(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012144
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】カルバゾール骨格を有するカルボン酸イオンを配位子とする金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
C07D 209/88 20060101AFI20240118BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240118BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240118BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07D209/88 CSP
C07D401/14
B01J20/22 A
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113443
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2022112385
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年9月15日に「第32回基礎有機化学討論会」のウェブサイトにて公開 (2)令和4年9月22日に「第32回基礎有機化学討論会」の口頭発表にて発表 (3)令和5年2月19日に「Chemistry A European Journal」誌のウェブサイトにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 真生
(72)【発明者】
【氏名】菅又 功
【テーマコード(参考)】
4C063
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB02
4C063CC12
4C063DD08
4C063EE10
4D012BA01
4D012CA03
4D012CA20
4D012CB05
4D012CG01
4D012CG02
4G066AB07B
4G066AB10B
4G066AB11B
4G066AB13B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA26
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA35
4G066CA38
4G066DA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス貯蔵機能を有する金属有機構造体並びにガス貯蔵剤及び貯蔵方法の提供。
【解決手段】例えば、式(2)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
(X
a:OHなど。X
b:H、OHなど。A:Nなど。n1~n4:0~3。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
【化1】
(式(1)中、
X
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。
X
aが2以上のとき、各X
aは互いに同一でも異なっていてもよい。
X
bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
X
c1は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
X
c2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
ここで、X
c1とX
c1は、一緒になって単結合を形成してよい。
ここで、X
c2とX
c2は一緒になって単結合を形成してよい。
Aは、窒素原子又はCX
dで表される基である。
X
dは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【請求項2】
式(1)で表されるカルボン酸イオンが、式(2)で表されるカルボン酸イオンである請求項1に記載の金属有機構造体。
【化2】
(式(2)中、
X
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。
X
aが2以上のとき、各X
aは互いに同一でも異なっていてもよい。
X
bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
Aは、窒素原子又はCX
dで表される基である。
X
dは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【請求項3】
多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである請求項1又は2に記載の金属有機構造体。
【請求項4】
補助配位子を構成成分として更に含む請求項1~3のいずれかに記載の金属有機構造体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の金属有機構造体を含むガス貯蔵剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸イオンと多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体、前記金属有機構造体を含むガス貯蔵剤、及び前記金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体(以下「MOF」ということがある。)は、金属イオンとそれらを連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることで内部に空間(つまり細孔)を持つ高分子構造を有する固体状の物質であり、ガスの貯蔵や分離などの機能をもつ多孔性材料として、この十数年高い興味が持たれてきた。例えば、ベンゼン環の1、4位にカルバゾールジカルボン酸が結合した下記式で示される化合物と銅(II)とで得られる金属有機構造体が水素の吸着能を有することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Dalton Transactions,2013,Vol42,pp1708-1714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガス貯蔵機能を有する新規な金属有機構造体並びにそれを用いたガス貯蔵剤及びガス貯蔵方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ベンゼン環の1、3位にカルボキシル基を有するカルバゾール又はジフェニルアミンが結合したカルボン酸を有機配位子として得られる新規な金属有機構造体を見いだした。また、それらの新規な金属有機構造体には、高い水素、二酸化炭素等の貯蔵能力があることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
[1]式(1)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体。
【0008】
【化2】
(式(1)中、
X
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。
X
aが2以上のとき、各X
aは互いに同一でも異なっていてもよい。
X
bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
X
c1は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
X
c2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
ここで、X
c1とX
c1は、一緒になって単結合を形成してよい。
ここで、X
c2とX
c2は一緒になって単結合を形成してよい。
Aは、窒素原子又はCX
dで表される基である。
X
dは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【0009】
[2]式(1)で表されるカルボン酸イオンが、式(2)で表されるカルボン酸イオンである上記[1]の金属有機構造体。
【0010】
【化3】
(式(2)中、
X
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。
X
aが2以上のとき、各X
aは互いに同一でも異なっていてもよい。
X
bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。
Aは、窒素原子又はCX
dで表される基である。
X
dは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。)
【0011】
[3]多価金属イオンが、元素の周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンである上記[1]又は[2]の金属有機構造体。
[4]補助配位子を構成成分として更に含む上記[1]~[3]のいずれかに記載の金属有機構造体。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の金属有機構造体を含むガス貯蔵剤。
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載の金属有機構造体にガスを接触させる工程を含むガスの貯蔵方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属有機構造体は新規であり、水素、二酸化炭素、窒素等のガスを貯蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の金属有機構造体は、式(1)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンとが結合してなる金属有機構造体である。
【0014】
【0015】
式(1)中、Xaは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。Xaが2以上のとき、各Xaは互いに同一でも異なっていてもよい。Xbは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。Xc1は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。Xc2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。ここで、Xc1とXc1は、一緒になって単結合を形成してよい。ここで、Xc2とXc2は一緒になって単結合を形成してよい。Aは、窒素原子又はCXdで表される基である。Xdは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。
【0016】
XaのC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。XaのC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。Xaのハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等を挙げることができる。
【0017】
XbのC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。XbのC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。Xbのハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等を挙げることができる。
【0018】
Xc1及びXc2のC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。Xc1及びXc2のC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。Xc1及びXc2のハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等を挙げることができる。
【0019】
XdのC1~6アルキル基としては、直鎖でも、分岐鎖であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、i-プロピル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチル-n-ブチル基、i-ヘキシル基等を挙げることができる。XdのC1~6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基等を挙げることができる。XdのC3~6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。Xdの5~6員ヘテロアリール基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基等を挙げることができる。
【0020】
本発明において、用語「無置換(unsubstituted)」は、母核となる基のみであることを意味する。母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換」の意味である。一方、用語「置換(substituted)」は、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同一又は異なる構造の基で置換されていることを意味する。従って、「置換基」は、母核となる基に結合した他の基である。置換基は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0021】
「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。「置換基」となり得る基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基などのハロゲノ基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1~6アルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基などのC2~6アルケニル基;
【0022】
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1,1-ジメチル-2-ブチニル基などのC2~6アルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、キュバニル基などのC3~8シクロアルキル基;
2-シクロプロペニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロヘキセニル基、4-シクロオクテニル基などのC3~8シクロアルケニル基;
フェニル基、ナフチル基などのC6~10アリール基;
ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員環のヘテロアリール基;
ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基などの6員環のヘテロアリール基;
インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基などの縮合環のヘテロアリール基;
オキシラニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基などの環状エーテル基;
アジリジニル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基などの環状アミノ基;
【0023】
水酸基;
オキソ基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1~6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基などのC2~6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基などのC2~6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基などのC6~10アリールオキシ基;
チアゾリルオキシ基、ピリジルオキシ基などの5~6員環のヘテロアリールオキシ基;
【0024】
カルボキシル基;
ホルミル基;
アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基などのC1~6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基;
アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基などのC1~6アルキルカルボニルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基などのC1~6アルコキシカルボニル基;
【0025】
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2-ジクロロ-n-プロピル基、1-フルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基などのC1~6ハロアルキル基;
2-クロロ-1-プロペニル基、2-フルオロ-1-ブテニル基などのC2~6ハロアルケニル基;
4,4-ジクロロ-1-ブチニル基、4-フルオロ-1-ペンチニル基、5-ブロモ-2-ペンチニル基などのC2~6ハロアルキニル基;
3,3-ジフルオロシクロブチル基などのC3~6ハロシクロアルキル基;
2-クロロ-n-プロポキシ基、2,3-ジクロロブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基などのC1~6ハロアルコキシ基;
2-クロロプロペニルオキシ基、3-ブロモブテニルオキシ基などのC2~6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基などのC1~6ハロアルキルカルボニル基;
【0026】
シアノ基;
ニトロ基;
アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1~6アルキルアミノ基;
アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6~10アリールアミノ基;
ホルミルアミノ基;
アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i-プロピルカルボニルアミノ基などのC1~6アルキルカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基、i-プロポキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基などのC1~6アルコキシカルボニルアミノ基;
S,S-ジメチルスルホキシイミノ基などのC1~6アルキルスルホキシイミノ基;
【0027】
アミノカルボニル基;
メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、i-プロピルアミノカルボニル基、などのC1~6アルキルアミノカルボニル基;
イミノメチル基、1-イミノエチル基、1-イミノ-n-プロピル基などのイミノC1~6アルキル基;
ヒドロキシイミノメチル基、1-(ヒドロキシイミノ)エチル基、1-(ヒドロキシイミノ)-n-プロピル基などのヒドロキシイミノC1~6アルキル基;
メトキシイミノメチル基、1-(メトキシイミノ)エチル基などのC1~6アルコキシイミノC1~6アルキル基;
【0028】
メルカプト基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1~6アルキルチオ基;
トリフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基などのC1~6ハロアルキルチオ基;
ビニルチオ基、アリルチオ基などのC2~6アルケニルチオ基;
エチニルチオ基、プロパルギルチオ基などのC2~6アルキニルチオ基;
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、t-ブチルスルフィニル基などのC1~6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基などのC1~6ハロアルキルスルフィニル基;
アリルスルフィニル基などのC2~6アルケニルスルフィニル基;
プロパルギルスルフィニル基などのC2~6アルキニルスルフィニル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基などのC1~6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基などのC1~6ハロアルキルスルホニル基;
アリルスルホニル基などのC2~6アルケニルスルホニル基;
プロパルギルスルホニル基などのC2~6アルキニルスルホニル基;
アミノチオカルボニル基;
【0029】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などのトリC1~6アルキルシリル基;
トリフェニルシリル基などのトリC6~10アリールシリル基
【0030】
これらの「置換基」は、当該置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の基で置換されていてもよい。
【0031】
「C1~6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1~6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、エトキシブチル基は、母核となる基がブチル基であり、置換基がエトキシ基であるので、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0032】
式(1)で表されるカルボン酸イオンとして具体的には、以下の式に表す化合物等を例示することができる。
【0033】
【0034】
本発明の金属有機構造体は、式(2)で表されるカルボン酸イオンと多価金属イオンが結合してなる金属有機構造体であることが好ましい。式(2)で表されるカルボン酸イオンは、式(1)で表されるカルボン酸イオンにおいて、Xc1とXc1が一緒になって単結合を形成し、Xc2とXc2が一緒になって単結合を形成しているものである。
【0035】
【0036】
式(2)中、Xaは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立に、0~3のいずれかの整数である。Xaが2以上のとき、各Xaは互いに同一でも異なっていてもよい。Xbは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、C1~6アルキル基、C1~6アルコキシ基又はハロゲノ基である。Aは、窒素原子又はCXdで表される基である。Xdは、水素原子、置換若しくは無置換のC1~6アルキル基、水酸基、置換若しくは無置換のC1~6アルコキシ基、置換若しくは無置換のC3~6シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の5~6員ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、又はシアノ基である。Xa、Xb及びAについては、式(1)の場合と同じである。
【0037】
本発明の金属有機構造体における多価金属イオンとしては、2価以上の金属のイオンであれば、特に制限されないが、元素周期表の第2族~第13族の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンが好ましく、Zn、Al、Cu、Zr、Ni、Co、Cr、Fe、Sc、Mo、Mn、Ti及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンがより好ましい。本発明の金属有機構造体において、式(1)で表されるカルボン酸イオンと結合する多価金属イオンは、1種でもよく2種以上でもよい。
【0038】
これらの多価金属イオンは、種々の塩の形で供給される。金属塩として具体的には、硝酸亜鉛(Zn(NO3)2・xH2O)、硝酸チタン(Ti(NO3)4・xH2O)、硝酸コバルト(Co(NO3)2・xH2O)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3・xH2O)、硝酸鉄(II)(Fe(NO3)2・xH2O)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO3)2・xH2O)、硝酸銅(II)(Cu(NO3)2・xH2O)、硝酸アルミニウム(III)(Al(CH3COO)3・xH2O)、硝酸マグネシウム(II)(Mg(NO3)2・xH2O);塩化亜鉛(ZnCl2・xH2O)、塩化チタン(TiCl4・xH2O)、塩化ジルコニウム(ZrCl4・xH2O)、塩化コバルト(CoCl2・xH2O)、塩化鉄(III)(FeCl3・xH2O)、塩化鉄(II)(FeCl2・xH2O)、塩化クロム(III)(CrCl3・xH2O)、塩化スカンジウム(III)(ScCl3・xH2O)、塩化マンガン(II)(MnCl2・xH2O);酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2・xH2O)、酢酸チタン(Ti(CH3COO)4・xH2O)、酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)4・xH2O)、酢酸コバルト(Co(CH3COO)2・xH2O)、酢酸鉄(III)(Fe(CH3COO)3・xH2O)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2・xH2O);硫酸亜鉛(ZnSO4・xH2O)、硫酸チタン(Ti(SO4)2・xH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO4)2・xH2O)、硫酸コバルト(CoSO4・xH2O)、硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3・xH2O)、硫酸鉄(II)(FeSO4・xH2O)、硫酸マグネシウム(II)(MgSO4・xH2O);水酸化亜鉛(Zn(OH)2・xH2O)、水酸化チタン(Ti(OH)4・xH2O)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4・xH2O)、水酸化コバルト(Co(OH)2・xH2O)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3・xH2O)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2・xH2O);臭化亜鉛(ZnBr2・xH2O)、臭化チタン(TiBr4・xH2O)、臭化ジルコニウム(ZrBr4・xH2O)、臭化コバルト(CoBr2・xH2O)、臭化鉄(III)(FeBr3・xH2O)、臭化鉄(II)(FeBr2・xH2O);炭酸亜鉛(ZnCO3・xH2O)、炭酸コバルト(CoCO3・xH2O)、炭酸鉄(III)(Fe2(CO3)3・xH2O);塩化酸化ジルコニウム(ZrOCl2・xH2O)、酢酸モリブデン(II)二量体((Mo(CH3COO)2)2)等が挙げられる。なお、xは、0~12の数である。これらは1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
本発明の金属有機構造体は、式(1)で表わされるカルボン酸イオン以外の有機配位子を補助配位子として含むことができる。金属有機構造体に補助配位子を含有させることで、金属有機構造体に高次構造を導入することができる。そのような補助配位子としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5-シアノイソフタル酸、1,3,5-トリメシン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,5-ジカルボキシピリジン、2,3-ジカルボキシピラジン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、9,10-アントラセンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、[1,1’:4’,1”]ターフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)トリアジン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-ニトロフェニル)エテン、1,2-ビス(4-カルボキシ-3-アミノフェニル)エテン、trans,trans-ムコン酸、フマール酸、ベンゾイミダゾール、イミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピラジン、4,4’-ジピリジル、1,2-ジ(4-ピリジル)エチレン、1,2-ジ(4-ピリジル)エタン、2,7-ジアザピレン、4,4’-アゾビスピリジン、1,5-ナフチリジン、フェナジン、2ビス(3-(4-ピリジル)-2,4-ペンタンジオナト)銅等が挙げられる。式(1)で表されるカルボン酸イオンと補助配位子を用いる場合の混合モル比は特に制限されない。
【0040】
本発明の金属有機構造体の製造方法として、特に制限されず、溶媒拡散法、溶媒撹拌法、水熱法等の溶液法、反応溶液にマイクロ波を照射して系全体を短時間に均一に加熱するマイクロ波法、反応容器に超音波を照射することにより、反応容器中で圧力の変化が繰り返し起こり、この圧力の変化により、溶媒が気泡を形成し崩壊するキャビテーションと呼ばれる現象がおき、その際に約5000K、10000barもの高エネルギー場が局所的に形成される結晶の各生成の反応場となる超音波法、溶媒を用いずに、金属イオン発生源と有機配位子を混合する固相合成法、結晶水程度の水を添加して金属イオン発生源と有機配位子を混合するLAG(liquid assisted grinding)法等のいずれの方法も用いることができる。
【0041】
例えば、金属イオンの発生源となる金属化合物と溶媒とを含有する第一溶液、式(1)で表されるカルボン酸イオン又はその前駆体であるカルボン酸と溶媒とを含有する第二溶液、及び、必要に応じて、補助配位子と溶媒とを含有する第三溶液をそれぞれ調製する工程と、第一溶液と、第二溶液及び第三溶液を混合して反応液を調製し、この反応液を加熱することで、金属有機構造体を得る工程と、を備える。第一~第三溶液は別々に調製する必要はなく、例えば、上記金属化合物、式(1)で表されるカルボン酸イオン又はその前駆体であるカルボン酸、補助配位子となる化合物、溶媒とを1度に混合して1つの溶液を調製してもよい。
【0042】
上記金属化合物と式(1)で表されるカルボン酸イオン又はその前駆体であるカルボン酸との混合モル比は、得られてくる金属有機構造体の細孔サイズ、表面特性に応じて任意に選択することができるが、式(1)で表されるカルボン酸イオン又はその前駆体であるカルボン酸1モルに対して金属化合物を1モル以上用いるのが好ましく、さらに1.5モル以上、さらに2モル以上用いるのが好ましい。また、10モル以下用いるのが好ましく、7モル以下用いるのが好ましい。
【0043】
反応液中の上記金属イオンの濃度は、10~200ミリモル/Lの範囲が好ましい。式(1)で表されるカルボン酸イオン又はその前駆体であるカルボン酸の反応液中の濃度は、5~100ミリモル/Lの範囲が好ましい。補助配位子の反応液中の濃度は、5~100ミリモル/Lであるのが好ましい。
【0044】
用いる溶媒としては、特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と記載することがある。)、N,N-ジエチルホルムアミド(以下「DEF」と記載することがある。)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMA」と記載することがある。)、N-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」と記載することがある。)、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と記載することがある。)及び水からなる群より選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの溶媒にメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコールを混合して用いてもよい。また、良質な結晶を得るために、これらの溶媒にギ酸、酢酸、水等の添加剤を添加してもよい。
【0045】
反応液の加熱温度は、特に制限されないが、例えば、室温~140℃の範囲、70~140℃の範囲、80~120℃の範囲等を挙げることができる。
【0046】
本発明のガス貯蔵剤は、本発明の金属有機構造体を含む。本発明のガス貯蔵剤は、本発明の金属有機構造体のみからなっていてもよく、ガス貯蔵剤としての使用に支障をきたさない範囲で他の成分を含んでもよい。本発明のガス貯蔵剤の形状は特に制限されず、例えば、粉状、顆粒状、ペレット状等を挙げることができる。本発明の金属有機構造体は、水素、メタン、アセチレン、二酸化炭素、窒素等のガスを吸着又は吸蔵することで、前記ガスを貯蔵することができる。本発明の金属有機構造体を用いたガスの貯蔵方法は、特に制限されないが、本発明の金属有機構造体とガスを接触させる方法が好ましく、接触させる方法は、特に制限されない。例えば、タンク中に、本発明の金属有機構造体を充填してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクの内壁を構成する表面に本発明の金属有機構造体を担持させてガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法、タンクを本発明の金属有機構造体を含む材料で成形してガス貯蔵タンクとし、該タンク内にガスを流入する方法等を挙げることができる。
【実施例0047】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。本発明の金属有機構造体を構成する式(1)で表されるカルボン酸イオンの前駆体となるカルボン酸として、以下の表1に示す有機配位子1~8を用いた。
【0048】
【0049】
[製造例1]有機配位子1の合成
カルバゾール(24.0mmol)、1,3-ジブロモベンゼン(10.0mmol)、炭酸カリウム(45.0mmol)、1,10-フェナントロリン(6.0mmol)、ヨウ化銅(6.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド100mLに溶解させ160℃で終夜攪拌した。室温に戻した後、酢酸エチルを100mL加えた反応溶液をセライトろ過した。ろ液を減圧蒸留し得られた残さを水で洗浄後、メタノールで洗浄し乾燥させることで1,3-ジカルバゾリルベンゼンを得た。得られた1,3-ジカルバゾリルベンゼン(3.00mmol)のジクロロメタン溶液(20mL)を塩化アルミニウム(18.0mmol)、塩化アセチル(30.0mmol)のジクロロメタン溶液(20mL)に滴下した。滴下後終夜撹拌した反応溶液を水にあけ、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄後乾燥することで1,3-ビス(3,6-ジアセチル-9H-カルバゾリル)ベンゼンを得た。5Mの水酸化ナトリウム水溶液(24mL)に0℃で臭素(40mmol)をゆっくり加え30分撹拌した。その反応溶液を1,3-ビス(3,6-ジアセチル-9H-カルバゾリル)ベンゼンのジオキサン懸濁液(200mL)に室温で加えた。その後100℃で終夜撹拌し、室温に戻した後、亜硫酸ナトリウム水溶液、次いで塩酸を加えた。析出した固体を遠心分離にて分取し、水でよく洗浄後乾燥させ0.944mmolの1,3-ビス(3,6-ジカルボキシル-9H-カルバゾリル)ベンゼン、有機配位子1を無色固体として得た。
【0050】
[製造例2]有機配位子2の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに3,5-ジブロモトルエンを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子2を無色固体として得た。
【0051】
[製造例3]有機配位子3の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに3,5―ジブロモアニソールを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子3を無色固体として得た。
【0052】
[製造例4]有機配位子4の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに3,5-ジブロモニトロベンゼンを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子4を淡黄色固体として得た。
【0053】
[製造例5]有機配位子5の合成
カルバゾール(20.0mmol)、カリウムターシャリーブトキシド(20.0mmol)をジメチルスルホキシド(10mL)に溶解させ120℃で1時間攪拌した。そこへ、3,5-ジフルオロブロモベンゼン(10.0mmol)を加えた後140℃で終夜撹拌した。室温に戻した後、水を加え、クロロホルムで抽出後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を減圧蒸留し得られた残さをメタノールで洗浄し乾燥させることで3,5-ジカルバゾリルブロモベンゼンを得た。その後、製造例1と同様、アセチル化の後、ハロホルム反応をおこなうことで、有機配位子5を無色固体として得た。
【0054】
[製造例6]有機配位子6の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに3,5-ジブロモピリジンを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子6を淡黄色固体として得た。
【0055】
[製造例7]有機配位子7の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに1, 3,5-トリブロモベンゼンを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子7を無色固体として得た。
【0056】
[製造例8]有機配位子8の合成
製造例1の1,3-ジブロモベンゼンの代わりに3,5-ジブロモ-t-ブチルベンゼンを用いた以外は製造例1と同様の操作で行い、有機配位子8を無色固体として得た。
【0057】
[実施例1-1]
有機配位子1(0.1mmol)、硝酸コバルト六水和物(0.2mmol)にN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)を加え、オーブン(反応条件:110℃、24時間)にて加熱した。室温に戻し、上澄みを除去した。そこへ0.1Mの硝酸銅三水和物のDMF溶液(10ml)を加え、一日静置した。その後、DMFを用い3回洗浄後、DMFに一晩浸漬した。溶媒を除去し、テトラヒドロフランへと溶媒を交換した。テトラヒドロフラン(10ml)を加え、終夜浸漬させた。溶媒を除去後、135℃で真空乾燥を6時間行い、緑色固体として金属有機構造体1-1を得た。
【0058】
[実施例1-2~1-6]
表2に示す有機配位子を用い、実施例1-1と同様の操作を行い、金属有機構造体1-2~1-6を得た。得られた有機配位子の性状を表2に示す。
【0059】
[実施例2-1]
有機配位子1(0.1mmol)、塩化銅二水和物(0.3mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)、エタノール(5mL)を加え、オーブン(反応条件:80℃、2日間)にて加熱した。室温に戻し、上澄みを除去した。DMF(10ml)を用い3回洗浄後、DMF(10mL)に一晩浸漬した。THFへの溶媒交換を行い、THF(10mL)で3回洗浄後、THF(10mL)に一晩浸漬した。溶媒を除去し、室温真空にて3時間乾燥することで、緑色固体として金属有機構造体2-1を得た。
【0060】
[実施例2-2~2-7]
表2に示す有機配位子を用い、実施例2-1と同様の操作を行い、金属有機構造体2-2~2-7を得た。得られた有機配位子の性状を表2に示す。
【0061】
[実施例3-1]
有機配位子3(0.1mmol)、硝酸アルミニウム九水和物(0.6mol)にN,N-ジメチルホルムアミド(9mL)、ギ酸(1mL)、水(1.5mL)を加え、オーブン(反応条件:115℃、1日間)にて加熱した。室温に戻し、上澄みを除去した。DMF(10ml)を用い3回洗浄後、DMF(10mL)に一晩浸漬した。THFへの溶媒交換を行い、THF(10mL)で3回洗浄後、THF(10mL)に一晩浸漬した。溶媒を除去し、室温真空にて3時間乾燥することで、白色固体として金属有機構造体3-1を得た。
【0062】
[実施例4-1]
有機配位子3(0.1mmol)、塩化ジルコニウム(0.2mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(4mL)、酢酸(2mL)を加え、オーブン(反応条件:115℃、1日間)にて加熱した。室温に戻し、上澄みを除去した。DMF(10ml)を用い3回洗浄後、DMF(10mL)に一晩浸漬した。THFへの溶媒交換を行い、THF(10mL)で3回洗浄後、THF(10mL)に一晩浸漬した。溶媒を除去し、室温真空にて3時間乾燥することで、無色固体として金属有機構造体4-1を得た。
【0063】
【0064】
[BET比表面積、水素貯蔵量及び二酸化炭素貯蔵量測定]
得られた金属有機構造体の一部について、BET比表面積、77K-大気圧における水素貯蔵量及び二酸化炭素貯蔵量を測定した。これらの測定は、ガス吸着量測定装置Tristar-II(Micromeritics社製)を用いて行った。
(BET比表面積)
BET比表面積は次の方法で算出した。金属有機構造体の50mg程度を、ガラスセルの内部に入れた。ガラスセルの内部は135℃の温度で真空まで減圧し、6時間乾燥させた。ガラスセルをガス吸着量測定装置に装着し、液体窒素入りの恒温槽に浸漬した。ガラスセルに含有される窒素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された窒素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。測定したBET比表面積の結果を表3に示した。
(水素貯蔵量)
77K常圧での水素貯蔵量は次の方法で算出した。窒素の測定後、水素へとガス種を変更し測定を行った。ガラスセルに含有される水素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された水素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。測定した77K-大気圧における水素貯蔵量を表3に示した。水素貯蔵量(質量%)は、有機金属構造体の質量に対する貯蔵された水素の質量の割合を示す。
(二酸化炭素貯蔵量)
258K、273K、298Kの二酸化炭素貯蔵量は次の方法で算出した。水素の測定後、二酸化炭素へとガス種を変更し測定を行った。ガラスセルに含有される二酸化炭素の圧力を徐々に増加させた。ガラスセルの内部に導入された二酸化炭素の圧力が1.0×105Paとなるまで測定を行った。測定した258K、273K、298K-大気圧における二酸化炭素貯蔵量を表4に示した。CO2貯蔵量(質量%)は、有機金属構造体の質量に対する貯蔵された二酸化炭素の質量の割合を示す。CO2/N2(二酸化炭素/窒素)選択性は、それぞれ一成分のガス吸着測定結果をもとにフィッティングを行い、その結果を用いて理想吸着溶液法(IAST法)により求めた。工場の排ガスであるCO2:N2=15:85の混合比をモデルとして、100kPa時の選択性を算出した。
【0065】
【0066】
【0067】
[単結晶X線構造解析]
実施例1-1~1-5、2-3及び2-7で得られた金属有機構造体1-1、1-2、1-3、1-4、1-5、2-3及び2-7をそれぞれ以下に示す測定条件でX線構造解析を行った。
(測定条件)
実施例1-1で得られた金属有機構造体1-1の0.1×0.1×0.05mmの緑色透明の単結晶をマイクロマウントに一粒載せ、単結晶X線解析装置(D8VENTURE、Bruker社製)を用い、0.78192Åの波長のX線を単結晶に照射することで回折データを取得した。得られた回折データを解析し、構造を決定した。その結果を表5に示す。実施例1-2~1-5で得られた金属有機構造体についても上記に示した測定と同様の条件でX線構造解析を行った。その結果を表5に示す。
【0068】
【0069】
実施例2-3で得られた金属有機構造体2-3の0.1×0.1×0.05mmの緑色透明の単結晶をマイクロマウントに一粒載せ、単結晶X線解析装置(SPring-8、BL02B1)を用い、0.413Åの波長のX線を単結晶に照射することで回折データを取得した。得られた回折データを解析し、構造を決定した。実施例2-7で得られた金属有機構造体2-7についても、同様に構造を決定した。その結果を下記の表6に示す。
【0070】