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  • 特開-回転角検出装置及び電動シリンダ 図1
  • 特開-回転角検出装置及び電動シリンダ 図2
  • 特開-回転角検出装置及び電動シリンダ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121435
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】回転角検出装置及び電動シリンダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240830BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20240830BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20240830BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
G01B7/30 H
H02P6/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028549
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 俊文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佳啓
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
5H560
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BA05
2F063DA02
2F063DA05
2F063GA52
2F077AA12
2F077CC02
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP12
2F077PP14
5H560DA04
(57)【要約】
【課題】一例として、回転体の回転角をより正確に検出可能な回転角検出装置及び電動シリンダを得る。
【解決手段】実施形態に係る回転角検出装置は、一例として、複数対の磁極を有し、回転軸まわりに回転する回転体に取り付けられるよう構成され、前記複数対の磁極が前記回転軸まわりに並べられ、前記複数対の磁極の正極及び負極が前記回転軸まわりに交互に並べられた、磁石と、前記磁石の磁場を検出するセンサと、を備え、前記複数対の磁極のそれぞれの対において、前記正極の前記回転軸まわりの幅と前記負極の前記回転軸まわりの幅とが互いに等しく、前記複数対の磁極のうち一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数対の磁極のうち他の一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅と異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数対の磁極を有し、回転軸まわりに回転する回転体に取り付けられるよう構成され、前記複数対の磁極が前記回転軸まわりに並べられ、前記複数対の磁極の正極及び負極が前記回転軸まわりに交互に並べられた、磁石と、
前記磁石の磁場を検出するセンサと、
を具備し、
前記複数対の磁極のそれぞれの対において、前記正極の前記回転軸まわりの幅と前記負極の前記回転軸まわりの幅とが互いに等しく、
前記複数対の磁極のうち一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数対の磁極のうち他の一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅と異なる、
回転角検出装置。
【請求項2】
前記複数対の磁極は、一つの第1の磁極対と、複数の第2の磁極対とにより構成され、
前記複数の第2の磁極対は、前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅が互いに等しく、
前記第1の磁極対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数の第2の磁極対のそれぞれの前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅よりも大きい、
請求項1の回転角検出装置。
【請求項3】
前記複数の第2の磁極対の数はN-1個であり、
前記複数の第2の磁極対のそれぞれにおける前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅は、180/(N+1)度であり、
前記第1の磁極対における前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅は、前記複数の第2の磁極対のそれぞれにおける前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅の二倍である、
請求項2の回転角検出装置。
【請求項4】
前記センサは、前記磁場の方向を検出する、
請求項1の回転角検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つの回転角検出装置と、
前記回転体を回転させるよう構成されたモータと、
シリンダと、
前記シリンダに収容されるとともに前記回転体の回転に伴って移動するよう構成されたピストンと、
を具備する電動シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転角検出装置及び電動シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転子のような回転体の回転角を検出する回転角検出装置が知られている。回転角検出装置は、例えば、回転体に取り付けられる多極磁石と、当該多極磁石の磁束を検出するホール素子のようなセンサとを備える。
【0003】
複数の磁極の幅は、互いに異なるように設定される。このため、回転角検出装置は、センサの出力信号の変化を観測することにより回転体の回転角を検出することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/150440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、最小の磁極が、大きい二つの磁極の間に配置される。このため、当該最小の磁極から出る磁束が隣接する二つの大きい磁極から出る磁束に打ち消され、磁束の検出を困難にしてしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、回転体の回転角をより正確に検出可能な回転角検出装置及び電動シリンダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る回転角検出装置は、一例として、複数対の磁極を有し、回転軸まわりに回転する回転体に取り付けられるよう構成され、前記複数対の磁極が前記回転軸まわりに並べられ、前記複数対の磁極の正極及び負極が前記回転軸まわりに交互に並べられた、磁石と、前記磁石の磁場を検出するセンサと、を備え、前記複数対の磁極のそれぞれの対において、前記正極の前記回転軸まわりの幅と前記負極の前記回転軸まわりの幅とが互いに等しく、前記複数対の磁極のうち一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数対の磁極のうち他の一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅と異なる。よって、一例としては、回転角検出装置は、センサによって磁石及び回転体の回転角をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一つの実施形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
図2図2は、上記実施形態の回転角検出装置を模式的に示す図である。
図3図3は、上記実施形態のセンサの出力の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一つの実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、一つの実施形態に係るブレーキシステム10の構成を示す図である。ブレーキシステム10は、四輪自動車のような車両1に搭載される。なお、ブレーキシステム10は、この例に限られない。
【0011】
ブレーキシステム10は、二つの電動シリンダ11と、ノーマルオープン型のマスタカット弁12と、二つのホイルシリンダ13と、ノーマルオープン型の二つの電磁弁14と、ノーマルオープン型の連通制御弁15と、マスタシリンダ装置16と、ストロークシミュレータ17と、ノーマルクローズ型のシミュレータカット弁18と、制御装置19と、複数の液路21,22,23,24,25,26,27とを有する。なお、ブレーキシステム10は、この例に限られない。
【0012】
二つの電動シリンダ11のそれぞれは、シリンダ31と、ピストン32と、モータ33と、回転直動変換機構34と、減速機構35と、スプリング36とを有する。なお、電動シリンダ11は、この例に限られない。
【0013】
シリンダ31は、有底の円筒状に形成される。ピストン32は、シリンダ31に、移動可能に収容される。モータ33は、シャフト33aを有する。シャフト33aは、回転体の一例である。モータ33は、シャフト33aを回転させる。
【0014】
回転直動変換機構34は、例えば、ボールネジである。回転直動変換機構34は、回転部材34aと、直動部材34bとを有する。直動部材34bは、ピストン32と回転部材34aとの間に配置され、回転部材34aに取り付けられる。直動部材34bは、回転部材34aの回転に伴ってピストン32を移動させる。
【0015】
減速機構35は、例えば、モータ33のシャフト33aに取り付けられたギヤと、回転部材34aに設けられたギヤと、を有する。なお、減速機構35は、この例に限られない。減速機構35は、シャフト33aと回転部材34aとの間で、回転を伝達する。このため、回転部材34aは、シャフト33aの回転に伴って回転する。
【0016】
シリンダ31の内部に、液圧室31aが設けられる。液圧室31aは、例えば、シリンダ31の内面とピストン32の端面とによって形成(区画、規定)される。さらに、シリンダ31に、液圧室31aの出力ポート31bが設けられる。
【0017】
ピストン32が液圧室31aの体積を減少させるように移動することで、液圧室31aにおけるブレーキ液の圧力が増大し、電動シリンダ11は出力ポート31bからブレーキ液を吐出する。一方、ピストン32が液圧室31aの体積を増大させるように移動することで、液圧室31aにおけるブレーキ液の圧力は減少し、電動シリンダ11は出力ポート31bからブレーキ液を吸引する。スプリング36は、ピストン32を、液圧室31aの体積を増大させるように押す。
【0018】
液路21は、二つの電動シリンダ11の出力ポート31bと、マスタカット弁12とを接続する。液路22は、液路21と一方のホイルシリンダ13とを接続する。液路23は、液路21と他方のホイルシリンダ13とを接続する。
【0019】
一方の電磁弁14は、液路22に設けられ、一方の電動シリンダ11と一方のホイルシリンダ13との間を開閉する。他方の電磁弁14は、液路23に設けられ、他方の電動シリンダ11と他方のホイルシリンダ13との間を開閉する。
【0020】
電磁弁14が開いているとき、電動シリンダ11が出力ポート31bからブレーキ液を吐出することで、ホイルシリンダ13の圧力が増大する。これにより、ブレーキシステム10は、車両1の車輪に制動力を与える。
【0021】
連通制御弁15は、二つの液路22,23の間で液路21に設けられる。このため、連通制御弁15は、例えば、前輪に対応する電動シリンダ11及びホイルシリンダ13と、後輪に対応する電動シリンダ11及びホイルシリンダ13と、の間を遮断することができる。
【0022】
マスタシリンダ装置16は、ブレーキペダルPに接続される。マスタシリンダ装置16は、マスタシリンダ41と、マスタピストン42と、スプリング43と、リザーバ44とを有する。
【0023】
マスタシリンダ41は、有底の円筒状に形成される。マスタピストン42は、マスタシリンダ41に、移動可能に収容される。マスタピストン42は、ブレーキペダルPを介して運転者から入力を受ける。
【0024】
マスタシリンダ41の内部に、マスタ室41aが設けられる。マスタ室41aは、例えば、マスタシリンダ41の内面とマスタピストン42の端面とによって形成(区画、規定)される。マスタピストン42は、ブレーキペダルPの入力により、マスタ室41aの体積を減少させるように移動する。さらに、マスタシリンダ41に、マスタ室41aの出力ポート41b及び入力ポート41cが設けられる。
【0025】
液路24は、マスタシリンダ41の出力ポート41bとマスタカット弁12とを接続する。液路25は、マスタシリンダ41の入力ポート41cとリザーバ44とを接続する。マスタピストン42は、ブレーキペダルPの入力により所定距離以上移動すると、入力ポート41cを塞ぐ。
【0026】
マスタピストン42がマスタ室41aの体積を減少させるように移動することで、入力ポート41cが塞がれるとともにマスタ室41aにおけるブレーキ液の圧力が増大し、マスタシリンダ41は出力ポート41bからブレーキ液を吐出する。一方、マスタピストン42がマスタ室41aの体積を増大させるように移動することで、マスタ室41aにおけるブレーキ液の圧力は減少し、マスタシリンダ41は出力ポート41bからブレーキ液を吸引する。スプリング43は、マスタピストン42を、マスタ室41aの体積を増大させるように押す。
【0027】
マスタカット弁12は、液路21と液路24との間を開閉する。マスタカット弁12が開いているとき、マスタシリンダ41の出力ポート41bから吐出されたブレーキ液は、ホイルシリンダ13に供給され、ホイルシリンダ13の圧力を増大させる。これにより、ブレーキシステム10は、車両1の車輪に制動力を与える。
【0028】
ストロークシミュレータ17は、シリンダ51と、ピストン52と、スプリング53とを有する。シリンダ51は、有底の円筒状に形成される。ピストン52は、シリンダ51の内部に移動可能に収容される。スプリング53は、ピストン52を一方向に押す。
【0029】
液路26は、ストロークシミュレータ17と液路24とを接続する。液路27は、ストロークシミュレータ17と液路25とを接続する。シミュレータカット弁18は、液路26を開閉する。ストロークシミュレータ17は、シミュレータカット弁18が開かれているとともにマスタカット弁12が閉じられているとき、ブレーキペダルPの操作に対して液圧により反力を与える。
【0030】
制御装置19は、例えば、CPUのようなプロセッサ19a、ROM及びRAMのようなメモリ19b、及び種々の電子部品を有する電子制御ユニット(ECU)である。制御装置19は、電動シリンダ11のモータ33、マスタカット弁12、電磁弁14、連通制御弁15、シミュレータカット弁18、及び種々のセンサに電気的に接続される。
【0031】
通常では、制御装置19は、電磁弁14及びシミュレータカット弁18を開くとともに、マスタカット弁12を閉じる。制御装置19は、例えば、ストロークセンサにより検出したブレーキペダルPのストロークに基づき、モータ33を駆動することで、電動シリンダ11によりホイルシリンダ13の圧力を調整する。なお、通常における制御装置19によるブレーキシステム10の制御は、この例に限られない。
【0032】
ブレーキシステム10は、二つの回転角検出装置60をさらに有する。二つの回転角検出装置60は、二つの電動シリンダ11のモータ33に搭載される。なお、回転角検出装置60は、この例に限られない。
【0033】
図2は、本実施形態の回転角検出装置60を模式的に示す図である。図2に示すように、回転角検出装置60は、磁石61と、センサ62とを有する。磁石61は、モータ33のシャフト33aに取り付けられる。
【0034】
モータ33は、例えば、ブラシレスモータであり、シャフト33aを中心軸Axまわりに回転させる。中心軸Axは、回転軸の一例である。中心軸Axは、例えば、シャフト33aの仮想的な中心軸である。なお、中心軸Axは、この例に限られない。
【0035】
磁石61は、中心軸Axまわりに延びる略円環状の永久磁石である。磁石61は、シャフト33aの周りに配置され、シャフト33aと一体的に中心軸Axまわりに回転する。なお、磁石61は、この例に限られない。磁石61は、いわゆる多極磁石であり、周方向に並べられた複数の磁極を有する。
【0036】
本実施形態では、磁石61は、複数の磁極対70を有する。複数の磁極対70は、複数対の磁極の一例である。複数の磁極対70のそれぞれは、互いに隣り合う正極(N極)70Nと負極(S極)70Sとにより構成される。
【0037】
多極磁石である磁石61は、複数の正極70Nと複数の負極70Sとを有している。複数の正極70Nと複数の負極70Sとは、中心軸Axまわりに交互に並べられる。すなわち、中心軸Axまわりに交互に並べられる複数の正極70Nと複数の負極70Sとのうち、隣り合う正極70Nと負極70Sとが、一つの磁極対70を構成する。このため、複数の磁極対70は、中心軸Axまわりに並べられる。
【0038】
複数の磁極対70は、一つの第1の磁極対71と、複数の第2の磁極対72とにより構成される。すなわち、複数の磁極対70のうち一つが第1の磁極対71であり、残りが複数の第2の磁極対72である。なお、複数の磁極対70は、この例に限られず、複数種類の磁極対により構成されても良い。
【0039】
複数の磁極対70のそれぞれにおいて、正極70Nの中心軸Axまわりの幅と、負極70Sの中心軸Axまわりの幅とは、互いに等しい。すなわち、第1の磁極対71の正極70Nの中心軸Axまわりの幅W1nは、第1の磁極対71の負極70Sの中心軸Axまわりの幅W1sと等しい。さらに、第2の磁極対72の正極70Nの中心軸Axまわりの幅W2nは、第2の磁極対72の負極70Sの中心軸Axまわりの幅W2sと等しい。なお、幅W1nと幅W1sとが公差の範囲内で僅かに異なっても良いし、幅W2nと幅W2sとが公差の範囲内で僅かに異なっても良い。
【0040】
複数の第2の磁極対72の正極70Nの幅W2nと負極70Sの幅W2sとは、互いに等しい。すなわち、隣接する二つの第2の磁極対72のうち一方の正極70Nの幅W2nと、当該二つの第2の磁極対72のうち他方の負極70Sの幅W2sとは、互いに等しい。
【0041】
一方で、第1の磁極対71の正極70N及び負極70Sの幅W1n,W1sは、第2の磁極対72の正極70N及び負極70Sの幅W2n,W2sと異なる。第1の磁極対71は、複数対の磁極のうち一対、の一例である。第2の磁極対72は、複数対の磁極のうち他の一対、の一例である。
【0042】
第1の磁極対71の正極70N及び負極70Sの幅W1n,W1sは、複数の第2の磁極対72のそれぞれの正極70N及び負極70Sの幅W2n,W2sよりも大きい。すなわち、幅W1nが幅W2n及び幅W2sのいずれよりも長く、幅W1sも幅W2n及び幅W2sのいずれよりも大きい。
【0043】
本実施形態では、複数の磁極対70の数は5つである。複数の磁極対70の数は、例えば、ブラシレスモータであるモータ33のスロットの数と同一である。なお、複数の磁極対70の数は、この例に限られない。
【0044】
第1の磁極対71の正極70Nの幅W1n及び負極70Sの幅W1sのそれぞれは、約60°である。第2の磁極対72の正極70Nの幅W2n及び負極70Sの幅W2sのそれぞれは、約30°である。本明細書において、中心軸Axまわりの幅W1n,W1s,W2n,W2sは、角度で表される。なお、中心軸Axまわりの幅は、長さで表されても良い。
【0045】
複数の磁極対70の数が3つである場合、幅W1n,W1sのそれぞれが約90°に設定され、幅W2n,W2sのそれぞれが約45°に設定される。このように、複数の第2の磁極対72の数がN-1個であるとき、幅W2n,W2sは180/(N+1)度に設定され、幅W1n,W1sは幅W2n,W2sの二倍に設定される。なお、幅W1n,W1s,W2n,W2sは、この例に限られない。また、ここで、Nは3以上の任意の自然数である。
【0046】
センサ62は、例えば、MRセンサである。センサ62は、例えば、磁石61から径方向に僅かに離間した位置に配置され、磁石61の磁場の方向を検出する。なお、センサ62は、この例に限られず、例えば磁石61の磁束を検出するホールセンサであっても良い。
【0047】
センサ62は、制御装置19に電気的に接続され、制御装置19に検出信号を出力する。これにより、制御装置19は、シャフト33a及び磁石61が中心軸Axまわりに回転するときの磁場の方向の変化を、センサ62によって検出することができる。
【0048】
制御装置19は、ドライバ回路19cをさらに有する。制御装置19のプロセッサ19aは、センサ62の検出信号に基づきモータ33の回転子(シャフト33a)の位相(回転角)を推定し、当該位相に基づいてドライバ回路19cによりモータ33を駆動制御する。
【0049】
例えば車両1の始動時のイニシャルチェックにおいて、制御装置19のプロセッサ19aは、メモリ19bに格納されたプログラムを読み出して実行することで、以下のようにシャフト33aの位相を特定する。まず、プロセッサ19aは、ドライバ回路19cによりモータ33を駆動し、シャフト33aを一定の角速度で回転させる。
【0050】
図3は、本実施形態のセンサ62の出力の一例を示すグラフである。図3において、横軸はシャフト33aの位相を表し、縦軸はセンサ62の検出信号に対応する磁場の方向を示す。なお、シャフト33aが一定の角速度で回転しているため、横軸の位相は時間に略等しい。シャフト33aが所定の角速度で回転するとき、プロセッサ19aは、センサ62から検出信号を取得する。
【0051】
センサ62は、主に、当該センサ62が面している磁極対70の磁場の方向を検出する。図3に示すように、センサ62は、磁場の方向の線形(リニア)な変化を検出する。このため、センサ62は、パルス状の信号を出力する他のセンサよりも分解能が高い。なお、センサ62は、この例に限られない。
【0052】
上述のように、幅W1n,W1sは、幅W2n,W2sよりも大きい。このため、センサ62が第1の磁極対71に面しているときの出力O1における磁場の方向の変化は、センサ62が第2の磁極対72に面しているときの出力O2における磁場の方向の変化よりも緩やかになる。
【0053】
例えば、プロセッサ19aは、磁場の方向が0°から所定の角度θaに到達するまでの位相の変化を測定する。上述のように位相は時間に略等しいため、プロセッサ19aは、磁場の方向が0°から所定の角度θaに到達するまでの時間(以下、経過時間と称する)を測定しても良い。以下、便宜上、プロセッサ19aが経過時間を測定する場合について説明する。
【0054】
図3に示すように、出力O1における経過時間t1は、出力O2における経過時間t2よりも長い。このため、プロセッサ19aは、検出された経過時間が経過時間t1であるとき、センサ62が第1の磁極対71に面していることを特定できる。
【0055】
具体的には、メモリ19bに、予め測定された経過時間t1及び経過時間t2が記憶されている。プロセッサ19aは、測定された経過時間と記憶されている経過時間t1との差が閾値以下であれば、センサ62が第1の磁極対71に面していると判定する。
【0056】
プロセッサ19aは、センサ62が第1の磁極対71に面していると判定したとき、メモリ19bに予め格納されたマップに基づいて、シャフト33aの位相を特定する。言い換えると、プロセッサ19aは、モータ33の制御におけるシャフト33aの位相をリセットする。
【0057】
プロセッサ19aは、ピストン32の位置の特定及びリセットをさらに行っても良い。例えば、プロセッサ19aは、ドライバ回路19cによりモータ33を駆動させることで、ピストン32を所定の初期位置へ移動させる。例えば、プロセッサ19aは、ピストン32がストッパに当接したときのモータ33の電流を検出することで、ピストン32が初期位置へ配置されたと判定できる。
【0058】
次に、プロセッサ19aは、上述のように、センサ62の出力に基づいて、モータ33の制御におけるシャフト33aの位相をリセットする。プロセッサ19aは、シャフト33aの位相とピストン32との位置との関係を示すマップに基づいて、ピストン32の位置を特定する。言い換えると、プロセッサ19aは、電動シリンダ11の制御におけるピストン32の位置をリセットする。
【0059】
以上説明された実施形態に係るブレーキシステム10において、複数の磁極対70のそれぞれにおいて、正極70Nの中心軸Axまわりの幅と負極70Sの中心軸Axまわりの幅とが互いに等しい。複数の磁極対70のうち一対(第1の磁極対71)の正極70N及び負極70Sの中心軸Axまわりの幅W1n,W1sは、複数の磁極対70のうち他の一対(第2の磁極対72)の正極70N及び負極70Sの中心軸Axまわりの幅W2n,W2sと異なる。当該回転角検出装置60において、一つの正極70Nは二つの負極70Sの間に位置するが、二つの負極70Sのうち少なくとも一方の幅(幅W1s又は幅W2s)は、当該正極70Nの幅(幅W1n又は幅W2n)に等しい。すなわち、正極70Nが、当該正極70Nよりも大きい二つの負極70Sの間に配置されることがない。このため、当該正極70Nから出る磁場は、隣接する負極70Sにより打ち消されにくい。また、正極70Nと、当該正極70Nに隣接する少なくとも一つの負極70Sとは、同一の幅を有する。このため、例えば一つの第1の磁極対71の正極70N及び負極70Sの幅W1n,W1sが複数の第2の磁極対72の正極70N及び負極70Sの幅W2n,W2sより著しく小さかったとしても、第1の磁極対71の正極70N及び負極70Sの磁場が第2の磁極対72の正極70N及び負極70Sにより打ち消されにくい。従って、磁場の検出が容易となる。さらに、単一の磁極(正極N又は負極S)の幅が残りの磁極の幅と異なる場合に比べ、シャフト33aの位相が特定されるまでのシャフト33aの回転角(経過時間)が小さくて済む。以上より、回転角検出装置60は、センサ62によって磁石61及びシャフト33aの回転角をより正確に検出することができる。さらに、回転角検出装置60は、磁場を増大させるために正極70Nを大きくする必要が無く、大型化してしまうことを抑制できる。二つの正極70Nの間に位置する一つの負極70Sについても同様である。
【0060】
複数の磁極対70は、一つの第1の磁極対71と、複数の第2の磁極対72とにより構成される。複数の第2の磁極対72は、正極70N及び負極70Sの中心軸Axまわりの幅W2n,W2sが互いに等しい。第1の磁極対71の正極70N及び負極70Sの中心軸Axまわりの幅W1n,W1sは、複数の第2の磁極対72のそれぞれの正極70N及び負極70Sの中心軸Axまわりの幅W2n,W2sよりも大きい。これにより、第1の磁極対71の幅W1n,W1s(最大幅)が第2の磁極対72の幅W2n,W2s(最小幅)よりも著しく長かったとしても、第1の磁極対71に隣接する第2の磁極対72の幅W2n,W2sと、当該第2の磁極対72に隣接する他の第2の磁極対72の幅W2n,W2sとが等しいため、回転角検出装置60は、第2の磁極対72の磁場が打ち消されてしまうことを抑制できる。
【0061】
複数の第2の磁極対72の数は、N-1個である。複数の第2の磁極対72のそれぞれにおける正極70N及び負極70Sのそれぞれの中心軸Axまわりの幅W2n,W2sは、180/(N-1)度である。第1の磁極対71における正極70N及び負極70Sのそれぞれの中心軸Axまわりの幅W1n,W1sは、複数の第2の磁極対72のそれぞれにおける正極70N及び負極70Sのそれぞれの中心軸Axまわりの幅W2n,W2sの二倍である。これにより、第1の磁極対71の幅W1n,W1sと第2の磁極対72の幅W2n,W2sとのバランスが良くなり、回転角検出装置60は、第2の磁極対72の磁場が打ち消されてしまうことを抑制できる。
【0062】
センサ62は、磁場の方向を検出する。このため、センサ62は、シャフト33aの回転に伴う磁場の方向の線形な変化を測定することができる。従って、回転角検出装置60は、センサ62が正極70Nと負極70Sとの間の磁極の境界を検出しなくても、磁石61及びシャフト33aの回転角を検出することができる。
【0063】
電動シリンダ11は、回転角検出装置60と、モータ33と、シリンダ31と、ピストン32とを備える。モータ33は、シャフト33aを回転させる。ピストン32は、シリンダ31に収容されるとともに、シャフト33aの回転に伴って移動する。すなわち、回転角検出装置60がシャフト33aの回転角をより正確に検出することで、電動シリンダ11は、シリンダ31の内部におけるピストン32の位置をより正確に検出することができる。従って、電動シリンダ11は、シリンダ31及び当該シリンダ31に接続されるブレーキシステム10における液圧をより正確に制御することができる。
【0064】
以上の実施形態において、回転角検出装置60は、ブレーキシステム10の電動シリンダ11のモータ33に搭載される。しかし、回転角検出装置60は、この例に限られず、ブレーキ制御装置のポンプのモータ、電動パーキングブレーキのモータ、又は他の装置に搭載されても良い。
【0065】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る回転角検出装置は、一例として、複数対の磁極を有し、回転軸まわりに回転する回転体に取り付けられるよう構成され、前記複数対の磁極が前記回転軸まわりに並べられ、前記複数対の磁極の正極及び負極が前記回転軸まわりに交互に並べられた、磁石と、前記磁石の磁場を検出するセンサと、を備え、前記複数対の磁極のそれぞれの対において、前記正極の前記回転軸まわりの幅と前記負極の前記回転軸まわりの幅とが互いに等しく、前記複数対の磁極のうち一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数対の磁極のうち他の一対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅と異なる。よって、一例としては、当該回転角検出装置において、一つの正極は二つの負極の間に位置するが、二つの負極のうち少なくとも一方の幅は、当該正極の幅に等しい。すなわち、正極が、当該正極よりも大きい二つの負極の間に配置されることがない。このため、当該正極から出る磁場は、隣接する負極により打ち消されにくい。また、正極と、当該正極に隣接する少なくとも一つの負極とは、同一の幅を有する。例えば一対の磁極の正極及び負極の幅が他の複数対の磁極の正極及び負極の幅より著しく小さかったとしても、当該一対の磁極の正極及び負極の磁場が他の複数対の磁極の正極及び負極により打ち消されにくい。従って、磁場の検出が容易となる。さらに、単一の磁極の幅が残りの磁極の幅と異なる場合に比べ、回転体の回転角が特定されるまでの回転体の回転角(経過時間)が小さくて済む。以上より、回転角検出装置は、センサによって磁石及び回転体の回転角をより正確に検出することができる。さらに、回転角検出装置は、磁場を増大させるために正極を大きくする必要が無く、大型化してしまうことを抑制できる。二つの正極の間に位置する一つの負極についても同様である。
【0066】
上記回転角検出装置では、一例として、前記複数対の磁極は、一つの第1の磁極対と、複数の第2の磁極対とにより構成され、前記複数の第2の磁極対は、前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅が互いに等しく、前記第1の磁極対の前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅は、前記複数の第2の磁極対のそれぞれの前記正極及び前記負極の前記回転軸まわりの幅よりも大きい。よって、一例としては、第1の磁極対の幅が第2の磁極対の幅よりも著しく長かったとしても、第1の磁極対に隣接する第2の磁極対の幅と、当該第2の磁極対に隣接する他の第2の磁極対の幅とが等しいため、回転角検出装置は、第2の磁極対の磁場が打ち消されてしまうことを抑制できる。
【0067】
上記回転角検出装置では、一例として、前記複数の第2の磁極対の数はN-1個であり、前記複数の第2の磁極対のそれぞれにおける前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅は、180/(N+1)度であり、前記第1の磁極対における前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅は、前記複数の第2の磁極対のそれぞれにおける前記正極及び前記負極のそれぞれの前記回転軸まわりの幅の二倍である。よって、一例としては、第1の磁極対の幅と第2の磁極対の幅とのバランスが良くなり、回転角検出装置は、第2の磁極対の磁場が打ち消されてしまうことを抑制できる。
【0068】
上記回転角検出装置では、一例として、前記センサは、前記磁場の方向を検出する。よって、一例としては、センサは、回転体の回転に伴う磁場の方向の線形な変化を測定することができる。従って、回転角検出装置は、センサが正極と負極との間の磁極の境界を検出しなくても、磁石及び回転体の回転角を検出することができる。
【0069】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る電動シリンダは、一例として、上記回転角検出装置と、前記回転体を回転させるよう構成されたモータと、シリンダと、前記シリンダに収容されるとともに前記回転体の回転に伴って移動するよう構成されたピストンと、を備える。よって、一例としては、回転角検出装置が回転体の回転角をより正確に検出することで、電動シリンダは、シリンダの内部におけるピストンの位置をより正確に検出することができる。従って、電動シリンダは、シリンダ及び当該シリンダに接続されるシステムにおける液圧をより正確に制御することができる。
【0070】
以上の説明において、「抑制する」は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。
【0071】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
11…電動シリンダ、31…シリンダ、32…ピストン、33…モータ、33a…シャフト(回転体)、60…回転角検出装置、61…磁石、62…センサ、70…磁極対(複数対の磁極)、70N…正極、70S…負極、71…第1の磁極対、72…第2の磁極対、Ax…中心軸(回転軸)、W1n,W1s,W2n,W2s…幅。
図1
図2
図3