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特開2024-121401光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121401
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/00 20060101AFI20240830BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240830BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240830BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240830BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240830BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240830BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240830BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C09J175/00
C09J133/00
C09J11/06
C09J7/38
G02B5/30
B32B27/00 M
B32B27/30 A
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028487
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】福田 樹
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA66
2H149FD25
2H149FD30
2H291FA22
2H291FA30
2H291FA94
2H291FA95
2H291FC05
2H291FC07
2H291PA42
2H291PA44
4F100AG00
4F100AG00C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100CB05
4F100CB05A
4F100EJ67
4F100EJ67A
4F100GB41
4F100JL13
4F100JL13A
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC03
4J004CD08
4J004CE01
4J004DA03
4J004DA04
4J004DA05
4J004DB02
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF011
4J040DF061
4J040EF181
4J040EF282
4J040HD32
4J040JA09
4J040KA16
4J040KA30
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物の提供。
【解決手段】アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアネート系架橋剤と、シランカップリング剤と、を含み、(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.50~3.50である光学フィルム用粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、前記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
シランカップリング剤と、
を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体中の前記反応性官能基の合計モル数に対する前記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.50~3.50である光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、-50℃~-30℃である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率が、全構成単位に対して0.01質量%~5質量%である請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項5】
光学フィルムと、
前記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
【請求項6】
前記光学フィルムが、偏光板である請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
ガラス基板と、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
光学フィルムと、
をこの順に備える光学部材。
【請求項8】
請求項7に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般に、2枚の支持基板の間に液晶層が挟持された液晶セルと、偏光板、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとを備えている。液晶セルと光学フィルム、及び、光学フィルム同士を積層して液晶表示装置を製造する際には、これらの部材が粘着剤組成物により形成される粘着剤層を介して貼合される。液晶表示装置では、視認性を確保する観点から、(メタ)アクリル系の粘着剤組成物が多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(A)及びアクリル系共重合体(B)と、イソシアネート化合物(C)とを含む粘着剤組成物であって、上記イソシアネート化合物(C)は、上記アクリル系共重合体(A)と上記アクリル系共重合体(B)との混合物100重量部に対して5重量部以上30重量部以下添加され、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層の25℃での引張試験における破断時の伸度が300%以上1000%以下であり、200%モジュラスが0.2N/mm以上3N/mm以下である粘着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含む光学フィルム用粘着剤であって、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、(a1)(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位10質量%以上95質量%以下と;(a2)アルコキシアルキル基又はアルコキシポリアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位5質量%以上90質量%以下と;(a3)ラジカル重合性官能基を1個有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーである官能基含有モノマー由来の構成単位0質量%超20質量%以下と;(ただし、上記(a1)、(a2)及び(a3)由来の構成単位の合計量は100質量%)を含み、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の、ガラス転移温度が-55℃を超え-50℃以下であり、かつ、重量平均分子量が70万以上200万以下である光学フィルム用粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/024103号
【特許文献2】特開2020-90586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光板等の光学フィルムは、通常、収縮率の異なる複数の部材を積層して構成されているため、温度及び/又は湿度の変化によって寸法変化が生じやすい。このため、粘着剤層を介して光学フィルムを貼り合わせた被着体が高温環境下(例えば、高温低湿環境下及び高温高湿環境下)に置かれると、光学フィルムが収縮し、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じる、粘着剤層が被着体から剥がれる等の不具合が発生することがある。また、粘着剤層を介して光学フィルムを貼り合わせた被着体が高温環境下に置かれると、粘着剤層中の水分が揮発し、粘着剤層と、光学フィルム及び/又は被着体との界面で発泡が生じることがある。光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、高温環境下において生じ得る上記のような発泡、シワ及び剥がれを抑制できる粘着剤層(所謂、耐久性に優れる粘着剤層)を形成できることが求められる。
【0006】
ところで、偏光板を液晶セルに粘着剤層を用いて貼り合わせたユニットには、カバーガラス、バックライトユニット等の各種部材が、粘着剤層を用いて貼り合わされる。近年、パネルメーカーにおいて、歩留まりの改善を目的に、上記貼り合わせの際に、貼り位置のずれ等が起こった場合、剥離及び貼り直しが行われることがある。この場合の剥離作業は、各種部材に対する粘着剤層の粘着力を低下させるため、一般に、低温環境下にて行われる。しかし、偏光板と液晶セルとの間の粘着剤層の低温環境下での粘着力が低すぎると、目的とする部材の剥離ではなく、偏光板と液晶セルとの間で剥離が生じ得る。このため、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物には、低温環境下でも高い粘着力を有する粘着剤層を形成できることが求められる。
【0007】
粘着剤層の高温環境下における耐久性を向上させるためには、粘着剤層の凝集力を高めることが考えられる。しかし、粘着剤層の凝集力が高まると、粘着剤層が硬くなるため、背反として、粘着剤層の低温環境下における粘着性が低下する。このため、高温環境下における耐久性と低温環境下における粘着性とを高いレベルで両立する粘着剤層の形成を実現させることは、従来困難であった。
【0008】
上述の点に関し、特許文献1及び特許文献2には、高温環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性を両立する粘着剤層の形成についての着目はない。
【0009】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態によれば、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を備える粘着シート、光学部材、及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体と、
イソシアネート系架橋剤と、
シランカップリング剤と、
を含み、
上記(メタ)アクリル系共重合体中の上記反応性官能基の合計モル数に対する上記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.50~3.50である光学フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、-50℃~-30℃である<1>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率が、全構成単位に対して0.01質量%~5質量%である<1>又は<2>に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
<4> <1>~<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
<5> 光学フィルムと、
上記光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
<6> 上記光学フィルムが、偏光板である<5>に記載の粘着シート。
<7> ガラス基板と、
<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
光学フィルムと、
をこの順に備える光学部材。
<8> <7>に記載の光学部材を備える表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できる光学フィルム用粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を備える粘着シート、光学部材、及び表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の光学フィルム用粘着剤組成物、粘着シート、光学部材、及び表示装置について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0015】
本開示において、光学フィルム用粘着剤組成物中の各成分の量は、光学フィルム用粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、光学フィルム用粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である共重合体を意味する。
【0017】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の両方を包含する用語である。
【0018】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0019】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0020】
本開示において、「ポリマー」と「重合体」とは、同義である。
【0021】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
[光学フィルム用粘着剤組成物]
本開示の光学フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアネート系架橋剤と、シランカップリング剤と、を含み、上記(メタ)アクリル系共重合体中の上記反応性官能基の合計モル数に対する上記イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が、0.50~3.50である。
本開示の粘着剤組成物は、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0023】
本開示の粘着剤組成物において、反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)を含む(メタ)アクリル系共重合体は、イソシアネート系架橋剤との架橋反応により、密な三次元網目構造を形成する。一般に、密な三次元網目構造により形成された粘着剤層は、高い凝集力を有し、高温環境下における耐久性が優れる傾向にある。しかし、粘着剤層の凝集力が高まると、粘着剤層が硬くなるため、背反として、粘着剤層の被着体への濡れ性が低下し、その結果、粘着剤層の低温環境下における粘着性が低下する。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体がアルコキシアルキル基及び/又はアルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)を特定量含むため、形成される粘着剤層が被着体(例えば、光学ガラス)に対して高い親和性を示す。また、本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含み、シランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解によりシラノール基となり、ガラス表面の水酸基と反応することで、形成される粘着剤層の被着体(例えば、光学ガラス)に対して高い密着性を示す。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、被着体との親和性及び密着性が高いため、高い凝集力により被着体への濡れ性が低下しても、低温環境下で十分な粘着性を示すと推察される。
本開示の粘着剤組成物に含まれるイソシアネート系架橋剤は、環境中の水分と反応し、イソシアネート多量体を形成し得る。イソシアネート多量体が形成されると、粘着剤層の凝集力がさらに高まる傾向にある。本開示の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体は、アルコキシアルキル基及び/又はアルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)を含み、比較的親水性が高いため、環境中の水分を取り込みやすく、イソシアネート多量体が形成されやすい。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、十分に高い凝集力を有する。しかし、過度に高い凝集力は、粘着剤層の被着体への濡れ性を極度に低下させる。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が特定の範囲であるため、形成される粘着剤層が適度な硬さを有し、被着体への適度な濡れ性を示すと推測される。
以上のことから、本開示の粘着剤組成物によれば、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できると推測される。
【0024】
本開示では、「アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体」を「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。
【0025】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本開示の粘着剤組成物は、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)と、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)と、を含み、かつ、上記構成単位(A)の含有率が全構成単位に対して1質量%~15質量%である(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
<アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)を、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%~15質量%の割合で含む。
本開示において、「アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0027】
単量体(a)は、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体であってもよく、アルコキシアルキル基又はアルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体であってもよい。
例えば、入手容易性の観点からは、単量体(a)は、アルコキシアルキル基又はアルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体であることが好ましい。
【0028】
単量体(a)としては、例えば、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基と、を有する単量体が挙げられる。
【0029】
エチレン性不飽和基の種類は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0030】
アルコキシアルキル基のアルコキシ部位の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~8であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
アルコキシアルキル基のアルキル部位は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルコキシアルキル基のアルキル部位の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0031】
アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、メトキシブチル基及びエトキシブチル基が挙げられる。
【0032】
アルコキシポリアルキレングリコール基のアルコキシ部位の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~8であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
アルコキシポリアルキレングリコール基のアルキレン部位の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0033】
単量体(a)は、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する(メタ)アクリル系単量体であることが好ましく、下記の式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0034】
【化1】

【0035】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、アルコキシアルキル基又は-(A-O)-Xを表し、Aは、炭素数1~4のアルキレン基を表し、Xは、炭素数1~20のアルキル基を表し、nは、2~20の整数を表す。
【0036】
は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
は、アルコキシアルキル基又は-(A-O)-Xを表し、アルコキシアルキル基であることが好ましい。
で表されるアルコキシアルキル基は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、メトキシブチル基、又はエトキシブチル基であることが好ましく、メトキシエチル基であることがより好ましい。
【0037】
で表される-(A-O)-Xにおいて、Aは、炭素数1~4のアルキレン基を表す。Aで表されるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。炭素数1~4のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、i-ブチレン基及びs-ブチレン基が挙げられる。Aで表されるアルキレン基は、エチレン基であることが好ましい。
で表される-(A-O)-Xにおいて、Xは、炭素数1~20のアルキル基を表す。Xで表されるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。Xで表されるアルキル基の炭素数は、1~8であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。Xで表されるアルキル基としては、メチル基が特に好ましい。
で表される-(A-O)-Xにおいて、nは、2~20の整数を表し、2~18の整数であることが好ましく、2~15の整数であることがより好ましい。
【0038】
単量体(a)の具体例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート(2-エチルヘキシルオキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート)、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
単量体(a)としては、市販品を使用できる。
単量体(a)の市販品の例としては、大阪有機化学工業(株)製の「メトキシエチルアクリレート」、大阪有機化学工業(株)製のエトキシエトキシエチルアクリレートである「ビスコート#190」、大阪有機化学工業(株)製のメトキシポリエチレングリコールアクリレートである「MPE400A」、日油(株)製のメトキシポリエチレングリコールメタクリレートである「ブレンマー(登録商標) PME-400」、共栄社化学(株)製のメトキシトリエチレングリコールアクリレートである「ライトアクリレートMTG-A」、及び、共栄社化学(株)製のメトキシジプロピレングリコールアクリレートである「ライトアクリレートDPM-A」が挙げられる。
【0040】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%~15質量%である。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して1質量%以上であると、形成される粘着剤層の低温環境下における粘着性が優れる傾向にある。この理由としては、形成される粘着剤層の被着体(例えば、光学ガラス)との親和性が高まるためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して15質量%以下であると、形成される粘着剤層の高温低湿環境下における耐久性が優れる傾向にある。この理由としては、以下のことが考えられる。形成される粘着剤層と環境中の水分との親和性が過度に高くならないため、粘着剤層への水分の取り込みが抑制される。その結果、粘着剤層の凝集力の低下の要因となる架橋の加水分解による切断が抑制され、粘着剤層が高い凝集力を保持できるためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、14質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(A)の含有率は、ある態様では、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、3質量%~15質量%であってもよく、5質量%~15質量%であってもよく、8質量%~15質量%であってもよく、10質量%~15質量%であってもよい。
【0042】
<カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体(b)に由来する構成単位(B)を含む。
本開示において、「カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0043】
単量体(b)は、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基のうち、3種全てを有する単量体であってもよく、2種のみを有する単量体であってもよく、1種のみを有する単量体であってもよい。
例えば、入手容易性の観点からは、単量体(b)は、カルボキシ基、水酸基及びアミノ基のうち、1種のみを有する単量体であること、すなわち、カルボキシ基のみを有する単量体(「カルボキシ基を有する単量体」ともいう。)、水酸基のみを有する単量体(「水酸基を有する単量体」ともいう。)、及びアミノ基のみを有する単量体(「アミノ基を有する単量体」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体であることが好ましい。
【0044】
カルボキシ基、水酸基及びアミノ基は、いずれも反応性官能基である。
本開示において、「反応性官能基」とは、後述のイソシアネート系架橋剤と反応して架橋構造を形成し得る官能基を意味する。
本開示では、「カルボキシ基、水酸基及びアミノ基」を「反応性官能基」と総称する場合がある。
本開示における「アミノ基」には、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基が含まれる。
【0045】
単量体(b)としては、例えば、反応性官能基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
【0046】
エチレン性不飽和基の種類は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0047】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸誘導体(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0048】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0049】
アミノ基を有する単量体の具体例としては、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、アミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、2-ジメチルアミノエチルアクリレートがより好ましい。
【0050】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位(B)を2種類以上含む場合、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位(B)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位(B)とを組み合わせて含むことが好ましい。特定(メタ)アクリル系共重合体が、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)、並びに、構成単位(B)としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位及び水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含むと、高温低湿環境下における耐久性と低温環境下における粘着性とを高いレベルで両立する粘着剤層の形成をより実現しやすい傾向にある。
【0051】
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましく、0.5質量%~4質量%であることが更に好ましく、1質量%~3質量%であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(B)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して上記範囲内であると、形成される粘着剤層の被着体への密着性がより優れる傾向にある。
【0052】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)に由来する構成単位(C)>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)に由来する構成単位(C)を含むことが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)には、単量体(a)に該当する単量体、及び、単量体(b)に該当する単量体は、包含されないものとする。すなわち、単量体(a)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体にも該当する場合は、単量体(a)として分類する。また、単量体(b)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体にも該当する場合は、単量体(b)として分類する。
【0053】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)が有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)としては、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及びメチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)の態様としては、少なくともメチルアクリレートを含む態様が特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体が、アルコキシアルキル基及びアルコキシポリアルキレングリコール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体(a)に由来する構成単位(A)、並びに、構成単位(C)として少なくともメチルアクリレートに由来する構成単位を含むと、高温低湿環境下における耐久性と低温環境下における粘着性とを高いレベルで両立する粘着剤層の形成をより実現しやすい傾向にある。
【0055】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、構成単位(C)を含む場合、構成単位(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0056】
特定(メタ)アクリル系共重合体が構成単位(C)を含む場合、構成単位(C)の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~98.99質量%であることがより好ましく、60質量%~98.00質量%であることが更に好ましく、70質量%~97.50質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系共重合体における構成単位(C)の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、構成単位(C)が、特定(メタ)アクリル系共重合体の構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0057】
<その他の単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、単量体(a)、単量体(b)、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)のいずれにも該当しない単量体(所謂、その他の単量体)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本開示において、「その他の単量体に由来する構成単位」とは、その他の単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0058】
その他の単量体に由来する構成単位としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
【0059】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、白抜け抑制の観点から、その他の単量体に由来する構成単位として、芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートに由来する構成単位を含むことが更に好ましい。ここで、「白抜け」とは、例えば、液晶表示装置において光漏れが生じて白くなる現象を指す。
【0060】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、その他の単量体に由来する構成単位を含む場合、その他の単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0061】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の単量体に由来する構成単位を含む場合、その他の単量体に由来する構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0062】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、-70℃~-20℃であることが好ましく、-60℃~-40℃であることがより好ましく、-50℃~-30℃であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が-70℃以上であると、形成される粘着剤層が十分に高い凝集力を有する傾向にある。このため、高温低湿環境下における粘着剤層の耐久性がより向上し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が-20℃以下であると、形成される粘着剤層が低温環境下でも被着体に対して十分な濡れ性を示す傾向にある。このため、低温環境下における粘着剤層の粘着性がより向上し得る。
【0063】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K)をセルシウス温度(単位:℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0064】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0065】
本開示における「単独重合体としたときのガラス転移温度」には、公知資料に記載された値、又は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定された値を採用するものとする。いずれの値を採用するかは、具体的には、以下のとおりとする。
【0066】
以下に示す単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、それぞれ記載した値を採用する。
2-エチルヘキシルアクリレート:-70℃、2-エチルヘキシルメタクリレート:-10℃、n-ブチルアクリレート:-54℃、n-ブチルメタクリレート:20℃、t-ブチルアクリレート:43℃、t-ブチルメタクリレート:118℃、i-ブチルメタクリレート:53℃、メチルアクリレート:10℃、メチルメタクリレート:105℃、エチルアクリレート:-22℃、エチルメタクリレート:65℃、メタクリル酸:228℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート:-80℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート:-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:85℃、アクリル酸:106℃、n-オクチルアクリレート:-65℃、ステアリルアクリレート:30℃、ステアリルメタクリレート:38℃、ラウリルアクリレート:-3℃、ラウリルメタクリレート:-65℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート:18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート:-30℃、フェノキシエチルアクリレート:-22℃、メトキシエチルアクリレート:-50℃、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート:-60℃、2-ジメチルアミノエチルアクリレート:18℃。
【0067】
上記した単量体以外の単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、ポリマーハンドブック(第4版、Wiley-Interscience;以下、同じ。)に記載された値を採用し、ポリマーハンドブックに記載がない場合には、以下の測定方法により得られる単独重合体のガラス転移温度の値を採用する。
【0068】
-単独重合体のガラス転移温度の測定-
示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、窒素気流中、測定試料(即ち、単独重合体)10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度とする。
示差走査熱量測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(商品名:Discovery DSC 2500)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量測定装置は、これに限定されない。
【0069】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0070】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、60万以上~250万であることが好ましく、80万~250万であることがより好ましく、100万~250万であることが更に好ましく、120万~250万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が60万以上であると、形成される粘着剤層の高温低湿環境下における耐久性がより優れる傾向にある。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が250万以下であると、製造しやすい傾向にある。
【0071】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を求める。
【0072】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8420 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8420に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を2本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0073】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0074】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、80.0質量%~97.9質量%であることが好ましく、82.0質量%~97.9質量%であることがより好ましく、84.0質量%~97.9質量%であることが更に好ましい。
【0075】
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0076】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0077】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0078】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0079】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0080】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0081】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0082】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0083】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0084】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0085】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0086】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0087】
〔イソシアネート系架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を含む。
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート系化合物)を指す。
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート系化合物、脂環式ポリイソシアネート系化合物、及び芳香族ポリイソシアネート系化合物が挙げられる。
【0088】
「脂肪族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物の多量体、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物〔例えば、トリメチロールプロパン(TMP);以下、同じ。〕とのアダクト体、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
【0089】
「脂環式ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、脂環式ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体、脂環式ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び脂環式ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0090】
「芳香族ポリイソシアネート系化合物」には、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物の多量体、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリオール系化合物とのアダクト体、及び芳香族ポリイソシアネート化合物のビウレット体が包含される。
芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0091】
ポリイソシアネート系化合物としては、芳香族ポリイソシアネート系化合物が好ましく、トリレンジイソシアネート系化合物及びキシリレンジイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
「トリレンジイソシアネート系化合物」には、例えば、TDI、TDIの多量体、TDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びTDIのビウレット体が包含される。
トリレンジイソシアネート系化合物としては、TDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
「キシリレンジイソシアネート系化合物」には、例えば、XDI、XDIの多量体、XDIとポリオール系化合物とのアダクト体、及びXDIのビウレット体が包含される。
キシリレンジイソシアネート系化合物としては、XDIとTMPとのアダクト体が好ましい。
【0092】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) D201」、「デュラネート(登録商標) E405-70B」、「デュラネート(登録商標) E405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-101E」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) D-140N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0093】
本開示の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0094】
本開示の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が0.50~3.50であれば、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、2質量部~18質量部であることが好ましく、3質量部~15質量部であることがより好ましく、3質量部~10質量部であることが更に好ましく、3質量部~5質量部であることが特に好ましい。
【0095】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比>>
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比〔即ち、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数〕は、0.50~3.50である。
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が0.50以上であると、形成される粘着剤層の高温低湿環境下における耐久性が優れる傾向にある。この理由としては、形成される粘着剤層の凝集力が十分に高くなるため、シワ及び発泡が生じ難いと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比は、0.53以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.57以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が3.50以下であると、形成される粘着剤層の高温低湿環境下における耐久性が優れる傾向にある。この理由としては、形成される粘着剤層が過度に硬くならないため、シワが生じ難いと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比が3.50以下であると、形成される粘着剤層の低温環境下における粘着性が優れる傾向にある。この理由としては、形成される粘着剤層が、過度に硬くならず、適度な柔らかさを有することで、被着体に対して十分な濡れ性を示すためと考えられる。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比は、3.00以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましく、2.00以下であることが更に好ましく、1.50以下であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比は、ある態様では、0.50~2.50であってもよく、0.50~2.00であってもよく、0.50~1.50であってもよく、0.50~1.00であってもよい。
【0096】
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比は、以下の計算式(1)~(3)により求められる。なお、特定(メタ)アクリル系共重合体を形成する反応性官能基を有する単量体が複数種ある場合には、それぞれの単量体について計算した後、得られた数値を合計する。
【0097】
イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数〔単位:mmol〕
=[イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート系架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×イソシアネート系架橋剤の配合量〔固形分としての量〕(単位:g)]/イソシアネート基の分子量(単位:g/mol)×1000・・・(1)
【0098】
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数〔単位:mmol〕
=[特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系共重合体の配合量(単位:g)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000]+[特定(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系共重合体の配合量(単位:g)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000]+[特定(メタ)アクリル系共重合体中のアミノ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系共重合体の配合量(単位:g)/アミノ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×アミノ基を有する単量体に由来する構成単位中のアミノ基の個数(価数)×1000]・・・(2)
【0099】
特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比
=計算式(1)により求めた値/計算式(2)により求めた値・・・(3)
【0100】
〔シランカップリング剤〕
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む。
本開示の粘着剤組成物において、シランカップリング剤は、形成される粘着剤層の、高温低湿環境下における耐久性の向上及び低温環境下における粘着性の向上のいずれにも寄与し得る。この理由としては、シランカップリング剤のアルコキシ基が、加水分解によりシラノール基となり、ガラス表面の水酸基と反応することで、粘着剤層のガラスに対する密着性が高まるためと考えられる。
【0101】
シランカップリング剤の種類は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン系化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。また、シランカップリング剤としては、例えば、重合性不飽和基、チオール基、エポキシ基、アミノ基等の反応性官能基を複数有するシラン化合物(所謂、多官能基型シラン化合物)が挙げられる。
【0102】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、信越化学工業(株)製の「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1805」、「X-41-1818」、「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「KBE-9007N」、「X-41-1053」、「X-41-1056」、「KBM-903」、「KBM-9659」、及び「KBM-573」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0103】
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0104】
本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部~1質量部であることが好ましく、0.1質量部~0.8質量部であることがより好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0105】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性及びポットライフが向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0106】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0107】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0108】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤及び金属キレート系架橋剤)、架橋触媒、酸化防止剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0109】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0110】
<<粘着剤組成物の用途>>
本開示の粘着剤組成物は、光学フィルムに用いられる粘着剤組成物(即ち、光学フィルム用粘着剤組成物)である。本開示の粘着剤組成物は、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性に優れる粘着剤層を形成できるため、光学フィルム用途に好適であり、光学フィルムの中でも偏光板に用いられる粘着剤組成物(即ち、偏光板用粘着剤組成物)として特に好適である。
本開示の粘着剤組成物の具体的な用途としては、例えば、偏光板と液晶セルのガラス基板とを貼り合わせる用途が挙げられる。
【0111】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、本開示の粘着剤組成物の硬化物を含む。硬化物には、例えば、イソシアネート系架橋剤によって架橋硬化してなる特定(メタ)アクリル系共重合体の架橋物が含まれる。
本開示の粘着シートは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温低湿環境下において、光学フィルムの収縮に起因する不具合、詳細には、粘着剤層及び光学フィルムのシワ、粘着剤層の被着体からの剥がれ等が生じ難い。また、本開示の粘着シートは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温低湿環境下において、粘着剤層と、光学フィルム及び/又は被着体との界面で発泡が生じ難い。また、本開示の粘着シートは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、例えば、低温環境下での各種部材(例:カバーガラス及びバックライトユニット)の貼り直しのための剥離作業の際に、光学フィルムとガラス基板との間での剥離を生じさせることなく、目的とする部材を剥離できる。
本開示の粘着シートの被着体としては、例えば、液晶セルのガラス基板(所謂、光学ガラス)が挙げられる。
【0112】
本開示の粘着シートが備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~30μmであることがより好ましい。
【0113】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
粘着剤層の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。
【0114】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートが、基材を有しない無基材タイプの粘着シートである場合、又は、基材の片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートである場合、本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離シートによって保護されていてもよい。
一般に、剥離シートは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0115】
剥離シートは、粘着剤層から容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。
剥離シートとしては、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルム、紙、合成紙、及びこれらの2種以上を積層した複合シートが挙げられる。
本開示では、樹脂フィルムの片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された態様の剥離シートを「剥離フィルム」ともいう。
剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系剥離処理剤(例:シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例:パラフィンワックス)、及びフッ素系剥離処理剤(例:フッ素系樹脂)が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙及びコート紙が挙げられる。
剥離シートの膜厚は、特に限定されず、一般には20μm~180μmである。
【0116】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、その上に粘着剤層を形成できるものであれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0117】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0118】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0119】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、光学フィルムであることが好ましい。この場合、本開示の粘着シートの態様としては、光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも片面に設けられ、かつ、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える態様が好ましい。
【0120】
光学フィルムの種類は、特に限定されない。
光学フィルムの具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板(例えば、1/2波長板及び1/4波長板)、上記波長板を含む位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板、透明導電性フィルムなどが挙げられる。
【0121】
光学フィルムとしては、偏光板(所謂、偏光フィルム)が好ましい。
偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されるものであり、偏光子単体であってもよく、偏光子と保護フィルムとを積層したものであってもよい。すなわち、偏光板は、偏光子単独の1層構造であってもよく、偏光子の片面に保護フィルムを有する2層構造であってもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有する3層構造であってもよい。
【0122】
本開示の粘着シートが基材を備え、かつ、基材が偏光板である場合の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光板[保護フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/偏光子/保護フィルム]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム/保護フィルム/偏光子/保護フィルム]等の態様が挙げられる。
【0123】
保護フィルムには、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂を含むフィルムが用いられる。
偏光子には、例えば、ヨウ素を含浸させたポリビニルアルコール(PVA)の延伸フィルムが用いられる。
位相差フィルムには、例えば、ポリシクロオレフィン(COP)等の樹脂を含むフィルムが用いられる。
【0124】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には、10μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。
【0125】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
基材の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を基材の平均厚さとする。
【0126】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に限定されない。
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0127】
本開示の粘着シートが無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0128】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0129】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離シートの積層構造を有する本開示の粘着シートを作製できる。
【0130】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0131】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風循環式乾燥機を用いて、60℃~130℃の空気を風速3m/秒~5m/秒で30秒間~300秒間吹き付けて乾燥させる条件が挙げられる。
【0132】
養生の方法としては、例えば、雰囲気温度20℃~35℃及び相対湿度45%~65%の環境下に2日間~7日間静置する方法が挙げられる。
【0133】
[光学部材]
本開示の光学部材は、ガラス基板と、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、光学フィルムと、をこの順に備える。
本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温低湿環境下において、光学フィルムの収縮に起因する不具合、詳細には、粘着剤層及び光学フィルムのシワ、粘着剤層のガラス基板からの剥がれ等が生じ難い。また、本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温低湿環境下において、粘着剤層と、光学フィルム及び/又はガラス基板との界面で発泡が生じ難い。また、本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、例えば、低温環境下での各種部材(例:カバーガラス及びバックライトユニット)の貼り直しのための剥離作業の際に、光学フィルムとガラス基板との間での剥離を生じさせることなく、目的とする部材を剥離できる。
【0134】
ガラス基板の厚さは、特に限定されず、一般には、0.3mm~0.7mmであり、0.3mm~0.5mmであることが好ましい。
【0135】
ガラス基板としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、及びITO(Indium Tin Oxide)膜付ガラスが挙げられる。
【0136】
本開示の光学部材における粘着剤層及び光学フィルムは、本開示の粘着シートにおける粘着剤層及び光学フィルムと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0137】
本開示の光学部材は、例えば、表示装置の部材として、好適に使用できる。
表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ及び有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイが挙げられる。
【0138】
本開示の光学部材の製造方法は、特に限定されない。
本開示の光学部材は、例えば、基材として光学フィルムを用い、既述の方法により、本開示の粘着シートを作製した後、粘着シートの粘着剤層と、ガラス基板と、を貼り合わせることにより製造できる。
【0139】
[表示装置]
本開示の表示装置は、既述の本開示の光学部材を備える。
本開示の表示装置は、本開示の光学部材を備えるため、高温低湿環境下に置かれた場合でも、粘着剤層と、光学フィルム及び/又はガラス基板との界面で発泡が生じ難く、粘着剤層とガラス基板との間で剥がれが生じ難く、粘着剤層及び/又は光学フィルムにシワが生じ難い。
【0140】
表示装置の具体例は、既述のとおりである。
【実施例0141】
以下、本開示の粘着剤組成物を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA〕79.45質量部、メチルアクリレート〔MA〕4.0質量部、メトキシエチルアクリレート〔2MEA〕15.0質量部、アクリル酸〔AA〕1.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA〕0.05質量部、及び酢酸エチル〔有機溶剤〕40.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.001質量部と、酢酸エチル120.0質量部と、を逐次添加した。添加終了後に6時間保持して重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、酢酸エチルを用いて固形分濃度14.5質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0143】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-13の各溶液についても同様である。
【0144】
〔製造例A-2~A-13〕
製造例A-2~A-13では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整して(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が14.5質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-13の各溶液を得た。
【0145】
(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成〔単位:質量%〕、(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数〔単位:mmol〕、ガラス転移温度(「Tg」と表記)〔単位:℃〕、及び重量平均分子量(「Mw」と表記)を表1に示す。
【0146】
表1に記載の(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数の求め方と同様の方法により求めた。
表1に記載の(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度の求め方と同様の方法により求めた。
表1に記載の(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0147】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-10は、本開示における特定(メタ)アクリル系共重合体に該当する。
【0148】
【表1】
【0149】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<単量体(a)>
-アルコキシアルキル基を有する単量体-
「2MEA」:メトキシエチルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製〕
-アルコキシポリアルキレングリコール基を有する単量体-
「PME-400」:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート〔商品名:ブレンマー(登録商標) PME-400、日油(株)製〕
「メトキシエチルアクリレート」及び「メトキシポリエチレングリコールメタクリレート」は、いずれも式(1)で表される化合物である。
【0150】
<単量体(b)>
-カルボキシ基を有する単量体-
「AA」:アクリル酸
-水酸基を有する単量体-
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
-アミノ基を有する単量体-
「DMAEA」:2-ジメチルアミノエチルアクリレート
【0151】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
「t-BA」:t-ブチルアクリレート
<その他の単量体>
「PHEA」:フェノキシエチルアクリレート
【0152】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
表1では、便宜上、単量体(a)に該当する成分を「(a)」、単量体(b)に該当する成分を「(b)」、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(c)に該当する成分を「(c)」、及び、その他の単量体に該当する成分を「その他」に分類して表記した。
【0153】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液100.0質量部(固形分として100質量部)と、イソシアネート系架橋剤としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):7.9質量%、東ソー(株)製〕0.97質量部(固形分として3質量部)と、シランカップリング剤としてX-41-1810〔商品名、チオール基含有シラン系化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕0.04質量部(固形分として0.3質量部)と、適量の酢酸エチル〔有機溶剤〕と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0154】
〔実施例2~16〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~16の各粘着剤組成物を得た。
【0155】
〔比較例1~8〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~8の各粘着剤組成物を得た。
【0156】
実施例1~16及び比較例1~8の粘着剤組成物の組成、(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数、及び(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比〔イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数〕を表2及び表3に示す。
【0157】
表2及び表3に記載の(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数、及び(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比〔イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/(メタ)アクリル系共重合体中の反応性官能基の合計モル数〕は、いずれも既述の求め方と同様の方法により求めた。
実施例1を例として、具体的な求め方を以下に示す。なお、イソシアネート系架橋剤であるコロネート(登録商標) L-45Eは、固形分濃度が45質量%であり、イソシアネート基の含有率が7.9質量%である。また、イソシアネート基の分子量は、42である。また、反応性官能基であるカルボキシ基を有する単量体であるアクリル酸の分子量は72であり、反応性官能基である水酸基を有する単量体である2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構成単位の分子量は116である。
【0158】
計算式(1)
イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数〔単位:mmol〕
=[イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基の含有率(単位:質量%)/イソシアネート系架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×イソシアネート系架橋剤の配合量〔固形分としての量〕(単位:g)]/イソシアネート基の分子量(単位:g/mol)×1000
=7.9(質量%)/45(質量%)×3(g)/42(g/mol)×1000
=12.53・・・≒12.5
【0159】
計算式(2)
(メタ)アクリル系共重合体A-1中の反応性官能基の合計モル数〔単位:mmol〕
=[特定(メタ)アクリル系共重合体A-1中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系共重合体A-1の配合量(単位:g)/カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)×1000]+[特定(メタ)アクリル系共重合体A-1中の水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系共重合体A-1の配合量(単位:g)/水酸基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×水酸基を有する単量体に由来する構成単位中の水酸基の個数(価数)×1000]
=[1.5(質量%)/100×100(g)/72(g/mol)×1×1000]+[0.05(質量%)/100×100(g)/116(g/mol)×1×1000]
=21.26・・・≒21.3
【0160】
計算式(3)
(メタ)アクリル系共重合体A-1中の反応性官能基の合計モル数に対するイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数の比〔即ち、イソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基のモル数/(メタ)アクリル系共重合体A-1中の反応性官能基の合計モル数〕
=計算式(1)で求めた値/計算式(2)で求めた値
=12.5/21.3
=0.586・・・≒0.59
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
表2及び表3に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<イソシアネート系架橋剤>
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):7.9質量%、東ソー(株)製〕
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、イソシアネート基の含有率(カタログ値):11.5質量%、三井化学(株)製〕
上記「コロネート」及び「タケネート」は、いずれも登録商標である。
<シランカップリング剤>
「X-41-1810」〔商品名、チオール基含有シラン系化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)製〕
【0164】
表2及び表3中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
表2及び表3中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
【0165】
[粘着剤層付き偏光板の作製]
シリコーン系剥離処理剤で表面処理(所謂、易剥離処理)された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の易剥離処理面に、上記にて調製した粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが15μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けることにより、塗布膜を乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ15μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の構成を有する偏光板(厚さ:75μm)の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた。次いで、貼り合わせにより得られた積層体を雰囲気温度32℃及び65%RHの環境下に4日間(所謂、養生期間)静置し、粘着膜を養生させた。以上のようにして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0166】
[評価]
1.高温低湿環境下における耐久性
(1)耐久性評価用サンプルの作製
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、60mm(短辺)×136mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、試験片とガラス板とを貼り合わせた。
以上のようにして、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する耐久性評価用サンプルを作製した。
【0167】
(2)耐久性評価試験
上記にて作製した耐久性評価用サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この24時間静置した後の耐久性評価用サンプルを、雰囲気温度85℃及び10%RH以下の環境下(所謂、高温低湿環境下)に150時間静置した。この150時間静置した後の耐久性評価用サンプルの状態を目視により観察し、下記の評価基準に従って、評価を行った。評価結果を表4及び表5に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0168】
-評価基準-
A:耐久性評価用サンプルに発泡、シワ及び剥がれが全く確認されなかった。
B:耐久性評価用サンプルに発泡、シワ及び剥がれのうちの少なくとも1つ以上が僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:耐久性評価用サンプルに発泡、シワ及び剥がれのうちの少なくとも1つ以上が確認されたが、実用上許容されるレベルであった。
D:耐久性評価用サンプルに発泡、シワ及び剥がれのうちの少なくとも1つ以上が顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0169】
2.低温環境下における粘着性
(1)粘着性評価用サンプルの作製
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を切断し、25mm(短辺)×75mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、試験片とガラス板とを貼り合わせた。以上のようにして、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の構成を有する粘着性評価用サンプルを作製した。
【0170】
(2)粘着性評価試験
上記にて作製した粘着性評価用サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の粘着性評価用サンプルについて、ガラス板から試験片〔構成:粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)〕を長辺(75mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)島津製作所製の卓上型精密万能試験機(型番:AGS-X)を用い、雰囲気温度-20℃の環境下、剥離速度0.1m/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。測定値及び評価結果を表4及び表5に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0171】
-評価基準-
A:粘着力が7.0N/25mm以上であった。
B:粘着力が5.0N/25mm以上7.0N/25mm未満であった。
C:粘着力が3.5N/25mm以上5.0N/25mm未満であった。
D:粘着力が3.5N/25mm未満であった。
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
表4に示す結果から、実施例1~16の粘着剤組成物によれば、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性のいずれにも優れる粘着剤層を形成できることが明らかとなった。
一方、表5に示すように、比較例1~8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温低湿環境下における耐久性及び低温環境下における粘着性の少なくとも一方が、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と比較して劣ることが確認された。