(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121408
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/16 20060101AFI20240830BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240830BHJP
H01Q 5/378 20150101ALI20240830BHJP
【FI】
H01Q9/16
H01Q1/38
H01Q5/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028499
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】浅川 晃次
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB07
(57)【要約】
【課題】従来技術に比較して広帯域の帯域幅を得ることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】互いに直列に接続される少なくとも1個の直列枝共振回路をそれぞれ有する一対の周期構造回路を、一対の周期構造回路の各一端を接続する所定の原点の接続点から所定の角度θで、V字形状で配置して構成された0次共振器を用いて構成されたモノポールアンテナであって、一対の周期構造回路の各他端に接続された一対の容量性反射素子と、接続点に接続された誘導性反射素子とを備えるモノポールアンテナを一対備えるアンテナ装置において、一対のモノポールアンテナを互いに、アンテナ装置の装置中心を中心として回転対称で配置し、もしくは、装置中心を含み周期構造回路に対して垂直な平面を対称面として平面対称で配置することでダイポールアンテナを構成し、アンテナ装置は、一対の周期構造回路に対して、電磁的に結合するように配置された無給電素子を備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続される少なくとも1個の直列枝共振回路をそれぞれ有する一対の周期構造回路を、前記一対の周期構造回路の各一端を接続する所定の原点の接続点から所定の角度θで、V字形状で配置して構成された0次共振器を用いて構成されたモノポールアンテナであって、前記一対の周期構造回路の各他端に接続された一対の容量性反射素子と、前記接続点に接続された誘導性反射素子とを備えるモノポールアンテナを一対備えるアンテナ装置において、
前記一対のモノポールアンテナを、互いに所定の間隔をおいて配置し、かつ前記間隔の領域の中央部に位置する前記アンテナ装置の装置中心を中心として回転対称で配置し、もしくは、前記装置中心を含む平面であって前記周期構造回路に対して垂直な平面を対称面として平面対称で配置することでダイポールアンテナを構成し、
前記アンテナ装置は、前記一対の周期構造回路に対して、電磁的に結合するように配置された無給電素子をさらに備える、アンテナ装置。
【請求項2】
前記無給電素子は、前記アンテナ装置の電圧定在波比(VSWR)が所定の値以下となる帯域幅が広くなるように配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記無給電素子は、複数の素子に分割される、もしくは分割されない、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記無給電素子の複数の素子の少なくとも一部は、互いに電磁的に結合するように配置される、
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記無給電素子の複数の素子の少なくとも一部は、前記一対の周期構造回路に対して、前記無給電素子の他の素子を介して間接的に電磁的に結合するように配置される、
請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記一対の周期構造回路、前記一対の容量性反射素子及び前記誘導性反射素子により0次共振モードで動作し、
前記一対の周期構造回路により1/2波長共振モードで動作することを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記各直列枝共振回路は、LC共振回路である請求項1~5のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記一対の容量性反射素子は互いに容量結合される請求項1~5のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アンテナ装置は、前記誘導性反射素子を介して前記接続点に給電される請求項1~5のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば0次共振器を用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、右手/左手系複合伝送線路からなる0次共振器を用いたマイクロ波回路、及びアンテナ装置に関する研究が行われている(例えば、非特許文献1及び2参照)。0次共振器は、動作周波数が共振器のサイズに依存せず、当該共振器内で電磁界分布が一様となる特徴があり、アンテナの小型化、あるいは逆に大型化も可能であると言われている。しかし、0次共振器を用いたアンテナ装置は、非特許文献1及び2において開示されているように、狭帯域でしか動作しない問題点があった。
【0003】
例えば特許文献1は、従来技術に比較して高い効率で動作し、鋭いビーム幅を可能とする非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いたアンテナ装置を開示している。しかし、伝送線路装置を用いているために、長細くなり、大型になるという問題点があった。
【0004】
この問題点を解決し、0次共振器を用いたアンテナ装置において、従来技術に比較して広帯域で動作しかつ小型化できるアンテナ装置が、特許文献2において開示されている。このアンテナ装置は、互いに直列に接続される少なくとも1個の直列枝共振回路をそれぞれ有する一対の周期構造回路を、前記一対の周期構造回路の各一端を接続する所定の原点の接続点から所定の角度θで、V字形状で配置して構成された0次共振器を用いたアンテナ装置であって、前記一対の周期構造回路の各他端に接続された一対の容量性反射素子と、前記接続点に接続された誘導性反射素子とを備えたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6650293号公報
【特許文献2】特許第7170319号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A. Sanada, C. Caloz and T. Itoh, "Zeroth-order resonance in composite right/left-handed transmission line resonators," Asia-Pacific Microwave Conference, Vol. 3, Seoul, Korea, November 2003, pp. 1588-1592.
【非特許文献2】T. Ueda, G. Haida and T. Itoh, "Zeroth-Order Resonators with Variable Reactance Loads at Both Ends," IEEE Transmission on Microwave Theory and Techniques, Vol. 59, No. 3, March 2011, pp. 612-618.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2において開示されたアンテナ装置は、基板裏面の接地導体(接地板)を小型化すると、帯域幅が狭くなり、広帯域の帯域幅を得ることができないという問題点があった。
【0008】
本開示の目的は、従来技術に比較して小型で広帯域の帯域幅を得ることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、
互いに直列に接続される少なくとも1個の直列枝共振回路をそれぞれ有する一対の周期構造回路を、前記一対の周期構造回路の各一端を接続する所定の原点の接続点から所定の角度θで、V字形状で配置して構成された0次共振器を用いて構成されたモノポールアンテナであって、前記一対の周期構造回路の各他端に接続された一対の容量性反射素子と、前記接続点に接続された誘導性反射素子とを備えるモノポールアンテナを一対備えるアンテナ装置において、
前記一対のモノポールアンテナを、互いに所定の間隔をおいて配置し、かつ前記間隔の領域の中央部に位置する前記アンテナ装置の装置中心を中心として回転対称で配置し、もしくは、前記装置中心を含む平面であって前記周期構造回路に対して垂直な平面を対称面として平面対称で配置することでダイポールアンテナを構成し、
前記アンテナ装置は、前記一対の周期構造回路に対して、電磁的に結合するように配置された無給電素子をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
従って、本発明に係るアンテナ装置によれば、従来技術に比較して広帯域の帯域幅を得ることができるアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例に係る左手系/右手系複合伝送線路を用いた0次共振器の等価回路図である。
【
図2】比較例に係るアンテナ装置で用いる0次共振器の等価回路図である。
【
図3A】比較例に係る0次共振器を用いたアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図4A】実施形態1に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図4B】実施形態1~3及び変形例1~12において用いる直交座標系及び極座標系を示す斜視図である。
【
図5】比較例に係るアンテナ装置の電圧定在波比(VSWR(Voltage Standing Wave Ratio))の周波数特性を示すグラフである。
【
図6】実施形態2に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図7】
図3Aのアンテナ装置から実施形態2に係る
図6のアンテナ装置を構成したことを説明するための模式平面図である。
【
図8A】実施形態1及び2に係るアンテナ装置の3800MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図8B】実施形態1及び2に係るアンテナ装置の3838MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図9】比較例、実施形態1及び2に係るアンテナ装置の反射周波数特性を示すグラフである。
【
図10】比較例、実施形態1及び2に係るアンテナ装置のVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【
図11】実施形態1に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図12】実施形態1に係るアンテナ装置の入力インピーダンスZinの周波数特性を示すグラフである。
【
図13A】実施形態1に係るアンテナ装置の3604MHzのE面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図13B】実施形態1に係るアンテナ装置の3604MHzのH面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図14A】実施形態1に係るアンテナ装置の3750MHzのE面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図14B】実施形態1に係るアンテナ装置の3750MHzのH面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図15A】実施形態1に係るアンテナ装置の5000MHzのE面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図15B】実施形態1に係るアンテナ装置の5000MHzのH面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図16A】実施形態1に係るアンテナ装置の7100MHzのE面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図16B】実施形態1に係るアンテナ装置の7100MHzのH面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図17A】実施形態1に係るアンテナ装置の8279MHzのE面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図17B】実施形態1に係るアンテナ装置の8279MHzのH面の放射パターン特性を示すグラフである。
【
図18A】実施形態3に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図18B】実施形態3に係るアンテナ装置の構成例を示す裏面図である。
【
図19】実施形態1及び3に係るアンテナ装置の反射周波数特性を示すグラフである。
【
図20】実施形態1及び3に係るアンテナ装置のVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【
図21】実施形態3に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【
図22】実施形態3に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【
図23A】実施形態3に係るアンテナ装置の3607MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図23B】実施形態3に係るアンテナ装置の8925MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図23C】実施形態3に係るアンテナ装置の10500MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図23D】実施形態3に係るアンテナ装置の14500MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【
図24】変形例1に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図25】変形例2に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図26】変形例3に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図27】変形例4に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図28】変形例5に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図29】変形例6に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図30】変形例7に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図31】変形例8に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図32】変形例9に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図33】変形例10に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図34】変形例11に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【
図35】変形例12に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、比較例、並びに、本発明に係る実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0013】
(比較例の0次共振器の構成)
まず、比較例に係る0次共振器の構成について以下に説明する。
【0014】
図1は比較例に係る、メタマテリアルの一種である左手系/右手系複合伝送線路(以下、CRLH線路という。)30を用いた0次共振器の等価回路図である。
【0015】
図1において、端子T1と端子T2との間に、複数の直列枝共振回路10が直列に接続され、各直列枝共振回路10の両端にそれぞれ接地との間に複数の並列枝共振回路20が接続されている。ここで、各直列枝共振回路10は、インダクタンスL
Rのインダクタ11と、キャパシタンスC
Lのキャパシタ12とを有し、共振角周波数ωseを有する。また、各並列枝共振回路20は、インダクタンスL
Lのインダクタ21と、キャパシタンスC
Rのキャパシタ22とを有し、共振角周波数ωshを有する。なお、周期構造回路の周期長(単位セルの単位長)をpとする。さらに、端子T1と接地との間には、リアクタンスX
Lを有するインピーダンス素子31が接続され、端子T2と接地との間には、リアクタンス-X
Lを有するインピーダンス素子32が接続される。
【0016】
以上のように構成された0次共振器において、端子T1と端子T2との間の回路はCRLH線路30を構成しており、0次共振器は当該CRLH線路30の実効屈折率が0となるときに共振する。ここで、実効屈折率が0で管内波長が無限大となり、共振周波数が共振器のサイズに依存しないので、動作周波数を固定したまま、共振器サイズを波長に比べて小さくすることも、逆に大きくすることも可能である。前者は電気的に小さいアンテナ装置の構成法に、後者は指向性アンテナ装置への応用に利用することが考えられる。
【0017】
0次共振器は、その電磁界分布にも特徴があり、共振器内の位置に関係なく電流振幅が一様となる。従来の共振器内の電磁界分布と違い、定在波による腹節を持たない。0次共振器の両端反射条件においては、両端開放、両端短絡の場合も含めて、互いに複素共役の関係にあるインピーダンス素子31,32の組をそれぞれ伝送線路の両端子T1,T2に挿入することにより、各単位セル内の直列枝共振回路10と、並列枝共振回路20とが同時に共振する二重共振状態が実現できる。また、両端子T1,T2のインピーダンス素子31,32である反射素子のリアクタンスの大きさXLの値を変えるだけで、各単位セル内の直列枝共振回路10と並列枝共振回路20のエネルギー分布を連続的に変えることができる。これにより、直列枝回路に流れる電流と、並列枝回路に流れる電流の大きさの比を連続的に変えることができる。
【0018】
(比較例の0次共振器の構成)
図2は比較例及び実施形態に係るアンテナ装置で用いる0次共振器の等価回路図である。
図1に記載した比較例に係るCRLH線路30からなる0次共振器から、本実施形態に係る共振器では、CRLH線路30を構成する各単位セル内に含まれていた並列枝共振回路20を取り除き、直列枝共振回路10のみからなる周期構造回路33を構成する。周期構造回路33では、並列枝共振回路20が存在しないので、インピーダンスが互いに複素共役の関係となる一対の両端子T1,T2のインピーダンス素子(反射素子)のリアクタンスX
Lを変えることにより、直列枝共振回路10に流れる電流の大きさや、給電線から見た入力インピーダンスを制御することができる。後述するように、これらの特性を線状アンテナに適用して、0次共振アンテナ装置の小型化及び広帯域化を図る。
【0019】
(容量装荷V字型0次共振線状メタマテリアルアンテナ装置の構成法)
次いで、比較例に係る容量装荷V字型0次共振線状メタマテリアルアンテナ装置の構成について以下に説明する。
【0020】
図3Aは比較例に係る0次共振器を用いたアンテナ装置の構成例を示す平面図である。また、
図3Bは
図3AのA-A’線についての縦断面図であり、
図3Cは
図3AのB-B’線についての縦断面図である。
【0021】
図3A~
図3Cの誘電体基板40において、一対の素子導体51~53;61~63にそれぞれキャパシタC12~C13;C22~C23を周期的に挿入して、直列LC共振回路からなる一対の周期構造回路(
図2の33に対応するので、以下符号33を付す。)を構成する。一対の周期構造回路33を左右対称のV字形状で配置し、当該V字形状の一対の周期構造回路33の上側終端にはそれぞれ結合用キャパシタC14,C24を介して容量性反射素子となる素子導体54,64を接続する。ここで、素子導体54,64間で互いに電磁的に結合することで、例えば寄生キャパシタであるギャップキャパシタCg1が生成される。一方、一対の周期構造回路33の下側終端にはそれぞれキャパシタC11,C21を介して共通の誘導性反射素子となるミアンダ形状の素子導体72を接続する。これにより、直列枝のみからなるV字型0次共振器構造を有するモノポールアンテナ201を構成する。
【0022】
また、外部給電線としてマイクロストリップ線路の線路導体71を、誘導性反射素子の素子導体72の他端から接続する。さらに、素子導体72及び線路導体71を含む領域に対して裏面に接地導体41を配置する。ここで、誘電体基板40を挟設する線路導体71及び接地導体41によりマイクロストリップ線路を構成する。マイクロストリップ線路の線路導体71の幅は特性インピーダンス50Ωに対応する幅に設定される。なお、ここで、ミアンダ形状の素子導体72はインピーダンス変換の機能も有する。
【0023】
(発明者の知見)
比較例に係る
図3A~
図3Cのモノポールアンテナ201では、接地導体41の変形によるアンテナ性能への影響は無視できず、その都度変更と調整が必要であった。この課題を解決するために、本発明者らは、前記モノポールアンテナ201(又はそれの左右対称のモノポールアンテナ201A)に基づくダイポールアンテナであって、十分に大きな接地導体41を必要とせず、接地導体41の影響をなくして効率的にアンテナを動作させるためにダイポールアンテナの構造を提案する。
【0024】
以下の実施形態及び変形例に係るダイポールアンテナの構成を説明するときに用いる、直交座標系(構造図)と極座標系(放射パターン)についてまず説明する。
【0025】
図4Bは実施形態1~3及び変形例1~12において用いる直交座標系及び極座標系を示す斜視図である。
図4Bにおいて、xyz直交座標系において、原点Oからの位置Pは、距離rと、位置Pからxy平面への垂線を下ろしたときのxy平面の点をQとしたときのx軸と辺OQとの間のxy面での角度φと、z軸と辺OPとの間の角度θとにより、位置P(r,θ,φ)として定義される。
【0026】
(実施形態1)
図4Aは実施形態1に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。実施形態1では、前記モノポールアンテナ201又は201A(201Aは左右対称のV字型形状のモノポールアンテナ)からダイポールアンテナに変換することで、接地導体41の依存性の課題と、より小型化による性能向上を両立させる提案を行う。しかし、この変換されたダイポールアンテナの構成では、VSWRに対して周波数帯域幅が狭くなる問題が生じる(
図5参照)。この問題を解決するため、実施形態1では、接地導体41に代えて、無給電素子41A(誘電体基板40の裏面において形成されるので、平面図では点線で示し、以下同様である。)を給電素子の近傍の誘電体基板40の裏面に配置し、所望の周波数特性を得るために必要な無給電素子41Aが所定の形状を有することを特徴としている。実施形態1によれば、詳細後述するように、無給電素子41Aは遠方界特性に影響を与えず、広帯域な周波数帯域を得ることができる。
【0027】
なお、無給電素子41Aは誘電体基板40の裏面に形成されているが、本発明はこれに限らず、誘電体基板40のおもて面に形成されてもよい。
【0028】
図4Aは
図3Aのモノポールアンテナ201から
図4Aのダイポールアンテナを構成したことを説明するための模式平面図である。なお、
図4Aにおいて、寸法は実験を行った実施例に係る一例である。
【0029】
図4Aに示すように、比較例に係るモノポールアンテナ201Aを、アンテナ装置の装置中心200(以下、「装置中心200」といい、モノポールアンテナ201A,202A間の間隔の領域の中央部に位置する)を中心とする「回転対称」で回転することで、モノポールアンテナ202Aを形成し、これにより、一対のモノポールアンテナ201A,202Aによりダイポールアンテナを構成したことを特徴としている。ここで、実施形態1に係るダイポールアンテナは、それぞれ直列枝のみからなるV字型0次共振器構造を有する一対のモノポールアンテナ201A,202Aと、誘電体基板40の裏面に形成された所定形状の無給電素子41Aとを備えて構成される。
【0030】
まず、
図3Aの上側のモノポールアンテナ201Aの構成について以下に説明する。
【0031】
図4Aの誘電体基板40において、一対の素子導体51~53;61~63にそれぞれキャパシタC12~C13;C22~C23を周期的に挿入して、直列LC共振回路からなる一対の周期構造回路33を構成する。一対の周期構造回路33を左右対称のV字形状で配置し、当該V字形状の一対の周期構造回路33の上側終端にはそれぞれ結合用キャパシタC14,C24を介して容量性反射素子となる素子導体54,64を接続する。ここで、素子導体54,64間で互いに電磁的に結合することで、寄生キャパシタであるギャップキャパシタCg1が生成される。一方、一対の周期構造回路33の下側終端にはそれぞれキャパシタC11,C21及び線路導体70を介して共通の誘導性反射素子となるミアンダ形状の素子導体72を接続する。これにより、直列枝のみからなるV字型0次共振器構造を有するモノポールアンテナ201Aを構成する。
【0032】
また、外部給電線としてマイクロストリップ線路の線路導体74を、線路導体70及び素子導体72で構成される誘導性反射素子の他端から接続する。さらに、素子導体72及び線路導体71,74を含む領域に対して裏面に無給電素子41Aを配置する。ここで、外部給電線の入力インピーダンスである50Ωに対応するように、線路導体74,71,73及び無給電素子41Aで構成される構造特性が得られる。なお、ここで、ミアンダ形状の素子導体72はインピーダンス変換の機能も有する。線路導体74の一端は、給電点の端子T11を構成する。
【0033】
次いで、
図4Aの下側のモノポールアンテナ202Aの構成について以下に説明する。なお、
図4Aでは、説明の便宜上、モノポールアンテナ202に代えて、モノポールアンテナ202Aを用いる。
【0034】
図4Aの誘電体基板40のモノポールアンテナ201Aの下側において、一対の素子導体151~153;161~163にそれぞれキャパシタC112~C113;C122~C123を周期的に挿入して、直列LC共振回路からなる一対の周期構造回路133を構成する。一対の周期構造回路33を左右対称のV字形状で配置し、当該V字形状の一対の周期構造回路133の下側終端にはそれぞれ結合用キャパシタC114,C124を介して容量性反射素子となる素子導体154,164を接続する。ここで、素子導体154,164間で互いに電磁的に結合することで、寄生キャパシタであるギャップキャパシタCg2が生成される。一方、一対の周期構造回路133の上側終端にはそれぞれキャパシタC111,C121及び線路導体170を介して共通の誘導性反射素子となるミアンダ形状の素子導体172を接続する。これにより、直列枝のみからなるV字型0次共振器構造を有するモノポールアンテナ202Aを構成する。
【0035】
また、外部給電線としてマイクロストリップ線路の線路導体71を、誘導性反射素子の素子導体172の他端から接続する。なお、線路導体71の一端の給電点に入力インピーダンス補正用の誘導性素子導体73が接続される。さらに、素子導体72及び線路導体170を含む領域に対して裏面に無給電素子41Aを配置する。ここで、線路導体170,71の幅は特性インピーダンス50Ωに対応する幅に設定される。なお、ここで、ミアンダ形状の素子導体172はインピーダンス変換の機能も有する。線路導体71の一端は、給電点の端子T12を構成する。
【0036】
さらに、給電点の端子T11,T12には、50Ωの内部抵抗352と高周波電源351を有する信号発生器350が接続される。
【0037】
図4Aにおいて、無給電素子41Aは、モノポールアンテナ201A,202Aの、周期構造回路33を構成する、例えば素子導体51,61,151,161に対して電磁的に結合するように、誘電体基板40の裏面において以下の形状を有して形成される。
(1)無給電素子41Aは、-y方向及びy方向の左右両端部でそれぞれ、z方向に平行な直線の辺41p,41qを有する。また、無給電素子41Aは、辺41pの上側端部と、辺41qの上側端部とを連結して下側方向に凹となる第1の凹部を形成する半円形状の辺41rを有し、辺41pの下側端部と、辺41qの下側端部とを連結して上側方向に凹となる第2の凹部を形成する半円形状の辺41sを有する。すなわち、無給電素子41Aは、互いに平行な辺41p,41qを有する仮想四角形から、装置中心200から見て上側の第1の凹部と、下側の第2の凹部を除去した形状を有する。
(2)無給電素子41Aは、装置中心200近傍の線路導体70,170付近において、上記両辺の辺幅が狭くなるようなz方向の幅を有する。すなわち、線路導体70,170の裏面において、無給電素子41Aが存在する。なお,素子導体51,61,151,161の裏面には、無給電素子41Aは形成されていない。
(3)平面図において、無給電素子41Aの上側の辺41rの左側半円は、素子導体61に対して互いに電磁的に結合するように所定の間隔を有することで所定の容量を有してz方向から傾斜した斜め左上方向に辺41rの左半分の曲線形状で延在して辺41pの上側端部に到達する。また、無給電素子41Aの上側の辺41rの右側半円は、素子導体51に対して互いに電磁的に結合するように所定の間隔を有することで所定の容量を有してz方向から傾斜した斜め右上方向に曲線形状で延在して辺41qの上側端部に到達する。さらに、無給電素子41Aの下側の辺41sの左側半円は、素子導体151に対して互いに電磁的に結合するように所定の間隔を有することで所定の容量を有して-z方向から傾斜した斜め左下方向に曲線形状で延在して辺41pの下側端部に到達する。またさらに、無給電素子41Aの下側の辺41sの右側半円は、素子導体161に対して互いに電磁的に結合するように所定の間隔を有することで所定の容量を有して-z方向から傾斜した斜め左下方向に曲線形状で延在して辺41qの下側端部に到達する。
(4)なお、無給電素子41Aの上下端部は上述のように曲線形状で延在しているが、直線形状又は折曲げの直線形状で形成してもよい。
【0038】
なお、実施形態1において、無給電素子41Aは、モノポールアンテナ201A,202Aの、周期構造回路33,133を構成する、例えば素子導体51,61,151,161に対して電磁的に結合するように形成しているが、本発明はこれに限らず、無給電素子41Aは、モノポールアンテナ201A,202Aの線路導体の少なくとも一部に対して電磁的に結合するように形成してもよい。
【0039】
図5は比較例に係るアンテナ装置の電圧定在波比(VSWR(Voltage Standing Wave Ratio))の周波数特性の一例を示すグラフである。
図5の比較例のVSWR特性では、5GHz~6GHz付近でVSWRが3以上であることがわかる。この課題を解決するために、実施形態1では、無給電素子41Aを装荷したことを特徴としており、実験結果については詳細後述する。
【0040】
以上の実施形態1によれば、比較例に比較して、広帯域で動作することができ、しかも、放射パターンの偏りも補正することができる。
【0041】
(実施形態2)
図6は実施形態2に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図6において、寸法は実験を行った実施例に係るもので一例である。
【0042】
実施形態2に係るアンテナ装置であるダイポールアンテナは、
図7に示すように、比較例に係るモノポールアンテナ201を、装置中心200を含むxy平面を対称面として「面対称」でモノポールアンテナ202Aを形成し、これにより、一対のモノポールアンテナ201,202Aによりダイポールアンテナを構成したことを特徴としている。すなわち、実施形態2に係るダイポールアンテナは、それぞれ直列枝のみからなるV字型0次共振器構造を有する一対のモノポールアンテナ201,202Aと、誘電体基板40の裏面に形成された所定形状の無給電素子41Aとを備えて構成される。
【0043】
なお、実施形態2において、無給電素子41Aは、モノポールアンテナ201,202Aの、周期構造回路33,133を構成する、例えば素子導体51,61,151,161に対して電磁的に結合するように形成しているが、本発明はこれに限らず、無給電素子41Aは、モノポールアンテナ201,202Aの線路導体の少なくとも一部に対して電磁的に結合するように形成してもよい。
【0044】
実施形態2によれば、詳細後述するように、無給電素子41Aは遠方界特性に影響を与えず、広帯域な周波数帯域を得ることができた。
【0045】
(実施形態1及び2の実験結果)
次いで、発明者らは実施形態1及び2のダイポールアンテナであるアンテナ装置を試作し、それらの実験結果について以下に説明する。
図8A以降の放射パターン特性において、電界強度に対応するアンテナ利得の記号を以下のように定義する。
(1)Eθ(HP):H面において角度θを変化したときの電界強度に対応するアンテナ利得;
(2)Eφ(HP):H面において角度φを変化したときの電界強度に対応するアンテナ利得;
(3)Eθ(EP):E面において角度θを変化したときの電界強度に対応するアンテナ利得;
(4)Eφ(EP):E面において角度φを変化したときの電界強度に対応するアンテナ利得;
(5)Et:合計アンテナ利得;及び
(6)Ep:アンテナ利得の最大値(ピークアンテナ利得)。
【0046】
図8Aは実施形態1及び2に係るアンテナ装置の3500MHzの放射パターン特性を示すグラフであり、
図8Bは実施形態1及び2に係るアンテナ装置の3838MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
図8Aから明らかなように、3500MHzでは偏りのない放射パターンが実施形態1及び2においてそれぞれ得られているが、
図8Bにおいて、周波数が3838MHzに近づくと角度θ=270°に比べて角度θ=90°において、実施形態2が実施形態1比較して5dB程度の減衰が見られる(
図8Bの201参照)。これに対して、実施形態1では、両方の周波数で偏りが生じていないことがわかる。
【0047】
図9は、比較例、実施形態1及び2に係るアンテナ装置の反射周波数特性を示すグラフであり、
図10は比較例、実施形態1及び2に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンス特性を示すグラフである。また、
図11は実施形態1に係るアンテナ装置のVSWRの周波数特性を示すスミスチャートであり、
図12は実施形態1に係るアンテナ装置の入力インピーダンスZinの周波数特性を示すグラフである。
【0048】
図9の反射周波数特性から明らかなように、実施形態1及び2ともに所定の周波数で共振周波数が存在することがわかる。また、
図10のVSWR特性から明らかなように、実施形態1において、VSWR≦3以下の開始周波数は3.604GHzであり、終了周波数は8.279GHzであり、実施形態1のアンテナ装置において、中心周波数に対する比帯域幅は実測で78.68%と広い周波数帯域性能が実現されていることが確認された。さらに、
図11から明らかなように、開始周波数3604MHzから終了周波数8279MHzまでの間において所定の範囲のインピーダンス特性が得られることがわかる。また、
図12から、所定の周波数において50Ωの入力インピーダンスを実現できることがわかる。
【0049】
図13A及び
図13Bはそれぞれ、実施形態1に係るアンテナ装置の3604MHzのE面、H面の放射パターン特性を示すグラフである。また、
図14A及び
図14Bはそれぞれ、実施形態1に係るアンテナ装置の3750MHzのE面、H面の放射パターン特性を示すグラフである。さらに、
図15A及び
図15Bはそれぞれ、実施形態1に係るアンテナ装置の5000MHzのE面、H面の放射パターン特性を示すグラフである。
【0050】
図16A及び
図16Bはそれぞれ、実施形態1に係るアンテナ装置の7100MHzのE面、H面の放射パターン特性を示すグラフである。また、
図17A及び
図17Bはそれぞれ、実施形態1に係るアンテナ装置の8279MHzのE面、H面の放射パターン特性を示すグラフである。
【0051】
図13A~
図17Bから明らかなように、実施形態1に係るアンテナ装置は、いわゆるダイポールアンテナとしての所定の放射パターン特性を有することを確認できた。
【0052】
以上のように構成された実施形態1及び2によれば、提案したモノポールアンテナの課題である、接地導体の影響、H面利得の偏りを解決できることを示した。ダイポールアンテナへの構成過程で生じた、インピーダンス値の上昇にともなう反射周波数特性の劣化により動作周波数帯域幅の劣化が確認されたが、アンテナ素子の基板反対面へ無給電素子41Aを装荷することにより、反射周波数特性を改善して広帯域動作できることを実測により証明した。また、素子導体70,72,170,172に係る誘導性反射素子を折り曲げることで低姿勢化して小型化できることも示した。
【0053】
(実施形態3)
図18Aは実施形態3に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図であり、
図18Bは実施形態3に係るアンテナ装置の構成例を示す裏面図であり、
図18Cは
図18Bの無給電素子の詳細構成例を示す裏面図である。実施形態3に係るアンテナ装置は、
図4Aの実施形態1に係るアンテナ装置に比較して以下の相違点を有する。
(1)モノポールアンテナ201A,202Aに代えて、モノポールアンテナ201B,202Bを備える。
(2)モノポールアンテナ201Bにおいて、キャパシタC11,C21に代えてインターデジタルキャパシタC211,C221を備え、キャパシタC12~C14に代えて、インターデジタルキャパシタC212~C214を備える。
(3)素子導体51~54に代えて、素子導体251~254を備える。
(4)キャパシタC22~C24に代えて、インターデジタルキャパシタC222~C224を備える。
(5)素子導体61~64に代えて、素子導体261~264を備える。
(6)ここで、インターデジタルキャパシタC214、素子導体254,264、インターデジタルキャパシタC224はy方向で並置されて形成され、素子導体254,264は互いに電磁的に結合するように対向して並置され、寄生キャパシタであるギャップキャパシタCg1を生成する。
(7)線路導体70に代えて、線路導体270を備え,線路導体270は給電点である端子T11を有する。
(8)モノポールアンテナ201Bにおいて、キャパシタC111,C121に代えてインターデジタルキャパシタC411,C421を備え、キャパシタC122~C124に代えて、インターデジタルキャパシタC422~C424を備える。
(9)素子導体151~154に代えて、素子導体451~454を備える。
(10)キャパシタC161~C164に代えて、インターデジタルキャパシタC461~C464を備える。
(11)素子導体161~164に代えて、素子導体461~464を備える。
(12)ここで、インターデジタルキャパシタC424、素子導体454,464、インターデジタルキャパシタC414はy方向で並置されて形成され、素子導体454,464は互いに電磁的に結合するように対向して並置され、寄生キャパシタであるギャップキャパシタCg2を生成する。
(13)線路導体170に代えて、線路導体270,270a,270bを備え,線路導体270aは給電点である端子T12を有し、線路導体270bは給電点である端子T13を有する。
(14)給電点の端子T11,T12及びT13には、50Ωの内部抵抗351と高周波電源352を有する信号発生器350が接続される。
(15)無給電素子41Aに代えて、無給電素子41a,41bを備える(
図18B及び
図18C参照)。
【0054】
ここで、
図18B及び
図18Cを参照して、無給電素子41a,41bについて以下に説明する。
【0055】
無給電素子41aは、モノポールアンテナ201Bの素子導体251,252及びモノポールアンテナ202Bの素子導体461,462に電磁的に結合するように、誘電体基板40の
図18Aの右側の上下方向の中央部に位置する。無給電素子41aは、
図18cに示すように、
(1)z方向の長辺41apと、z方向の仮想短辺41asと、傾斜辺41aq,41arとを有する台形部42と、
(2)仮想短辺41asを有する略矩形部43とを有し、
(3)略矩形部43は、略矩形部43から-y方向に突出する3個の矩形突起部44を有する。なお、矩形突起部44の個数は3個に限定されず、2個以上の複数であってもよく、矩形突起部44は無くてもよい。
【0056】
無給電素子41bは、モノポールアンテナ201Bの素子導体261,262及びモノポールアンテナ202Bの素子導体451,452に電磁的に結合するように、誘電体基板40の
図18Aの左側の上下方向の中央部に位置する。無給電素子41bは、
図18cに示すように、
(1)z方向の長辺41bpと、z方向の仮想短辺41bsと、傾斜辺41bq,41brとを有する台形部45と、
(2)仮想短辺41bsを有する略矩形部46とを有し、
(3)略矩形部46は、略矩形部46から+y方向に突出する3個の矩形突起部47を有する。なお、矩形突起部47の個数は3個に限定されず、2個以上の複数であってもよく、矩形突起部47は無くてもよい。
【0057】
なお、実施形態3において、無給電素子41a,41bは、モノポールアンテナ201B,202Bの、周期構造回路33,133を構成する、例えば素子導体251,252,261,262,451,452,461,462に対して電磁的に結合するように形成しているが、本発明はこれに限らず、無給電素子41a,41bは、モノポールアンテナ201B,202Bの線路導体の少なくとも一部に対して電磁的に結合するように形成してもよい。
【0058】
以上のように構成された実施形態3に係るアンテナ装置の実験結果について以下に説明する。
【0059】
図19は実施形態1及び3に係るアンテナ装置の反射周波数特性を示すグラフであり、
図20は実施形態1及び3に係るアンテナ装置のVSWRの周波数特性を示すグラフである。また、
図21は実施形態3に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンス特性を示すスミスチャートであり、
図22は実施形態3に係るアンテナ装置の給電点の入力インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【0060】
図19から明らかなように、複数の所定の共振周波数を有することがわかる。また、
図20から明らかなように、VSWRが3を超える周波数が幾つか確認されるが、中心周波数に対する比帯域幅が120%(3.5GHz~14.8GHz)程度の特性を得ることが見込まれる。特に、
図20から明らかなように、VSWRが3以下となる周波数帯域の下限周波数が両構造共に3.6GHzであり、実施形態3のアンテナ構造では上限周波数が14.5GHzにまで帯域が拡大している。さらに、
図21から明らかなように、開始周波数2.95GHzから終了周波数10.31GHzまでの間において所定の範囲の入力インピーダンスが得られることがわかる。また、
図22から、所定の周波数において50Ωの入力インピーダンスを実現できることがわかる。
【0061】
実施形態3に係るアンテナ装置によれば、以上の実験結果により、実施形態1と比較して、動作周波数の広帯域化を確認できた。
【0062】
図23Aは実施形態3に係るアンテナ装置の3607MHzの放射パターン特性を示すグラフであり、
図23Bは実施形態3に係るアンテナ装置の8925MHzの放射パターン特性を示すグラフである。また、
図23Cは実施形態3に係るアンテナ装置の10500MHzの放射パターン特性を示すグラフであり、
図23Dは実施形態3に係るアンテナ装置の14500MHzの放射パターン特性を示すグラフである。
【0063】
図23A~
図23Dの放射パターンから明らかなように、周波数10.5GHzまでダイポールアンテナ特有の無指向性を示すが、周波数10.5GHzを超える周波数においてはボウタイアンテナにも見られるような波状の放射パターンが得られた。また、周波数10.5GHzまで放射パターンはE面のEθ、H面のEθ共にダイポールアンテナに似た放射特性を示している。しかし、周波数10.5GHzを超えるとアンテナ素子の長さが波長に比べて長くなるため、E面のEθの放射パターンが波状になる。
【0064】
さらに、実施形態及び変形例において用いられる無給電素子41A,41a,41b等の形状について以下に説明する。
【0065】
実施形態1では、1個の無給電素子41Aのみで、実施形態2では、2個に分割分離して、2個の無給電素子41a,41bを備える。ここで、無給電素子を分割したときに、分割による各無給電素子間の距離は、2つの役割(機能)に分けられる。
(1)互いに電磁的に容量結合しない。
(2)互いに電磁的に容量結合する。
【0066】
容量結合しない場合は、各無給電素子間の距離が大きくなり、無給電素子同士がつながることはない。分割によりアンテナ素子との結合が分布的に与えられることで、入力インピーダンスを調整することができる。これに対して、容量結合する場合は、分割された無給電素子は「容量結合」が生じ、周波数に応じて実効的なサイズが変化することで、アンテナ装置と高周波信号発生器との間でインピーダンス整合を行うことができる。
【0067】
以下、本発明に係る無給電素子の種々の変形例について説明する。
【0068】
(変形例1)
図24は変形例1に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図24において、無給電素子91A,91Bは誘電体基板40の裏面に形成され、平面図において点線で図示され、
図25以降の変形例においても同様である。無給電素子91A,91Bはそれぞれ二等辺三角形の形状を有し、各等辺が素子導体51,61,151,161などの素子導体の一部に対して電磁的に結合するように配置される。このとき、無給電素子91A,91Bと各素子導体51,61,151,161との平面図上での距離は等間隔でもいいし、そうでなくてもよい。
【0069】
(変形例2)
図25は変形例2に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図25において、無給電素子92Aは、矩形部92aと、2個の三角形部92c,92dとを備えて構成される。三角形部92cは矩形部92aの上辺の左上端部から上方向に突出するように形成され、その一辺は素子導体61に電磁的に結合するように配置される。また、三角形部92dは矩形部92aの上辺の右上端部から上方向に突出するように形成され、その一辺は素子導体51に電磁的に結合するように配置される。さらに、三角形部92eは矩形部92bの下辺の左下端部から下方向に突出するように形成され、その一辺は素子導体151に電磁的に結合するように配置される。またさらに、三角形部92fは矩形部92bの下辺の右下端部から下方向に突出するように形成され、その一辺は素子導体161に電磁的に結合するように配置される。
【0070】
(変形例3)
図26は変形例3に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図26において、変形例3は、
図24の無給電素子91A,91Bに加えて、無給電素子93をさらに備える。無給電素子93は、二等辺部93a,93bを頂点部分の所定領域で重なるように合体された6つの辺を有する。無給電素子93は無給電素子91A,91Bとの間であって、所定の間隔を有して配置される。ここで、無給電素子93は、素子導体51,52,61,62,151,152,161,162などの素子導体の一部に対して電磁的に結合するように配置される。
【0071】
(変形例4)
図27は変形例4に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図27において、変形例4は、
図24の無給電素子91A,91Bに加えて、無給電素子94をさらに備える。無給電素子94は、矩形形状を有し、無給電素子91A,91Bとの間であって、所定の間隔を有して配置される。ここで、無給電素子93は、素子導体51,61,151,161などの素子導体の一部に対して電磁的に結合するように配置される。
【0072】
(変形例5)
図28は変形例5に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図28において、変形例5は、
図24の変形例1の無給電素子91A,91Bをそれぞれ2分割することで形成した無給電素子95A,95B,95C,95Dを備える。無給電素子95A,95B,95C,95Dはそれぞれ三角形状を有し、互いに所定の間隔を有して配置される。無給電素子95Aは例えば素子導体51に電磁的に結合するように並置され、無給電素子95Bは例えば素子導体61に電磁的に結合するように並置される。また、無給電素子95Cは例えば素子導体161に電磁的に結合するように並置され、無給電素子95Dは例えば素子導体151に電磁的に結合するように並置される。
【0073】
(変形例6)
図29は変形例6に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図29において、変形例6は、
図28の無給電素子95A~95Dに加えて、
図26の無給電素子93をさらに備えて構成される。なお、無給電素子93は、二等辺部93a,93bを頂点部分の所定領域で重なるように合体された6つの辺を有し、
図26と同様の作用効果を有する。
【0074】
(変形例7)
図30は変形例7に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図30において、変形例7は、
図28の無給電素子95A~95Dに加えて、無給電素子95Aと95Cとの間、並びに無給電素子95Bと95Dとの間において、矩形形状の無給電素子97が配置される。無給電素子97は例えば素子導体51,61,151,161に電磁的に結合するように配置される。
【0075】
(変形例8)
図31は変形例8に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図31において、変形例8は、
図28の無給電素子95A~95Dに加えて、台形形状の無給電素子98A,98Bをさらに備える。無給電素子98Aは素子導体51,61の裏面付近に配置され、例えば素子導体51,61に電磁的に結合するように配置される。また、無給電素子98Bは素子導体151,161の裏面付近に配置され、例えば素子導体151,161に電磁的に結合するように配置される。
【0076】
(変形例9)
図32は変形例9に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図32において、変形例9は、
図25の無給電素子92A,92Bに加えて、三角形状の無給電素子99A~99Dをさらに備えて構成される。無給電素子99Aは、無給電素子92Aの三角形部92dの一辺に対して所定の間隔を有して電磁的に結合するように、かつ例えば素子導体51に電磁的に結合するように配置される。また、無給電素子99Bは、無給電素子92Aの三角形部92cの一辺に対して所定の間隔を有して電磁的に結合するように、かつ例えば素子導体61に電磁的に結合するように配置される。またさらに、無給電素子99Cは、無給電素子92Bの三角形部92fの一辺に対して所定の間隔を有して電磁的に結合するように、かつ例えば素子導体161に電磁的に結合するように配置される。また、無給電素子99Dは、無給電素子92Bの三角形部92eの一辺に対して所定の間隔を有して電磁的に結合するように、かつ例えば素子導体151に電磁的に結合するように配置される。
【0077】
(変形例10)
図33は変形例10に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。変形例10は、(1)装置中心200の中央部に配置された矩形形状の無給電素子190と、
(2)無給電素子190の右上部に近接して電磁的に結合しかつ素子導体51に近接して電磁的に結合するように配置された矩形形状の無給電素子191と、
(3)無給電素子190の左上部に近接して電磁的に結合しかつ素子導体61に近接して電磁的に結合するように配置された矩形形状の無給電素子193と、
(4)無給電素子191,193の上部に配置された無給電素子192であって、左右方向に延在する基部と、基部の両端から-z方向に突出しかつ素子導体51,62にそれぞれ近接して電磁的にそれぞれ結合する2個の矩形突出部とを有する無給電素子192と、
(5)無給電素子190の右下部に近接して電磁的に結合しかつ素子導体161に近接して電磁的に結合するように配置された矩形形状の無給電素子194と、
(6)無給電素子190の左下部に近接して電磁的に結合しかつ素子導体151に近接して電磁的に結合するように配置された矩形形状の無給電素子196と、
(7)無給電素子194,196の下部に配置された無給電素子195であって、左右方向に延在する基部と、基部の両端からz方向に突出しかつ素子導体151,162にそれぞれ近接して電磁的にそれぞれ結合する2個の矩形突出部とを有する無給電素子195と、
を備えて構成される。
【0078】
(変形例11)
図34は変形例11に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図34において、変形例11は、
図33の無給電素子191~196を備え、また、無給電素子190に代えてその中央部に例えば矩形形状の孔190hを有する無給電素子190Aを備える。
【0079】
(変形例12)
図35は変形例12に係るアンテナ装置の構成例を示す平面図である。
図35において、変形例21は、線路導体70,170の裏面に配置された矩形形状の無給電素子197と、無給電素子197の上側において2×4の行列形状で配置された矩形形状の8個の無給電素子198と、無給電素子197の下側において2×4の行列形状で配置された矩形形状の8個の無給電素子199とを備えて構成される。ここで、無給電素子198は例えば素子導体51,61に電磁的に結合し、無給電素子199は例えば素子導体151,161に電磁的に結合する。
【0080】
以上説明したように、実施形態及び変形例によれば、0次共振器を用いたアンテナ装置において、従来技術に比較して広帯域で動作しかつ小型化できる。
【0081】
(他の変形例)
【0082】
以上の実施形態及び変形例において、前記無給電素子の複数の素子の少なくとも一部は、互いに電磁的に結合するように配置されてもよい(例えば、
図30、
図32、
図33、
図34、
図35参照)。
【0083】
以上の実施形態及び変形例において、前記無給電素子の複数の素子の少なくとも一部は、前記一対の周期構造回路に対して、前記無給電素子の他の素子を介して間接的に電磁的に結合するように配置されてもよい(例えば、
図30、
図32、
図33、
図34、
図35参照)。
【0084】
以上の実施形態の変形例では、0次共振器の周期構造回路33において、複数の直列枝共振回路10を備えているが、本発明はこれに限らず、少なくとも1つの直列枝共振回路10を備えて0次共振器を構成すればよい。
【0085】
以上の実施形態では、例えばチップキャパシタを用いてキャパシタC11~C14,C21~C24を構成しているが、本発明はこれに限らず、インターデジタル構造を有するキャパシタを用いて構成してもよい。
【0086】
以上のように構成された実施形態及び変形例に係るアンテナ装置において、アンテナ装置の小型化のために、上側端部における容量性反射素子を構成する素子導体54,64を互いに容量結合しているが、本発明はこれに限らず、当該容量結合せずに、例えば素子導体54,64をそれぞれ素子導体51~53;61~63と平行となるように一直線上で形成してもよい。このように構成しても0次共振器を用いたアンテナ装置を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上詳述したように、本発明に係るアンテナ装置によれば、従来技術に比較して広帯域の帯域幅を得ることができるアンテナ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0088】
10 直列枝共振回路
20 並列枝共振回路
11,21 インダクタ
12,22 キャパシタ
30 左手系/右手系複合伝送線路(CRLH線路)
31,32 インピーダンス素子
33,133 周期構造回路
40 誘電体基板
41 接地導体
41A,41a,41b 無給電素子
42,45 台形部
43,46 略矩形部
44,47 矩形突起部
51~54,61~64,73,151~154,161~164,451~454,461~464 素子導体
70,71,74,170,171,173,174,270,270a,270b 線路導体
72,172 素子導体
91A~99D,190~199 無給電素子
200 装置中心
201,201A,201B,202,202A,202B モノポールアンテナ
350 信号発生器
351 高周波電源
352 内部抵抗
C11~C464 キャパシタ
Cg1,Cg2 ギャップキャパシタ
T1~T13 端子