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特開2024-121430介錯ロープ取付用治具及び重量物の搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121430
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】介錯ロープ取付用治具及び重量物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20240830BHJP
   B66C 13/04 20060101ALI20240830BHJP
   B66C 1/12 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B66C15/00 Z
B66C13/04
B66C1/12 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028542
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】河野 敬太
【テーマコード(参考)】
3F004
3F204
【Fターム(参考)】
3F004AG08
3F004EA40
3F004LC08
3F204CA05
3F204FC02
(57)【要約】
【課題】安全性、且つ、作業性の向上を図りつつ、重量物の損傷を防止することのできる介錯ロープ取付用治具及び重量物の搬送方法を提供する。
【解決手段】介錯ロープ取付用治具1は、第1部材2と、第2部材3とを備えている。各部材2、3は、フック孔4を有する操作部5と、湾曲部6と、作用部7とを備えている。各部材2、3同士は、湾曲部6に設けられた軸部8によって回動可能に連結されている。キュービクル21は、下面に孔部25が設けられた筐体22を備えている。両操作部5を開き、両作用部7を閉じた状態とさせた状態で、孔部25に、両作用部7を挿入させる。
今度は、両操作部5を閉じ、且つ、両作用部7を開く。操作部5同士が重なり合うことにより、単一のフック孔4が形成される。このとき、広げられた両作用部7が、キュービクル21の内側面に当接されることとなり、介錯ロープ取付用治具1の取付けが完了する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部、又は、湾曲部を有する第1部材と、
屈曲部、又は、湾曲部を有する第2部材とを有し、
前記第1部材、及び、前記第2部材は、前記屈曲部、又は、前記湾曲部において軸部で回動可能に連結され、
前記第1部材、及び、前記第2部材は、一端側に設けられた操作部と、他端側に設けられた作用部とを備え、
前記両操作部を近接させることで、前記両作用部の先端部間の距離が大きくなり、
前記両操作部を離間させることで、前記両作用部の先端部間の距離が小さくなり、
前記両操作部同士は、互いに重ね合わせることで、閉環状をなすフック孔が形成される構成となっていることを特徴とする介錯ロープ取付用治具。
【請求項2】
前記各操作部は、それぞれ閉環状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の介錯ロープ取付用治具。
【請求項3】
重量物を吊るして持ち上げる工程と、
持ち上げた前記重量物を所定の位置まで搬送する搬送工程とを備えた搬送方法であって、
前記重量物を持ち上げた際に、前記重量物の下面に予め設けられている孔部に、請求項1又は2に記載の前記介錯ロープ取付用治具を取付ける治具取付工程と、
取付けられた前記介錯ロープ取付用治具の前記フック孔に介錯ロープのフックを引掛ける引掛け工程とを備え、
前記搬送工程においては、前記介錯ロープをコントロールしながら搬送を行うものであり、
前記治具取付工程においては、前記両操作部を開き、且つ、前記両作用部を閉じた状態で、前記両作用部を前記孔部に差込み、その後、前記両操作部を閉じ、且つ、前記両作用部を開くことで、前記フック孔を形成することを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介錯ロープ使用時に用いられる介錯ロープ取付用治具及び重量物の搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの電気を必要とする施設(例えば、工場、病院、オフィスビル)の屋上等には、電力会社など電気事業者から高圧需要家が6600ボルトの高圧で受電し変圧して施設へ200ボルトまたは100ボルトの低圧で供給する配電盤のひとつである箱形状のキュービクル(変電設備)が設置されているケースがある。キュービクルは重量物であるため、当該キュービクルを搬入時地上から搬送移動させる場合には、玉掛け作業(クレーン等を用いた吊り上げ作業)が行われる。
【0003】
当該玉掛け作業においては、あらかじめ高さ2000mm以上であるキュービクルの上面の複数箇所に設けられたアイボルトが利用される(例えば、特許文献1等参照。)。より具体的には、各アイボルトに対して、それぞれ荷上げワイヤーの一端が取付けられる。そして、各荷上げワイヤーの他端が、クレーンフックに引掛けられた状態で、クレーンフックが持ち上げられることで、キュービクルの吊り上げ、搬送が行われることとなる。
【0004】
但し、上述した作業に際しては、吊り上げ時における、キュービクルの回転や揺れを抑制する必要がある。そこで、従来では、例えば、1箇所のアイボルトに対して、荷上げワイヤーとは別に、介錯ロープ(厳密には介錯ロープ用のフック)を取付けるといった方法が採用される。このように、介錯ロープを取付けることで、吊り上げ時において、地上にいる作業員が、当該介錯ロープを介してキュービクルをコントロール(位置や傾きの調整、及び、載置場所への誘導等)することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-113012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、介錯ロープ(フック)をキュービクルの上面に設けられたアイボルトに取付ける際には、地上に仮置きされているキュービクルに対し作業員が立ち馬等(作業台)に乗って、取付けを行う必要がある。その際、取付作業は前述のようにキュービクルの高さが2000mm以上であり、労働安全衛生法などの規定で高所での作業とならざるを得ず、安全帯を装着し落下防止を図る作業となる。加えて、立ち馬等の設置・撤去の工程も必要となってくる。
【0007】
また、アイボルトは、キュービクルの上面に設けられている。そのため、キュービクルを吊り上げた際に、介錯ロープのフックが、キュービクルの上面や側面に接触し、キュービクルに傷がついてしまったり、塗装面が剥がれてしまったりするおそれがある。そこで、例えば、介錯ロープのフックを用いず、ロープを直接アイボルトに結び付けるといった方法や、キュービクルの上面等を、予め当て布等を用いて養生しておくといった方法も考えられるが、いずれの方法も作業性が悪く、現実的な方法とは言い難い。
【0008】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、安全性、且つ、作業性の向上を図りつつ、重量物の損傷を防止することのできる介錯ロープ取付用治具及び重量物の搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.屈曲部、又は、湾曲部を有する第1部材と、
屈曲部、又は、湾曲部を有する第2部材とを有し、
前記第1部材、及び、前記第2部材は、前記屈曲部、又は、前記湾曲部において軸部で回動可能に連結され、
前記第1部材、及び、前記第2部材は、一端側に設けられた操作部と、他端側に設けられた作用部とを備え、
前記両操作部を近接させることで、前記両作用部の先端部間の距離が大きくなり、
前記両操作部を離間させることで、前記両作用部の先端部間の距離が小さくなり、
前記両操作部同士は、互いに重ね合わせることで、閉環状をなすフック孔が形成される構成となっていることを特徴とする介錯ロープ取付用治具。
【0011】
手段1によれば、第1部材、及び、第2部材は、屈曲部、又は、湾曲部において軸部で回動可能に連結されている。そして、両操作部を開き、且つ、両作用部を閉じた状態とすることで、両作用部の先端部間の距離を小さく(重ね合わせた状態)することが可能である。当該状態にすることで、例えば重量物等の下面に設けられた孔部に、作用部を挿入させることが可能になる。そして、当該孔部に作用部を挿入し、その後、両操作部を閉じ(重ね合わせ)、且つ、両作用部を開くことで、操作部に対応して、閉環状をなすフック孔が形成される。このため、フック孔に、介錯ロープのフックを引掛けることが可能となる。
ここで、開かれた両作用部は、重量物の内側面に当接されることとなる。また、これとともに、介錯ロープ取付用治具に介錯ロープのフックが引掛けられている間は、介錯ロープの保持者からロープに張力が加えられることから、第1部材、及び、第2部材の回動がある程度制限され、両操作部が常に重なり合った状態が維持される。そのため、開かれた両作用部は、重量物の内側面に係止され続けることとなり、介錯ロープ取付用治具が重量物から抜け落ちることがない。また、取外し時においては、上述した設置手順の、逆の作業を行うことで容易に取外すことが可能である。
【0012】
本手段によれば、重量物の下面側での取付作業等を行えばよく、従来のような高所での作業が不要となる。そのため、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
また、介錯ロープ取付用治具、及び、介錯ロープのフックを重量物の下面側に取付けることができる。そのため、介錯ロープのフックが、重量物の上面や側面に接触し、重量物に傷がついてしまったり、塗装面が剥がれてしまったりするといった事態を防止することができる。
【0014】
さらに、立ち馬(作業台)の設置・撤去等の工程も、不要であり、予め重量物を養生しておく必要もない。その上、介錯ロープ取付用治具の孔部への取付け、取外しも至ってシンプルで、ユーザーフレンドリーである。従って、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。尚、手段1等の技術思想を「介錯ロープ取付用治具を用いた介錯ロープの取付構造」に具現化することもできる。
【0015】
手段2.前記各操作部は、それぞれ閉環状をなしていることを特徴とする手段1に記載の介錯ロープ取付用治具。
【0016】
手段2によれば、各操作部が閉環状をなしているため、例えば、操作部がC字形状をなす場合に比べ、強度、及び、耐久性の向上等を図ることができる。
【0017】
また、各操作部が閉環状をなしているため、例えば、いずれか一方の操作部を、壁等に設けられたピンなどに引掛けて保管するといったことが容易となる。
【0018】
手段3.重量物を吊るして持ち上げる工程と、
持ち上げた前記重量物を所定の位置まで搬送する搬送工程とを備えた搬送方法であって、
前記重量物を持ち上げた際に、前記重量物の下面に予め設けられている孔部に、手段1又は2に記載の前記介錯ロープ取付用治具を取付ける治具取付工程と、
取付けられた前記介錯ロープ取付用治具の前記フック孔に介錯ロープのフックを引掛ける引掛け工程とを備え、
前記搬送工程においては、前記介錯ロープをコントロールしながら搬送を行うものであり、
前記治具取付工程においては、前記両操作部を開き、且つ、前記両作用部を閉じた状態で、前記両作用部を前記孔部に差込み、その後、前記両操作部を閉じ、且つ、前記両作用部を開くことで、前記フック孔を形成することを特徴とする搬送方法。
【0019】
手段3によれば、まず重量物が、例えばクレーン等によって吊るされ、持ち上げられる。重量物が持ち上げられた際に、重量物の下面に予め設けられている孔部に、手段1又は2に記載の介錯ロープ取付用治具が取付けられる。この治具取付工程においては、両操作部を開き、且つ、両作用部を閉じた状態で、両作用部を孔部に差込み、その後、両操作部を閉じ、且つ、両作用部を開くことで、フック孔が形成される。
【0020】
次に、引掛け工程においては、取付けられた介錯ロープ取付用治具のフック孔に介錯ロープのフックが引掛けられる。
【0021】
そして、搬送工程においては、持ち上げた重量物が所定の位置まで搬送される。搬送に際しては、介錯ロープによって重量物がコントロールされるため、当該重量物が回転したり、揺れたりしない。
【0022】
このように、各工程が行われる際に、上記手段1と同様の各作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】介錯ロープ取付用治具の両操作部を閉じ、且つ、両作用部を開いた状態を示す斜視図である。
図2】介錯ロープ取付用治具の両操作部を開き、且つ、両作用部を閉じた状態を示す斜視図である。
図3】キュービクルの上面側を示す斜視図である。
図4】キュービクルの下面側を示す斜視図である。
図5】キュービクル上面のアイボルトとクレーンフックとを荷上げワイヤーによって連結させた状態を示す斜視図である。
図6】キュービクル下面の孔部に、介錯ロープ取付用治具が挿入される直前の状態を示す部分斜視図である。
図7】キュービクル下面の孔部に、介錯ロープ取付用治具が挿入された状態を示す部分斜視図である。
図8】キュービクル下面に、介錯ロープ取付用治具が取付けられた状態を示す部分斜視図である。
図9図8のK部を示す部分拡大正面図である。
図10】キュービクルの吊り上げに際して、介錯ロープ取付用治具に介錯ロープのフックを引掛けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1、及び、図2に示すように、本実施形態の介錯ロープ取付用治具1は、第1部材2と、第2部材3とを備えている。各部材2、3は、共に金属製で板状をなし、且つ、略同一形状をなしている。
【0026】
各部材2、3は、フック孔4を中央に有する円環状の操作部5と、曲がり角度が約90度となっている湾曲部6と、作用部7とを備えている。また、各湾曲部6には、軸孔が設けられ、両軸孔が位置合わせされた上で、軸部8が設けられている。当該軸部8によって各部材2、3同士が回動可能に連結されている。
【0027】
図3に示すように、重量物としてのキュービクル21は、略直方体状の筐体22と、当該筐体22の前面側に設けられた扉23とを備えている。また、筐体22の上面のうち4隅には、アイボルト24が設けられている。アイボルト24は、適宜、取付け、取外しが可能であり、主に、クレーン等を用いたキュービクル21の吊り上げ作業時等に用いられる。重量物としてのキュービクル21は、実際には図3の盤一面形状でなく連接され予め連結された形状をしているが、筐体の基本は図3と同じである。
【0028】
また、図4に示すように、筐体22の下面(底壁)の4隅には、孔部25が設けられている。孔部25は、筐体22の内側まで貫通しており、扉23を開いた際には、筐体22の内側から視認することができる。孔部25は、キュービクル21の製造段階において、予め設けられたものであり、その主な用途は、当該孔部25に固定金具等を用いて、キュービクル21を本設場所の基礎上架台等に固定するといったものである。
【0029】
尚、筐体22の内側には、図示しない断路器、遮断器、電力ヒューズ、電流・電圧計、変圧器等の各種機器が設けられている。当該機器により、発電所から送られてくる高電圧(例えば、6600V)の電気を、施設で使える低電圧(例えば、200V)の電気に変圧することが可能となっている。
【0030】
次に、本実施形態におけるキュービクル21の搬送方法を具体的に説明する。図5に示すように、キュービクル21の吊り上げ時においては、複数本の荷上げワイヤー31と、クレーンフック32を備えたクレーンとが用いられる。荷上げワイヤー31は、複数の硬鋼線材が編み込まれることで構成されており、引張りに対し十分な強度を有している。荷上げワイヤー31は、末端をロック止めあるいはシンブル入りロック止めとしてわっかにして処理されている。
【0031】
まず、キュービクル21の上面に設けられた各アイボルト24に対して、それぞれ荷上げワイヤー31の一端が図示しないシャックルまたはロック付きフックを介して取付けられる。そして、各荷上げワイヤー31の他端を、クレーンフック32に引掛けた状態でクレーンを作動させ、当該クレーンフック32を持ち上げることで、キュービクル21が吊り上げられる。各々の荷上げワイヤー31の長さは予め各アイボルト24に対し荷であるキュービクル21の天板が水平になる長さとなっており、クレーンフック32を吊り上げれば自然と水平に吊り上げられるようになっている。そして、キュービクル21の下面(孔部25)が、作業員の作業可能な所定の高さ位置、特にグランドレベルから1500mm程度の作業員の目の位置にキュービクルの下面(底壁)が位置する高さに到達した時点で、吊り上げ動作を一旦停止させる。
【0032】
動作停止の間、介錯ロープ取付用治具1を持つ作業員が、キュービクル21の下方に腕を差し入れ体をキュービクル21の側方に位置させる。そして、図6に示すように、介錯ロープ取付用治具1を、孔部25に挿入させるべく、近づける。このとき、両操作部5を開き、且つ、両作用部7を閉じた状態とさせる。当該操作により、両作用部7同士が重ね合った状態となり、孔部25に、両作用部7を挿入させることが可能になる。この際に、両操作部5が閉じたわっか形状であれば、作業者は片手の親指と人差し指で両操作部5を開くことができる。
【0033】
次いで、図7に示すように、上述した状態(両操作部5を開き、且つ、両作用部7を閉じた状態)のまま、両作用部7を孔部25に挿入させる。
【0034】
そして、図8に示すように、孔部25に両作用部7を挿入させた状態のまま、今度は、両操作部5を閉じ(重ね合わせ)、且つ、両作用部7を開く。この際も、両操作部5が閉じたわっか形状であれば、作業者は片手の親指と人差し指で両操作部5を閉じることができる。この場合、両操作部5はわっかでなく両操作部5を開き両作用部7を閉じた状態で両作用部7に近い側の両操作部5に切れ目があったとしても、作業者は片手の親指と人差し指で両操作部5を閉じることができる。操作部5同士が重なり合うことにより、閉環状をなす単一のフック孔4が形成される。また、このとき、図9に示すように、広げられた両作用部7が、キュービクル21の内側面に当接されることとなり、介錯ロープ取付用治具1の取付けが完了する。
【0035】
介錯ロープ取付用治具1をキュービクル21に取付けた後、今度は図10に示すように、介錯ロープ33が取付けられる。介錯ロープ33は、ロープ本体35と、当該ロープ本体35の先端に設けられたフック34とを備えている。そして、介錯ロープ取付用治具1に形成されたフック孔4に、介錯ロープ33のフック34を引掛けることで介錯ロープ33が取付けられる。介錯ロープ33が取付けられた後は、地上にいる作業員が、介錯ロープ33のロープ本体35を保持する。これにより、作業員はクレーンフック32の上昇に応じて介錯ロープ33を繰り出しながら、キュービクル21をコントロール(位置や傾きの調整、及び、載置場所への誘導等)することが可能となる。
【0036】
ここで、両作用部7が、キュービクル21の底壁の内側面に当接されていることに加え、介錯ロープ取付用治具1に、フック34(介錯ロープ33)が引掛けられている間は、ロープ本体35を保持する作業員からロープ35に張力が加えられることとなる。このため、第1部材2、及び、第2部材3の回動がある程度制限され、さらに両操作部5が重なり合って形成される閉環状の単一のフック孔4が介錯ロープ33のフック34の係合する部分の太さにより両操作部5が常に重なり合った状態が維持される。従って、開かれた両作用部7は、キュービクル21の底壁の内側面に係止され続けることとなり、介錯ロープ取付用治具1がキュービクル21から抜け落ちることがない。
【0037】
そして、前記クレーンによる搬送が開始され、キュービクル21が所定の位置まで移動させられる。搬送に際しては、作業員の保持する介錯ロープ33にてキュービクル21がコントロールされるため、当該キュービクル21が回転したり、揺れたりしない。併せて、介錯ロープ取付用治具1の取外しに際しては、上述した設置手順の、逆の作業を行うことで容易に取外すことが可能である。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態では、キュービクル21の下面側での取付作業を行えばよく、従来のようなキュービクル21の上面へ寄り付くための高所での作業が不要となる。そして、玉掛作業時の一旦停止時にも、作業者が重量物であるキュービクル21の下に潜り込まずに腕だけ差し込んで作業できる。そのため、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0039】
また、介錯ロープ取付用治具1、及び、介錯ロープ33のフック34をキュービクル21の下面側に取付けることとしている。そのため、介錯ロープ33のフック34が、キュービクル21の上面や側面に接触し、キュービクル21に傷がついてしまったり、塗装面が剥がれてしまったりするといった事態を防止することができる。
【0040】
さらに、立ち馬(作業台)の設置・撤去等の工程も不要であり、介錯ロープの振れ周りのための養生も必要なく、よって予めキュービクル21を養生しておく必要もない。その上、介錯ロープ取付用治具1の孔部25への取付け、取外しも至ってシンプルで、ユーザーフレンドリーである。従って、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、キュービクル21の吊り上げ中に、介錯ロープ33にねじれ応力が発生した場合であっても、介錯ロープ取付用治具1は、その取付状態を維持したまま、適宜ねじれの動きに合わせて回動することが可能である。そのため、上述した孔部25の周縁部(キュービクル21の下面)が破損するといった事態を回避することができる。
【0042】
なお、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0043】
(a)上記実施形態では、各部材2、3は、共に金属製であるが、介錯ロープ33の引張りに耐え得る程度の強度を有しているものであれば、当該各部材2、3の材質は特に限定されるものではなく、例えば、樹脂製であっても良い。
【0044】
(b)上記実施形態では、各部材2、3は、互いに略同一形状であるが、異なる形状であっても良い。
【0045】
(c)上記実施形態では、各部材2、3は、共に湾曲部6を備えているが、当該湾曲部6の代わりに、例えば、角部を有する屈曲部を備えることとしても良い。
【0046】
(d)上記実施形態では、重量物としてキュービクル21を挙げているが、対象となる重量物は、当該キュービクル21に限定されるものではない。基本的には、重量物の下面に孔部25が設けられ、当該孔部25に両作用部7の挿入、係止が可能、且つ、クレーンで吊り上げることのできる程度の重さの重量物であれば、介錯ロープ取付用治具1を適用可能である。今回の例の重量物のキュービクル21に限定されず、同様の筐体である配電盤一面、動力盤、制御盤、分電盤であってもよい。これらはすべて本設置場所の予め設置される架台に対し、盤面の底壁に孔部25が施されることで同じ搬送方法が適用可能である。また、電気の盤以外にも、例えば空調機や換気ファンなどの筐体を持つ重量物で筐体の上部にアイボルトを備え、底壁に孔部があれば同様に適用可能である。
【0047】
(e)上記実施形態では、キュービクル21の下面の4隅に孔部25が設けられているが、当該孔部25が重量物の下面に設けられていれば、当該孔部25の位置や数は特に限定されるものではない。例えば、孔部25が底壁から延びるブラケットに設けられていても良いし、中央位置に設けられていても良い。
【0048】
(f)上記実施形態では、キュービクル21の下面の4隅に設けられた孔部25のうち、筐体22の前方、且つ、扉23の正面から左側に位置する1つの孔部25にのみ、介錯ロープ取付用治具1を取付けることとしているが、取付け位置や数は特に限定されるものではない。例えば、介錯ロープ取付用治具1を、筐体22の前方に位置する2箇所の孔部25に取付けてもよいし、全て(4つ)の孔部25に取付けても良い。
【符号の説明】
【0049】
1…介錯ロープ取付用治具、2…第1部材、3…第2部材、4…フック孔、5…操作部、6…湾曲部、7…作用部、8…軸部、21…重量物としてのキュービクル、25…孔部、33…介錯ロープ、34…フック、35…ロープ本体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10