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  • 特開-ブザー駆動回路の診断装置 図1
  • 特開-ブザー駆動回路の診断装置 図2
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  • 特開-ブザー駆動回路の診断装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121368
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ブザー駆動回路の診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028433
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 敦士
(72)【発明者】
【氏名】勝見 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】杠 和樹
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA36
(57)【要約】
【課題】ブザーを本来鳴動させる前に事前に故障診断を実施できるブザー駆動回路の診断装置を提供する。
【解決手段】主駆動回路40は、通常動作時にブザー70を鳴動させる。初期診断回路50は、主駆動回路40とは別に設けられている。初期診断回路50は、ブザー印加電圧調整部51を備えている。ブザー印加電圧調整部51は、初期診断時に通常動作時よりも低い振幅で且つ地絡検出可能な下限値まで下げた診断用電圧をブザー70の入力端に印加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブザーを鳴動させるブザー駆動回路を診断する診断装置(10)であって、
通常動作時に前記ブザーを鳴動させる主駆動回路(40)と、
前記主駆動回路とは別に設けられた初期診断回路(50)と、を備え、
前記初期診断回路は、初期診断時に前記通常動作時よりも低い振幅で且つ地絡検出可能な下限値まで下げた診断用電圧を前記ブザーの入力端に印加するブザー印加電圧調整部(51)を備えるブザー駆動回路の診断装置。
【請求項2】
前記初期診断回路は、前記診断用電圧を前記通常動作時よりも電圧上昇速度を下げるようにスルーレートを調整して前記ブザーの入力端に印加するスルーレート調整部(52)を備える請求項1記載のブザー駆動回路の診断装置。
【請求項3】
前記初期診断回路は、前記診断用電圧を1回のパルス電圧により前記ブザーの入力端に印加する請求項1又は2記載のブザー駆動回路の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブザー駆動回路の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、システムを故障診断する際に負荷の故障を診断する方法が特許文献1に提案されている。特許文献1記載のモータシステムでは、負荷となるモータが駆動しない程度に瞬間的に電流を通電することで、モータを動かすことなく故障診断を実施している。他方、例えば、特許文献2記載の技術において、負荷がブザーとなるシステムではブザーを吹鳴させる際に故障診断を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-284794号公報
【特許文献2】特開2012-84051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献2記載の技術では、ブザーの本鳴動の直前に診断用信号により「ピッ」という音を鳴らして直後の本鳴動にまぎれさせている。もしくは、ユーザが操作したときに故障診断を行い、ユーザに不快感を与えないように故障診断を行っている。しかしながら、ブザーを本来鳴動させたいときに確実に鳴動させるために、事前に故障診断を実施することができない。
【0005】
本開示は、ブザーを本来鳴動させる前に事前に故障診断を実施できるようにしたブザー駆動回路の診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、ブザーを鳴動させるブザー駆動回路を診断する診断装置を対象としている。主駆動回路は、通常動作時にブザーを鳴動させる。初期診断回路は、主駆動回路とは別に設けられている。初期診断回路は、ブザー印加電圧調整部を備えている。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、ブザー印加電圧調整部は、初期診断時に通常動作時よりも低い振幅で且つ地絡検出可能な下限値まで下げた診断用電圧をブザーの入力端に印加する。この結果、例えば、初期診断時にブザーが地絡異常しておらず正常動作していると判断されれば、その後、通常動作時にブザーを鳴動させることができる。初期診断時に地絡異常していると判断されれば異常であると判断できる。このため、ブザーを本来鳴動させる前に事前に故障診断を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態におけるブザー駆動回路の診断装置を概略的に示す電気的構成図
図2】一実施形態における初期診断回路の電気的構成図
図3】一実施形態について正常時の動作を説明するタイムチャート
図4】一実施形態について異常時の動作を説明するタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のブザー駆動回路の診断装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すブザー駆動回路の診断装置10は、車両に搭載される電子制御装置に搭載される回路である。ブザー駆動回路は、ユーザとなる車両乗員に何らかの警告などの通知を行う際にブザー70を鳴動させる。
【0010】
図1に示すように、ブザー駆動回路の診断装置10は、電源回路20、マイコン30、主駆動回路40、初期診断回路50、及び故障検出回路60を備える。電源回路20は、主駆動回路40及び初期診断回路50に電源を供給する。マイコン30は、プロセッサ、メモリ30a、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータ又はマイクロコントローラによる。
【0011】
メモリ30aは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を示す。非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリなどにより実現される。
【0012】
マイコン30は、通常動作時において出力端子OUT2を通じて主駆動回路40の制御端子に例えば所定の周波数(例えば、数kHz)のパルス信号など制御信号を入力させる。主駆動回路40は、制御端子及び出力端子を備えている。主駆動回路40は、マイコン30から制御端子に制御信号を入力して波形成形しブザー70に駆動信号を印加する。これにより通常動作時に、主駆動回路40はブザー70を鳴動させる。
【0013】
ブザー駆動回路の診断装置10は、通常動作に先立ち初期診断を実施する。マイコン30は、初期診断時において出力端子OUT1を通じて初期診断回路50の制御端子に例えば1パルスの制御信号を入力させる。初期診断回路50は、電源回路20の電源を入力して動作し主駆動回路40とは別に設けられている。初期診断回路50は、ブザー印加電圧調整部51及びスルーレート調整部52を備える。初期診断回路50のスルーレート調整部52は、初期診断時において、通常動作時よりも低い振幅で、且つ、地絡検出可能な下限値まで振幅を下げた診断用電圧をブザー70の入力端に印加する。
【0014】
図2に具体例を示している。初期診断回路50は、抵抗151、抵抗R1、コンデンサC1、及びトランジスタ53を備える。トランジスタ53は、PNP形トランジスタにより構成されている。トランジスタ53の種類はバイポーラ型に限定されるものではなくMOSFETであってもよい。マイコン30は、トランジスタ53のベースにオン/オフの制御信号を印加可能に構成されている。ブザー印加電圧調整部51は、抵抗151により構成され、抵抗151は電源回路20からブザー70への通電経路に直列に設けられている。抵抗151は、トランジスタ53のコレクタとブザー70の入力端との間に接続されている。
【0015】
スルーレート調整部52は、抵抗R1とコンデンサC1との並列回路により構成され、トランジスタ53のベース-エミッタ間に接続されている。電源回路20の出力は、トランジスタ53のエミッタ-コレクタ間、及び抵抗151を通じてブザー70に入力されている。初期診断回路50の出力インピーダンスと、ブザー70の入力インピーダンスとの比率は、概ね数十対1~数百対1の比率で構成されている。
【0016】
以上に示す本実施形態の構成による動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。ブザー駆動回路の診断装置10に電源が投入されると、電源回路20、マイコン30、故障検出回路60に電源投入される。電源回路20は、電源電圧を生成し初期診断回路50及び主駆動回路40に電源電圧を供給する。マイコン30は初期診断を実行する。初期診断時において、マイコン30は、主駆動回路40の制御端子に出力端子OUT2からオフ制御信号を出力すると共に、初期診断回路50の制御端子に出力端子OUT1からオン制御信号を出力する。これにより、主駆動回路40は動作を停止したまま初期診断回路50が動作する。初期診断回路50は、トランジスタ53のベースにLレベルを入力することで1回のパルス電圧が抵抗151を通じてブザー70に印加される。電源回路20は、100ms~数百ms程度の長さの1回のパルス電圧を出力する。
【0017】
初期診断回路50の出力インピーダンスは概ね抵抗151により決定される。初期診断回路50の出力インピーダンスとブザー70の入力インピーダンスの比率は、概ね数十対1~数百対1の比率となるように調整されている。これにより、ブザー70に印加される診断用電圧の振幅は、故障検出回路60により地絡検出可能な下限値まで下げるように予め調整されている。
【0018】
初期診断回路50は、ブザー印加電圧調整部51の作用によりブザー70に印加する診断用電圧を小さな振幅の1回のパルス電圧にできる。この結果、ブザー70は概ね鳴動しなくなり、特にユーザに認識されないレベルまで警告音の音量を下げることができる。
【0019】
また前述したように、初期診断回路50はスルーレート調整部52を備えている。スルーレート調整部52は、抵抗R1及びコンデンサC1の並列回路により構成されており、トランジスタ53のエミッタからベースに通電される電圧の時定数を大きくできる。これにより、トランジスタ53のコレクタ側に発生させる電圧の上昇速度(スルーレート)を大きくできる。初期診断回路50は、図3の左側に示すように、スルーレート調整部52の機能によりブザー70の印加電圧の上昇速度を抑制でき、ブザー70を吹鳴しにくくできる。
【0020】
初期診断回路50が、ブザー70に診断用電圧を印加している最中、故障検出回路60はAD変換器61によりブザー70の印加電圧を検出してAD変換し、地絡故障診断を行う。故障検出回路60は、AD変換されたデジタル値を読み取ることでブザー70の入力端が地絡しているか否かを検出できる。
【0021】
故障検出回路60が地絡異常していないと判断すればマイコン30にその旨を通知する。するとマイコン30は通常動作に移行する。通常動作時、マイコン30は、初期診断回路50の制御端子に出力端子OUT1からオフ制御信号を出力する。これにより、初期診断回路50の動作を停止させることができる。
【0022】
またマイコン30は、通常動作時にブザー70を鳴動させるときには主駆動回路40の制御端子に出力端子OUT2から数kHzの所定の周波数の通常のパルス信号を出力する。これにより、主駆動回路40が動作開始する。主駆動回路40は、図3の右側に示すように、初期診断時よりも大きな通常の振幅の電圧で、且つ、通常のパルス信号をブザー70に印加する。ブザー70には、通常の振幅のパルス電圧が印加されるため、ブザー70はユーザに聞こえる程度の音量で鳴動することになる。
【0023】
ブザー70の入力端が地絡していれば、図4に示すように、ブザー70の印加電圧は所定の閾値電圧未満、例えばゼロとなる。このため、故障検出回路60はデジタル値を入力しても閾値電圧未満の電圧しか検出できない。このため故障検出回路60は、ブザー70の入力端が地絡している旨を検出できる。
【0024】
故障検出回路60がこの旨をマイコン30に通知すると、マイコン30は初期診断回路50を用いた初期診断に異常を生じていると判断し、ブザー70の通常駆動を停止する。またマイコン30は、故障の診断結果を内部のメモリ30aに記憶させる。このような流れにより、ブザー70を本来鳴動させる前に事前に故障診断を実施でき、好適な診断を実現できる。
【0025】
<まとめ>
本実施形態によれば、通常動作時に用いる主駆動回路40とは別に初期診断回路50を用意し、初期診断時にブザー70の印加電圧を故障検出回路60により地絡検出可能な下限値まで下げている。これにより、ブザー70を本来鳴動させる前に事前に故障診断を実施できる。このときブザー70は鳴動するもののユーザに認識されないレベルまで音量を下げることができる。さらにブザー70に対する印加電圧のスルーレートを調整し、電圧上昇速度を下げることでブザー70を鳴動しにくくできる。
【0026】
(他の実施形態)
本開示は前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
初期診断回路50は、診断用電圧を1回のパルス電圧としてブザー70に印加した形態を示したが、数回以上のパルス電圧により印加するようにしてもよい。
【0027】
本開示に記載の診断装置10及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の診断装置10及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0028】
もしくは、本開示に記載の診断装置10及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0029】
つまりプロセッサ等が提供する手段及び/又は機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。例えば、プロセッサが備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつ以上のICなどを用いて実現する態様が含まれる。
【0030】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0031】
図面中、10はブザー駆動回路の診断装置、40は主駆動回路、50は初期診断回路、51はブザー印加電圧調整部、52はスルーレート調整部、を示す。
図1
図2
図3
図4