IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日特建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社和工の特許一覧

<>
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図1
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図2
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図3
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図4
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図5
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図6
  • 特開-ドリルパイプの品質管理システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121366
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ドリルパイプの品質管理システム
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/20 20060101AFI20240830BHJP
   E21B 19/18 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E21B17/20
E21B19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028431
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591167810
【氏名又は名称】株式会社和工
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 吉見
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA12
2D129BA18
2D129BA19
2D129EC00
2D129JA01
2D129JA05
(57)【要約】
【課題】ドリルパイプの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプを使用者に通知することができる、ドリルパイプの品質管理システムを提供する。
【解決手段】削孔H内に挿入されるドリルパイプPに取り付けられ、ドリルパイプP毎の識別情報が書き込まれているタグ2と、削孔Hの外側に設けられ、タグ2毎の識別情報を読み取る読取手段3と、読取手段3が読み取った識別情報に基づきドリルパイプPの劣化の程度を示す劣化指標情報を生成する制御部と、制御部が生成した劣化指標情報に基づき報知を行う報知手段(表示部41及びスピーカー)と、を備えるドリルパイプの品質管理システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔内に挿入されるドリルパイプに取り付けられ、前記ドリルパイプ毎の識別情報が書き込まれているタグと、
前記削孔の外側に設けられ、前記タグ毎の前記識別情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った前記識別情報に基づき前記ドリルパイプの劣化の程度を示す劣化指標情報を生成する制御部と、
前記制御部が生成した前記劣化指標情報に基づき報知を行う報知手段と、
を備えるドリルパイプの品質管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記識別情報毎の読取回数が所定の閾値以上になった前記ドリルパイプについて、前記劣化指標情報として前記読取回数を示す読取回数通知及び/又は使用者に点検を促す点検通知を生成する請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の数に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、
前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項4】
前記タグには、前記識別情報と共に前記ドリルパイプ毎の長さを示す長さ情報が書き込まれていて、
前記読取手段は、前記識別情報と共に前記長さ情報を読み取り、
前記制御部は、前記読取手段が読み取った全ての前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、
前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項5】
前記読取手段は、前記削孔へと向かう前記ドリルパイプの進行経路において、前記削孔の開口部に隣接して設けられた前方読取手段と、前記前方読取手段よりも前記開口部から離間して設けられた後方読取手段とにより構成され、
前記制御部は、前記タグの前記識別情報について、前記後方読取手段から前記前方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内に進行したと判定し、前記前方読取手段から前記後方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、
前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項6】
前記識別情報には、前記ドリルパイプの長さ情報が含まれ、
前記読取手段は、前記削孔へと向かう前記ドリルパイプの進行経路において、前記削孔の開口部に隣接して設けられた前方読取手段と、前記前方読取手段よりも前記開口部から離間して設けられた後方読取手段とにより構成され、
前記制御部は、前記タグの前記識別情報について、前記後方読取手段から前記前方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内に進行したと判定し、前記前方読取手段から前記後方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、
前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項7】
前記タグは、前記ドリルパイプの軸方向に沿い設けられた第1タグと第2タグにより構成され、前記第1タグの第1識別情報と前記第2タグの第2識別情報は異なるものであり、
前記制御部は、前記ドリルパイプの挿入時に前記第1識別情報から前記第2識別情報の順に読み取りを行ったことを記憶し、前記第2識別情報から前記第1識別情報の順に読み取りが行われた場合に、前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、
前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項8】
前記タグは、前記ドリルパイプの軸方向に沿い設けられた第1タグと第2タグにより構成され、前記第1タグの第1識別情報と前記第2タグの第2識別情報は異なるものであり、
前記制御部は、前記ドリルパイプの挿入時に前記第1識別情報から前記第2識別情報の順に読み取りを行ったことを記憶し、前記第2識別情報から前記第1識別情報の順に読み取りが行われた場合に、前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、
前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行う請求項1に記載のドリルパイプの品質管理システム。
【請求項9】
前記報知手段は、前記報知を文字、画像及び音のうち少なくとも1つにより行う請求項1乃至8の何れか1項に記載のドリルパイプの品質管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルパイプを用いたボーリングを行う際に使用されるドリルパイプの品質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌のボーリングは、先端にビットが接続されたドリルパイプを用いて行われていて、必要な削孔長に応じて接続するドリルパイプの本数を調整することが行われている。
【0003】
そして、ボーリング中の削孔長の管理は、目視による確認の他、土壌に挿入されているドリルパイプの本数と、孔口から露出している残尺を計測することで行われている。この場合、土壌に挿入されているドリルパイプの本数は、当初用意したドリルパイプの本数から、ドリルパイプの残数を引くことで算出されている。
【0004】
また、近年では、削孔長の管理を、土壌に挿入されているドリルパイプの本数や注入ホースの長さを、センサを用いて自動的に把握することが行われるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-190329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使用に伴いドリルパイプが劣化していくため、使用開始から所定回数使用されたドリルパイプについては修復や交換の対象とする必要があるが、こうした使用回数の管理については行われておらず、熟練の作業者が目視等で劣化の程度を判定し、必要な対応を行っていた。
【0007】
しかし、施工に用いる多数のドリルパイプの全てについて作業者が目視確認を行い修復や交換の要否を確認することは、多くの手間と時間を要するものであり、煩雑な作業であった。
【0008】
また、熟練の作業者でなくてもドリルパイプの劣化の程度を判定して修復や交換の要否を判定することができるよう、当該判定の要否判断を補助するシステムがあれば好ましい。
【0009】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、ドリルパイプの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプを使用者に通知することができる、ドリルパイプの品質管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、削孔内に挿入されるドリルパイプに取り付けられ、前記ドリルパイプ毎の識別情報が書き込まれているタグと、前記削孔の外側に設けられ、前記タグ毎の前記識別情報を読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った前記識別情報に基づき前記ドリルパイプの劣化の程度を示す劣化指標情報を生成する制御部と、前記制御部が生成した前記劣化指標情報に基づき報知を行う報知手段と、を備えるドリルパイプの品質管理システムであることを特徴とする。
【0011】
上記ドリルパイプの管理システムにおいて、前記制御部は、前記識別情報毎の読取回数が所定の閾値以上になった前記ドリルパイプについて、前記劣化指標情報として前記読取回数を示す読取回数通知及び/又は使用者に点検を促すことが好ましい。
【0012】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記制御部は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の数に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0013】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記タグには、前記識別情報と共に前記ドリルパイプ毎の長さを示す長さ情報が書き込まれていて、前記読取手段は、前記識別情報と共に前記長さ情報を読み取り、前記制御部は、前記読取手段が読み取った全ての前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0014】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記読取手段は、前記削孔へと向かう前記ドリルパイプの進行経路において、前記削孔の開口部に隣接して設けられた前方読取手段と、前記前方読取手段よりも前記開口部から離間して設けられた後方読取手段とにより構成され、前記制御部は、前記タグの前記識別情報について、前記後方読取手段から前記前方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内に進行したと判定し、前記前方読取手段から前記後方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0015】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記識別情報には、前記ドリルパイプの長さ情報が含まれ、前記読取手段は、前記削孔へと向かう前記ドリルパイプの進行経路において、前記削孔の開口部に隣接して設けられた前方読取手段と、前記前方読取手段よりも前記開口部から離間して設けられた後方読取手段とにより構成され、前記制御部は、前記タグの前記識別情報について、前記後方読取手段から前記前方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内に進行したと判定し、前記前方読取手段から前記後方読取手段の順に読み取りが行われた場合に前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0016】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記タグは、前記ドリルパイプの軸方向に沿い設けられた第1タグと第2タグにより構成され、前記第1タグの第1識別情報と前記第2タグの第2識別情報は異なるものであり、前記制御部は、前記ドリルパイプの挿入時に前記第1識別情報から前記第2識別情報の順に読み取りを行ったことを記憶し、前記第2識別情報から前記第1識別情報の順に読み取りが行われた場合に、前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの数を示す本数情報を生成し、前記報知手段は、前記本数情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0017】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記タグは、前記ドリルパイプの軸方向に沿い設けられた第1タグと第2タグにより構成され、前記第1タグの第1識別情報と前記第2タグの第2識別情報は異なるものであり、前記制御部は、前記ドリルパイプの挿入時に前記第1識別情報から前記第2識別情報の順に読み取りを行ったことを記憶し、前記第2識別情報から前記第1識別情報の順に読み取りが行われた場合に、前記ドリルパイプは前記削孔内から抜去されたと判定し、前記削孔内にある前記ドリルパイプの前記長さ情報に基づき、前記削孔内にある前記ドリルパイプの合計長を示す合計長情報を生成し、前記報知手段は、前記合計長情報に基づき前記削孔の長さに関する報知を行うことが好ましい。
【0018】
上記ドリルパイプの品質管理システムにおいて、前記報知手段は、前記報知を文字、画像及び音のうち少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のドリルパイプの品質管理システムによると、ドリルパイプの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプを使用者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムが適用される、ドリルパイプに取り付けられたタグ、削孔機に設けられた読取手段、及びタブレット端末を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムの構成ブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムに用いられる制御部の機能ブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムにおいて読取手段にタグの識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムの動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムにおいて読取手段にタグの識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムにおいて読取手段にタグの識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係るドリルパイプの品質管理システムの各実施形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1が適用される、ドリルパイプPに取り付けられたタグ2、削孔機Mに設けられた読取手段3、及びタブレット型端末4を示す模式図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1の構成ブロック図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1は、ドリルパイプPに取り付けられたタグ2と、削孔機Mに設けられタグ2に書き込まれている各種情報を読み取る読取手段3と、読取手段3から送信される情報を受信して各種処理を行うタブレット型端末4とを備えて構成されている。
【0024】
タグ2は、これが取り付けられているドリルパイプP毎の各種情報が書き込まれているICタグであり、本実施形態においては読取手段3からの電波をエネルギー源として動作するパッシブタグである。タグ2には、ドリルパイプP毎の情報として、本実施形態においてはドリルパイプPの識別情報や、ドリルパイプPの長さを示す長さ情報等が書き込まれている。タグ2をICタグとすることにより、ドリルパイプPの使用に伴いタグ2の表面に泥等の汚れが付着した場合でも、各種情報の読み取りを可能にすることができる。
【0025】
読取手段3は、タグ2に書き込まれている各種情報を読み取るICタグリーダーであり、本実施形態においては削孔機Mの前端部Fに一体的に設けられている。読取手段3は、タグ2に電波を送信することによりタグ2を動作させ、タグ2に書き込まれている各種情報を読み取り、読み取った各種情報をタブレット型端末4に送信する。
【0026】
タブレット型端末4は、図1及び図2に示すように、表示部41と、図示しないスピーカーと、タブレット型端末4全体の動作を制御する制御部42を備えて構成されている。
【0027】
表示部41は、タッチパネルであり、各種操作を行う操作部も兼ねている。この表示部41が文字や図形を表示すると共に、図示しないスピーカーが音を発することにより、表示部41とスピーカーは図2に示す報知手段として機能する。
【0028】
制御部42は、図2に示すように、制御部42全体を制御するCPU421と、CPU421上で動作する制御プログラム等を格納したRОM422と、各種データを一時的に格納するためのRAM423と、各種データを記憶するための記憶手段424とを備えて構成されている。
【0029】
図3は、本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1に用いられる制御部42の機能ブロック図である。図3に示すように、制御部42は、CPU421がROM422に格納されている制御プログラムをRAM423に展開して実行することにより、読取回数計測部431、読取回数判定部432、経過時間計測部433、経過時間判定部434、本数情報生成部435、合計長情報生成部436、削孔長算出部437及び報知内容選択部438として機能する。
【0030】
読取回数計測部431は、ドリルパイプPに取り付けられているそれぞれのタグ2の読取手段3による読取回数を、それぞれの識別情報に基づき計測する。読取回数計測部431がそれぞれのタグ2について過去に何回読み取られたかを計測することで、当該タグ2が取り付けられているドリルパイプPが、削孔機Mを用いたボーリング作業において、過去に何回使用されたかを計測することができる。この読取回数は、タブレット型端末4の表示部41に表示される。図1に示す例では、表示部41に、直近でタグ2の読み取りが行われたドリルパイプPについて、使用回数として19回と表示されている。これは、ドリルパイプPのタグ2が、削孔機Mの読取手段3により過去に19回読み取られていること示している。すなわち、少なくとも過去から現在までの間に削孔機Mを用いて行われたボーリング作業において、ドリルパイプPが19回使用されていることが分かる。
【0031】
読取回数判定部432は、読取回数計測部431が計測したそれぞれのタグ2について、読取回数が第1閾値又は第2閾値以上になったか否かについての判定を行う。第1閾値は、ドリルパイプPについて摩耗や破損等が生じ始める目安となる使用回数に相当する値である。第2閾値は、第1閾値よりも大きな値であり、ドリルパイプPについて摩耗や破損等が生じている可能性が高い使用回数に相当する値である。
【0032】
経過時間計測部433は、読取手段3が過去に行われたボーリング作業で最初にドリルパイプPのタグ2を読み取った時点から、現在のボーリング作業において読み取りを行った時点までの経過時間を算出する。経過時間は、ドリルパイプPについての一般的な点検や交換の目安となる使用開始からの期間(例えば5年等)が到達した際に、使用者に報知を行う際に使用される。この経過時間は、タブレット型端末4の表示部41に表示され、図1に示す例では、経過時間として「1年2月」と表示されている。なお、本発明においてはこの経過時間計測部433はドリルパイプPの点検や交換を促すための補助的な構成であり、必須の構成ではないため、省略することができる。
【0033】
経過時間判定部434は、経過時間計測部433が計測した経過期間が第3閾値以上又は第4閾値以上になったか否かについての判定を行う。第3閾値は、ドリルパイプPの使用開始からドリルパイプPについて摩耗や破損等が生じ始める目安となる経過時間(例えば5年等)に相当する値である。第4閾値は、第3閾値よりも大きな値であり、ドリルパイプPの使用開始からドリルパイプPについて高確率で破損が生じていて使用を推奨できない経過時間(例えば10年等)に相当する値である。なお、本発明においてはこの経過時間判定部434は上述した経過時間計測部433と共に用いられ、ドリルパイプPの点検や交換を促すための補助的な構成であり、必須の構成ではないため、省略することができる。
【0034】
本数情報生成部435は、1回のボーリング作業において読取手段3が読み取ったタグ2の識別情報の数を計測し、削孔H内にあるドリルパイプPの本数を示す本数情報を生成する。本実施形態においては、削孔機Mは、読取手段3が設けられている前端部Fが削孔Hの開口部Оに近接して配置されているため、1回のボーリング作業において読取手段3が読み取ったドリルパイプPの本数は、削孔H内に全体又はその一部が挿入されているドリルパイプPの本数を示すことになり、削孔H内にあるドリルパイプPの本数の近似値として扱うことができる。この本数情報は、タブレット型端末4の表示部41に表示される。図1に示す例においては、表示部41に、本数情報として、打設本数が3本であると表示されている。本数情報があることにより、タグ2に長さ情報が書き込まれていない場合や、何らかの理由で長さ情報が読み取れなかった場合等であって、かつ各ドリルパイプPの長さが均一である場合に、本数情報が示す削孔H内のドリルパイプPの本数に、既知であるドリルパイプ1本当たりの長さを積算することにより、削孔長の概算値を算出することが可能になる。
【0035】
合計長情報生成部436は、1回のボーリング工程において読取手段3が読み取ったタグ2の長さ情報に基づき、削孔H内にある全てのドリルパイプPの合計長である合計長情報を生成する。上述したように、削孔機Mに設けられている読取手段3は削孔Hの開口部Оに近接して配置されているため、1回のボーリング作業において読取手段3が読み取ったドリルパイプPの合計長は、削孔H内に全体又はその一部が挿入されているドリルパイプPの合計長を示すことになり、削孔H内にあるドリルパイプPの合計長の近似値として扱うことができる。この合計長情報は、タブレット型端末4の表示部41に表示される。図1に示す例においては、各ドリルパイプPの長さはそれぞれ1mであり、この1mの値が長さ情報としてそれぞれのタグ2に書き込まれていて、表示部41には、合計長情報として合計長が3mであると表示されている。合計長情報があることにより、ボーリング作業に用いられるドリルパイプPの長さがそれぞれ異なる場合であっても削孔長の概算値を算出することが可能になる。
【0036】
削孔長算出部437は、本数情報生成部435が生成したドリルパイプPの本数情報、又は合計長情報生成部436が生成したドリルパイプPの合計長情報に基づき、削孔Hの削孔長の概算値を算出する。本実施形態においては、原則として合計長情報に基づいて削孔長の算出を行うが、タグ2に長さ情報が書き込まれていなかったり、タグ2に長さ情報が書き込まれているが当該長さ情報を何らかの理由で読み取ることができなかったりした場合には、自動的に本数情報に基づく削孔長の算出に切り替えられる。なお、本数情報に基づく削孔長の算出を行うためには、予めドリルパイプPの長さをタブレット型端末4に登録しておく必要があり、全てのドリルパイプPについて長さが均一である場合には当該均一な長さを、不均一な場合には例えば長さの平均値等、ドリルパイプPの目安となる長さを事前に登録する。
【0037】
合計長情報に基づくドリルパイプPの削孔長算出は、合計長情報が示す合計長を削孔長の概算値として使用するものであり、本実施形態においては原則としてこの合計長に基づき算出が行われる。この概算値は、設定で任意の数値を加算又は減算して補正することが可能になっている。
【0038】
本数情報に基づくドリルパイプPの削孔長算出は、タグ2に長さ情報が書き込まれていなかったり、タグ2に長さ情報が書き込まれているが当該長さ情報を何らかの理由で読み取ることができなかったりした場合に行われるものであり、本数情報に、あらかじめ登録してあるドリルパイプPの目安となる長さをかけあわせることにより削孔長の概算値の算出が行われる。この概算値についても、設定で任意の数値を加算又は減算して補正することが可能になっている。
【0039】
図1に示す例では、ドリルパイプPのタグ2に書き込まれている長さ情報が全て読み取れる状態であるため合計長情報に基づき削孔長の概算値が算出されている。また、先頭に位置するドリルパイプP1に長さが50cmのドリルヘッドPH(図4参照)を装着しているため、当該ドリルヘッドPHの長さ50cmを削孔長の概算値に加算するよう設定されている。そのため、削孔長算出部437は、タグ2の読み取りが行われたドリルパイプPの合計長である「3m」に、補正値としてドリルヘッドPHの長さ「50cm」を加えた「3m50cm」を、削孔長の概算値として算出すると共に、表示部41に表示している。
【0040】
なお、削孔時には、削孔機Mの読取手段3から削孔Hの開口部Оまでの距離が、ドリルパイプPの先端位置からタグ2の取り付け位置までの距離よりも短くなるように削孔機Mの設置位置を調節する。これにより、タグ2の読み取り時にドリルパイプPの少なくとも一部が削孔H内に進入している状態になるため、削孔長算出部437により算出される削孔長の概算値と実際の削孔長との誤差を、直近にタグ2の読み取りが行われたドリルパイプPの長さよりも短くすることができる。
【0041】
また、本発明においては、削孔長算出部437により計測された削孔長の誤差を修正するため、各種の構成を併用することができる。例えば、ドリルパイプの品質管理システム1に、削孔機Mのドリフターやスピンドルヘッドのフィールドストロークをレーザー距離計や各種のエンコーダーにより計測することで削孔長を算出する機能を追加すると共に、当該機能により算出された削孔長と、削孔長算出部437が算出した削孔長との平均値を算出する平均値算出部を制御部42の機能に追加して、当該平均値を削孔長として表示部41に表示してもよい。
【0042】
報知内容選択部438は、報知手段である表示部41やスピーカーによるドリルパイプPの劣化に関する報知内容である劣化指標情報を、読取回数判定部432及び経過時間判定部434による判定結果に応じて選択し、報知情報を生成する。
【0043】
具体的には、読取回数判定部432による判定の結果、読取回数が第1閾値以上であり、第2閾値未満である場合には、報知内容選択部438は、劣化指標情報として使用者にドリルパイプPの点検を促す点検通知を生成する。点検通知が生成された場合には、表示部41に図1に示すように注意事項として「使用回数:点検実施」と表示され、ドリルパイプPの使用回数が点検実施の目安となる第1閾値以上になったためドリルパイプPの点検を実施することが好ましい旨を使用者に通知すると共に、使用者の目を惹く注意マークCを、注意事項の右隣に表示する報知を行う。また、この際、使用者が当該通知を見逃さないように、スピーカーが所定の音を発する報知を行い、更なる注意喚起をする。なお、本発明において音とは、単純なブザー音の他、例えば「点検を実施して下さい」等の音声を含むものである。なお、第1閾値は予めタブレット型端末4を用いて設定されていて、例えば「15回」等とすることができる。
【0044】
また、読取回数判定部432による判定の結果、読取回数が第2閾値以上である場合には、報知内容選択部438は、劣化指標情報として使用者にドリルパイプPの交換を促す交換通知を生成する。本実施形態においては、点検通知が生成された場合には、表示部41に注意喚起として「使用回数:交換実施」と表示され、ドリルパイプPの使用回数が交換実施の目安となる第2閾値以上になったためドリルパイプPの交換を実施することが好ましい旨を使用者に通知すると共に、使用者の目を惹く注意マークCを、注意事項の右隣に表示する報知を行う。また、この際、使用者が当該通知を見逃さないように、スピーカーが所定の音を発する報知を行い、注意喚起をする。この交換通知の際の音による報知を、点検通知が行われる際の音と異ならせて行うことにより、使用者によるドリルパイプPの状態判断をより迅速かつ行い易くすることができる。なお、第2閾値についても予めタブレット型端末4を用いて設定されていて、例えば「50回」等とすることができる。
【0045】
一方、経過時間判定部434による判定の結果、経過時間が第3閾値以上であり第4閾値未満である場合には、報知内容選択部438は、劣化指標情報として上述したものと同様の交換通知を生成すると共に、報知手段(表示部41及びスピーカー)が上述した報知と同様の報知を行う。この第3閾値についても、予めタブレット型端末4を用いて設定されていて、例えば「5年」等とすることができる。
【0046】
また、経過時間判定部434による判定の結果、経過時間が第4閾値以上である場合には、報知内容選択部438は、劣化指標情報として上述したものと同様の交換通知を生成すると共に、報知手段が同様の報知を行う。この第3閾値についても、予めタブレット型端末4を用いて設定されていて、例えば「10年」等とすることができる。
【0047】
次に、上述した構成を備えるドリルパイプの品質管理システム1の具体的な動作について説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1において読取手段3にタグ2の識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。図5は、本発明の第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0048】
まず、ボーリング作業が開始されると、削孔機MによるドリルパイプPの繰り出しが行われる。最初にドリルヘッドPHが取り付けられたドリルパイプP1が繰り出され、図1に示す削孔H内に挿入されるが、この際ドリルパイプP1のタグ2に書き込まれているドリルパイプP1の各種情報(識別情報、長さ情報等)が、削孔機Mの前端部Fに設けられている読取手段3により読み取られる(ステップS1)。
【0049】
次に、読取回数計測部431が、タグ2の識別情報に基づきドリルパイプP1の読取手段3による読取回数の計測を行う(ステップS2)。
【0050】
次に、読取回数判定部432が、ドリルパイプP1のタグ2の読取回数が、第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0051】
ドリルパイプP1のタグ2の読取回数が第2閾値未満である場合(ステップS3:NO)、読取回数判定部432は、更にドリルパイプP1のタグ2の読取回数が、第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0052】
ドリルパイプP1のタグ2の読取回数が第1閾値未満である場合(ステップS4:NO)、次に経過時間判定部434が、経過時間計測部433により計測された、ドリルパイプP1の使用開始時から現時点までの経過時間を判定する(ステップS5)。
【0053】
経過時間判定部434による判定の結果、ドリルパイプP1の使用開始時からの経過時間が第4閾値未満である場合(ステップS6:NO)、更に経過時間判定部434が、当該経過時間が第3閾値以上であるかの判定を行い、経過時間が第3閾値未満である場合(ステップS7:NO)、本数情報生成部435が削孔H内のドリルパイプPの本数情報を生成する(ステップS8)。
【0054】
次に、合計長情報生成部436が、読取手段3が読み取ったタグ2の長さ情報に基づき、削孔H内にある全てのドリルパイプPの合計長情報を生成する(ステップS9)。
【0055】
次に、削孔長算出部437が、本数情報生成部435が生成したドリルパイプPの本数情報、又は合計長情報生成部436が生成したドリルパイプPの合計長情報に基づき、削孔Hの削孔長の概算値を算出する(ステップS10)。本実施形態においては、原則として合計長情報に基づく削孔長の概算値の算出を行うが、タグ2に長さ情報が書き込まれていなかったり、タグ2に長さ情報が書き込まれているが当該長さ情報を何らかの理由で読み取ることができなかったりした場合には、本数情報に基づく削孔長の概算値の算出が行われる。
【0056】
次に、報知内容選択部438が、劣化指標情報を、読取回数判定部432及び経過時間判定部434による判定結果に応じて選択し、報知する内容を示す報知情報を生成する(ステップS11)。この劣化指標情報は、上述したように点検通知や交換通知であり、表示部41やスピーカーにより報知されるものである。なお、点検や交換の必要が無い場合には、報知内容選択部438は、点検等の必要が無いことを示す「なし」という表示を行う旨の報知情報を生成する。
【0057】
次に、報知手段(表示部41及びスピーカー)は、報知情報に基づき、劣化指標情報として点検通知や交換通知を反映する情報、又は「なし」とする表示を、表示部41の「注意事項」の欄(図1参照)に表示すると共に、点検通知や交換通知に応じた所定の音をスピーカーから発して使用者に注意喚起を行う。更に、点検通知や交換通知の表示に際しては、「ドリルパイプの情報」の欄に、注意が必要な項目(使用回数、使用期間)の右側に、注意マークC(図1参照)を表示する(ステップS12)。
【0058】
また、表示部41は、「注意事項」の表示と共に、図1に示すように、「ドリルパイプの情報」欄に「使用回数」と「使用期間」を表示すると共に、「削孔状況」欄にドリルパイプPの削孔H内への打設本数を示す「打設本数」と、削孔H内のドリルパイプPの合計長を示す「合計長」を表示し(同じくステップS12)、一連の動作が終了する。
【0059】
一方、ステップS3でドリルパイプP1のタグ2の読取回数が第2閾値以上になった場合(ステップS3:YES)、報知内容選択部438は劣化指標情報として交換通知を生成し(ステップS13)、上述したステップS5に移行する。
【0060】
また、ステップ4でドリルパイプP1のタグ2の読取回数が第1閾値以上になった場合(ステップS4:YES)、報知内容選択部438は劣化指標情報として点検通知を生成し(ステップS14)、上述したステップS5に移行する。
【0061】
また、ステップS6でドリルパイプP1の使用開始時からの経過時間が第4閾値以上になった場合(ステップS6:YES)、報知内容選択部438は劣化指標情報として交換通知を生成し(ステップS15)、上述したステップS8に移行する。
【0062】
また、ステップS7でドリルパイプP1の使用開始時からの経過時間が第3閾値以上になった場合(ステップS7:YES)、報知内容選択部438は劣化指標情報として点検通知を生成し(ステップS16)、上述したステップS8に移行する。
【0063】
そして、ドリルパイプの品質管理システム1は、上述したステップS1-S16の処理を、1回のボーリング作業に用いられる全てのドリルパイプP(P1、P2、…、Pn)について繰り返し行い、各ドリルパイプPについての品質の管理と、削孔長の概算値の算出を行う。
【0064】
上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1によると、ドリルパイプPの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプPを使用者に通知することができる。また、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1によると、作業者による目視確認を要することなく、自動的に削孔内にあるドリルパイプPの本数及び合計長を算出することができ、これにより削孔長の概算値を算出することができ、削孔長管理に要する労力を削減することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムについて図を用いて説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10において読取手段3A、3Bにタグの識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。
【0066】
図6に示すように、第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10は、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に、ドリルパイプPに取り付けられているタグ2と、タグ2を読み取る読取手段と、読取手段から送信される情報を受信して各種処理を行うタブレット型端末(不図示)とを備えて構成されていて、順次接続されて削孔内に挿入されていくドリルパイプP1、P2、P3、…、Pnについて、それぞれに取り付けられているタグ2を、読取手段により読み取ることが行われる。
【0067】
一方で、第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10では、ドリルパイプPのタグ2を読み取る読取手段として、進行方向に沿い並置された前方読取手段3Aと後方読取手段3Bの2つの読取手段を備えている点で、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と異なっている。そして、ドリルパイプの品質管理システム10では、後述するように前方読取手段3Aと後方読取手段3Bの2つの読取手段によりドリルパイプPの削孔内への進入又は抜去を把握して削孔長の算出の精度を向上することができるという、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1には無い機能を備えている。
【0068】
前方読取手段3Aと後方読取手段3Bは何れも上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1において用いられていた読取手段3と同一のものである。前方読取手段3Aは、削孔へと向かうドリルパイプPの進行経路において、削孔の開口部に隣接して配置されている。後方読取手段3Bは、前方読取手段3Aよりも開口部から離間して配置されている。
【0069】
そして、第2実施形態に係るドリルパイプPの品質管理システム10では、制御部は、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1の制御部42の各機能(図3参照)に加えて、進行方向判定部(不図示)を備えている。この進行方向判定部は、タグ2の識別情報について、後方読取手段3Bから前方読取手段3Aの順に読み取りが行われた場合には、ドリルパイプPは削孔内に進行したと判定すると共に、前方読取手段3Aから後方読取手段3Bの順に読み取りが行われた場合には、ドリルパイプPは削孔内から抜去されたと判定する。
【0070】
そして、この進行方向判定部によるドリルパイプPの進行方向の判定結果に応じて、本数情報生成部435(図3参照)が、削孔内にあるドリルパイプの数を示す本数情報を生成する。
【0071】
また、進行方向判定部によるドリルパイプPの判定結果に応じて、合計長情報生成部436(図3参照)が、削孔内にあるドリルパイプPの長さ情報に基づき、削孔内にあるドリルパイプPの合計長を示す合計長情報を生成する。
【0072】
そして、報知手段(タブレット型端末の表示部及びスピーカー)は、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に、本数情報又は合計長情報に基づき、削孔長の概算値を算出し、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に、表示部41に表示する。
【0073】
また、本実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10においても、ドリルパイプの使用回数や使用開始時からの経過時間の計測を、上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に行う。
【0074】
上述した第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10によっても、ドリルパイプPの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプPを使用者に通知することができる。
【0075】
また、第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10によっても、作業者による目視確認を要することなく、自動的に削孔内にあるドリルパイプPの本数及び合計長を算出することができ、これにより削孔長の概算値を算出することができ、削孔長管理に要する労力を削減することができる。
【0076】
更に、上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1では、ドリルパイプPが後退して削孔H内から抜去されてタグ2の読み取りが行われた場合は、ドリルパイプPが削孔H内に進入したと認識されてしまい、削孔長の概算値の算出を正確に行うことができなかった。しかし、第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10では、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1では行うことができなかった、ドリルパイプPが削孔への進入方向に進んでいるか、又は抜去方向に進んでいるかを判定することができる。そのため、ドリルパイプPが抜去方向に進行した場合でも、削孔H内のドリルパイプPの本数及び合計長を正確に把握することが可能であり、より高精度の削孔長管理が可能になる。
【0077】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システムについて図を用いて説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100において読取手段にタグの識別情報が読み取られる様子を示す模式図である。
【0078】
図7に示すように、第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100は、上述した他の実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1、10と同様に、ドリルパイプPに取り付けられているタグと、タグを読み取る読取手段3と、読取手段3から送信される情報を受信して各種処理を行うタブレット型端末(不図示)とを備えて構成されていて、順次接続されて削孔内に挿入されていくドリルパイプP1、P2、P3、P4…、Pnについて、それぞれに取り付けられているタグを、読取手段3により読み取ることが行われる。
【0079】
一方で、第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100では、タグとしてドリルパイプPの軸方向において離間して設けられた第1タグ2Aと第2タグ2Bの2つのタグを備えている点で、上述した他の実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1、10とは異なっている。そして、ドリルパイプの品質管理システム100では、後述するように第1タグ2Aと第2タグ2Bの読み取りの順番からドリルパイプPの削孔H内への進入又は抜去を把握して削孔長の算出の精度を向上することができるという、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1には無い機能を備えている。
【0080】
第1タグ2Aと第2タグ2Bは何れも上述した他の実施形態に係るタグ2と同様のものである。第1タグ2Aと第2タグ2Bには、それぞれ同一の製造時情報及び長さ情報が書き込まれている。一方、第1タグ2Aには第1識別情報が書き込まれていて、第2タグ2Bには第1識別情報とは異なる第2識別情報が書き込まれている。
【0081】
そして、第3実施形態に係るドリルパイプPの品質管理システム10では、制御部は、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1の制御部42の各機能(図3参照)に加えて、進行方向記憶部(不図示)と進行方向判定部(不図示)を備えている。
【0082】
進行方向記憶部は、図7に示す例ではドリルパイプP(P1、P2、P3、P4、…、Pn)について削孔内への進行時に第1識別情報から第2識別情報の順に読み取りが行われたことを記憶手段424(図2参照)に記憶させる。
【0083】
進行方向判定部は、記憶手段424に記憶された第1識別情報と第2識別情報の読み取り順に基づきドリルパイプPの進行方向の判定を行う。具体的には、現在行われているボーリング作業中に、読取手段3により再度第1識別情報と第2識別情報の順に読み取りが行われた場合には、進行方向判定部は、ドリルパイプPは削孔内に進行したと判定する。また、進行方向判定部は、第2識別情報から第1識別情報の順に読み取りが行われた場合には、ドリルパイプPは削孔内から抜去されたと判定する。
【0084】
そして、この進行方向判定部によるドリルパイプPの進行方向の判定結果に応じて、本数情報生成部435(図3参照)が、削孔内にあるドリルパイプの数を示す本数情報を生成する。
【0085】
また、進行方向判定部によるドリルパイプPの判定結果に応じて、合計長情報生成部436(図3参照)が、削孔内にあるドリルパイプPの長さ情報に基づき、削孔内にあるドリルパイプPの合計長を示す合計長情報を生成する。
【0086】
そして、報知手段(タブレット型端末の表示部及びスピーカー)は、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に、本数情報又は合計長情報に基づき、削孔長の概算値を算出し、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に、表示部41に表示する。
【0087】
なお、本実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100によるドリルパイプの使用回数や使用開始時からの経過時間の計測は、上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1と同様に行われる。
【0088】
上述した第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100によっても、ドリルパイプPの使用状況を検知し、修復や交換が必要な可能性があるドリルパイプPを使用者に通知することができる。
【0089】
また、第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100によっても、作業者による目視確認を要することなく、自動的に削孔内にあるドリルパイプPの本数及び合計長を算出することができ、これにより削孔長の概算値を算出することができ、削孔長管理に要する労力を削減することができる。
【0090】
更に、上述した第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1では、ドリルパイプPが後退して削孔H内から抜去されてタグ2の読み取りが行われた場合は、ドリルパイプPが削孔H内に進入したと認識されてしまい、削孔長の概算値の算出を正確に行うことができなかった。しかし、第3実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム100では、第2実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム10と同様に、第1実施形態に係るドリルパイプの品質管理システム1では行うことができなかった、ドリルパイプPが削孔への進入方向に進んでいるか、又は抜去方向に進んでいるかを判定することができる。そのため、ドリルパイプPが抜去方向に進行した場合でも、削孔H内のドリルパイプPの本数及び合計長を正確に把握することが可能であり、より高精度の削孔長管理が可能になる。
【0091】
なお、本発明は上述した各実施形態の態様に限定されず、同一の作用効果を奏する範囲内において、種々の変形を採用することができる。
【0092】
例えば、上述した各実施形態においては、タグ2、2A、2BとしてICタグのうちパッシブタグを採用していたが、本発明においてはこれに限らず、タグとしてアクティブタグやセミパッシブタグも採用することができる。
【0093】
また、本発明においては、タグ2、2A、2BはICタグに限定されず、例えばQRコード(登録商標)等の画像であってもよく、タグ2、2A、2Bとして画像を用いる場合には、読取手段としてカメラが用いられる。ただし、ICタグは、汚れが付着した場合等でも各種情報の読み取りを行うことができるため、これをタグ2、2A、2Bとすることが好ましい。
【0094】
また、上述した各実施形態においては、第1実施形態のようにまず本数情報生成部45が本数情報を生成した後、合計長情報生成部436が合計長情報を生成することを前提として削孔長算出部437による削孔長の算出が行われていたが(図3参照)、本発明においてはこれに限らず、先に合計長情報生成部436が合計長情報を生成した後、本数情報生成部45が本数情報を生成してもよい。
【0095】
また、上述した各実施形態においては削孔長算出部437(図3参照)による削孔長の概算値の算出モードとして、本数情報に基づく算出モードと、合計長情報に基づく算出モードとが用意されていて、タッチパネルである表示部を介した操作により任意に選択することができるようになっていた。そして、削孔長算出部437は、選択されたモードに応じて、本数情報又は合計長情報に基づき、削孔長の概算値を算出していた。しかし、本発明においてはこれに限らず、本数情報又は合計長情報の何れか一方のみを用いて削孔長算出部437による削孔長の概算値の算出を行ってもよい。
【0096】
また、上述した各実施形態においては、報知手段による報知を文字、画像及び音により行っていたが、本発明においてはこれに限らず、これらのうちの任意の1つ又は2つにより行ってもよい。また、上述した各実施形態においては報知手段として表示部41とスピーカーが想定されていたが、本発明においてはこれに限らず、例えばバイブレーション機能による振動や、照明機器の点灯等の報知手段を用いてもよい。
【0097】
また、上述した各実施形態においては表示部41と制御部42を備える機器としてタブレット型端末4を用いているが、本発明においてはこれに限らず、ノート型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等、表示機能、操作機能及び制御部を備える機器であれば任意のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1、10、100:ドリルパイプの品質管理システム
2:タグ
2A:第1タグ
2B:第2タグ
3:読取手段
3A:前方読取手段
3B:後方読取手段
4:タブレット型端末
41:表示部
42:制御部
421:CPU
422:ROM
423:RAM
424:記憶手段
431:読取回数計測部
432:読取回数判定部
433:経過時間計測部
434:経過時間判定部
435:本数情報生成部
436:合計長情報生成部
437:削孔長算出部
438:報知内容選択部
C:注意マーク
F:前端部
H:削孔
M:削孔機
O:開口部
P、P1、P2、P3、P4:ドリルパイプ
PH:ドリルヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7