部152の接合前の状態を示す斜視図である。図4は、実施の形態1に係る内軸150の一端部152の接合前の状態を示す平面図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、内軸150は、全体としてX軸方向に貫通した円筒状部材である。内軸150の本体部151のX軸プラス方向の端部からは、一端部152がX軸プラス方向に突出している。一端部152の内径は本体部151の内径と同じであるが、一端部152の外径は本体部151の外径よりも小さい。接合前において一端部152は、外周面152a及び内周面152bがX軸方向視で円形となっている。
【0025】
図5は、実施の形態1に係る第一ヨーク171の接合前の状態を示す斜視図である。図6は、実施の形態1に係る第一ヨーク171の接合前の状態を示す平面図である。
【0026】
図5及び図6に示すように、第一ヨーク171の貫通孔174をなす内周面175には、軸方向(X軸方向)に延びる複数の凹溝176が形成されている。複数の凹溝176は、周方向に均等な間隔で配列されている。内周面175において、各凹溝176が形成されていない部分は複数の凸面177であり、第一基準円C1上に配置されている。第一基準円C1は、内軸150の一端部152が挿入可能な大きさとなっている。各凹溝176における第一基準円C1から底面までの深さは同等である。この貫通孔174内に内軸150の一端部152が挿入されると、一端部152の外周面152aが各凸面177に嵌合する。
【0027】
次に、接合方法で用いられる金型200について説明する。金型200は、内軸150の一端部152と、第一ヨーク171とを接合する際に、一端部152を塑性変形させるための金型である。
【0028】
図7は、実施の形態1に係る金型200を示す斜視図である。図8は、実施の形態1に係る金型200を示す平面図である。図7及び図8に示すように、金型200は、X軸方向を軸方向とした軸状の中実部材である。金型200は、内軸150をなす金属よりも硬度が大きい金属から形成されている。金型200は、円柱部210と、中間部220と、テーパ部230とを有しており、X軸プラス方向からマイナス方向にかけてこの順で並んでいる。金型200は、X軸マイナス方向に向けて先細る形状となっている。
【0029】
円柱部210は、円柱状に形成された部位であり、その外径が、一対のアーム173の間隔よりも小さく、接合前における一端部152の外径よりも大きい。
【0030】
中間部220は、円柱を基準とした形状を有する部位である。中間部220は、第一部221と、第二部222とを有する。第一部221は、中間部220におけるX軸プラス方向の基端部であり、第二部222は、中間部220における第一部221以外の部分である。
【0031】
第一部221には、複数の凸条部223が設けられている。各凸条部223は、第一ヨーク171の各凹溝176に対応するように設けられている。各凸条部223は、中間部220のX軸方向の中間位置から円柱部210までX軸方向に沿って延びている。各凸条部223におけるX軸マイナス方向の端部は、X軸マイナス方向に向かうほど中間部220の中心(X軸方向視における中心)に向かう傾斜面224を有する。各凸条部223において傾斜面224にX軸プラス方向で隣り合う凸条面225は、第二基準円C2に沿う面となっている。第二基準円C2は、第一基準円C1よりも小さく、接合前の内軸150の内径よりも大きい。各凸条部223のX軸プラス方向の端部226は、X軸プラス方向に向かうほど径方向外方に向かう断面視凹曲線形状を有している。なお、当該端部226は、X軸プラス方向に向かうほど径方向外方に向かう断面形状を有していればよい。その他の断面形状としては断面視凸曲線形状、断面視直線形状であってもよい。
【0032】
第二部222は、円柱状に形成されている。この第二部222の外径は、接合前の内軸150の内径以下である。厳密には、第二部222の外径は、接合前の内軸150の内径と略同等かわずかに小さい。
【0033】
テーパ部230は、第二部222にX軸マイナス方向で連続しており、X軸マイナス方向に向かうほど外径が小さくなっている。テーパ部230の先端の外径は、接合前の内軸150の内径以下である。なお、第二部222の外径が接合前の内軸150の内径よりも小さい場合には、テーパ部230はなくてもよい。
【0034】
次に、この金型200を用いた接合方法に付いて説明する。図9A図9Cは、実施の形態1に係る接合方法の各工程を示す説明図である。
【0035】
まず、図9Aに示すように作業者は、内軸150の一端部152を、第一ヨーク171の貫通孔174内に挿入した状態で固定治具(図示省略)に取り付ける(挿入工程)。その後、作業者は、金型200を内軸150の一端部152(先端部)内に挿入する。このとき、金型200は、例えばサーボモータを駆動源とした押し込み装置(図示省略)に取り付けられている。金型200は、内軸150の同軸上であって、テーパ部230が一端部152のX軸プラス方向から挿入される姿勢で配置されている。また、金型200の各凸条部223は、第一ヨーク171の各凹溝176に対して位置合わせされている。
【0036】
図10は、実施の形態1に係る金型200のテーパ部230が、内軸150の一端部152に挿入される直前の状態を示す平面図である。つまり、図10に示す状態では、内軸150の一端部152は金型200によって塑性変形されておらず、一端部152の外周面152a及び内周面152bの双方が円形を維持したままである。
【0037】
次いで、作業者は、押し込み装置により金型200をX軸マイナス方向に移動させて、内軸150の一端部152内に金型200を押し込み、当該一端部152を変形させる(変形工程)。具体的には、まず、図9Bに示すように金型200のテーパ部230及び第二部222が内軸150の一端部152内に進入した状態では、当該一端部152は変形されていない。さらに、押し込みが進行すると、金型200の各凸条部223が内軸150の一端部152内に進入する。このとき、各凸条部223のX軸マイナス方向の端部が傾斜面224を有しているので、この傾斜面224により、各凸条部223がスムーズに一端部152内に進入する。さらに押し込みが進行すると、図9Cに示すように各凸条部223が、一端部152において各凹溝176に対応する箇所を各凹溝176内に押し広げる。これにより、内軸150の一端部152が各凹溝176に対応するように変形する。変形工程後には、各凸条部223の端部226及び円柱部210が、一端部152の先端を径方向外方に突出させる(規制部形成工程)。これにより、一端部152の先端は、内軸150の一端部152が貫通孔174から抜けるのを規制する規制部159となる。作業者は金型200を内軸150の一端部152から取り外す。
【0038】
図11は、実施の形態1に係る変形工程後の内軸150の一端部152及び第一ヨーク171を示す平面図である。図11に示すように、内軸150の一端部152の外周面152cには、各凹溝176に嵌合する複数の凸部156が形成されている。これに対し、当該一端部152の内周面152dにおいて、各凸部156に対応する部位は窪んでいる。つまり、製造時に外周面152a及び内周面152bが円形であった一端部152が金型200で塑性変形されて、図11に示すように各凹溝176に対応する外形に変形されたものということがわかる。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係る駆動軸の製造方法は、第一ヨーク171と、第一ヨーク171に対して同一の軸方向(X軸方向)に沿って組み付けられた内軸150とを備えるインターミディエイトシャフト100の製造方法である。第一ヨーク171は、内軸150が挿入される貫通孔174であって、軸方向に延びる凹溝176が内周面175に形成された貫通孔174を有している。内軸150は、軸方向に延びる筒状に形成されている。製造方法は、第一ヨーク171の貫通孔174に内軸150を挿入する挿入工程と、挿入工程の後に、凹溝176に対応する凸条部223を有する金型200を内軸150の一端部152(先端部)内に押し込んで、内軸150の一端部152を凹溝176に対応する外形に変形させる変形工程と、を含む。
【0040】
このように、金型200は、当該金型200を内軸150の一端部152に押し込む際の先方側の一端部(第二基準円C2)よりも外形の大きい拡大部(円柱部210)を有する。製造方法は、変形工程の後に、さらに金型200を内軸150の一端部152内に押し込んで、内軸150の一端部を径方向外方に突出させることで、内軸150の一端部152が貫通孔174から抜けるのを規制する規制部159を形成する規制部形成工程を含む。
【0041】
これによれば、拡大部である円柱部210を有する金型200を用いることで、一連の流れで、変形工程及び規制部形成工程を実行できる。これにより、規制部159を形成する場合であっても製造効率の低下を抑制できる。
【0042】
また、本実施の形態に係る金型は、第一ヨーク171と、内軸150とを同一の軸方向に沿って組み付ける際に用いられる軸状の金型200である。第一ヨーク171は、内軸150が挿入される貫通孔174であって、軸方向に延びる凹溝176が内周面175に形成された貫通孔174を有している。内軸150は、軸方向に延びる筒状に形成されている。金型200は、凹溝176に対応する凸条部223を有している。金型200は、第一ヨーク171の貫通孔174に挿入された内軸150の一端部152内に押し込められることで、凸条部223によって内軸150の一端部152を凹溝176に対応する外形に変形させる。
【0043】
また、本実施の形態に係る駆動軸は、第一ヨーク171と、第一ヨーク171に対して同一の軸方向(X軸方向)に沿って組み付けられた内軸150とを備えるインターミディエイトシャフト100である。第一ヨーク171は、内軸150が挿入される貫通孔174であって、軸方向に延びる凹溝176が内周面175に形成された貫通孔174を有している。内軸150は、軸方向に延びる筒状に形成されている。内軸150の外周面152cには凹溝176に嵌合する凸部156が形成されている。内軸150の内周面152dにおける凸部156に対応する部位は窪んでいる。
【0044】
これらによれば、第一ヨーク171との接合前の状態では、内軸150の一端部152の外周面152a及び内周面152bの双方は円形である。そして、接合時には金型200によって、内軸150の一端部152が凹溝176に対応する外形に変形される。このように、接合前から内軸150の一端部152にセレーションを形成しなくとも、接合後においては、内軸150の一端部152が、第一ヨーク171の凹溝176に噛み合うことになる。内軸150の一端部152にセレーションが不要であるから、内軸150の一端部152を第一ヨーク171に組み付ける際の位相合わせも不要である。これらのことから、製造効率の低下を抑制できる。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る駆動軸の製造方法の一工程である接合方法について説明する。上記実施の形態1と同等の部分については、同等の符号を付してその説明を省略する場合がある。図12A図12Cは、実施の形態2に係る接合方法の各工程を示す説明図である。図12Aに示すように、金型300の中間部320では、X軸方向の全体に複数の凸条部323が形成されている。また、金型300は、全体としてX軸マイナス方向に向けて先細る形状であるので、円柱部310は、金型300の先方側(X軸マイナス方向)の一端部(テーパ部330)よりも外形の大きい拡大部であると言える。なお、本実施の形態では、拡大部として円柱部310を例示したが、テーパ部330よりもX軸方向視で大型であればその外形は如何様でもよい。また、テーパ部330におけるX軸プラス方向の端部の外径は、接合前の内軸150の内径よりも大きい。
【0046】
中間部320と円柱部310の境界近傍では、各凸条部323のX軸プラス方向の端部326が、X軸プラス方向に向かうほど径方向外方に向かう断面視凹曲線形状を有している。なお、当該端部326は、X軸プラス方向に向かうほど径方向外方に向かう断面形状を有していればよい。その他の断面形状としては断面視凸曲線形状、断面視直線形状であってもよい。
【0047】
実施の形態2に係る接合方法では、まず、図12Aに示すように作業者は、内軸150の一端部152を、第一ヨーク171の貫通孔174内に挿入した状態で固定治具(図示省略)に取り付ける(挿入工程)。その後、作業者は、金型300を内軸150の一端部152(先端部)内に挿入する。次いで、作業者は、押し込み装置により金型300をX軸マイナス方向に移動させて、内軸150の一端部152内に金型300を押し込み、当該一端部152を変形させる(変形工程)。具体的には、図12Bに示すように金型300のテーパ部330が内軸150の一端部152を外方に押し広げ、当該一端部152の一部が各凹溝176内に進入し始める。押し込みが進行すると、金型300の各凸条部323が内軸150の一端部152内に進入する。さらに押し込みが進行すると、図12Cに示すように各凸条部323が、一端部152において各凹溝176に対応する箇所を各凹溝176内に押し広げる。これにより、内軸150の一端部152が各凹溝176に対応するように変形する。変形工程後には、規制部形成工程が実行されて、一端部152の先端は、内軸150の一端部152が貫通孔174から抜けるのを規制する規制部159となる。その後、作業者は金型300を内軸150の一端部152から取り外す。
【0048】
(その他)
以上、本発明に係る駆動軸、その製造方法及び金型200について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、軸部材の一例として内軸150を例示したが、軸部材の他の例としては外軸などが挙げられる。つまり、上記実施の形態では、内軸150の一端部152と第一ヨーク171とを接合する際に本発明に係る製造方法を適用した場合を例示したが、外軸140の他端部と第一ヨーク181との接合する際においても本発明に係る製造方法を適用してもよい。
【0050】
上記実施の形態では、駆動軸としてインターミディエイトシャフト100を例示したが、ヨークと軸部材とが同一の軸方向に組み付けられるのであれば、その他の駆動軸に対しても本発明に係る製造方法を適用してもよい。
【0051】
上記実施の形態では、複数の凸条部223を有する金型200を例示したが、凸条部を1つのみ有する金型であってもよい。また、上記実施の形態では、テーパ部230を有する金型200を例示したが、テーパ部を有さない金型であってもよい。
【0052】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、インターミディエイトシャフトなどの駆動軸を製造する際に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…ステアリング装置 11…ステアリングホイール 12…ステアリングシャフト 13…ピニオン軸 14…ラック軸 15…転舵輪 16…転舵機構 17…第一自在継手 18…第二自在継手 100…インターミディエイトシャフト(駆動軸) 110…中間シャフト 140…外軸 141…貫通孔 150…内軸(一方) 151…本体部 152…一端部 152a、152c…外周面 152b、152d…内周面 156…凸部 159…規制部 171…第一ヨーク(他方) 172…基部 173…アーム 174…貫通孔 175…内周面 176…凹溝 177…凸面 181…第一ヨーク 200、300…金型 210、310…円柱部 220、320…中間部 221…第一部 222…第二部 223、323…凸条部 224…傾斜面 225…凸条面 230、330…テーパ部 226、326…端部 C1…第一基準円C2…第二基準円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C