(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012136
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】可変速再構成型ポンプ/タービンクラスタ
(51)【国際特許分類】
F04B 23/04 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
F04B23/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112239
(22)【出願日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】17/863,591
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523224589
【氏名又は名称】フローサーブ・プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FLOWSERVE PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ドリース
(72)【発明者】
【氏名】マーク・オサリバン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・シー.・ジャッジ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・モリソン
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071BB03
3H071BB11
3H071CC11
3H071DD11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非常に広い使用条件(「COS」)範囲にわたって最適なエネルギ効率で動作する「水力回転装置」(「HRM」)システムを提供する。
【解決手段】HRMは、プロセス流体が流入口から流出口まで流れる流路を構成および変更するために、コントローラによって作動されうる1または複数のバルブによって相互接続される。HRMのどれを流路に含めるのか、HRMの間の相互接続、および、HRMの動作速度をアクティブに選択することより、コントローラは、COSが非常に広い範囲にわたって変動した時に、HRMクラスタが最適効率で動作し続けることを保証する。HRMは、互いに同一であってもよいし、設計が異なっていてもよい。HRMシステムは、グリーンエネルギの蓄積および回収のために実装されうる。コントローラは、さらに、クラスタおよび/または関連するプロセスの健全性を監視できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスのプロセス流体を制御するよう構成されている水力回転装置(HRM)システムであって、前記プロセス流体は、広く変化する使用条件(COS)を有し、前記HRMシステムは、
コントローラと、
可変動作速度を有する複数のHRMを備えているHRMクラスタであって、前記HRMの各々は、ポンプ、タービン、または、ハイブリッドポンプ/タービンであり、前記HRMの前記動作速度は、前記コントローラによって制御され、
HRM配管システムと、前記HRMは、前記プロセス流体が前記HRM配管システムの流入口から前記HRM配管システムの流出口まで流れることのできる流路を形成するために、前記HRM配管システムによって相互接続され、
前記HRM配管システムに含まれる複数のバルブと、前記コントローラは、前記流路に含められる前記HRMの選択と、前記選択された前記HRMが前記流路に含められる配列とを制御するために、前記バルブを作動させることが可能であり、
前記コントローラと協働する非一時的な媒体とを備え、前記非一時的な媒体は、命令を含み、前記命令は、前記コントローラによって実行された時、前記コントローラに、
前記プロセスの状態および前記プロセス流体の前記COSの少なくとも一方に関する情報を受け取らせ、
前記情報に従って、前記プロセスの少なくとも1つの要件を連続的に満たしつつ、前記流路内の前記HRMが前記プロセス流体の前記広く変化するCOSにわたって実質的に最適水力効率点で動作することを保証するように、前記HRMの前記動作速度と、前記流路内の前記HRMの前記選択および配列とを制御させる、HRMシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記複数のHRMの中の全ての前記HRMが、互いに同一である、HRMシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記複数のHRMは、ポンプおよびタービンを含み、前記複数のHRMの中の前記ポンプはすべて、互いに同一であり、前記複数のHRMの中の前記タービンはすべて、互いに同一である、HRMシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記コントローラは、前記流路内の前記HRMのペアの相互接続が、並列相互接続と直列相互接続との間で変更されるように、前記流路の前記構成を変更することができる、HRMシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記コントローラは、前記クラスタ内の前記HRMの内の4つの相互接続が、完全並列相互接続、直列並列相互接続、および、完全直列相互接続の間で変更されるように、前記流路の前記構成を変更することができる、HRMシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記プロセスは、エネルギ生成プロセスであり、前記HRMシステムは、前記プロセスが低エネルギ需要である時に前記プロセスの余剰エネルギ出力を蓄積し、前記プロセスが高エネルギ需要である時に前記蓄積済みのエネルギを回収して前記回収したエネルギを前記プロセスへ供給するよう構成されている、HRMシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記クラスタは、液体および気体の混合物であるプロセス流体への効率的な動作に向けて構成されている少なくとも1つのHRMを備える、HRMシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記クラスタは、固体と混ざった液体であるプロセス流体への効率的な動作に向けて構成されている少なくとも1つのHRMを備える、HRMシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記クラスタは、第1動作特性を有する第1ポンプと、前記第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2ポンプと、を備える、HRMシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記クラスタは、第1動作特性を有する第1タービンと、前記第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2タービンと、を備える、HRMシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記クラスタは、第1動作特性を有する第1ハイブリッドポンプ/タービンと、前記第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2ハイブリッドポンプ/タービンと、を備える、HRMシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のHRMシステムであって、前記コントローラによって受信される前記情報は、前記クラスタ内のHRMの動作の健全性に関する情報を含み、前記命令は、前記コントローラによって実行された時、さらに、前記コントローラに前記HRMの故障までの時間を予測させる、HRMシステム。
【請求項13】
プロセスのプロセス流体を効率的に制御する方法であって、前記プロセス流体は、広く変化する使用条件(COS)を有し、前記方法は、
コントローラを提供し、
可変動作速度を有する複数のHRMを提供し、前記HRMの各々は、ポンプ、タービン、または、ハイブリッドポンプ/タービンであり、
HRMクラスタを形成するためにHRM配管システムを介して前記HRMを相互接続し、前記HRM配管システムは、複数のバルブを備え、
前記プロセス流体が前記HRM配管システムの流入口から前記HRM配管システムの流出口まで流れることのできる流路を構成するために、前記コントローラによって前記バルブを制御し、前記流路は、HRM配列内に配列される前記クラスタの前記HRMの選択を含み、
前記プロセス流体を前記流路に流動させ、
前記プロセスの状態および前記プロセス流体の前記COSの少なくとも一方に関する情報を前記コントローラによって受信し、
前記情報に従って、前記プロセスの少なくとも1つの要件を連続的に満たしつつ、前記流路内の前記HRMが前記プロセス流体の前記広く変化するCOSにわたって実質的に最適水力効率点で動作することを保証するように、前記HRMの前記動作速度と、前記流路内の前記HRMの前記選択および配列とを前記コントローラによって制御すること、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプおよびタービンに関し、より具体的には、幅広い範囲の使用条件にわたって高い効率を維持することを求められるポンプおよびタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、ポンプ102、タービン、および、ポンプ-タービンの組みあわせは、本明細書では一般に「水力回転機械」すなわち「HRM」と呼ばれ、従来、固定回転速度で作動され、その回転速度は、駆動モータのタイプによっておよび/または電力供給網100から引き出される電力110の周波数によって決定される。HRMは、それが作動されうる使用条件(「COS」)の範囲が比較的広いが、最適効率は、典型的には、COSがHRMの「最高効率点」すなわちBEPにぴったり合った時にのみ実現され、BEPは、典型的には、条件の中でも特に、特定の範囲の流量、体積流量、流入口および流出口の圧力、流入口および流出口の温度、ならびに、時に、気体分率および固体/液体分率に関して規定される。
【0003】
プロセス108によって要求されるCOSが、HRMのBEPからあまりに逸脱している場合、HRMは、はるかに低い水力効率で動作する。また、HRMは、時々、軸受荷重および振動レベルなど結果として生じる力に起因して、COSがBEPから離れている時に摩耗の増大および動作寿命の短縮にさらされうる。さらに、かかる固定速度HRMの水圧出力112を制御する唯一の方法は、例えば、流量センサ106(さらなるエネルギ損失を招く)の測定値によって制御される、スロットルバルブ104を利用することである。
【0004】
より広いCOS範囲にわたってHRMの効率を維持するための1つのアプローチは、可変速度で駆動されることができるHRMを実装することである。可変速HRMの動作速度を変化させることにより、HRMのBEPは、変化するCOSと近いままであるようにシフトされることができ、それによって、HRMが適用されるプロセスの全体効率が最適化される。しかしながら、このアプローチは、非常に広いCOS範囲にわたって効率的な動作を必要とする一部の応用例にとってはまだ不十分でありうる。
【0005】
グリーンエネルギの蓄積および回収のための技術は、特に広いCOS範囲にわたるHRMの動作を必要としうる。HRMは、典型的には、エネルギの蓄積(ポンピングモード)およびエネルギの回収(タービンモード)の両方のために、これらの技術で用いられる。例えば、低エネルギ需要時に低い所のリザーバから高い所のリザーバへ水をくみ上げるために、余剰エネルギを利用可能であり、その後、高エネルギ需要時に高い所のリザーバから低い所のリザーバへ水が流れることを許容された時に、タービンが、エネルギを回収するために利用されうる。
【0006】
同様に、HRMは、余剰エネルギを利用可能な時に、貯蔵コンテナ内のガスを加圧および/または液化するために利用されることができ、その後、貯蔵されたガスは、タービンを動作させるために利用できるように、高エネルギ需要時に気化および/または膨張することを許容されうる。例えば、エネルギは、貯蔵タンク内で二酸化炭素を超臨界液体状態に圧縮することによって蓄積されることができ、その後、二酸化炭素を気化させて、結果として得られるガスをタービンに通すことで、蓄えられたエネルギが回収される。
【0007】
別の例として、HRMは、蓄熱媒体を加熱または冷却することによってエネルギを蓄積するヒートポンプサイクルを駆動するために利用可能である。それぞれの場合において、別個のポンプおよびタービンを実装することが可能であり、もしくは、デュアルモードポンプ/タービンHRMを用いて、エネルギ蓄積システムのエネルギ蓄積サイクルおよびエネルギ回収サイクルの両方の要件を満たすこともできる。
【0008】
かかるシステムにおけるエネルギ蓄積およびその後のエネルギ回収の全サイクルは、「ラウンドトリップ」と呼ばれ、ラウンドトリップの効率は、「ラウンドトリップ効率」すなわち「RTE」と呼ばれている。RTEは、エネルギ蓄積プロセスによって回収できるエネルギを、同じエネルギを蓄積するのに必要とされたエネルギで割った割合として定義されている。例えば、100MWHを用いてエネルギを蓄積し、蓄積されたエネルギから利用可能なエネルギとして80MWhを回収できる場合、RTEは、80MWh/100MWh×100%=80%である。RTEの最適化は、広いCOS範囲にわたるHRMの動作を必要とするグリーンエネルギシステムなど、任意の所与のエネルギ蓄積/回収プロセスの経済性にとって極めて重要である。
【0009】
したがって、非常に広いCOS範囲にわたって最適な水力エネルギ効率を提供できるHRMソリューションが求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、非常に広い使用条件(「COS」)範囲にわたって最適な水力エネルギ効率を提供できる「水力回転機械」(「HRM」)システムである。エネルギ蓄積の実施形態において、本発明は、エネルギの蓄積および回収の最大ラウンドトリップ効率(「RTE」)を提供する。
【0011】
本発明は、HRMコントローラによって独立制御される動作速度を有する複数の(すなわち、「クラスタ」の)可変速HRMを備える。クラスタ内のHRMは、流入口と、流出口と、クラスタ内のHRMの内の1または複数を介して流入口から流出口へプロセス流体が流れる流路を構成するためにHRMコントローラによって作動されうる1または複数のバルブとを備えているHRM配管システムによって、互いに相互接続されている。流路に含めるHRM、HRMの間の相互接続、および、HRMの動作速度をアクティブに選択することより、HRMコントローラは、COSが非常に広い範囲にわたって変動した時に、HRMクラスタが最適効率で動作し続けることを保証できる。
【0012】
以下は、2つの同一の可変速ポンプを備えている仮定のHRMクラスタに向けた非常に簡単な例であり、HRMクラスタは、貯蔵コンテナ内にガスを圧縮することによって、グリーンエネルギ源の過剰な容量に由来するエネルギを蓄積するために用いられる。この例において、ポンプの各々の動作速度は、ポンプを通した体積流量が30~50立方フィート/分(cfm)であり、出力圧力が入力圧力よりも0~40psi高い時に、最適効率を維持するように、変更されうる。プロセスが始まると、HRMコントローラは、30~50cfmで貯蔵コンテナにガスを送るために一方のポンプを迂回して他方のポンプの速度を調整するか、もしくは、60~100cfmの流量で貯蔵コンテナにガスを送るために2つのポンプを並列に接続するオプションを有する。これら2つのオプションの間の選択は、例えば、グリーンエネルギシステムから現在利用可能な余剰エネルギの量に依存しうる。
【0013】
貯蔵コンテナ内の圧力が40psiに到達すると、HRMコントローラは、ポンプを直列構成へ再構成し、ポンプが各々、ポンプあたり20psiの圧力差で30~50cfmで効率的にポンピングするように動作速度を調整する。貯蔵コンテナ内の圧力が40psiを超え続けると、2つのポンプの動作速度が、最適エネルギ効率を維持するために変更される。この直列構成において、ポンプの動作速度を制御することにより、HRMクラスタの最適水力効率が、ポンプあたり40psiの最大値(すなわち、合計80psi)に維持されうる。
【0014】
このアプローチは、必要に応じて、3以上のポンプのクラスタに拡張可能である。例えば、上述のように4つの同一ポンプを含むクラスタが、40psiまでのコンテナ圧力に対して完全に並列に、40から80psiに対しては直列/並列配列に、そして、80から160psiに対してはすべて直列になるように、HRMコントローラによって構成されてもよく、ここで、HRMの動作速度は、ポンプの各々がこの範囲全体にわたってBEPでまたはその付近で動作するように、必要に応じて調整される。同じように、このアプローチは、ポンプ、タービン、および/または、ハイブリッドポンプ/タービンHRM(「ハイブリッド」HRM)の任意の組みあわせを含むクラスタに拡張可能である。
【0015】
いくつかの実施形態において、クラスタは、1タイプのみのHRM、例えば、流体のポンピングにのみ利用されるクラスタのための1タイプのポンプ、タービン発電エネルギの生成にのみ利用されるクラスタのための1タイプのみのタービン、もしくは、流体のポンピングおよびタービン発電エネルギの生成の両方に利用されるクラスタのための1タイプのみのハイブリッドHRM、を含む。同様の実施形態において、クラスタは、限定された範囲のHRMタイプ(複数の同一のポンプおよび複数の同一のタービンなど)を含む。
【0016】
クラスタに含まれる異なるタイプのHRMのタイプ数を制限すれば、クラスタ内の故障ユニットを素早く交換することを可能にするために必要な「予備の」HRMの在庫が比較的少なくて済むので、クラスタのサポートおよびメンテナンスを単純化することができ、コストが削減される。また、このアプローチは、在庫からクラスタへさらなるHRMを単に追加すると共に、対応する拡張をHRM配管システムおよびコントローラに施すことで、必要に応じてクラスタを容易に拡張することを可能にし、それにより、クラスタをプロセスの要件の変更へ容易に適合させることを可能にする。
【0017】
他の実施形態は、異なるBEPを有する複数の異なるタイプのポンプ、タービン、および/または、ハイブリッドHRMと、異なる気体分率および/または固体/液体比を許容しうるHRMと、を備えているHRMクラスタを含む。このアプローチは、クラスタが広い範囲のCOSにわたって最適なエネルギ効率を維持することを可能にするために必要とされるHRMの数を削減しうる。例えば、プロセス流体は、通常は液体であるが、時に気体および/または固体も含む場合に、HRMクラスタは、純粋な液体をポンピングするために最適化された少なくとも1つのポンプと、液体と混ざった気体および/または固体を含むハイブリッド流体をポンピングするために最適化された別のポンプと、を備えてもよい。
【0018】
本発明によると、HRMコントローラは、1または複数の情報源から受信した情報に基づいて、HRMの動作速度および相互接続を調整する。情報は、例えば、グリーンエネルギ源(ソーラーパネルまたは風力タービンなど)の任意の所与の時点でのエネルギ状態、すなわち、どれだけの余剰エネルギが蓄積に利用可能であるのか、または、どれだけの以前に蓄積されたエネルギが現在必要とされているのか、を含みうる。情報は、さらに、クラスタ内でポンプによって消費されおよび/またはタービンによって生成されるエネルギに関する検知情報と、特に、圧力、体積流量、質量流量、測地流体レベル、静的および動的流体レベル、静的および動的流体エネルギ、流体温度、流体密度、流体相(気相、液化相、超臨界相、固化相)、流体に存在する固体および/または懸濁液の量、気体分率、ならびに/もしくは、固体/液体比など、様々なプロセス流体パラメータと、を含みうる。
【0019】
HRMコントローラは、クラスタ内のどのHRMを流路に含めるべきか、それらをどのように相互接続すべきか、および、HRMの各々をどの速度で動作させるべきか、を決定するために、これらの入力にプロセス依存アルゴリズムを適用し、それにより、使用条件が広い範囲にわたって変化した時に流路内のHRMの各々が「最高効率点」(BEP)でまたはその付近で動作し続けることを保証する。
【0020】
実施形態において、HRMコントローラは、さらに、例えば、ベアリング温度、ノイズレベル、振動、摩耗率、および、構成要素の歪みを監視することによって、クラスタ内のHRMの健全性を監視する。それにより、HRMコントローラは、HRMの故障が近く、修理または交換すべきであることを予測できる。同様に、様々な実施形態において、HRMコントローラは、HRMクラスタが関連するプロセス全体の健全性を監視し、例えば、プロセス内の様々な点で圧力、温度、および/または、流量の監視することによって、リークおよびその他の問題を検出する。
【0021】
本発明の1つの一般的な態様は、プロセスのプロセス流体を制御するよう構成されている水力回転装置(HRM)システムであり、プロセス流体は、広く変化する使用条件(COS)を有する。HRMシステムは、コントローラと、可変動作速度を有する複数のHRMを備えているHRMクラスタであって、HRMの各々は、ポンプ、タービン、または、ハイブリッドポンプ/タービンであり、HRMの動作速度は、コントローラによって制御される、HRMクラスタと、HRM配管システムであって、HRMは、プロセス流体がHRM配管システムの流入口からHRM配管システムの流出口まで流れることのできる流路を形成するために、HRM配管システムによって相互接続される、HRM配管システムと、HRM配管システムに含まれる複数のバルブであって、コントローラは、流路に含められるHRMの選択と、選択されたHRMが流路に含められる配列とを制御するために、バルブを作動させることができる、複数のバルブと、コントローラと協働する非一時的な媒体と、を備える。
【0022】
非一時的な媒体は、命令を含み、命令は、コントローラによって実行された時、コントローラに、プロセスの状態およびプロセス流体のCOSの少なくとも一方に関する情報を受け取らせ、その情報に従って、プロセスの少なくとも1つの要件を連続的に満たしつつ、流路内のHRMがプロセス流体の広く変化するCOSにわたって実質的に最適水力効率点で動作することを保証するように、HRMの動作速度と、流路内のHRMの選択および配列とを制御させる。
【0023】
複数の実施形態において、複数のHRMの中のHRMすべてが、互いに同一である。
【0024】
上述の実施形態において、複数のHRMは、ポンプおよびタービンを含んでもよく、複数のHRMの中のポンプはすべて、互いに同一であり、複数のHRMの中のタービンはすべて、互いに同一である。
【0025】
上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラは、流路内のHRMのペアの相互接続が、並列相互接続と直列相互接続との間で変更されるように、流路の構成を変更することができてもよい。
【0026】
上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラは、クラスタ内のHRMの内の4つの相互接続が、完全並列相互接続、直列並列相互接続、および、完全直列相互接続の間で変更されるように、流路の構成を変更することができてもよい。
【0027】
上述の実施形態のいずれかにおいて、プロセスは、エネルギ生成プロセスであってよく、HRMシステムは、プロセスが低エネルギ需要である時にプロセスの余剰エネルギ出力を蓄積し、プロセスが高エネルギ需要である時に蓄積済みのエネルギを回収して回収したエネルギをプロセスへ供給するよう構成されていてもよい。
【0028】
上述の実施形態のいずれかにおいて、クラスタは、液体および気体の混合物であるプロセス流体への効率的な動作に向けて構成されている少なくとも1つのHRMを備えてもよい。
【0029】
上述の実施形態のいずれかにおいて、クラスタは、固体と混ざった液体であるプロセス流体への効率的な動作に向けて構成されている少なくとも1つのHRMを備えてもよい。
【0030】
上述の実施形態のいずれかにおいて、クラスタは、第1動作特性を有する第1ポンプと、第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2ポンプと、を備えてもよい。
【0031】
上述の実施形態のいずれかにおいて、クラスタは、第1動作特性を有する第1タービンと、第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2タービンと、を備える。
【0032】
上述の実施形態のいずれかにおいて、クラスタは、第1動作特性を有する第1ハイブリッドポンプ/タービンと、第1動作特性とは異なる第2動作特性を有する第2ハイブリッドポンプ/タービンと、を備えてもよい。
【0033】
上述の実施形態のいずれかにおいて、コントローラによって受信される情報は、クラスタ内のHRMの動作の健全性に関する情報を含んでもよく、命令は、コントローラによって実行された時、さらに、コントローラにHRMの故障までの時間を予測させる。
【0034】
本発明の第2の一般的な態様は、プロセスのプロセス流体を効率的に制御する方法であり、プロセス流体は、広く変化する使用条件(COS)を有する。方法は、コントローラを提供し、可変動作速度を有する複数のHRMを提供し、HRMの各々は、ポンプ、タービン、または、ハイブリッドポンプ/タービンであり、HRMクラスタを形成するためにHRM配管システムを介してHRMを相互接続し、HRM配管システムは、複数のバルブを備え、プロセス流体がHRM配管システムの流入口からHRM配管システムの流出口まで流れることのできる流路を構成するために、コントローラによってバルブを制御し、流路は、HRM配列内に配列されるクラスタのHRMの選択を含み、プロセス流体を流路に流動させ、プロセスの状態およびプロセス流体のCOSの少なくとも一方に関する情報をコントローラによって受信し、その情報に従って、プロセスの少なくとも1つの要件を連続的に満たしつつ、流路内のHRMがプロセス流体の広く変化するCOSにわたって実質的に最適水力効率点で動作することを保証するように、HRMの動作速度と、流路内のHRMの選択および配列とをコントローラによって制御すること、を備える。
【0035】
本明細書に記載の特徴および利点は、包括的ではなく、特に、図面、明細書、および、特許請求の範囲を考慮すれば、多くのさらなる特徴および利点が当業者にとって明らかになる。さらに、本明細書で用いられている用語は、主に読みやすさおよび指導的な目的で選択されたものであり、本発明の主題の範囲を限定しないことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来技術の一例においてHRMによるプロセス流体の制御を示す図。
【0037】
【
図2】HRMクラスタが、グリーンエネルギシステムを支援して、エネルギを蓄積した後に回収する本発明の一実施形態を示す図。
【0038】
【
図3A】本発明の一実施形態に従って、HRM配管システムによって並列に接続された2つのHRMを備えているHRMクラスタを示す図。
【0039】
【
図3B】HRM配管システムによって直列に接続された2つのHRMを備えているHRMクラスタを示す図。
【0040】
【
図4A】本発明の一実施形態に従って、HRM配管システムによって並列に接続された4つのHRMを備えているHRMクラスタを示すブロック図。
【0041】
【
図4B】流路がクラスタを通る様子を示す
図4Aのクラスタの簡略なブロック図。
【0042】
【
図4C】本発明の一実施形態に従って、HRM配管システムによって直列-並列配列に接続された4つのHRMを備えているHRMクラスタを示すブロック図。
【0043】
【
図4D】流路がクラスタを通る様子を示す
図4Cのクラスタの簡略なブロック図。
【0044】
【
図4E】本発明の一実施形態に従って、HRM配管システムによって直列に接続された4つのHRMを備えているHRMクラスタを示すブロック図。
【0045】
【
図4F】流路がクラスタを通る様子を示す
図4Eのクラスタの簡略なブロック図。
【0046】
【
図5】コントローラと、HRMクラスタ、プロセス、および、グリーンエネルギシステムとの間の情報のやり取りを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、非常に広い使用条件(「COS」)範囲にわたって高いエネルギ効率を提供できる「水力回転機械」(「HRM」)システムである。エネルギ蓄積の実施形態において、本発明は、エネルギの蓄積および回収の最大ラウンドトリップ効率(「RTE」)を提供する。
【0048】
図2および
図3Aを参照すると、本発明は、HRMコントローラ200によって独立制御206される動作速度を有する複数の(すなわち、「クラスタ」212の)可変速HRM102、202を備える。クラスタ212内のHRM102、202は、流入口300と、流出口302と、クラスタ212内のHRM102、202の内の1または複数を介して流入口300から流出口302へプロセス流体が流れる流路306を構成するためにHRMコントローラ200によって作動されうる1または複数のバルブ104とを備えているHRM配管システム204によって、互いに相互接続されている。HRM102、202のどれを流路306に含めるのか、HRMの間の相互接続、および、HRMの動作速度をアクティブに選択することより、HRMコントローラ200は、COSが非常に広い範囲にわたって変動した時に、HRMクラスタ212が最適効率で動作し続けることを保証できる。
【0049】
図3A~
図3Bは、2つの同一の可変速ポンプ102a、102bを備えている仮定のHRMクラスタ212の非常に簡単な例を示しており、ここで、HRMクラスタ212は、ポンプで水を貯蔵コンプレッサに送り込むことで、貯蔵コンテナ(図示せず)内に含まれるガスを圧縮することによって、グリーンエネルギ源の過剰な容量に由来するエネルギを蓄積するために用いられる。この仮定の例において、ポンプ102a、102bの各々の動作速度は、ポンプ102a、102bを通した体積流量が30~50立方フィート/分(cfm)であり、出力圧力が入力圧力よりも0~40psi高い時に、最適水力効率を維持するように、変更されうる。プロセスが始まると、HRMコントローラ200は、30~50cfmで貯蔵コンテナにガスを送るために、一方のポンプ102bを迂回して他方のポンプ102aの速度を調整するオプションを有する。
図3Aは、他の可能性を示しており、その場合、60~100cfmの流量で貯蔵コンテナにガスを送るために、バルブ104によって2つのポンプ102a、102bを並列構成で相互接続させる。これら2つのオプションの間の選択は、例えば、グリーンエネルギシステムから現在利用可能な余剰エネルギの量に依存しうる。
【0050】
図3Bを参照すると、貯蔵コンテナ内の圧力が40psiに到達すると、HRMコントローラは、バルブ104によってポンプ102a、102bを直列構成へ再構成させ、ポンプが各々、ポンプあたり20psiの圧力差で30~50cfmでポンピングするように動作速度を調整する。貯蔵コンテナ内の圧力が40psiを超え続けると、2つのポンプ102a、102bの動作速度が、最適エネルギ効率を維持するために変更される。
図3Bの直列構成において、ポンプの動作速度を制御することにより、HRMクラスタ212の最適効率が、ポンプあたり40psiの最大値(すなわち、合計80psi)に維持されうる。
【0051】
このアプローチは、必要に応じて、さらに広いCOS範囲を網羅するために、3以上のポンプのクラスタに拡張可能である。例えば、
図4A~
図4Bを参照すると、上述したように4つの同一ポンプ102a、102b、102c、102d(集合的に、102)を含むクラスタ212が、
図4Aによって示すように、40psiまでのコンテナ圧力に対して完全に並列になるよう、HRMコントローラ200によって構成されてもよい。この構成のための流路は、
図4Bによって示されている。圧力差が40から80psiまで変化すると、コントローラ200は、
図4Cに示すように、HRM配管システム内のバルブ104によってポンプ102を直列/並列配列へ再構成させることができる。この構成のための流路204は、
図4Dに示されている。圧力差が80psiを超えると、コントローラ200は、ポンプ200がすべて直列になるようにポンプ200を構成することができ、それにより、クラスタ212が80から160psiまでの圧力差に対する最適効率で動作し続けることを可能にする。この簡単な例によると、ポンプの動作速度およびポンプ間の相互接続の両方を変更することにより、コントローラ200は、ポンプの各々がこの範囲全体にわたってBEPでまたはその付近で動作し続けることを保証できる。同じように、このアプローチは、ポンプ、タービン、および/または、ハイブリッドポンプ/タービンHRM(「ハイブリッド」HRM)の任意の組みあわせを含むクラスタに拡張可能である。
【0052】
いくつかの実施形態において、クラスタ212は、1タイプのみのHRM、例えば、流体のポンピングにのみ利用されるクラスタのための1タイプのポンプ102、タービン発電エネルギの生成にのみ利用されるクラスタのための1タイプのみのタービン202、もしくは、流体のポンピングおよびタービン発電エネルギの生成の両方に利用されるクラスタのための1タイプのみのハイブリッドHRM、を含む。同様の実施形態において、クラスタ212は、限定された範囲のHRMタイプ(複数の同一のポンプ102および複数の同一のタービン202など)を含む。
【0053】
クラスタ212に含まれる異なるタイプのHRMのタイプ数を制限すれば、クラスタ212内の故障ユニットを素早く交換することを可能にするために必要な「予備の」HRMの在庫が比較的少なくて済むので、クラスタ212のサポートおよびメンテナンスを単純化することができ、コストが削減される。また、このモジュールアプローチは、HRM配管システム204およびコントローラ200の適切な拡張と共に、在庫からクラスタ212へさらなるHRMを単に追加することで、必要に応じてクラスタ212を容易に拡張することを可能にし、それにより、クラスタ212をプロセスの要件の変更へ容易に適合させることを可能にする。
【0054】
他の実施形態は、異なるBEPを有する複数の異なるタイプのポンプ102、タービン202、および/または、ハイブリッドHRMと、異なる気体分率および/または固体/液体比を許容しうるHRMと、を備えているクラスタを含む。このアプローチは、クラスタ212が広い範囲のCOSにわたって最適なエネルギ効率を維持することを可能にするために必要とされるHRMの数を削減しうる。例えば、プロセス流体は、通常は液体であるが、時に気体および/または固体も含む場合に、HRMクラスタ212は、純粋な液体をポンピングするために最適化された少なくとも1つのポンプ102と、液体と混ざった気体および/または固体を含むハイブリッド流体をポンピングするために最適化された別のポンプ102と、を備えてもよい。
【0055】
図5を参照すると、HRMコントローラ200は、1または複数の情報源から受信した情報に基づいて、HRMの動作速度および相互接続を調整する。情報は、例えば、グリーンエネルギ源(ソーラーパネルまたは風力タービン500など)の任意の所与の時点でのエネルギ状態、すなわち、どれだけの余剰エネルギが蓄積に利用可能であるのか、または、どれだけの以前に蓄積されたエネルギが現在必要とされているのか、を含みうる。情報は、さらに、クラスタ212内でポンプ102によって消費214されおよび/またはタービン202によって生成210されるエネルギに関する検知情報と、特に、圧力、流量、質量流量、測地流体レベル、静的および動的流体レベル、静的および動的流体エネルギ、流体温度、流体密度、流体相(気相、液化相、超臨界相、固化相)、プロセス流体に存在する固体および/または懸濁液の量、気体分率、ならびに/もしくは、固体/液体比など、プロセス108の状態に関する情報と、を含みうる。
【0056】
HRMコントローラは、クラスタ212内のどのHRMを流路に含めるべきか、それらをどのように相互接続すべきか、および、HRMの各々をどの速度で動作させるべきか、を決定するために、この情報にプロセス依存アルゴリズムを適用し、それにより、流路内のHRMの各々が「最高効率点」(BEP)でまたはその付近で動作することを保証する。
【0057】
実施形態において、HRMコントローラ200は、さらに、例えば、ベアリング温度、ノイズレベル、振動、摩耗率、および、構成要素の歪みを監視することによって、クラスタ212内のHRMの健全性を監視208する。それにより、HRMコントローラは、HRMの故障が近く、修理または交換すべきであることを予測できる。同様に、様々な実施形態において、HRMコントローラ200は、HRMクラスタ200が関連するプロセス108全体の健全性を監視208し、例えば、プロセス内の様々な点で圧力、温度、および/または、流量の監視することによって、リークおよびその他の問題を検出する。
【0058】
本発明の実施形態に関するこれまでの記載は、図解および説明を目的としたものである。この提出物のあらゆるページ、および、そのすべての内容は、特徴付けられ、識別され、または、番号付けられても、本願の中での形態または配置に関わりなく、すべての目的に対して本願の実質的部分であると見なされる。本願は、包括的であることも、開示されている正確な形態に本発明を限定することも意図されていない。多くの変形例および変更例が、本開示に照らして可能である。
【0059】
本願は限られた数の形態で示されているが、本発明の範囲は、これらの形態だけに限定されず、様々な変更および変形が可能である。本明細書で提示されている開示は、本発明の範囲内にある特徴のすべての可能な組みあわせを明示的に開示していない。様々な実施形態について本明細書で開示されている特徴は、一般に、交換可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく自己矛盾しない任意の組みあわせに組みあわせられることができる。特に、以下の請求項に提示されている限定は、従属請求項が互いに論理的に矛盾しない限り、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数および任意の順序でそれらに対応する従属請求項と組み合わせられることができる。
【外国語明細書】