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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121415
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】アンモニア加熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240830BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J21/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028517
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】岸村 司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 智久
(72)【発明者】
【氏名】園田 高久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順一
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA01A
4G169BB04A
4G169BC16A
4G169CB81
4G169DA06
(57)【要約】
【課題】工業炉のバーナの燃料としてアンモニアを使用するために、当該アンモニアを水素と窒素に効果的に分解し、窒素酸化物の排出を抑制することのできるアンモニア加熱分解装置を提供する。
【解決手段】バーナ10からの火炎Fで、バーナ10に燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉1において、アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプ60の所定部分の内部に設けられ、前記内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータH1を備える。また、アンモニア供給パイプ60の所定部分の外周面に設けられ、アンモニアを間接的に加熱する間接加熱ヒータH2を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナからの火炎で、前記バーナに燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉において、前記アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプの所定部分に設けられる装置であって、
前記アンモニア供給パイプの所定部分の内部に設けられ、前記内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータを備えることを特徴とするアンモニア加熱分解装置。
【請求項2】
バーナからの火炎で、前記バーナに燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉において、前記アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプの所定部分に設けられる装置であって、
前記アンモニア供給パイプの所定部分の内部に設けられ、前記内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータと、
前記アンモニア供給パイプの所定部分の外周面に設けられ、前記アンモニアを間接的に加熱する間接加熱ヒータとを備えることを特徴とするアンモニア加熱分解装置。
【請求項3】
前記アンモニア供給パイプの所定部分を、その全体が、前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒で形成されたものからなるものとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア分解加熱装置。
【請求項4】
前記アンモニア供給パイプの所定部分の内周面に前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒の層をコーティングしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア加熱分解装置。
【請求項5】
前記アンモニア供給パイプの所定部分の内部に、前記直接加熱ヒータの下流側または上流側に前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア分解加熱装置。
【請求項6】
前記直接加熱ヒータがプラズマ加熱装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア加熱分解装置。
【請求項7】
前記触媒がアルミナであることを特徴とする請求項3に記載のアンモニア加熱分解装置。
【請求項8】
前記触媒がアルミナであることを特徴とする請求項4に記載のアンモニア加熱分解装置。
【請求項9】
前記触媒がアルミナであることを特徴とする請求項5に記載のアンモニア加熱分解装置。
【請求項10】
前記間接加熱ヒータの外面に保温部材を設けたことを特徴とする請求項2に記載のアンモニア加熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを燃料として燃焼させる工業炉に取付けられるアンモニア加熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制の観点から、燃焼しても二酸化炭素を発生しないアンモニアが新たな燃料として注目を集めているが、アンモニアを化石燃料と混合したりアンモニアだけで燃焼させると窒素酸化物(NOX)の排出量が増大することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃焼装置は、石炭にアンモニアを加えて燃焼する場合の窒素酸化物増大の課題を解決するものである。
【0004】
アンモニアが新たな燃料として注目を集めているものの、これまでアンモニアを燃料として有効に使用する工業炉は存在せず、現状、研究開発段階にある。
それはすなわち、一般に、アンモニアの燃焼速度は天然ガスの25%程度で、燃焼させると窒素酸化物(NOX)の排出量が増大して規制値(180ppm、O2=11%換算)より高くなり、燃料として使えないことに起因する。
【0005】
現在、アンモニアガス中の水素成分が30%程度になると天然ガスと同じ程度の燃焼速度となり、20%程度でも実用上問題なく使用できる燃焼速度になることがわかり始めている。
【0006】
工業炉のバーナの燃料としてアンモニアを使用するためには、当該アンモニアを水素と窒素に分解する必要があるが、そうした装置は現段階において存在しない。従って、工業炉は依然として化石燃料などに依存せざるを得ず、その結果、地球温暖化ガス(窒素酸化物)の排出を抑制することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第7020759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、工業炉のバーナの燃料としてアンモニアを使用するために、当該アンモニアを水素と窒素に効果的に分解し、窒素酸化物の排出を抑制することのできるアンモニア加熱分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のアンモニア加熱分解装置(50)は、バーナ(10)からの火炎(F)で、前記バーナ(10)に燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉(1)において、前記アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプ(60)の所定部分に設けられる装置であって、
前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分の内部に設けられ、前記内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータ(H1)を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、バーナ(10)からの火炎(F)で、前記バーナ(10)に燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉(1)において、前記アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプ(60)の所定部分に設けられる装置であって、
前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分の内部に設けられ、前記内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータ(H1)と、
前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分の外周面に設けられ、前記アンモニアを間接的に加熱する間接加熱ヒータ(H2)とを備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分を、その全体が、前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒(C)で形成されたものからなるものとしたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分の内周面に前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒(C)の層をコーティングしたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記アンモニア供給パイプ(60)の所定部分の内部に、前記直接加熱ヒータ(H1)の下流側または上流側に前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒(C)を設けたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記直接加熱ヒータ(H1)がプラズマ加熱装置であることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、前記触媒(C)がアルミナであることを特徴とする。
【0016】
またさらに本発明は、前記間接加熱ヒータ(H2)の外面に保温部材(T)を設けたことを特徴とする。
【0017】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンモニア加熱分解装置によれば、アンモニア供給パイプの所定部分の内部に、その内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータを備えるので、この直接加熱ヒータの熱を直接的にアンモニアに加えて、所定温度に加熱することができる。
この熱により、アンモニアを水素と窒素に効果的に分解できるので、アンモニア(水素)をバーナの燃料として効率的に使用することができ、同時に、窒素酸化物の排出を低減することができる。
【0019】
また本発明によれば、アンモニア供給パイプの所定部分の内部に、その内部を通過するアンモニアに全体が直接接触して加熱する直接加熱ヒータと、それに加えて、アンモニア供給パイプの所定部分の外周面に、アンモニアを間接的に加熱する間接加熱ヒータを設けたので、この両者によってアンモニアをさらに効果的に加熱することができる。
これにより、アンモニアをバーナの燃料としてさらに効果的に使用でき、窒素酸化物の排出を低減できる。
【0020】
また本発明によれば、アンモニア供給パイプの所定部分を、その全体が、アンモニアを水素と窒素に分解する触媒で形成されたものからなるので、この触媒効果によってアンモニアをさらに効果的に分解できる。従って、アンモニアをさらに効率的にバーナの燃料として使用でき、窒素酸化物の排出をさらに低減できる。
【0021】
また本発明によれば、アンモニア供給パイプの所定部分の内周面にアンモニアを水素と窒素に分解する触媒の層をコーティングしたので、この層の触媒効果により、アンモニアをさらに効果的に分解できる。従って、アンモニアをバーナの燃料として使用でき、窒素酸化物の排出を低減できる。
【0022】
また本発明によれば、アンモニア供給パイプの所定部分の内部に、直接加熱ヒータの下流側または上流側にアンモニアを水素と窒素に分解する触媒を設けたので、アンモニアを直接加熱ヒートとこの触媒の双方によってさらに効果的に分解することができる。これにより、アンモニアをバーナの燃料として使用でき、窒素酸化物の排出を低減できる。
【0023】
また本発明によれば、直接加熱ヒータがプラズマ加熱装置であるので、アンモニアをより効果的に加熱することができる。従って、アンモニアをバーナの燃料として、より容易に使用でき、窒素酸化物の排出を低減できる。
【0024】
さらに本発明によれば、触媒がアルミナであるので、アンモニアを効果的に分解することができる。またアルミナは、他の触媒(例えば、ルテニウム金属など)と比較して廉価であるため、アンモニア加熱分解装置を低価格で提供することができる。
【0025】
またさらに本発明によれば、間接加熱ヒータの外面に保温部材を設けたので、間接加熱ヒータやアンモニア供給パイプの所定部分からの熱の放散を防止し、かつ、作業者の火傷を防止することができる。これにより、アンモニア加熱分解装置の性能を高め安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るアンモニア加熱分解装置を取り付けた工業炉の要部を示す縦断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置を示す拡大断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係るアンモニア加熱分解装置を示す拡大断面図である。
図4】本発明の第三実施形態に係るアンモニア加熱分解装置を示す拡大断面図である。
図5】本発明の第一乃至第三実施形態における直接加熱ヒータの他の態様を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2を参照して、本発明の第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50を説明する。
【0028】
第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50が取付けられる工業炉1(ここでは、金属加熱炉を例として説明する)は、図1に示すように、断面略矩形状で、炉体2を構成する炉壁の側壁3にはバーナ10が設けられ、そのバーナ10からの火炎Fでアンモニア(NH3)をガス燃料と混焼させる炉である。
【0029】
アンモニア(NH3)は、アンモニア供給装置14から第一配管11を介してバーナ10に送られ第一配管11には途中、アンモニア用開閉弁(電磁弁)17が設けられている。ガス燃料は、都市ガスやプロパンガスなどといった既存のガスからなり、ガス供給装置15から第二配管12を介してバーナ10に送られ第二配管12には途中、ガス用開閉弁(電磁弁)18が設けられている。燃焼用空気は、外気がブロワ16でエア配管13を介してバーナ10に送られエア配管13には途中、エア用開閉弁(電磁弁)19が設けられている。
バーナ10は水平方向に延び、火炎Fを水平方向(図1では右側から左側)に放射させる。
【0030】
工業炉1の天井壁5には火炎Fの延びる方向、すなわち図1では右側から左側に向けて間隔をあけて(ここでは等間隔)、4つのアンモニア注入ノズル(第1アンモニア注入ノズル,第2アンモニア注入ノズル,第3アンモニア注入ノズル,第4アンモニア注入ノズル)21,22,23,24が設けられている。
【0031】
これらのアンモニア注入ノズル21,22,23,24からは、アンモニア供給装置14から供給されたアンモニアがそれぞれ電磁弁(第1電磁弁,第2電磁弁,第3電磁弁,第4電磁弁)31,32,33,34を介して炉内に、火炎Fの延びる方向に直交する方向、すなわち上から下に向けて噴射される。
アンモニア供給装置14から各アンモニア注入ノズル21,22,23,24にアンモニアを送るアンモニア供給パイプ60は、第一配管11においてアンモニア供給装置14とアンモニア用開閉弁17の間から分岐している。
なお、工業炉1の天井壁5の一部には排ガスを放出するための煙道20が設けられている。
【0032】
第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、こうしたバーナ10からの火炎Fで、バーナ10に燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉1に取付けられるものであり、アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプ60の所定部分に設けられる。
【0033】
第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、図1に示すように4体設けられる(第1アンモニア加熱分解装置51、第2アンモニア加熱分解装置52、第3アンモニア分解装置53、第4アンモニア加熱分解装置54)。そして、第1アンモニア加熱分解装置51は、第1アンモニア供給パイプ61の第1電磁弁31と第1アンモニア注入ノズル21との間に設けられる。同様に、第2アンモニア加熱分解装置52は、第2アンモニア供給パイプ62の第2電磁弁32と第2アンモニア注入ノズル22との間に設けられ、第3アンモニア加熱分解装置53は、第3アンモニア供給パイプ63の第3電磁弁33と第3アンモニア注入ノズル23との間に設けられる。そして、第4アンモニア加熱分解装置54は、第4アンモニア供給パイプ64の第4電磁弁34と第4アンモニア注入ノズル21との間に同じように設けられる。
【0034】
なお、このアンモニア加熱分解装置50の設置箇所は、上記した所定部分に限定されず、例えば、図1に示すように、アンモニア供給装置14とアンモニア用開閉弁17との間だけに設けることもできるし、アンモニア供給装置14とアンモニア用開閉弁17との間には設けることなく、各電磁弁31~34と各アンモニア注入ノズル21~24との間にそれぞれ設けることもできる。アンモニア加熱分解装置50の設置箇所は炉体2にできるだけ接近させることが
【0035】
第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、図2に示すように、加熱手段として直接加熱ヒータH1と間接加熱ヒータH2を備える。この直接加熱ヒータH1は、アンモニア供給パイプ60の所定部分の内部の中心部分に配置され、その全体(前面、後面、外周面)がアンモニア供給パイプ60を通過するアンモニアに直接接触するように配置される。また、間接加熱ヒータH2は、アンモニア供給パイプ60の同一所定部分の外周面に設けられ、アンモニアを、アンモニア供給パイプ60を介して間接的に加熱する。
【0036】
また第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、アンモニア供給パイプ60の同一所定部分の内周面に前記アンモニアを水素と窒素に分解する触媒Cの層をコーティングしている。触媒Cは特に限定されないが、本実施形態ではアルミナを使用している。アルミナは他の触媒C(例えば、ルテニウム系の金属)と比較して廉価であるといった利点がある。従って、アンモニア加熱分解装置50を廉価に製造することができる。
【0037】
また、触媒Cとしてアルミナを使用することで、アンモニア供給パイプ60がアンモニアによって腐食したり、熱によって酸化するのを抑制することができる。これにより、アンモニア加熱分解装置50の物理的な安定性を向上させることができる。
【0038】
なお、触媒Cの層をコーティングする代わりに、アンモニア供給パイプ60の当該所定部分の全体を、アンモニアを水素と窒素に分解する触媒C(例えばアルミナ)で形成することもできる。これによってもアンモニア供給パイプ60の腐食や酸化を抑制することができ、アンモニア加熱分解装置50の物理的に安定させることができる。
【0039】
また、第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、間接加熱ヒータH2を覆い囲む状態で保温部材Tを設けている。保温部材Tの材料は限定されないが、グラスウールやロックウールなどの一般的なものを使用することができる。
【0040】
第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50によれば、加熱手段として直接加熱ヒータH1と間接加熱ヒータH2を備えるので、両者のはたらきによってアンモニアを効果的に加熱することができる。これにより、アンモニアを水素と窒素に容易に分解し、アンモニア(水素)をバーナ10の燃料として効果的に使用することができ、同時に、窒素酸化物の排出を低減することができる。
【0041】
なお、発明者らの知見によると、アンモニアは200℃以上に加熱すると水素と窒素への分解が促進され、また、1000℃以上に加熱すると自然に分解する。また、アルミナなどの触媒Cはアンモニアの分解を効果的に促進する。
従って、第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、アンモニアを200℃以上に加熱するように設定し、その温度に制御することで、この熱の作用と触媒C(アルミナ)の働きによってアンモニアを効果的に分解することができる。このことから、このアンモニア加熱分解装置50は、加熱温度が1000℃未満の工業炉1における使用に適している。
【0042】
また第一実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50は、間接加熱ヒータH2を覆い囲む状態で保温部材Tを設けているので、間接加熱ヒータH2やアンモニア供給パイプ60の所定部分からの熱の放散を防止し、アンモニア加熱分解装置50の性能を高めることができる。また、作業者の火傷を防止することができ、より高い安全性を確保することができる。
【0043】
図3を参照して本発明の第二実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50について説明する。このアンモニア加熱分解装置50の大きな特徴は、アンモニア供給パイプ60の所定部分の内部において、直接加熱ヒータH1の下流側にアンモニアを水素と窒素に分解する触媒Cを設けたことである。触媒Cは特に限定されないがアルミナが好ましい。なお、この触媒Cは、直流加熱ヒータの上流側に設けることもできる。
【0044】
第二実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50も、第一実施形態と同様に、間接加熱ヒータH2と保温部材Tを備える。間接加熱ヒータH2によって加熱効果を高め、保温部材Tによって保温効果を高めることができる。
【0045】
第二実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50によれば、直接加熱ヒータH1と間接加熱ヒータH2のはたらきによってアンモニアを効果的に加熱することができ、また、触媒Cの作用によってアンモニアの分解を促進することができる。これにより、アンモニアを水素と窒素に効率的に分解し、アンモニア(水素)をバーナ10の燃料として効果的に使用することができる。同時に、窒素酸化物の排出を低減することができる。
【0046】
図4を参照して第三実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50について説明する。このアンモニア加熱分解装置50の大きな特徴は、アンモニア供給パイプ60の所定部分の内部に直接加熱ヒータH1を設け、この直接加熱ヒータH1をプラズマ加熱装置で構成したことである。また、第一実施形態と同様に、アンモニア供給パイプ60の所定部分の内周面にアンモニアを水素と窒素に分解する触媒Cの層をコーティングし、所定部分の外周面に保温部材Tを設けている。触媒Cとしてはアルミナが好適であり、保温部材Tとしてはグラスウールなどの一般的なものを使用することができる。
【0047】
第三実施形態に係るアンモニア加熱分解装置50によれば、直接加熱ヒータH1をプラズマ加熱装置で構成したので、アンモニアを短時間で効率的に加熱することができ、かつ排出ガスを低減できる。また、触媒Cによりアンモニアの分解を促進し、保温部材Tによって保温効果を高めることができる。
【0048】
なお、上記第一乃至第三実施形態における直接加熱ヒータH1は、図5に示すように、触媒C(例えばアルミナ)で形成したカバーKで覆うこともできる。こうすることによって、触媒効果をさらに高めることができる。
【0049】
また、第一および第二実施形態においては間接加熱ヒータH2および保温部材Tを設けているが、これらを設けずに構成することもできる。また、第三実施形態では間接加熱ヒータH2を設けていないが、これを設けて構成することもできる。また、第一乃至第三実施形態における触媒Cとしては、アルミナや前記したルテニウム系のほかに、Co、Mo、Fe、Ni、Cuから成るハイエントロピー合金や、金属アミドやイミドを採用することができる。
【0050】
なお、このようにバーナ10に燃焼用空気とガス燃料とともに供給されるアンモニアを燃焼させる工業炉1において、アンモニアが供給されるアンモニア供給パイプ60の所定部分の内部に設けられ、その全体が、前記内部を通過するアンモニアに直接接触して加熱する直接加熱ヒータH1を備える50は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【0051】
本実施形態に係る50は、アンモニアを燃料として使用するあらゆる分野(例えば火力発電)においても使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 工業炉
2 炉体
3 側壁
5 天井壁
10 バーナ
11 第一配管
12 第二配管
13 エア配管
14 アンモニア供給装置
15 ガス供給装置
16 ブロワ
17 アンモニア用開閉弁
18 ガス用開閉弁
19 エア用開閉弁
20 煙道
21 第1アンモニア注入ノズル
22 第2アンモニア注入ノズル
23 第3アンモニア注入ノズル
24 第4アンモニア注入ノズル
31 第1電磁弁
32 第2電磁弁
33 第3電磁弁
34 第4電磁弁
50 アンモニア加熱分解装置
51 第1アンモニア加熱分解装置
52 第2アンモニア加熱分解装置
53 第3アンモニア加熱分解装置
54 第4アンモニア加熱分解装置
60 アンモニア供給パイプ
61 第1アンモニア供給パイプ
62 第2アンモニア供給パイプ
63 第3アンモニア供給パイプ
64 第4アンモニア供給パイプ
C 触媒
F 火炎
H1 直接加熱ヒータ
H2 間接加熱ヒータ
K カバー
T 保温部材
図1
図2
図3
図4
図5