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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121393
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A61B6/03 360T
A61B6/03 370B
A61B6/03 360B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028474
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093BA10
4C093CA16
4C093DA03
4C093DA10
4C093EE19
4C093FA36
4C093FA47
4C093FF24
4C093FF32
4C093FF37
4C093FF46
4C093FG13
4C093FG14
(57)【要約】
【課題】呼吸同期スキャンにより生成された画像における問題を簡便に視認可能なように表示すること。
【解決手段】実施形態に係るX線CT装置は、入力部と、スキャン制御部と、再構成部と、画像処理部と、表示部と、を備える。入力部は、呼吸センサから、被検体の呼吸動を示す呼吸波形を入力する。スキャン制御部は、前記呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、前記呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行する。再構成部は、前記呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成する。画像処理部は、前記ボリュームデータに基づいて、前記呼吸動に応じたサジタル画像とコロナル画像とのうち少なくとも一つを生成する。表示部は、前記サジタル画像と前記コロナル画像とのうち少なくとも一つと、前記呼吸波形とを同時に表示する。
【選択図】 図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸センサから、被検体の呼吸動を示す呼吸波形を入力する入力部と、
前記呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、前記呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行するスキャン制御部と、
前記呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成する再構成部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記呼吸動に応じたサジタル画像とコロナル画像とのうち少なくとも一つを生成する画像処理部と、
前記サジタル画像と前記コロナル画像とのうち少なくとも一つと、前記呼吸波形とを同時に表示する表示部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記ボリュームデータに基づいて、前記呼吸動に応じたアキシャル画像をさらに生成し、
前記表示部は、前記アキシャル画像をさらに同時に表示する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記表示部は、
前記サジタル画像または前記コロナル画像におけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータと、前記呼吸波形上での前記断面位置に関する波形位置を示す波形位置インジケータとをさらに表示し、
前記断面位置が変更されると、前記変更された断面位置に対応する波形位置を、前記波形位置インジケータで指し示す、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記サジタル画像または前記コロナル画像におけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータと、前記呼吸波形上での前記断面位置に対応する波形位置を示す波形位置インジケータとをさらに表示し、
前記波形位置が変更されると、前記変更された波形位置に対応する断面位置を、前記断面インジケータで指し示す、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記呼吸同期スキャンは、ボリュームスキャンである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記呼吸同期スキャンは、ヘリカルスキャンである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記呼吸波形に対して、天板の長軸方向に沿った位置をさらに表示する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記呼吸波形における前記トリガ信号の位置をユーザの指示に応じて編集して表示する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記サジタル画像または前記コロナル画像に対して再撮影範囲が設定され、再撮影ボタンが押下されると、前記スキャン制御部は、前記トリガ信号に応答して、前記呼吸同期スキャンを前記再撮影範囲に対して実行し、
前記再構成部は、前記再撮影範囲に関する投影データに基づいて、前記再撮影範囲に対応するボリュームデータを再構成し、
前記画像処理部は、前記再撮影範囲に対応するボリュームデータに基づいて、前記呼吸動および前記再撮影範囲に応じたサジタル画像またはコロナル画像を生成する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、
前記再撮影範囲の設定前に生成された前記サジタル画像において前記再撮影範囲を除く領域と、前記再撮影範囲に対応する前記サジタル画像とを合成することで新たなサジタル画像を生成することと、
前記再撮影範囲の設定前に生成された前記コロナル画像において前記再撮影範囲を除く領域と、前記再撮影範囲に対応するコロナル画像とを合成することで新たなコロナル画像を生成することと、
のうち少なくとも一つを実行する、
請求項9に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記新たなサジタル画像または前記新たなコロナル画像と、前記呼吸波形とを同時に表示する、
請求項10に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
呼吸センサから、被検体の呼吸動を示す呼吸波形を入力する入力部と、
前記呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、前記呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行するスキャン制御部と、
前記呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成する再構成部と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記呼吸動に応じたサジタル画像とコロナル画像とのうち少なくとも一つを生成する画像処理部と、
を備え、
前記サジタル画像と前記コロナル画像とのうち少なくとも一つに応じて再撮影範囲が設定され、再撮影ボタンが押下されると、前記スキャン制御部は、前記トリガ信号に応答して、前記呼吸同期スキャンを前記再撮影範囲に対して実行し、
前記再構成部は、前記再撮影範囲に関する投影データに基づいて、前記再撮影範囲に対応するボリュームデータを再構成する、
X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記画像処理部は、
前記サジタル画像または前記コロナル画像に対して設定される再撮影範囲の設定前に生成された前記サジタル画像において前記再撮影範囲を除く領域と、前記再撮影範囲に対応する前記サジタル画像とを合成することで新たなサジタル画像を生成する、または
前記再撮影範囲の設定前に生成された前記コロナル画像において前記再撮影範囲を除く領域と、前記再撮影範囲に対応するコロナル画像とを合成することで新たなコロナル画像を生成する、
または前記サジタル画像およびコロナル画像の両方を生成する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線コンピュータ断層撮影装置において、呼吸同期スキャンによる一呼吸サイクル分の画像を得る機能がある。具体的には、X線コンピュータ断層撮影装置は、呼吸波形及びトリガ信号を取りこみながら、小さいヘリカルピッチでスキャンを行い、1呼吸サイクルの画像を再構成する。また、別の方法として、X線コンピュータ断層撮影装置は、ボリュームスキャンにより、1呼吸サイクル分の時間に加えて1回転以上の撮影を行い、1呼吸サイクルの画像を再構成する。
【0003】
呼吸同期スキャンにおいて呼吸の深さが変化した場合、呼吸同期再構成で二重画像、画像段差等が生じる。また、呼吸同期スキャンにおいて呼吸の速さが変化した場合、特にヘリカルスキャンの場合で呼吸が遅くなった場合には、呼吸同期再構成できず、画像抜けを生じる場合がある。従来の表示では、どういう呼吸であったために画像に問題が生じたか、また逆に画像に問題を生じたが原因(呼吸波形)はなんだったのかが、ユーザにはわからない。また、アキシャル画像のみの表示だと上記問題がどこにあるのかがユーザにわかりにくい。なぜなら体軸方向の連続性はコロナル画像および/またはサジタル画像でないとわかりにくいからである。
【0004】
図26および図27は、典型的な呼吸同期スキャンでの問題画像例を示す図である。図26は、呼吸の深さが一定でないため、二重画像となった例を示している。図26の点線の枠で示すように、左側肝臓上縁は二重に表示され、右側における肝臓上縁は欠けている。また、図27は、呼吸の速度が一定でないため(例えば呼吸同期ヘリカルスキャンで呼吸速度が遅くなったため)、特定の位置の範囲(点線の枠内)において画像抜け部分が生じた例を示している。図27に示すように、画像の一部(点線の枠内)が再構成されず、欠けた上下の画像を補間して画像が作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5611667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、呼吸同期スキャンにより生成された画像における問題を簡便に視認可能なように表示することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線CT装置は、入力部と、スキャン制御部と、再構成部と、画像処理部と、表示部と、を備える。入力部は、呼吸センサから、被検体の呼吸動を示す呼吸波形を入力する。スキャン制御部は、前記呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、前記呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行する。再構成部は、前記呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成する。画像処理部は、前記ボリュームデータに基づいて、前記呼吸動に応じたサジタル画像とコロナル画像とのうち少なくとも一つを生成する。表示部は、前記サジタル画像と前記コロナル画像とのうち少なくとも一つと、前記呼吸波形とを同時に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
図2図2は、実施形態に係るスキャン機構の外観の一例を示す図。
図3図3は、実施形態に係り、呼吸動に伴う腹部の動きを示す図。
図4図4は、実施形態に係り、レーザ測長器とコンピュータとの組合せにより構成される呼吸センサの外観を示す図。
図5図5は、実施形態に係り、呼吸センサにより発生される呼吸波形とトリガ信号との関係を示す図。
図6図6は、実施形態に係り、通常のヘリカルスキャンと呼吸同期でのヘリカルスキャンとにおけるヘリカルピッチの差の一例を示す図。
図7図7は、実施形態に係り、呼吸同期ヘリカルスキャンにおける各位相画像の再構成の一例を示す図。
図8図8は、実施形態に係り、ダイナミックスキャンにおけるスキャン位置と時刻との関係を示す図。
図9図9は、実施形態に係り、スキャン領域の形状のパターンを示す図。
図10図10は、実施形態に係り、スキャン領域の形状のパターンを示す図。
図11図11は、実施形態に係り、スキャン領域の形状のパターンを示す図。
図12図12は、実施形態の適用例1に係るシステム制御部による呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理の典型的な流れを示す図。
図13図13は、実施形態の適用例1に係る呼吸同期ダイナミックスキャンに関するシーケンス図。
図14図14は、実施形態に係り、広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおけるスキャン位置と時刻との関係を示す図。
図15図15は、実施形態に係り、個々のスキャン領域が図9のような円錐と円柱とを組み合わせた形状の場合における、指定スキャン領域の形状を示す図。
図16図16は、実施形態に係り、個々のスキャンが図10図11のような円柱形状の場合における、指定スキャン領域の形状を示す図。
図17図17は、実施形態の適用例2に係るシステム制御部による呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理の典型的な流れを示す図。
図18図18は、実施形態に係る適用例2に係る呼吸同期ダイナミックスキャンのシーケンス図。
図19図19は、実施形態に係り、呼吸同期スキャンに関する表示の処理の手順の一例を示すフローチャート。
図20図20は、実施形態に係り、呼吸同期スキャンがヘリカルスキャンである場合の表示態様の一例を示す図。
図21図21は、実施形態に係り、呼吸同期スキャンがヘリカルスキャンである場合において、サジタル画像とコロナル画像に加えてアキシャル画像を、呼吸波形とともに表示した一例を示す図。
図22図22は、実施形態に係り、呼吸同期ヘリカルスキャンにおいて、呼吸乱れが生じた場合の一例を示す図。
図23図23は、実施形態に係り、呼吸同期スキャンがボリュームスキャンである場合の表示態様の一例を示す図。
図24図24は、実施形態に係り、呼吸同期スキャンがボリュームスキャンである場合において、サジタル画像とコロナル画像に加えてアキシャル画像を、呼吸波形とともに表示した一例を示す図。
図25図25は、実施形態に係り、呼吸同期ボリュームスキャンにおいて、呼吸乱れが生じた場合の一例を示す図。
図26図26は、典型的な呼吸同期スキャンでの問題画像例を示す図。
図27図27は、典型的な呼吸同期スキャンでの問題画像例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらX線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置について説明する。実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。なお、本実施形態は、X線CT装置に限定されず、PET(Positron Emission Tomography)およびSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)などの核医学診断装置とX線CT装置との複合装置などの放射線診断装置であってもよい。以下の説明におけるX線CT装置は、積分型のX線CT装置として説明するが、これに限定されず、光子計数型のX線CT装置として実現されてもよい。
【0010】
X線CT装置には、X線管とX線検出器とが一体となって被検体の周囲を回転するROTATE/ROTATEタイプや、リング状に多数の検出素子が配列され、X線管のみが被検体の周囲を回転するSTATIONARY/ROTATEタイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプにも本実施形態は適用可能である。ここでは、ROTATE/ROTATEタイプとして説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。図1に示すように、X線CT装置は、スキャン機構10と画像処理装置40とを装備する。図2は、スキャン機構10の外観の一例を示す図である。
【0012】
図1図2に示すように、スキャン機構10は、被検体PをX線でスキャンするための架台(ガントリまたは架台装置ともいう)12を有する。架台12は、円環又は円板状の回転フレーム14を搭載する。回転フレーム14は、X線管16とX線検出器18とを被検体P回りに回転可能に支持している。回転フレーム14は、回転駆動部20に接続されている。回転駆動部20は、画像処理装置40内のスキャン制御部46による制御に従って回転フレーム14を回転し、X線管16とX線検出器18とを被検体P回りに回転する。
【0013】
なお、Z軸は、回転フレーム14の回転軸に規定される。Y軸は、X線管16のX線焦点とX線検出器18の検出面の中心とを結ぶ軸に規定される。Y軸は、Z軸に直交する。X軸は、Y軸とZ軸とに直交する軸に規定される。このように、XYZ直交座標系は、X線管16の回転とともに回転する回転座標系を構成する。
【0014】
X線管16は、高電圧発生部22から高電圧の印加を受けてコーン状のX線を発生する。X線管16は、例えば、高電圧発生部22からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管16における管球焦点で発生したX線は、X線管16におけるX線放射窓を通過して、コリメータを介して例えばコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。X線管16には、例えば、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0015】
高電圧発生部22は、スキャン制御部46による制御に従ってX線管16に高電圧を印加する。高電圧発生部22は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管16に印加する高電圧及びX線管16に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管16が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、高電圧発生部22は、回転フレーム13に設けられてもよいし、スキャン機構10の固定フレーム側に設けられても構わない。また、高電圧発生部22は、X線高電圧装置の一例である。
【0016】
X線検出器18は、X線管16から発生され被検体Pを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた電流信号を生成する。X線検出器18としては、面検出器や多列検出器と呼ばれるタイプのものが適用されるとよい。このタイプのX線検出器18は、2次元状に配列された複数のX線検出素子を装備する。例えば、1000個のX線検出素子がZ軸を中心とした円弧に沿って配列される。このX線検出素子の配列方向はチャンネル方向と呼ばれる。チャンネル方向に沿って配列された複数のX線検出素子は、X線検出素子列と呼ばれる。例えば64個のX線検出素子列は、Z軸で示すスライス方向に沿って配列される。X線検出器18には、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)24が接続されている。
【0017】
データ収集回路24は、スキャン制御部46による制御に従ってX線検出器18からチャンネルごとに電流信号を読み出す。データ収集回路24は、読み出された電流信号を増幅し、増幅された電流信号をデジタル変換することによって、デジタル信号である投影データを生成する。なおデータ収集回路24は、X線が曝射されていない期間にX線検出器18から電気信号を読み出し、投影データを生成することも可能である。生成された投影データは、図示しない非接触データ伝送部を介して画像処理装置40に供給される。
【0018】
架台12の近傍には、寝台26が設置されている。寝台26は、天板28、天板支持機構30、及び天板駆動部32を有する。天板28には、被検体Pが載置される。天板支持機構30は、天板28をZ軸に沿って移動可能に支持する。典型的には、天板支持機構30は、天板28の長軸がZ軸に平行するように天板28を支持する。天板駆動部32は、スキャン制御部46による制御に従って天板支持機構30を駆動し、天板28をZ軸方向に沿って移動する。
【0019】
画像処理装置40には、ケーブル等を介して呼吸センサ100が接続されている。呼吸センサ100は、被検体Pの呼吸動を計測する。呼吸センサ100は、典型的には、呼吸動を計測するために、呼吸動に伴う腹部の動きを計測する。
【0020】
図3は、呼吸動に伴う腹部の動きを示す図である。図3に示すように、通常、腹部は、吸気でふくらみ、呼気でへこむ。呼吸動に伴い、体内器官の位置や形状も変化する。例えば、肺野は、呼吸に伴い位置や形状が大きく変化する。すなわち、肺野内に発生された腫瘍も呼吸に伴い位置が大きく変化することとなる。ここで、ある吸気から次の吸気までの時間を呼吸周期と呼ぶことにする。呼吸周期は、被検体Pの呼吸の仕方により変化するものであり一定でなく、呼吸周期毎に時間が変化する。なお、本実施形態に係る呼吸周期の定義は、これのみに限定されず、例えば、ある呼気から次の呼気までの時間を1つの呼吸周期としてもよい。
【0021】
呼吸センサ100としては、例えば、被検体Pの腹部の動きを計測するレーザ測長器とコンピュータとの組合せが利用可能である。
【0022】
図4は、レーザ測長器102とコンピュータ104との組合せにより構成される呼吸センサ100の外観を示す図である。図4に示すように、レーザ測長器102は、腹部の動きをレーザにより計測する。計測値は、レーザ測長器102からコンピュータ104に供給される。コンピュータ104は、供給された計測値に基づいてリアルタイムに呼吸動を計測する。典型的には、コンピュータ104は、測定値をリアルタイムに監視し、測定値の時間変化を示す呼吸波形を発生する。また、コンピュータ104は、計測値をリアルタイムに監視し、被検体Pの呼吸動が呼吸波形上の特定の呼吸位相に到達したことを契機としてトリガ信号を発生する。トリガ信号は、複数の呼吸位相のうちの特定の1つの位相で発生されるように設定される。呼吸波形のデータやトリガ信号は、X線CT装置の画像処理装置40に供給される。
【0023】
図5は、呼吸センサ100により発生される呼吸波形とトリガ信号との関係を示す図である。図5に示すように、呼吸波形は、横軸が時間に規定され、縦軸が計測値に規定されたグラフである。計測値は、例えば、腹部表面の位置が高いほど大きく、腹部表面の位置が低いほど小さい値を有するように設定される。トリガ信号は、例えば、計測値が呼吸波形上の頂点(ピーク)又はその近傍に到達したことを契機として発生される。この場合、トリガ信号は、被検体Pが最も深く息を吸っている時点の呼吸位相に対応する。コンピュータ104は、この呼吸波形にトリガを示すマークを重ねて呼吸センサ100のモニタに表示する。
【0024】
なお、本実施形態に係る呼吸センサ100は、レーザ測長器102を用いるタイプに限定されない。例えば、呼吸センサ100は、圧力センサを用いるタイプであってもよい。この場合、圧力センサは、被検体Pの腹部と、腹部に巻かれたバンドとの間に取り付けられる。圧力センサは、バンドと腹部との間に働く圧力を繰り返し計測する。計測値は、圧力センサに接続されたコンピュータに供給される。このコンピュータは、圧力センサからの計測値を監視し、圧力変化を計測することにより、呼吸動を計測する。
【0025】
また、本実施形態に係る呼吸センサ100は、光学カメラを用いるタイプであってもよい。この場合、光学カメラは、腹部上に載せられた光反射材を繰り返し撮影する。光学カメラからの画像データは、光学カメラに接続されたコンピュータに供給される。このコンピュータは、光学カメラからの画像データに基づいて光反射材の位置を監視し、光反射材の動きを計測することにより、呼吸動を計測する。
【0026】
なお、本実施形態に係る呼吸センサ100は、上述のタイプに限定されない。本実施形態に係る呼吸センサ100は、被検体Pの呼吸動(呼気の状態と吸気の状態と)を計測可能なものであればどのようなタイプであってもよい。
【0027】
画像処理装置40は、入力部42、平均呼吸周期算出部44、スキャン制御部46、前処理部48、データ関連付け部50、再構成部52、画像合成部54、3次元画像処理部56、表示部58、操作部60、記憶部62、及びシステム制御部64を備える。
【0028】
入力部42は、被検体Pの呼吸動を計測する呼吸センサ100から、前記呼吸動を示す呼吸波形を入力する。例えば、入力部42は、呼吸センサ100から呼吸波形のデータとトリガ信号とを入力する。入力された呼吸波形のデータやトリガ信号は、システム制御部64により認識される。入力部42は、呼吸センサ100から出力された信号が入力される入力インターフェースに相当する。
【0029】
平均呼吸周期算出部44は、トリガ信号や呼吸波形に基づいて被検体Pの平均呼吸周期を算出する。平均呼吸周期は、後述するデータ収集待ち時間の設定に利用される。
【0030】
スキャン制御部46は、略1呼吸周期に亘ってダイナミックスキャンを実行するために、本実施形態に特有なスキャン法、すなわち、呼吸に同期したダイナミックスキャン(以下、呼吸同期ダイナミックスキャンと呼ぶことにする。)を実現する。例えば、スキャン制御部46は、被検体Pの呼吸動を示す呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、当該呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを、被検体Pに対して実行する。具体的には、スキャン制御部46は、被検体Pを略1呼吸周期に亘ってダイナミックスキャンするため(すなわち、スキャン位置を固定した状態で、同一のスキャン領域を略1呼吸周期に亘って繰り返しスキャンするため)に、X線管16からのX線の発生とデータ収集回路24による投影データの収集とを呼吸センサ100からのトリガ信号に同期して制御する。
【0031】
また、スキャン制御部46は、被検体Pに関する複数のスキャン領域の各々を略1呼吸周期に亘ってダイナミックスキャンするため(すなわち、天板28を各スキャン位置に間欠的に移動させながら、各スキャン位置において略1呼吸周期に亘って繰り返しスキャンをするため。換言すれば、ダイナミックスキャンと天板移動とを繰り返すため)に、X線管16からのX線の発生とデータ収集回路24による投影データの収集と天板支持機構30による天板28の間欠的な移動とを、呼吸センサ100からのトリガ信号に同期して制御する。すなわち、スキャン制御部46は、呼吸同期スキャンとして、ボリュームスキャンを実行する。
【0032】
なお、呼吸同期スキャンは、上記に限定されず、例えばヘリカルスキャンにより実行されてもよい。すなわち、スキャン制御部46は、呼吸同期スキャンとして、ヘリカルスキャンを実行してもよい。図6は、通常のヘリカルスキャンと呼吸同期でのヘリカルスキャン(以下、呼吸同期ヘリカルスキャンと呼ぶ)とにおけるヘリカルピッチの差の一例を示す図である。呼吸同期ヘリカルスキャンは、被検体Pの呼吸速度に応じたヘリカルピッチで、呼吸波形及びトリガ信号を取り込みながらヘリカルスキャンを行う。図6に示すように、呼吸同期ヘリカルスキャンにおけるヘリカルピッチは、呼吸同期ではない通常のヘリカルスキャンにおけるヘリカルピッチよりも小さく(低ヘリカルピッチ)なる。
【0033】
前処理部48は、データ収集回路24から供給された投影データに対数変換、オフセット補正、チャネル間の感度補正、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理は、上記各種補正に限定されず、既知の他の処理を適宜実行してもよい。
【0034】
データ関連付け部50は、投影データの収集時刻(X線管16の回転角度:ビュー)とトリガ信号が発生された時刻とに従って投影データとトリガ信号とを関連付ける。トリガ信号が関連付けられた投影データは、記憶部62に記憶される。
【0035】
再構成部52は、再構成部52は、投影データに基づいて複数の呼吸位相に関する複数のCT画像のデータを再構成する。本実施形態に係るCT画像のデータとしては、1つのボリュームに関する3次元画像のデータ(ボリュームデータ)や、1つのスライスに関する断層画像のデータ(スライスデータ)が適用可能である。例えば、再構成部52は、呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいて、ボリュームデータを再構成する。
【0036】
以下、説明を具体的に行うため、CT画像のデータは、3次元画像のデータであるものとする。この場合、再構成部52は、コーン角を考慮した画像再構成を行うとよい。これにより、より精度の高い3次元画像のデータが生成される。また、再構成部52は、操作者により操作部60を介して指定された呼吸位相に関する3次元画像のデータを再構成することも可能である。さらに複数のスキャン領域の各々に対してダイナミックスキャンが行われた場合、再構成部52は、複数のスキャン領域に関する複数の3次元画像のデータを再構成することも可能である。
【0037】
画像再構成法には、フル再構成法(Full再構成法)とハーフ再構成法(Half再構成法)とがある。フル再構成法は、1つのボリュームの3次元画像のデータを再構成するために、被検体Pの周囲1周、すなわち約2π[rad]分の投影データを必要とする。また、ハーフスキャン法では、1つのボリュームの3次元画像のデータを再構成するために、π+α[rad](α:ファン角)分の投影データを必要とする。利用される画像再構成法は、操作者により操作部60を介して任意に設定可能である。
【0038】
画像再構成法に関する具体的な再構成処理は、例えば、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)等である。当該再構成処理は、散乱性補正およびビームハードニング補正などの各種補正処理、および再構成条件における再構成関数の適用など、各種処理を有する。なお、再構成処理は、FBP法に限定されず、逐次近似再構成、減弱データの入力により再構成画像を出力するディープニューラルネットワークなど、既知の処理が適宜用いられてもよい。
【0039】
図7は、呼吸同期ヘリカルスキャンにおける各位相画像の再構成の一例を示す図である。図7に示すように、呼吸同期ヘリカルスキャンに関する再構成では、収集した投影データから必要とする複数の呼吸位相が指定されると、指定された呼吸位相に応じて再構成を行い、4次元画像(3次元画像+呼吸位相)を得る。例えば、各位相の画像は、例えばトリガ信号を基準に、トリガ信号の位置を0%として、次のトリガ信号の直前を99%として、再構成される。図7では一例として20%置きに再構成され、指定された範囲(z位置:撮影範囲)において呼吸位相の、0、20、40、60、80%の画像が再構成される。
【0040】
画像合成部54は、複数のスキャン領域に関する複数の3次元画像のデータに基づいて、複数のスキャン領域に関する単一の合成3次元画像のデータを発生する。画像合成部54は、例えば、後述の3次元画像処理部56における断面変換(Multi Planar Reconstruction:MPR)処理により生成されたサジタル画像、コロナル画像、アキシャル画像などのMPR画像と、当該MPR画像に関する断面位置を示す断面インジケータと、MPR画像に関す記呼吸波形上での波形位置を示す波形位置インジケータとを合成する。
【0041】
3次元画像処理部(画像処理部または画像生成部と称されてもよい)56は、3次元画像のデータや合成3次元画像のデータに3次元画像処理を施し、2次元の表示画像のデータを発生する。例えば、3次元画像処理部56は、ボリュームデータに基づいて、MPR処理を用いて、被検体Pの呼吸動に応じたサジタル画像および/またはコロナル画像を生成する。また、3次元画像処理部56は、ボリュームデータに基づいて、MPR処理を用いて被検体Pの呼吸動に応じたアキシャル画像をさらに生成してもよい。
【0042】
表示部58は、表示画像を表示機器に表示する。また、表示部58は、本実施形態に係る呼吸同期ダイナミックスキャンのスキャン計画を設定するための設定画面を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。また、表示部58は、ハードウェアとしてディスプレイにより実現されてもよい。表示部58は、サジタル画像および/またはコロナル画像と、呼吸波形とを同時に表示する。例えば、表示部58は、サジタル画像および/またはコロナル画像と、呼吸波形とを並べて表示する。なお、表示部58は、アキシャル画像をさらに同時に並べて表示してもよい。また、表示部58は、呼吸波形に対して天板28の長軸方向(z方向)に沿った位置をさらに表示してもよい。
【0043】
また、表示部58は、サジタル画像および/またはコロナル画像におけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータと、呼吸波形上での当該断面位置に関する波形位置を示す波形位置インジケータとをさらに表示してもよい。このとき、操作部60を介したユーザの指示により断面位置が変更されると、表示部58は、変更された断面位置に対応する波形位置を、波形位置インジケータで指し示す。また、操作部60を介したユーザの指示により波形位置が変更されると、表示部58は、変更された波形位置に対応する断面位置を、断面インジケータで指し示す。また、表示部58は、呼吸波形におけるトリガ信号の位置を、操作部60を介したユーザの指示に応じて編集して表示してもよい。
【0044】
操作部60は、入力機器を介して操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。なお、本実施形態において、入力機器は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、画像処理装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を画像処理装置40へ出力する電気信号の処理回路も操作部60の例に含まれる。また、操作部60は、スキャン機構(架台装置)10に設けられてもよい。また、操作部60は、画像処理装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0045】
記憶部62は、トリガ信号が関連付けられた投影データや、CT画像のデータ、表示画像のデータを記憶する。また、記憶部62は、平均呼吸周期を記憶してもよい。さらに記憶部62は、X線CT装置の制御プログラムを記憶している。この制御プログラムは、本実施形態に係る呼吸同期ダイナミックスキャンを行うためのX線CT装置の制御機能をシステム制御部64に実行させるためのものである。
【0046】
記憶部62は、メモリにより実現される。メモリは、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリは、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリの保存領域は、画像処理装置40内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0047】
システム制御部64は、X線CT装置の中枢として機能する。具体的には、システム制御部64は、記憶部62に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0048】
上記平均呼吸周期算出部44、スキャン制御部46、前処理部48、データ関連付け部50、再構成部52、画像合成部54、3次元画像処理部56、およびシステム制御部64に関する処理は、画像処理装置40における処理回路における平均呼吸周期算出機能、スキャン制御機能、前処理機能、データ関連付け機能、再構成機能、画像合成機能、3次元画像処理機能、およびシステム制御機能により、それぞれ実現される。処理回路は、例えば、操作部60から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置全体の動作を制御する。例えば、処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路は、自身のメモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、平均呼吸周期算出機能、スキャン制御機能、前処理機能、データ関連付け機能、再構成機能、画像合成機能、3次元画像処理機能、およびシステム制御機能を実行する。これらの機能は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより上記複数の機能を実現するものとしても構わない。
【0049】
以下にシステム制御部64の制御により実現される呼吸同期ダイナミックスキャンについて詳細に説明する。まずは、図8を参照しながら本実施形態の呼吸同期ダイナミックスキャンの基礎となるダイナミックスキャンについて説明する。図8は、ダイナミックスキャンにおけるスキャン位置と時刻との関係を示す図である。図8に示すように、ダイナミックスキャンにおいてスキャン位置、すなわち天板位置は、固定される。このようにダイナミックスキャンにおいては、同じスキャン位置でスキャンが繰り返されるので、被検体Pの体内のスキャン領域の時間変化を表示画像で観察することができる。なおスキャン位置とは、X線管16の焦点の鉛直下に位置する天板28上のZ位置であるとする。
【0050】
ここで、1つの呼吸周期(換言すれば、あるトリガと次のトリガとの時間間隔)を100%に正規化し、百分率%によって呼吸位相を表すことにする。そして本実施形態においては、0%から99%まで10%間隔で3次元画像のデータを収集するものとする。すなわち、1つの呼吸周期分のダイナミックスキャンにより10の呼吸位相に関する10の3次元画像のデータが収集される、この場合、回転フレーム14(すなわち、X線管16及びX線検出器18)は、10回転する。1回転に0.5秒かかるとすると、1つのスキャン位置について5秒間スキャンが行われることとなる。なお、10%という数字は、説明を具体的に行うために示されたものであり、本実施形態は、これに限定されない。5%や20%等のあらゆる数値、すなわち、1つの呼吸周期中に幾つの3次元画像を収集してもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係るスキャン領域(再構成領域)の形状について説明する。図9図10、及び図11は、スキャン領域の形状のパターンを示す図である。X線検出器18が面検出器の場合、コーン角を考慮した再構成が再構成部52により行われる。図9図11に示すスキャン領域は、フル再構成法により再構成可能な領域を示す。図10に示すスキャン領域は、ハーフ再構成法により再構成可能な領域を示す。図9に示すスキャン領域は、ZY平面において六角形状を有しており、3次元空間においては、台形を底辺回りに360度回転することにより形成される形状を有している。図10図11のスキャン領域は、XY平面において四角形状を有しており、3次元空間においては、円柱形状を有している。なおフル再構成法を利用する場合であっても、コーン角が小さい場合には、図10のように円柱状の領域を再構成領域とすることも可能である。なお、スキャン領域の範囲(撮影範囲)と再構成領域の範囲(再構成範囲)とは、必ずしも同一である必要はない。再構成領域は、スキャン領域内であれば、任意の範囲に設定可能である。
【0052】
次に、システム制御部64の制御のもとに行われる呼吸同期ダイナミックスキャンを、適用例1と適用例2とに分けて詳細に説明する。適用例1では、天板28の位置を固定して1つのスキャン領域をダイナミックスキャンする方式について説明する。適用例2では、天板28を間欠的に移動させて複数のスキャン領域の各々をダイナミックスキャンする方式(広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャン)について説明する。
【0053】
(適用例1)
以下に適用例1に係る呼吸同期ダイナミックスキャンにおけるX線CT装置の動作例について説明する。まず、呼吸同期ダイナミックスキャンの開始前に、操作者により操作部60を介してスキャン条件の設定が行われる。スキャノグラム上には、撮影範囲を示す四角形が重ねられている。スキャノグラム上に表示された四角形の各辺は、マウス等を介して移動可能である。操作者は、四角形の各辺を、マウスを介してドラッグすることにより撮影範囲を設定することができる。設定された撮影範囲のサイズとFOVのサイズとは、表示部58において、撮影範囲の表示欄とFOVの表示欄とにそれぞれ表示される。なお撮影範囲を数字で設定することも可能である。この場合、入力された数値に応じた撮影範囲がスキャノグラム上に反映される。管電圧や管電流等の他のスキャン条件も操作部60を介して同様に設定可能である。
【0054】
本実施形態に係るX線CT装置と呼吸センサ100とは、呼吸同期ダイナミックスキャンの開始前から接続されており、入力部42には、呼吸センサ100からリアルタイムにトリガ信号と呼吸波形のデータとが入力されている。平均呼吸周期算出部44は、呼吸同期スキャンの前段階において、トリガ信号や呼吸波形に基づいて平均呼吸周期を算出する。具体的には、操作者は、表示部58の設定画面上に表示された「呼吸周期取得」ボタンを押す。平均呼吸周期算出部44は、ボタンが押されたことを契機として、既定の呼吸数分のトリガ信号や呼吸波形のデータを入力部42から取り込む。既定の呼吸数は、例えば、“5”等の任意の数字に設定可能である。そして平均呼吸周期算出部44は、既定の呼吸数分のトリガ信号や呼吸波形に基づいて、被検体Pの平均呼吸周期を算出する。算出された平均呼吸周期は、表示部58の設定画面の「平均呼吸周期」の欄に表示される。
【0055】
呼吸同期ダイナミックスキャンの準備が整うと操作者は、表示部58の設定画面上に表示された「スキャン実行」ボタン等を押す。システム制御部64は、「スキャン実行」ボタンが押されることを契機として、呼吸同期ダイナミックスキャンを開始する。
【0056】
図12は、適用例1に係るシステム制御部64による呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理の典型的な流れを示す図である。図13は、適用例1に係る呼吸同期ダイナミックスキャンに関するシーケンス図である。
【0057】
まず、システム制御部64は、呼吸センサ100からトリガ信号(第1のトリガ信号)が入力されることを待機している(ステップS1)。第1のトリガ信号が入力されると、システム制御部64は、第1のトリガ信号が入力された時点から既定のデータ収集待ち時間が経過されるまで待機する(ステップS2)。データ収集待ち時間は、平均呼吸周期に基づいて、スキャン制御部46により設定される。例えば、データ収集待ち時間は、平均呼吸周期の60%分の時間に設定される。この場合、データ収集待ち時間は、平均呼吸周期の3/5倍の時間に設定される。なお、データ収集待ち時間は、平均呼吸周期の60%のみに限定されない。データ収集待ち時間は、被検体Pの呼吸周期に変動があったとしても、第1のトリガ信号が入力されてから、次のトリガ信号(第2のトリガ信号)が入力される時点までの時間に設定される。
【0058】
第1のトリガ信号が入力された時点からデータ収集待ち時間が経過したことを契機として(ステップS2:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46にデータ収集を開始させる(ステップS3)。ステップS3においてスキャン制御部46は、データ収集回路24を制御して投影データの収集を開始する。この時点においては、まだX線曝射は開始されない。X線曝射の前段階から投影データを収集することによって、この後の第2のトリガ信号を確実に投影データに関連付けることができるので、再構成段階における投影データ(特にX線曝射直後に関する投影データ)の特定精度を向上させることができる。
【0059】
投影データの収集が開始されるとシステム制御部64は、呼吸センサ100から次のトリガ信号(第2のトリガ信号)が入力されることを待機する(ステップS4)。第2のトリガ信号が入力されると(ステップS4:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46を制御してX線曝射を開始させる(ステップS5)。具体的には、スキャン制御部46は、第2のトリガ信号が入力されたことを契機として高電圧発生部22にX線発生の開始指示を出力する。開始指示の出力を受けて高電圧発生部22は、X線管16に高電圧を供給し、X線を曝射させる。
【0060】
X線曝射の開始時刻は、第2のトリガ信号の検出直後が望ましいが、実際には、(1)第2のトリガ信号をX線CT装置内のコンピュータ(システム制御部64)が検出してからスキャン制御部46が高電圧発生部22にX線曝射の開始指示をするまでの時間や、(2)管電流を上昇させてから設定値に管電流が安定するまでの時間等が必要である。そのため、X線曝射は、第2のトリガ信号が発生されてから数10ミリ秒(ms)遅れて開始される。安定的な管電流のもとに発生されたX線を利用して収集された投影データが再構成に利用される。
【0061】
以下、トリガ信号が検出されてから管電流が安定するまでの最短時間を、曝射ディレイ時間と呼ぶことにする。すなわち、トリガ信号の入力時点から曝射ディレイ時間経過後にスキャンのためのX線が発生される。本実施形態においては、トリガ信号が入力された直後にX線曝射の開始指示が自動的になされるので、あるトリガ信号の検出タイミングから次のトリガ信号の検出タイミングを予測してその予測タイミングでX線曝射の開始指示をしていた従来に比して、X線曝射の開始タイミングの制御が容易である。
【0062】
X線曝射が開始されるとシステム制御部64は、呼吸センサ100から次のトリガ信号(第3のトリガ信号)が入力されるまで待機する(ステップS6)。第3のトリガ信号が入力されると(ステップS6:YES)、システム制御部64は、第3のトリガ信号が入力された時点から再構成補償時間TAが経過するまで待機する(ステップS7)。再構成補償時間TAは、再構成の原理的な制限により設けられたデータ収集時間である。以下に再構成補償時間TAについて詳細に説明する。
【0063】
再構成部52がフル再構成法を利用して、ある呼吸位相に関する3次元画像のデータを収集する場合、再構成対象の呼吸位相を中心とした1呼吸周期分の投影データだけでは再構成に足りない。再構成には、さらに中心よりも前半にX線管16の半回転分、中心よりも後半にも半回転分、合計1回転分の投影データが原理的に必要である。ここで、X線管16が半回転するのに要する時間を、のりしろTBと呼ぶことにする。すなわち、ある呼吸位相に関する3次元画像のデータを収集する場合、X線曝射の合計時間は、再構成対象の呼吸位相を中心とした1呼吸周期分の時間+2×TB+曝射ディレイ時間が必要である。
【0064】
すなわち、再構成補償時間TAは、X線管16が1回転するのに要する時間2×TBと曝射ディレイ時間との合計時間に設定される。再構成補償時間TAに利用される曝射ディレイ時間は、経験則により決定された値であっても、実測の曝射ディレイ時間に従って決定された値であってもどちらでも良い。曝射ディレイ時間を加えることで、正確に略1呼吸周期分のダイナミックスキャンを実行することができる。
【0065】
再構成部52がハーフ再構成法を利用してある呼吸位相に関する3次元画像のデータを収集する場合も、再構成対象の呼吸位相を中心として1呼吸周期分の投影データだけでは足りない。さらに中心よりも前半に〔(180°+ファン角α)/2〕分、中心よりも後半にも〔(180°+ファン角α)/2〕分、合計(180°+ファン角α)分の投影データが原理的に必要である。従ってX線曝射の合計時間は、1呼吸周期分の時間+(180°+ファン角α)分の時間2×TB(β:X線管16が半回転とファン角α分だけ回転するのに要する時間)+曝射ディレイ時間が必要である。すなわち、再構成時間補償時間TAは、X線管16が半回転とファン角α分だけ回転するのに要する時間2×TBと曝射ディレイ時間との合計時間に設定される。
【0066】
なお、トリガ信号は、毎回同一の呼吸位相で呼吸センサ100から発生されるとは限らない。例えば、上述においては吸気のピークにおいてトリガ信号が発生されるように設定された場合であっても、必ずしも吸気のピークで発生されるとは限らず、多少発生タイミングがばらつくことがある。このようなトリガ信号の発生タイミングのばらつき時間を考慮して再構成補償時間TAが設定されてもよい。この場合、再構成補償時間TAは、2×β+曝射ディレイ時間+トリガばらつき時間に設定される。トリガばらつき時間は、経験則に基づいて決定された固定値に設定されるとよい。既定のトリガばらつき時間を加えることで、さらにより正確に略1呼吸周期分のダイナミックスキャンを実行することができる。
【0067】
第3のトリガ信号が入力された時点から再構成補償時間TAが経過したことを契機として(ステップS7:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46を制御してダイナミックスキャンを終了させる(ステップS8)。ステップS8においてスキャン制御部46は、データ収集回路24を制御して投影データの収集を終了させ、高電圧発生部22を制御してX線曝射を終了させる。
【0068】
ステップS8が終了するとシステム制御部64は、適用例1に係る呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理を終了させる。呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理が終了されると再構成部52は、収集された投影データに基づいて、操作者により指定された複数の呼吸位相に関する複数の3次元画像のデータを再構成する。例えば、トリガ2とトリガ3との間の呼吸位相は、トリガ2を基準(0%)としてトリガ3を100%に設定される。同様にトリガ3とトリガ4との間の呼吸位相は、トリガ3を基準(0%)としてトリガ4を100%に設定される。呼吸位相は、このように既定された百分率%により指定する。
【0069】
再構成範囲と再構成対象の呼吸位相とは、操作者により操作部60を介して任意に設定可能である。再構成範囲は、通常は、撮影範囲に応じて自動的に設定される。撮影範囲よりも狭い範囲に再構成範囲を設定したい場合、操作者により操作部60を介して設定可能である。呼吸位相は、再構成開始の呼吸位相、再構成間隔、再構成終了の呼吸位相を操作部60により百分率%で指定可能である。例えば、0%から90%まで10%おきに再構成する場合、再構成の開始呼吸位相の欄に「0%」、再構成間隔の欄に「90%」、再構成の終了呼吸位相の欄に「10%」と入力すれば良い。なお、再構成対象の呼吸位相は、複数に限定されない。例えば、1呼吸周期のうちの一つの呼吸位相について再構成されてもよい。
【0070】
図13に示すように、再構成に利用可能な投影データの収集時間範囲(再構成利用可能時間)は、X線の曝射開始時点(より正確には、管電流が安定した時点)からX線の曝射終了時点(より正確には、管電流が低下し始めた時点)までの時間範囲である。再構成可能な呼吸位相の時間範囲(再構成可能時間)は、再構成利用可能時間よりも限定される。すなわち、再構成可能時間は、再構成利用可能時間よりも2×TB+曝射ディレイ時間だけ短い時間である。より詳細には、再構成可能時間の開始時間は、再構成利用可能時間の開始時からTB+曝射ディレイ後の時点であり、再構成可能時間の終了時間は再構成利用可能時間の終了時からTB遡った時点である。再構成対象の呼吸位相は、この再構成可能時間内から設定される。
【0071】
フル再構成の場合、再構成部52は、収集された投影データから再構成対象の呼吸位相を中心として1回転分の投影データを抽出し、抽出された投影データに基づいて3次元画像のデータを再構成する。ハーフ再構成の場合、再構成部52は、収集された投影データから再構成対象の呼吸位相を中心として180°+ファン角α分の投影データを抽出し、抽出された投影データに基づいて3次元画像のデータを再構成する。
【0072】
このようにして複数の呼吸位相に関する複数の3次元画像のデータが再構成される。なお、トリガ2とトリガ3との間、トリガ3とトリガ4との間(より詳細には、再構成補償時間TA)に同一の呼吸位相がある場合、同一の呼吸位相が二重に再構成されてしまう。この1つの呼吸位相に関する3次元画像を二重に再構成してしまうことを防止するため、再構成対象の呼吸位相を、トリガ2とトリガ3との間、あるいはトリガ3とトリガ4との間の何れか一方に選択可能とする。例えば、再構成対象の呼吸位相は、操作者により操作部60等を介してスキャン時刻の早い方又は遅い方の何れか一方に設定されるとよい。早い方の場合、再構成対象の呼吸位相は、トリガ2とトリガ3との間のものが採用される。
【0073】
3次元画像のデータが再構成されると3次元画像処理部56は、再構成された3次元画像のデータに3次元画像処理を施し、表示画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、例えば、ボリュームレンダリングやサーフェスレンダリング、MPR、画素値投影法が採用される。3次元画像処理の種類は、予め操作者により操作部60を介して設定される。複数の呼吸位相に関する複数の表示画像のデータが再構成された場合、3次元画像処理部56は、同一の画像処理条件に従って3次元画像処理を施すと良い。例えば、ボリュームレンダリングの場合、同一の視点位置・視点方向が適用されると良い。また、MPRの場合、サジタルおよび/またはコロナル断面が適用されると良い。
【0074】
表示部58は、発生された表示画像を表示する。複数の呼吸位相に関する複数の表示画像のデータが再構成された場合、呼吸位相の時刻順に沿って複数の表示画像を動画形式で表示する。具体的には、表示部58は、0%から順番に表示画像を表示する。
【0075】
上記構成により適用例1に係るX線CT装置は、X線曝射の開始タイミングと終了タイミングとを呼吸波形のトリガ信号の発生タイミング(X線CT装置への入力タイミング)に基づいて制御している。より詳細には、適用例1に係るX線CT装置は、トリガ信号の入力直後にX線曝射を開始する。これにより、あるトリガ信号の検出タイミングから次のトリガ信号の検出タイミングを予測してその予測タイミングでX線曝射の開始指示をしていた従来に比して、X線曝射の開始タイミングの制御を容易に行うことができ、且つ被検体Pの呼吸動に応じた適切なタイミングでX線曝射を開始することができる。
【0076】
また、適用例1に係るX線CT装置は、次のトリガ信号の入力時点から補償時間経過後にX線曝射を終了している。すなわち、補償時間(再構成補償時間、再構成補償時間+曝射ディレイ時間、あるいは再構成補償時間+曝射ディレイ時間+トリガばらつき時間)を設けることで、開始タイミングの遅れ時間を埋め合わせることができる。
【0077】
このように適用例1に係るX線CT装置は、トリガ信号の入力直後にX線を発生し、トリガ信号の入力直後から開始される略1呼吸周期に限定してX線を発生し続けることができる。従ってX線CT装置は、被検体Pの呼吸動の変化に応じて過不足なく略1呼吸周期分のスキャン時間を確保することができる。かくして適用例1に係るX線CT装置は、被検体Pの被爆量を必要最小限にした上で、略1呼吸周期に亘って被検体Pにダイナミックスキャンを実行することができる。
【0078】
(適用例2)
以下、適用例2に係る広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおける動作例について説明する。なお、以下の説明において、適用例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。まずは、適用例2に係る広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンの基礎となる天板移動とダイナミックスキャンとについて説明する。なお、以下の説明を具体的に行うため、呼吸同期スキャンは、3つのダイナミックスキャンを含むものとする。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ダイナミックスキャンは、2回でもよいし、4回以上であってもよい。
【0079】
広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおける撮影範囲は、例えば、表示部58の設定画面上で操作者により操作部60を介して指定される。指定された撮影範囲が一回のダイナミックスキャンの撮影範囲を超えている場合(すなわち、撮影範囲が広範囲な場合)、スキャン制御部46は、指定された撮影範囲と個々のダイナミックスキャンの撮影範囲とに基づいて、広範囲の呼吸同期スキャンにおいて実行すべきダイナミックスキャンの回数(設定回数)と天板移動の回数とを算出する。算出されたダイナミックスキャンの回数と天板移動の回数とは、スキャン制御部46によりスキャン条件として設定される。
【0080】
図14は、広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおけるスキャン位置と時刻との関係を示す図である。図14に示すように、適用例2において天板28は、スキャン制御部46の制御により、X線曝射期間中に停止され、X線曝射停止中に移動される。例えば、第1のスキャン位置においてX線曝射が行われ、第1のスキャン領域がダイナミックスキャンされる。X線曝射が停止された後、天板28は、既定量だけ移動され第2のスキャン位置に配置される。そして第2のスキャン位置においてX線曝射が行われ、第2のスキャン領域がダイナミックスキャンされる。
【0081】
X線曝射が停止された後、天板28は、既定量だけ移動され第3のスキャン位置に配置される。そして第3のスキャン位置においてX線曝射が行われ、第3のスキャン領域がダイナミックスキャンされる。X線曝射が停止されると、広範囲の呼吸同期スキャンが終了される。このように広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおいて、天板28は、間欠的に移動される。なお一回の天板28の移動量は、予め設定されている。
【0082】
次に広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおけるスキャン領域の形状について説明する。図15は、個々のスキャン領域が図9のような円錐と円柱とを組み合わせた形状の場合における、指定スキャン領域(広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンにおけるスキャン領域)の形状を示す図である。図16は、個々のスキャンが図10図11のような円柱形状の場合における、指定スキャン領域の形状を示す図である。図15図16に示すように、個別のスキャン領域がオーバラップする場合がある。この場合、オーバラップ部分は、再構成時又は画像合成時において除外されるか、あるいは、重み付け平均により合成されるとよい。
【0083】
次に図17図18とを参照しながら適用例2に係る呼吸同期スキャンの動作例について説明する。図17は、適用例2に係るシステム制御部64による呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理の典型的な流れを示す図である。図18は、適用例2に係る呼吸同期ダイナミックスキャンのシーケンス図である。なお、適用例1と同様の処理は、同一の番号を付して説明は省略する。また、適用例2の場合も適用例1と同様に平均呼吸周期の算出やスキャン条件の設定が行われるが、適用例1と同様の処理のため説明は省略する。
【0084】
操作者により「スキャン実行」ボタンが押されることを契機として、システム制御部64は、広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンを開始する。まずシステム制御部64は、呼吸センサ100からトリガ信号(第1のトリガ信号)が入力されることを待機している(ステップS1)。第1のトリガ信号が入力されるとシステム制御部64は、第1のトリガ信号が入力された時点からデータ収集待ち時間が経過されるまで待機する(ステップS2)。第1のトリガ信号が入力された時点からデータ収集待ち時間が経過したことを契機として(ステップS2:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46にデータ収集を開始させる(ステップS3)。投影データの収集が開始されるとシステム制御部64は、呼吸センサ100から次のトリガ信号(第2のトリガ信号)が入力されることを待機する(ステップS4)。
【0085】
第2のトリガ信号が入力されると(ステップS4:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46を制御してX線曝射を開始させる(ステップS5)。X線曝射が開始されるとシステム制御部64は、呼吸センサ100から次のトリガ信号(第3のトリガ信号)が入力されることを待機する(ステップS6)。第3のトリガ信号が入力されると(ステップS6:YES)、システム制御部64は、第3のトリガ信号が入力された時点から再構成補償時間TAが経過するまで待機する(ステップS7)。第3のトリガ信号が入力された時点から再構成補償時間TAが経過したことを契機として(ステップS7:YES)、システム制御部64は、スキャン制御部46を制御してX線曝射と投影データの収集とを停止させる(ステップS8)。
【0086】
X線曝射と投影データの収集とが停止されると、システム制御部64は、広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンを終了するか否かを判定する(ステップS9)。例えば、システム制御部64は、ダイナミックスキャンの設定回数と実行回数とを比較することにより、呼吸同期スキャンを終了するか否かを判定する。ダイナミックスキャンの実行回数が設定回数よりも低いと判定した場合、システム制御部64は、呼吸同期スキャンを継続すると判定する(ステップS9:NO)。呼吸同期スキャンを継続すると判定した場合、システム制御部64は、スキャン制御部46に天板28の移動を行わせる(ステップS10)。ステップS10においてスキャン制御部46は、天板駆動部32を制御して天板支持機構30に天板28を既定量だけ移動させ、次のダイナミックスキャンのスキャン位置に配置する。
【0087】
天板28の移動が行われるとシステム制御部64は、ステップS2に進む。ステップS2においてシステム制御部64は、第3のトリガ信号が入力された時点からデータ収集待ち時間が経過するまで待機する。そしてシステム制御部64は、ステップS9において実行回数が設定回数と同じになるまで、ステップS2からステップS9までを同様にして繰り返す。これにより複数のスキャン領域がダイナミックスキャンされる。
【0088】
ステップS9において実行回数が設定回数と同じであると判定した場合、システム制御部64は、広範囲の呼吸同期ダイナミックスキャンを終了すると判定する(ステップS9:YES)。そしてシステム制御部64は、適用例2に係る呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理を終了させる。
【0089】
適用例2に係る呼吸同期ダイナミックスキャンの制御処理が終了されると再構成部52は、複数のスキャン領域に関する複数の3次元画像のデータを再構成する。この際、再構成部52は、広範囲のスキャン領域に含まれる複数のスキャン領域の各々について、操作者により指定された呼吸位相の3次元画像のデータを再構成する。例えば、呼吸位相0%の3次元画像のデータが複数のスキャン領域の各々について再構成される。
【0090】
次に画像合成部54は、複数のスキャン領域に関する複数の3次元画像のデータに画像合成処理を施し、広範囲のスキャン領域に関する単一の合成3次元画像のデータを発生する。適用例2においては、個々のスキャン領域の呼吸位相が精度良く整合しているので、3次元画像間の位置ずれ等が少ない合成3次元画像のデータを発生することができる。合成3次元画像のデータが発生されると3次元画像処理部56は、合成3次元画像のデータを3次元画像処理し、広範囲のスキャン領域に関する表示画像(以下、合成表示画像と呼ぶことにする。)のデータを発生する。そして表示部58は、発生された合成表示画像を表示する。例えば、表示部58は、適用例2のように、複数の呼吸位相に関する複数の合成表示画像を時系列に動画形式で表示する。
【0091】
上記構成により適用例2に係るX線CT装置は、X線曝射や投影データ収集の開始タイミングだけでなく、天板移動の開始タイミングをトリガ信号の発生タイミング(X線CT装置への入力タイミング)に応じて制御している。従って、適用例2に係るX線CT装置は、被検体Pの呼吸動に同期して自動的に天板移動とダイナミックスキャンとを繰り返すことができる。従って操作者が天板28の移動開始タイミングやX線の曝射開始タイミングを判断する必要がなくなるので、被検体Pの呼吸動に応じて過不足なくスキャン時間を確保できる。かくして適用例2に係るX線CT装置は、被検体Pの被爆量を必要最小限にした上で、略1呼吸周期に亘って被検体Pにダイナミックスキャンを実行することができる。また、適用例2に係るX線CT装置は、広範囲に亘る呼吸同期ダイナミックスキャンに関する操作者の負担を削減することができる。
【0092】
(適用例3)
本適用例は、呼吸同期スキャンとしてヘリカルスキャンを実行することにある。ヘリカルキャンの実行に先立って、入力部42は、被検体Pの呼吸動を計測する呼吸センサ100から、被検体Pの呼吸動を示す呼吸波形を入力する。呼吸同期のヘリカルスキャンは、図6に示すように、通常のヘリカルスキャンにおけるヘリカルピッチよりも狭いヘルカルピッチで実行される。例えば、スキャン制御部46は、入力部42を介して入力された呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、被検体Pの呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを、被検体Pに対して実行する。
【0093】
このとき、データ関連付け部50は、投影データの収集時刻(ビュー)とトリガ信号が発生された時刻とに従って投影データとトリガ信号とを関連付けて、記憶部62に記憶する。再構成部52は、収集した投影データから必要とする複数の呼吸位相が指定されると、指定された呼吸位相に応じて再構成を行い、4次元画像(3次元画像+呼吸位相)を得る。呼吸同期のヘリカルスキャンに関する制御および再構成などは、既知の技術が利用可能であるため、説明は省略する。
【0094】
以上、上記適用例1乃至3において、呼吸動に同期する呼吸同期スキャンについて説明した。以下、呼吸同期スキャンに伴う本実施形態の表示態様について説明する。図19は、呼吸同期スキャンに関する表示の処理(以下、表示処理と呼ぶ)の手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
(表示処理)
図19に示すように、適用例1乃至3に関する呼吸同期スキャンの実行に先立って、入力部42は、被検体Pの呼吸動を計測する呼吸センサ100から、呼吸動を示す呼吸波形を入力する(ステップS191)。スキャン制御部46は、システム制御部64により制御により、呼吸波形における特定の呼吸位相に由来するトリガ信号に応答して、呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを、例えば適用例1乃至3に記載のように、被検体Pに対して実行する(ステップS192)。
【0096】
再構成部52は、呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいて、ボリュームデータを再構成する(ステップS193)。3次元画像処理部56は、ボリュームデータ(3次元画像)に基づいて、呼吸動に応じたサジタル画像および/またはコロナル画像を生成する(ステップS194)。なお、3次元画像処理部56は、ボリュームデータに基づいてアキシャル像をさらに生成してもよい。表示部58は、サジタル画像および/またはコロナル画像と、呼吸波形とを同時に表示する(ステップS195)。
【0097】
図20は、呼吸同期スキャンがヘリカルスキャン(呼吸同期へリカスキャン:適用例3)である場合の表示態様の一例を示す図である。図20に示すように、表示部58は、コロナル画像COとサジタル画像SGとを、呼吸波形RWとともに表示する。このとき、表示部58は、コロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータCCPIと、サジタル画像SGにおけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータSCPIとを、さらに表示する。また、表示部58は、呼吸波形RWに関して、トリガ信号の位置を示すポインタTGを表示する。トリガ信号の位置を示すポインタTGは、通常、吸気のピーク、すなわち呼吸波形RWの頂点に設定される。
【0098】
図20に示す呼吸波形RWにおける上側は吸気を示し、下側は呼気を示している。加えて、表示部58は、呼吸波形RWに関して、サジタル画像SGとコロナル画像COとに関する呼吸波形RW上の位置を示す波形位置インジケータWPIを表示する。また、表示部58は、ヘリカルスキャンにおける撮影位置(天板28の位置)を示すインジケータバーIPを表示する。撮影位置(天板28の位置)を示すインジケータバーIPは、呼吸波形RWに対して被検体Pの長軸方向(z軸)に沿った位置(z位置)に相当する。また、表示部58は、ヘリカルスキャンにおける撮影時間を示すインジケータバーを表示する。
【0099】
図20に示すように、呼吸波形RW、トリガ信号の位置TG、撮影位置IP、および撮影時間ITは、時系列で表示される。呼吸センサ100の種別、形式、個体差などにより、呼吸波形RWのピークと、トリガ信号の位置TGとが一致しないことがある。例えば、呼吸波形RWの立下りるとトリガ信号を入力部42に送信、または。呼吸波形RWのピークまで上がりきらずに例えば閾値判定により、トリガ信号を入力部42に送信するなど、呼吸センサ100の装置に応じて、トリガ信号の入力部42への送信がばらつくことがある。
【0100】
このとき、操作部60を介したユーザの指示により、トリガ信号の位置TGが移動されると(ステップS196のYES)、表示部58は、呼吸波形RWにおけるトリガ信号の位置TGを、ユーザの指示に応じて編集して表示する。トリガ信号の位置TGが修正されると、再構成部52は、修正されたトリガ信号と投影データとに基づいて、ボリュームデータを再構成する(ステップS197)。次いで、3次元画像処理部56は、再度再構成されたボリュームデータに基づいて、サジタル画像SGおよびコロナル画像COなどを再度生成する(ステップS198)。表示部58は、修正されたトリガ信号の位置TGを呼吸波形RW上に表示し、かつ再度生成されたサジタルSGおよび/またはコロナル画像COを表示する。
【0101】
また、操作部60を介したユーザの指示により断面インジケータSCPIまたはCCPIが変更されると、表示部58は、変更された断面位置に対応する波形位置を、波形位置インジケータWPIで指し示す。すなわち、断面インジケータSCPIまたはCCPIの変更に応じて、呼吸波形RWにおける波形位置インジケータWPIの位置が変更して表示される。また、操作部60を介したユーザの指示により波形位置インジケータWPIが変更されると、表示部58は、変更された波形位置に対応するサジタル画像SGまたはコロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を、断面インジケータSCPIまたはCCPIで指し示す。すなわち、波形位置インジケータWPIの変更に応じて、断面位置インジケータSCPIおよび/またはCCPIの位置が変更して表示される。換言すれば、操作部60を介したユーザの指示に応じて、表示部58は、波形位置インジケータWPIと断面位置インジケータSCPIおよび/またはCCPIとを、連動して移動させて表示する(連動移動)。
【0102】
図21は、呼吸同期スキャンがヘリカルスキャンである場合において、サジタル画像SGとコロナル画像COに加えてアキシャル画像AXを、呼吸波形とともに表示した一例を示す図である。サジタル画像SGとコロナル画像COとアキシャル画像AXとは、一般にMPR画像と呼ばれる。図21に示すように表示部58は、図20における表示態様に加えて、断面位置インジケータCCPIおよびSCPIに対応する断面に対応するアキシャル画像AXを表示する。このとき、アキシャル画像AXに関するz位置(撮影位置IP)および呼吸波形上での波形位置は、波形位置インジケータWPIで示される。図21において、アキシャル画像AXがz方向に沿ってスクロール等で捲られていく場合、表示部58は、断面インジケータCCPIおよびSCPI、および波形位置インジケータWPIを、アキシャル画像AXの捲りに応じて移動して表示する。
【0103】
図22は、呼吸同期ヘリカルスキャンにおいて、呼吸乱れDBが生じた場合の一例を示す図である。図22に示すように、呼吸波形RWの略中央部において、トリガ信号に対応する呼吸波形が突出している。また、図22に示す波形位置インジケータWPIのアキシャル面に対応し、サジタル画像SG上に位置する断面インジケータSCPIの近傍では、呼吸乱れにより生じた画像の乱れを示す領域DBAが表れている。
【0104】
図22に示すように、サジタル画像SG(またはコロナル画像CO)上において連続性が欠ける部分があった場合に、連続性が書ける位置に断面インジケータSCPI(またはCCPI)を移動させると、表示部58は、移動された断面インジケータSCPIに対応した呼吸波形RWの位置WPIを表示する。また、逆に、例えば、呼吸波形RWが乱れた部分があった場合に、呼吸波形RWの乱れた位置に波形位置インジケータWPIを移動させると、表示部58は、サジタル画像SGおよびコロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を、断面インジケータSCPIおよぶCCPIで表示する。上記説明では、サジタル画像SGおよびコロナル画像COが表示される例を示したが、これに限定されず、表示部58は、サジタル画像SGまたはコロナル画像COを表示してもよい。
【0105】
上記説明のように、得られた画像に問題があると分かった場合には、被検体Pの問題部分に関する撮影範囲のみ、または撮影範囲の全体に亘って再撮影される。以下、被検体Pの問題部分に関する撮影範囲を再撮影範囲と呼ぶ。再撮影範囲の設定がされなければ(ステップS199のNO)、本表示処理は終了する。操作部60を介したユーザの入力により再撮影範囲が設定される(ステップS199のYES)と、表示部58は、再撮影範囲を、サジタル画像SGおよび/またはコロナル画像に重畳して表示する(ステップS200)。例えば、図22において、呼吸乱れDBにより生じた画像の乱れを示す領域DBAが、操作部60を介したユーザの入力により、再撮影範囲として設定される。なお、スキャン制御部46は、呼吸波形RWが乱れた部分、サジタル画像SGまたはコロナル画像CO上において連続性が欠ける部分に対する画像認識処理により、再撮影範囲を設定してもよい。画像認識処理は、閾値判定、セマンティックセグメンテーション処理など、既知の画像処理が適宜利用可能であるため、説明は省略する。
【0106】
上記のようにサジタル画像または前記コロナル画像に対して再撮影範囲が設定され、操作部60を介したユーザの指示により再撮影ボタンがクリック(押下)されると、スキャン制御部46は、トリガ信号に応答して、呼吸同期スキャンを再撮影範囲に対して実行する(ステップS201)。すなわち、スキャン制御部46は、再撮影ボタンの押下を契機として、適用例1乃至3に示した呼吸同期スキャンを、再撮影範囲に対して実行する。再撮影範囲にして呼吸同期スキャンが実行されると、再構成部52は、再撮影範囲に関する投影データに基づいて、再撮影範囲に対応するボリュームデータを再構成する(ステップS202)。
【0107】
次いで、3次元画像処理部56は、再撮影範囲を含むサジタル画像、コロナル画像、および/またはアキシャル画像などを再度生成する。例えば、3次元画像処理部56は、再撮影範囲に対応するボリュームデータに基づいて、被検体Pの呼吸動および再撮影範囲に応じたサジタル画像および/またはコロナル画像を生成する(ステップS203)。続いて、3次元画像処理部56は、再撮影範囲の設定前に生成されたサジタル画像において再撮影範囲を除く領域(以下、事前サジタル領域とよぶ)と、再撮影範囲に対応するサジタル画像との位置合わせを実行する。
【0108】
次いで、3次元画像処理部56は、位置合わせされた事前サジタル領域と、再撮影範囲に対応するサジタル画像とを合成することで、新たなサジタル画像を生成する。また、3次元画像処理部56は、再撮影範囲の設定前に生成されたコロナル画像において再撮影範囲を除く領域(以下、事前コロナル領域とよぶ)と、再撮影範囲に対応するコロナル画像との位置合わせを実行する。次いで、3次元画像処理部56は、位置合わせされた事前コロナル領域と、再撮影範囲に対応するコロナル画像とを合成することで、新たなコロナル画像を生成する(ステップS204)。
【0109】
続いて、表示部58は、生成された新たなサジタル画像または新たなコロナル画像と、呼吸波形とを同時に表示する。すなわち、表示部58は、再撮影範囲に含まれる元のサジタル画像および元のコロナル画像を、新たに生成されたサジタル画像およびコロナル画像に差し替えて表示する。例えば、上記再撮影ボタン以降の処理は自動的に実行される。以上の処理により、表示部58は、再撮影により生成された画像を含めた4次元画像を表示することができる。
【0110】
図23は、呼吸同期スキャンがボリュームスキャン(呼吸同期ボリュームスキャン:適用例2)である場合の表示態様の一例を示す図である。呼吸同期ボリュームスキャンでは、スキャン制御部46は、寝台位置を停止した状態で、呼吸センサ100から受信したトリガ信号に応じて、被検体Pの1呼吸サイクルの撮影を行う。これを複数の寝台位置で撮影をすることで、呼吸同期ヘリカルスキャンと同様に、4次元画像(3次元画像+呼吸位相)を得る手法である。呼吸同期ヘリカルスキャンの場合と異なるのは、図23に示すように、撮影位置IPが連続的ではなく、離散的となることである。図23では、1回の撮影(ボリュームスキャン)で40mm幅の撮影が可能の場合を示している。従って、撮影位置IPは、40mmの間隔となる。適用例2で示したように、被検体Pの2呼吸で1回の撮影を行い当該撮影後で各種チェックが実行される。
【0111】
図20乃至図22と同様に、図23においても、断面インジケータCCPIおよびSCPIと、波形位置インジケータWPIとは、連動して移動可能である。ただし、断面インジケータCCPI、SCPIは連続的に移動可能であるが、波形位置インジケータWPIは、撮影した離散的な位置(mm)のみに移動する。波形位置インジケータWPIは、図23においは20mm、60mm、100mm、140mm、180等の撮影位置のみに移動可能であり、これらの撮影位置の中間の位置には移動不可とする。
【0112】
図24は、呼吸同期スキャンがボリュームスキャンである場合において、サジタル画像SGとコロナル画像COに加えてアキシャル画像AXを、呼吸波形とともに表示した一例を示す図である。サジタル画像SGとコロナル画像COとアキシャル画像AXとは、一般にMPR画像と呼ばれる。図24に示すように表示部58は、図23における表示態様に加えて、断面位置インジケータCCPIおよびSCPIに対応する断面に対応するアキシャル画像AXを表示する。このとき、アキシャル画像AXに関するz位置(撮影位置IP)および呼吸波形上での波形位置は、波形位置インジケータWPIで示される。図24において、アキシャル画像AXがz方向に沿ってスクロール等で捲られていく場合、表示部58は、断面インジケータCCPIおよびSCPI、および波形位置インジケータWPIを、アキシャル画像AXの捲りに応じて移動して表示する。
【0113】
図20乃至図22と同様に、図23および図24においても、例えばサジタル画像またはコロナル画像上において、連続性が欠ける部分があった場合に、そこに断面インジケータCCPIまたはSCPIを移動させると、当該位置に対応した呼吸波形WPの位置が、波形位置インジケータWPIとして表示される。また、図23および図24においても、例えば、呼吸波形が乱れた部分があった場合に、呼吸の乱れがあった箇所に波形位置インジケータWPIを移動させると、それに対応した画像部分がわかる。
【0114】
図25は、呼吸同期ボリュームスキャンにおいて、呼吸乱れDBが生じた場合の一例を示す図である。図25に示すように、呼吸波形RWの略中央部において、トリガ信号に対応する呼吸波形が突出している。また、図25に示す波形位置インジケータWPIのアキシャル面に対応し、サジタル画像SG上に位置する断面インジケータSCPIの近傍では、呼吸乱れにより生じた画像の乱れを示す領域DBAが表れている。
【0115】
図25に示すように、サジタル画像SG(またはコロナル画像CO)上において連続性が欠ける部分があった場合に、連続性が書ける位置に断面インジケータSCPI(またはCCPI)を移動させると、表示部58は、移動された断面インジケータSCPIに対応した呼吸波形RWの位置WPIを表示する。また、逆に、例えば、呼吸波形RWが乱れた部分があった場合に、呼吸波形RWの乱れた位置に波形位置インジケータWPIを移動させると、表示部58は、サジタル画像SGおよびコロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を、断面インジケータSCPIおよぶCCPIで表示する。図25において、呼吸乱れDBにより生じた画像の乱れを示す領域DBAが、操作部60を介したユーザの入力により、再撮影範囲として設定される。その後、ステップS200以降の処理が実行される。
【0116】
以上に述べた実施形態に係るX線CT装置は、呼吸センサ100から、被検体Pの呼吸動を示す呼吸波形RWを入力し、入力された呼吸波形RWにおける特定の呼吸位相に由来するトリガ信号TGに応答して、当該呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行し、呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成し、ボリュームデータに基づいて、当該呼吸動に応じたサジタル画像SGとコロナル画像COとのうち少なくとも一つを生成し、サジタル画像SGとコロナル画像COとのうち少なくとも一つと呼吸波形RWとを同時に表示する。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、呼吸波形RWと画像の体軸方向の連続性との対比を容易にユーザが観察することができる。
【0117】
また、実施形態に係るX線CT装置は、ボリュームデータに基づいて、呼吸動に応じたアキシャル画像AXをさらに生成し、生成されたアキシャル画像AXをさらに同時に表示する。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、アキシャル画像AXを加えた3断面と呼吸波形RWとの対比を容易にユーザに提供することができる。
【0118】
また、実施形態に係るX線CT装置は、サジタル画像SGまたはコロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータCCPI、SCPIと、呼吸波形RW上での当該断面位置に関する波形位置を示す波形位置インジケータWPIとをさらに表示し、アキシャルの断面位置が変更されると、変更された断面位置に対応する波形位置を、当該波形位置インジケータで指し示す。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザは、断面位置に関する関心画像に対する呼吸波形WPを容易に認識することができる。例えば、ユーザは、画像異常部の原因となった呼吸波形Wを一目で認識することができる。
【0119】
また、実施形態に係るX線CT装置は、サジタル画像SGまたはコロナル画像COにおけるアキシャルの断面位置を示す断面インジケータCCPI、SCPIと、呼吸波形RW上での当該断面位置に関する波形位置を示す波形位置インジケータWPIとをさらに表示し、波形位置が変更されると、変更された波形位置に対応する断面位置を、サジタル画像SGまたはコロナル画像COにおける断面インジケータCCPI、SCPIで指し示す。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザは、呼吸乱れなどの関心呼吸波形に対する画像(アキシャル画像)の位置(断面位置)、すなわちサジタル画像SGおよびコロナル画像COにおける断面位置を容易に認識することができる。このため、ユーザは、例えば、イレギュラーな呼吸波形に対する画像の位置を一目で認識することができる。
【0120】
また、実施形態に係るX線CT装置における呼吸同期スキャンは、被検体Pに対するボリュームスキャンである。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、上記表示処理を、ボリュームスキャンに対して適用することができる。また、実施形態に係るX線CT装置における呼吸同期スキャンは、被検体Pに対するヘリカルスキャンである。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、上記表示処理を、ヘリカルスキャンに対して適用することができる。
【0121】
また、実施形態に係るX線CT装置は、呼吸波形RWに対して被検体Pの長軸方向に沿った位置IPをさらに表示する。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザは、呼吸波形RWに対する画像位置(z位置)を容易に認識することができる。また、実施形態に係るX線CT装置は、呼吸波形RWにおけるトリガ信号の位置TGをユーザの指示に応じて編集して表示する。これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザは、呼吸波形RWの確認をトリガ位置TGの編集と同時に実行することができる。
【0122】
また、実施形態に係るX線CT装置は、サジタル画像SGまたはコロナル画像COに対して再撮影範囲が設定され、再撮影ボタンが押下されると、トリガ信号TGに応答して、呼吸同期スキャンを被検体Pの再撮影範囲に対して実行し、再撮影範囲に関する投影データに基づいて再撮影範囲に対応するボリュームデータを再構成し、再撮影範囲に対応するボリュームデータに基づいて、被検体Pの呼吸動および再撮影範囲に応じたサジタル画像またはコロナル画像を生成し、再撮影範囲の設定前に生成されたサジタル画像SGにおいて再撮影範囲を除く領域と、再撮影範囲に対応するサジタル画像とを合成することで新たなサジタル画像を生成することと、再撮影範囲の設定前に生成されたコロナル画像COにおいて再撮影範囲を除く領域と、再撮影範囲に対応するコロナル画像とを合成することで新たなコロナル画像を生成することのうち少なくとも一つを実行し、新たなサジタル画像または新たなコロナル画像と、呼吸波形とを同時に表示する。なお、画像処理部56は、サジタル画像SGまたはコロナル画像COに対して設定される再撮影範囲の設定前に生成されたサジタル画像SGにおいて当該再撮影範囲を除く領域と、当該再撮影範囲に対応するサジタル画像SGとを合成することで新たなサジタル画像を生成する、または当該再撮影範囲の設定前に生成された当該コロナル画像COにおいて当該再撮影範囲を除く領域と、当該再撮影範囲に対応するコロナル画像COとを合成することで新たなコロナル画像を生成する、または当該サジタル画像SGおよび当該コロナル画像COの両方を生成してもよい。
【0123】
これにより、実施形態に係るX線CT装置によれば、再撮影範囲の設定の前に得られた画像に問題があると分かった場合には、問題部分のみまたは全体を再撮影することができる。また、実施形態に係るX線CT装置によれば、再撮影範囲を、撮影されたサジタル画像SGおよび/またはコロナル画像に重ねて自動的に表示することができる。加えて、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザによる再撮影ボタンのクリックに応じて指定された再撮影範囲が撮影され、画像が再構成され、元の画像に対して、画像を差し替えることができる。これらのことから、実施形態に係るX線CT装置によれば、再撮影された画像を含めた4次元画像を表示することができる。
【0124】
以上のことから、実施形態に係るX線CT装置によれば、ユーザは、サジタル画像SGやコロナル画像又はMPRによる画像位置(例えばアキシャル画像の断面位置)と、呼吸波形RWのどの位置とが簡便に対比できるので、どういう理由(呼吸の深さの変化、呼吸の速さの変化など)で問題画像が発生したのかを一目瞭然に把握することができる。このため、実施形態に係るX線CT装置によれば、容易に二重画像、画像段差、画像抜けなどの問題となる領域を、呼吸位置とともに容易に把握でき、簡便に再撮影を実行することができる。
【0125】
また、実施形態に掛かる変形例として、X線CT装置は、呼吸センサ100から、被検体Pの呼吸動を示す呼吸波形RWを入力する入力部42と、当該呼吸波形RWにおける特定の呼吸位相に由来するトリガ信号TGに応答して、当該呼吸動に同期する呼吸同期スキャンを実行するスキャン制御部46と、当該呼吸同期スキャンにより収集された投影データに基づいてボリュームデータを再構成する再構成部52と、当該ボリュームデータに基づいて、当該呼吸動に応じたサジタル画像SGとコロナル画像COとのうち少なくとも一つを生成する画像処理部56と、を備え、当該サジタル画像SGと当該コロナル画像COとのうち少なくとも一つに応じて再撮影範囲が設定され、再撮影ボタンが押下されると、当該スキャン制御部46は、当該トリガ信号TGに応答して、当該呼吸同期スキャンを当該再撮影範囲に対して実行し、当該再構成部52は、当該再撮影範囲に関する投影データに基づいて、当該再撮影範囲に対応するボリュームデータを再構成する。また当該画像処理部56は例えば、当該再撮影範囲に対応するボリュームデータに基づいて、当該呼吸動および当該再撮影範囲に応じたサジタル画像またはコロナル画像を生成する。本変形例における表示処理および効果は、実施形態と同様なため説明は省略する。
【0126】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、呼吸同期スキャンにより生成された画像における問題を簡便に視認可能なように表示することができる。
【0127】
いくつかの実施形態を参照して本開示を説明したが、これらの実施形態は、本開示の原理と用途の例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
10 スキャン機構
14 回転フレーム
16 X線管
18 X線検出器
20 回転駆動部
22 高電圧発生部
24 データ収集回路(DAS)
28 天板
30 天板支持機構
32 天板駆動部
40 画像処理装置
42 入力部
44 平均呼吸周期算出部
46 スキャン制御部
48 前処理部
50 データ関連付け部
52 再構成部
54 画像合成部
56 3次元画像処理部
58 表示部
60 操作部
62 記憶部
64 システム制御部
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