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特開2024-121358円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121358
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
E05D15/06 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028420
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
(72)【発明者】
【氏名】月木 麻由
(72)【発明者】
【氏名】三和 茉由佳
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034AA02
2E034CA04
2E034DA01
(57)【要約】
【課題】円弧状をした引き戸方式のドア体1を緊急開放することを、ハンガーローラ6を縦軸9回りに支持するローラ支持部8をドア体1の上端縁部1cから抜き取ることに基づいて行うようにしたものにおいて、ドア体1の開閉移動等の振動を受けてロック手段Lが不用意にロック解除姿勢に変姿しないようにする。
【解決手段】ローラ支持部8を、ドア体1の前面側から抜き差し自在に挿入した操作体13をロック操作位置からロック解除操作位置に操作することで縦軸9回りに回動させることでロック姿勢からロック解除姿勢に変姿できるようにして不用意なロック解除姿勢への変姿を防止する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先側、戸尻側のパネル体間に形成される出入り口部の開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体と、該ドア体の戸先側、戸尻側の上端縁部に設けられる一対のハンガーローラ具と、ドア体を円弧軌跡に沿って開閉案内する円弧状のハンガーレールとを備えて構成される円弧状ドア装置において、
前記ハンガーローラ具を、
ドア体の上端縁部に上下方向抜き差し移動自在な状態でロック位置に嵌入組み込みされるローラ支持部と、
ハンガーレールを転動するハンガーローラと、
該ハンガーローラをローラ支持部に対して揺動自在に軸支する縦軸と、を備えて構成し、
前記ロック位置に嵌入組み込みされたローラ支持部のドア体からの抜け止めをするためのカバー体と、ロック位置のローラ支持部の抜き差し移動をロックするロック手段とが設けられ、
ドア体の緊急開放を、ロック手段をロック解除姿勢にすることに基づいてローラ支持部がドア体から抜け出ることで行えるように構成するにあたり、
前記ロック手段は、
ローラ支持部の外周面に膨出形成される誘導突部と、
該誘導突部の上端面に、該上端面よりも小面積状態で突出形成される案内突部と、
ローラ支持部および誘導突部が上下方向抜き差し自在に貫通するようカバー体に形成されるローラ支持部用および誘導突部用の貫通孔と、
誘導突部用貫通孔から前記縦軸の軸心回りに沿って延出するようカバー体に形成され、案内突部は貫通するが、誘導突部は貫通しない溝幅に設定されたロック孔溝と、
ドア体から抜き差し自在に挿入された操作体を左右方向の操作案内をしてロック操作位置とロック解除操作位置とにガイドするべくドア体に形成されるガイド孔と、を備え、
ローラ支持部と操作体とを、操作体がロック操作位置に位置する状態では、誘導突部がロック孔溝部位のカバー体下側に位置していてローラ支持部がカバー体から抜け出ることがロックされるロック姿勢となり、操作体がロック解除操作位置に位置する状態では、誘導突部が誘導突部用貫通孔位置に位置していてカバー体から抜け出ることが許容されるロック解除姿勢となるよう連携したことを特徴とする円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項2】
誘導突部には、ローラ支持部がカバー体から抜け出る際に誘導突部用貫通孔に摺接して抵抗を付与する抵抗付与部が膨出形成されていることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項3】
ドア体に、カバー体によって抜け止めされる状態で、ローラ支持部が上下方向出入り自在に嵌入組み込みされるブラケット部が、縦軸回りに回動自在に組み込まれ、
該ブラケット部に嵌入組み込みされたローラ支持部が、ブラケット部に形成の誘導突部用嵌入溝に誘導突部が上下方向抜き差し自在に嵌入組み込みされることで、ブラケット部と共に縦軸周りに一体回動するよう構成して、
ドア体から挿入した操作体とローラ支持部とを、ブラケット部を介して連携したことを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項4】
誘導突部用嵌入溝の上側部位は、溝幅が幅広になっていて誘導突部を嵌入組み込みする際の誘導をする誘導部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【請求項5】
ドア体には、ブラケット部の下側部を内嵌するベース部が、縦軸周りの回動が規制される状態で設けられ、
ベース部に内嵌したブラケット部は、上動スペースを存する状態でドア体に組み込まれ、
前記ベース部の上端縁部に、ブラケット部から突出する作動体が出入り自在に係合する係合溝が形成されたものとして、
操作体をロック操作位置からロック解除操作位置側に操作したときに、係合溝に係合している作動体が、該係合溝から抜け出るべくブラケット部が上動することでローラ支持部とブラケット部とが縦軸周りに一体回動するように構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られたブース(小部屋)の出入り口に設けられる円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等の仕切られたブースの出入り口に設けられるドア装置のなかには、円弧状のドア体を円弧軌跡に沿ってスライド移動させることで出入り口の開閉をするようにした所謂円弧状のドア装置が知られている。このような円弧状のドア装置は、左右方向に開き操作する引き戸方式でありながら、ドア体の開閉スペースを、左右直線軌跡に沿って開閉移動させるものに比して狭くできるという利点があり、トイレブース等の狭いブースに採用されることが多い。
ところがこのようなドア装置において、ドア体を開閉するための円弧軌跡がブース内に入り込むよう構成にされることが一般的であり、このようなものでは、ブース内にいる人が何らかの理由により倒れたりした等の緊急事態が発生したとき、ドア体を緊急開放することになるが、該倒れた人が障害物になる等して邪魔になってドア体の緊急開放ができなくなる惧れがある。
そこでこのような円弧状ドア装置では、ドア体がハンガー方式のものである場合、ハンガーレールを転動するローラ部が設けられたハンガーローラ具を、ドア体上端縁部の戸先側と戸尻側との左右二か所に設けたものとしているが、該ハンガーローラ具を、ドア体に対して上下方向抜き差し自在に組み込む構成にし、かつ該ドア体に組み込まれたハンガーローラ具の抜け止めをするロック機構を設けたものにして、緊急事態が発生した場合にロック機構のロック解除操作をした後、左右のハンガーローラ具をドア体から抜き出すことでドア体を取り外せる構成にし、これによってドア体の緊急開放をしてブース内にいる人を救助できるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4343331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来のものは、ドア体を緊急開放するため、ロック手段を構成するロック体を、ロック姿勢からロック解除姿勢に回動操作することになるが、ロック体は、単純にドア体側に設けられる丸孔状のロック孔に挿入されたものをドア体の開閉移動方向を向いた回動操作する構成になっているため、ロック姿勢のロック体が、ドア体の開閉移動時の振動等を受けて不用意に回動操作されてロック解除姿勢に変姿してしまうことが想定される。そこで前記従来のものには、前記不用意な回動操作を規制するため、規制具を設けることも提唱されているが、該規制具の取り付け忘れや、取り付けられた規制具を意図的に取り外してロック解除姿勢に操作するようなことも想定され、平常時にこの様になった場合、ドア体の通常の開閉操作ができなくなってしまう等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、戸先側、戸尻側のパネル体間に形成される出入り口部の開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体と、該ドア体の戸先側、戸尻側の上端縁部に設けられる一対のハンガーローラ具と、ドア体を円弧軌跡に沿って開閉案内する円弧状のハンガーレールとを備えて構成される円弧状ドア装置において、前記ハンガーローラ具を、ドア体の上端縁部に上下方向抜き差し移動自在な状態でロック位置に嵌入組み込みされるローラ支持部と、ハンガーレールを転動するハンガーローラと、該ハンガーローラをローラ支持部に対して揺動自在に軸支する縦軸と、を備えて構成し、前記ロック位置に嵌入組み込みされたローラ支持部のドア体からの抜け止めをするためのカバー体と、ロック位置のローラ支持部の抜き差し移動をロックするロック手段とが設けられ、ドア体の緊急開放を、ロック手段をロック解除姿勢にすることに基づいてローラ支持部がドア体から抜け出ることで行えるように構成するにあたり、前記ロック手段は、ローラ支持部の外周面に膨出形成される誘導突部と、該誘導突部の上端面に、該上端面よりも小面積状態で突出形成される案内突部と、ローラ支持部および誘導突部が上下方向抜き差し自在に貫通するようカバー体に形成されるローラ支持部用および誘導突部用の貫通孔と、誘導突部用貫通孔から前記縦軸の軸心回りに沿って延出するようカバー体に形成され、案内突部は貫通するが、誘導突部は貫通しない溝幅に設定されたロック孔溝と、ドア体から抜き差し自在に挿入された操作体を左右方向の操作案内をしてロック操作位置とロック解除操作位置とにガイドするべくドア体に形成されるガイド孔と、を備え、ローラ支持部と操作体とを、操作体がロック操作位置に位置する状態では、誘導突部がロック孔溝部位のカバー体下側に位置していてローラ支持部がカバー体から抜け出ることがロックされるロック姿勢となり、操作体がロック解除操作位置に位置する状態では、誘導突部が誘導突部用貫通孔位置に位置していてカバー体から抜け出ることが許容されるロック解除姿勢となるよう連携したことを特徴とする円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項2の発明は、誘導突部には、ローラ支持部がカバー体から抜け出る際に誘導突部用貫通孔に摺接して抵抗を付与する抵抗付与部が膨出形成されていることを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項3の発明は、ドア体に、カバー体によって抜け止めされる状態で、ローラ支持部が上下方向出入り自在に嵌入組み込みされるブラケット部が、縦軸回りに回動自在に組み込まれ、該ブラケット部に嵌入組み込みされたローラ支持部が、ブラケット部に形成の誘導突部用嵌入溝に誘導突部が上下方向抜き差し自在に嵌入組み込みされることで、ブラケット部と共に縦軸周りに一体回動するよう構成して、ドア体から挿入した操作体とローラ支持部とを、ブラケット部を介して連携したことを特徴とする請求項1記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項4の発明は、誘導突部用嵌入溝の上側部位は、溝幅が幅広になっていて誘導突部を嵌入組み込みする際の誘導をする誘導部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
請求項5の発明は、ドア体には、ブラケット部の下側部を内嵌するベース部が、縦軸周りの回動が規制される状態で設けられ、ベース部に内嵌したブラケット部は、上動スペースを存する状態でドア体に組み込まれ、前記ベース部の上端縁部に、ブラケット部から突出する作動体が出入り自在に係合する係合溝が形成されたものとして、操作体をロック操作位置からロック解除操作位置側に操作したときに、係合溝に係合している作動体が、該係合溝から抜け出るべくブラケット部が上動することでローラ支持部とブラケット部とが縦軸周りに一体回動するように構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、円弧状をしたドア体を緊急開放するため設けられるロック手段をロック姿勢からロック解除姿勢にするには、ローラ支持部に挿入した操作体をロック操作位置からロック解除操作位置に操作することになるが、その場合にローラ支持部は、縦軸回りに回動することになって、誘導突部がカバー体に設けた誘導突部用貫通孔位置に移動するロック解除姿勢に変姿するものとなり、この結果、ローラ支持部が不用意にロック解除姿勢に変姿することが回避されることになる。
請求項2の発明とすることにより、ローラ支持部がロック解除姿勢となってカバー体から抜け出る際に、誘導突部に設けた抵抗付与部がカバー体の誘導突部用貫通孔に摺接してローラ支持部が抜け出る際の抵抗となって減速された状態で抜け出ることになり、この結果、操作体をローラ支持部から抜き取ることが容易となる。
請求項3の発明とすることにより、カバー体により抜け止めされる状態のブラケット部が、ローラ支持部と共に縦軸周りに一体回動するように設けられ、そして該ブラケット部を、挿入した操作体によりロック操作位置からロック解除操作位置に操作することでローラ支持部をロック解除姿勢に変姿できることになる結果、該ロック解除姿勢に変姿したローラ支持部は、操作体がブラケット部に挿入したままの状態でカバー体から抜け出ることになって操作性が向上する。
請求項4の発明とすることにより、抜き取ったローラ支持部を元状態に復帰する際に、ブラケット部に設けられる誘導突部用嵌入溝の上側部位に幅広の誘導部が形成されているため、誘導突部を誘導突部用嵌入溝に挿入組み込みすることが容易になる。
請求項5の発明とすることにより、操作体が差し込まれるブラケット部を、上動スペースを存する状態でベース部に組み込まれ、そしてロック姿勢でブラケット部に設けた作動体がベース部に設けた嵌合溝に嵌合している状態から、上動スペース分持ち上げて作動体が嵌合溝から抜け出た状態にして操作体をロック操作位置からロック解除操作位置に操作することで、ローラ支持部はブラケット部と共にロック解除姿勢となってドア体から抜け出ることになり、この結果、ローラ支持部をロック解除姿勢に変姿する際の縦軸周りの回動操作が容易になって操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トイレブースの正面図である。
図2】トイレブースの平面図である。
図3】トイレブースの拡大平面図である。
図4】ドア体を緊急開放位置まで移動した状態を示す平面図である。
図5】ドア体を緊急開放した状態を示す平面図である。
図6】(A)(B)(C)はハンガーローラ具の平面図、正面図、斜視図である。
図7】(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態を示す正面図、平面図、斜視図である。
図8】(A)(B)(C)はロック姿勢のローラ支持部に操作体を組み込んだ状態を示す正面図、平面図、斜視図である。
図9】(A)(B)(C)はローラ支持部に組み込んだ操作体をロック解除操作位置に位置した状態を示す正面図、平面図、斜視図である。
図10】(A)(B)(C)はローラ支持部が抜け出た状態を示す正面図、平面図、斜視図である。
図11】(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、ロック解除姿勢に位置する状態、抜け出た状態を示す平面図である。
図12】(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、ロック解除姿勢に位置する状態、抜け出る途中過程の状態を示す要部の縦断面図である。
図13】(A)(B)(C)はローラ支持部の正面図、平面図、斜視図、(D)はハンガーローラ具の正面図である。
図14】(A)(B)(C)はカバー体の平面図、正面図、斜視図である。
図15】第二の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部の正面図、平面図、斜視図、(D)は第二の実施の形態の変形例を示すローラ支持部の斜視図である。
図16】第二の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、抜け出る途中の状態、抜け出た状態を示す平面図である。
図17】第二の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、抜け出る途中の状態、抜け出た状態を示す要部の縦断面図である。
図18】第三の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はブラケット部の正面図、平面図、斜視図である。
図19】第三の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部の正面図、平面図、斜視図、(D)はローラ支持部をブラケット部に組み込んだ状態を示す斜視図である。
図20】第三の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、ロック解除姿勢に位置する状態、抜け出た状態を示す平面図である。
図21】第三の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、ロック解除姿勢に位置する状態、抜け出た状態を示す要部の縦断面図である。
図22】第四の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はブラケット部の正面図、平面図、斜視図、(D)はブラケット部にローラ支持部を組み込んだ状態を示す斜視図である。
図23】第四の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部をブラケット部に嵌入組み込みする状態を示す要部の縦断面図である。
図24】第五の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はブラケット部の正面図、平面図、斜視図である。
図25】第五の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はベース部の正面図、平面図、斜視図である。
図26】第五の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)はローラ支持部がロック姿勢に位置する状態、ロック解除姿勢に位置する状態、抜け出た状態を示す平面図である。
図27】第五の実施の形態を示すものであって、(A)(B)(C)(D)は操作体を差し込んだロック姿勢の状態、操作体を持ち上げたロック姿勢の状態、操作体をロック解除操作位置に操作した状態、ローラ支持部が抜け出た状態を示す要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は円弧状をしたハンガー式のドア体(戸体)であって、該ドア体1は、トイレ用のブースBの正面に設けられる戸先側、戸尻側のパネル体(正面パネル体)2、3間に形成される出入り口部Eの開閉をする引き戸方式のものであり、ドア体1の上端縁部1cには、戸先側、戸尻側に一対のハンガーローラ具4、5が設けられ、該ハンガーローラ具4、5に設けたハンガーローラ6が、ブースBの上部に設けた円弧状のハンガーレール7に走行案内されることで、ドア体1が円弧軌跡に沿って左右方向(戸尻方向、戸先方向)に移動して出入り口部Eの開閉をするようになっていること等は何れも従来通りである。尚、図中、Tは便器、Wは壁面、11は前記正面の戸先側、戸尻側パネル体2、3と壁面Wとのあいだに設けられる袖パネル体(奥行きパネル体)である。
【0009】
前記ドア体1は、出入り口部Eを全閉する閉鎖姿勢では、戸先側端縁部1aが戸先側パネル体2よりもブースB内側に位置する状態で、該戸先側パネル体2に設けた戸当り体2aに当接する一方、戸尻側端縁部1bが戸尻側パネル体3よりもブースB内側に位置する状態で、該戸尻側パネル体3に近接対向する状態となっている。そしてこの閉鎖姿勢で、戸先側、戸尻側ハンガーローラ具4、5は、何れも戸先側、戸尻側パネル体2、3より出入り口部E側(左右方向内側)に位置するよう設定されている。
因みにドア体1は、閉鎖姿勢から出入り口部Eを全開する開放姿勢に操作した場合に、ハンガーレール7に案内されてブースB内の戸尻側部位に移動するよう設定されている。
【0010】
前記戸先側、戸尻側のハンガーローラ具4、5は、本実施の形態においては何れも同じ構造のものを採用しているが、ドア体1の上端縁部1cに設けた有底筒状の嵌入溝1caに上下方向抜き差し自在な状態で嵌入組み込みされるローラ支持部8と、該ローラ支持部8から立設される縦軸9と、該縦軸9の上端縁部に左右方向揺動自在に設けられ、前記ハンガーローラ6が回転自在に軸支されるローラブラケット部10とを備えて構成され、前記嵌入溝1caのロック位置に嵌入組み込みされたローラ支持部8は、ドア体1の上端縁部1cにビス12aを介して取り付けられたカバー体12によって抜け止め支持される構成になっている。
【0011】
前記ローラ支持部8について具体的に記載すると、ローラ支持部8は有天円筒形状をし、その上面部8aには、該上面部8aに形成の貫通孔8aaを貫通する状態で、前記縦軸9の下端部がボルト9aを介して締結される一方、円筒状の側面部8bの外周面からは、上下方向に長い誘導突部8cの複数(本実施の形態では四個)が周回り方向に所定間隔(角度)を存して膨出形成されている。そして該誘導突部8cの上端面8caは、ローラ支持部8の上面部8aよりも低位置となるよう構成される。そして該上端面8caには、上端面8caよりも小面積状態となることで、上端面8caが面(ロック面)として残る状態で案内突部8dが上方に向けて突出形成されているが、該案内突部8dの突出高さは、ローラ支持部8の上面部8aを越えて後述するようにカバー体12に至って干渉する高さ(本実施の形態では上面板8aと同高さ)となるよう構成されている。
【0012】
一方、カバー体12には、前記ローラ支持部8が出入り自在なローラ支持部用貫通孔12bと、誘導突部8cが出入り自在な誘導突部用貫通孔12cとが連通する状態で形成されている。さらにカバー体12には、誘導突部用貫通孔12cから前記縦軸9の軸心回りに沿う状態で、所定角度(本実施の形態では45度)だけ延出するようロック孔溝12dが形成されるが、該ロック孔溝12dの溝幅は、案内突部8dは貫通するが、誘導突部8cは貫通しない幅狭な大きさに設定されている。
【0013】
さらにローラ支持部8の側面部8bには、棒状の操作体13の先端部を抜き差し自在に挿入組み込みするための係合孔8eが形成されている。そして操作体13は、ドア体1の前面板1dに形成の左右方向に長いガイド孔1eを貫通して係合孔8eに挿入組み込みした状態で、ガイド孔1eに案内されて左右方向に移動することで、後述するように、ガイド孔1eの戸尻側端縁部位置となるロック操作位置と、戸先側端縁部位置となるロック解除操作位置とに縦軸9を軸心とする回動(揺動)操作ができるように構成されている。
【0014】
前記ドア体1の嵌入溝1caに対してロック位置まで嵌入組み込みされたローラ支持部8は、案内突部8dがカバー体12のロック孔溝12dの溝奥位置に位置するロック姿勢にセットされることになり、該ロック姿勢となったローラ支持部8は、誘導突部8cの上端面8caが、ロック孔溝12dの溝奥部位のカバー体12の下面に当接支持されることになってカバー体12からの抜け止めがなされたロック姿勢となって本発明のロック手段Lが構成されたものになっている。
【0015】
このように構成されたドア体1は、通常状態では、ロック手段Lを構成するローラ支持部8はロック姿勢に位置しているが、このドア体1が閉鎖された通常状態において、ブースB内において人が倒れる等の緊急事態が発生したことでドア体1を緊急開放したい場合、ロック手段Lをロック姿勢からロック解除姿勢に変姿してドア体1を緊急開放することができる。
このためにはまず、操作体13を、ドア体1の前面側からガイド孔1eを貫通して前記ローラ支持部8に形成される係合孔8eに嵌入係合せしめる。しかる後、該操作体13をロック操作位置から戸先側のロック解除操作位置に回動操作することになり、この回動操作をすると、ローラ支持部8と共に回動する案内突部8dが、ロック孔溝12dに案内される状態で誘導突部用貫通孔12c部位に移動する。
【0016】
そしてこの案内突部8dの誘導突部用貫通孔12c部位への移動は、誘導突部8cの誘導突部用貫通孔12c部位への移動となり、この移動により、誘導突部8cの上端面8caは、前記ロック姿勢の状態で抜け止め支持していたカバー体12による当接支持がなくなった状態となる。この結果、ローラ支持部8は、誘導突部8cと共にローラ支持部用貫通孔12b、誘導突部用貫通孔12cを貫通して抜け出ることができる状態になる。そしてこの状態になったドア体1は、ローラ支持部8、誘導突部8cがローラ支持部用貫通孔12b、誘導突部用貫通孔12cに位置することになってカバー体12による抜け止めが解除された状態となっているが、ガイド孔1eを貫通する操作体13が係合孔8eに嵌入係合した状態になっていることで、ドア体1は、自重を受けた下動が規制された状態になっている。この状態から操作体13を抜き取ると、該ドア体1は、操作体13による前記下動規制が解消されたものとなって、戸先側ローラ支持部8がドア体1から抜け出ることになって、戸先側がハンガーレール7から切り離された状態になるよう構成されている。
【0017】
そしてこのようなロック手段Lのロック解除が、戸先側ハンガーローラ具4において実行されることで、該戸先側部位がハンガーレール7から切り離されたドア体1は、戸尻側ハンガーローラ具5の縦軸9によって片持ち支持された状態となり、この片持ち支持状態のドア体1を、該戸尻側縦軸9を揺動支軸として戸先側を手前側に開き操作することで、ドア体1の緊急開放ができるように構成されている。
因みに前記説明では、ドア体1の緊急開放を、戸先側ハンガーローラ具4のロック手段Lをロック解除し、戸尻側ハンガーローラ具5のロック手段Lはロック姿勢の状態で行うようにしたが、戸尻側ハンガーローラ具5にも戸先側と同様のロック手段Lが設けられているため、該戸尻側ハンガーローラ具5についてもロック解除姿勢にしてドア体1を緊急開放するようにしても勿論よい。
【0018】
叙述の如く構成された本実施の形態において、戸先側、戸尻側のパネル体2、3間に形成される出入り口部Eの開閉をする円弧状をしたハンガー式のドア体1を緊急開放する場合に、戸先側ハンガーローラ具4に設けられるロック手段Lについて、操作体13を、ガイド孔1eを貫通した操作体13を戸先側ローラ支持部8の係合孔8eに挿入係合した状態で、ロック操作位置からロック解除操作位置に操作をした後、該操作体13を抜き取ることで、戸先側ローラ支持部8がドア体1から抜け出ることになって、ドア体1を戸尻側縦軸9を揺動支軸とした緊急開放ができることになる。
【0019】
このように本発明が実施されたものでは、戸先側ハンガーローラ具4に設けられるロック手段Lのロック解除をして該側のローラ支持部8をドア体1から抜き出すことに基づいてドア体1を緊急開放することができるが、この場合に操作される操作体13は、平常時においてはドア体1から取り外し、管理室等の別部所に保管したものにできる結果、平常時においてローラ支持部8をロック解除位置に誤操作されてしまうことが回避される。
【0020】
なお本発明は、前記実施の形態のものに限定されないことは勿論であって、図15~17に示す第二の実施の形態のものにすることもできる。
前記第一の実施の形態のものでは、ロック解除操作位置まで操作した操作体13を抜き取ることでローラ支持部8がドア体1から抜け出ることになるが、このローラ支持部8が抜け出る作動は、ドア体1が自重を受けて降下することによる相対作動であって、操作体13は、ドア体1の自重を受けた状態のものを抜き取る作業が必要になるため操作が重くなるという懸念がある。
そこで第二の実施の形態のものは、誘導突部8cの下半部8cbを、下側ほどローラ支持部8の側面部8bから大きく離間する拡開状態で傾斜したものとし、ローラ支持部8がカバー体12から抜け出る際に、傾斜した下半部8cbがカバー体12に形成の誘導突部用貫通孔12cに摺動して弾性変形する構成にし、この際に発生する摺動抵抗で、ドア体1の自重を受けることでローラ支持部8がドア体1から抜け出る速度を減速し、これによって操作体13を抜き出しやすくできるように構成したものであり、斯かる構成の下半部8cbが誘導突部8cに形成される抵抗付与部を構成したものとなっている。
【0021】
このように構成した第二の実施の形態のものでは、ドア体1を緊急開放した後、ドア体1を元状態に復帰する際、拡開した状態の誘導突部8cの下半部8cbをローラ支持部8側に窄めた(幅狭にした)状態で誘導突部用貫通孔12cに嵌入する必要があり、操作性の点で問題が出る惧れがある。そこで図15(D)第二の実施の形態の変形例に示すように、下半部8cbの下端部8ccを、逆にローラ支持部8側に偏倚したものにしておくことで、復帰作業が容易になるよう構成したものとすることができる。
【0022】
さらに本発明は、図18~21に示す第三の実施の形態のようにすることもできる。この第三の実施の形態のものは、ドア体1の上端縁部1cに形成した嵌入溝1caに、カバー体12によって抜け止めされる状態でブラケット部14が縦軸9回りに回動自在に嵌入組み込みされたものになっている。
前記ブラケット部14は、円筒形状をしていてローラ支持部8が上下方向抜き差し自在に嵌入組み込みできるよう構成されているが、該ブラケット部14には、ローラ支持部8に形成される誘導突部8cが上下方向抜き差し自在に嵌入するよう誘導突部用嵌入溝14aが形成されており、これによってブラケット部14とローラ支持部8とは、縦軸9回りに対しては一体回動するが、上下方向についてはローラ支持部8が単独で上下動できるよう構成されている。
さらにブラケット部14の下端部には、前記ドア体1の前面側から挿入した操作体13が抜き差し自在に挿入する挿入孔14bが形成されている。
【0023】
さらにローラ支持部8についても、前記第一の実施の形態のものの変形例が採用されたものとなっている。該変形例のローラ支持部8は、誘導突部8cの上端面8caに形成される案内突部8dが、全ての上端面8caではなく、対向する一対の上端面8caに形成されたものとなっている。
またローラ支持部8の下端縁8fには、前記挿入孔14bに挿入した操作体13が係合する係合溝8faが形成されたものとなっている。
【0024】
そしてドア体1を緊急開放する場合に、操作体13を、ドア体1の前面側のガイド孔1eから差し込んでブラケット部14に形成の挿入孔14bに挿入した後、前記第一の実施の形態の場合と同様、該操作体13を、ロック操作位置からロック解除操作位置に回動操作することになる。
この場合に第三の実施の形態のものでは、操作体13を、ロック操作位置からロック解除操作位置に回動操作した場合に、ローラ支持部8は、ブラケット部14の縦軸9回りの回動に連携して該ブラケット部14と共に一体回動することになって、第一の実施の形態の場合と同様、ローラ支持部8のカバー体12による抜け止め規制が解除されることになり、而してブラケット部14に嵌入組み込みされたローラ支持部8は、操作体13がブラケット部14に挿入された状態で、該ブラケット部14およびカバー体12から抜け出ることになる。
この様に第三の実施の形態のものでは、ロック解除姿勢になったローラ支持部8がドア体1から抜け出すために、操作体13をブラケット部14からを抜き取る必要がないものにできることになる。
【0025】
さらにまた、図22、23に示す第四の実施の形態のようにすることができる。この第四の実施の形態のものは、前記第三の実施の形態の変形例でもあるが、このものは、抜け出たローラ支持部8をブラケット部14に嵌入組み込みして元のロック姿勢に復帰する際に、誘導突部8cを誘導突部用嵌入溝14aに嵌入組み込みしやすくするため、該誘導突部用嵌入溝14aの上側部位の溝幅を上側ほど幅広になるよう傾斜した案内部14aaが形成されたものとなっている。
【0026】
またさらに図24~27に示す第五の実施の形態のようにすることもできる。この第五の実施の形態のものは、第三、第四の実施の形態の変形例であって、ドア体1の上端縁部1cに形成の嵌入溝1caに、凹嵌形状をすることでブラケット部14を縦軸9回りに回動自在に内嵌するベース部15が縦軸9回りの回動が規制された状態で嵌入組み込みされたものである。
具体的には、ベース部15は底片部15aと側片部15bとが形成された凵字形をし、底片部15aに形成のビス孔15cに挿入したビス(図示せず)介して嵌入溝1caの底面に緊締されることで、ベース部15は、回り止めされた固定状態で嵌入溝1caに組み込まれている。しかもベース部15の側片部15bの上端縁には係合溝15dが形成されたものとなっている。
これに対しブラケット部14は、前記第四の実施の形態において採用したものの周面部14cの下端部に作動体14dが突設されたものとなっているとともに、挿入孔14bは、ベース部15の側片部15bの上端縁よりも上側に位置するよう構成されていて、ベース部15に干渉されない状態で操作体13を挿入できるよう構成されている。
【0027】
そして前記嵌入溝1caの溝底部に締結されたベース部15に内嵌組み込みされたブラケット部14は、カバー体12とのあいだに上動スペースSを存する状態で組み込まれるが、ローラ支持部8がロック姿勢に位置する状態では、ブラケット部14は、下端縁14eがベース部15の底片部15aに当接する下動姿勢となっている。この下動姿勢の状態では、作動体14dがベース部15に設けた係合溝15dに嵌入係止した状態になっており、この状態では、ブラケット部14がローラ支持部8と共に不用意にロック姿勢側に変姿することが規制されているとともに、ブラケット部14の上端縁14fとカバー体12とのあいだに前記上動スペースSが形成されたものとなっている。
【0028】
そしてドア体1を緊急開放するべくドア体1の前面側からブラケット部14の挿入孔14bに挿入組み込みした操作体13を持上げると、ブラケット部14は前記上動スペースS分だけ上動することになって作動体14dが係合溝15dから抜け出ることになり、この抜け出た状態でさらに操作体13をロック操作位置からロック解除操作位置に操作することで、ローラ支持部8は、ブラケット部14と共にロック解除姿勢となってブラケット部14、カバー体12から抜け出るように構成されている。
そしてこのように構成することで、操作体13のロック操作位置からロック解除操作位置への操作が、ドア体1の自重を受けない操作となって操作性が向上するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られたブース(小部屋)の出入り口に設けられる円弧状ドア装置におけるドア体の緊急開放構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ドア体
1c 上端縁部
1ca 嵌入溝
1e ガイド孔
4 戸先側ハンガーローラ具
5 戸尻側ハンガーローラ具
6 ハンガーローラ
7 ハンガーレール
8 ローラ支持部
8a上面部
8b 側面部
8c 誘導突部
8ca 上端面
8cb 下半部
8d 案内突部
8e 係合孔
9 縦軸
12 カバー体
12b ローラ支持部用貫通孔
12c 誘導突部用貫通孔
12d ロック孔溝
13 操作体
14 ブラケット部
14a 誘導突部用嵌入溝
14aa 案内部
14b 挿入孔
14d 作動体
15 ベース部
15b 側片部
15d 係合溝
B ブース
E 出入り口部
L ロック手段
S 上動スペース
図1
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