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特開2024-121379音源およびその制御方法、プログラム、電子鍵盤楽器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121379
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】音源およびその制御方法、プログラム、電子鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20240830BHJP
   G10H 1/18 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G10H1/32 A
G10H1/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028449
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅嗣
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BA14
5D478CC33
(57)【要約】
【課題】止音タイミングを所望に設定する。
【解決手段】音源が提供される。取得部401は、音色設定指示を取得し、生成部402は、電子鍵盤楽器200の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定するハーフ設定情報Jを、音色設定指示に応じて生成し、出力部403は、生成されたハーフ設定情報Jを出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定指示を取得する取得部と、
電子鍵盤楽器の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報を、前記設定指示に応じて生成する生成部と、
生成された前記情報を出力する出力部と、を有する、音源。
【請求項2】
前記情報は、前記鍵のストローク位置と発音中の音の消音形態との対応関係を含む、請求項1に記載の音源。
【請求項3】
前記設定指示は音色を設定する指示であり、
前記情報は、前記設定指示に応じて、前記電子鍵盤楽器で発音される音色を設定する指示を含む、請求項1に記載の音源。
【請求項4】
前記鍵ダンパハーフ領域が規定される場合において、前記音色を設定する前記指示は、前記鍵ダンパハーフ領域に対して所定の効果音を付加する指示を含む、請求項3に記載の音源。
【請求項5】
前記出力部は、前記情報と、前記電子鍵盤楽器での演奏により生成された演奏情報と、に基づいて音信号を生成し、生成した音信号を出力する、請求項1に記載の音源。
【請求項6】
前記生成部は、さらに、前記複数の鍵に対応するダンパのそれぞれにおける、発音上のハーフペダル領域またはハーフペダルポイントを規定する第2の情報を、前記設定指示に応じて生成し、
前記出力部は、さらに、生成された前記第2の情報を出力する、請求項1に記載の音源。
【請求項7】
コンピュータにより実現される音源の制御方法であって、
設定指示を取得し、
電子鍵盤楽器の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報を、前記設定指示に応じて生成し、
生成された前記情報を出力する、音源の制御方法。
【請求項8】
音源の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記音源の制御方法は、
設定指示を取得し、
電子鍵盤楽器の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報を、前記設定指示に応じて生成し、
生成された前記情報を出力する、プログラム。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の音源を備える、電子鍵盤楽器。
【請求項10】
複数の鍵と、
設定指示を取得する第1の取得部と、
前記複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報を、前記設定指示に応じて生成する生成部と、
前記鍵のストローク位置を取得する第2の取得部と、
取得された前記鍵のストローク位置と、生成された前記情報とに基づいて、発音および消音を制御する制御部と、を有する、電子鍵盤楽器。
【請求項11】
前記制御部は、前記鍵を離す行程において、前記鍵のストローク位置が前記鍵ダンパハーフ領域に到達した以降または前記鍵ダンパハーフポイントを通過した以降における、発音中の音の消音形態を制御する、請求項10に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項12】
前記生成部は、さらに、前記複数の鍵に対応するダンパのそれぞれにおける、発音上のハーフペダル領域またはハーフペダルポイントを規定する第2の情報を、前記設定指示に応じて生成し、
前記制御部は、取得された前記鍵のストローク位置と、生成された前記情報と、生成された前記第2の情報と、に基づいて、発音および消音を制御する、請求項10に記載の電子鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源およびその制御方法、電子鍵盤楽器、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティック鍵盤楽器においては、高音域を除いて音高ごとにダンパが存在する。ダンパはペダル操作によって一斉に移動するだけでなく、鍵を押すことによって対応するダンパが移動し、対応する弦から離れる。一般に、鍵を押す行程においてダンパが弦から離れた後にハンマが弦を打撃することで発音が開始され、鍵を離す行程において弦にダンパが接触すると、発音中の音が急速に減衰する。
【0003】
鍵ストロークにおいてダンパと弦とが接触または離れるタイミングによって、いわゆるハーフ特性が定まる。一般に、鍵を押す操作のストロークには、レスト領域と、ハーフ領域と、弦開放領域とがある。レスト領域は、鍵を押すことの影響がダンパに伝達されない遊び領域である。ハーフ領域は、弦に対するダンパによる押圧力の減少開始からダンパが弦に対して非接触となるまでの領域である。弦開放領域は、ダンパが弦から完全に離れた状態となる領域である。これらの領域の設定によってハーフ特性が定まる。
【0004】
指で感じる触覚の観点では、演奏者は、特に鍵を押す行程においてダンパが早めに弦から離れると重く感じ、ダンパが遅めに弦から離れると軽快に感じる。一方、発音上の観点では、特に鍵を離す行程において、弦開放領域からハーフ領域へ移行したタイミングで音の急速減衰が開始され、ハーフ領域からレスト領域へ移行すると減衰速度が一層速まる。従って、演奏者は、鍵を離す操作に応じた消音形態を耳で感じる。
【0005】
なお、ハーフ領域を所定の内分比で内分した位置としてハーフポイントが定義される場合も、ハーフ特性については上記したものと同様に考えることができる。また、簡素化された構成で、ハーフ領域を実質的に有さずハーフポイントによってレスト領域と弦開放領域とに分かれる構成では、ハーフポイントの位置によってハーフ特性が定まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6111807号公報
【特許文献2】特許第3296518号公報
【特許文献3】特表2003-529806号公報
【特許文献4】特開2012-053416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般にハーフ特性は固定であり変更できない。固定されたハーフ特性が演奏者の好みに合わない場合がある。特に電子楽器において発音上のハーフ特性を可変にできれば練習の幅が広がる可能性がある。
【0008】
特許文献1は、鍵ごとのダンパのハーフ情報を記憶し、ダンパ位置に応じた鍵軌道を生成する鍵盤楽器を開示している。しかし、特許文献1の鍵盤楽器は、演奏の際にハーフ領域を可変にする構成ではない。
【0009】
なお、ペダルストロークにおけるダンパペダルとダンパとの関係におけるハーフ特性を可変にする技術は特許文献2に開示されている。しかし、特許文献2では鍵ごとのハーフ特性を可変にできない。
【0010】
また、ダンパと弦とが接触または離れるタイミングを物理的に可変にする装置は知られている(特許文献3、4)。しかし、これらの装置では、位置を個々に調整する作業が必要となる。
【0011】
本発明の一つの目的は、止音タイミングを所望に設定することができる音源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態によれば、設定指示を取得する取得部と、電子鍵盤楽器の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報を、前記設定指示に応じて生成する生成部と、生成された前記情報を出力する出力部と、を有する、音源が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一形態によれば、止音タイミングを所望に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る音源を含む楽器システムのブロック図である。
図2】鍵のストローク領域およびハーフ領域を示す概念図である。
図3】ハーフ設定情報テーブルの概念図である。
図4】音源装置の機能ブロック図である。
図5】メイン処理を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態におけるメイン処理を示すフローチャートである。
図7】第3の実施形態に係る電子鍵盤楽器のブロック図である。
図8】電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
図9】音制御処理を示すフローチャートである。
図10】電子鍵盤楽器の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る音源を含む楽器システムのブロック図である。この楽器システムは、本発明に係る音源としての音源装置100と電子鍵盤楽器200とが通信可能に接続されて構成される。
【0017】
電子鍵盤楽器200は電子的に音を発生可能な楽器である。図示はしないが、電子鍵盤楽器200は、複数の鍵、各鍵のストローク位置を検出するセンサを備える。また、電子鍵盤楽器200は、音源装置100と通信する各種インターフェイスを備える。この各種インターフェイスは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を送受信するMIDI-I/Fや、オーディオ信号を送受信するインターフェイスを含む。
【0018】
また、電子鍵盤楽器200は、音源機能と、この音源機能により生成された音信号を音響に変換する発音機能とを備える。この音源機能は、演奏情報や予め記憶された演奏情報を音信号に変換する。これらの演奏情報は一例としてMIDI信号である。これらの演奏情報は、主として、電子鍵盤楽器200において鍵盤の演奏により生成された情報である。発音機能は、効果回路やスピーカを含み(図示せず)、音信号を音響に変換することで発音する。
【0019】
音源装置100は、ROM12、RAM13、記憶部14、通信I/F(インターフェイス)15、設定操作部16、表示部17、音源部18を有し、これらがバス19を介してCPU11に接続されている。
【0020】
CPU11は不図示のタイマを含む。記憶部14は不揮発性メモリである。ROM12または記憶部14には、CPU11により実行される制御プログラムが格納されている。CPU11は、ROM12または記憶部14に格納された制御プログラムをRAM13に展開して実行することにより音源装置100における各種機能を実現する。
【0021】
通信I/F15は、MIDI-I/Fを含む。また、通信I/F15は、オーディオ信号を送受信するインターフェイスを含む。なお、通信I/F15は、無線または有線により通信ネットワークに接続するインターフェイスを含んでもよい。設定操作部16は、各種情報を入力するための複数の操作子を含み、ユーザからの指示を受け付ける。表示部17は各種情報を表示する。
【0022】
音源部18は、電子鍵盤楽器200から受信された演奏情報や予め記憶された演奏情報を音信号に変換する。これらの演奏情報は一例としてMIDI信号である。電子鍵盤楽器200から受信される演奏情報は、主として、電子鍵盤楽器200において鍵盤の演奏により生成された情報である。なお、音源部18は、そのすべてがハードウェアまたはソフトウェアで構成されてもよいし、一部がソフトウェアで構成され、残りの部分がハードウェアで構成されてもよい。
【0023】
図2は、鍵のストローク領域およびハーフ領域を示す概念図である。
【0024】
アコースティックピアノにおいては、鍵を押す操作のストロークには、レスト領域と、ハーフ領域と、弦開放領域とがある。レスト領域は、鍵を押すことの影響がダンパに伝達されない遊び領域である。ハーフ領域は、弦に対するダンパによる押圧力の減少開始からダンパが弦に対して非接触となるまでの領域である。弦開放領域は、ダンパが弦から完全に離れた状態となる領域である。これらの領域の設定によってハーフ特性が定まる。
【0025】
ここで、鍵と該鍵に対応するダンパとの関係におけるハーフ領域を、「鍵ダンパハーフ領域」と称する。一方、ペダルとダンパとの関係におけるハーフ領域を、「ハーフペダル領域」と称する。本実施形態では鍵ダンパハーフ領域に着目するので、以降、特に言及しない限り、「ハーフ領域」は「鍵ダンパハーフ領域」を指す。
【0026】
本実施形態では、音源装置100で生成したハーフ設定情報J(後述)を電子鍵盤楽器200に出力する。電子鍵盤楽器200は、ハーフ設定情報Jおよび演奏情報に基づいて音信号を生成し、発音する。このような構成により、電子鍵盤楽器200における止音タイミング(例えば、消音開始タイミング)を含む発音上のハーフ特性を可変にする。電子的に発音する際のハーフ特性を可変にするのが目的であるので、電子鍵盤楽器200においては、触覚上のハーフタッチ感を発生させる機能は必須でない。従って、電子鍵盤楽器200においては、弦、ダンパおよびアクション機構は必要でない。
【0027】
なお、ハーフ設定情報Jを定義する上での鍵のストローク領域を、指で鍵を操作する行程と同様に、次のように定義する。図2に示すように、レスト位置(指が鍵に触れていない初期位置)からハーフ開始位置H1までの領域をレスト領域とする。ハーフ開始位置H1からハーフ終了位置H2までの領域をハーフ領域とする。ハーフ終了位置H2から押し行程終了位置までの領域を弦開放領域とする。
【0028】
なお、ハーフ領域は、主として止音ないし消音(押した鍵から力を抜き、鍵が初期位置へ復帰する際の音の減衰)に関係する領域である。従って、鍵を押す行程において発音が開始される発音開始位置は、ハーフ終了位置H2またはそれより深い位置である。従って、鍵を押す行程において鍵のストローク位置が発音開始位置を通過すると発音が開始される。
【0029】
なお、ハーフ開始位置H1およびハーフ終了位置H2は、レスト位置からの押し込み深さとして定義されるが、これに限らない。すなわち、押し行程終了位置からのレスト位置側への復帰量として定義されてもよい。
【0030】
図3は、ハーフ設定情報Jテーブルの概念図である。
【0031】
ハーフ設定情報Jは、鍵のストローク位置と発音中の音の消音形態(減衰速度)との対応関係を含む情報である。一例として、ハーフ設定情報Jテーブルは、音色ごとにハーフ開始位置H1、ハーフ終了位置H2、係数K1、K2が対応付けられた情報である。ハーフ設定情報Jテーブルは、例えば記憶部14に記憶されている。
【0032】
音源装置100は、出力するハーフ設定情報Jを、ハーフ設定情報Jテーブルから生成する。音色設定指示に応じた1つの音色と、当該音色に対応するH1値、2値、K1値、K2値とが対応付けられた情報が、出力するハーフ設定情報Jとなる。例えば、音色設定指示に応じた1つの音色が音色Aであるとすると、H1値、2値、K1値、K2値は、それぞれN1、N4、M1、M4となる。
【0033】
ハーフ設定情報Jが示す音色A、B、Cのいずれかに、電子鍵盤楽器200における発音音色が設定される。なお、指示可能な音色の数や種類は問わない。また、H1値、H2値、K1値、K2値によって、ハーフ設定情報Jの出力先の装置(ここでは電子鍵盤楽器200)における止音を含むハーフ特性が設定される。
【0034】
すなわち、ハーフ設定情報Jは、電子鍵盤楽器200の複数の鍵のそれぞれにおける、発音上のハーフ領域(すなわち、鍵ダンパハーフ領域)または鍵ダンパハーフポイントを規定する情報である。
【0035】
本実施形態では、ハーフ領域は、H1値およびH2値により規定されるので、ハーフ設定情報Jは、鍵ダンパハーフ領域を規定する情報である。一方、ハーフ特性をハーフポイントで定義する構成もある。この構成の場合、H1値およびH2値ではなく1つの位置であるハーフポイント(鍵ダンパハーフポイント)の指定により、(例えば、所定の内分比で)実質的にH1値およびH2値に相当する値が決定されるとする。従って、ハーフ特性をハーフポイントで定義する構成の場合、ハーフ設定情報Jは、鍵ダンパハーフポイントを規定する情報である。
【0036】
ハーフ設定情報Jには、実質的に、離操作行程(押した鍵から力を抜き非操作状態へ移行する行程)での各領域での音の減衰速度を設定する指示が含まれる。減衰速度は、減衰速度=「離操作時のベロシティ×係数」により算出され、値が大きいほど音が速く減衰する。係数K2はハーフ領域での減衰速度の算出に用いられ、係数K1はレスト領域での減衰速度の算出に用いられる(図2)。
【0037】
ハーフ設定情報Jには、さらに、ハーフ領域での特有の音響効果である所定の効果音を付加する指示が含まれてもよい。この音響効果は、ダンパが弦にわずかに接触している際の弦の音響を再現するものである。
【0038】
図4は、ハーフ設定情報Jを出力するための音源装置100の機能ブロック図である。音源装置100は、機能部として、取得部401、生成部402、出力部403を含む。これらの各機能部の機能は、主としてCPU11、ROM12、RAM13、記憶部14、設定操作部16および通信I/F15等の協働により実現される。
【0039】
取得部401は、音色設定指示を取得する。この音色設定指示は、電子鍵盤楽器200で発音される音色を設定する指示であり、一例として、ユーザが設定操作部16を操作して所望の音色の指定を入力することにより得られる。あるいは、電子鍵盤楽器200でのユーザ操作によって入力された音色設定指示が通信I/F15を介して取得されてもよい。
【0040】
生成部402は、ハーフ設定情報Jを、音色設定指示に応じて生成する。出力部403は、生成されたハーフ設定情報Jを出力する。本実施形態では、出力部403は、通信I/F15を介してハーフ設定情報Jを電子鍵盤楽器200へ送信することで出力する。
【0041】
図5は、メイン処理を示すフローチャートである。この処理は、CPU11が、ROM12または記憶部14に記憶されたプログラムをRAM13に展開して実行することにより実現される。この処理は、例えば、音源装置100に電力が供給されると開始される。
【0042】
ステップS101では、CPU11は、音色設定指示が取得されるまで待機し、音色設定指示が取得されると、ステップS102に進む。ステップS102では、CPU11は、音色設定指示に基づいてハーフ設定情報Jを生成する。また、CPU11は、音色設定指示が示す音色を発音音色として設定する指示を、生成するハーフ設定情報Jに含ませる。
【0043】
例えば、音色設定指示が「音色B」を指示するものであった場合、CPU11は、音色Bを発音音色として設定する指示をハーフ設定情報Jに含ませる。また、CPU11は、ハーフ設定情報Jにおいて、H1値、H2値、K1値、K2値に、それぞれN2、N5、M2、M5を設定する(図3)。さらに、CPU11は、H1値、H2値により規定されるハーフ領域で所定の効果音を付加する指示をハーフ設定情報Jに含ませる。
【0044】
ステップS103では、CPU11は、生成したハーフ設定情報Jを、通信I/F15を介して電子鍵盤楽器200へ送信し、その後、図5のメイン処理を終了する。
【0045】
音色設定指示およびハーフ設定情報Jを受信した電子鍵盤楽器200では、次のように処理される。
【0046】
電子鍵盤楽器200は、受信したハーフ設定情報Jが示す音色設定指示に従って、音源機能における発音音色を設定する。また、電子鍵盤楽器200は、受信したハーフ設定情報Jが示すH1値、H2値、K1値、K2値に従って、離操作行程における各ストローク領域での音の減衰速度を設定する。また、電子鍵盤楽器200は、ハーフ設定情報Jが示す所定の効果音をハーフ領域において付加するよう設定する。
【0047】
そして電子鍵盤楽器200は、演奏に従って発音および消音を制御する。例えば電子鍵盤楽器200は、鍵盤の演奏に従って演奏情報を生成する。さらに電子鍵盤楽器200は、音源機能により、設定された発音音色と演奏情報とに基づき音信号を生成し、生成した音信号を、発音機能により音響に変換する。
【0048】
例えば、図2に示したように、電子鍵盤楽器200は、押し行程で発音が開始された後の離操作行程において、鍵のストローク位置がハーフ終了位置H2を通過すると、係数K2に応じた速度で音を減衰させる。電子鍵盤楽器200は、鍵のストローク位置がハーフ終了位置H2に達するまでの間(ハーフ領域)、指定された所定の効果音を付加する。次に、電子鍵盤楽器200は、鍵のストローク位置がハーフ開始位置H1を通過すると、係数K1に応じた速度で音を減衰させる。
【0049】
なお、ハーフ領域においても鍵のストローク位置を連続的に取得できる構成とした場合は、付加する所定の効果音をストローク位置に応じて漸次変化させてもよい。また、ハーフ領域において、音の減衰速度をストローク位置に応じて変化させてもよい。
【0050】
本実施形態によれば、音色設定指示が取得され、発音上の鍵ダンパハーフ領域または鍵ダンパハーフポイントを規定するハーフ設定情報Jが音色設定指示に応じて生成される。そして、生成されたハーフ設定情報Jが出力される。従って、ハーフ設定情報Jを受信した電子鍵盤楽器200において、離操作行程における消音形態が、音色設定指示に応じて定まる。よって、止音タイミングを所望に設定することができる。特に、ハーフ設定情報Jは、鍵のストローク位置と発音中の音の消音形態との対応関係を含むので、音色設定指示に応じて発音上のハーフ特性を可変にすることができる。
【0051】
なお、音の減衰速度は、H1値、H2値、K1値、K2値に従って電子鍵盤楽器200により決定されるとした。しかし、音源装置100が音の減衰速度を決定し、決定した減衰速度を各ストローク領域に設定する指示をハーフ設定情報Jに含めてもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ハーフ設定情報Jおよび演奏情報に基づく音信号の生成は電子鍵盤楽器200で行われた。本発明の第2の実施形態では、音源装置100が上記音信号を生成し、電子鍵盤楽器200へ送信する。電子鍵盤楽器200は音信号を音響に変換する。従って、電子鍵盤楽器200が音源機能を備えることは必須でない。また、電子鍵盤楽器200が弦、ダンパおよびアクション機構を備えることは必須でない。
【0053】
第1の実施形態と同様に、本実施形態においては、音源装置100は、機能部として、取得部401、生成部402、出力部403を含む(図4)。取得部401、生成部402の機能は第1の実施形態と同様である。ただし、出力部403は、電子鍵盤楽器200において鍵盤の演奏により生成された演奏情報を通信I/F15を介して受信する。さらに出力部403は、ハーフ設定情報Jと受信された演奏情報とに基づいて音信号を生成し、生成した音信号を通信I/F15を介して電子鍵盤楽器200へ送信することで出力する。
【0054】
図6は、メイン処理を示すフローチャートである。この処理の実行主体や開始条件は図5に示すメイン処理のものと同様である。
【0055】
ステップS201、S202では、CPU11は、図5のステップS101、S102と同様の処理を実行する。ステップS203では、CPU11は、設定処理を実行する。設定処理においては、まず、CPU11は、ハーフ設定情報Jが示す音色の指示に従って、音源部18における発音音色を設定する。また、CPU11は、ハーフ設定情報Jが示すH1値、H2値、K1値、K2値に従って、離操作行程における各ストローク領域での音の減衰速度を設定する。さらに、CPU11は、ハーフ設定情報Jが示す所定の効果音をハーフ領域において付加するよう設定する。
【0056】
ステップS204~S207では、CPU11は、電子鍵盤楽器200からの演奏情報に従って、いわゆるリアルタイムで音信号を生成・送信する。まず、ステップS204では、CPU11は、電子鍵盤楽器200から演奏情報が取得されるまで待機し、電子鍵盤楽器200から演奏情報が取得されると、ステップS205へ進む。ここでいう演奏情報は、鍵のストローク位置と、押し行程または離操作行程でのベロシティ(操作速度)の情報を含んでいる。鍵のストローク位置は連続量として取得される。
【0057】
ステップS205では、CPU11は、ハーフ設定情報Jが示す音色と取得された演奏情報とに基づき音信号を生成する。例えばCPU11は、鍵のストローク位置が、発音開始位置を押し方向に通過したと判定すると(ノートオン)、発音のための音信号を生成する。またCPU11は、鍵のストローク位置が、ハーフ終了位置H2を離操作方向に通過したと判定すると、鍵のストローク位置がハーフ終了位置H2に達するまでの間(ハーフ領域)、係数K2に応じた速度で音を減衰させるような音信号を生成する。また、CPU11は、ハーフ領域において、指定された所定の効果音を付加するよう音信号を生成する。その後、CPU11は、鍵のストローク位置がハーフ開始位置H1を離操作方向に通過したと判定すると(ノートオフ)、係数K1に応じた速度で音を減衰させるような音信号を生成する。
【0058】
ステップS206では、CPU11は、ステップS205で生成した音信号を通信I/F15を介して電子鍵盤楽器200へ送信する。電子鍵盤楽器200は、音信号を受信すると、音信号を音響に変換することで発音・消音処理を実施する。従って、電子鍵盤楽器200では、演奏に従ってリアルタイムで発音・消音される。
【0059】
ステップS207では、CPU11は、その他の処理を実行してから、ステップS204に戻る。ここでいうその他の処理では、設定操作部16での操作が新たに検出されれば、それに応じた処理が実行される。例えばCPU11は、新たな音色設定指示(つまり音色を切り替える指示)が取得されると、ステップS202に戻る。あるいは、CPU11は、終了指示が入力されると、図6のメイン処理を終了させる。
【0060】
本実施形態によれば、音色設定指示に応じて生成されたハーフ設定情報Jが示す音色と電子鍵盤楽器200から取得された演奏情報とに基づき音信号が生成される。そして、生成された音信号が電子鍵盤楽器200へ送信される。従って、電子鍵盤楽器200での離操作行程における消音形態が、音色設定指示に応じて定まる。よって、止音タイミングを所望に設定することに関し、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
なお、第1、第2の実施形態において、音源装置100と同様の機能を備える音源部が内蔵される電子鍵盤楽器にも本発明を適用可能である。
【0062】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電子鍵盤楽器のブロック図である。この電子鍵盤楽器300は、音源部318を備える。音信号の生成に関し、音源部318が、第2の実施形態における音源装置100と同様の機能を果たす。音源部318は例えば内蔵音源である。
【0063】
電子鍵盤楽器300は、ROM312、RAM313、記憶部314、通信I/F315、設定操作部316、表示部317、音源部318、発音部320、センサ321を有し、これらがバス319を介してCPU311に接続されている。
【0064】
CPU311は不図示のタイマを含む。記憶部314は不揮発性メモリである。ROM312または記憶部314には、CPU311により実行される制御プログラムが格納されている。CPU311は、ROM312または記憶部314に格納された制御プログラムをRAM313に展開して実行することにより電子鍵盤楽器300における各種機能を実現する。
【0065】
通信I/F315は、MIDI-I/Fを含む。また、通信I/F315は、オーディオ信号を送受信するインターフェイスを含む。なお、通信I/F315は、無線または有線により通信ネットワークに接続するインターフェイスを含んでもよい。設定操作部316は、各種情報を入力するための複数の操作子を含み、ユーザからの指示を受け付ける。表示部317は各種情報を表示する。
【0066】
音源部318は、鍵31の演奏により生成された演奏情報や予め記憶された演奏情報を音信号に変換する。これらの演奏情報は一例としてMIDI信号である。なお、音源部318は、そのすべてがハードウェアまたはソフトウェアで構成されてもよいし、一部がソフトウェアで、残りの部分がハードウェアで構成されてもよい。発音部320は、効果回路やスピーカを含み(図示せず)、音信号を音響に変換する。
【0067】
鍵31は複数設けられ、複数の鍵31により鍵盤が構成される。センサ321は鍵31ごとに設けられる。センサ321は、対応する鍵31のストローク位置を検出し、その検出結果をCPU111に供給する。
【0068】
センサ321は、鍵31の変位を連続量で検出する光学式の位置センサであり、鍵31のストローク位置を、連続的な位置情報として出力可能である。センサ321には例えば、グレースケールが形成されている反射板に対して光を照射し、該反射板からの反射光をフォトダイオードで受光する公知の構成を採用可能である。センサ321の構成は問わず、光学式に限定されない。例えば、決まった複数箇所での鍵の通過タイミングから、補間処理等によってストローク位置を連続的に取得する構成のものを採用してもよい。
【0069】
また、センサ321に代えて、特許第7009648号公報に開示されるような共振回路ベースのセンサを採用してもよい。あるいは、WO2017/149754号に開示されるように、鍵ストロークにおいて検出できる位置(例えば、メイク位置)が多数ある構成を採用できる場合は次のように制御してもよい。例えば、多数のメイク位置のうち、ハーフ領域の設定または発音・消音のタイミングの設定に用いるメイク位置を、音色設定指示に応じて選択できるようにしてもよい。
【0070】
図8は、ハーフ設定情報Jに基づく音制御処理を実現するための電子鍵盤楽器300の機能ブロック図である。電子鍵盤楽器300は、機能部として、第1の取得部501、生成部502、第2の取得部503、制御部504を含む。これらの各機能部の機能は、主としてCPU311、ROM312、RAM313、記憶部314、設定操作部316、音源部318、発音部320およびセンサ321等の協働により実現される。
【0071】
第1の取得部501は、音色設定指示を取得する。この音色設定指示は、一例として、ユーザが設定操作部316を操作して所望の音色を設定する指示を入力することにより得られる。生成部502は、ハーフ設定情報Jテーブルから、ハーフ設定情報Jを、音色設定指示に応じて生成する。ハーフ設定情報Jテーブルは、例えば記憶部314に記憶されている。第2の取得部503は、鍵31のストローク位置を取得する。このストローク位置は、センサ321からの検出結果から取得される。
【0072】
制御部504は、取得された鍵31のストローク位置と、生成されたハーフ設定情報Jとに基づいて、発音および消音を制御する。例えば、制御部504は、鍵31を離す行程において、鍵31のストローク位置が鍵ダンパハーフ領域に到達した以降または鍵ダンパハーフポイントを通過した以降における、発音中の音の消音形態を制御する。
【0073】
図9は、音制御処理を示すフローチャートである。この処理は、CPU311が、ROM312または記憶部314に記憶されたプログラムをRAM313に展開して実行することにより実現される。この処理は、例えば、演奏に従って発音するモードがオンにされると開始される。
【0074】
まず、ステップS301では、CPU311は、音色設定指示が取得されるまで待機し、音色設定指示が取得されるとステップS302に進む。ステップS302では、CPU311は、図5のステップS102と同様に、音色設定指示に基づいてハーフ設定情報Jを生成する。
【0075】
ステップS303では、CPU311は、設定処理を実行する。この設定処理においてはまず、CPU311は、ハーフ設定情報Jが示す音色の指示に従って、音源部318における発音音色を設定する。また、CPU311は、ハーフ設定情報Jが示すH1値、H2値、K1値、K2値に従って、離操作行程における各ストローク領域での音の減衰速度を設定する。さらに、CPU311は、ハーフ設定情報Jが示す所定の効果音をハーフ領域において付加するよう設定する。
【0076】
ステップS304~S306では、CPU311は、いわゆるリアルタイムでの演奏対応処理を実行する。まず、ステップS304では、CPU311は、鍵31のストローク位置を取得する。逐次取得される鍵のストローク位置から、押し行程または離操作行程でのベロシティ(操作速度)の情報も取得される。
【0077】
ステップS305では、CPU311は、ストローク位置とハーフ設定情報Jとに基づいて、発音および消音を制御する。まず、CPU311は、ハーフ設定情報Jが示す音色と取得された演奏情報とに基づき音信号を生成する。ここでの音信号の生成は、図6のステップS205と同様である。さらにCPU311は、生成した音信号を発音部320によって音響に変換することで発音・消音処理を実施する。
【0078】
ステップS306では、CPU311は、その他の処理を実行してから、ステップS304に戻る。ここでいうその他の処理では、設定操作部316での操作が新たに検出されれば、それに応じた処理が実行される。例えばCPU311は、新たな音色設定指示(つまり音色を切り替える指示)が取得されると、ステップS302に戻る。あるいは、CPU311は、終了指示が入力されると、図9の音制御処理を終了させる。
【0079】
本実施形態によれば、音色設定指示が取得され、ハーフ設定情報Jが音色設定指示に応じて生成される。そして、鍵のストローク位置が取得され、取得された鍵のストローク位置と、生成されたハーフ設定情報Jとに基づいて、発音および消音が制御される。従って、離操作行程における消音形態が、音色設定指示に応じて制御される。よって、止音タイミングを所望に設定することに関し、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
異なるメーカの異なるピアノ機種ごとに音色やハーフ特性は異なる。しかし上記各実施形態によれば、所望のピアノ機種の音色やハーフ特性を、発音上、擬似的に再現することができる。すなわち、音色の指定により、あるピアノ機種独自の音色を反映させると同時に、当該ピアノ機種独自の止音タイミングおよびハーフ特性が再現可能となる。例えば、あるピアノA独自の発音音色が音色Aであると認識されている場合において、音色Aを指定し、ハーフ設定情報Jを適用して電子鍵盤楽器を演奏する。すると、音色Aで発音され、且つ、発音上、ピアノA独自の止音タイミングおよびハーフ特性が再現される。
【0081】
なお、上記各実施形態において、止音タイミングやハーフ特性を可変にする観点からは、ハーフ設定情報Jは、鍵のストローク位置と発音中の音の消音形態(減衰速度)との対応関係を示す情報であればよく、例えば関数でもよい。
【0082】
なお、ハーフ特性を可変にする効果を求めない場合は、ハーフ設定情報Jは、H1値、H2値に代えて、1つの鍵ダンパハーフポイントを含む構成としてもよい。あるいは、K1値、K2値を共通の1つの値としてもよい。つまり、音の減衰速度を2段階で可変とすることは必須でない。これらの場合でも、音色指示に応じて止音タイミングを所望に設定することができる。
【0083】
なお、構成をより簡単にする観点からは、係数K1、K2をハーフ設定情報Jに含めないようにしてもよい。つまり、音色指示に応じて音の減衰速度を可変とすることは必須でない。
【0084】
なお、発音開始位置も音色指示に応じて可変にしてもよい。なお、電子鍵盤楽器200、300は、グランドピアノ型であるかアップライト型であるかを問わない。
【0085】
なお、取得部401や第1の取得部501によって取得される「設定指示」は音色設定指示であるとしたが、これに限定されない。例えば、音色以外のパラメータを設定する指示であってもよい。つまり、音色を切り替えることなく、ユーザからの指示によって止音タイミングやハーフ特性を可変にしてもよい。
【0086】
なお、図10に例示するように、弦やアクション機構を備え、アコースティック発音が可能な電子鍵盤楽器にも本発明を適用可能である。すなわち、上記各実施形態において、電子鍵盤楽器200または電子鍵盤楽器300は、図10に示す電子鍵盤楽器400であってもよい。なお、電子鍵盤楽器400は、電子鍵盤楽器300と同様の構成要素(図7)を備えてもよい。
【0087】
図10は、電子鍵盤楽器400の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。電子鍵盤楽器400は、複数の鍵31に対応して、鍵31の運動をハンマHMに伝達するアクションメカニズム33と、ハンマHMにより打撃される弦34と、弦34の振動を止めるためのダンパ36とを備えている。
【0088】
ハンマHMは、ハンマシャンク58およびハンマヘッド57を備え、鍵31を押す動作により回動動作し、ハンマヘッド57が対応する弦34を打撃することで発音がなされる。センサ321(図7)が各鍵31に対応して設けられる。
【0089】
電子鍵盤楽器400には、ダンパ36を駆動するためのラウドペダル(ダンパペダル)であるペダル27が設けられる。ダンパ36は、高音域の鍵を除く各鍵31に対応して設けられている。ダンパレバー51の前部にダンパワイヤ52が連結され、ダンパワイヤ52の上端部にダンパ36が取り付けられている。ペダル27が踏み込まれた場合は、全てのダンパ36が一斉に上昇動作する。しかし、ペダル27が踏み込まれていない状態では、押された鍵31に対応するダンパ36だけが上昇動作する。
【0090】
ダンパレバーフレンジ53に、ダンパレバー51の後端部が回動自在に支持される。ダンパレバー51の下方にリフティングレール54が配置される。リフティングレール54は全鍵の幅に対応して水平に延び、ペダル27に対して不図示の突き上げ棒を介して連結支持されている。そして、ペダル27の上下動作に突き上げ棒が連動し、それに応じてリフティングレール54も上下動作する。
【0091】
リフティングレール54が上昇すると、ダンパレバーフェルトFePがダンパレバー51を駆動し、ダンパレバー51は図1の反時計方向に回動する。すると、ダンパワイヤ52を介してすべてのダンパ36が上昇する。一方、鍵31が押されると、ダンパレバー51が図1の反時計方向に回動する。すると、ダンパワイヤ52を介して対応するダンパ36が上昇し、そのダンパ36が弦34から離れる。
【0092】
また、電子鍵盤楽器400は、ストッパ59を備える。ストッパ59は全鍵31に共通に設けられる。ストッパ59は回転することにより第1姿勢と第2姿勢とに姿勢を変化させることができる。第1姿勢では、ハンマHMのハンマシャンク58がストッパ59に当たることがなく、弦34の振動による通常のアコースティック発音が可能となる。第2姿勢では、鍵31を押す行程においてハンマヘッド57が弦34に当たる前にハンマシャンク58がストッパ59に当たる。
【0093】
従って、ストッパ59が第2姿勢となるモードは、いわゆるサイレントモードに該当し、弦34はハンマヘッド57によって打撃されない。サイレントモードでの発音は、押し行程でのセンサ321からの検出結果に基づき実現され、消音は、鍵31を離す行程におけるセンサ321からの検出結果に基づき実現される。上記した各実施形態におけるハーフ設定情報Jに基づく音制御は、サイレントモードにおいて実現可能となる。
【0094】
なお、電子鍵盤楽器400では、音色設定指示に応じて発音上のハーフ特性を可変にできるが、触覚上のハーフ領域は変化しない。そこで、ダンパ36と弦34とが接触する鍵ストローク位置を可変にする機構を設け、ハーフ設定情報Jに基づいて当該機構を制御することで、触覚上のハーフ領域も音色設定指示に応じて変化させるようにしてもよい。その場合、例えば、ダンパワイヤ52とダンパレバーフレンジ53とを連結する部材に、ダンパワイヤ52とダンパレバーフレンジ53との連結位置を可変にする機構を設ける。そして、ハーフ設定情報Jに基づいて不図示のアクチュエータにより上記機構を駆動することで、上記連結位置を変化させるように構成してもよい。
【0095】
なお、アコースティック発音が可能なアップライト型の電子鍵盤楽器においても、触覚上のハーフ領域も音色設定指示に応じて変化させるようにしてもよい。その場合、例えば、ダンパスプーン(不図示)の曲げ量を可変に構成し、ハーフ設定情報Jに基づいて不図示のアクチュエータがダンパスプーンの曲げ量を変化させるように構成してもよい。
【0096】
なお、ペダル27とダンパ36との関係における「ハーフペダル領域」についても、音色設定指示に応じて変化させるようにしてもよい。すなわち、電子鍵盤楽器400は、複数の鍵31に対応するダンパのそれぞれにおける、発音上のハーフペダル領域またはハーフペダルポイントを規定する第2の情報を含むようにハーフ設定情報Jを生成してもよい。その際、鍵ダンパハーフ領域用とハーフペダル領域用とで、ハーフ設定情報Jを個別に生成し、音色設定指示に基づく双方のハーフ領域についての制御を併存させてもよい。
【0097】
なお、本発明を適用可能な電子鍵盤楽器は、音源を備える消音ピアノのほか、各鍵の駆動機構を備え自動演奏が可能な鍵盤楽器等でもよい。
【0098】
なお、上記した各MIDI信号は、MIDI2.0規格の信号を含んでもよい。
【0099】
なお、上記各実施形態において、図4図8に示す各機能部の少なくとも一部を、AI(Artificial Intelligence)によって実現してもよい。
【0100】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0101】
なお、本発明を達成するためのソフトウェアによって表される制御プログラムを記憶した記憶媒体を、本音源、装置または楽器に読み出すことによって、本発明と同様の効果を奏するようにしてもよく、その場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明を構成することになる。また、プログラムコードを伝送媒体等を介して供給してもよく、その場合は、プログラムコード自体が本発明を構成することになる。なお、これらの場合の記憶媒体としては、ROMのほか、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。
【符号の説明】
【0102】
11 CPU、 401 取得部、 402 生成部、 200 電子鍵盤楽器、 403 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10