IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図1
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図2
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図3
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図4
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図5
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図6
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図7
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図8
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図9
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図10
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図11
  • 特開-画像表示装置及び画像表示方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121433
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】画像表示装置及び画像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0481 20220101AFI20240830BHJP
【FI】
G06F3/0481
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028545
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】堀切 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大段 翔平
(72)【発明者】
【氏名】河村 健
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 成俊
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA26
5E555AA71
5E555BA02
5E555BA04
5E555BB02
5E555BB04
5E555BC08
5E555BE17
5E555CB65
5E555DB03
5E555DB53
5E555DC43
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザが子供時代のコンテンツに没入する没入感を向上させることのできる画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置1は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する年齢設定部13と、ユーザに提示する画像コンテンツを取得するコンテンツ取得部15と、取得した画像コンテンツの年代を設定する年代設定部17と、年齢情報に基づいて画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合には、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定して画像コンテンツを描画する描画制御部19と、描画された画像コンテンツをユーザに対して表示する表示制御部21とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する年齢設定部と、
前記ユーザに提示する画像コンテンツを取得するコンテンツ取得部と、
前記コンテンツ取得部で取得した前記画像コンテンツの年代を設定する年代設定部と、
前記年齢情報に基づいて、前記画像コンテンツの年代が前記ユーザの子供時代であると判定された場合には、前記画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように前記視点の高さを設定して前記画像コンテンツを描画する描画制御部と、
前記描画制御部によって描画された前記画像コンテンツを前記ユーザに対して表示する表示制御部と、
を備える画像表示装置。
【請求項2】
前記描画制御部は、前記画像コンテンツの年代における前記ユーザの年齢に基づいて、前記視点の高さを設定する、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記描画制御部は、前記画像コンテンツに含まれているオブジェクトを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように前記視点の高さを設定する、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記描画制御部は、前記オブジェクトを表示するための視線方向が前記オブジェクトを見上げる方向となるように前記視線方向を設定する、
請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する年齢設定ステップと、
前記ユーザに提示する画像コンテンツを取得するコンテンツ取得ステップと、
前記コンテンツ取得ステップで取得した前記画像コンテンツの年代を設定する年代設定ステップと、
前記年齢情報に基づいて、前記画像コンテンツの年代が前記ユーザの子供時代であると判定された場合には、前記画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように前記視点の高さを設定して前記画像コンテンツを描画する描画制御ステップと、
前記描画制御ステップで描画された前記画像コンテンツを前記ユーザに対して表示する表示制御ステップと、
を画像表示装置が実行する画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高齢者などに対して認知症予防、認知症緩和のために、対象者が過去に経験した映像を見せるなど、いわゆる回想法とよばれる治療法が行われている。このような治療法で提供されるコンテンツは、静止画像、動画像、仮想空間における描画のいずれの場合であっても、対象者の経験や記憶に基づいたコンテンツであれば効果的である。
【0003】
このような治療法で利用するために、特許文献1には、認知症などを改善するための拡張現実ディスプレイシステムが開示されている。また、拡張現実用のディスプレイだけでなく、仮想現実用のディスプレイや通常の表示装置なども認知症を改善するために使用される。このような様々なシステムに対して提供される画像コンテンツは、システムのユーザが子供時代に撮影された過去の写真、映像、またはそれらから再現された仮想空間において構成されるコンテンツある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-132311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの画像コンテンツは、ユーザが子供時代のコンテンツであっても撮影者または製作者である大人の目線で撮影または製作されている。例えば、子供時代、特に幼児のときには身長が低いので、低い位置から見ていたにも関わらず、画像コンテンツは大人の高い視点から見た画像となっている。また、子供時代には瞳孔間距離が狭いので、物体が大きく見えていたにも関わらず、画像コンテンツは子供のときの感覚で撮影または製作されていない。したがって、大人の目線で撮影または製作された画像コンテンツを見ても、ユーザは子供時代を回想して子供時代のコンテンツに没入する没入感が十分に得られないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、ユーザが子供時代のコンテンツに没入する没入感を向上させることのできる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する年齢設定部と、前記ユーザに提示する画像コンテンツを取得するコンテンツ取得部と、前記コンテンツ取得部で取得した前記画像コンテンツの年代を設定する年代設定部と、前記年齢情報に基づいて、前記画像コンテンツの年代が前記ユーザの子供時代であると判定された場合には、前記画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように前記視点の高さを設定して前記画像コンテンツを描画する描画制御部と、前記描画制御部によって描画された前記画像コンテンツを前記ユーザに対して表示する表示制御部とを備える。
【0008】
本発明の画像表示方法は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する年齢設定ステップと、前記ユーザに提示する画像コンテンツを取得するコンテンツ取得ステップと、前記コンテンツ取得ステップで取得した前記画像コンテンツの年代を設定する年代設定ステップと、前記年齢情報に基づいて、前記画像コンテンツの年代が前記ユーザの子供時代であると判定された場合には、前記画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように前記視点の高さを設定して前記画像コンテンツを描画する描画制御ステップと、前記描画制御ステップで描画された前記画像コンテンツを前記ユーザに対して表示する表示制御ステップと、を画像表示装置が実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像表示装置によれば、ユーザが子供時代のコンテンツに没入する没入感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る画像表示装置によって表示される画像コンテンツの一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る画像表示装置によって表示される画像コンテンツを横方向から見た場合を想定した概念図である。
図4図4は、第1実施形態に係る画像表示装置による視点の高さが現在値よりも低くなるように設定する方法を説明するための概念図である。
図5図5は、第1実施形態に係る画像表示装置によって視点の高さが現在値よりも低くなるように設定された画像コンテンツの一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る画像表示装置による視線方向を見上げる方向に設定する方法を説明するための概念図である。
図7図7は、第1実施形態に係る画像表示装置による画像表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る画像表示装置によって表示される画像コンテンツの一例を示す図である。
図9図9は、瞳孔間距離が広い場合と狭い場合における両眼視差と見え方の違いを説明するための図である。
図10図10は、第2実施形態に係る画像表示装置によって拡大された画像コンテンツの一例を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に係る画像表示装置によって表示される画像コンテンツの一例を示す図である。
図12図12は、第2実施形態に係る画像表示装置によって拡大された画像コンテンツの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0012】
[画像表示装置の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る画像表示装置の構成を説明する。図1は、画像表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像表示装置1は、コントローラ3と、入力インターフェース(I/F)5と、記憶部7と、表示部9とを備えている。画像表示装置1は、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合に、画像コンテンツを子供時代の画像に変換して表示する装置である。特に、本実施形態では、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合に、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定して画像コンテンツを表示する。画像表示装置1は、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどの携帯端末で実現されていてもよいし、パソコンやサーバなどの情報端末等で実現されてもよい。
【0013】
コントローラ3は、例えば、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。コントローラ3は、図示しないROMやRAMなどの内部メモリに記憶されているプログラムを実行することで、様々な機能を実現する。コントローラ3は、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含んでいてもよい。コントローラ3は、実現される機能の例として、入力制御部11と、年齢設定部13と、コンテンツ取得部15と、年代設定部17と、描画制御部19と、表示制御部21とを備えており、ユーザに画像コンテンツを表示するための画像表示処理を実行する。
【0014】
入力インターフェース5は、ユーザが操作することによって情報が入力される入力手段であり、スマートフォンまたはタブレット端末のタッチパネルやキーボード、VR(Virtual Reality)コントローラなどである。入力インターフェース5は、入力された操作情報を、入力制御部11に出力する。
【0015】
記憶部7は、画像表示装置1による画像表示処理を実行するために必要な情報を記憶する記憶手段であり、データベースやメモリである。例えば、記憶部7は、さまざまな画像コンテンツを格納しているが、特にユーザが子供時代に撮影された静止画像や動画像、ユーザの子供時代の状況を設定した仮想空間を構成するパーツや画像などを格納している。仮想空間は、2次元で構成されても3次元で構成されてもよい。また、記憶部7は、ユーザの年齢情報や画像コンテンツの年代も格納しており、ユーザを特定するためのユーザ情報を格納していてもよい。ユーザ情報は、ユーザの身長データを含んでいてもよい。例えば、各年齢のときに測定された身長の数値を身長データとして、ユーザ情報に含まれている。
【0016】
表示部9は、ユーザに画像コンテンツや情報を表示するための表示手段であり、画像表示装置1に備えられている、または別体型の各種表示装置である。また、画像コンテンツが仮想画像である場合には、表示部9はVRゴーグルであってもよい。
【0017】
入力制御部11は、入力インターフェース5を介して入力された情報を受け付けて必要な処理を実行する。例えば、ユーザの年齢が入力インターフェース5から入力されると、入力制御部11は、その情報を受け付けて年齢設定部13へ送信する。また、ユーザのID(識別情報)が入力されると、記憶部7に格納されているユーザ情報と照合してユーザを特定する。入力制御部11は、入力インターフェース5がVRコントローラである場合、入力される操作情報を、描画制御部19に出力する。
【0018】
年齢設定部13は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定する。年齢情報は、ユーザの現在の年齢であってもよいし、生年月日などの生誕年を特定する情報であってもよい。ユーザが入力インターフェース5を操作することによって年齢に関する情報を入力すると、年齢設定部13は年齢情報を設定して記憶部7に記録する。例えば、年齢設定部13は、年齢情報に記録されている生年月日からユーザが1944年生まれであることを把握し、画像コンテンツを提示する2024年の時点におけるユーザの年齢を80歳に設定する。
【0019】
コンテンツ取得部15は、ユーザに提示する画像コンテンツを取得する。ユーザが画像コンテンツを表示する指示を入力すると、ユーザ情報と照合してユーザを特定し、そのユーザに関連する画像コンテンツを記憶部7から取得する。例えば、ユーザに提示する画像コンテンツは、ユーザの過去の体験に基づいたコンテンツであり、実際に撮影された写真、動画像、ユーザやその家族の証言に基づいて仮想的に構成された静止画像、動画像、仮想空間において構成されるコンテンツなどである。
【0020】
年代設定部17は、コンテンツ取得部15で取得した画像コンテンツの年代を設定する。年代の設定方法としては、ユーザが入力インターフェース5を操作して画像コンテンツの年代を入力してもよいし、デジタル画像である場合にはEXIF(Exchangeable Image File Format)情報に記録されている撮影日時を用いてもよい。また、AI(Artificial Intelligence)による画像分析と機械学習(または検索)によって過去の画像から、画像コンテンツに撮影されているオブジェクトが存在した年代を検出して、画像コンテンツの年代を設定してもよい。
【0021】
図2は、ユーザに提示する画像コンテンツの一例であり、1948年にユーザが実体験した静止画像である。すなわち、1948年にユーザを撮影した写真である。図2には、遊具であるオブジェクトOb1と、ユーザ自身であるオブジェクトOb2が撮影されている。ただし、画像コンテンツにユーザが撮影されていなくてもよい。このようにユーザを実際に撮影した写真の場合には、ユーザによって写真の撮影日時が入力インターフェース5から入力されると、年代設定部17は図2の画像コンテンツの年代を1948年に設定する。
【0022】
描画制御部19は、年齢情報に基づいて、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合には、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定して画像コンテンツを描画する。言い換えると、描画制御部19は、コンテンツ取得部15で取得した画像コンテンツの表示形態を変更したり、画像コンテンツにおけるオブジェクト位置の再構成などを行った画像コンテンツを描画する。
【0023】
描画制御部19は、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であるか否かを判定する。例えば、描画制御部19は、年齢情報からユーザの生年月日を取得してユーザが1944年生まれであることを把握し、図2の画像コンテンツが撮影された1948年におけるユーザの年齢が4歳であることを算出する。
【0024】
ここで、「ユーザの子供時代」は、ユーザが2歳から10歳の間であると定義されている。2歳未満は体験を記憶している可能性が低いと考えられ、11歳以上は大人との視点の高さの差異が小さいためである。そこで、図2の場合では、ユーザが4歳のときに撮影されているので、画像コンテンツの年代はユーザの子供時代であると判定される。ただし、「ユーザの子供時代」を2歳から10歳に限定する必要はなく、2歳から10歳の間より広くても狭くてもよい。
【0025】
描画制御部19は、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定して画像コンテンツを描画する。図3は、図2の画像コンテンツを横方向(左方向)から見た場合を想定した概念図である。図2の画像コンテンツは、図3に示すように視点の高さH1から撮影された画像コンテンツである。図3の視点の高さH1は、一般的な大人の撮影者の顔の位置であり、画像コンテンツをそのまま表示した場合の視点の高さの現在値である。
【0026】
描画制御部19は、画像コンテンツが図2に示すように実際に撮影された静止画像または動画像である場合には、画像コンテンツを撮影する視点の高さが現在値よりも低くなるように視点変換処理を行って視点の高さを設定する。例えば、図4に示すように、視点の高さH1を、仮想的な視点の高さH2で撮影したように低くする視点変換処理を行う。その結果、図2に示す画像コンテンツは、図5に示すように、視点の高さが現在値よりも低く設定されて描画される。
【0027】
描画制御部19は、画像コンテンツの年代におけるユーザの年齢に基づいて、視点の高さを設定する。例えば、図2の画像コンテンツはユーザが4歳のときに撮影されているので、視点の高さH2は、4歳児の平均身長に基づいて、一般的な4歳児の視点の高さに設定されている。また、ユーザ情報に各年齢のときのユーザの身長が記録されている場合には、ユーザ情報からユーザが4歳のときの身長を取得して、視点の高さH2をユーザが4歳のときの身長に設定してもよい。尚、ここでは静止画像の場合について説明したが、動画像の場合も同様に視点変換処理を行って視点の高さを設定する。また、視点の高さを変更することに伴って、オブジェクトの移動や見え方の変更、背景の補間等の処理もAIによって実行される。
【0028】
さらに、描画制御部19は、画像コンテンツが仮想的に構成された仮想画像である場合も同様に視点の高さを設定する。具体的に、仮想画像の場合には、仮想画像に設定されている視点の高さが現在値よりも低くなるように仮装画像を構成する処理を行って視点の高さを設定する。尚、仮想画像には、ユーザやユーザの家族の証言に基づいて仮想的に構成された静止画像、動画像、仮想空間が含まれ、2次元の画像だけでなく、3次元の画像も含まれる。また、VR画像だけでなく、AR(Augmented Reality)を用いた画像の描画であってもよい。
【0029】
尚、上記の図2~5の例では、画像コンテンツの全体を表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定していた。しかし、描画制御部19は、画像コンテンツに含まれているオブジェクトを表示するための視点の高さだけが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定してもよい。すなわち、画像コンテンツの全体ではなく、画像コンテンツ内のオブジェクトを表示するための視点の高さだけが低くなるように設定する。したがって、画像コンテンツの背景を表示するための視点の高さは低くなるように設定されない。また、画像コンテンツに含まれている所定値以上の大きさを有するオブジェクトを表示するための視点の高さだけが現在値よりも低くなるように設定してもよい。尚、オブジェクトとは、例えば、建造物や人物、動物、車両等であり、特に画像コンテンツの視点の近くに存在するオブジェクトである。
【0030】
描画制御部19は、オブジェクトを表示するための視線方向がオブジェクトを見上げる方向となるように視線方向を設定することもできる。図6に示すように、描画制御部19は、視点の高さH1を、仮想的な視点の高さH2に低くする視点変換処理を行った上で、視線方向がオブジェクトを見上げる方向となるように視線方向を設定する。図4の場合では、視線方向が平行に設定されていたのに対して、図6では見上げる方向に設定されているので、ユーザはより子供時代のコンテンツに没入することができる。
【0031】
表示制御部21は、描画制御部19によって描画された画像コンテンツをユーザに対して表示する制御を実行する。具体的に、表示制御部21は、画像コンテンツを表示部9に出力することによって、図5に示すように、視点の高さが低くなるように変換された画像コンテンツを表示部9に表示させる。これにより、視点の高さが低くなるように変換された画像コンテンツがユーザに提示される。
【0032】
[画像表示処理]
次に、本実施形態に係る画像表示装置1によって実行される画像表示処理を説明する。図7は、画像表示装置1による画像表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0033】
図7に示すように、ステップS101において、入力制御部11は、ユーザから画像コンテンツを表示する指示が行われたか否かを判定する。ユーザからの画像コンテンツを表示する指示は、入力インターフェース5を介してユーザから画像コンテンツを表示する指示が入力されることを示すが、これには限定されない。コンテンツを表示する指示が行われたと判定された場合(ステップS101:YES)、ステップS103へ進み、画像コンテンツを表示する指示が入力されていないと判定された場合(ステップS101:NO)、本実施形態に係る画像表示処理を終了する。
【0034】
ステップS103において、コンテンツ取得部15は、ステップS101で表示指示が行われた画像コンテンツを、記憶部7から取得する。例えば、図2に示す画像コンテンツを取得する。
【0035】
ステップS105において、年齢設定部13は、ユーザの年齢が設定されているか否かを判定する。ユーザの年齢が設定されていると判定された場合(ステップS105:YES)、ステップS107へ進み、ユーザの年齢が設定されていないと判定された場合(ステップS105:NO)、ステップS113へ進む。
【0036】
ステップS107において、年代設定部17は、ステップS105で取得した画像コンテンツの年代の設定が可能であるか否かを判定する。年代設定部17は、ユーザが画像コンテンツの年代を入力している場合やEXIF情報によって画像コンテンツの年代を設定できる場合など、画像コンテンツの年代が設定可能であると判定された場合(ステップS107:YES)、画像コンテンツの年代を設定してステップS109へ進む。一方、画像コンテンツの年代を設定できないと判定された場合(ステップS107:NO)、ステップS113へ進む。
【0037】
ステップS109において、描画制御部19は、ステップS103で取得したユーザの年齢情報に基づいて、ステップS107で設定された画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であるか否かを判定する。例えば、描画制御部19は、画像コンテンツが、ユーザの2歳から10歳の間に撮影された画像である場合には、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定する。画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合(ステップS109:YES)、ステップS111へ進み、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代ではないと判定された場合(ステップS109:NO)、ステップS113へ進む。
【0038】
ステップS111において、描画制御部19は、ステップS105で取得した画像コンテンツを子供時代の画像へ変換する画像変換処理を実行する。具体的に、描画制御部19は、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定する。例えば、図4に示すように、視点の高さがH1からH2に低くなるように視点の高さを設定して、図5に示すように、画像コンテンツへ変換する。また、このときオブジェクトを表示するための視線方向を、図6に示すように、見上げる方向に設定してもよい。
【0039】
ステップS113において、表示制御部21は、画像コンテンツを表示部9に出力して画像コンテンツの表示を開始する。表示される画像コンテンツは、ステップS111で視点の高さを低くしている場合には、図5に示すように、視点の高さを低くした画像コンテンツが表示される。一方、ステップS111で視点の高さを低くしていない場合(ステップS103、107、109のいずれかでNOの場合)には、図2に示すように、撮影されたままの画像コンテンツが表示される。
【0040】
ステップS115において、表示制御部21は、入力インターフェース5を介して、ユーザから画像コンテンツの表示を終了する指示が入力されたか否かを判定する。画像コンテンツの表示を終了する指示が入力されていないと判定された場合(ステップS115:NO)、継続して画像コンテンツを表示し、画像コンテンツの表示を終了する指示が入力されたと判定された場合(ステップS115:YES)、本実施形態に係る画像表示処理を終了する。
【0041】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る画像表示装置1は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定してユーザに提示する画像コンテンツを取得し、取得した画像コンテンツの年代を設定する。そして、年齢情報に基づいて画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合には、画像コンテンツを表示するための視点の高さが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定して画像コンテンツを描画し、ユーザに対して表示する。これにより、ユーザは子供時代の視点で画像コンテンツを見ることができるので、ユーザが子供時代のコンテンツに没入する没入感を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツの年代におけるユーザの年齢に基づいて、視点の高さを設定する。これにより、ユーザが子供時代に画像コンテンツを見ていたときと同じ視点の高さで、画像コンテンツを見ることができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツに含まれているオブジェクトを表示するための視点の高さだけが現在値よりも低くなるように視点の高さを設定する。これにより、画像コンテンツ全体ではなくオブジェクトだけを子供時代の視点で見ることができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、オブジェクトを表示するための視線方向がオブジェクトを見上げる方向となるように視線方向を設定する。これにより、子供時代の視線方向で画像コンテンツを見ることができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツが実際に撮影された静止画像または動画像である場合には、画像コンテンツを撮影する視点の高さが現在値よりも低くなるように視点変換処理を行って視点の高さを設定する。また、画像コンテンツが仮想的に構成された仮想画像である場合には、仮想画像に設定されている視点の高さが現在値よりも低くなるように仮想画像を構成する処理を行って視点の高さを設定する。これにより、ユーザは子供時代の視点で実際に撮影された静止画像や動画像、仮想画像を見ることができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0046】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
[画像表示装置の構成]
本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合に、画像コンテンツを拡大して表示するようにしたことが第1実施形態と相違している。したがって、画像表示装置1の構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同一である。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0048】
記憶部7は、画像コンテンツの拡大処理を、子供時代と成人の瞳孔間距離の差に基づいて行う場合は、子供時代の一般的な瞳孔間距離と、成人の一般的な瞳孔間距離を記憶していてもよい。子供時代の瞳孔間距離については、成長に応じて大きくなるので、それぞれの年齢について一般的な瞳孔間距離を記憶しておいてもよい。
【0049】
年代設定部17は、コンテンツ取得部15で取得した画像コンテンツの年代を設定する。例えば、図8は、ユーザに提示する画像コンテンツの一例であり、1948年にユーザが実体験した静止画像である。図8には、建造物であるオブジェクトOb3、Ob4が撮影されている。ただし、図8にはユーザが撮影されていないが、画像コンテンツにユーザが撮影されていてもよい。このようにユーザが実体験した写真の場合には、ユーザによって写真の撮影日時が入力インターフェース5から入力されると、年代設定部17は図8の画像コンテンツの年代を1948年に設定する。
【0050】
描画制御部19は、年齢情報に基づいて、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合には、画像コンテンツを拡大して描画する。
【0051】
描画制御部19は、画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であるか否かを判定する。例えば、描画制御部19は、年齢情報からユーザの生年月日を取得してユーザが1944年生まれであることを把握し、図8の画像コンテンツが撮影された1948年におけるユーザの年齢が4歳であることを算出する。
【0052】
ここで、「ユーザの子供時代」は、ユーザが2歳から10歳の間であると定義されている。2歳未満は体験を記憶している可能性が低いと考えられ、11歳以上は大人の瞳孔間距離との差異が小さいためである。そこで、図8の場合では、ユーザが4歳のときに撮影されているので、画像コンテンツの年代はユーザの子供時代であると判定される。ただし、「ユーザの子供時代」を2歳から10歳に限定する必要はなく、2歳から10歳の間より広くても狭くてもよい。
【0053】
描画制御部19は、画像コンテンツを拡大して描画する。このとき、描画制御部19は、所定の倍率で拡大してもよいが、特に子供時代の瞳孔間距離と成人の瞳孔間距離との差に基づいて、画像コンテンツを拡大して描画する。瞳孔間距離(IPD:Inter Pupil Distance)は、両眼の瞳孔の間の距離であり、成長するのにしたがって広くなる。そのため、子供時代には狭い瞳孔間距離で周囲を見ているので、手前にあるオブジェクトは大きく見え、遠方にあるオブジェクトは小さく見える。
【0054】
図9を参照して、広い瞳孔間距離の場合の見え方と狭い瞳孔間距離の場合の見え方とを比較して説明する。図9は、成人の瞳孔間距離に該当する広い瞳孔間距離31Aでオブジェクト32A、33Aを見た場合と、子供の瞳孔間距離に該当する狭い瞳孔間距離31Bでオブジェクト32B、33Bを見た場合の両眼視差及びその見え方を示している。
【0055】
図9に示すように、瞳孔間距離31Aが広い場合には、手前のオブジェクト32Aが、遠方のオブジェクト33Aを遮蔽する度合いが小さい。一方、瞳孔間距離31Bが狭い場合には、手前のオブジェクト32Bが、遠方のオブジェクト33Bを遮蔽する度合いが大きい。これは、図9に示すように、瞳孔と各オブジェクトの端部を結んだ直線同士の関係を見れば、幾何学的に明らかである。
【0056】
このように、瞳孔間距離が狭い子供時代には、手前のオブジェクトによる遮蔽効果が大きいので、手前にあるオブジェクト32Bは大きく見え、遠方にあるオブジェクト33Bは小さく見える。
【0057】
描画制御部19は、ユーザが子供時代を回想して子供時代のコンテンツに没入できるように画像コンテンツを拡大して描画する。例えば、図8の画像コンテンツを、図10に示すように拡大する。このとき、描画制御部19は、子供時代の瞳孔間距離と成人の瞳孔間距離との差に基づいて画像コンテンツを拡大するが、例えば、成人の瞳孔間距離を子供時代の瞳孔間距離で除算した倍率で画像コンテンツを拡大する。ただし、倍率は、この他に身長等を考慮して所定の値を設定しておいてもよい。
【0058】
尚、図10の例では、画像コンテンツの全体を拡大していたが、描画制御部19は、画像コンテンツに表示されているオブジェクトのみを拡大してもよい。したがって、画像コンテンツに表示されているオブジェクト以外の背景等は拡大されない。さらに、描画制御部19は、オブジェクト間の距離を変更せずに、オブジェクトのみを拡大して描画してもよい。これにより、オブジェクト間の距離が変わらないので、オブジェクトの拡大をより強調することができる。尚、オブジェクトとは、例えば、建造物や人物、動物、車両等であり、特に画像コンテンツの視点の近くに存在する物体である。
【0059】
さらに、描画制御部19は、画像コンテンツに表示されているオブジェクトのうち、手前側に表示されているオブジェクトを拡大し、遠方に表示されているオブジェクトを縮小して描画することもできる。図9で説明したように、子供時代には、手前にあるオブジェクトは大きく見え、遠方にあるオブジェクトは小さく見える。そこで、描画制御部19は、手前側に表示されているオブジェクトを拡大し、遠方に表示されているオブジェクトを縮小する。
【0060】
例えば、図11に示す画像コンテンツでは、手前側に空間を表すオブジェクトOb5が表示され、遠方に建物のオブジェクトOb6が表示されている。そこで、描画制御部19は、手前側に表示されているオブジェクトOb5を拡大し、遠方に表示されているオブジェクトOb6を縮小して描画する。その結果、図12に示すように、手前側にある空間がさらに広く感じられるように描画されるので、ユーザはより子供時代のコンテンツに没入することができる。
【0061】
表示制御部21は、画像コンテンツを表示部9に出力することによって、図10または図12に示す画像コンテンツを表示部9に表示させる。これにより、子供時代の瞳孔間距離と成人の瞳孔間距離との差に基づいて拡大された画像コンテンツがユーザに提示される。
【0062】
[画像表示処理]
本実施形態に係る画像表示処理は、図7に示す第1実施形態の画像表示処理と同一の処理が実行される。ただし、ステップS111において、描画制御部19は、画像コンテンツを拡大する。例えば、図8に示す画像コンテンツを、成人の瞳孔間距離を子供時代の瞳孔間距離で除算した倍率で拡大して、図10に示す画像コンテンツへ変換する。そして、ステップS113において、表示制御部21は、ステップS111で画像変換処理が実行されている場合には、図10および図12に示すように、拡大された画像コンテンツを表示する。
【0063】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る画像表示装置1は、ユーザの年齢に関する年齢情報を設定してユーザに提示する画像コンテンツを取得し、取得した画像コンテンツの年代を設定する。そして、年齢情報に基づいて画像コンテンツの年代がユーザの子供時代であると判定された場合には、画像コンテンツを拡大して描画し、描画された画像コンテンツをユーザに対して表示する。これにより、ユーザは子供時代の感覚で画像コンテンツを見ることができるので、ユーザが子供時代のコンテンツに没入する没入感を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、子供時代の瞳孔間距離と成人の瞳孔間距離との差に基づいて、画像コンテンツを拡大して描画する。これにより、ユーザが子供時代に画像コンテンツを見たときと同じ感覚で画像コンテンツを見ることができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツに表示されているオブジェクトのみを拡大して描画する。これにより、オブジェクトの大きさを強調することができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る画像表示装置1は、オブジェクト間の距離を変更せずに、オブジェクトのみを拡大して描画する。これにより、オブジェクトの大きさをより強調して表示することができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る画像表示装置1は、画像コンテンツに表示されているオブジェクトのうち、手前側に表示されているオブジェクトを拡大し、遠方に表示されているオブジェクトを縮小する。これにより、オブジェクトの大きさをより強調して表示することができるので、ユーザは子供時代のコンテンツへさらに没入することができる。
【0068】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 画像表示装置
3 コントローラ
5 入力インターフェース
7 記憶部
9 表示部
11 入力制御部
13 年齢設定部
15 コンテンツ取得部
17 年代設定部
19 描画制御部
21 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12