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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121394
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H01L29/78 617U
H01L29/78 618B
H01L29/78 617N
H01L29/78 618F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028476
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA14
5F110BB01
5F110CC01
5F110CC02
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110DD05
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE14
5F110EE30
5F110EE42
5F110EE44
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF04
5F110FF07
5F110FF09
5F110FF10
5F110FF28
5F110FF29
5F110GG01
5F110GG13
5F110GG15
5F110GG19
5F110GG25
5F110GG28
5F110GG29
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG52
5F110GG58
5F110HJ01
5F110HJ13
5F110HL02
5F110HL03
5F110HL04
5F110HL06
5F110HL11
5F110NN03
5F110NN04
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN35
5F110NN44
5F110NN46
5F110NN47
5F110NN49
5F110NN73
5F110PP10
5F110QQ05
5F110QQ11
(57)【要約】
【課題】ストレス試験前後における半導体装置の電気特性の変動を抑制すること。
【解決手段】半導体装置は、第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の上の第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上の酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上の第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上の第2ゲート電極と、を含む。前記第1絶縁層は、シリコン及び窒素を含む第1層、シリコン及び酸素を含む第2層、及びアルミニウム及び酸素を含む第3層を含む。前記第1層の厚さは、10nm以上190nm以下である。前記第2層の厚さは、10nm以上100nm以下である。前記第1層及び前記第2層の合計の厚さは、200nm以下である。前記第3層の厚さは、1nm以上10nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の上の第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上の第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上の第2ゲート電極と、を含み、
前記第1絶縁層は、シリコン及び窒素を含む第1層、シリコン及び酸素を含む第2層、及びアルミニウム及び酸素を含む第3層、を含み、
前記第1層の厚さは、10nm以上190nm以下であり、
前記第2層の厚さは、10nm以上100nm以下であり、
前記第1層及び前記第2層の合計の厚さは、200nm以下であり、
前記第3層の厚さは、1nm以上10nm以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記第2層は、前記第1層の上に設けられ、
前記第3層は、前記第2層の上に設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体層は、多結晶である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記酸化物半導体層の上面付近における不純物濃度は、1×1019/cm以上である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1層の上面付近における不純物濃度は、1×1019/cm以下である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1層の厚さは、10nm以上100nm以下である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1層及び前記第2層の合計の厚さは、150nm以下である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁層の厚さは、10nm以上75nm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1層の厚さは、10nm以上100nm以下であり、
前記第2層の厚さは、10nm以上50nm以下であり、
前記第1層及び前記第2層の合計の厚さは、150nm以下である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2絶縁層の厚さは、10nm以上100nm以下である、請求項9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、酸化物半導体をチャネルとして用いる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び単結晶シリコンなどのシリコン半導体に替わり、酸化物半導体がチャネルとして用いられた半導体装置の開発が進められている(例えば、特許文献1~特許文献6参照)。このような酸化物半導体がチャネルとして用いられた半導体装置は、アモルファスシリコンがチャネルとして用いられた半導体装置と同様に、単純な構造かつ低温プロセスで形成することができる。また、酸化物半導体がチャネルとして用いられた半導体装置は、アモルファスシリコンがチャネルとして用いられた半導体装置より高い電界効果移動度を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141338号公報
【特許文献2】特開2014-099601号公報
【特許文献3】特開2021-153196号公報
【特許文献4】特開2018-006730号公報
【特許文献5】特開2016-184771号公報
【特許文献6】特開2021-108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化物半導体がチャネルとして用いられた半導体装置では、ストレス試験において、酸化物半導体層の上又は下に設けられた絶縁層に電子又はホールがトラップされることによって電気特性が変動する場合がある。特に、半導体装置に対して光を照射しながら当該半導体装置のゲート電極に負のストレス電圧を印加する信頼性試験によって、半導体装置の電気特性が負電圧方向にシフトする現象が問題となっている。
【0005】
本発明の一実施形態は、ストレス試験前後における半導体装置の電気特性の変動を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の上の第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上の酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上の第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上の第2ゲート電極と、を含む。前記第1絶縁層は、シリコン及び窒素を含む第1層、シリコン及び酸素を含む第2層、及びアルミニウム及び酸素を含む第3層を含む。前記第1層の厚さは、10nm以上190nm以下である。前記第2層の厚さは、10nm以上100nm以下である。前記第1層及び前記第2層の合計の厚さは、200nm以下である。前記第3層の厚さは、1nm以上10nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性から計算されたしきい値電圧を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性から計算された移動度を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置のストレス試験前後の電気特性を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置のストレス試験前後の電気特性を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置のストレス試験前後の電気特性から計算されたしきい値電圧の変動を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
図19】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図20】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図21】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
図22】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素電極及び共通電極の平面図である。
図23】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図24】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本発明の各実施の形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、トランジスタの上方の画素電極と表現する場合、平面視において、トランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、トランジスタの鉛直上方の画素電極と表現する場合は、平面視において、トランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0010】
本明細書において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合により、互いに入れ替えることができる。
【0011】
「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する構造体を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルを指す場合もあり、又は表示セルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)を装着した構造体を指す場合もある。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。したがって、後述する実施形態について、表示装置として、液晶層を含む液晶表示装置、及び有機EL層を含む有機EL表示装置を例示して説明するが、本実施形態における構造は、上述した他の電気光学層を含む表示装置へ適用することができる。
【0012】
本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0014】
[1.第1実施形態]
図1図17を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置について説明する。以下に示す実施形態の半導体装置は、表示装置に用いられるトランジスタの他に、例えば、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)などの集積回路(Integrated Circuit:IC)、又はメモリ回路に用いられてもよい。
【0015】
[1-1.半導体装置10の構成]
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、半導体装置10は基板100の上方に設けられている。半導体装置10は、ゲート電極105、ゲート絶縁層110、120、金属酸化物層130、酸化物半導体層140、ゲート絶縁層150、ゲート電極160、絶縁層170、180、ソース電極201、及びドレイン電極203を含む。ソース電極201及びドレイン電極203を特に区別しない場合、これらを併せてソース・ドレイン電極200という場合がある。
【0017】
ゲート電極105は基板100の上に設けられている。ゲート絶縁層110、120は基板100及びゲート電極105の上に設けられている。金属酸化物層130はゲート絶縁層120の上に設けられている。金属酸化物層130はゲート絶縁層120に接している。酸化物半導体層140は金属酸化物層130の上に設けられている。酸化物半導体層140は金属酸化物層130に接している。酸化物半導体層140はパターニングされている。金属酸化物層130の一部は、酸化物半導体層140の端部を越えて酸化物半導体層140のパターンよりも外側に延びている。ただし、金属酸化物層130が酸化物半導体層140と同じ平面形状でパターニングされていてもよい。
【0018】
ゲート電極105を「第1ゲート電極」という場合がある。ゲート絶縁層110、120及び金属酸化物層130を併せて「第1絶縁層」という場合がある。この場合、ゲート絶縁層110を「第1層」といい、ゲート絶縁層120を「第2層」といい、金属酸化物層130を「第3層」という場合がある。詳細は後述するが、ゲート絶縁層110は、シリコン及び窒素を含む層である。ゲート絶縁層120は、シリコン及び酸素を含む層である。金属酸化物層130は、アルミニウム及び酸素を含む層である。
【0019】
ゲート絶縁層110の厚さは、10nm以上190nm以下、10nm以上150nm以下、又は10nm以上100nm以下である。ゲート絶縁層120の厚さは、10nm以上100nm以下、10nm以上75nm以下、又は10nm以上50nm以下である。ゲート絶縁層110、120の合計の厚さは、300nm以下、200nm以下、又は150nm以下である。詳細は後述するが、ゲート絶縁層110、120及び金属酸化物層130の厚さは上記の範囲にすることで、半導体装置10のストレス試験に対する信頼性が向上する。
【0020】
金属酸化物層130の厚さは、1nm以上10nm以下、1nm以上4nm以下、又は1nm以上3nm以下である。酸化物半導体層140の厚さに対する金属酸化物層130の厚さの比率は、1/30以上2/3以下、1/30以上4/30以下、又は1/30以上1/10以下である。
【0021】
上記の構成を換言すると、ゲート絶縁層120は基板100と金属酸化物層130との間に設けられている。さらに換言すると、金属酸化物層130は、ゲート絶縁層120と酸化物半導体層140との間において、ゲート絶縁層120及び酸化物半導体層140の各々に接している。詳細は後述するが、ゲート絶縁層120は酸素を含有する絶縁層である。具体的には、ゲート絶縁層120は、600℃以下の熱処理によって酸素を放出する機能を備える絶縁層である。熱処理によってゲート絶縁層120から放出された酸素によって、酸化物半導体層140に形成された酸素欠損が修復される。
【0022】
本実施形態では、金属酸化物層130と基板100との間に、半導体層又は酸化物半導体層は設けられていない。
【0023】
本実施形態では、金属酸化物層130がゲート絶縁層120に接し、酸化物半導体層140が金属酸化物層130に接している構成が例示されているが、この構成に限定されない。ゲート絶縁層120と金属酸化物層130との間に他の層が設けられていてもよい。金属酸化物層130と酸化物半導体層140との間に他の層が設けられていてもよい。
【0024】
ゲート電極160は酸化物半導体層140に対向している。ゲート絶縁層150は、酸化物半導体層140とゲート電極160との間に設けられている。ゲート絶縁層150は酸化物半導体層140に接している。酸化物半導体層140の主面のうち、ゲート絶縁層150に接する面を上面141という。酸化物半導体層140の主面のうち、金属酸化物層130に接する面を下面142という。上面141と下面142との間の面を側面143という。絶縁層170、180はゲート絶縁層150及びゲート電極160の上に設けられている。絶縁層170、180には、酸化物半導体層140に達する開口171、173が設けられている。ソース電極201は開口171の内部に設けられている。ソース電極201は開口171の底部で酸化物半導体層140に接している。ドレイン電極203は開口173の内部に設けられている。ドレイン電極203は開口173の底部で酸化物半導体層140に接している。
【0025】
ゲート電極160を「第2ゲート電極」という場合がある。ゲート絶縁層150を「第2絶縁層」という場合がある。
【0026】
ゲート電極105は、半導体装置10のボトムゲートとしての機能及び酸化物半導体層140に対する遮光膜としての機能を備える。ゲート絶縁層110は、基板100から酸化物半導体層140に向かって拡散する不純物を遮蔽するバリア膜としての機能を備える。ゲート絶縁層110、120は、ボトムゲートに対するゲート絶縁層としての機能を備える。金属酸化物層130は、アルミニウムを主成分とする金属酸化物を含む層であり、酸素及び水素などのガスを遮蔽するバリア性を備える。さらに、金属酸化物層130は、ストレス試験においてホールが酸化物半導体層140からゲート絶縁層120に移動することを抑制する機能を有している。
【0027】
半導体装置10は、ゲート電極160及び酸化物半導体層140の各々のパターンを基準として、第1領域A1、第2領域A2、及び第3領域A3に区分される。第1領域A1は、平面視でゲート電極160と重なる領域である。第2領域A2は、平面視でゲート電極160とは重ならず、酸化物半導体層140と重なる領域である。第3領域A3は、平面視でゲート電極160及び酸化物半導体層140の両方と重ならない領域である。
【0028】
図1では、第2領域A2及び第3領域A3におけるゲート絶縁層150の厚さは第1領域A1におけるゲート絶縁層150の厚さと同じである構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第2領域A2及び第3領域A3におけるゲート絶縁層150の厚さは、第1領域A1におけるゲート絶縁層150の厚さに比べて小さくてもよい。換言すると、平面視でゲート電極160と重ならない領域におけるゲート絶縁層150の厚さは、ゲート電極160と重なる領域におけるゲート絶縁層150の厚さに比べて小さくてもよい。
【0029】
酸化物半導体層140は、ゲート電極160のパターンを基準として、ソース領域S、ドレイン領域D、及びチャネル領域CHに区分される。ソース領域S及びドレイン領域Dは、第2領域A2に対応する領域である。チャネル領域CHは、第1領域A1に対応する領域である。平面視で、チャネル領域CHにおける端部は、ゲート電極160の端部と一致している。チャネル領域CHにおける酸化物半導体層140は、半導体の性質を有する。ソース領域S及びドレイン領域Dにおける各々の酸化物半導体層140は、導体の性質を有する。つまり、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140のキャリア濃度は、チャネル領域CHにおける酸化物半導体層140のキャリア濃度より高い。ソース電極201及びドレイン電極203は、それぞれ、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140と接しており、酸化物半導体層140と電気的に接続されている。酸化物半導体層140は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0030】
ゲート電極160は半導体装置10のトップゲート及び酸化物半導体層140に対する遮光膜としての機能を備える。ゲート絶縁層150はトップゲートに対するゲート絶縁層としての機能を備える。ゲート絶縁層150はゲート絶縁層120と同様に製造プロセスにおける熱処理によって酸素を放出する機能を備えてもよい。絶縁層170、180はゲート電極160とソース・ドレイン電極200とを絶縁し、両者間の寄生容量を低減する機能を備える。半導体装置10の動作は、主にゲート電極160に供給される電圧によって制御される。ゲート電極105には補助的な電圧が供給される。ただし、ゲート電極105が単に遮光膜として用いられる場合、ゲート電極105に特定の電圧が供給されず、ゲート電極105の電位がフローティングであってもよい。つまり、ゲート電極105は単に「遮光膜」と呼ばれてもよい。その場合、遮光膜は絶縁体であってもよい。
【0031】
本実施形態では、半導体装置10として、ゲート電極が酸化物半導体層の上方及び下方の両方に設けられたデュアルゲート型トランジスタが用いられた構成を例示するが、この構成に限定されない。例えば、半導体装置10として、ゲート電極が酸化物半導体層の下方のみに設けられたボトムゲート型トランジスタ、又はゲート電極が酸化物半導体層の上方のみに設けられたトップゲート型トランジスタが用いられてもよい。上記の構成はあくまで一実施形態に過ぎず、本発明は上記の構成に限定されない。
【0032】
図1及び図2を参照すると、酸化物半導体層140の下面142は金属酸化物層130によって覆われている。特に、本実施形態では、酸化物半導体層140の下面142の全てが、金属酸化物層130によって覆われている。図2に示すD1方向において、ゲート電極105の幅はゲート電極160の幅より大きい。D1方向は、ソース電極201とドレイン電極203とを結ぶ方向であり、半導体装置10のチャネル長Lを示す方向である。具体的には、酸化物半導体層140とゲート電極160とが重なる領域(チャネル領域CH)のD1方向の長さがチャネル長Lであり、当該チャネル領域CHのD2方向の幅がチャネル幅Wである。
【0033】
本実施形態では、酸化物半導体層140の下面142の全てが金属酸化物層130によって覆われた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、酸化物半導体層140の下面142の一部が金属酸化物層130と接していなくてもよい。例えば、チャネル領域CHにおける酸化物半導体層140の下面142の全てが金属酸化物層130によって覆われ、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140の下面142の全て又は一部が金属酸化物層130によって覆われていなくてもよい。つまり、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140の下面142の全て又は一部が金属酸化物層130と接していなくてもよい。ただし、上記の構成において、チャネル領域CHにおける酸化物半導体層140の下面142の一部が金属酸化物層130によって覆われておらず、当該下面142のその他の部分が金属酸化物層130と接していてもよい。
【0034】
本実施形態では、ゲート絶縁層150が全面に形成され、ゲート絶縁層150に開口171、173が設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。ゲート絶縁層150が、開口171、173が設けられた形状とは異なる形状にパターニングされていてもよい。例えば、ソース領域S及びドレイン領域Dの全部又は一部の酸化物半導体層140を露出するようにゲート絶縁層150がパターニングされていてもよい。つまり、ソース領域S及びドレイン領域Dのゲート絶縁層150が除去され、これらの領域で酸化物半導体層140と絶縁層170とが接していてもよい。
【0035】
図2では、平面視において、ソース・ドレイン電極200がゲート電極105及びゲート電極160と重ならない構成が例示されているが、この構成に限定されない。例えば、平面視において、ソース・ドレイン電極200がゲート電極105及びゲート電極160の少なくともいずれか一方と重なっていてもよい。上記の構成はあくまで一実施形態に過ぎず、本発明は上記の構成に限定されない。
【0036】
[1-2.半導体装置10の各部材の材質]
基板100として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板100が可撓性を備える必要がある場合、基板100として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、樹脂を含む基板が用いられる。基板100として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板100の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物が導入されてもよい。特に、半導体装置10がトップエミッション型のディスプレイである場合、基板100が透明である必要はないため、基板100の透明度を悪化させる不純物が用いられてもよい。表示装置ではない集積回路に半導体装置10が用いられる場合は、基板100としてシリコン基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板、又は、ステンレス基板などの導電性基板など、透光性を備えない基板が用いられる。
【0037】
ゲート電極105、ゲート電極160、及びソース・ドレイン電極200として、一般的な金属材料が用いられる。例えば、これらの部材として、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物が用いられる。ゲート電極105、ゲート電極160、及びソース・ドレイン電極200として、上記の材料が単層で用いられてもよく積層で用いられてもよい。ゲート電極105に導電性が不要である場合には、ゲート電極105の代わりに、遮光層として上記の金属材料以外の材料が用いられてもよい。例えば、当該遮光層として例えば黒色樹脂などのブラックマトリクスが用いられてもよい。ゲート電極105は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。例えば、ゲート電極105は、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、及び青色カラーフィルタの積層構造であってもよい。
【0038】
ゲート絶縁層110、120、及び絶縁層170、180として、一般的な絶縁性材料が用いられる。例えば、ゲート絶縁層120及び絶縁層180として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられる。ゲート絶縁層110及び絶縁層170として、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化酸化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。ただし、絶縁層170として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられてもよい。絶縁層180として、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化酸化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられてもよい。
【0039】
ゲート絶縁層150として、上記の絶縁層のうち酸素を含む絶縁層が用いられる。例えば、ゲート絶縁層150として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられる。
【0040】
ゲート絶縁層120として、熱処理によって酸素を放出する機能を備える絶縁層が用いられる。つまり、ゲート絶縁層120として、酸素を過剰に含む酸化物絶縁層が用いられる。ゲート絶縁層120が酸素を放出する熱処理の温度は、例えば、600℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。つまり、ゲート絶縁層120は、例えば、基板100としてガラス基板が用いられた場合における半導体装置10の製造工程で行われる熱処理温度で酸素を放出する。絶縁層170、180の少なくともいずれか一方に、ゲート絶縁層120と同様に、熱処理によって酸素を放出する機能を備える絶縁層が用いられてもよい。
【0041】
ゲート絶縁層150として、欠陥が少ない絶縁層が用いられる。例えば、ゲート絶縁層150における酸素の組成比と、ゲート絶縁層150と同様の組成の絶縁層(以下、「他の絶縁層」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、ゲート絶縁層150における酸素の組成比の方が当該他の絶縁層における酸素の組成比より当該絶縁層に対する化学量論比に近い。具体的には、ゲート絶縁層150及び絶縁層180の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、ゲート絶縁層150として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比は、絶縁層180として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比に比べて、酸化シリコンの化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層150として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0042】
上記のSiO及びAlOは、酸素(O)より少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiN及びAlNは、窒素より少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0043】
金属酸化物層130として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物層130として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層130」とは、金属酸化物層130に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層130に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0044】
酸化物半導体層140として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。例えば、酸化物半導体層140として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体を用いることができる。例えば、酸化物半導体層140として、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4の組成比を有する酸化物半導体を用いることができる。ただし、本実施形態で使用されるIn、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体は上記の組成に限定されず、上記とは異なる組成の酸化物半導体が用いられてもよい。例えば、移動度を向上させるためにInの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。一方、バンドギャップを大きくし、光照射による影響を小さくするためにGaの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。
【0045】
例えば、Inの比率が上記より大きい酸化物半導体層140として、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられてもよい。この場合、酸化物半導体層140において、全金属元素に対するインジウム元素の比率が原子比率で50%以上であってもよい。酸化物半導体層140として、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、ランタノイドが用いられてもよい。酸化物半導体層140として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0046】
酸化物半導体層140として、In、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体に他の元素が添加されていてもよく、例えばAl、Snなどの金属元素が添加されていてもよい。上記の酸化物半導体以外にもIn、Gaを含む酸化物半導体(IGO)、In、Znを含む酸化物半導体(IZO)、In、Sn、Znを含む酸化物半導体(ITZO)、及びIn、Wを含む酸化物半導体などが酸化物半導体層140として用いられてもよい。
【0047】
インジウム元素の比率が大きい場合、酸化物半導体層140が結晶化しやすい。上記のように、酸化物半導体層140において、全金属元素に対するインジウム元素の比率が50%以上である材料を用いることで、多結晶構造を有する酸化物半導体層140を得ることができる。インジウム以外の金属元素として、ガリウムを含むことが好ましい。ガリウムは、インジウムと同じ第13族元素に属する。そのため、酸化物半導体層140の結晶性がガリウムによって阻害されることなく、酸化物半導体層140は多結晶構造を有する。
【0048】
酸化物半導体層140の詳細な製造方法は後述するが、酸化物半導体層140は、スパッタリング法を用いて形成することができる。スパッタリング法によって形成される酸化物半導体層140の組成は、スパッタリングターゲットの組成に依存する。酸化物半導体層140が多結晶構造を有する場合であっても、スパッタリングターゲットの組成と酸化物半導体層140の組成とは略一致する。この場合、酸化物半導体層140の金属元素の組成は、スパッタリングターゲットの金属元素の組成に基づき特定することができる。
【0049】
酸化物半導体層140が多結晶構造を有する場合、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)法を用いて、酸化物半導体層の組成を特定してもよい。具体的には、XRD法によって取得された酸化物半導体層の結晶構造及び格子定数に基づき、酸化物半導体層の金属元素の組成を特定することができる。さらに、酸化物半導体層140の金属元素の組成は、蛍光X線分析又は電子プローブマイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)分析などを用いて特定することもできる。ただし、酸化物半導体層140に含まれる酸素元素は、スパッタリングのプロセス条件などにより変化するため、この限りではない。
【0050】
上述のように、酸化物半導体層140は、アモルファス構造を有していてもよく、多結晶構造を有していてもよい。多結晶構造を有する酸化物半導体は、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いて作製することができる。以下では、アモルファス構造を有する酸化物半導体と区別するとき、多結晶構造を有する酸化物半導体をPoly-OSとして説明する場合がある。
【0051】
[1-3.半導体装置10の電気特性]
図3図5を用いて、半導体装置10の電気特性について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性を示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性から計算されたしきい値電圧を示す図である。図5は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性から計算された移動度を示す図である。図3図5では、図1に示す半導体装置10において、ゲート絶縁層110、120、150の膜厚が異なる半導体装置10の電気特性が示されている。いずれの条件においても、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける各々の酸化物半導体層140の抵抗値が同程度になるように、酸化物半導体層140に注入される不純物の量が調整されている。
【0052】
上記半導体装置10において、ゲート絶縁層110としてシリコン窒化膜が用いられ、ゲート絶縁層120としてシリコン酸化膜が用いられ、ゲート絶縁層150としてシリコン酸化膜が用いられている。ゲート絶縁層110は「UC-SiN」と表記されている。ゲート絶縁層120は「SiO」と表記されている。ゲート絶縁層150は「GI-SiO」と表記されている。なお、金属酸化物層130として酸化アルミニウムが用いられている。
【0053】
ゲート絶縁層110、120の膜厚(UC-SiN\SiO膜厚)は、100nm\50nm、200nm\100nm、又は300nm\200nmである。各UC-SiN\SiO膜厚に対するゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO膜厚)は、75nm、100nm、125nm、又は150nmである。
【0054】
図3に示す電気特性の測定条件は以下の通りである。
・チャネル領域CHのサイズ:W/L=4.5μm/3.0μm
・ソース・ドレイン間電圧:0.1V、10V
・ゲート電圧:-15V~+15V
・測定環境:室温、暗室
・測定点数:26点
【0055】
図3の各グラフ中に示す実線の水平線は、ドレイン電流IDが10-7[A]であり、移動度が100[cm/Vs]である目盛りの位置に示されている。ドレイン電流IDは、目盛りごとに1桁電流値が変化する。移動度は、目盛りごとに20[cm/Vs]ずつ値が変化する。図3の各グラフ中に示す実線の鉛直線は、ゲート電圧が0[V]である目盛りの位置に示されている。ゲート電圧は、目盛りごとに5[V]ずつ値が変化する。図3の各グラフにおいて、左向きの矢印が付された電気特性は、半導体装置10のId-Vg特性を示す。各グラフにおけるId-Vg特性は、2種類表示されている。2種類のId-Vg特性のうち、相対的に電流が大きなId-Vg特性はソース・ドレイン間電圧が10Vの場合の特性であり、相対的に電流が小さなId-Vg特性はソース・ドレイン間電圧が0.1Vの場合の特性である。図3の各グラフにおいて、右向きの矢印が付された電気特性は、半導体装置10の移動度を示す。図3に示すように、ほとんどの条件において、特段異常がない良好な電気特性が得られており、移動度が50[cm/Vs]以上である。
【0056】
図4は、図3の電気特性から計算されたしきい値電圧の箱ひげ図である。図4では、それぞれ計算された値における最大値(ひげの上端)、最小値(ひげの下端)、データの中央50%の分布(箱の上端から下端まで)、平均値(×印)、及び中央値(上の箱と下の箱の境界)が示されている。図4に示すように、各UC-SiN\SiO膜厚において、ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が小さいほどしきい値電圧Vthはマイナス方向にシフトしている。ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が同じ条件で比較すると、UC-SiN\SiO膜厚が小さいほどしきい値電圧Vthはマイナス方向にシフトしている。
【0057】
図5は、図3の電気特性から計算された移動度の箱ひげ図である。図5に示すように、各UC-SiN\SiO膜厚において、ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が小さいほど移動度が大きい。ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が同じ条件で比較すると、UC-SiN\SiO膜厚が小さいほど僅かに移動度が小さい傾向があるが、大きく移動度が低下することなく、いずれの条件であっても良好な特性が得られている。
【0058】
[1-4.半導体装置10の信頼性]
図6図8を用いて、半導体装置10の信頼性について説明する。図6及び図7は、本発明の一実施形態に係る半導体装置のストレス試験前後の電気特性を示す図である。図8は、本発明の一実施形態に係る半導体装置のストレス試験前後の電気特性から計算されたしきい値電圧の変動を示す図である。図6図8では、図3図5に示した半導体装置10に対する信頼性試験の結果が示されている。
【0059】
図6では、Positive Bias Temperature Stress(PBTS)による信頼性試験の結果が示されている。図7では、Negative Bias Temperature Illumination Stress(NBTIS)による信頼性試験の結果が示されている。図8では、図6及び図7に示された半導体装置10の電気特性に基づいて計算された、信頼性試験結果が示されている。
【0060】
PBTS試験の条件は以下の通りである。
・チャネル領域CHのサイズ:W/L=4.5μm/3.0μm
・光照射条件:照射無し(暗室)
・ゲート電圧:+30V
・ソース及びドレイン電圧:0V
・ストレス印加時間:1000sec
・ストレス印加時のステージ温度:85℃
【0061】
NBTIS試験の条件は以下の通りである。
・チャネル領域CHのサイズ:W/L=4.5μm/3.0μm
・光照射条件:照射有り(7000lux)
・ゲート電圧:-20V
・ソース及びドレイン電圧:0V
・ストレス印加時間:1000sec
・ストレス印加時のステージ温度:85℃
【0062】
図8において、PBTS試験の結果が白の棒グラフで示されている。NBTIS試験の結果が黒の棒グラフで示されている。各試験前のしきい値電圧Vthが×印で示されている。
【0063】
図6及び図8に示すように、いずれの条件においても、PBTS試験の前後でしきい値電圧Vthがプラスシフトしている。ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が小さいほど、当該プラスシフトの量は小さい。ゲート絶縁層150の膜厚(GI-SiO)が同じ条件で比較すると、UC-SiN\SiO膜厚が小さいほど、上記プラスシフトの量は小さい。
【0064】
図7及び図8に示すように、いずれの条件においても、NBTIS試験の前後でしきい値電圧Vthがマイナスシフトしている。UC-SiN\SiO膜厚が300nm\200nmである条件では、当該マイナスシフトの量はGI-SiO膜厚に依存しない。一方、UC-SiN\SiO膜厚が200nm\100nmである条件では、GI-SiO膜厚が小さいほど当該マイナスシフト量は小さい。特に、GI-SiO膜厚が100nmである条件に比べて、当該膜厚が75nmである条件の場合、当該マイナスシフト量が大幅に低減する。さらに、UC-SiN\SiO膜厚が100nm\50nmである条件では、上記の条件に比べて当該マイナスシフト量が劇的に低減している。UC-SiN\SiO膜厚が100nm\50nmである条件の中でも、GI-SiO膜厚が小さいほど当該マイナスシフト量は小さい。
【0065】
本実施形態によると、シリコン及び窒素を含むゲート絶縁層110の厚さが10nm以上190nm以下であり、シリコン及び酸素を含むゲート絶縁層120の厚さが10nm以上100nm以下であり、ゲート絶縁層110、120の合計の厚さが200nm以下であり、アルミニウム及び酸素を含む金属酸化物層130の厚さが1nm以上10nm以下であることで、特にNBTIS試験において劇的な改善が確認された。
【0066】
NBTIS試験では、上記の通りゲート電極105、160に-20Vのゲート電圧が印加される。そのため、光照射によって酸化物半導体層140で生成されたホールはゲート電極105、160のいずれかに引き寄せられる。ここで、ゲート絶縁層110、120の膜厚が小さい場合、ゲート電極105によって生成される電界が酸化物半導体層140に及ぼす影響が相対的に強くなる。その結果、酸化物半導体層140で生成されたホールの多くがゲート電極105に引き寄せられると考えられる。従来のトランジスタでは、ホールがボトムゲート側のゲート絶縁層によってトラップされることによって、NBTIS試験におけるトランジスタ特性のしきい値電圧のマイナスシフトが起きていた。一方、本実施形態では、酸化物半導体層140の下方に金属酸化物層130が設けられていることで、酸化物半導体層140で発生したホールがゲート絶縁層120に到達しにくくなり、ゲート絶縁層120でトラップされるホールの量が低減したと考えられる。
【0067】
[1-5.半導体装置10の製造方法]
図9図17を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。図9は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。図10図17は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0068】
図9及び図10に示すように、基板100の上にゲート電極105が形成され、ゲート電極105の上にゲート絶縁層110、120が形成される(図9のステップS1001の「絶縁層/GE形成」)。ゲート絶縁層110として、例えば、窒化シリコンが形成される。ゲート絶縁層120として、例えば、酸化シリコンが形成される。ゲート絶縁層110及びゲート絶縁層120はCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって成膜される。
【0069】
ゲート絶縁層110として窒化シリコンが用いられることで、ゲート絶縁層110は、例えば基板100側から酸化物半導体層140に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。例えば、ゲート絶縁層120として用いられる酸化シリコンは、熱処理によって酸素を放出する物性の酸化シリコンである。
【0070】
図9及び図11に示すように、ゲート絶縁層120の上に金属酸化物層130及び酸化物半導体層140が形成される(図9のステップS1002の「OS/AlOx成膜」)。金属酸化物層130及び酸化物半導体層140は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0071】
酸化物半導体層140の厚さは、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は15nm以上40nm以下である。本実施形態では、酸化物半導体層140の厚さは15nmである。後述する熱処理(OSアニール)前の酸化物半導体層140はアモルファスである。
【0072】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体層140が結晶化される場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層140はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。つまり、酸化物半導体層140の成膜条件は、成膜直後の酸化物半導体層140ができるだけ結晶化しない条件であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体層140が成膜される場合、被成膜対象物(基板100及びその上に形成された構造物)の温度を制御しながら酸化物半導体層140が成膜される。
【0073】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体層140に微結晶が含まれ、その後のOSアニールによる結晶化が阻害される場合がある。上記のように被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。上記のように、被成膜対象物を冷却しながら酸化物半導体層140の成膜を行うことで、成膜直後の状態で結晶成分が少ない酸化物半導体層140を成膜することができる。酸化物半導体層140の成膜条件における酸素分圧は、2%以上20%以下、3%以上15%以下、又は3%以上10%以下である。
【0074】
図9及び図12に示すように、酸化物半導体層140のパターンを形成する(図9のステップS1003の「OSパターン形成」)。図示しないが、酸化物半導体層140の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層140をエッチングする。酸化物半導体層140のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングとして、酸性のエッチャントを用いてエッチングを行うことができる。エッチャントとして、例えば、シュウ酸、PAN、硫酸、過酸化水素水、又はフッ酸を用いることができる。ステップS1003における酸化物半導体層140はアモルファスであるため、ウェットエッチングにより酸化物半導体層140を容易に所定の形状にパターニングすることができる。
【0075】
酸化物半導体層140のパターン形成の後に酸化物半導体層140に対して熱処理(OSアニール)が行われる(図9のステップS1004の「OSアニール」)。OSアニールでは、酸化物半導体層140が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下、又は350℃以上450℃以下である。到達温度での保持時間は、15分以上120分以下、又は30分以上60分以下である。本実施形態では、このOSアニールによって、酸化物半導体層140が結晶化する。ただし、必ずしもOSアニールによって酸化物半導体層140が結晶化しなくてもよい。
【0076】
図9及び図13に示すように、ゲート絶縁層150を成膜する(図9のステップS1005の「GI形成」)。ゲート絶縁層150として、例えば、酸化シリコンが形成される。ゲート絶縁層150はCVD法によって形成される。例えば、ゲート絶縁層150として上記のように欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度でゲート絶縁層150を成膜してもよい。ゲート絶縁層150の厚さは、例えば、75nm以上150nm以下である。ゲート絶縁層150を成膜した後に、ゲート絶縁層150の上部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。酸素を打ち込む処理として、ゲート絶縁層150の上に金属酸化物層をスパッタリング法によって形成する構成を行ってもよい。
【0077】
酸化物半導体層140の上にゲート絶縁層150が成膜された状態で、酸化物半導体層140へ酸素を供給するための熱処理(酸化アニール)が行われる(図9のステップS1006の「酸化アニール」)。酸化物半導体層140が成膜されてから酸化物半導体層140の上にゲート絶縁層150が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層140の上面141及び側面143には多くの酸素欠損が発生する。上記の酸化アニールによって、ゲート絶縁層120、150から放出された酸素が酸化物半導体層140に供給され、酸素欠損が修復される。ゲート絶縁層150に酸素を打ち込む処理を行わない場合、ゲート絶縁層150の上に、熱処理によって酸素を放出する絶縁層を形成した状態で酸化アニールが行われてもよい。
【0078】
ゲート絶縁層150から酸化物半導体層140への酸素供給量を多くするために、ゲート絶縁層150の上に、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層がスパッタリング法によって形成され、その状態で酸化アニールが行われてもよい。この金属酸化物層として、ガスに対するバリア性が高い酸化アルミニウムが用いられることで、酸化アニール時にゲート絶縁層150に打ち込まれた酸素が外方拡散することを抑制することができる。上記の金属酸化物層の形成及び酸化アニールによって、ゲート絶縁層150に打ち込まれた酸素が効率良く酸化物半導体層140に供給される。
【0079】
図9及び図14に示すように、ゲート電極160を形成する(図9のステップS1007の「GE形成」)。ゲート電極160は、スパッタリング法又は原子層堆積法によって成膜され、フォトリソグラフィー工程を経てパターニングされる。ゲート電極160を形成するエッチングによって、ゲート電極160のパターンの外側に設けられたゲート絶縁層150が薄膜化されてもよい。
【0080】
図15に示すように、ゲート電極160がパターニングされた状態で、酸化物半導体層140に不純物のイオン注入が行われる(図9のステップS1008の「不純物イオン注入」)。具体的には、ゲート電極160をマスクとして、ゲート絶縁層120、酸化物半導体層140、及びゲート絶縁層150に不純物が注入される。イオン注入によって、例えば、ホウ素(B)、リン(P)、アルゴン(Ar)、又は窒素(N)などの元素がゲート絶縁層120、酸化物半導体層140、及びゲート絶縁層150に注入される。
【0081】
ゲート電極160と重畳しない第2領域A2における酸化物半導体層140では、イオン注入によって酸素欠陥が生成される。生成された酸素欠陥に水素がトラップされることにより、第2領域A2における酸化物半導体層140の抵抗が低下する。一方、ゲート電極160と重畳する第1領域A1における酸化物半導体層140では、不純物が注入されないため、酸素欠陥が生成されず、第1領域A1における抵抗は低下しない。上記の工程によって、第1領域A1における酸化物半導体層140にチャネル領域CHが形成され、第2領域A2における酸化物半導体層140にソース領域S及びドレイン領域Dが形成される。
【0082】
上記イオン注入によって、第2領域A2及び第3領域A3におけるゲート絶縁層120及びゲート絶縁層150にダングリングボンド欠陥DBが生成される。ダングリングボンド欠陥DBの位置及び量は、イオン注入のプロセスパラメータ(例えば、ドーズ量、加速電圧、プラズマ電力など)を調整することで制御することができる。プロセスパラメータを調整することで、ソース領域S及びドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140の抵抗を十分に下げるために、酸化物半導体層140の上面付近における不純物濃度を1×1019/cm以上に調整することができる。一方、ゲート絶縁層110としてシリコン及び窒素を含む絶縁層が用いられた場合、ゲート絶縁層110に不純物が高濃度で打ち込まれると、ゲート絶縁層110で発生した水素が酸化物半導体層140に到達し、半導体装置10の電気特性に悪影響を及ぼす。したがって、ゲート絶縁層110の上面付近における不純物濃度を1×1019/cm以下に調整することができる。
【0083】
図9及び図16に示すように、ゲート絶縁層150及びゲート電極160の上に層間膜として絶縁層170、180を成膜する(図9のステップS1009の「層間膜成膜」)。絶縁層170、180はCVD法によって成膜される。例えば、絶縁層170として窒化シリコン層が形成され、絶縁層180として酸化シリコン層が形成される。絶縁層170、180として用いられる材料は上記に限定されない。絶縁層170の厚さは、50nm以上500nm以下である。絶縁層180の厚さは、50nm以上500nm以下である。
【0084】
図9及び図17に示すように、ゲート絶縁層150及び絶縁層170、180に開口171、173を形成する(図9のステップS1010の「コンタクト開孔」)。開口171によってソース領域Sにおける酸化物半導体層140が露出されている。開口173によってドレイン領域Dにおける酸化物半導体層140が露出されている。開口171、173によって露出された酸化物半導体層140の上及び絶縁層180の上にソース・ドレイン電極200を形成することで(図9のステップS1011の「SD形成」)、図1に示す半導体装置10が完成する。
【0085】
[2.第2実施形態]
図18図22を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置を用いた表示装置について説明する。以下に示す実施形態では、上記の第1実施形態で説明した半導体装置10が液晶表示装置の回路に適用された構成について説明する。
【0086】
[2-1.表示装置20の概要]
図18は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。図18に示すように、表示装置20は、アレイ基板300、シール部310、対向基板320、フレキシブルプリント回路基板330(FPC330)、及びICチップ340を有する。アレイ基板300及び対向基板320はシール部310によって貼り合わせられている。シール部310に囲まれた液晶領域22には、複数の画素回路301がマトリクス状に配置されている。液晶領域22は、後述する液晶素子311と平面視において重なる領域である。
【0087】
シール部310が設けられたシール領域24は、液晶領域22の周囲の領域である。FPC330は端子領域26に設けられている。端子領域26はアレイ基板300が対向基板320から露出された領域であり、シール領域24の外側に設けられている。シール領域24の外側とは、シール部310が設けられた領域及びシール部310によって囲まれた領域の外側を意味する。ICチップ340はFPC330上に設けられている。ICチップ340は各画素回路301を駆動させるための信号を供給する。
【0088】
[2-2.表示装置20の回路構成]
図19は、本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。図19に示すように、画素回路301が配置された液晶領域22に対してD1方向(列方向)に隣接する位置にはソースドライバ回路302が設けられており、液晶領域22に対してD2方向(行方向)に隣接する位置にはゲートドライバ回路303が設けられている。ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303は、上記のシール領域24に設けられている。ただし、ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303が設けられる領域はシール領域24に限定されず、画素回路301が設けられた領域の外側であれば、どの領域でもよい。
【0089】
ソースドライバ回路302からソース配線304がD1方向に延びており、D1方向に配列された複数の画素回路301に接続されている。ゲートドライバ回路303からゲート配線305がD2方向に延びており、D2方向に配列された複数の画素回路301に接続されている。
【0090】
端子領域26には端子部306が設けられている。端子部306とソースドライバ回路302とは接続配線307で接続されている。同様に、端子部306とゲートドライバ回路303とは接続配線307で接続されている。FPC330が端子部306に接続されることで、FPC330が接続された外部機器と表示装置20とが接続され、外部機器からの信号によって表示装置20に設けられた各画素回路301が駆動する。
【0091】
第1実施形態に示す半導体装置10は、画素回路301、ソースドライバ回路302、及びゲートドライバ回路303に含まれるトランジスタとして用いられる。
【0092】
[2-3.表示装置20の画素回路301]
図20は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。図20に示すように、画素回路301は半導体装置10、保持容量350、及び液晶素子311などの素子を含む。半導体装置10はゲート電極160、ソース電極201、及びドレイン電極203を有する。ゲート電極160はゲート配線305に接続されている。ソース電極201はソース配線304に接続されている。ドレイン電極203は保持容量350及び液晶素子311に接続されている。本実施形態では、説明の便宜上、符号「201」で示された電極をソース電極といい、符号「203」で示された電極をドレイン電極というが、符号「201」で示された電極がドレイン電極として機能し、符号「203」で示された電極がソース電極として機能してもよい。
【0093】
[2-4.表示装置20の断面構造]
図21は、本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。図21に示すように、表示装置20は、半導体装置10が用いられた表示装置である。本実施形態では、半導体装置10が画素回路301に用いられた構成を例示するが、半導体装置10がソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303を含む周辺回路に用いられてもよい。以下の説明において、半導体装置10の構成は図1に示す半導体装置10と同様なので、説明を省略する。
【0094】
ソース電極201及びドレイン電極203の上に絶縁層360が設けられている。絶縁層360の上に、複数の画素に共通して設けられる共通電極370が設けられている。共通電極370の上に絶縁層380が設けられている。絶縁層360、380には開口381が設けられている。絶縁層380の上及び開口381の内部に画素電極390が設けられている。画素電極390はドレイン電極203に接続されている。
【0095】
図22は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素電極及び共通電極の平面図である。図22に示すように、共通電極370は、平面視で画素電極390と重なる重畳領域と、画素電極390と重ならない非重畳領域とを有する。画素電極390と共通電極370との間に電圧を供給すると、重畳領域の画素電極390から非重畳領域の共通電極370に向かって横電界が形成される。この横電界によって液晶素子311に含まれる液晶分子が動作することで、画素の階調が決定される。
【0096】
[3.第3実施形態]
図23及び図24を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置を用いた表示装置について説明する。本実施形態では、上記の第1実施形態で説明した半導体装置10が有機EL表示装置の回路に適用された構成について説明する。表示装置20の概要及び回路構成は図18及び図19に示すものと同様なので、説明を省略する。
【0097】
[3-1.表示装置20の画素回路301]
図23は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。図23に示すように、画素回路301は駆動トランジスタ11、選択トランジスタ12、保持容量210、及び発光素子DOなどの素子を含む。駆動トランジスタ11及び選択トランジスタ12は半導体装置10と同様の構成を備えている。選択トランジスタ12のソース電極は信号線211に接続され、選択トランジスタ12のゲート電極はゲート線212に接続されている。駆動トランジスタ11のソース電極はアノード電源線213に接続され、駆動トランジスタ11のドレイン電極は発光素子DOの一端に接続されている。駆動トランジスタ11のゲート電極は選択トランジスタ12のドレイン電極に接続されている。発光素子DOの他端はカソード電源線214に接続されている。保持容量210は駆動トランジスタ11のゲート電極及びドレイン電極に接続されている。信号線211には、発光素子DOの発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線212には、上記の階調信号を書き込む画素行を選択する信号が供給される。
【0098】
[3-2.表示装置20の断面構造]
図24は、本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。図24に示す表示装置20の構成は、図21に示す表示装置20と類似しているが、図24の表示装置20の絶縁層360よりも上方の構造が図21の表示装置20の絶縁層360よりも上方の構造と相違する。以下、図24の表示装置20の構成のうち、図21の表示装置20と同様の構成については説明を省略し、両者の相違点について説明する。
【0099】
図24に示すように、表示装置20は、絶縁層360の上方に画素電極390、発光層392、及び共通電極394(発光素子DO)を有する。画素電極390は絶縁層360の上及び開口381の内部に設けられている。画素電極390の上に絶縁層362が設けられている。絶縁層362には開口363が設けられている。開口363は発光領域に対応する。つまり、絶縁層362は画素を画定する。開口363によって露出した画素電極390の上に発光層392及び共通電極394が設けられている。画素電極390及び発光層392は、各画素に対して個別に設けられている。一方、共通電極394は、複数の画素に共通して設けられている。発光層392は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。
【0100】
第2実施形態及び第3実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置を液晶表示装置及び有機EL表示装置に適用した構成について例示したが、これらの表示装置以外の表示装置(例えば、有機EL表示装置以外の自発光型表示装置又は電子ペーパ型表示装置)に当該半導体装置を適用してもよい。また、中小型の表示装置から大型の表示装置まで、特に限定することなく上記半導体装置の適用が可能である。
【0101】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、又は工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0102】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0103】
10:半導体装置、 11:駆動トランジスタ、 12:選択トランジスタ、 20:表示装置、 22:液晶領域、 24:シール領域、 26:端子領域、 100:基板、 105、160:ゲート電極、 110、120、150:ゲート絶縁層、 130:金属酸化物層、 140:酸化物半導体層、 141:上面、 142:下面、 143:側面、 170、180:絶縁層、 171、173:開口、 200:ソース・ドレイン電極、 201:ソース電極、 203:ドレイン電極、 210:保持容量、 211:信号線、 212:ゲート線、 213:アノード電源線、 214:カソード電源線、 300:アレイ基板、 301:画素回路、 302:ソースドライバ回路、 303:ゲートドライバ回路、 304:ソース配線、 305:ゲート配線、 306:端子部、 307:接続配線、 310:シール部、 311:液晶素子、 320:対向基板、 330:フレキシブルプリント回路基板、 340:ICチップ、 350:保持容量、 360、362、380:絶縁層、 363、381:開口、 370、394:共通電極、 390:画素電極、 392:発光層、 A1:第1領域、 A2:第2領域、 A3:第3領域、 CH:チャネル領域、 D:ドレイン領域、 S:ソース領域、 DO:発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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図24