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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121378
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028448
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭吾
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA42
3J069EE80
(57)【要約】
【課題】回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパにおいて、係合部が前記係合部の可動範囲の終点から所定の位置まで回動する間に、前記係合部が前記終点に向かって回動したときは、制動力を発生させることを可能にする。
【解決手段】本発明は、回転部材(12)の非回転区間(S1)を有するロータリーダンパ(10)であって、係合部(31)が係合部(31)の可動範囲(R)の終点(E)から所定の位置(P)まで回動するときに第1被係合部(13)を係合部(31)に追随させる第1手段と、所定の位置(P)で第1被係合部(13)の追随を停止させる第2手段を有するロータリーダンパ(10)を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転部材と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材と、前記回転部材に設けられる第1被係合部と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物と一緒に回動する係合部が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に前記回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパであって、
前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1手段と、前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2手段を有することを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記第1手段が、前記第1被係合部に形成される溝と、前記溝に形成される爪を有して構成され、前記溝が前記係合部を収容し、前記爪が前記溝に収容された前記係合部の脱出を防止することを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記第1被係合部を被覆するキャップを備え、前記第1手段が、前記キャップに形成される溝と、前記溝に形成される爪を有して構成され、前記溝が前記係合部を収容し、前記爪が前記溝に収容された前記係合部の脱出を防止することを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記第1手段が、前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる機能を有するばねを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
前記第2手段が、前記非回転部材に設けられるベーンと、前記回転部材に設けられる隔壁を有して構成され、前記所定の位置で前記ベーンと前記隔壁が接触することによって前記回転部材の逆方向への回転を阻止することを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項6】
非回転部材と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材と、前記回転部材に設けられる第1被係合部と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物と一緒に回動する係合部が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に前記回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパであって、
前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1機能と、前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2機能を有するばねを備えることを特徴とするロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非回転部材と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材と、前記回転部材に設けられる第1被係合部と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物と一緒に回動する係合部が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に前記回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、非回転部材(固定側ダンパー4b)と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材(可動側ダンパー4a)と、前記回転部材に設けられる第1被係合部(案内溝7aの一端)と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部(案内溝7aの他端)を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物(シートバックフレーム1)と一緒に回動する係合部(ストッパー部材6)が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点(特許文献1の図2(a))から前記係合部の可動範囲の終点(特許文献1の図2(c))まで前記係合部が回動する間に前記回転部材の非回転区間(特許文献1の図2(a),図2(b),図3)を有するロータリーダンパを開示している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたロータリーダンパでは、前記係合部が前記終点から前記始点に向かって回動するときに、前記係合部が前記第2被係合部に接触するまで前記回転部材が回転しないため、この間に前記係合部が前記終点に向かって回動してもロータリーダンパの制動力が発生しない。したがって、この間にシートバックから手を離すと、シートバックがシートクッションに勢いよくぶつかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-050765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパにおいて、係合部が前記係合部の可動範囲の終点から所定の位置まで回動する間に、前記係合部が前記終点に向かって回動したときは、制動力を発生させることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のロータリーダンパを提供する。
1.非回転部材と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材と、前記回転部材に設けられる第1被係合部と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物と一緒に回動する係合部が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に前記回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパであって、前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1手段と、前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2手段を有することを特徴とするロータリーダンパ。
2.非回転部材と、前記非回転部材の周りで回転する回転部材と、前記回転部材に設けられる第1被係合部と、前記第1被係合部と間隔を空けて前記回転部材に設けられる第2被係合部を備え、前記第1被係合部と前記第2被係合部の間に設置され、制御対象物と一緒に回動する係合部が前記第1被係合部を押すことによって前記回転部材が一方向に回転し、前記回転部材が一方向に回転するときに制動力を発生し、前記係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に前記回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパであって、前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1機能と、前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2機能を有するばねを備えることを特徴とするロータリーダンパ。
【発明の効果】
【0008】
前記1の発明によれば、係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパにおいて、前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1手段を有するため、前記係合部が前記終点から前記所定の位置まで回動する間に、前記係合部が前記終点に向かって回動したときは、制動力を発生させることが可能になる。また、前記1の発明によれば、前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2手段を有するため、前記係合部が前記所定の位置から前記始点まで回動するときに制動力を発生させないことも可能になる。
前記2の発明によれば、係合部が前記係合部の可動範囲の始点から前記係合部の可動範囲の終点まで回動する間に回転部材の非回転区間を有するロータリーダンパにおいて、前記係合部が前記終点から所定の位置まで回動するときに前記第1被係合部を前記係合部に追随させる第1機能を有するばねを備えるため、前記係合部が前記終点から前記所定の位置まで回動する間に、前記係合部が前記終点に向かって回動したときは、制動力を発生させることが可能になる。また、前記2の発明によれば、前記ばねが前記所定の位置で前記第1被係合部の追随を停止させる第2機能を有するため、前記係合部が前記所定の位置から前記始点まで回動するときに制動力を発生させないことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るロータリーダンパを自動車用シートに設置した状態を示す図である。
図2図2は、実施例1で採用したロータリーダンパの内部構造を示す図である。
図3図3は、実施例1で採用した第1手段を示す図である。
図4図4は、図3のA部拡大図である。
図5図5は、実施例1に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が所定の位置に位置する状態を示す。
図6図6は、実施例1に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が係合部の回動範囲の終点に位置する状態を示す。
図7図7は、実施例1に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が溝から脱出した状態を示す。
図8図8は、実施例2で採用したキャップを示す図である。
図9図9は、実施例3に係るロータリーダンパを自動車用シートに設置した状態を示す図である。
図10図10は、実施例3で採用したロータリーダンパの内部構造を示す図である。
図11図11は、実施例3に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が所定の位置に位置する状態を示す。
図12図12は、実施例3に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が係合部の回動範囲の終点に位置する状態を示す。
図13図13は、実施例3に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が第1被係合部から離れた状態を示す。
図14図4は、実施例4に係るロータリーダンパを自動車用シートに設置した状態を示す図である。
図15図15は、実施例4で採用したロータリーダンパの内部構造を示す図である。
図16図16は、実施例4に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が所定の位置に位置する状態を示す。
図17図17は、実施例4に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が係合部の回動範囲の終点に位置する状態を示す。
図18図18は、実施例4に係るロータリーダンパの動作を説明するための図であり、係合部が第1被係合部から離れた状態を示す。
図19図19は、実施例5に係るロータリーダンパの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例0011】
図1を参照すると、実施例1に係るロータリーダンパ10は、自動車用シートに設置されている。自動車用シートのシートバックは、制御対象物30の一例である。但し、制御対象物30は、これに限定されない。制御対象物30は、制御対象物30と一緒に回動する係合部31を備えている。実施例1において、シートバックのフレームに取り付けられた伝動軸は、係合部31の一例である。但し、係合部31は、これに限定されない。
【0012】
図1において、Rは、係合部31の可動範囲、Sは、係合部31の可動範囲Rの始点、Eは、係合部31の可動範囲Rの終点、Pは、所定の位置、S1は、回転部材12の非回転区間、S2は、回転部材12の回転区間である。
【0013】
所定の位置Pは、始点Sから終点Eに向かって回動する係合部31が第1被係合部13と最初に係合する位置である。所定の位置Pは、ベーン16の配置を変えることによって任意に設定し得る。但し、所定の位置Pは、始点Sと同じ位置ではないし、終点Eと同じ位置でもない。非回転区間S1は、係合部31の回動によって回転部材12が回転しない区間である。回転区間S2は、係合部31の回動によって回転部材12が回転する区間である。
【0014】
図2を参照すると、ロータリーダンパ10は、非回転部材11と、回転部材12と、回転部材12に設けられる第1被係合部13と、第1被係合部13と間隔を空けて回転部材12に設けられる第2被係合部14を有して構成されている。
【0015】
非回転部材11は、ロータリーダンパ10の使用時に回転しない部材である。非回転部材11は、制御対象物30の回転中心である軸32に連結される軸部15と、軸部15から突出するベーン16を有して構成されている。ベーン16は、軸部15の周囲に形成される油室17に設置される。油室17には、オイルが注入されている。
【0016】
回転部材12は、ロータリーダンパ10の使用時に非回転部材11の周りで回転する部材である。回転部材12は、筒状の周壁18と、周壁18の内周面から突出する隔壁19を有して構成されている。隔壁19は、2つの油室17を隔てる仕切りである。
【0017】
第1被係合部13は、係合部31が始点Sから終点Eに向かって回動するときに係合部31と係合する部分である。実施例1において、周壁18の外周面から突出する第1突起は、第1被係合部13の一例である。但し、第1被係合部13は、これに限定されない。
【0018】
第2被係合部14は、係合部31が終点Eから始点Sに向かって回動するときに係合部31と係合する部分である。実施例1において、第1突起と間隔を空けて周壁18の外周面から突出する第2突起は、第2被係合部14の一例である。但し、第2被係合部14は、これに限定されない。
【0019】
第1被係合部13と第2被係合部14の間隔は、第1被係合部13と第2被係合部14の間で係合部31が回動し得るように設定される。この間隔によって、非回転区間S1が決定される。
【0020】
実施例1に係るロータリーダンパ10は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに第1被係合部13を係合部31に追随させる第1手段と、所定の位置Pで第1被係合部13の追随を停止させる第2手段をさらに有して構成されている。
【0021】
図3を参照すると、実施例1で採用した第1手段は、第1被係合部13に形成される溝20と、溝20に形成される爪21を有して構成されている。
【0022】
溝20は、U字状に形成され、溝20の中に係合部31を収容し得る幅W及び深さDを有する。爪21は、2つ設けられ、溝20の一方の側壁から該側壁に対向する溝20の他方の側壁に向かって突出する第1の爪21と、溝20の他方の側壁から溝20の一方の側壁に向かって突出する第2の爪21の間隔S3は、溝20に収容された係合部31の脱出を防止するために、係合部31の直径よりも短く設定されている。
【0023】
図4を参照すると、2つの爪21は、それぞれ、係合部31が溝20の中に進入し易くするための斜面22を有している。
【0024】
実施例1で採用した第2手段は、ベーン16と隔壁19を有して構成されている(図2参照)。隔壁19は、回転部材12の回転に伴って油室17の中で移動する一方で、ベーン16は、定位置で動かないため、回転部材12が逆方向(すなわち、一方向と反対の方向)に回転するときに、所定の位置Pで隔壁19がベーン16に接触する。それにより、回転部材12の逆方向への回転が阻止される。ベーン16の位置は、係合部31が溝20から脱出する位置(すなわち、所定の位置P)に対応するように設定されている。
【0025】
実施例1に係るロータリーダンパ10は、以下のように動作する。すなわち、シートバック(制御対象物30)を倒す(すなわち、シートバックをシートクッション33に接近させる)場合、係合部31は、始点Sから終点Eに向かって回動する。そして、係合部31は、所定の位置Pで第1被係合部13と係合する。係合部31の可動範囲Rのうち、係合部31が始点Sから所定の位置Pまで回動する区間は、回転部材12の非回転区間S1となり、回転部材12は回転しない。したがって、非回転区間S1では、ロータリーダンパ10の制動力が発生しない。このように、実施例1に係るロータリーダンパ10は、係合部31が始点Sから終点Eまで回動する間に回転部材12の非回転区間S1を有する。
【0026】
係合部31と第1被係合部13が係合するとき、係合部31は、図5に示したように、第1手段を構成する溝20に収容される。この状態で、係合部31が終点Eに向かって回動すると、係合部31が第1被係合部13を押すことになり、それによって、回転部材12が一方向に回転する。この回転によって、隔壁19がオイルの抵抗を受けながら軸部15の周りを移動することになるため、ロータリーダンパ10は、回転部材12が一方向に回転するときに制動力(すなわち、係合部31の回動速度を遅くさせる力)を発生する。その結果、シートバックは、低速(すなわち、シートバックが自重で倒れる速度よりも遅い速度)で倒れてシートクッション33に接触する。図6は、係合部31が終点Eに位置する状態を示す。
【0027】
係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときは、第1手段を構成する爪21が第1手段を構成する溝20に収容された係合部31の溝20からの脱出を防止するため、第1被係合部13が係合部31の回動に追随して移動する。終点Eと所定の位置Pの間に係合部31が存在する状態でシートバックを起こす手をシートバックから離すと、始点Sに向かって回動していた係合部31が終点Eに向かって回動すると共に、回転部材12が一方向に回転して、制動力が発生する。したがって、実施例1に係るロータリーダンパ10によれば、係合部31が終点Eと所定の位置Pの間に存在する状態でシートバックから手を離してもシートバックを低速で倒すことができる。
【0028】
なお、実施例1で採用したロータリーダンパ10は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに、回転部材12が逆方向に回転する場合も制動力を発生するため、シートバックを起こすときの負荷が大きい。この問題を解決するため、例えば、ベーン16又は隔壁19にオイルの流路を形成し、前記流路に逆止弁を設けて、制動力の発生を抑制してもよいし、実施例3で採用したばねを組み合わせて、負荷を軽減してもよい。
【0029】
係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、所定の位置Pで第2手段を構成する隔壁19が第2手段を構成するベーン16に接触することによって、ベーン16が隔壁19の移動を阻止するため、図7に示したように、係合部31が溝20から脱出する。このように、第2手段は、所定の位置Pで、係合部31に対する第1被係合部13の追随を停止させる機能を有する。上記のように、係合部31が溝20から脱出することによって、回転部材12の逆方向への回転が停止するため、係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、すなわち、回転部材12の非回転区間S1では、制動力が発生しない。
【実施例0030】
図8を参照すると、実施例2に係るロータリーダンパ10は、第1被係合部13を被覆するキャップ23を有して構成されている。実施例2は、第1手段がキャップ23に形成されている点で、実施例1と異なる。
【0031】
すなわち、実施例2で採用した第1手段は、キャップ23に形成される溝24と、溝24に形成される爪25を有して構成されている。溝24が係合部31を収容する機能を有し、爪25が溝24に収容された係合部31の脱出を防止する機能を有する点は、実施例1における溝20及び爪21と同じである。
【0032】
実施例2に係るロータリーダンパ10は、実施例1と同様に、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに第1被係合部13を係合部31に追随させる第1手段(溝24及び爪25)を有するため、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動する間に、係合部31が終点Eに向かって回動したときは、制動力を発生する。また、実施例2に係るロータリーダンパ10は、実施例1と同様に、所定の位置Pで第1被係合部13の追随を停止させる第2手段(ベーン16及び隔壁19)を有するため、係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、制動力を発生しない。
【実施例0033】
図9を参照すると、実施例3に係るロータリーダンパ10は、自動車用シートに設置されている。自動車用シートのシートバックは、制御対象物30の一例である。但し、制御対象物30は、これに限定されない。制御対象物30は、制御対象物30と一緒に回動する係合部31を備えている。実施例3において、シートバックのフレームに取り付けられた伝動軸は、係合部31の一例である。但し、係合部31は、これに限定されない。
【0034】
図9において、Rは、係合部31の可動範囲、Sは、係合部31の可動範囲Rの始点、Eは、係合部31の可動範囲Rの終点、Pは、所定の位置、S1は、回転部材12の非回転区間、S2は、回転部材12の回転区間である。所定の位置P、非回転区間S1及び回転区間S2の定義は、実施例1で説明した定義と同じである。
【0035】
図10を参照すると、実施例3に係るロータリーダンパ10は、第1手段がばね26を有して構成される点で、実施例1と異なる。
【0036】
本実施例では、ばね26として、引張コイルばねを採用している。但し、ばね26の種類は、これに限定されない。ばね26の一端は、第2被係合部14に取り付けてある。但し、ばね26の一端の取付場所は、これに限定されない。ばね26の他端は、図9に示したように、シートクッション33のフレームに取り付けてある。シートクッション33のフレームは、ばね26の他端の取付場所の一例である。
【0037】
ばね26は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに第1被係合部13を係合部31に追随させる機能を有する。
【0038】
実施例3に係るロータリーダンパ10は、以下のように動作する。すなわち、シートバック(制御対象物30)を倒す場合、係合部31は、始点Sから終点Eに向かって回動する。そして、係合部31は、所定の位置Pで第1被係合部13と係合する。係合部31の可動範囲Rのうち、係合部31が始点Sから所定の位置Pまで回動する区間は、回転部材12の非回転区間S1となり、回転部材12は回転しない。したがって、非回転区間S1では、ロータリーダンパ10の制動力が発生しない。このように、実施例3に係るロータリーダンパ10は、係合部31が始点Sから終点Eまで回動する間に回転部材12の非回転区間S1を有する。
【0039】
係合部31と第1被係合部13が係合するとき、係合部31は、図11に示したように、第1被係合部13に接触した状態になる。この状態で、係合部31が終点Eに向かって回動すると、係合部31が第1被係合部13を押すことになり、それによって、回転部材12が一方向に回転する。この回転によって、隔壁19がオイルの抵抗を受けながら軸部15の周りを移動することになるため、ロータリーダンパ10は、回転部材12が一方向に回転するときに制動力を発生する。また、係合部31が第1被係合部13に接触した状態で、係合部31が終点Eに向かって回動すると、ばね26が伸長して、ばね26に弾性エネルギーが蓄えられる。その結果、シートバックは、低速で倒れてシートクッション33に接触する。図12は、係合部31が終点Eに位置する状態を示す。
【0040】
係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときは、ばね26の復元力(弾性エネルギーの放出)によって、第1被係合部13が係合部31の回動に追随して移動する。終点Eと所定の位置Pの間に係合部31が存在する状態でシートバックを起こす手をシートバックから離すと、始点Sに向かって回動していた係合部31が終点Eに向かって回動すると共に、回転部材12が一方向に回転して、制動力が発生する。したがって、実施例3に係るロータリーダンパ10によれば、係合部31が終点Eと所定の位置Pの間に存在する状態でシートバックから手を離してもシートバックを低速で倒すことができる。
【0041】
なお、実施例3で採用したロータリーダンパ10は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに、回転部材12が逆方向に回転する場合も制動力を発生する。しかしながら、この制動力は、ばね26の復元力によって無力化又は軽減されるため、シートバックを起こすときの負荷は、軽減される。
【0042】
係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、所定の位置Pで第2手段を構成する隔壁19が第2手段を構成するベーン16に接触することによって、ベーン16が隔壁19の移動を阻止するため、図13に示したように、係合部31が第1被係合部13から離れる。このように、第2手段は、所定の位置Pで、係合部31に対する第1被係合部13の追随を停止させる機能を有する。上記のように、係合部31が第1被係合部13から離れることによって、回転部材12の逆方向への回転が停止するため、係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、すなわち、回転部材12の非回転区間S1では、制動力が発生しない。
【実施例0043】
図14を参照すると、実施例4に係るロータリーダンパ10は、自動車用シートに設置されている。自動車用シートのシートバックは、制御対象物30の一例である。但し、制御対象物30は、これに限定されない。制御対象物30は、制御対象物30と一緒に回動する係合部31を備えている。実施例4において、シートバックのフレームに取り付けられた伝動軸は、係合部31の一例である。但し、係合部31は、これに限定されない。
【0044】
図14において、Rは、係合部31の可動範囲、Sは、係合部31の可動範囲Rの始点、Eは、係合部31の可動範囲Rの終点、Pは、所定の位置、S1は、回転部材12の非回転区間、S2は、回転部材12の回転区間である。所定の位置P、非回転区間S1及び回転区間S2の定義は、実施例1で説明した定義と同じである。
【0045】
図15を参照すると、実施例4に係るロータリーダンパ10は、第1手段及び第2手段に代わるばね26を有して構成される点で、実施例1と異なる。
【0046】
本実施例では、ばね26として、引張コイルばねを採用している。但し、ばね26の種類は、これに限定されない。ばね26の一端は、第2被係合部14に取り付けてある。但し、ばね26の一端の取付場所は、これに限定されない。ばね26の他端は、図14に示したように、シートクッション33のフレームに取り付けてある。シートクッション33のフレームは、ばね26の他端の取付場所の一例である。
【0047】
ばね26は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに第1被係合部13を係合部31に追随させる第1機能と、所定の位置Pで第1被係合部13の追随を停止させる第2機能を有する。
【0048】
実施例4に係るロータリーダンパ10は、以下のように動作する。すなわち、シートバック(制御対象物30)を倒す場合、係合部31は、始点Sから終点Eに向かって回動する。そして、係合部31は、所定の位置Pで第1被係合部13と係合する。係合部31の可動範囲Rのうち、係合部31が始点Sから所定の位置Pまで回動する区間は、回転部材12の非回転区間S1となり、回転部材12は回転しない。したがって、非回転区間S1では、ロータリーダンパ10の制動力が発生しない。このように、実施例4に係るロータリーダンパ10は、係合部31が始点Sから終点Eまで回動する間に回転部材12の非回転区間S1を有する。
【0049】
係合部31と第1被係合部13が係合するとき、係合部31は、図16に示したように、第1被係合部13に接触した状態になる。この状態で、係合部31が終点Eに向かって回動すると、係合部31が第1被係合部13を押すことになり、それによって、回転部材12が一方向に回転する。この回転によって、隔壁19がオイルの抵抗を受けながら軸部15の周りを移動することになるため、ロータリーダンパ10は、回転部材12が一方向に回転するときに制動力を発生する。また、係合部31が第1被係合部13に接触した状態で、係合部31が終点Eに向かって回動すると、ばね26が伸長して、ばね26に弾性エネルギーが蓄えられる。その結果、シートバックは、低速で倒れてシートクッション33に接触する。図17は、係合部31が終点Eに位置する状態を示す。
【0050】
係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときは、ばね26の復元力(弾性エネルギーの放出)によって、第1被係合部13が係合部31の回動に追随して移動する。終点Eと所定の位置Pの間に係合部31が存在する状態でシートバックを起こす手をシートバックから離すと、始点Sに向かって回動していた係合部31が終点Eに向かって回動すると共に、回転部材12が一方向に回転して、制動力が発生する。したがって、実施例4に係るロータリーダンパ10によれば、係合部31が終点Eと所定の位置Pの間に存在する状態でシートバックから手を離してもシートバックを低速で倒すことができる。
【0051】
なお、実施例4で採用したロータリーダンパ10は、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに、回転部材12が逆方向に回転する場合も制動力を発生する。しかしながら、この制動力は、ばね26の復元力によって無力化又は軽減されるため、シートバックを起こすときの負荷は、軽減される。
【0052】
係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、所定の位置Pでばね26が自然長に戻るため、図18に示したように、係合部31が第1被係合部13から離れる。このように、ばね26は、所定の位置Pで、係合部31に対する第1被係合部13の追随を停止させる機能を有する。上記のように、係合部31が第1被係合部13から離れることによって、回転部材12の逆方向への回転が停止するため、係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、すなわち、回転部材12の非回転区間S1では、制動力が発生しない。
【実施例0053】
図19を参照すると、実施例5に係るロータリーダンパ10は、非回転部材11が制御対象物30の回転中心である軸に連結される胴部27を有して構成される点で、実施例4と異なる。
【0054】
胴部27は、断面が円形で、回転部材12を構成する周壁18の内径よりも僅かに小さい外径を有する。胴部27と周壁18の間に形成される隙間28には、グリース等の粘性材料が注入されている。
【0055】
実施例5に係るロータリーダンパ10は、実施例4と同様に、係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動するときに第1被係合部13を係合部31に追随させるばね26を有する。係合部31が終点Eから所定の位置Pまで回動する間に、係合部31が終点Eに向かって回動したときは、粘性材料の粘性剪断応力が発生し、これが制動力として制御対象物に作用する。また、実施例5に係るロータリーダンパ10は、実施例4と同様に、所定の位置Pで第1被係合部13の追随を停止させるばね26を有するため、係合部31が所定の位置Pから始点Sまで回動するときは、制動力(粘性材料の粘性剪断応力)を発生しない。
【符号の説明】
【0056】
10 ロータリーダンパ
11 非回転部材
12 回転部材
13 第1被係合部
14 第2被係合部
15 軸部
16 ベーン
17 油室
18 周壁
19 隔壁
20 溝
21 爪
22 斜面
23 キャップ
24 溝
25 爪
26 ばね
27 胴部
28 隙間
30 制御対象物
31 係合部
32 軸
33 シートクッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19