(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121364
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントの端部隙間を塞ぐ保護具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028429
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩志
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA18
2E001PA05
2E001PA11
2E001PA12
(57)【要約】
【課題】エキスパンションジョイントの端部に形成される隙間を塞ぐための保護具を提供することを課題とする。
【解決手段】エキスパンションジョイントの端部の保護具は、第1の躯体の第1の床スラブと第1の手摺との境界部に形成される第1の段差部と、第1の躯体に隣接する第2の躯体の第2の床スラブと第2の手摺との境界部に形成される第2の段差部と、の間に形成される隙間を塞ぐエキスパンションジョイントの端部の保護具であって、保護具は、第1の段差部の上面から第2の段差部の上面に架け渡される第1のプレートと、第1の段差部の側面から第2の段差部の側面に掛け渡される第2のプレートと、第1のプレートと第2のプレートとを繋ぐ連結具と、を含み、第1のプレートが、第1の段差部の上面において一点で回動可能に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の躯体の第1の床スラブと第1の手摺との境界部に形成される第1の段差部と、前記第1の躯体に隣接する第2の躯体の第2の床スラブと第2の手摺との境界部に形成される第2の段差部と、の間に形成される隙間を塞ぐエキスパンションジョイントの端部の保護具であって、
前記保護具は、
第1の段差部の上面から前記第2の段差部の上面に架け渡される第1のプレートと、
前記第1の段差部の側面から前記第2の段差部の側面に掛け渡される第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとを繋ぐ連結具と、
を含み、
前記第1のプレートが、前記第1の段差部の上面において、一点で回動可能に接続されている、
ことを特徴とするエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項2】
前記第2のプレートが、前記連結具による接続部を支点に跳ね上げ可能に設けられている、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項3】
前記連結具が蝶番である、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項4】
前記第2のプレートが、前記第1の段差部の側の部分と、前記第2の段差部の側の部分とに分割されている、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項5】
前記第2のプレートに把手が設けられている、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項6】
前記第1のプレートが、前記第1の段差部の前記第1の手摺の側に植設された留具によって回動可能に留められている、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項7】
前記第1のプレートの前記第1の手摺の側の角部が、平面視で曲面状に成形されている、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項8】
前記第1のプレートは、前記第1の手摺及び前記第2の手摺に沿った長さにおいて、前記第1の段差部に重なる長さより、前記第2の段差部に重なる長さの方が長い、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項9】
前記第1のプレートは、前記第2の段差部に重なる長さが、前記隙間の間隔以上の長さを有する、請求項8に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【請求項10】
前記第1のプレートの前記第2の段差部の側の端部に接するように、前記第2の段差部の上面に植設されたずれ止め部材を含む、請求項1に記載のエキスパンションジョイントの端部の保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、エキスパンションジョイントの端部に形成される隙間を塞ぐための保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模建築物では建物の中に形態上異なる性状を持つ構造が存在する場合、地震の際に変位のしかたが異なることにより、局所的に負荷が集中し破損に至るおそれがある。そこで、性状が異なる構造を別棟で建築し、建築物全体として耐震性を高める設計が行われている。例えば、流通業務施設では本体棟と車路棟では構造が異なるため、2つの棟は別棟で建設される場合がある。一方、本体棟の床と車路棟の床は連続していなければならないので、伸縮性のある継ぎ目で繋がれている。このような伸縮性のある継ぎ目はエキスパンションジョイントと呼ばれている(特許文献1参照)。
【0003】
なお、エキスパンションジョイント(Expansion joint)とは、地震や温度伸縮などの変形によって建築物にかかる破壊的な力を伝達しないように、建築物と建築物との間に隙間が設けられるとき、2つの建築部の隙間を繋ぐ伸縮性の継手のことを指し、ムーブメントジョイント(movement joint)、伸縮継手とも呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エキスパンションジョイントの床には、エキスパンションジョイントカバーと呼ばれるスライド型の金属プレートが設けられる。一方、エキスパンションジョイントの端にある手摺部分の隙間は人間の落下防止機能があればよいので、格子などを設ければ十分である。しかしながら、床スラブと手摺との境界部分に段差が形成される場合、エキスパンションジョイントカバーでは覆うことができないため、何らかの部材で隙間を塞ぐ必要がある。
【0006】
この段差部に残る隙間は、簡単には、段差部の上面と側面を覆うように金属プレートを曲げ加工して塞げばよいが、建物に固定してしまうと地震などの際に変形することが問題となる。すなわち、地震の際には棟ごとに水平方向及び垂直方向に異なる変位が生じるため、曲げ加工しただけの金属プレートが両方の棟に固定されていると固定部分が破断し落下の危険がある。また、当該金属プレートをどちらか一方の棟にのみ固定した場合でも、2つの棟の変位に追従できずに変形してしまうことが問題となる。当該金属プレートの変形を防ぐために固定しないでおくことも考えられるが、エキスパンションジョイントの隙間から落下する危険性を否定することができないため適切ではない。
【0007】
本発明の一実施形態はこのような問題に鑑みなされたものであり、エキスパンションジョイントの端部に形成される隙間を塞ぐための保護具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るエキスパンションジョイントの端部の保護具は、第1の躯体の第1の床スラブと第1の手摺との境界部に形成される第1の段差部と、第1の躯体に隣接する第2の躯体の第2の床スラブと第2の手摺との境界部に形成される第2の段差部と、の間に形成される隙間を塞ぐエキスパンションジョイントの端部の保護具であって、保護具は、第1の段差部の上面から第2の段差部の上面に架け渡される第1のプレートと、第1の段差部の側面から第2の段差部の側面に掛け渡される第2のプレートと、第1のプレートと第2のプレートとを繋ぐ連結具と、を含み、第1のプレートが、第1の段差部の上面において一点で回動可能に接続されている。
【0009】
本発明の一実施形態において、第2のプレートが連結具による接続部を支点に跳ね上げ可能に設けられていてもよく、連結具として蝶番が用いられてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、第2のプレートに把手が設けられていてもよい。また、第2のプレートが第1の段差部の側の部分と第2の段差部の側の部分とに分割されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、第1のプレートが、第1の段差部の第1の手摺の側に植設された留具によって回動可能に留められていてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、第1のプレートの第1の手摺の側の角部が平面視で曲面状に成形されていてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、第1のプレートは、第1の手摺及び第2の手摺に沿った長さにおいて、第1の段差部に重なる長さより、第2の段差部に重なる長さの方が長くされていてもよい。また、第1のプレートは、第2の段差部に重なる長さが、第1の躯体と第2の躯体との隙間の間隔以上の長さを有していてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、第1のプレートの第2の段差部の側の端部に接するように第2の段差部の上面に植設されたずれ止め部材が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係るエキスパンションジョイントの端部の保護具によれば、第1の躯体の第1の段差部と第2の躯体の第2の段差部の位置とが、地震などにより変位しても、変形や落下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護具の構成を示す斜視図であり、(A)は平常時の状態、(B)は躯体が変位したときの状態を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護具の構造を示し、(A)は平面図、(B)は正面図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護具の構造を示し、(A)は
図2(A)のA1-A2線に沿った断面図、(B)はB1-B2線に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、B、又はa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1の」、「第2の」と付された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0018】
図1(A)は、第1の躯体201と第2の躯体202とを連結するエキスパンションジョイントが設けられる領域の外側端部の斜視図を示す。第1の躯体201と第2の躯体202とは別棟で建てられて建造物である。第1の躯体201及び第2の躯体202は鉄筋コンクリートの建造物であるが、その構造、用途などに限定はない。例えば、第1の躯体201は多層階の流通業務施設または駐車場などの本体棟であり、第2の躯体202は第1の躯体201の各階に車両を誘導する車路棟である。
【0019】
第1の躯体201は、第1の床スラブ2012及び第1の手摺2014を含み、第2の躯体202は、第2の床スラブ2022及び第2の手摺2024を含んでいる。第1の躯体201と第2の躯体202とは、地震によって揺れたときにそれそれの躯体が違う変位をして衝突しないように隙間204を空けて建てられている。隙間204の大きさは、棟の階数によっても異なるが、概略200mmから1000mmの範囲である。隙間204は上層階に向かうほど大きく設定されている。
【0020】
第1の床スラブ2012及び第2の床スラブ2022は、例えば、車路を形成するが、隙間204があることにより不連続となる。第1の躯体201と第2の躯体202との間を車両が往来する際に隙間204があると交通に支障が生じることとなる。そこで、隙間204を塞いで第1の床スラブ2012と第2の床スラブ21022を繋げるために、エキスパンションジョイントカバー206が設けられる。荷物を積載した車両がエキスパンションジョイントを通過するとき、隙間204によって段差が形成されると荷物が揺れて荷崩れや荷物の品質に影響を与えることが問題となる。しかし、エキスパンションジョイントカバー206を設けることで、第1の床スラブ2012と第2の床スラブ2022との連続性を確保し、大きな段差が生じないようにすることができる。なお、第1の床スラブ2012の端には第1の排水溝2018が設けられ、第2の床スラブ2022の端には第2の排水溝2028が設けられていてもよい。エキスパンションジョイントカバー206は、排水溝の部分まで覆う大きさを有することで、床面の隙間204を塞ぎ安全性を高めることができる。
【0021】
第1の床スラブ2012及び第2の床スラブ2022の外側端部には、転落防止、落下防止のために第1の手摺2014及び第2の手摺2024が設けられる。第1の手摺2014及び第2の手摺2024は、車両の転落防止、車路にある小石などの異物の落下防止、歩行者の転落防止のために必要とされている。
図1(A)に示すように、第1の手摺2014と第2の手摺2024との間には隙間204を有している。この隙間204部分には、横格子手摺208が設けられたり、伸縮性の落下防止プレート210(例えば、ゴム製のプレート)が設けられたりして、転落や落下防止の対策が施されている。
【0022】
図1(A)は、また、第1の床スラブ2012と第1の手摺2014との境界部分には第1の段差部2016が設けられ、第2の床スラブ2022と第2の手摺2024との境界部分には第2の段差部2026が設けられた構造を示す。第1の段差部2016と第2の段差部2026との間の隙間204はエキスパンションジョイントカバー206で塞ぐことができない。そこで、第1の段差部2016と第2の段差部2026に架け渡されるようにエキスパンションジョイントの端部の保護具100(以下、単に「保護具100」ともいう)が設けられる。
【0023】
保護具100は、第1のプレート101、第2のプレート102、連結具103、把手104を含んで構成され、留具106によって第1の段差部2016に留められている。また、付随する部材として第2の段差部2026側に、保護具100のすれを防ぐためのずれ止め部材108が設けられていてもよい。
【0024】
図2(A)は、
図1(A)に示す保護具100の平面図を示す。また、
図2(B)は保護具100の正面図を示す。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、第1のプレート101は、第1の段差部2016及び第2の段差部2026の上面に架け渡されて隙間204を塞ぐように配置され、第2のプレート102は、第1の段差部2016及び第2の段差部2026の側面に立てられて隙間204を塞ぐように配置される。
【0025】
第1のプレート101と第2のプレート102とは、第1の段差部2016及び第2の段差部2026の角部に沿った部分で突き合わされて、連結具103により連結される。連結具103は、第1のプレート101に対する第2のプレート102の取り付け角度を固定するものではなく、連結部分を支点として第1のプレート101及び第2のプレート102が回動可能となる構造を有する。すなわち、保護具100の第1のプレート101が、第1の段差部2016及び第2の段差部2026の上面に置かれた状態では、第2のプレート102が側面に立てられた状態から、段差部の角部に沿った領域を支点として上方へ回動可能となるように設けられる。
【0026】
第1のプレート101及び第2のプレート102は金属製であり、2mm~5mm程度の厚さを有する。例えば、第1のプレート101及び第2のプレート102は鉄製であり、すべり止めの突起模様が付いた縞鋼板が用いられてもよい。
【0027】
連結具103として、例えば、蝶番が用いられる。また、連結具103は、ゴム材のような弾性と可撓性を有する部材で形成されてもよい。第1のプレート101によって第2のプレート102が安定的に保持され、第2のプレート102がスムーズに開くように、連結具103は複数箇所に設けられることが好ましい。
【0028】
第2のプレート102には把手104が設けられていてもよい。把手104が設けられることで、第2のプレート102を容易に持ち上げて開くことができる。通常において第2のプレート102を開閉することはないが、把手104があるとエキスパンションジョイントのメンテナンスをするとき便利に用いることができる。
【0029】
なお、図示されないが、第2のプレート102は、第1の段差部2016及び第2の段差部2026の角部に沿った方向において複数に分割されていてもよい。例えば、第2のプレート102は、第1の段差部2016の側の部分と、第2の段差部2026の側の部分とに分割されていてもよい。後述されるように、地震などにより第1の躯体201と第2の躯体202の相対的な位置が変位したとき、第2のプレート102が複数に分割されていると、個々のプレートが上方に跳ね上がるように変位して保護具100にかかる力をうまく吸収することができる。
【0030】
保護具100は、第1の躯体201側において一点で留められている。詳細には、第1のプレート101が、第1の段差部2016の上面に設けられた留具106によって回動可能な状態で留められている。また、第2の段差部2026の側では、保護具100のずれを防止するずれ止め部材108が設けられていてもよい。保護具100が留具106によって第1の躯体201側で留められていることで、地震などがあっても落下を防止することができる。第1のプレート101及び第2のプレート102は相当な重量があるため車両の通過に伴う程度の振動ではずれることがないと考えられる。しかし、第2の躯体202側にずれ止め部材108が設けられていることで、保護具100の横ずれを防ぐことができる。
【0031】
図3(A)は、
図2(A)に示すA1―A2線に沿った断面構造を示す。第1の段差部2016には、保護具100を留めるための留具106が設けられる。留具106は軸状の部材が用いられる。例えば、留具106としてアンカーボルトが用いられる。留具106は、アンカーボルトに限定されず、コンクリートに植設することができる軸状の部材であれば他の部材が用いられてもよい。
【0032】
図3(A)に示すように、第1のプレート101は貫通孔1012が設けられる。貫通孔1012が留具106に挿通されることで、第1のプレート101が第1の躯体201に留められる。貫通孔1012の孔径が留具106の軸径より大きいため、保護具100は第1の躯体201側で留具106を中心に回動可能に留められた状態となる。なお、第1のプレート101が跳ね上がったとき留具106から抜け落ちないように、留具106の上部にはストッパ1062が設けられていてもよい。ストッパ1062は、例えば、アンカーボルトに対してナットが用いられてもよい。
【0033】
また、ずれ止め部材108はゴム材などの弾性を有する部材で形成され、第2の段差部2026に埋め込まれた埋め込みナットとボルトにより固定されていてもよい。ずれ止め部材108は、第2の段差部2026に強固に固定されている必要はない。ずれ止め部材108は、平常時においては第1のプレート101の位置がずれないように支えつつ、大きな地震があって保護具100に大きな力が作用したときには第2の段差部2026から外れてしまう程度の強度で固定されていればよい。ずれ止め部材108が外れてしまうことで、地震などにより第1の躯体201と第2の躯体202とが変位したときに、保護具100の回動を可能とし、破損や変形を防ぐことができる。
【0034】
図2(A)に示すように、第1のプレート101の第1の手摺2014側の角部1014は、平面視で曲線状に成形されていることが好ましい。別言すれば、第1のプレート101の角部1014は、平面視でR加工されていることが好ましい。角部1014がR加工される大きさは留具106の位置によって調整される。例えば、留具106が第1の手摺2014から150mm離れている場合には、R加工も同程度(100mm~200mm)の曲率半径で形成されることが好ましい。このように、第1のプレート101の角部1014が平面視で曲線状に成形されていることで、地震などにより第1の躯体201と第2の躯体202との位置が相対的に変位しても、第1のプレート101の回動が妨げられないようにすることができ、破損や変形を防止することができる。
【0035】
図2(A)に示すように、第1のプレート101は、第1の手摺2014及び第2の手摺2024に沿った方向において、第1の段差部2016と長さL1で重なり、第2の段差部2026と長さL2で重なる。第1のプレート101における長さL1に特段の限定はなく、留具106によって留めることのできる十分な長さを有していればよい。一方、第2のプレート102における長さL2は、この長さが短かすぎると第1の躯体201及び第2の躯体202が変位して隙間204が広がったとき、第2の段差部2026から外れてしまうおそれが生じる。したがって、第2のプレート102における長さL2は、第1の躯体201及び第2の躯体202が変位しても外れないように十分な長さを有していることが好ましい。
【0036】
例えば、第2のプレート102における長さL2は、隙間204の間隔さ以上の長さを有していることが好ましい。別言すれば、第1のプレート101が第1の段差部2016に重なる長さL1より、第2の段差部2026に重なる長さL2の方が長いことが好ましい。例えば、第2のプレート102における長さL2は、例えば、500mm~100mmであることが好ましい。なお、第2のプレート102も、第1の手摺2014及び第2の手摺2024に沿った方向において、第1のプレート101と同じ長さ有する。
【0037】
ところで、第1の手摺2014及び第2の手摺2024はプレキャストコンクリートで形成され、手摺から伸びる鉄筋を、床スラブを形成する鉄筋の構造部分に差し込んでコンクリートを打設することで一体化することができる。しかし、この工法では、床スラブ打設前に、プレキャストコンクリートで形成される手摺の設計承認を受ける必要があり、手摺の製作と納入を待ってからでないと床スラブの打設を行うことができず、さらに手摺を取り付ける工事では鉄筋の緊結及び支保工となり仮固定に時間を要するなどにより、工期が延びてしまうという問題がある。
【0038】
そこで、床スラブと手摺とを接合する部分に、手摺の固定元となる段差部を形成する工法が考えられる。具体的には、
図1(A)に示すように、第1の床スラブ2012と第1の手摺2014とを接合する部分に第1の段差部2016を形成し、第2の床スラブ2022と第2の手摺2024とを接合する部分に第2の手摺2024を形成する工法が考えられる。
【0039】
図3(B)は、
図2(A)に示すB1-B2線に対応する断面図を示し、このような工法で接合された第2の床スラブ2022と第2の手摺2024の断面構造を示す。この工法によれば、第2の床スラブ2022をそれぞれ打設した後に、プレキャストコンクリートで形成された第2の手摺2024を、当該手摺から伸びる鉄筋20242を第2の段差部2026を形成する鉄筋20262に緊結しコンクリートを打設することによって固定することができる。接合工事を施工する際には、第2の手摺2024の仮止めを鉄骨梁に仕込んだ金物にピース材で行い、ワイヤーのテンションで位置を補正し支持すればよく、鉄筋工事と支保工がないことで施工にかかる時間を短くすることができる。
【0040】
図3(B)に示すように、第1のプレート101は第2の段差部2026(及び第1の段差部2016)の上面を覆うように配置され、第2のプレート102は第2の段差部2026(及び第1の段差部2016)の側面を覆うように配置される。保護具100は、第2のプレート102が連結具103によって上方に跳ね上がることができるように設けられる。
【0041】
図1(B)は、第1の躯体201と第2の躯体202の相対的な位置が変位した状態を模式的に示し、第1の躯体201がX1の方向に変位し、第2の躯体202がX2の方向に変位した状態を示す。このような状態では、第1の段差部2016と第2の段差部2026との相対的な位置も変位するため、保護具100は留具106の位置を中心に回動する(
図1(B)に示す場合では手前側に回動する)。このような場合において、第1のプレート101が第1の段差部2016の側で回動可能に留められており、第2の段差部2026に対して長さL2で重なっていることで、第1の躯体201及び第2の躯体202の相対的な位置が地震などにより変位しても、連結具103に止められた第2のプレート102が上方に跳ね上がることで変形を防ぎ、隙間204を覆い続けることができる。
【符号の説明】
【0042】
100:保護具、101:第1のプレート、1012:貫通孔、1014:角部、102:第2のプレート、103:連結具、104:把手、106:留具、1062:ストッパ、108:ずれ止め部材、201:第1の躯体、2012:第1の床スラブ、2014:第1の手摺、2016:第1の段差部、2018:第1の排水溝、202:第2の躯体、2022:第2の床スラブ、2024:第2の手摺、2026:第2の段差部、2028:第2の排水溝、204:隙間、206:エキスパンションジョイントカバー、208:横格子手摺、210:落下防止プレート