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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121447
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】複合材料構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/68 20060101AFI20240830BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20240830BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20240830BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B29C70/68
B29C39/10
B29C39/24
B32B5/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028565
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松延 竜佑
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AJ01A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100DC11A
4F100DC21A
4F100DD09B
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DH02B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JL10A
4F100JL10B
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD16
4F204AD24
4F204AG03
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF27
4F204EK17
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AD24
4F205AG03
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA35
4F205HA44
4F205HB01
4F205HB12
4F205HF05
4F205HG06
4F205HK05
(57)【要約】
【課題】天然繊維を含む樹脂層を備えた複合材料構造体であって、より容易に孔あけ加工を行うことができる複合材料構造体を提供する。
【解決手段】複合材料構造体1Cは、天然繊維を含む第1樹脂層L1と、第1樹脂層L1の少なくとも一方の面に設けられた繊維強化樹脂層L2と、を備える。第1樹脂層L1を構成する天然繊維からなる基材L1Aには、孔が形成される位置に第1樹脂層L1の厚さ方向に延びる穴部H1が形成されている。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔あけ加工により孔が形成される複合材料構造体であって、
前記複合材料構造体は、天然繊維を含む第1樹脂層と、
前記第1樹脂層の少なくとも一方の面に設けられた繊維強化樹脂層と、を備え、
前記第1樹脂層を構成する天然繊維からなる基材には、前記孔が形成される位置に前記第1樹脂層の厚さ方向に延びる穴部が形成されている、複合材料構造体。
【請求項2】
前記穴部に収容された板状部と、前記板状部から延出し、少なくとも一部が前記繊維強化樹脂層内に配置された棒状部とを有するスペーサーを備え、
前記板状部の前記厚さ方向に直交する方向の寸法は、前記孔の前記厚さ方向に直交する方向の寸法よりも大きい、請求項1に記載の複合材料構造体。
【請求項3】
前記棒状部の前記厚さ方向に直交する方向の寸法は、前記孔の前記厚さ方向に直交する方向の寸法よりも小さい、請求項2に記載の複合材料構造体。
【請求項4】
前記スペーサーは、熱可塑性樹脂製である、請求項2又は3に記載の複合材料構造体。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記繊維強化樹脂層とは異なる色を有する、請求項2又は3に記載の複合材料構造体。
【請求項6】
前記棒状部は、前記繊維強化樹脂層から前記厚さ方向に突出している、請求項2又は3に記載の複合材料構造体。
【請求項7】
前記第1樹脂層における前記繊維強化樹脂層が設けられた面とは反対側の面に、第2樹脂層が設けられている、請求項2又は3に記載の複合材料構造体。
【請求項8】
前記スペーサーは、前記板状部から延出し前記第2樹脂層内に配置された第2棒状部を備え、
前記第2棒状部の前記厚さ方向に直交する方向の寸法は、前記板状部の前記厚さ方向に直交する方向の寸法よりも小さい、請求項7に記載の複合材料構造体。
【請求項9】
前記板状部は、前記厚さ方向に直交する方向に面する側面を有し、該側面に、凹凸が形成されている、請求項2又は3に記載の複合材料構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、天然繊維を含む繊維強化プラスチック成型品の製造方法を開示している。当該製造方法は、型の内部に、天然繊維と、前記天然繊維を挟む第1および第2の補強繊維とを配置する工程と、前記型の内部に樹脂を注入する工程と、前記樹脂を硬化する工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-235737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天然繊維を含む樹脂層を備えた複合材料構造体に孔あけ加工を行う場合、天然繊維の切り屑が加工工具に巻き付きやすい。そのため、巻き付いた切り屑を加工工具から除去する工程が必要となり、孔あけ加工の工程が煩雑になることが有った。
【0005】
本発明の目的は、天然繊維を含む樹脂層を備えた複合材料構造体であって、より容易に孔あけ加工を行うことができる複合材料構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る複合材料構造体は、孔あけ加工により孔が形成される複合材料構造体であって、天然繊維を含む第1樹脂層と、樹脂層の少なくとも一方の面に設けられた繊維強化樹脂層と、を備える。第1樹脂層を構成する天然繊維からなる基材には、孔が形成される位置に第1樹脂層の厚さ方向に延びる穴部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天然繊維を含む樹脂層を備えた複合材料構造体であって、より容易に孔あけ加工を行うことができる複合材料構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る複合材料構造体における孔あけ加工後の構成を示す側断面図である。
図2A】第一実施形態に係る複合材料構造体を製造する第1工程について説明するための説明図であって、下金型に第1樹脂層の基材、及び繊維強化樹脂層の基材が配設された状態を示す側断面図である。
図2B】第一実施形態に係る複合材料構造体を製造する第2工程について説明するための説明図であって、金型内にマトリクス樹脂が注入された状態を示す側断面図である。
図2C】第一実施形態に係る複合材料構造体を加工する第3工程について説明するための説明図であって、金型から取り出された複合材料構造体に対し、孔あけ加工を行う状態を示す側断面図である。
図3】第二実施形態に係る複合材料構造体における孔あけ加工後の構成を示す側断面図である。
図4A】第二実施形態に係る複合材料構造体を製造する第1工程について説明するための説明図であって、下金型に第1樹脂層の基材、繊維強化樹脂層の基材、及び第2樹脂層の基材が配設され、スペーサーが第1樹脂層の基材の穴部と繊維強化樹脂層の基材とに挿入された状態を示す側断面図である。
図4B】第二実施形態に係る複合材料構造体を製造する第2工程について説明するための説明図であって、金型内にマトリクス樹脂が注入された状態を示す側断面図である。
図4C】第二実施形態に係る複合材料構造体を加工する第3工程について説明するための説明図であって、金型から取り出された複合材料構造体に対し、孔あけ加工を行う状態を示す側断面図である。
図5】第二実施形態の変形例に係る複合材料構造体を製造する第2工程について説明するための説明図であって、金型内にマトリクス樹脂が注入された状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る複合材料構造体について説明する。なお、以下の説明では同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に示すように、第一実施形態に係る複合材料構造体1Aは、天然繊維を含む樹脂層である第1樹脂層L1と、第1樹脂層L1の一方の面に設けられた繊維強化樹脂層L2と、を有している。
【0011】
図1に例示された第1樹脂層L1は、天然繊維に、マトリクス樹脂を含侵させて形成した天然繊維強化樹脂により構成された層である。当該天然繊維強化樹脂はNFRP(Natural Fiber Reinforced Plastics)とも称される。当該天然繊維は特に限定されず、公知の天然繊維を適宜用いることができる。例えば、当該天然繊維は植物繊維であってもよい。また、当該植物繊維は、例えば麻、亜麻、ケナフ、ジュート、コットン、竹、ココナッツ等であってもよい。天然繊維の繊維長、繊維径は特に限定されない。また、当該マトリクス樹脂は特に限定されず、公知の熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂を用いてもよい。例えば、当該熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等であってもよい。また、当該熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、PEKK樹脂(ポリエーテルケトンケトン)等であってもよい。以下、当該マトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合を例にとって説明を行う。
【0012】
図1に例示された繊維強化樹脂層L2は、炭素繊維にマトリクス樹脂を含侵させて形成した炭素繊維強化樹脂の層である。当該炭素繊維強化樹脂はCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)とも称される。なお、繊維強化樹脂層L2が含有する強化繊維は炭素繊維に限定されない。当該強化繊維には公知の繊維を用いることができる。例えば当該強化繊維は炭素繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維であってもよい。当該強化繊維の繊維長、繊維径は特に限定されない。繊維強化樹脂層L2が含有するマトリクス樹脂には、第1樹脂層L1のマトリクス樹脂と同様に、公知の熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂が用いられてもよい。
【0013】
なお、各図の紙面における上下方向を厚さ方向とする。また、各図に示された例では、紙面下方が下方に、紙面上方が上方にそれぞれ相当する。
【0014】
複合材料構造体1Aは、後述する複合材料構造体1Cに対し、孔あけ加工を行うことにより形成される。複合材料構造体1Aは、孔あけ加工により形成された外径R1の加工孔H1Aを有している。加工孔H1Aは、第1樹脂層L1と繊維強化樹脂層L2とを厚さ方向に貫通して形成されている。複合材料構造体1Cに加工孔H1Aを貫通することにより形成された内周面S2は、加工孔H1Aの径方向外側を画成している。また、第1樹脂層L1には、内周面S2よりも径方向外側に位置する内周面S1が形成されている。内周面S1は、後述する穴部H1の径方向外側を画成している。さらに、内周面S2のうち第1樹脂層L1の範囲内に位置する部分と、内周面S1との間には、縁部11が形成されている。縁部11は、後述するように熱硬化性樹脂で形成されている。
【0015】
図2A~2Cを参照して、複合材料構造体1Aの製造工程を説明する。まず、第1工程について説明する。第1工程では、下金型2A上に、繊維強化樹脂層L2を構成する強化繊維により形成された基材L2Aを設置する。さらに、第1樹脂層L1を構成する天然繊維により形成された基材L1Aを設置する(図2A参照)。ここで、基材とは当該繊維により形成されたシート、織物等を指すものとし、当該繊維以外の公知の材料を含んでいてもよい。当該基材には、マトリクス樹脂は含侵されておらず、ドライファブリックとも称される場合がある。第1樹脂層L1の基材L1Aには、第1樹脂層L1の基材L1Aの厚さ方向に延びる内径R2の穴部H1が形成されている。なお、内径R2は、穴部H1の、上記厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最小寸法である。第1樹脂層L1の基材L1Aに穴部H1を設けることにより形成された内周面S1は、穴部H1の径方向外側を画成する。なお、図に例示された穴部H1は平面視において円形の形状を有するが、これに限定されない。穴部H1は平面視で楕円、矩形、多角形等の形状を有していてもよい。また、内周面S1は凹凸を有してもよく、厚さ方向に対して傾斜し、テーパ状に形成されていてもよい。
【0016】
次に、第2工程について説明する。第2工程では、複合材料構造体1Cが形成される。まず、第1樹脂層L1の基材L1A上に上金型2Bを配置し、型閉じする(図2B参照)。上金型2Bには、下金型2Aと上金型2Bとの間に形成される空間に樹脂を注入可能な注入路である樹脂注入部3が設けられている。樹脂注入部3から液状の熱硬化性樹脂を注入すると、下金型2Aと上金型2Bとの間に配設された第1樹脂層L1の基材L1A、及び繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体に熱硬化性樹脂が含侵される。穴部H1は、上金型2Bと繊維強化樹脂層L2と内周面S1とに囲まれている。従って、穴部H1内には、熱硬化性樹脂が充填される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。
【0017】
下金型2A及び上金型2Bは、熱硬化性樹脂を硬化させるために加熱される。これにより、第1樹脂層L1の基材L1A、及び繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体において、マトリクス樹脂である熱硬化性樹脂が硬化される。熱硬化性樹脂が硬化された後、下金型2A及び上金型2Bは所定の温度に冷却されてもよい。以降、第1樹脂層L1の基材L1A、及び繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体にマトリクス樹脂が含侵され硬化したものを、それぞれ第1樹脂層L1、繊維強化樹脂層L2として説明する。上記工程により、第1樹脂層L1と、繊維強化樹脂層L2とを備える、複合材料構造体1Cが形成される。
【0018】
次に、図2Cを参照しながら第3工程について説明する。第3工程では、複合材料構造体1Cに加工孔H1Aを形成する孔あけ加工を行う。複合材料構造体1Cに孔あけ加工を行うことにより、複合材料構造体1Aが形成される。まず、下金型2Aと上金型2Bとを分離して、金型内部から成形された複合材料構造体1Cを取り出す。そして、穴部H1に充填された熱硬化性樹脂に対して、加工工具4により孔あけ加工を行う。加工工具4として、例えばドリルを使用するが、これに限定されず他の切削工具でもよい。加工工具4の外径R1は、穴部H1の内径R2よりも小さい。本実施形態において、例えばR2は12mm、R1は7mmであるが、これに限定されず異なる寸法でもよい。また、加工孔H1Aの平面視における形状は円形に限られず、楕円、矩形、多角形等のその他形状を有していてもよい。孔あけ加工は、穴部H1の径方向内方側であって、加工工具4が内周面S1と接触しない領域に対して行う。
【0019】
孔あけ加工により、図1に示すように、外径がR1である加工孔H1Aが形成される。複合材料構造体1Cに加工孔H1Aを貫通することにより、内周面S2が形成される。第1樹脂層L1において、内周面S2の周囲には、縁部11が形成されている。縁部11は、穴部H1内に充填された熱硬化性樹脂のうち、加工工具4により削りとられずに残った部分である。複合材料構造体1Cに上記加工を行うことにより、複合材料構造体1Aが形成される。
【0020】
本実施形態の複合材料構造体1Cは、孔あけ加工により孔が形成される複合材料構造体であって、天然繊維を含む第1樹脂層L1と、第1樹脂層L1の少なくとも一方の面に設けられた繊維強化樹脂層L2と、を備えている。第1樹脂層L1を構成する天然繊維からなる基材L1Aには、孔が形成される位置に第1樹脂層L1の厚さ方向に延びる穴部H1が形成されている。
【0021】
上記構成により、穴部H1に形成された内周面S1の内側において、穴部H1の内径R2より細い加工工具により第3工程の孔あけ加工を行う場合、加工工具4と第1樹脂層L1の天然繊維との接触が抑制される。そのため、天然繊維の切り屑が加工工具4に巻き付くことを抑制することができる。これにより、加工工具4から切り屑を除去するためのメンテナンスの工数を低減すると共に、孔あけ工程が煩雑になることを抑制することができる。また、穴部H1は、第1樹脂層L1の厚さ方向に貫通してもよい。この場合、第3工程の孔あけ加工において、加工工具4と第1樹脂層L1の天然繊維との接触をより確実に抑制することができる。そのため、天然繊維の切り屑が加工工具4に巻き付くことをより確実に抑制することができる。また、内周面S2のうち繊維強化樹脂層L2の範囲内に位置する部分は、上述の炭素繊維強化樹脂から構成されている。換言すれば、繊維強化樹脂層L2では、強化繊維含有量が低下した領域が内周面S2の周囲に形成されない。このため、孔あけ加工による複合材料構造体1Cの剛性低下、具体的には孔加工部の剛性低下を抑制することができる。さらに、熱硬化性樹脂が穴部H1内に充填された後に上記の孔あけ加工を行う場合、内周面S1の径方向内方には、硬化した熱硬化性樹脂からなる縁部11が形成される。このため、第1樹脂層L1に含まれる天然繊維が大気に曝されることがなく、使用する天然繊維が吸水性を有している場合でも、当該天然繊維に水分が吸収されることを抑制することができる。
【0022】
図3は、第二実施形態に係る複合材料構造体1Bの構成である。以下には、第一実施形態と異なる構成についてのみ説明する。第一実施形態と同一または同等の構成に関しては、同一の符号を付してそれらの詳しい説明は省略する。
【0023】
複合材料構造体1Bは、天然繊維を含む第1樹脂層L1と、第1樹脂層L1の一方の面に設けられた繊維強化樹脂層L2と、第1樹脂層L1の他方の面に設けられた第2樹脂層L3と、を有している。第2樹脂層L3は、繊維強化樹脂層L2と同様に炭素繊維強化樹脂の層であるが、これに限られない。複合材料構造体1Bは、後述する複合材料構造体1Dに対し、孔あけ加工を行うことにより形成される。複合材料構造体1Bは、孔あけ加工により形成された外径R1の加工孔H2Aを有している。加工孔H2Aは、第1樹脂層L1と、繊維強化樹脂層L2と、第2樹脂層L3とを厚さ方向に貫通して形成されている。複合材料構造体1Dに加工孔H2Aを貫通することにより形成された内周面S3は、加工孔H2Aの径方向外側を画成する。
【0024】
第1樹脂層L1において、後述する穴部H2の径方向外側を画成する内周面S1が形成されている。内周面S2のうち第1樹脂層L1の範囲内に位置する部分と内周面S1との間には、後述するスペーサーPの残存部P3が位置している。残存部P3は、後述する孔あけ加工において、板状部P1のうち、加工工具4で削りとられずに残った部分である。残存部P3の外周面S4と内周面S1との間には、縁部21Aが形成されている。縁部21Aは、後述するように熱硬化性樹脂で形成されている。
【0025】
図4A~4Cを参照して、複合材料構造体1Bの製造工程を説明する。まず、第1工程について説明する。第1工程では、下金型2A上に、繊維強化樹脂層L2を構成する強化繊維により形成された基材L2Aを設置する。さらに、第1樹脂層L1を構成する天然繊維により形成された基材L1Aを設置する(図4A参照)。第1樹脂層L1の基材L1Aには、第一実施形態と同様に、内径R2の穴部H2が形成されている。第1樹脂層L1の基材L1Aに穴部H2を設けることにより形成された内周面S1は、穴部H2の径方向外側を画成する。
【0026】
次に、穴部H2にスペーサーPを挿入する。そして、第1樹脂層L1の基材L1A上に、第2樹脂層L3の基材L3Aを設置する(図4A参照)。スペーサーPは熱可塑性樹脂で形成されている。また、スペーサーPは繊維強化樹脂層L2とは異なる色を有しており、例えば黄色である。
【0027】
スペーサーPは板状に形成された板状部P1と、板状部P1の中央付近の一方の面から板状部P1と直交する方向に延出した棒状部P2と、を有している。スペーサーPの挿入は、棒状部P2を下方側にした状態でスペーサーPを穴部H2に配置して行う。板状部P1の、上記厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最大寸法は、穴部H2の内径R2よりも小さく、板状部P1は穴部H2内に収容される。なお、本実施形態では、板状部P1の、厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最大寸法は、外径R3である。棒状部P2は、繊維強化樹脂層L2の基材L2Aを下方側に貫通し、繊維強化樹脂層L2の基材L2Aから厚さ方向に突出する。棒状部P2の、厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最大寸法は、加工工具4の外径R1より小さい。なお、本実施形態における当該棒状部P2の最大寸法は、棒状部P2の外径である。棒状部P2は、繊維強化樹脂層L2の基材L2Aへの挿入時に折れ曲がらない程度の強度に設定される。棒状部P2の先端部分は、下金型2Aに設けられた凹部に収容される。板状部P1の外径R3は穴部H2の内径R2よりも小さいため、板状部P1の外周面S4と内周面S1との間には、間隙である間隙部21が形成されている。すなわち、間隙部21は、厚さ方向において、第2樹脂層L3の基材L3Aと繊維強化樹脂層L2の基材L2Aとにより画成され、厚さ方向と直交する方向において、内周面S1と外周面S4とにより画成される。なお、板状部P1及び棒状部P2の平面視における形状は円形に限られず、楕円、矩形、多角形等のその他形状を有していてもよい。板状部P1は、厚さ方向と直交する方向に面する側面を有し、当該側面には、凹凸が形成されてもよい。当該側面はさらに、厚さ方向に対して傾斜したテーパ状に形成されてもよい。
【0028】
次に、第2工程について説明する。第2工程では、複合材料構造体1Dが形成される。まず、第2樹脂層L3の基材L3A上に上金型2Bを配置し、型閉じする(図4B参照)。上金型2Bの樹脂注入部3から液状の熱硬化性樹脂を注入すると、下金型2Aと上金型2Bとの間に配設された第2樹脂層L3の基材L3A、第1樹脂層L1の基材L1A、及び繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体に熱硬化性樹脂が含侵される。また、間隙部21内には、熱硬化性樹脂が充填され、縁部21Aが形成される。
【0029】
下金型2A及び上金型2Bは、熱硬化性樹脂を硬化させるために加熱される。これにより、第2樹脂層L3の基材L3A、第1樹脂層L1の基材L1A、繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体において、マトリクス樹脂である熱硬化性樹脂が硬化される。熱硬化性樹脂が硬化された後、下金型2A及び上金型2Bは所定の温度に冷却されてもよい。以降、第2樹脂層L3の基材L3A、第1樹脂層L1の基材L1A、及び繊維強化樹脂層L2の基材L2A全体にマトリクス樹脂が含侵され硬化したものを、それぞれ第2樹脂層L3、第1樹脂層L1、繊維強化樹脂層L2として説明する。上記工程により、第2樹脂層L3と、第1樹脂層L1と、繊維強化樹脂層L2とを備える、複合材料構造体1Dが形成される。
【0030】
次に、図4Cを参照しながら第3工程について説明する。第3工程では、複合材料構造体1Dに加工孔H2Aを形成する孔あけ加工を行う。複合材料構造体1Dに孔あけ加工を行うことにより、複合材料構造体1Bが形成される。まず、下金型2Aと上金型2Bとを分離して、金型内部から成形された複合材料構造体1Dを取り出す。そして、穴部H2内の板状部P1において、加工工具4により孔あけ加工を行う。加工工具4の外径R1は、板状部P1の、厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最小寸法よりも小さい。なお、本実施形態における当該板状部P1の最小寸法は、外径R3である。例えばR3は10mm、R1は7mmであるが、これに限定されず異なる寸法でもよい。また、加工孔H2Aの平面視における形状は円形に限られず、楕円、矩形、多角形等のその他形状を有していてもよい。板状部P1の外形は、厚さ方向で見たときに加工孔H2Aがその内部に収まる形状であればよい。より好ましくは、板状部P1の、厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最小寸法は、加工孔H2Aの厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最大寸法よりも大きい。孔あけ加工は、板状部P1の径方向内方側であって、加工工具4が板状部P1の外周面S4と接触せず、且つ、棒状部P2全体を内部に含む領域に対して行う。
【0031】
孔あけ加工により、図3に示すように、外径がR1である加工孔H2Aが形成される。複合材料構造体1Dに加工孔H2Aを貫通することにより、内周面S3が形成される。内周面S3の周囲には、板状部P1のうち、加工工具4で削りとられなかった部分である残存部P3が位置している。残存部P3の周囲には、縁部21Aが位置し、縁部21Aは上述のように熱硬化性樹脂で形成されている。複合材料構造体1Dに上記加工を行うことにより、複合材料構造体1Bが形成される。
【0032】
図5は、第二実施形態の変形例に係る複合材料構造体1Bを製造する際の、第2工程について説明する図である。即ち、図5は第二実施形態の第2工程を示す図4Bに相当する。この変形例において、スペーサーPはさらに、板状部P1の中央付近の他方の面から板状部P1に直交する方向に延出した第2棒状部P4を有している。第2樹脂層L3の基材L3Aに第2棒状部P4が挿入され、上方側に貫通している。第2棒状部P4は第2樹脂層L3の基材L3Aから厚さ方向に突出している。第2棒状部P4の、厚さ方向に直交する方向の寸法のうちの最大寸法は、加工工具4の外径R1より小さい。なお、本実施形態における当該第2棒状部P4の最大寸法は、第2棒状部P4の外径である。第2棒状部P4は、第2樹脂層L3の基材L3Aへの挿入時に折れ曲がらない程度の強度を有する。第2棒状部P4の先端部分は、上金型2Bに設けられた凹部に収容される。なお、第2棒状部P4の平面視における形状は円形に限られず、楕円、矩形、多角形等のその他形状を有していてもよい。
【0033】
本実施形態の複合材料構造体1Dは、第1樹脂層L1の穴部H2に収容され、繊維強化樹脂層L2に配置されるスペーサーPを備えている。スペーサーPは、穴部H2に収容される板状部P1と、少なくとも一部が繊維強化樹脂層L2内に配置される棒状部P2と、を有する。複合材料構造体1Dに孔あけ加工を行うことにより、加工孔H2Aが形成される。第1樹脂層L1における板状部P1の径方向の寸法は、加工孔H2Aの外径R1よりも大きい。
【0034】
上記構成により、板状部P1の内側において、第1樹脂層L1におけるスペーサーPの外径R3より細い加工工具4で孔あけ加工を行う場合、加工工具4と第1樹脂層L1の天然繊維との接触が抑制される。そのため、天然繊維の切り屑が加工工具4に巻き付くことを抑制することができる。これにより、加工工具4から切り屑を除去するためのメンテナンスの工数を低減すると共に、孔あけ工程が煩雑になることを抑制することができる。また、熱硬化性樹脂が穴部H2内に充填され硬化された後に上記の孔あけ加工を行う場合、加工後の孔と第1樹脂層L1との間に硬化した熱可塑性樹脂とスペーサーPの一部である残存部P3が介在する。このため、第1樹脂層L1に含まれる天然繊維が大気に曝されることがなく、使用する天然繊維が吸水性を有している場合でも、当該天然繊維に水分が吸収されることを抑制することができる。また、スペーサーPを目印として、孔あけ加工を行う位置をより確実に視認することができる。
【0035】
本実施形態の複合材料構造体1Dの繊維強化樹脂層L2における棒状部P2の外径は、加工孔H2Aの外径R1よりも小さい。このため、孔あけ加工により、棒状部P2は加工工具4で削りとられて除去される。繊維強化樹脂層L2では、強化繊維含有量が低下した領域が内周面S3の周囲に形成されない。そのため、孔あけ加工による複合材料構造体1Dの剛性低下、具体的には孔加工部の剛性低下を抑制することができる。
【0036】
本実施形態の複合材料構造体1Dが備えるスペーサーPは、熱可塑性樹脂で形成されている。このため、下金型2A及び上金型2Bを加熱することで、スペーサーPは溶融し、その後硬化する。そのため、スペーサーPと複合材料構造体1Dとの結合力が向上する。
【0037】
本実施形態の複合材料構造体1Dが備えるスペーサーPは、繊維強化樹脂層L2とは異なる色を有している。このため、孔あけ加工を行う際に、スペーサーPの位置が視認しやすく、スペーサーPを孔あけ加工位置の目印として使用することができる。
【0038】
本実施形態の複合材料構造体1Dが備えるスペーサーPの棒状部P2は、繊維強化樹脂層L2から厚さ方向に突出している。このため、スペーサーPの棒状部P2を下金型2Aの凹部に差し込むことで、複合材料構造体1D全体の位置決めを容易に行うことができる。
【0039】
本実施形態の複合材料構造体1Dは、第1樹脂層L1における繊維強化樹脂層L2が設けられた面とは反対側の面に、第2樹脂層L3が設けられている。これにより、第1樹脂層L1が第2樹脂層L3と繊維強化樹脂層L2との間に挟まれる構成となるため、複合材料構造体1D全体の剛性が向上する。
【0040】
本実施形態の変形例に係る複合材料構造体1Dが備えるスペーサーPは、第2樹脂層L3内に配置される第2棒状部P4を備えている。第2樹脂層L3における第2棒状部P4の外径は、第1樹脂層L1における板状部P1の外径よりも小さい。上記構成により、孔あけ加工を行う際に、複合材料構造体1Dの両面において、スペーサーPの位置を視認しやすいため、孔あけ加工位置の目印として使用することができる。
【0041】
また、他の実施形態では、スペーサーPの板状部P1における径方向外方に面する側面である外周面S4には、微細な凹凸が形成されている。この構成によれば、スペーサーPと複合材料構造体1Dのマトリクス樹脂との接触面積が増加するため、スペーサーPと複合材料構造体1Dとの結合力がより向上する。また、上記に限定されず、板状部P1の厚さ方向の表面に微細な凹凸を有していてもよい。
【0042】
上記実施形態では、棒状部P2は、繊維強化樹脂層L2の基材L2Aから厚さ方向に突出していたが、これに限らず、繊維強化樹脂層L2の基材L2Aから厚さ方向に突出していなくてもよい。また、第2棒状部P4は、第2樹脂層L3の基材L3Aから厚さ方向に突出していたが、これに限らず、第2樹脂層L3の基材L3Aから厚さ方向に突出していなくてもよい。なお、上記場合においても、繊維強化樹脂層L2あるいは第2樹脂層L3を透してスペーサーPの位置を視認し、スペーサーPを孔あけ加工位置の目印として使用することができる。また、スペーサーPが、繊維強化樹脂層L2あるいは第2樹脂層L3とは異なる色を有していると、スペーサーPの位置がより視認しやすく、スペーサーPを目印として、孔あけ加工を行う位置をより確実に視認することができる。
【0043】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B,1C,1D 複合材料構造体
H1,H2 穴部
H1A,H2A 加工孔
L1 第1樹脂層
L2 繊維強化樹脂層
L3 第2樹脂層
P スペーサー
P1 板状部
P2 棒状部
P4 第2棒状部
R1 加工孔H1Aの外径、加工孔H2Aの外径
R2 穴部H1の内径
R3 板状部P1の外径
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5